JP6613371B2 - 温度履歴表示体及びそれを用いた物品の品質管理方法 - Google Patents
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Description
図1に一実施形態に係る温度履歴表示体の俯瞰図を示す。温度履歴表示体は、基材1と、基材上に配置された複数の示温材2と、を備える。示温材は設定温度域を逸脱すると不可逆的に変色するインクから構成されている。ここで、変色とは、色相が変わることだけでなく、色の濃淡が変化することも含む。複数の示温材は、設定温度域が同じであり、その変色温度の精度は±2℃である。つまり、示温材同士は変色する温度が互いに±2℃以内である。また、示温材同士は、設定温度域を逸脱してから色変化するまでの時間が異なる。温度履歴表示体は、時間表示部3を備えていても良い。図1において、時間表示部3は、示温材に含まれるインクが設定温度域を逸脱してから色変化するまでの時間を示している。
基材としては、示温材と基材との密着性が担保されていればよい。例えばポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、塩化ビニル等のプラスチックフィルム材、上質紙、クラフト紙、和紙等の紙素材を用いることができる。
示温材は、設定温度域を逸脱すると不可逆的に変色するものであればよい。設定温度域の上限温度、下限温度のどちらを逸脱しえも不可逆的に変色する。また、示温材の形状には、特に制限はない。
第一のインク及び第二のインクとしては、消色開始温度と顕色開始温度とが異なるインクを用いることができる。第一および第二のインクの温度変化に伴う可逆的な色変化は、それぞれ図15(a)(b)によって示すことができる。図15においては、横軸に温度、縦軸に色濃度が示されている。例えば、図15(a)に示す第一のインクは、昇温時に温度がTa1に達すると、色濃度が低下し、色濃度が最も低い状態(消色状態)へと変化する。さらに、消色状態にあるインクを冷却させると、Td1までは消色状態を維持するが、Td1に達すると、色濃度が上昇し、呈色状態へと変化する。呈色状態の第一のインクは、Ta1を超える温度上昇がなければ呈色状態が維持される。第二のインクも同様で、Td2およびTa1の温度で、それぞれ呈色および消色状態が変化する。このような可逆的な色変化のサイクルは、一般的にはヒステリシス変色現象として知られているものである。
ロイコ染料は、電子供与性化合物からなるものであって、従来、感圧複写紙用の染料や、感熱記録紙用染料として公知のものを利用できる。例えば、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロフタランキサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等が挙げられる。この様なロイコ染料の具体例としては、9−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)スピロ[ベンゾ[a]キサンテン−12,3’−フタリド]、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−フルオラン6−(ジエチルアミノ)−2−[(3−トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン−9−スピロ−3’−フタリド、3,3−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、2’−アニリノ−6’−(ジブチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−キサンテン]、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1−エチル−8−[N−エチル−N−(4−メチルフェニル)アミノ]−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロスピロ[11H−クロメノ[2,3−g]キノリン−11,3’−フタリドが挙げられる。図1、3〜5のように、第一のインクおよび第二のインクが重なって印字された温度履歴表示体には、視認性の観点から、特に黒以外に呈色する染料を用いた方が好ましく、さらに、第一のインクおよび第二のインクは異なる色を呈する方が好ましい。具体的には第一のインクのロイコ染料として9−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)スピロ[ベンゾ[a]キサンテン−12,3’−フタリド]、第二のインクのロイコ染料として3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドが好ましい。第一のインクと第二のインクの組み合わせは、これらに限定されるものではなく、異なる色を呈するものであれば良い。
