以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は、各実施形態について、共通する箇所には共通の符号が付されており、第二実施形態以降は、重複する説明が省略されている。また、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第一実施形態>
図1に示すように、回転電機10は、固定子20と可動子30とを具備している。固定子20は、固定子巻線22を備えており、固定子巻線22は、固定子鉄心21に形成された複数のスロット21cに挿通されている。本実施形態の回転電機10は、8極60スロットの回転電機であり、毎極毎相スロット数は2.5である。つまり、本実施形態の固定子20は、毎極毎相スロット数が整数でない分数スロット構成で形成されている。
可動子30は、固定子20に対して移動(本実施形態では、「回転」に相当。以下、同じ。)可能に支持されている。また、可動子30は、極性の異なる一対の可動子磁極32a,32bを複数、可動子鉄心31に備えている。後述するように、本実施形態では、可動子鉄心31は、回転電機10の軸線方向に、二つの部位に形成されており、一つの部位あたり一対の可動子磁極32a,32bを4つ備えている。
ここで、固定子20に対する可動子30の移動方向を第一方向(矢印X方向)とする。また、固定子20と可動子30との対向方向を第二方向(矢印Y方向)とする。さらに、第一方向(矢印X方向)および第二方向(矢印Y方向)のいずれの方向に対しても直交する方向を第三方向(矢印Z方向)とする。図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、固定子20および可動子30が同軸に配されるラジアル空隙型の円筒状回転電機である。よって、第一方向(矢印X方向)は、回転電機10の周方向に相当する。また、第二方向(矢印Y方向)は、回転電機10の径方向に相当する。さらに、第三方向(矢印Z方向)は、回転電機10の軸線方向に相当する。
固定子鉄心21は、回転電機に用いられる公知の部材によって形成することができる。具体的には、固定子鉄心21は、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に、複数枚積層されて形成されている。固定子鉄心21は、ヨーク部21aと、ヨーク部21aと一体に形成される複数(本実施形態では、60個)のティース部21bとを備えている。
ヨーク部21aは、固定子鉄心21の周方向(第一方向(矢印X方向))に沿って延在しており、複数(60個)のティース部21bは、ヨーク部21aから回転電機10の軸心方向に向かって突出するように形成されている。隣接するティース部21b,21bの間には、スロット21cが形成されている。スロット21cは、固定子巻線22が挿通可能になっている。また、各ティース部21bの先端部21dは、固定子鉄心21の周方向(第一方向(矢印X方向))に沿って幅広に形成されており、固定子巻線22の脱落が抑制されている。なお、同図では、径方向(第二方向(矢印Y方向))のうち、スロット21cの底部側からスロット21cの開口部側に向かう方向を第二方向開口部側(矢印Y1方向)で示している。また、径方向(第二方向(矢印Y方向))のうち、スロット21cの開口部側からスロット21cの底部側に向かう方向を第二方向底部側(矢印Y2方向)で示している。
固定子巻線22は、回転電機に用いられる公知の部材によって形成することができる。具体的には、固定子巻線22は、例えば、銅などの導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。固定子巻線22の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線を用いることもできる。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて固定子巻線22に発生する渦電流損を低減することができ、回転電機10の効率が向上する。また、巻線成形に要する力を低減することができるので、成形性が向上して製作が容易になる。
本実施形態の固定子巻線22は、分数スロット構成の固定子20に巻装されていれば良く、巻装方式は限定されない。固定子巻線22は、例えば、公知の二層重巻によって巻装することができる。具体的には、図2に示すように、固定子巻線22は、径方向(第二方向(矢印Y方向))において、二層に形成する。図2は、図1に示す回転電機10の二磁極分(一磁極対分)の相配置の一例を示している。既述のとおり、本実施形態の回転電機10は、8極60スロット(可動子30の磁極数が8極、固定子20のスロット数が60スロット(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機))であり、図2は、三相の場合の一例を示している。また、同図では、三相のうちの電気角で120°ずつ位相がずれている相をU相、V相、W相で表している。また、U相は、例えば、U1相、U2相およびU3相を備えている。これらの相は、周方向(第一方向(矢印X方向))に1磁極ピッチずつ位相がずれており、同相(U相)ではあるが、固定子20上の配置が異なる。以上のことは、V相およびW相についても同様である。
また、同図では、固定子巻線22の通電方向関係は、アスタリスクの有無で表されている。具体的には、アスタリスクが付されている相は、アスタリスクが付されていない相に対して、固定子巻線22の通電方向が逆方向である。なお、本実施形態の回転電機10では、毎極毎相スロット数は、2.5である。そのため、周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する同相の数は、2と3とが交互に繰り返される。また、三相の固定子巻線22は、Y結線で接続することができ、Δ結線で接続することもできる。
可動子30は、固定子20の内方(回転電機10の軸心側)に設けられており、固定子20に対して移動可能(回転可能)に支持されている。また、可動子30は、可動子鉄心31を備えている。可動子鉄心31は、回転電機に用いられる公知の部材によって形成することができる。具体的には、可動子鉄心31は、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に、複数枚積層されており、円柱状に形成されている。
可動子30は、極性の異なる一対の可動子磁極32a,32bを複数、可動子鉄心31に備えている。具体的には、可動子鉄心31には、可動子鉄心31の周方向(第一方向(矢印X方向))に延在する磁石収容部(図示略)が設けられている。磁石収容部には、一つの部位あたり所定磁極数分(本実施形態では8極分)の永久磁石が埋設されており、永久磁石と固定子20に発生する回転磁界とによって、可動子30が回転可能になっている。なお、本明細書では、一対の可動子磁極32a,32bのうち、一方の極性(例えばN極)を備える可動子磁極(永久磁石)を可動子磁極32aで示し、他方の極性(例えばS極)を備える可動子磁極(永久磁石)を可動子磁極32bで示している。
永久磁石は、回転電機に用いられる公知の部材によって形成することができる。具体的には、永久磁石は、例えば、公知のフェライト系磁石や希土類系磁石を用いることができる。また、永久磁石の製法は、限定されない。永久磁石は、例えば、樹脂ボンド磁石や焼結磁石を用いることができる。樹脂ボンド磁石は、例えば、フェライト系の原料磁石粉末と樹脂などを混合して、射出成形などによって可動子鉄心31に鋳込めて形成される。焼結磁石は、例えば、希土類系の原料磁石粉末を磁界中でプレス成形して、高温で焼き固めて形成される。このように、永久磁石によって、可動子鉄心31に可動子磁極32a,32bが形成されている。
図3に示すように、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と、一つの位置部位42とを備えている。位置部位42は、基準部位41と軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に連接されており、基準部位41に対して周方向(第一方向(矢印X方向))に、ずらして配設されている。同図は、位置部位42が基準部位41に対して周方向(第一方向(矢印X方向))にずらして配設されていることを黒色の三角印で模式的に示している。また、本実施形態では、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。
基準部位41には、周方向(第一方向(矢印X方向))に等間隔に、一対の可動子磁極32a,32bが4つ設けられている。また、位置部位42には、周方向(第一方向(矢印X方向))に等間隔に、一対の可動子磁極32a,32bが二組、設けられている。このように、本実施形態の可動子鉄心31は、回転電機10の軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に二つの部位が形成されており、一つの部位あたり一対の可動子磁極32a,32bを二組、備えている。
図4は、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態を示す模式図である。同図では、円環状の固定子鉄心21が直線状に展開されて示されており、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))視の固定子鉄心21を示している。なお、同図では、ヨーク部21aおよび固定子巻線22は、図示が省略されており、各ティース部21bには固定子鉄心21に形成される磁極(以下、固定子磁極という。)の識別番号(以下、固定子磁極番号という。)が付されている。また、本明細書では、説明の便宜上、固定子磁極番号60と固定子磁極番号1との間のスロット21cの中央位置を可動子磁極32a,32bの位置基準(位置座標0)としている。
同図に示す可動子鉄心31は、円柱状の可動子鉄心31が直線状に展開されて示されており、径方向(第二方向(矢印Y方向))視の可動子鉄心31を示している。同図では、基準部位41および位置部位42にそれぞれ設けられる一対の可動子磁極32a,32bが1組ずつ図示されており、基準部位41および位置部位42にそれぞれ設けられる他の一対の可動子磁極32a,32bは、図示が省略されている。
本実施形態の回転電機10は、8極60スロットの回転電機であり、毎極スロット数は、7.5である。同図では、固定子20の基準等価間隔(基準位置P10と基準等価位置P11との間隔)は、固定子磁極ピッチ単位の毎極スロット数(本実施形態では、7.5)を四捨五入した整数(この場合、8)とする。同図は、基準等価間隔として、固定子磁極ピッチ単位「8」の固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態を示している。なお、固定子磁極番号4および固定子磁極番号12の各ティース部21bに付されている黒色丸印は、基準等価間隔となる固定子磁極の磁極中心位置を示している。また、同図では、基準等価位置P11のみが記載されているが、基準等価位置は、基準位置P10から、当該毎極スロット数を四捨五入した整数倍(この場合、8の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。基準等価位置では、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態がそれぞれ等価である。基準位置P10および基準等価位置P11の具体的な位置は、後述する。
ここで、同図に示す基準部位41に設けられる一対の可動子磁極32a,32bのうちの一方の可動子磁極32aを基準可動子磁極50aとし、他方の可動子磁極32bを基準可動子磁極50bとする。また、同図に示す位置部位42に設けられる一対の可動子磁極32a,32bのうちの一方の可動子磁極32aを第一可動子磁極51aとし、他方の可動子磁極32bを第一可動子磁極51bとする。
例えば、基準可動子磁極50aの周方向(第一方向(矢印X方向))両端部50a1,50a2のうちの一方の端部50a1(位置座標0)は、スロット21cの中央位置に対向している。これに対して、基準可動子磁極50aの周方向(第一方向(矢印X方向))両端部50a1,50a2のうちの他方の端部50a2(位置座標7.5)は、ティース部21bの中央位置に対向している。そのため、基準可動子磁極50aの磁極中心位置50a3(位置座標3.75)は、基準等価間隔となる固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号4のティース部21b)に対して、第一方向紙面右側(矢印X2方向)にずれて配設されている。
その結果、固定子磁極に作用する基準可動子磁極50aの径方向(第二方向(矢印Y方向))の電磁気的な吸引力分布(以下、単に、「基準可動子磁極50aの吸引力分布」ともいう。他の基準可動子磁極50b、第一可動子磁極51aおよび第一可動子磁極51b等についても同様とする。)は、図5の棒グラフで表される分布となる。図5は、参考形態に係る可動子磁極32a,32bの吸引力分布の一例を示す模式図である。参考形態の回転電機は、可動子鉄心31が基準部位41のみを備え、位置部位42を備えていない。
同図に示す棒グラフは、参考形態に係る可動子磁極32a,32b(基準可動子磁極50a,50b)の吸引力分布を示している。吸引力分布は、例えば、磁界解析によって取得することができ、以降の吸引力分布についても同様に取得することができる。また、実線L11は、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。同図に示すように、基準可動子磁極50aの吸引力分布のピーク値は、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号4のティース部21b)に対して、第一方向紙面右側(矢印X2方向)にずれている。このような磁極対向状態を磁極対向状態M10とする。
一方、図4に示す基準可動子磁極50bの周方向(第一方向(矢印X方向))両端部50b1,50b2のうちの一方の端部50b1(位置座標7.5)は、ティース部21bの中央位置に対向している。これに対して、基準可動子磁極50bの周方向(第一方向(矢印X方向))両端部50b1,50b2のうちの他方の端部50b2(位置座標15)は、スロット21cの中央位置に対向している。そのため、基準可動子磁極50bの磁極中心位置50b3(位置座標11.25)は、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号12のティース部21b)に対して、第一方向紙面左側(矢印X1方向)にずれて配設されている。
その結果、基準可動子磁極50bの吸引力分布は、図5の棒グラフで表される分布になる。実線L12は、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。同図に示すように、基準可動子磁極50bの吸引力分布のピーク値は、概ね、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号12のティース部21b)にある。このような磁極対向状態を磁極対向状態M11とする。
このように、1/2系列(毎極毎相スロット数2.5の小数部分0.5を既約分数で表した分類。詳細は、後述する。)の回転電機10では、二種類の磁極対向状態M10および磁極対向状態M11を備えており、二種類の吸引力分布を備えている。そのため、周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する可動子磁極32a,32b(基準可動子磁極50a,50b)は、互いに吸引力分布が異なる。その結果、可動子磁極32a,32b(基準可動子磁極50a,50b)の吸引力分布は、一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎(二磁極毎)に隔極で等価になる。以上のことは、他の可動子磁極32a,32bについても同様である。1/2系列の回転電機10では、互いに吸引力分布が異なる周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する一対の可動子磁極32a,32bを単位として、周方向(第一方向(矢印X方向))に平行移動させた状態で、多極化(本実施形態では、8極化)されている。
