JP6550350B2 - 抗菌液、抗菌膜およびウェットワイパー - Google Patents

抗菌液、抗菌膜およびウェットワイパー Download PDF

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Description

本発明は、抗菌液、抗菌膜およびウェットワイパーに関する。
従来、抗菌剤微粒子の一種として、例えば、特許文献1には、「ガラス組成に抗菌性金属を含むガラス微小球であって、その平均粒子径が0.05〜5.0μmの特定値を有し、粒子径の標準偏差がその特定値に対して±0.08μm以内であることを特徴とする抗菌性ガラス微小球」が開示されている。
特開2003−206139号公報
本発明者らは、抗菌剤微粒子を含有する液(抗菌液)について検討した。その結果、抗菌液中の抗菌剤微粒子が沈降しやすい場合(すなわち、耐沈降性が不十分な場合)があることが分かった。抗菌液の耐沈降性が不十分であると、短時間で変性してしまい、抗菌性、塗布性に問題が生じる可能性がある。
そこで、本発明は、耐沈降性に優れる抗菌液、ならびに、上記抗菌液を用いて形成される抗菌膜、および、上記抗菌液を用いたウェットワイパーを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、抗菌剤微粒子の平均粒径を特定の範囲とし、かつ、特定の溶媒を用いることで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[21]を提供する。
[1]抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、上記抗菌剤微粒子が、銀担持無機酸化物を含み、上記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μm以下であり、上記バインダが、少なくとも1種のシラン化合物を含み、上記溶媒が、アルコールおよび水を含み、上記抗菌液の全質量に対する上記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液。
[2]上記抗菌剤微粒子の平均粒径が0.7μm以下である、上記[1]に記載の抗菌液。
[3]上記銀担持無機酸化物が銀担持ガラスである、上記[1]または[2]に記載の抗菌液。
[4]上記抗菌液の全質量に対する上記アルコールの含有量が50質量%以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の抗菌液。
[5]上記抗菌液の全質量に対する上記抗菌剤微粒子の含有量が、固形分で、1.0質量%以下である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の抗菌液。
[6]上記抗菌液の全質量に対する上記抗菌剤微粒子の含有量が、固形分で、0.2質量%以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の抗菌液。
[7]上記抗菌液の全固形分質量に対する上記抗菌剤微粒子の含有量が、固形分で、20質量%以下である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の抗菌液。
[8]25℃における粘度が0.5〜5cPである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の抗菌液。
[9]濁度が100ppm以下である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗菌液。
[10]更に、アニオン系分散剤を含有する、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の抗菌液。
[11]上記アニオン系分散剤の含有量が、上記抗菌剤微粒子の含有量に対して、50質量%以上である、上記[10]に記載の抗菌液。
[12]温度5℃の低温環境下に500時間保管した場合において、25℃における粘度の変化量が2cP以下であり、濁度の変化量が10ppm以下である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗菌液。
[13]温度40℃および相対湿度80%の高温環境下に500時間保管した場合において、25℃における粘度の変化量が2cP以下であり、濁度の変化量が20ppm以下である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の抗菌液。
[14]基材上に塗布して形成される第1の抗菌膜の水接触角Xと、上記第1の抗菌膜上に塗布して形成される第2の抗菌膜の水接触角Yとの差の絶対値|X−Y|が、10°以下である、上記[1]〜[13]のいずれかに記載の抗菌液。
[15]pHが6以下である、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の抗菌液。
[16]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗菌液を用いて形成される抗菌膜。
[17]水接触角が60°以下である、上記[16]に記載の抗菌膜。
[18]上記抗菌剤微粒子が凸状に配置されている、上記[16]または[17]に記載の抗菌膜。
[19]膜厚Aに対する上記抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比B/Aが、1以上である、上記[16]〜[18]のいずれかに記載の抗菌膜。