電子受容体である顕色剤は、電子供与性のロイコ染料と接触することで、ロイコ染料の構造を変化させて呈色させることが可能である。顕色剤としては、感熱記録紙や感圧複写紙等に用いられる顕色剤として公知のものを利用できる。このような顕色剤の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,2′−ビフェノール、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、パラオキシ安息香酸エステル、没食子酸エステル等のフェノール類等を挙げることができる。顕色剤は、これらに限定されるものではなく、電子受容体でありロイコ染料を変色させることができる化合物であればよい。また、カルボン酸誘導体の金属塩、サリチル酸及びサリチル酸金属塩、スルホン酸類、スルホン酸塩類、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル類、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等を用いてもよい。特に、ロイコ染料や後述する消色剤に対する相溶性が高いものが好ましく、2,2´−ビスフェノール、ビスフェノールA、没食子酸エステル類等の有機系顕色剤が好ましい。
消色剤とは、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させることが可能な化合物であり、ロイコ染料と顕色剤との呈色温度を制御できる化合物である。一般的に、ロイコ染料が呈色した状態の温度範囲では、消色剤が相分離した状態で固化している。また、ロイコ染料が消色状態となる温度範囲では、消色剤は溶融しており、ロイコ染料と顕色剤との結合を解離させる機能が発揮された状態である。本発明のインクに用いるロイコ染料の呈色および消色温度は、消色剤の凝固点と融点に依存する。そのため、消色剤の凝固点と融点は温度差があることが望ましい。また、融点または凝固点の温度は、対象とする温度管理範囲に依存する。具体的には、コハク酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、トリカプリリン、トリカプリン、トリラウリン、トリミリスチン等の脂肪酸エステル化合物があり、ロイコ染料および顕色剤との相溶性の観点から、これらの化合物を含むことが好ましい。また、凝固点、融点、変色時間の調整のため、これらの消色剤を1種、または2種類以上、あるいは、パラフィン、流動パラフィンなどの炭化水素と組み合わせてもよい。勿論、これらの化合物に限定されるものではなく、例えば、他のエステル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アマイド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類等を挙げることができる。
ロイコ染料、顕色剤、消色剤を含むインクは、通常の染料や顔料と同様に、インク、塗料、合成樹脂等に均一に分散させて用いることが可能であるが、保存安定性の観点から樹脂被膜から成るマイクロカプセルにより独立して内包されていることが望ましい。特に、図1に示したように第一のインクおよび第二のインクが同一箇所に印刷して用いられる場合には、第一のインクおよび第二のインクのロイコ染料、顕色材、消色剤が混合しないようにするため、マイクロカプセル化することが望ましい。マイクロカプセル化することにより、上記したように組成の湿度等に対する耐環境性が向上し、保存安定性、変色特性の安定化等が可能となる。また、マイクロカプセル化により、インク、塗料などに調製した際に、ロイコ染料、顕色剤、消色剤が他の樹脂剤、添加剤等の化合物から受ける影響を抑制することが可能である。
第一のインク及び第二のインクを、帯電制御式インクジェットプリンタを使用して印字する場合、第一のインクおよび第二のインクを溶媒中に分散させた第一のインク溶液および第二のインク溶液が必要となる。インク溶液は、樹脂、着色剤、ポリジメチルシロキサン鎖を有する添加剤、アルコキシシラン基を有する添加剤、溶剤等を含み、これら材料をオーバーヘッドスターラ等により攪拌しお互いを相溶または分散させることによりインクが形成される。インクの抵抗が高い場合は後述する導電剤も添加する。
一実施形態に係る温度履歴表示体の適用方法の一例を、図16を用いて説明する。図16は、ある商品が、製造工程、物流工程、販売工程を経て顧客に届けられるスキームを示す。温度履歴表示体21は商品22、商品の包装等に貼付される。温度管理対象である商品としては、例えば食品、飲料品、医薬品をあげることができる。
温度履歴表示体を形成方法する手法としては、基材又は熱伝導層上に、帯電制御式インクジェットプリンタ、大文字用インクジェットプリンタ(DOD式産業用インクジェットプリンタ)、スクリーン印刷、ディスペンサ等を用いて示温材を印字すればよい。食品、医薬品等の大量生産品に対応する観点から、帯電制御式インクジェットプリンタを使用する手法が望ましい。帯電制御式インクジェットプリンタを用いることにより、印字時間、コストを低減することが可能である。また、帯電制御式インクジェットプリンタは、インクを飛翔させて印字するため、被印字物と数十ミリメートルと離れていても印字可能で、種々の包装、形状に対応した印字が可能である。帯電制御式インクジェットプリンタを使用して印字された場合、その印字の大きさは0.1mm以上1mm以下となる。
示温材である第一のインクおよび第二のインクを以下のように作製した。第一のインクには、ロイコ染料として2´−メチル−6´−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−[9H]キサンテン]−3−オン(山田化学工業製RED520)を1重量部、顕色剤として東京化成工業製没食子酸オクチルを1重量部、消色剤としてコハク酸ジメチルをマトリクスとし、フェニル酢酸2-フェニルエチルを添加した混合物を100重量部用いた。