また、図5に示すように、二種類の吸引力分布(二種類の磁極対向状態M10および磁極対向状態M11)は、鏡面33に対して、概ね対称(鏡面対称)になっている。鏡面33は、径方向(第二方向(矢印Y方向))および軸線方向(第三方向(矢印Z方向))によって形成される仮想の基準面をいう。例えば、固定子磁極番号9のティース部21bの中央位置に形成される鏡面33を考える。このとき、可動子磁極32a,32b(基準可動子磁極50a,50b)の吸引力分布(磁極対向状態M10および磁極対向状態M11)は、鏡面33に対して、概ね対称(鏡面対称)になっている。そのため、実線L11を鏡面33に対して折り返すと、実線L12と概ね一致する。以上のことは、他の可動子磁極32a,32bについても同様である。なお、図5の破線L13は、実線L11を第一方向紙面右側(矢印X2方向)に一磁極ピッチ分、平行移動させたものを示している。
次に、可動子鉄心31が基準部位41のみを備え、位置部位42を備えていない参考形態における起振力について説明する。既述のとおり、図5に示す基準可動子磁極50aの吸引力分布のピーク値は、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号4のティース部21b)に対して、第一方向紙面右側(矢印X2方向)にずれている。一方、基準可動子磁極50bの吸引力分布のピーク値は、概ね、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号12のティース部21b)にある。そのため、図6に示すように、周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値の間隔は、第一区間SC1と第二区間SC2とが繰り返される。第二区間SC2は、第一区間SC1と比べて周方向(第一方向(矢印X方向))の距離が短く、周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する可動子磁極32a,32bの吸引力のピーク値の間隔が狭い。なお、同図に示す矢印の長さは、可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値の大きさを示しており、可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値は、略同一である。また、同図に示す数字は、固定子磁極番号の一部を示している。
可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値の分布は、図7で示すこともできる。同図では、可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値の分布を、周方向(第一方向(矢印X方向))において等ピッチ(第三区間SC3)の座標軸上で示している。同図に示す矢印の長さは、可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値の大きさを示している。また、同図に示す数字は、固定子磁極番号の一部を示している。この場合、可動子磁極32a,32bの吸引力のピーク値は、周方向(第一方向(矢印X方向))において異なり、第一位置PS1と第二位置PS2とが繰り返される。第二位置PS2は、第一位置PS1と比べて、可動子磁極32a,32bの吸引力のピーク値が大きい。
例えば、図6において、座標軸α1および座標軸β1を考える。座標軸α1は、固定子磁極番号1と固定子磁極番号2との間のスロット21cの中央位置を通り、径方向(第二方向(矢印Y方向))に延伸された座標軸を示している。座標軸β1は、固定子磁極番号9のティース部21bの中央位置を通り、径方向(第二方向(矢印Y方向))に延伸された座標軸を示している。図6および図7に示すように、座標軸α1と座標軸β1との間のなす角は、45°(機械角)であり、座標軸α1および座標軸β1は、等ピッチ(第三区間SC3)の座標軸を示している。
図7に示す座標軸α1上の吸引力F21は、図6に示す吸引力F11および吸引力F12から形成される。一方、図7に示す座標軸β1上の吸引力F22は、図6に示す吸引力F12および吸引力F13から形成される。そのため、例えば、吸引力F21は、吸引力F12の座標軸α1方向の成分の2倍となり、吸引力F22は、吸引力F12の座標軸β1方向の成分の2倍となる。
ピーク値が互いに異なる可動子磁極32a,32bの吸引力は、固定子鉄心21に対して、可動子磁極32a,32bの磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、回転8次)と比べて、より低次(本実施形態では、回転4次)の起振力の成分をもつ。図8に示すように、可動子磁極32a,32bの吸引力が固定子鉄心21に作用すると、固定子鉄心21の外周は、破線で示す形状に変形し易い。具体的には、吸引力が等価な場合、曲線21s8で示す八角形に変形し易い。一方、吸引力のピーク値が一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎(二磁極毎)に隔極で等価になる場合、曲線21s4で示す四角形に変形し易い。なお、同図は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))視の固定子鉄心21の外周形状を示しており、変形前の固定子鉄心21の外周形状を実線で示し、変形後の固定子鉄心21の外周形状を破線(既述の曲線21s8、曲線21s4)で示している。また、基準位置PS0は、周方向(第一方向(矢印X方向))の基準位置を示している。
参考形態の回転電機10が一定速度、かつ、一定トルクで駆動しているときのある瞬間の固定子鉄心21の外周の径方向(第二方向(矢印Y方向))の変位量(以下、「固定子鉄心21の静的変位量」という。)は、例えば、図9で示される。同図の横軸は、図8の基準位置PS0を0°としたときの機械角を示している。また、同図の縦軸は、図8の実線で示す固定子鉄心21の静的変形量を0としたときの図8の破線(曲線21s4)で示す固定子鉄心21の静的変位量を示している。
同図に示すように、参考形態の回転電機10では、固定子鉄心21の静的変位量は、第一位置PS1および第二位置PS2において、それぞれ極大となるが、第二位置PS2における固定子鉄心21の静的変位量は、第一位置PS1と比べて、大きくなっている。また、第一位置PS1と第二位置PS2とが繰り返されるので、固定子鉄心21の静的変位量は、大きさが異なる二種類のピーク値(極大値)が生じている。直線L21は、第一位置PS1における固定子鉄心21の静的変位量のピーク値を示している。また、直線L22は、第二位置PS2における固定子鉄心21の静的変位量のピーク値を示している。
このように、1/2系列の回転電機10では、固定子鉄心21の静的変位量は、大きさが異なる二種類のピーク値が生じる。そのため、1/2系列の回転電機10は、回転4次の起振力の成分を備える。回転4次の起振力は、一磁極対(二磁極)を単位として繰り返され、周方向(第一方向(矢印X方向))の一周において、固定子鉄心21の静的変位量は、4つのピーク値が生じる。なお、固定子20が整数スロット構成で形成された8極の回転電機10では、回転8次の起振力の成分を備える。回転8次の起振力は、可動子磁極32a,32bの磁極数(この場合、8極)に依拠し、一磁極を単位として繰り返され、周方向(第一方向(矢印X方向))の一周において、固定子鉄心21の静的変位量は、8つのピーク値が生じる。
固定子20が分数スロット構成で形成された回転電機10では、可動子磁極32a,32bの磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、回転8次)の起振力と比べて、より低次(本実施形態では、回転4次)の起振力の成分を備える。そのため、駆動回転数が広範囲に亘る回転電機10では、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数が、駆動回転数範囲内に生じ易くなる。その結果、固定子20の共振が発生し、回転電機10の駆動時に発生する騒音や振動などが増大する可能性がある。
本実施形態の回転電機10によれば、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と位置部位42とを備えている。また、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。これらにより、本実施形態の回転電機10は、吸引力分布を整数スロット構成と同程度(本実施形態では、回転8次)まで高次化し、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、駆動回転数範囲外に設定することが可能である。つまり、本実施形態の回転電機10は、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減することができる。以下、図4、図5および図10A〜図10Cを参照しつつ具体的に説明する。
図10Aに示すように、基準可動子磁極50a,50bの吸引力分布は、各吸引力が全体に小さくなっている以外は、図5に示す吸引力分布と同等の分布になっている。実線L31aおよび破線L31bは、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。実線L31aは、図5に示す実線L11に相当し、破線L31bは、図5に示す実線L12に相当する。
位置部位42は、基準部位41と軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に連接されており、基準部位41に対して周方向(第一方向(矢印X方向))に、ずらして配設されている。また、本実施形態では、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。これにより、図4に示すように、第一可動子磁極51a,51bは、周方向(第一方向(矢印X方向))において、基準可動子磁極50a,50bに対して、1/2磁極ピッチずらして配設される。
具体的には、第一可動子磁極51aの周方向(第一方向(矢印X方向))両端部51a1,51a2のうちの一方の端部51a1(位置座標0.5)は、ティース部21bの中央位置に対向している。第一可動子磁極51aの周方向(第一方向(矢印X方向))両端部51a1,51a2のうちの他方の端部51a2(位置座標8.0)は、スロット21cの中央位置に対向している。また、第一可動子磁極51aの磁極中心位置51a3(位置座標4.25)は、固定子磁極番号5のティース部21bに対して、第一方向紙面左側(矢印X1方向)にずれて配設されている。
よって、第一可動子磁極51aの磁極対向状態は、既述の基準可動子磁極50bの磁極対向状態である磁極対向状態M11と同等である。つまり、第一可動子磁極51aの吸引力分布は、基準可動子磁極50bの吸引力分布と等価になる。図4では、第一可動子磁極51aと基準可動子磁極50bとが矢印で結ばれている。矢印は、一方の可動子磁極(例えば、第一可動子磁極51a)を周方向(第一方向(矢印X方向))に平行移動させると、吸引力分布が等価な他方の可動子磁極(例えば、基準可動子磁極50b)と一致することを示している。以下、二つの可動子磁極を結ぶ矢印は、同様の関係を示すものとする。
また、図10Bに示すように、第一可動子磁極51aの吸引力分布は、図10Aに示す基準可動子磁極50bの吸引力分布と同等の分布になっている。図10Bに示す破線L32bは、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。破線L32bは、図10Aに示す破線L31bに相当する。基準可動子磁極50aの吸引力分布と、第一可動子磁極51aの吸引力分布とを重ね合わせる(固定子磁極毎に二種類の吸引力を加算する)と、基準可動子磁極50aおよび第一可動子磁極51aの吸引力分布は、図10Cで示される吸引力分布になる。図10Cに示す実線L33aは、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。これは、基準可動子磁極50aの吸引力分布と、第一可動子磁極51aの吸引力分布とが混成されて、吸引力分布が平均化されることを示している。
以上のことは、基準可動子磁極50bの吸引力分布と、第一可動子磁極51bの吸引力分布とが重ね合わされた場合も同様である。基準可動子磁極50bは、周方向(第一方向(矢印X方向))において基準可動子磁極50aに隣接し、第一可動子磁極51bは、周方向(第一方向(矢印X方向))において第一可動子磁極51aに隣接している。さらに、周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する他の可動子磁極32a,32bについても同様である。なお、図10Bに示す実線L32aは、棒グラフで表された第一可動子磁極51bの固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。実線L32aは、図10Aに示す実線L31aに相当する。また、図10Cに示す破線L33bは、図5に示す破線L13に相当する。さらに、図5並びに図10Aおよび図10Bに示す破線で囲まれた領域は、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の対向状態の相違を示している。
本実施形態の回転電機10によれば、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と位置部位42とを備えている。また、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。これにより、本実施形態の回転電機10は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に隣接する可動子磁極32a(例えば、基準可動子磁極50aおよび第一可動子磁極51a)の径方向(第二方向(矢印Y方向))の電磁気的な吸引力分布が混成されて、当該吸引力分布を平均化することができる。このことは、可動子磁極32b(例えば、基準可動子磁極50bおよび第一可動子磁極51b)についても同様である。その結果、可動子磁極32a,32bの吸引力分布は、可動子磁極32a,32bの毎極において、等価な状態に近づく。
具体的には、図11に示すように、可動子磁極32a,32bの吸引力の各ピーク値は、略同一になり、かつ、周方向(第一方向(矢印X方向))において等ピッチになる。吸引力のピーク値の間隔は、既述の第三区間SC3と同じであり、吸引力の各ピーク値の位置は、同図では、第三位置PS3で示されている。また、図12に示すように、固定子鉄心21の静的変位量のピーク値は、均一化される。つまり、回転4次の起振力の成分が低減されて、回転8次の起振力の成分が増加している。なお、図12に示す直線L41は、固定子鉄心21の静的変位量のピーク値を示している。
このように、本実施形態の回転電機10は、可動子磁極32a,32bの磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、回転8次)の起振力と比べて、より低次(本実施形態では、回転4次)の起振力の成分を低減して、可動子磁極32a,32bの磁極数に依拠する次数の起振力の成分を増大させることができる。したがって、本実施形態の回転電機10は、吸引力分布を整数スロット構成と同程度(本実施形態では、回転8次)まで高次化し、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、駆動回転数範囲外に設定することが可能である。つまり、本実施形態の回転電機10は、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減することができる。