[20]膜厚が1.0μm以下である、上記[16]〜[19]のいずれかに記載の抗菌膜。
[21]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパー。
本発明によれば、耐沈降性に優れる抗菌液、ならびに、上記抗菌液を用いて形成される抗菌膜、および、上記抗菌液を用いたウェットワイパーを提供できる。
実施例8の抗菌膜B−8の表面を走査型電子顕微鏡像で撮影(倍率5000倍)した電子顕微鏡写真である。
以下に、本発明の抗菌液、抗菌膜およびウェットワイパーについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[抗菌液]
本発明の抗菌液は、抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、上記抗菌剤微粒子が、銀担持無機酸化物を含み、上記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μm以下であり、上記バインダが、少なくとも1種のシラン化合物を含み、上記溶媒が、アルコールおよび水を含み、上記抗菌液の全質量に対する上記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液である。
本発明の抗菌液は、抗菌剤微粒子が沈降しにくく、耐沈降性に優れる。このため、本発明の抗菌液は、変性が長時間にわたって抑制される。これは、例えば、抗菌剤微粒子の平均粒径が小さいため凝集が抑制される、溶媒として含まれるアルコールによって抗菌剤微粒子の凝集割合が減少する等の理由が考えられる。
以下、本発明の抗菌液に含有される各成分について詳述する。
〔抗菌剤微粒子〕
抗菌剤微粒子は、少なくとも、銀担持無機酸化物を含む。また、抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下である。
〈銀担持無機酸化物〉
銀担持無機酸化物は、銀と、この銀を担持する担体である無機酸化物とを有する。
銀(銀原子)としては、その種類は特に制限されない。また、銀の形態も特に制限されず、例えば、金属銀、銀イオン、銀塩(銀錯体を含む)など形態で含まれる。なお、本明細書では、銀錯体は銀塩の範囲に含まれる。
なお、銀塩としては、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ酸銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis−1,5−シクロオクタジエン)−1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7−ジメチル−1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−4,6−オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロ硼酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀、テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、バナジン酸銀などが挙げられる。
また、銀錯体の一例としては、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体、イミダゾール銀錯体などが挙げられる。
一方、担体である無機酸化物としては、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ガラス(酸化ケイ素、酸化リン、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ホウ素、および、酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物)、ゼオライト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
このような銀担持無機酸化物としては、例えば、銀担持ゼオライト、銀担持アパタイト、銀担持ガラス、銀担持リン酸ジルコニウム、銀担持ケイ酸カルシウムなどが好適に挙げられ、なかでも、銀担持アパタイト、銀担持ガラスが好ましく、抗菌性の観点から、銀担持ガラスがより好ましい。
なお、抗菌剤微粒子は、銀担持無機酸化物以外の抗菌剤を含んでいてもよく、例えば、有機系抗菌剤、銀を含まない無機系抗菌剤などが挙げられる。
有機系抗菌剤としては、例えば、フェノールエーテル誘導体、イミダゾール誘導体、スルホン誘導体、N−ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール誘導体、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、又はイソチアゾリン系化合物などが挙げられる。
銀を含まない無機系抗菌剤としては、例えば、銅、亜鉛などの金属を上述した担体に担持させた抗菌剤が挙げられる。
抗菌剤微粒子は、銀担持無機酸化物以外の抗菌剤を含む態様であっても、実質的に銀担持無機酸化物のみからなる態様であってもよい。
抗菌剤微粒子中における銀担持無機酸化物の含有量は、固形分で、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
〈抗菌剤微粒子の平均粒径〉