消色剤は、コハク酸ジメチルに対するフェニル酢酸2−フェニルエチルの重量比がフェニル酢酸2−フェニルエチルの重量/コハク酸ジメチルの重量=0、0.05、0.1、0.15、0.2である5種類を用いた。この5種類の消色剤を用いて第一のインクを調整した。
消色剤は、コハク酸ジメチルに対するパラフィンの重量比が、パラフィンの重量/コハク酸ジメチルの重量=0、0.25、0.5、0.75、1.0である5種類を用いた。この5種類の消色剤を用いて第二のインクを調整した。
作製した温度履歴表示体を2℃以下の環境に置いたところ、各示温材が1、2、3、4、5分で変色することが確認できた。同様に、作製した温度履歴表示体を8℃以上の環境に置いたところ、各示温材がそれぞれ1、2、3、4、5分で変色することを確認できた。以上より、本実施例に係る温度履歴表示体を用いることにより、設定温度域を逸脱した時刻を特定することができる。
Claims (12)
- 基材と、設定温度域を逸脱すると不可逆的に変色する示温材と、を備え、
前記示温材は、前記基材上に複数配置され、
前記示温材同士は、変色する温度が互いに±2℃以内であって、前記設定温度域を逸脱してから色変化するまでの時間が異なり、
前記示温材は、
昇温時の消色開始温度T a1 と降温時の顕色開始温度T d1 とが異なる第一のインクと、
昇温時の消色開始温度T a2 と降温時の顕色開始温度T d2 とが異なる第二のインクと、を含み、
前記消色開始温度T a1 と前記顕色開始温度T d1 と前記消色開始温度T a2 と前記顕色開始温度T d2 とが、T d1 <T d2 <T a1 <T a2 の関係を有し、
初期状態において、前記第一のインクが呈色し前記第二のインクが消色しており、
温度T a1 以上になると前記第一のインクが消色し、
温度T d2 以下になると前記第二のインクが呈色すること、を特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項1に記載の温度履歴表示体であって、
前記第一のインク及び前記第二のインクは、ロイコ染料と顕色剤と消色剤とを含むことを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項2に記載の温度履歴表示体であって、
前記第一のインク及び前記第二のインクは、それぞれ樹脂被膜によってカプセル化されていることを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項2又は3に記載の温度履歴表示体であって、
前記示温材ごとに、前記第一のインク及び前記第二のインクに含まれる消色剤が異なることを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度履歴表示体であって、
前記示温材は、設定温度域を逸脱すると不可逆的に変色するインク層と、前記インク層と前記基材の間に配置される熱伝導層と、を備えることを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項5に記載の温度履歴表示体であって、
前記熱伝導層の熱伝導率は前記示温材ごとに異なることを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項5に記載の温度履歴表示体であって、
前記熱伝導層は前記示温材ごとに厚さが異なることを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の温度履歴表示体であって、
前記基材上に1次元コード又は2次元コードを備えることを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項8に記載の温度履歴表示体であって、
前記1次元コード又は2次元コードは、前記示温材の数、前記示温材の位置、前記示温材の前記設定温度域、前記示温材の前記設定温度域を逸脱してから色変化するまでの時間、のいずれかの情報を有することを特徴とする温度履歴表示体。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の温度履歴表示体を用いた物品の品質管理方法であって、
前記設定温度域を逸脱してから色変化するまでの時間は、物品の流通の各工程に対応するように設定され、
前記示温材の色変化の有無に基づいて、各工程で前記設定温度域を逸脱したか否かを判定する物品の品質管理方法。 - 請求項8又は9に記載の温度履歴表示体を用いた物品の品質管理方法であって、
前記設定温度域を逸脱してから色変化するまでの時間は、物品の流通の各工程に対応するように設定され、
前記1次元コード又は2次元コードを読取装置で読み取り、
読み取ったコードから得られる前記示温材に関するデータに基づいて前記示温材の色変化の有無を認識し、
前記示温材の色変化の有無に基づいて、各工程で前記設定温度域を逸脱したか否かを判定する物品の品質管理方法。 - 請求項10又は11に記載の物品の品質管理方法であって、
前記示温材の色変化を、カメラにより画像データ又は色の階調のデータとして取り込むことを特徴とする物品の品質管理方法。
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