ここで、毎極毎相スロット数を帯分数で表したときの整数部分を整数部aとし、帯分数の真分数部分を既約分数で表したときの分子部分を分子部b、分母部分を分母部cとする。本実施形態では、毎極毎相スロット数が2.5であり、整数部aは2、分子部bは1、分母部cは2である。また、回転電機10は、毎極毎相スロット数を帯分数で表したときの分子部bおよび分母部cを用いて、b/c系列の回転電機10と表記することにする。本実施形態の回転電機10は、1/2系列の回転電機10である。
さらに、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減可能な基準部位41に対する位置部位42の平均スキュー量を第一平均スキュー量Sav1とする。但し、図3に示すように、積層厚t10および積層厚t11は、均等とする。積層厚t10は、基準部位41の軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の積層厚をいい、積層厚t11は、位置部位42の軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の積層厚をいう。後述する実施形態のように、位置部位42を複数備える場合は、基準部位41および各位置部位42の積層厚は、いずれも均等とする。また、第一平均スキュー量Sav1は、基準部位41のスキュー量を0として、基準部位41のスキュー量0を含めて算出する。さらに、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。
本実施形態の回転電機10では、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。よって、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4(=(0+1/2)/2)である。また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および位置部位42のスキュー量は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、0、1/2で表される。
なお、図4では、基準可動子磁極50aの磁極中心位置50a3(位置座標3.75)は、基準位置P10で示されている。また、基準位置P10から、固定子磁極ピッチ単位(本実施形態では、8磁極ピッチであり、既述の基準等価間隔)分、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に離れた位置は、基準等価位置P11で示されている。基準可動子磁極50a,50bおよび第一可動子磁極51a,51bの各磁極中心位置は、基準位置P10または基準等価位置P11を基準にした変位で示すことができ、同図では、磁極ピッチ(分数表示)で表されている。例えば、第一可動子磁極51aの磁極中心位置51a3(位置座標4.25)は、基準位置P10(位置座標3.75)から1/2磁極ピッチ分、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に変位している。
同図では、基準位置P10または基準等価位置P11からの変位方向(基準可動子磁極50a,50bおよび第一可動子磁極51a,51bの各磁極中心方向)が矢印で示されている。また、基準可動子磁極50a,50bの各磁極中心位置および各両端部位置、並びに、第一可動子磁極51a,51bの各磁極中心位置および各両端部位置が括弧内の数値で示されている。さらに、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態(磁極対向状態M10または磁極対向状態M11)が、括弧内に示されている。また、可動子磁極32a,32b内の矢印は、可動子磁極32a,32bの極性の相違を示している。図4の記載方法について既述した以上のことは、後述する実施形態においても同様である。なお、記載スペースの都合上、可動子磁極32a,32bの各磁極中心位置および各両端部位置は、括弧内の数値のみで示す場合がある。
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態と比べて、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量が異なる。以下、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13Aに示す曲線L51は、基準部位41に設けられる可動子磁極32a,32bと、固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)の波形の一例を示している。一方、図13Bに示す曲線L52は、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量が固定子磁極ピッチ単位で1/4のときに、位置部位42に設けられる可動子磁極32a,32bと、固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)の波形の一例を示している。各図の横軸は、機械角を示し、各図の縦軸は、トルクリップル(コギングトルク)の大きさを示している。また、各図では、トルクリップル(コギングトルク)の極大値と極小値との差をトルクリップル(コギングトルク)の最大値で示している。
回転電機10のトルクリップルは、回転電機10の出力トルクに生じる脈動であり、例えば、固定子磁極または可動子磁極32a,32bの不均一、可動子30の偏心、スロット開口部の空隙に生じる磁気的な不連続性に起因して発生する。トルクリップルの一例として、例えば、コギングトルク、スロットリップル、ポールリップルなどが挙げられる。コギングトルクは、無通電時に、固定子磁極と可動子磁極との間の電磁気的な吸引力の周方向(第一方向(矢印X方向))の成分に基づいて発生する。既述のとおり、固定子20が分数スロット構成で形成された回転電機10では、周方向(第一方向(矢印X方向))において、異なる磁極対向状態が繰り返されるので、コギングトルクは、固定子20が整数スロット構成で形成された回転電機と比べて、減少する傾向にある。本実施形態では、コギングトルクの増減に合わせて、トルクリップルが増減する傾向にあるので、コギングトルクを更に低減することにより、トルクリップルの更なる低減を図ることにする。
コギングトルクの周期は、固定子磁極の磁極数(スロット数)と可動子磁極32a,32bの磁極数とによって決まる。具体的には、本実施形態の回転電機10は、8極60スロットの回転電機であるので、コギングトルクの一周期は、360°(機械角)を固定子磁極の磁極数60と可動子磁極の磁極数8との最小公倍数120で除した値3°(機械角)になる。コギングトルクの一周期に相当する3°(機械角)は、1/2磁極ピッチ分に相当する。
本実施形態の回転電機10では、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。1/4磁極ピッチは、コギングトルクの半周期分に相当する。これにより、基準部位41に設けられる可動子磁極32a,32bと固定子磁極との間で生じるコギングトルク(図13Aに示す曲線L51)と、位置部位42に設けられる可動子磁極32a,32bと固定子磁極との間で生じるコギングトルク(図13Bに示す曲線L52)とが重ね合わされ、互いに打ち消し合ってコギングトルクが低減される。
ここで、回転電機10のトルクリップルを低減可能な基準部位41に対する位置部位42の平均スキュー量を第二平均スキュー量Sav2とする。但し、第一実施形態と同様に、積層厚t10および積層厚t11は、均等とする。また、第二平均スキュー量Sav2は、基準部位41のスキュー量を0として、基準部位41のスキュー量0を含めて算出する。さらに、第二平均スキュー量Sav2は、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。
本実施形態の回転電機10によれば、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。よって、第二平均スキュー量Sav2は、固定子磁極ピッチ単位で、1/8(=(0+1/4)/2)である。また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および位置部位42のスキュー量は、0、1/4で表される。
これにより、本実施形態の回転電機10は、基準部位41に設けられる可動子磁極32a,32bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)と、位置部位42に設けられる可動子磁極32a,32bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)とが重ね合わされ、互いに打ち消し合ってトルクリップル(コギングトルク)が低減される。また、本実施形態の回転電機10は、最少種類(二種類)、かつ、最小量のスキュー量で、トルクリップル(コギングトルク)を低減することができる。そのため、本実施形態の回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
<第三実施形態>
本実施形態は、第一実施形態と比べて、位置部位42の数が異なり、基準部位41に対する位置部位42の各スキュー量が異なる。以下、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と、複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42を備えている。図14では、複数(3つ)の位置部位42は、第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42cで示されている。図14は、図4に対応している。図14は、既述の図4と同様に図示されており、重複する説明を省略する。
基準部位41は、第一実施形態で既述の基準部位41と同様であり、基準部位41に設けられる一対の可動子磁極32a,32bを基準可動子磁極50a,50bとする。また、第一位置部位42aは、第一実施形態で既述の位置部位42と同様であり、第一位置部位42aに設けられる一対の可動子磁極32a,32bを第一可動子磁極51a,51bとする。さらに、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。よって、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態と同様に、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減することができる。
また、第二位置部位42bに設けられる一対の可動子磁極32a,32bを第二可動子磁極52a,52bとする。第二位置部位42bは、基準部位41に対するスキュー量が固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。第二実施形態で既述のとおり、1/4磁極ピッチは、コギングトルクの半周期分に相当する。これにより、基準部位41に設けられる基準可動子磁極50a,50bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)と、第二位置部位42bに設けられる第二可動子磁極52a,52bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)とが重ね合わされ、互いに打ち消し合ってトルクリップル(コギングトルク)が低減される。
第三位置部位42cに設けられる一対の可動子磁極32a,32bを第三可動子磁極53a,53bとする。第三位置部位42cは、基準部位41に対するスキュー量が固定子磁極ピッチ単位で、3/4に設定されている。第一位置部位42aと第三位置部位42cとの間のスキュー量(スキュー量の差分)は、1/4磁極ピッチであり、コギングトルクの半周期分に相当する。これにより、第一位置部位42aに設けられる第一可動子磁極51a,51bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)と、第三位置部位42cに設けられる第三可動子磁極53a,53bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)とが重ね合わされ、互いに打ち消し合ってトルクリップル(コギングトルク)が低減される。
本実施形態の回転電機10によれば、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と、複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42とを備えている。また、複数の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)の基準部位41に対する各スキュー量は、上述のスキュー量に設定されている。よって、本実施形態の回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方、並びに、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)の両方を低減することができる。
ここで、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方、並びに、回転電機10のトルクリップルの両方を低減可能な基準部位41に対する複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)の平均スキュー量を第三平均スキュー量Sav3とする。但し、第一実施形態と同様に、積層厚t10および積層厚t11は、均等とする。本実施形態では、複数(3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)を備えるので、基準部位41並びに第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42cの各積層厚は、いずれも均等とする。また、第三平均スキュー量Sav3は、基準部位41のスキュー量を0として、基準部位41のスキュー量0を含めて算出する。さらに、第三平均スキュー量Sav3は、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。
本実施形態の回転電機10では、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。また、基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。さらに、基準部位41に対する第三位置部位42cのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、3/4に設定されている。よって、第三平均スキュー量Sav3は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8(=(0+1/2+1/4+3/4)/4)である。
また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4で表される。さらに、上記スキュー量は、第一組のスキュー量と、第二組のスキュー量とを組み合わせたスキュー量で表されている。第一組のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、1/2で表される。また、第二組のスキュー量は、第一組の各スキュー量に1/4磁極ピッチを加算して得られる。つまり、第二組のスキュー量は、昇順に列挙したときに、1/4、3/4で表される。