抗菌剤微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であり、耐沈降性がより優れるという理由から、0.9μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、0.05μm以上である。
なお、本発明において、平均粒径は、堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて50%体積累積径(D50)を3回測定して、3回測定した値の平均値を用いる。
抗菌剤微粒子の平均粒径は、従来公知の方法により調節でき、例えば、乾式粉砕または湿式粉砕を採用できる。乾式粉砕においては、例えば、乳鉢、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、ビーズミル等が適宜用いられる。また、湿式粉砕においては、各種ボールミル、高速回転粉砕機、ジェットミル、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が適宜用いられる。
例えば、ビーズミルにおいては、メディアとなるビーズの径、種類、混合量等を調節することで平均粒径を制御できる。
本発明においては、例えば、粉砕対象物である抗菌剤微粒子をエタノールまたは水中に分散させ、サイズが異なるジルコニアビーズを混合し振動させることで、湿式粉砕により、抗菌剤微粒子の平均粒径を調節できるが、この方法に限定されず、粒径を制御するうえで適切な方法を選択すればよい。
〈抗菌剤微粒子の含有量〉
本発明の抗菌液の全質量に対する抗菌剤微粒子の含有量は、固形分で、例えば、1.5質量%以下であり、耐沈降性の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上である。
更に、本発明の抗菌液を基布に含浸させてなるウェットワイパー等を用いて、抗菌液の塗布および塗膜(抗菌膜)の形成を繰り返して行なう(以下、この行為を「重ね塗り」と呼ぶ)場合において、この重ね塗りによって得られる抗菌膜の白色化を抑制できるという理由からは、本発明の抗菌液の全質量に対する抗菌剤微粒子の含有量は、固形分で、0.2質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましい。
なお、実環境においては、抗菌膜の表面を人または物体が触れたり擦れたりすることによって、抗菌膜が少しずつ剥がれることが想定されるため、白色化の影響は少ないと考えられるが、ウェットワイパー等を用いて清掃作業する場合など、抗菌液の塗布が連続的に(例えば、毎日)行なわれる環境においては、白色化の抑制が要求される場合がある。
また、本発明の抗菌液の全固形分質量に対する抗菌剤微粒子の含有量は、固形分で、例えば、25質量%以下であり、耐沈降性の観点から、20質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上である。
なお、抗菌剤微粒子中における銀の含有量は特に制限されないが、抗菌剤微粒子の全質量に対して、例えば、0.1〜30質量%であり、0.3〜10質量%が好ましい。
〔バインダ〕
バインダは、少なくとも1種のシラン化合物を含む。なお、バインダは、親水性を示すことが好ましい。
〈シラン化合物〉
シラン化合物としては、例えば、下記一般式(1′)で表されるシロキサン化合物(シロキサンオリゴマー)が挙げられる。
ここで、一般式(1′)中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。また、mは1〜100の整数を表す。なお、Ra〜Rdの各々は同じであっても、異なっていてもよく、Ra〜Rdはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
a〜Rdが表す有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜16の複素環基などが挙げられる。
a〜Rdは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または、炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。なお、Ra〜Rdが表すアルキル基は、分岐状であってもよい。また、Ra〜Rdが表す有機基は置換基を有していてもよく、この置換基が更に置換基を有していてもよい。
a〜Rdの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
mは、2〜20が好ましく、3〜15がより好ましく、5〜10が更に好ましい。
また、シラン化合物としては、親水性を示し抗菌性に優れる抗菌膜を得る観点から、例えば、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基を有するシラン化合物が挙げられ、下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物(シロキサンオリゴマー)が好ましい。
ここで、一般式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜6の有機基を表す。また、nは1〜100の整数を表す。なお、有機基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