これにより、本実施形態の回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減、並びに、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)の低減の両立を図ることが容易である。つまり、本実施形態の回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減可能な第一組の各スキュー量に、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)を低減可能なスキュー量(本実施形態では、1/4磁極ピッチ)を加算することにより、容易に第二組の各スキュー量を設定することができる。
なお、図14の破線で囲まれる領域で示すように、本実施形態では、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態は、四種類ある。同図では、基準可動子磁極50aの磁極対向状態は、磁極対向状態M20で示され、第一可動子磁極51aの磁極対向状態は、磁極対向状態M22で示されている。また、第二可動子磁極52aの磁極対向状態は、磁極対向状態M21で示され、第三可動子磁極53aの磁極対向状態は、磁極対向状態M23で示されている。さらに、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P20と等価な等価位置は、基準等価位置P21で示されている。
同図に示すように、本実施形態の回転電機10は、一磁極毎に、四種類の磁極対向状態を一つずつ備えるので、可動子磁極32a,32bの吸引力分布が一磁極毎に重ね合わされ、混成されて、平均化することができる。その結果、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方が低減される。また、既述のとおり、トルクリップル(コギングトルク)を互いに打ち消し合うことが可能な対(基準可動子磁極50aと第二可動子磁極52a)を備えており、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)も低減される。このことは、第一可動子磁極51aと第三可動子磁極53aの対についても同様である。
なお、第二可動子磁極52bの磁極対向状態は、第三可動子磁極53aの磁極対向状態M23と等価である。具体的には、第二可動子磁極52bの周方向(第一方向(矢印X方向))の一方の端部52b1は、位置座標が7.75である。第三可動子磁極53aの周方向(第一方向(矢印X方向))の一方の端部53a1は、位置座標が0.75である。よって、位置座標の小数点以下が一致している。また、第二可動子磁極52bの周方向(第一方向(矢印X方向))の他方の端部52b2は、位置座標が15.25である。第三可動子磁極53aの周方向(第一方向(矢印X方向))の他方の端部53a2は、位置座標が8.25である。よって、位置座標の小数点以下が一致している。つまり、第二可動子磁極52bの磁極対向状態は、第三可動子磁極53aの磁極対向状態M23と等価である。
<第四実施形態>
本実施形態は、第三実施形態と比べて、複数(3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)の一部のスキュー量が異なる。以下、第三実施形態と異なる点を中心に説明する。
図14に示すように、第三実施形態では、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されており、基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。一方、図15に示すように、本実施形態では、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されており、基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。基準部位41に対する第三位置部位42cのスキュー量は、いずれの実施形態においても、固定子磁極ピッチ単位で、3/4に設定されている。なお、図15は、図4および図14に対応している。図15は、既述の図4および図14と同様に図示されており、重複する説明を省略する。
このように、本実施形態の基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、第三実施形態で既述した基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量と一致する。また、本実施形態の基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、第三実施形態で既述した基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量と一致する。よって、本実施形態の回転電機10は、一磁極毎に、第三実施形態で既述した四種類の磁極対向状態を一つずつ備える。また、本実施形態の回転電機10は、トルクリップル(コギングトルク)を互いに打ち消し合うことが可能な対(基準可動子磁極50aと第一可動子磁極51a)を備える。このことは、第二可動子磁極52aと第三可動子磁極53aの対についても同様である。したがって、本実施形態の回転電機10は、第三実施形態で既述の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
次に、隣接スキュー量総和Sadを考える。隣接スキュー量総和Sadは、複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)の基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量の総和をいう。但し、複数の位置部位42の数(本実施形態では、3つ)が多くなる程、隣接スキュー量総和Sadは、増大するので、複数の位置部位42の数は、同じ条件とする。例えば、第三実施形態では、基準部位41と、基準部位41に隣接する第一位置部位42aとの間のスキュー量は、1/2磁極ピッチである。また、第一位置部位42aと、第一位置部位42aに隣接する第二位置部位42bとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。さらに、第二位置部位42bと、第二位置部位42bに隣接する第三位置部位42cとの間のスキュー量は、1/2磁極ピッチである。よって、第三実施形態の隣接スキュー量総和Sadは、5/4(=1/2+1/4+1/2)磁極ピッチである。
一方、本実施形態では、基準部位41と、基準部位41に隣接する第一位置部位42aとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。また、第一位置部位42aと、第一位置部位42aに隣接する第二位置部位42bとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。さらに、第二位置部位42bと、第二位置部位42bに隣接する第三位置部位42cとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。よって、本実施形態の隣接スキュー量総和Sadは、3/4(=1/4+1/4+1/4)磁極ピッチである。この隣接スキュー量総和Sadは、複数の位置部位42の数が同じ条件(3つ)のときの最小値である。
このように、本実施形態の回転電機10は、複数の位置部位42の数が同じ条件(本実施形態では、3つ)のときに、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量の総和(隣接スキュー量総和Sad)が最小になっている。これにより、本実施形態の回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。なお、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)のスキュー量は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4で表される。
逆に、複数の位置部位42の数が3つのときに、隣接スキュー量総和Sadが最大になる場合を考える。例えば、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数(3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)のスキュー量が、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、1/4、3/4、0、1/2で表される第一変形形態を考える。このとき、隣接スキュー量総和Sadは、7/4(=1/2+3/4+1/2)磁極ピッチである。この隣接スキュー量総和Sadは、複数の位置部位42の数が同じ条件(3つ)のときの最大値である。
第一変形形態の回転電機10では、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量に含まれる騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減するのに適したスキュー量(この場合、1/2系列の回転電機10であり、固定子磁極ピッチ単位で、1/2磁極ピッチ)の数は、二つであり、複数の位置部位42の数が同じ条件(この場合、3つ)のときに、当該スキュー量の数は、最大になっている。このことは、第三実施形態の回転電機10についても同様である。そのため、第一変形形態の回転電機10および第三実施形態の回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果を最大化することができる。
<1/2系列の回転電機10の特性>
1/2系列の回転電機10(8極60スロットの場合)の特性について、図16A〜図16Dを参照しつつ説明する。図16A〜図16Dの各横軸は、平均スキュー量(機械角)を示している。図16A〜図16Dの各縦軸は、平均スキュー量が0のときの値を100%としたときの比率を示している。また、曲線L61は、固定子鉄心21の対象共振次数の外周変形量の特性を示している。対象共振次数は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方が問題となる共振次数をいう。固定子鉄心21の外周変形量が低減される程、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果が向上する。曲線L62は、回転電機10の通電時のトルクリップルの最大値の特性を示している。曲線L63は、回転電機10のコギングトルクの特性を示している。曲線L64は、回転電機10の出力トルクの最大値の特性を示している。なお、これらの特性は、第一実施形態で既述した回転電機10(可動子鉄心31が基準部位41と、一つの位置部位42とを備える)において、平均スキュー量を変更して取得した特性を示している。
図16Aの曲線L61に示すように、固定子鉄心21の外周変形量は、平均スキュー量の増加とともに低減され、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方も低減される。平均スキュー量が1/4磁極ピッチ(機械角で1.5°)のとき、固定子鉄心21の外周変形量が最小になり、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方は、最も低減される。この平均スキュー量は、第一実施形態で既述の第一平均スキュー量Sav1と一致する。平均スキュー量が1/4磁極ピッチ(機械角で1.5°)より大きくなると、固定子鉄心21の外周変形量は、増加に転じ、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果は、小さくなる。
図16Bの曲線L62に示すように、回転電機10のトルクリップルの最大値は、平均スキュー量の増加とともに低減され、平均スキュー量が1/8磁極ピッチ(機械角で0.75°)付近のとき、1回目の極小値になる。この平均スキュー量は、第二実施形態で既述の第二平均スキュー量Sav2と一致する。平均スキュー量が1/8磁極ピッチ(機械角で0.75°)付近より大きくなると、回転電機10のトルクリップルの最大値は、増加に転じ、その後、減少に転じる。そして、平均スキュー量が5/16磁極ピッチ(機械角で1.875°)のとき、回転電機10のトルクリップルの最大値は、2回目の極小値になる。平均スキュー量が5/16磁極ピッチ(機械角で1.875°)より大きくなると、回転電機10のトルクリップルの最大値は、再び増加に転じる。
図16Cの曲線L63に示すように、回転電機10のコギングトルクは、図16Bの曲線L62で示す特性と概ね同様の特性を備えている。但し、平均スキュー量が3/8磁極ピッチ(機械角で2.25°)のとき、回転電機10のコギングトルクは、2回目の極小値になっている。
図16Dの曲線L64に示すように、回転電機10の出力トルクの最大値は、平均スキュー量が1/8磁極ピッチ(機械角で0.75°)までは、略一定である。そして、平均スキュー量が1/8磁極ピッチ(機械角で0.75°)より大きくなると、回転電機10の出力トルクの最大値は、次第に減少している。
また、図16A〜図16Dのアスタリスクは、第三実施形態の回転電機10の各特性を示している。図16A〜図16Dのクロスは、第四実施形態の回転電機10の各特性を示している。図16A〜図16Dの三角印は、第二変形形態の回転電機10の各特性を示している。図16A〜図16Dのプラスは、第三変形形態の回転電機10の各特性を示している。
第二変形形態の回転電機10は、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および3つの位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)のスキュー量が、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、1/4、0、1/2、3/4で表される。第二変形形態の回転電機10は、基準部位41の積層厚t10および三つの位置部位42の積層厚t11,t11,t11がいずれも均等である。
一方、第三変形形態の回転電機10は、第一実施形態と同様に、位置部位42を一つ備えるが、基準部位41の積層厚t10と位置部位42の積層厚t11とが不均等である。そのため、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、第一実施形態と異なる。具体的には、第三変形形態の回転電機10は、基準部位41の積層厚t10を1としたときに、位置部位42の積層厚t11が1.5に設定されている。また、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、5/12に設定されている。
図16Aに示すように、平均スキュー量が1/4磁極ピッチ(機械角で1.5°)より大きくなっても、アスタリスクで示す第三実施形態の回転電機10は、固定子鉄心21の外周変形量が増加せず、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果は、維持される。また、三角印で示す第二変形形態の回転電機10は、第三実施形態の回転電機10と比べて、固定子鉄心21の外周変形量が若干増加し、上記低減効果は、若干低下する。さらに、クロスで示す第四実施形態の回転電機10は、第二変形形態の回転電機10と比べて、固定子鉄心21の外周変形量が若干増加し、上記低減効果は、さらに低下する。つまり、第三実施形態の回転電機10は、これらの中で、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果が最も高い。これは、第三実施形態の回転電機10は、上述の形態の中で、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量に含まれる騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減するのに適したスキュー量(この場合、1/2系列の回転電機10であり、固定子磁極ピッチ単位で、1/2磁極ピッチ(機械角で3°))の数が最大になっていることによる。
図16Bに示すように、平均スキュー量が5/16磁極ピッチ(機械角で1.875°)より大きくなっても、アスタリスクで示す第三実施形態の回転電機10は、トルクリップルの最大値が若干増加しているが、回転電機10のトルクリップルの低減効果は、維持される。このことは、三角印で示す第二変形形態の回転電機10についても同様であり、クロスで示す第四実施形態の回転電機10についても同様である。
図16Cに示すように、アスタリスクで示す第三実施形態の回転電機10は、平均スキュー量が3/8磁極ピッチ(機械角で2.25°)のときに、コギングトルクが最小になっている。この平均スキュー量は、第三実施形態で既述の第三平均スキュー量Sav3と一致する。このことは、三角印で示す第二変形形態の回転電機10についても同様であり、クロスで示す第四実施形態の回転電機10についても同様である。
図16Dに示すように、アスタリスクで示す第三実施形態の回転電機10は、平均スキュー量が3/8磁極ピッチ(機械角で2.25°)のときに、曲線L64で示す第一実施形態の回転電機10と比べて、出力トルクの最大値が低下している。一方、三角印で示す第二変形形態の回転電機10は、平均スキュー量が3/8磁極ピッチ(機械角で2.25°)のときに、曲線L64で示す第一実施形態の回転電機10の出力トルクの最大値と同等になっている。また、クロスで示す第四実施形態の回転電機10は、平均スキュー量が3/8磁極ピッチ(機械角で2.25°)のときに、曲線L64で示す第一実施形態の回転電機10と比べて、出力トルクの最大値の低下が抑制されている。これは、第四実施形態の回転電機10は、上述の形態の中で、隣接スキュー量総和Sadが最小になっていることによる。
また、図16A〜図16Dにおいて、プラスで示す第三変形形態の回転電機10のように、積層厚t10および積層厚t11は、不均等にすることもできる。ここで、基準部位41および一つまたは複数の位置部位42のうちの一の部位iのスキュー量をスキュー量Siとし、部位iの積層厚を積層厚tiとする。このとき、平均スキュー量は、スキュー量Siと積層厚tiとを乗じて、すべての部位について加算した総和を積層厚の合計で除した値になる。例えば、第一実施形態の回転電機10において、基準部位41の積層厚t10を1とし、位置部位42の積層厚t11を1とする。また、基準部位41のスキュー量を0°とし、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量を3°とする。このとき、平均スキュー量は、1.5°(=(0+(1×3))/(1+1))となる。角度は、いずれも機械角である。
一方、図16A〜図16Dにおいて、プラスで示す第三変形形態の回転電機10では、基準部位41の積層厚t10を1とし、位置部位42の積層厚t11を1.5とする。また、基準部位41のスキュー量を0°とし、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量を2.5°とする。このとき、平均スキュー量は、1.5°(=(0+(1.5×2.5))/(1+1.5))となり、第一実施形態の回転電機10の平均スキュー量と同じになる。その結果、図16A〜図16Dに示すように、プラスで示す第二変形形態の回転電機10は、第一実施形態の回転電機10と同等の特性を得ることができる。以上のことは、後述する実施形態においても同様であり、1/c系列の回転電機10においても同様である。
このように、基準部位41の積層厚t10および位置部位42の積層厚t11が変わると、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量が変わる。そのため、本明細書では、基準部位41、および、一つまたは複数の位置部位42の軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の各積層厚が均等のときの平均スキュー量(第一平均スキュー量Sav1、第二平均スキュー量Sav2、第三平均スキュー量Sav3)を規定している。換言すれば、積層厚t10および積層厚t11が不均等の場合、既述の関係に基づいて、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量を設定し、平均スキュー量(第一平均スキュー量Sav1、第二平均スキュー量Sav2、第三平均スキュー量Sav3)を算出すれば良い。
<第五実施形態>
本実施形態は、第一実施形態と比べて、毎極毎相スロット数が異なる。以下、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
図17に示すように、本実施形態の回転電機10は、8極30スロットの回転電機であり、毎極毎相スロット数が1.25である。つまり、本実施形態の回転電機10は、1/4系列の回転電機10である。図17は、図4に対応している。図17は、既述の図4と同様に図示されており、重複する説明を省略する。但し、本実施形態では、毎極スロット数は、3.75である。同図では、固定子20の基準等価間隔は、固定子磁極ピッチ単位の毎極スロット数(本実施形態では、3.75)を四捨五入した整数(この場合、4)とする。同図は、基準等価間隔として、固定子磁極ピッチ単位「4」の固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態を示している。また、第一実施形態と同様に、固定子磁極番号2、固定子磁極番号6、固定子磁極番号10および固定子磁極番号14の各ティース部21bに付されている黒色丸印は、基準等価間隔となる固定子磁極の磁極中心位置を示している。
同図では、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P30と等価な等価位置は、基準等価位置P31,P32,P33で示されている。基準等価位置P31,P32,P33は、基準位置P30から、毎極スロット数を四捨五入した整数倍(この場合、4の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。また、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P40と等価な等価位置は、基準等価位置P41,P42で示されている。基準等価位置P41,P42は、基準位置P40から、毎極スロット数を四捨五入した整数倍(この場合、4の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。
ここで、基準位置P30および基準位置P40の関係について説明する。本実施形態の回転電機10は、1/4系列の回転電機10であるので、磁極対向状態の一周期は、二磁極対分(四磁極分)になる。基準位置P30から、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に、二磁極対分(四磁極分)移動した点を移動点MP1とする。同図に示すように、移動点MP1は、固定子磁極番号18に存在する。基準位置P40は、固定子磁極番号18に存在する基準等価位置(移動点MP1)を、固定子磁極番号2の近傍の等価位置に移動させたものである。具体的には、基準位置P40は、基準位置P30から、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に、1磁極ピッチ分、移動した点である。当該1磁極ピッチ分は、基準等価間隔(本実施形態では、4磁極ピッチ)を4倍(二磁極対分(四磁極分))した16磁極ピッチから、可動子磁極32a,32bの二磁極対分(四磁極分)に対向する固定子磁極数15を減じて得られる。
同図に示すように、基準部位41に設けられる周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを基準可動子磁極50a,50b,50c,50dとする。1/4系列の回転電機10では、四種類の磁極対向状態(磁極対向状態M30、磁極対向状態M31、磁極対向状態M32および磁極対向状態M33)を備えており、四種類の吸引力分布を備えている。そのため、周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32b(基準可動子磁極50a,50b,50c,50d)は、互いに吸引力分布が異なる。その結果、可動子磁極32a,32bの吸引力分布は、一磁極毎には等価にならず、二磁極対毎(四磁極毎)に等価になる。
以上のことは、図示が省略されている他の可動子磁極32a,32bについても同様である。このように、1/4系列の回転電機10では、互いに吸引力分布が異なる周方向(第一方向(矢印X方向))に隣接する二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを単位として、周方向(第一方向(矢印X方向))に平行移動させた状態で、多極化(本実施形態では、8極化)されている。
また、1/4系列の回転電機10では、固定子鉄心21の静的変位量は、大きさが異なる四種類のピーク値が生じる。そのため、1/4系列の回転電機10は、回転2次の起振力の成分を備えている。回転2次の起振力は、二磁極対(四磁極)を単位として繰り返され、周方向(第一方向(矢印X方向))の一周において、固定子鉄心21の静的変位量は、二つのピーク値が生じる。
固定子20が分数スロット構成で形成された回転電機10では、可動子磁極32a,32bの磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、回転8次)の起振力と比べて、より低次(本実施形態では、回転2次)の起振力の成分を備える。そのため、駆動回転数が広範囲に亘る回転電機10では、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数が、駆動回転数範囲内に生じ易くなる。その結果、固定子20の共振が発生し、回転電機10の駆動時に発生する騒音や振動などが増大する可能性がある。
本実施形態の回転電機10によれば、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と、複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42とを備えている。図17では、3つの位置部位42は、第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42cで示されている。
第一位置部位42aは、第一実施形態で既述の位置部位42と同様であり、第一位置部位42aに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第一可動子磁極51a,51b,51c,51dとする。基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。また、第二位置部位42bに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第二可動子磁極52a,52b,52c,52dとする。基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。さらに、第三位置部位42cに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第三可動子磁極53a,53b,53c,53dとする。基準部位41に対する第三位置部位42cのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、3/4に設定されている。
例えば、図17の破線で囲まれる領域を考える。基準可動子磁極50aの吸引力分布と、第二可動子磁極52aの吸引力分布とを重ね合わせると、回転4次の起振力の成分が増加する。同様に、第一可動子磁極51aの吸引力分布と、第三可動子磁極53aの吸引力分布とを重ね合わせると、回転4次の起振力の成分が増加する。重ね合わされた吸引力分布同士をさらに重ね合わせると、回転8次の起振力の成分が増加する。以上のことは、基準可動子磁極50aに隣接する基準可動子磁極50bにおいても同様であり、基準可動子磁極50bに隣接する基準可動子磁極50cにおいても同様であり、基準可動子磁極50cに隣接する基準可動子磁極50dにおいても同様である。
このように、本実施形態の回転電機10は、第一実施形態と同様に、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))に隣接する可動子磁極32aの径方向(第二方向(矢印Y方向))の電磁気的な吸引力分布が混成されて、当該吸引力分布を平均化することができる。このことは、可動子磁極32bについても同様である。その結果、可動子磁極32a,32bの吸引力分布は、可動子磁極32a,32bの毎極において、等価な状態に近づく。よって、本実施形態の回転電機10は、可動子磁極32a,32bの磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、回転8次)の起振力と比べて、より低次(本実施形態では、回転2次)の起振力の成分を低減して、可動子磁極32a,32bの磁極数に依拠する次数の起振力の成分を増大させることができる。したがって、本実施形態の回転電機10は、吸引力分布を整数スロット構成と同程度(本実施形態では、回転8次)まで高次化し、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、駆動回転数範囲外に設定することが可能である。つまり、本実施形態の回転電機10は、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減することができる。
本実施形態の回転電機10では、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8(=(0+1/4+1/2+3/4)/4)である。また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42(第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42c)のスキュー量は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4の等差数列で表される。さらに、基準部位41と、基準部位41に隣接する第一位置部位42aとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。また、第一位置部位42aと、第一位置部位42aに隣接する第二位置部位42bとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。さらに、第二位置部位42bと、第二位置部位42bに隣接する第三位置部位42cとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。よって、隣接スキュー量総和Sadは、3/4(=1/4+1/4+1/4)磁極ピッチである。
このように、本実施形態の回転電機10は、複数の位置部位42の数が同じ条件(本実施形態では、3つ)のときに、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量の総和(隣接スキュー量総和Sad)が最小になっている。よって、本実施形態の回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
また、本実施形態の回転電機10は、第二実施形態と同様にして、トルクリップル(コギングトルク)を低減することもできる。本実施形態では、8極30スロットの回転電機10であるので、コギングトルクの一周期は、360°(機械角)を固定子磁極の磁極数30と可動子磁極の磁極数8との最少公倍数120で除した値3°(機械角)になる。コギングトルクの一周期に相当する3°(機械角)は、1/4磁極ピッチ分に相当する。