一般式(1)において、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜6の有機基を表す。なお、R1〜R4の各々は同じであっても、異なっていてもよい。また、R1〜R4は直鎖状であっても、分枝を有していてもよい。R1〜R4で表される有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。R1〜R4で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert―ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。R1〜R4で表されるアルキル基の炭素数を1〜6とすることにより、シロキサンオリゴマーの加水分解性を高めることができる。加水分解の容易さから、R1〜R4で表される有機基としては、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が更に好ましい。
一般式(1)において、nは2〜20の整数が好ましい。nをこの範囲内とすることにより、加水分解物を含む溶液の粘度を適切な範囲とすることができ、また、シロキサンオリゴマーの反応性を好ましい範囲に制御できる。nが20を超えると、シロキサンオリゴマーの加水分解物を含む溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなる場合がある。一方、nが1であるとアルコキシシランの反応性の制御が難しくなり塗布後に親水性を発揮しにくくなる場合がある。nは、3〜15がより好ましく、5〜10が更に好ましい。
シロキサンオリゴマーは、水成分とともに混合されることによって、少なくとも一部が加水分解された状態となる。シロキサンオリゴマーの加水分解物は、シロキサンオリゴマーを水成分と反応させ、ケイ素に結合したアルコキシ基をヒドロキシ基に変化させることによって得られる。加水分解に際しては必ずしも全てのアルコキシ基が反応する必要はないが、塗布後に親水性を発揮するためにはなるべく多くのアルコキシ基が加水分解されることが好ましい。また、加水分解に際して最低限必要な水成分の量はシロキサンオリゴマーのアルコキシ基と等しいモル量となるが、反応を円滑に進めるには大過剰の量の水が存在することが好ましい。
この加水分解反応は室温でも進行するが、反応促進のために加温してもよい。また反応時間は長い方がより反応が進むため好ましい。また、後述する触媒の存在下であれば半日程度でも加水分解物を得ることが可能である。
なお、加水分解反応は可逆反応であり、系から水が除かれるとシロキサンオリゴマーの加水分解物はヒドロキシ基間で縮合を開始してしまう。従って、シロキサンオリゴマーに大過剰の水を反応させて加水分解物の水溶液を得た場合、そこから加水分解物を無理に単離せずに水溶液のまま用いることが好ましい。
なお、本発明の抗菌液は、溶媒として水を含有するが、水成分を溶媒とすることで取り扱い時の作業者の健康への負荷および環境への負荷が軽減されると共に、シロキサンオリゴマーの加水分解物が貯蔵中に液中で縮合されることを抑制できる。
一般式(1)で表されるシロキサンオリゴマーとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、三菱化学社製のMKC(登録商標)シリケートが挙げられる。
なお、バインダは、上述したシラン化合物以外のバインダを含む態様であっても、実質的に上述したシラン化合物のみからなる態様であってもよい。
バインダ中における上述したシラン化合物の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
〈バインダの含有量〉
本発明の抗菌液の全固形分質量に対するバインダの含有量は、3〜95質量%が好ましく、5〜90質量%がより好ましく、10〜85質量%が更に好ましい。
また、本発明の抗菌液の全質量に対するバインダの含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
〔溶媒〕
溶媒は、アルコールおよび水を含む。なお、水としては、特に限定されず、例えば、純水が挙げられる。
アルコールは、広範囲にわたる微生物を短時間で死滅させるため好ましい。
アルコールとしては、特に制限されないが、例えば、鎖状低級炭化水素アルコール(以下、「低級アルコール」)が挙げられる。低級アルコールとしては、炭素数1〜6の低級アルコールが好適に挙げられ、その具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノール等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはn−プロパノールが好ましく、エタノール、イソプロパノールがより好ましい。
また、アルコールとしては、高級アルコールであってもよい。高級アルコールとしては、炭素数7以上(好ましくは炭素数7〜15)の高級アルコールが好適に挙げられ、その具体例としては、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
なお、上記以外のアルコールとしては、例えば、フェニルエチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の抗菌液の全質量に対するアルコールの含有量は、耐沈降性の観点から、10質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、99質量%以下である。
溶媒中のアルコールの含有量は、例えば、5〜100質量%であり、30〜95質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましい。