よって、トルクリップル(コギングトルク)を低減するためには、可動子鉄心31は、一つの位置部位42を備え、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、コギングトルクの半周期分に相当する1/8磁極ピッチに設定すると良い。この場合、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および位置部位42のスキュー量は、0、1/8で表される。さらに、第二平均スキュー量Sav2は、固定子磁極ピッチ単位で、1/16(=(0+1/8)/2)である。
また、第三実施形態と同様にして、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方、並びに、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)の両方を低減することもできる。この場合、位置部位42は、既述の第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42cに加えて、第四位置部位42d、第五位置部位42e、第六位置部位42fおよび第七位置部位42g(いずれも図示略)を備える。基準部位41に対する第四位置部位42dのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/8に設定する。基準部位41に対する第五位置部位42eのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8に設定する。基準部位41に対する第六位置部位42fのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、5/8に設定する。基準部位41に対する第七位置部位42gのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、7/8に設定する。よって、第三平均スキュー量Sav3は、固定子磁極ピッチ単位で、7/16(=(0+1/4+1/2+3/4+1/8+3/8+5/8+7/8)/8)である。
基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数(この場合、7つ)の位置部位42(第一位置部位42a〜第七位置部位42g)のスキュー量は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、0、1/8、1/4、3/8、1/2、5/8、3/4、7/8の等差数列で表されると好適である。さらに、上記スキュー量は、第一組のスキュー量と、第二組のスキュー量とを組み合わせたスキュー量で表されると好適である。第一組のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4の等差数列で表される。また、第二組のスキュー量は、第一組の各スキュー量に1/8磁極ピッチを加算して得られる。つまり、第二組のスキュー量は、昇順に列挙したときに、1/8、3/8、5/8、7/8の等差数列で表される。
この場合、隣接スキュー量総和Sadは、7/8(=1/8+1/8+1/8+1/8+1/8+1/8+1/8)磁極ピッチである。複数の位置部位42の数が同じ条件(この場合、7つ)のときに、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量の総和(隣接スキュー量総和Sad)が最小になっている。そのため、この場合の回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数(この場合、7つ)の位置部位42(第一位置部位42a〜第七位置部位42g)のスキュー量は、軸線方向(第三方向(矢印Z方向))の一端側の部位から順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4、1/8、3/8、5/8、7/8で表すこともできる。この場合、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量に含まれる騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減するのに適したスキュー量(この場合、1/4系列の回転電機10であり、固定子磁極ピッチ単位で、1/4磁極ピッチ)の数は、前述の場合と比べて増加している。具体的には、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量には、当該スキュー量(1/4磁極ピッチ)が3つ連続する組が二組(0、1/4、1/2、3/4の組と、1/8、3/8、5/8、7/8の組)含まれている。そのため、この場合の回転電機10は、前述の場合と比べて、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果が向上する。一方、隣接スキュー量総和Sadは、17/8(=1/4+1/4+1/4+5/8+1/4+1/4+1/4)磁極ピッチであり、前述の場合と比べて、隣接スキュー量総和Sadが増加している。
<1/4系列の回転電機10の特性>
1/4系列の回転電機10(8極30スロットの場合)の特性について、図18A〜図18Dを参照しつつ説明する。図18A〜図18Dは、図16A〜図16Dにそれぞれ対応している。図18A〜図18Dは、既述のこれらの図面と同様に図示されており、重複する説明を省略する。なお、曲線L71は、曲線L61に相当し、曲線L72は、曲線L62に相当する。また、曲線L73は、曲線L63に相当し、曲線L74は、曲線L64に相当する。これらの特性は、第五実施形態で既述した回転電機10(可動子鉄心31が基準部位41と、3つの位置部位42とを備える)において、平均スキュー量を変更して取得した特性を示している。
図18Aの曲線L71に示すように、固定子鉄心21の外周変形量は、平均スキュー量の増加とともに次第に低減され、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方も低減される。同図では、平均スキュー量が3/8磁極ピッチ(機械角で4.5°)のとき、固定子鉄心21の外周変形量が最小になり、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方は、最も低減される。なお、この平均スキュー量は、第五実施形態で既述の第一平均スキュー量Sav1と一致する。また、図18Dの曲線L74に示すように、回転電機10の出力トルクの最大値も同様の傾向を備えている。つまり、出力トルクの最大値は、平均スキュー量の増加とともに次第に減少する。
図18Bの曲線L72に示すように、トルクリップルの最大値は、平均スキュー量の増加とともに低減され、平均スキュー量が1/16磁極ピッチ(機械角で0.75°)のとき、最小になる。この平均スキュー量は、第五実施形態で既述の第二平均スキュー量Sav2と一致する。平均スキュー量が1/16磁極ピッチ(機械角で0.75°)より大きくなると、トルクリップルの最大値は、増加に転じる。なお、図18Cの曲線L73に示すように、コギングトルクも同様の傾向を備えている。つまり、コギングトルクは、平均スキュー量が1/16磁極ピッチ(機械角で0.75°)のとき、最小になる。
適切な位置関係にある位置部位42の数が増加すると、平均スキュー量が増加し、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果は、向上する。一方、位置部位42の数が増加すると、磁束の漏れや短絡が生じ易くなる。特に、可動子鉄心31に永久磁石を備える回転電機10では、永久磁石が発生する磁束に漏れや短絡が生じ易い。その結果、有効磁束が低下して、回転電機10の出力トルクが低下し易くなる。また、位置部位42の数が増加すると、永久磁石等の部品点数が増加して、製造コストが上昇し易くなる。よって、回転電機10の出力トルクの低下の抑制や製造コストの抑制という観点からは、位置部位42の数が少ない回転電機10が好ましい。
複数の位置部位の数が同じ条件(この場合、3つ)のときに、隣接スキュー量総和Sadが最小化されていると、回転電機10の出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。また、隣接スキュー量総和Sadが適切に設定されていると、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果が向上する。このように、隣接スキュー量総和Sadの量によって得られる効果が異なるので、回転電機10の要求仕様に合わせて、基準部位41および位置部位42の配置を選択すると良い。
さらに、位置部位42の数を間引くこともできる。既述のとおり、位置部位42の数が増加すると、回転電機10の出力トルクが低下し易くなる。そこで、位置部位42の数を間引いて、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果を確保しつつ、回転電機10の出力トルクの低下を抑制することもできる。例えば、第五実施形態で既述した1/4系列の回転電機10では、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および3つの位置部位42(第一位置部位42a〜第三位置部位42c)のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4の等差数列で表される。位置部位42の数を間引く場合、例えば、一つ離れたスキュー量同士を組み合わせることができる。具体的には、基準部位41および一つの位置部位42のスキュー量は、0、1/2で表すことができる。また、基準部位41および一つの位置部位42のスキュー量は、1/4、3/4で表すこともできる。
第一平均スキュー量Sav1が同じになるように、位置部位42の数を間引くこともできる。第五実施形態で既述のとおり、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8である。よって、基準部位41および一つの位置部位42のスキュー量は、例えば、固定子磁極ピッチ単位で、0、3/4で表すことができる。また、回転電機10の出力トルクの低下が最小限になるように、位置部位42の数を間引くこともできる。この場合、基準部位41および一つの位置部位42のスキュー量は、例えば、固定子磁極ピッチ単位で、0、1/4で表すことができる。
<第六実施形態>
本実施形態は、第五実施形態と比べて、毎極毎相スロット数が異なる。以下、第五実施形態と異なる点を中心に説明する。
図19に示すように、本実施形態の回転電機10は、4極21スロットの回転電機であり、毎極毎相スロット数が1.75である。つまり、本実施形態の回転電機10は、3/4系列の回転電機10である。図19は、図4、図17に対応している。図19は、既述の図4および図17と同様に図示されており、重複する説明を省略する。但し、本実施形態では、毎極スロット数は、5.25である。同図では、固定子20の基準等価間隔は、固定子磁極ピッチ単位の毎極スロット数(本実施形態では、5.25)を切り上げた整数(この場合、6)とする。同図は、基準等価間隔として、固定子磁極ピッチ単位「6」の固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態を示している。
第五実施形態と同様に、固定子磁極番号3、固定子磁極番号9、固定子磁極番号15および固定子磁極番号21の各ティース部21bに付されている黒色丸印は、基準等価間隔となる固定子磁極の磁極中心位置を示している。また、同図では、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P50と等価な等価位置は、基準等価位置P51,P52,P53で示されている。基準等価位置P51,P52,P53は、基準位置P50から、毎極スロット数を切り上げた整数倍(この場合、6の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。また、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P60と等価な等価位置は、基準等価位置P61,P62で示されている。基準等価位置P61,P62は、基準位置P60から、毎極スロット数を切り上げた整数倍(この場合、6の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。
なお、基準位置P50および基準位置P60の関係は、第五実施形態と同様である。移動点MP2は、第五実施形態で既述の移動点MP1に相当する。同図に示すように、移動点MP2は、固定子磁極番号6に存在する。また、基準位置P60は、基準位置P50から、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に、3磁極ピッチ分、移動した点である。当該3磁極ピッチ分は、基準等価間隔(本実施形態では、6磁極ピッチ)を4倍(二磁極対分(四磁極分))した24磁極ピッチから、可動子磁極32a,32bの二磁極対分(四磁極分)に対向する固定子磁極数21を減じて得られる。
第五実施形態と同様に、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と、複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42とを備えている。3つの位置部位42は、第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42cとする。
第一位置部位42aに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第一可動子磁極51a,51b,51c,51dとする。基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、3/4に設定されている。また、第二位置部位42bに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第二可動子磁極52a,52b,52c,52dとする。基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、6/4に設定されている。さらに、第三位置部位42cに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第三可動子磁極53a,53b,53c,53dとする。基準部位41に対する第三位置部位42cのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、9/4に設定されている。図19の破線で囲まれる領域で示すように、本実施形態においても、四種類の磁極対向状態を備えている。同図では、磁極対向状態は、磁極対向状態M40、磁極対向状態M43、磁極対向状態M46および磁極対向状態M49で示されている。
同図に示すように、本実施形態の回転電機10は、一磁極毎に、四種類の磁極対向状態を一つずつ備えるので、可動子磁極32a,32bの吸引力分布が一磁極毎に重ね合わされ、混成されて、平均化できる。その結果、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方が低減される。また、本実施形態の回転電機10では、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、9/8(=(0+3/4+3/2+9/4)/4)である。さらに、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および3つの位置部位42のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、3/4、3/2、9/4で表される。よって、本実施形態の回転電機10は、第五実施形態で既述の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
<第七実施形態>
本実施形態は、第六実施形態と比べて、基準等価間隔が異なる。以下、第六実施形態と異なる点を中心に説明する。
図20に示すように、本実施形態の回転電機10は、4極21スロットの回転電機であり、毎極スロット数は、5.25である。同図では、固定子20の基準等価間隔は、固定子磁極ピッチ単位の毎極スロット数(本実施形態では、5.25)を四捨五入した整数(この場合、5)とする。同図は、基準等価間隔として、固定子磁極ピッチ単位「5」の固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態を示している。また、固定子磁極番号3、固定子磁極番号8、固定子磁極番号13および固定子磁極番号18の各ティース部21bに付されている黒色丸印は、基準等価間隔となる固定子磁極の磁極中心位置を示している。図20は、図4、図17、図19に対応している。図20は、既述の図4、図17および図19と同様に図示されており、重複する説明を省略する。
同図では、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P70と等価な等価位置は、基準等価位置P71,P72,P73で示されている。基準等価位置P71,P72,P73は、基準位置P70から、毎極スロット数を四捨五入した整数倍(この場合、5の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。また、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態が基準位置P80と等価な等価位置は、基準等価位置P81,P82,P83で示されている。基準等価位置P81,P82,P83は、基準位置P80から、毎極スロット数を四捨五入した整数倍(この場合、5の整数倍)の位置に、それぞれ存在する。
本実施形態では、毎極スロット数(本実施形態では、5.25)を四捨五入して(つまり、毎極スロット数の小数点以下を切り捨てて)、基準等価間隔を設定しているので、基準位置P70および基準位置P80の関係は、第六実施形態と異なる。以下、具体的に説明する。移動点MP3は、第五実施形態で既述の移動点MP1および第六実施形態で既述の移動点MP2に相当する。同図に示すように、移動点MP3は、固定子磁極番号2に存在する。移動点MP3は、基準位置P70から、第一方向紙面左側(矢印X1方向)に、1磁極ピッチ分(換言すれば、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に、−1磁極ピッチ分)移動した点である。当該移動量は、基準等価間隔(本実施形態では、5磁極ピッチ)を4倍(二磁極対分(四磁極分))した20磁極ピッチから、可動子磁極32a,32bの二磁極対分(四磁極分)に対向する固定子磁極数21を減じて得られる。上述の等価位置の移動を4回繰り返すことにより、移動点MP3は、基準位置P70から、第一方向紙面左側(矢印X1方向)に、4磁極ピッチ分(換言すれば、第一方向紙面右側(矢印X2方向)に、−4磁極ピッチ分)移動し、基準位置P80と等価になる。
第六実施形態と同様に、固定子鉄心21または可動子鉄心31(本実施形態では、可動子鉄心31)は、基準部位41と、複数(本実施形態では、3つ)の位置部位42とを備えている。3つの位置部位42は、第一位置部位42a、第二位置部位42bおよび第三位置部位42cとする。
第一位置部位42aに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第一可動子磁極51a,51b,51c,51dとする。本実施形態では、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定されている。また、第二位置部位42bに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第二可動子磁極52a,52b,52c,52dとする。本実施形態では、基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定されている。さらに、第三位置部位42cに設けられる二磁極対(四磁極)分の可動子磁極32a,32bを第三可動子磁極53a,53b,53c,53dとする。本実施形態では、基準部位41に対する第三位置部位42cのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、3/4に設定されている。図20の破線で囲まれる領域で示すように、本実施形態においても、四種類の磁極対向状態を備えている。同図では、磁極対向状態は、磁極対向状態M50、磁極対向状態M51、磁極対向状態M52および磁極対向状態M53で示されている。なお、同図では、第六実施形態の磁極対向状態M46,M49が併せて図示されている。
同図に示すように、本実施形態の回転電機10は、一磁極毎に、四種類の磁極対向状態を一つずつ備えるので、可動子磁極32a,32bの吸引力分布が一磁極毎に重ね合わされ、混成されて、平均化することができる。その結果、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方が低減される。また、本実施形態の回転電機10では、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8(=(0+1/4+1/2+3/4)/4)である。さらに、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および3つの位置部位42のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、1/4、1/2、3/4で表される。よって、本実施形態の回転電機10は、第五実施形態で既述の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、基準部位41と、基準部位41に隣接する第一位置部位42aとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。さらに、第一位置部位42aと、第一位置部位42aに隣接する第二位置部位42bとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。また、第二位置部位42bと、第二位置部位42bに隣接する第三位置部位42cとの間のスキュー量は、1/4磁極ピッチである。よって、本実施形態の隣接スキュー量総和Sadは、3/4(=1/4+1/4+1/4)磁極ピッチである。
一方、第六実施形態の回転電機10では、基準部位41と、基準部位41に隣接する第一位置部位42aとの間のスキュー量は、3/4磁極ピッチである。また、第一位置部位42aと、第一位置部位42aに隣接する第二位置部位42bとの間のスキュー量は、3/4磁極ピッチである。さらに、第二位置部位42bと、第二位置部位42bに隣接する第三位置部位42cとの間のスキュー量は、3/4磁極ピッチである。よって、第六実施形態の隣接スキュー量総和Sadは、9/4(=3/4+3/4+3/4)磁極ピッチである。
このように、本実施形態の回転電機10では、第六実施形態の回転電機10と比べて、隣接スキュー量総和Sadが小さくなっている。よって、本実施形態の回転電機10は、第六実施形態の回転電機10と比べて、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を抑制することができ、出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
以上のように、3/4系列の回転電機10の基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、1/4系列の回転電機10の場合と同様に、設定することができる。また、本実施形態および第六実施形態の回転電機10においても、第五実施形態と同様にして、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)を低減することができる。さらに、本実施形態および第六実施形態の回転電機10においても、第五実施形態と同様にして、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方、並びに、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)の両方を低減することができる。
<1/c系列の回転電機10>
第一実施形態〜第四実施形態では、1/2系列の回転電機10について説明した。また、第五実施形態では、1/4系列の回転電機10について説明し、第六実施形態および第七実施形態では、3/4系列の回転電機10について説明した。しかしながら、本発明は、これらの回転電機10に限定されるものではない。以下、1/c系列の回転電機10について説明する。
本発明に係る1/c系列の回転電機10では、固定子20は、毎極毎相スロット数が整数でない分数スロット構成で形成され、固定子巻線22は、分数スロット巻で巻装される。また、固定子鉄心21または可動子鉄心31(例えば、可動子鉄心31)は、基準部位41と、一つまたは複数の位置部位42とを備える。位置部位42は、基準部位41と第三方向(矢印Z方向)に連接され、かつ、基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)に、ずらして配設される。但し、固定子20に対する可動子30の移動方向を第一方向(矢印X方向)とし、固定子20と可動子30との対向方向を第二方向(矢印Y方向)とし、第一方向(矢印X方向)および第二方向(矢印Y方向)のいずれの方向に対しても直交する方向を第三方向(矢印Z方向)とする。
本発明に係る回転電機10は、固定子20が分数スロット構成で形成され、固定子巻線22が分数スロット巻で巻装された回転電機10において、いわゆるスキュー構造を備えている。そのため、本発明に係る回転電機10は、第三方向(矢印Z方向)に隣接する可動子磁極の第二方向(矢印Y方向)の電磁気的な吸引力分布を混成することが可能であり、当該吸引力分布を平均化することが可能である。よって、本発明に係る回転電機10は、当該吸引力分布を整数スロット構成と同程度まで高次化し、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、駆動回転数範囲外に設定することが可能である。つまり、本発明に係る回転電機10は、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減することができる。また、本発明に係る回転電機10は、位相の異なるトルクリップルを重ね合わせ、互いに打ち消し合ってトルクリップルを低減することができる。
ここで、毎極毎相スロット数を帯分数で表したときの整数部分を整数部aとし、帯分数の真分数部分を既約分数で表したときの分子部分を分子部b、分母部分を分母部cとする。また、整数部a、分子部bおよび分母部cは、いずれも正の整数とし、分母部cは、2以上の整数、かつ、3の倍数でないものとする。これは、分母部cが3の倍数の場合、固定子巻線22は、分数スロット巻で巻装することができないことによる。
例えば、図21に示すように、4/3系列の回転電機10では、巻線数が相間で不均等になる。同図は、6極24スロットの回転電機10の相毎の巻線数分布の一例を示している。例えば、U相の巻線数は、V相およびW相の巻線数と比べて多く、巻線数は、相間で不均等になっている。
また、図22に示すように、巻線数を相間で均等化しても、巻線数分布が相間で不均等になる。同図は、6極24スロットの回転電機10の相毎の巻線数分布の他の一例を示している。例えば、U相の巻線数は、一周期において、2、1、0、0、2、1、0、0、2、0、0、0の順に分布している。一方、V相の巻線数は、0、0、1、2、0、0、0、2、0、0、1、2の順に分布している。W相の巻線数は、0、1、1、0、0、1、2、0、0、2、1、0の順に分布している。このように、分母部cが3の倍数のとき、巻線数分布が相間で不均等になり、固定子巻線22は、分数スロット巻で巻装することができない。
(騒音・振動の低減)
回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減可能な基準部位41に対する一つまたは複数の位置部位42の平均スキュー量を第一平均スキュー量Sav1とする。基準部位41、および、一つまたは複数の位置部位42の第三方向(矢印Z方向)の各積層厚t10,t11が均等のときの第一平均スキュー量Sav1は、分母部cおよびスキュー量規定部dを用いて、下記数1で表されると好適である。
(数1)
Sav1=(c−1)/(2×d)
但し、スキュー量規定部dは、分母部c以上の整数であって、逆数が固定子磁極ピッチ単位のスキュー量を表すものとする。また、第一平均スキュー量Sav1は、基準部位41のスキュー量を0として、基準部位41のスキュー量0を含めて算出し、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。
スキュー量規定部dの逆数1/dは、基準部位41に対する位置部位42の固定子磁極ピッチ単位のスキュー量を示している。1/c系列の回転電機10では、固定子磁極と可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態がc種類あり、磁極対向状態がc極毎に等価になる。そのため、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減するためには、当該スキュー量は、基準部位41のスキュー量0を含めて、c種類必要になる。
例えば、第一実施形態で既述のとおり、分母部c=2(1/2系列の回転電機10)の場合、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/2に設定する。その結果、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4(=(2−1)/(2×2))になる。また、第五実施形態で既述のとおり、分母部c=4(1/4系列の回転電機10)の場合、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4、1/2、3/4に設定する。その結果、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8(=(4−1)/(2×4))になる。第一平均スキュー量Sav1は、分母部cが5以上の場合についても同様に設定することができ、既述の数1で表すことができる。
本発明に係る回転電機10では、上記第一平均スキュー量Sav1は、既述の数1で表されると好適である。これにより、第三方向(矢印Z方向)に隣接する可動子磁極32aの第二方向(矢印Y方向)の電磁気的な吸引力分布が混成されて、当該吸引力分布を平均化することができる。このことは、可動子磁極32bについても同様である。その結果、可動子磁極32a,32bの吸引力分布は、可動子磁極32a,32bの毎極において、等価な状態に近づく。よって、本発明に係る回転電機10は、可動子磁極32a,32bの磁極数に依拠する次数の起振力と比べて、より低次(可動子磁極32a,32bの磁極数を分母部cで除した次数)の起振力の成分を低減して、可動子磁極32a,32bの磁極数に依拠する次数の起振力の成分を増大させることができる。したがって、本発明に係る回転電機10は、吸引力分布を整数スロット構成と同程度まで高次化し、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、駆動回転数範囲外に設定することが可能である。つまり、本発明に係る回転電機10は、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減することができる。