本発明の抗菌液の全質量に対する全固形分質量の含有量は、0.0005〜30質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましい。
更に、重ね塗りによって得られる抗菌膜の白色化を抑制できるという理由からは、本発明の抗菌液の全質量に対する全固形分質量の含有量は、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
なお、溶媒は、アルコール以外の他の親水性有機溶媒を含んでいてもよい。他の親水性有機溶媒としては、例えば、ベンゾール、トルオール、MEK(メチルエチルケトン)、アセトン、10%安息香酸デナトニウムアルコール溶液、酢酸エチル、ヘキサン、エチルエーテル、ゲラニオール、八アセチル化ショ糖、ブルシン、リナロール、リナリールアセテート、酢酸、酢酸ブチル等が挙げられる。
溶媒中に、アルコール以外の他の親水性有機溶媒を含む場合には、溶媒中のアルコール以外の他の親水性有機溶媒の含有量は、例えば、20質量%以下であることが好ましい。
もっとも、溶媒は、実質的に、アルコールおよび水からなる態様が好ましい。
また、本発明においては、各成分の希釈液(水、アルコールなど)も、溶媒に含まれる。
〔分散剤〕
本発明の抗菌液は、上述した抗菌剤微粒子の分散性を高め、耐沈降性をより良好にする観点から、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、ノニオン系またはアニオン系の分散剤が好ましく用いられる。また、抗菌剤微粒子に対する親和性の観点から、例えばカルボキシ基、リン酸基および水酸基などのアニオン性の極性基を有する分散剤(アニオン系分散剤)がより好ましい。
アニオン系分散剤としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、BYK社の商品名DISPERBYK(登録商標)−110、−111、−116、−140、−161、−162、−163、−164、−170、−171、−174、−180および−182等が好適に挙げられる。
分散剤(特に、アニオン系分散剤)の含有量は、上述した抗菌剤微粒子の含有量に対して、固形分で、例えば、50質量%以上であり、耐沈降性が更に良好になるという理由から、200質量%以上が好ましく、400質量%以上がより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば、1500質量%以下である。
〔触媒〕
本発明の抗菌液は、バインダとして上述したシロキサンオリゴマーを含有する場合、その縮合を促進する触媒を更に含むことが好ましい。本発明の抗菌液を塗布後に乾燥させて水分をなくすことによりシロキサンオリゴマーの加水分解物が持つヒドロキシ基(の少なくとも一部)が互いに縮合して結合を作り安定な塗膜(抗菌膜)が得られる。この際に、シロキサンオリゴマーの縮合を促進する触媒を有することで、抗菌膜の形成をより速やかに進めることが可能となる。
シロキサンオリゴマーの縮合を促進する触媒としては、特に限定されないが、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、有機金属触媒などが挙げられる。酸触媒の例としては、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クロロ酢酸、蟻酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。有機金属触媒の例としては、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)などのジルコニウムキレート化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)などのチタンキレート化合物;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエートなどの有機スズ化合物;等が挙げられる。
これらのうち、有機金属触媒が好ましく、アルミキレート化合物またはジルコニウムキレート化合物がより好ましい。
シロキサンオリゴマーの縮合を促進する触媒の含有量は、本発明の抗菌液の全固形分質量に対して、固形分で、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.3〜10質量%が更に好ましい。
なお、シロキサンオリゴマーの縮合を促進する触媒は、シロキサンオリゴマーの加水分解に対しても有用である。
〔界面活性剤〕
本発明の抗菌液は、界面活性剤(界面活性を示す成分)を含有していてもよい。これにより、塗布性を高めることができ、また、表面張力が引き下げられ、より均一な塗布が可能となる。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、イオン性(アニオン性、カチオン性、両性)界面活性剤などいずれも好適に使用できる。なお、イオン性の界面活性剤を過剰に加えると系内の電解質量が増えてシリカ微粒子などの凝集を招く場合があることから、イオン性の界面活性剤を用いる場合には、ノニオン性の界面活性を示す成分を更に含むことが好ましい。
ノニオン性の界面活性剤の例としては、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル・モノアルキルエーテル類などが挙げられる。より具体的には、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエステル、ポリエチレングリコールモノステアリルエステルなどが挙げられる。