なお、スキュー量規定部dは、分母部c以上の任意の整数に設定することができる。つまり、スキュー量規定部dは、既述の実施形態のように、必ずしも、分母部cと同値に設定する必要はなく、基準部位41に対する複数の位置部位42のスキュー量が等差である必要はない。但し、第一平均スキュー量Sav1は、既述の数1で表される必要がある。例えば、分母部c=4の1/4系列の回転電機10において、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/5とし、基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、2/5とし、基準部位41に対する第三位置部位42cのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、3/5とすることができる。
このとき、第一平均スキュー量Sav1は、固定子磁極ピッチ単位で、3/10(=(0+1/5+2/5+3/5)/4)である。これは、スキュー量規定部dが分母部cと同値(d=c=4)に設定された場合の第一平均スキュー量Sav1(第五実施形態で既述であり、固定子磁極ピッチ単位で、3/8)と比べて、小さくなっている。そのため、上述の作用効果は、スキュー量規定部dが分母部cと同値(d=c=4)に設定された場合と比べて、低下するが、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を抑制することができる。
また、位置部位42が複数設けられる場合、本発明に係る回転電機10は、複数の位置部位42の数が同じ条件のときに、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量の総和が最小になっていると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
さらに、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および一つまたは複数の位置部位42のスキュー量は、第三方向(矢印Z方向)の一端側の部位から順に列挙したときに、0、1/d、・・、(c−1)/dの等差数列で表されると好適である。これにより、基準部位41を含めた一つまたは複数の位置部位42の隣接する部位間のスキュー量を一定にすることができる。そのため、基準部位41および位置部位42を形成する際に使用する治具の種類を削減することが容易であり、製作工程の簡素化を図ることができる。
また、スキュー量規定部dは、分母部cと同値に設定されていると好適である。これにより、スキュー量規定部dが分母部cと同値でない場合(スキュー量規定部dが分母部cより大きい整数のとき)と比べて、可動子磁極32a,32bの吸引力分布の対称性が向上する。つまり、可動子磁極32a,32bの吸引力分布は、スキュー量規定部dが分母部cと同値でない場合と比べて、可動子磁極32a,32bの毎極において、より等価な状態に近づく。また、スキュー量規定部dが分母部cと同値でない場合と比べて、第一平均スキュー量Sav1が増大するので、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減する低減効果を高めることができる。
(トルクリップルの低減)
回転電機10のトルクリップルを低減可能な基準部位41に対する一つまたは複数の位置部位42の平均スキュー量を第二平均スキュー量Sav2とする。基準部位41、および、一つまたは複数の位置部位42の第三方向(矢印Z方向)の各積層厚t10,t11が均等のときの第二平均スキュー量Sav2は、スキュー量規定部dを用いて、下記数2で表されると好適である。
(数2)
Sav2=1/(2×d)
但し、第二平均スキュー量Sav2は、基準部位41のスキュー量を0として、基準部位41のスキュー量0を含めて算出し、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。スキュー量規定部dは、既述のスキュー量規定部dと同様である。トルクリップル(コギングトルク)を低減するためには、位相の異なるトルクリップル(コギングトルク)を重ね合わせ、互いに打ち消し合う必要がある。
例えば、第二実施形態で既述のとおり、分母部c=2(1/2系列の回転電機10)の場合、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4に設定する。その結果、第二平均スキュー量Sav2は、固定子磁極ピッチ単位で、1/8(=(1/(2×4))になる。また、第五実施形態で既述のとおり、分母部c=4(1/4系列の回転電機10)の場合、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/8に設定する。その結果、第二平均スキュー量Sav2は、固定子磁極ピッチ単位で、1/16(=1/(2×8))になる。第二平均スキュー量Sav2は、分母部cが5以上の場合についても同様に設定することができ、既述の数2で表すことができる。
本発明に係る回転電機10では、上記第二平均スキュー量Sav2は、既述の数2で表されると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、基準部位41に設けられる可動子磁極32a,32bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)と、位置部位42に設けられる可動子磁極32a,32bと固定子磁極との間で生じるトルクリップル(コギングトルク)とが重ね合わされ、互いに打ち消し合ってトルクリップル(コギングトルク)が低減される。
なお、スキュー量規定部dは、既述の実施形態のように、必ずしも、分母部cの2倍に設定する必要はない。また、三種類以上のスキュー量(基準部位41のスキュー量を0とし、複数の位置部位42のスキュー量を所定の位相差に設定する)を用いることもできる。但し、第二平均スキュー量Sav2は、既述の数2で表される必要がある。例えば、8極60スロットの1/2系列の回転電機10では、コギングトルクの一周期に相当する3°(機械角)は、1/2磁極ピッチ分に相当する。よって、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する第一位置部位42aのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/6とし、基準部位41に対する第二位置部位42bのスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/3とすることもできる。このとき、第二平均スキュー量Sav2は、固定子磁極ピッチ単位で、1/6(=1/(2×3))になる。これにより、120°ずつ位相差が設けられたコギングトルクが生じ、これらが重ね合わされ、互いに打ち消し合ってコギングトルクが低減される。
また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および一つの位置部位42のスキュー量は、0、1/dで表されると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、最少種類(二種類)、かつ、最小量のスキュー量で、トルクリップル(コギングトルク)を低減することができる。そのため、本発明に係る回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
さらに、スキュー量規定部dは、分母部cの2倍に設定されていると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量をコギングトルクの半周期分に設定することができる。よって、本発明に係る回転電機10は、スキュー量規定部dが分母部cの2倍に設定されていない場合と比べて、コギングトルクの低減効果を高めることができ、トルクリップルの低減効果を高めることができる。
(騒音・振動の低減およびトルクリップルの低減)
回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方、並びに、回転電機10のトルクリップルの両方を低減可能な基準部位41に対する複数の位置部位42の平均スキュー量を第三平均スキュー量Sav3とする。基準部位41および複数の位置部位42の第三方向(矢印Z方向)の各積層厚t10,t11が均等のときの第三平均スキュー量Sav3は、分母部cを用いて、下記数3で表されると好適である。但し、第三平均スキュー量Sav3は、基準部位41のスキュー量を0として、基準部位41のスキュー量0を含めて算出し、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。
(数3)
Sav3=(c−1)/(2×c)+1/(4×c)
例えば、第三実施形態で既述のとおり、分母部c=2(1/2系列の回転電機10)の場合、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する複数(3つ)の位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/4、1/2、3/4とする。その結果、第三平均スキュー量Sav3は、固定子磁極ピッチ単位で、3/8(=(2−1)/(2×2)+1/(4×2))になる。また、第五実施形態で既述のとおり、分母部c=4(1/4系列の回転電機10)の場合、基準部位41のスキュー量を0とし、基準部位41に対する複数(7つ)の位置部位42のスキュー量は、固定子磁極ピッチ単位で、1/8、1/4、3/8、1/2、5/8、3/4、7/8とする。その結果、第三平均スキュー量Sav3は、固定子磁極ピッチ単位で、7/16(=(4−1)/(2×4)+1/(4×4))になる。第三平均スキュー量Sav3は、分母部cが5以上の場合についても同様に設定することができ、既述の数3で表すことができる。
本発明に係る回転電機10では、上記第三平均スキュー量Sav3は、既述の数3で表されると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方、並びに、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)の両方を低減することができる。なお、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、既述のスキュー量に限定されるものではない。但し、第三平均スキュー量Sav3は、既述の数3で表される必要がある。
また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数の位置部位42のスキュー量は、第一組のスキュー量と第二組のスキュー量とを組み合わせたスキュー量で表されると好適である。第一組のスキュー量は、昇順に列挙したときに、0、1/c、・・、(c−1)/cの等差数列で表される。第二組のスキュー量は、第一組の各スキュー量に1/(2×c)を加算して得られ、昇順に列挙したときに、1/(2×c)、3/(2×c)、・・、(2×c−1)/(2×c)の等差数列で表される。
ここで、第一組のスキュー量と第二組のスキュー量とを組み合わせて、スキュー量を昇順に列挙した(2×c)個の等差数列を考える。つまり、この等差数列は、0、1/(2×c)、2/(2×c)、3/(2×c)、・・、(2×c−2)/(2×c)、(2×c−1)/(2×c)で表すことができる。この等差数列の和は、(2×c−1)/2であり、この等差数列の和を項数(2×c)で除して、平均を算出すると、(2×c−1)/(4×c)となる。この等差数列の和の平均は、(c−1)/(2×c)+1/(4×c)で表すことができ、既述の数3と一致する。なお、第一組のスキュー量は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減可能なスキュー量である。また、第一組の各スキュー量に加算する1/(2×c)は、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)を低減可能なスキュー量である。
また、基準部位41のスキュー量を0としたときの基準部位41および複数の位置部位42のスキュー量は、上記第一組のスキュー量と上記第二組のスキュー量とを組み合わせたスキュー量で表されると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減、並びに、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)の低減の両立を図ることが容易である。つまり、本発明に係る回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減可能な第一組の各スキュー量に、回転電機10のトルクリップル(コギングトルク)を低減可能なスキュー量(1/(2×c))を加算することにより、容易に第二組の各スキュー量を設定することができる。
さらに、本発明に係る回転電機10は、複数の位置部位42の数が同じ条件のときに、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量の総和が最小になっていると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、いわゆるスキュー構造を備えることによる出力トルクの低下を最小限に抑えることができる。
また、本発明に係る回転電機10は、複数の位置部位42の数が同じ条件のときに、基準部位41を含めた隣接する部位間のスキュー量に含まれる騒音および振動のうちの少なくとも一方を低減するのに適した固定子磁極ピッチ単位で1/cで表されるスキュー量の数が最大になっていると好適である。これにより、本発明に係る回転電機10は、回転電機10の駆動時に発生する騒音および振動のうちの少なくとも一方の低減効果を最大化することができる。
<その他>
本発明は、上記した実施形態や図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、既述の実施形態では、位置部位42は、基準部位41に対して、第一方向(矢印X方向)に段階的に、ずらして配設される、いわゆる段スキューによって形成されている。位置部位42は、基準部位41に対して、第一方向(矢印X方向)に連続的に、ずらして配設される、いわゆる連続スキューによって形成することもできる。連続スキューは、段スキューと比べて、漏れ磁束を低減することができる。但し、連続スキューでは、基準部位41に対する位置部位42のスキュー量は、既述のスキュー量の2倍に設定する。
また、既述の実施形態では、基準部位41と、一つまたは複数の位置部位42とが、可動子鉄心31に設けられている。基準部位41と、一つまたは複数の位置部位42とは、固定子鉄心21に設けることもできる。この場合も、第一平均スキュー量Sav1は、基準部位のスキュー量を0として、基準部位のスキュー量0を含めて算出し、固定子磁極ピッチ単位での平均スキュー量とする。このことは、第二平均スキュー量Sav2および第三平均スキュー量Sav3についても同様である。
さらに、既述の実施形態では、可動子30は、固定子20の内方に設けられている。可動子30は、固定子20の外方に設けることもできる。また、本発明に係る回転電機10は、固定子20および可動子30が同軸に配されるラジアル空隙型の円筒状回転電機に限定されるものではない。本発明に係る回転電機10は、固定子20および可動子30が直線上に配され、可動子30が固定子20に対して直線上に移動するリニア型回転電機に適用することもできる。さらに、本発明に係る回転電機10は、固定子20が分数スロット構成で形成された種々の回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用電動機、発電機、産業用または家庭用の電動機、発電機などに用いることができる。