イオン性の界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;アルキルカルボキシベタインなどの両性型界面活性剤;等が挙げられる。
本発明の抗菌液の全質量に対する界面活性剤の含有量は、固形分で、例えば0.0001質量%以上であり、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましい。
一方、本発明の抗菌液の全固形分質量に対する界面活性剤の含有量は、固形分で、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
〔シリカ粒子〕
本発明の抗菌液は、シリカ粒子を含有していてもよい。シリカ粒子は、本発明の抗菌液を用いて形成される抗菌膜の物理耐性を高めつつ、さらに親水性を発揮させる。すなわち、シリカ粒子は、硬いフィラーとしての役割を果たすと共に、その表面のヒドロキシ基によって親水性に寄与する。
シリカ粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、針状、ネックレス状などが挙げられるが、球形が好ましい。また、シリカをシェルとしてコアに空気および有機樹脂などを内包していてもよい。更に、分散安定化するためにシリカ粒子の表面に表面処理が施されていてもよい。
シリカ粒子の平均粒径(一次粒径)は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。シリカ粒子の粒径は、上述した抗菌剤微粒子と同様に測定できる。
形状およびサイズ等が異なる2種以上のシリカ粒子を併用してもよい。
本発明の抗菌液の全固形分質量に対するシリカ微粒子の含有量は、固形分で、0〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、20〜80質量%が更に好ましい。また、本発明の抗菌液の全質量に対するシリカ微粒子の含有量は、固形分で、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
〔酸性材料〕
本発明の抗菌液は、更に酸性材料を含有してもよい。酸性材料を含有することで本発明の抗菌液に抗ウイルス性を付与することができる。
本発明に使用される酸性材料としては、例えば、リン酸、硫酸などの無機酸;リンゴ酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、グルコン酸、アジピン酸、フィチン酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、グリオキシル酸、メルドラム酸、グルタミン酸、ピクリン酸、アスパラギン酸、酢酸、ギ酸、クエン酸などの有機酸;これら酸のアルカリ金属塩;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の抗菌液における酸性材料の含有量は、特に限定されず、例えば、本発明の抗菌液のpHが後述するpHの範囲内となるように、適量の酸性材料が添加される。
〔抗菌液の製造方法〕
なお、本発明の抗菌液は、更に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤(例えば、防腐剤、消臭剤、芳香剤など)を含有することができる。
本発明の抗菌液は、上述した必須成分および任意成分を、適宜混合することによって得られる。
〔抗菌液の粘度〕
本発明の抗菌液の粘度は、特に限定されない。もっとも、粘度が高い場合には、抗菌剤微粒子の沈降をより抑制できる一方で、塗布性が劣る場合があるため、粘度を適切な範囲に調整することが好ましい。
このような観点から、本発明の抗菌液の25℃における粘度は、100cP(センチポアズ)以下が好ましく、50cP以下がより好ましく、0.5〜5cPが更に好ましい。
なお、本発明において、粘度は、東機産業社製VISCOMETER TUB−10、または、セコニック社製SEKONIC VISCOMETERを用いて測定し、単位をcP(センチポアズ)に換算する。
〔抗菌液の濁度〕
本発明の抗菌液の濁度は、特に限定されず、例えば、抗菌剤微粒子の含有量を増やすと濁度が増加するが、本発明の抗菌液を塗布する際の透明性を確保する等の観点から、濁度を適切な範囲に調整することが好ましい。
このような観点から、本発明の抗菌液の濁度は、200ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、80ppm以下が更に好ましい。一方、下限は特に限定されないが、例えば、1ppm以上である。
なお、本発明において、濁度は、JIS K0101基づいて、三菱化学アナリテック社製の積分球式濁度計PT200を用いて測定する。
〔粘度および濁度の変化量〕
本発明の抗菌液は、長時間変性しないことが好ましい。
具体的には、本発明の抗菌液を温度5℃の低温環境下に500時間保管した場合において、25℃における粘度の変化量が2cP以下であって、かつ、濁度の変化量が10ppm以下であることが好ましい。
また本発明の抗菌液を温度40℃および相対湿度80%の高温環境下に500時間保管した場合において、25℃における粘度の変化量が2cP以下であって、かつ、濁度の変化量が20ppm以下であることが好ましい。
〔抗菌液のpH〕
本発明の抗菌液のpHは、特に限定されないが、実使用環境で使用者の手荒れなどを考慮した場合、pHを適切な範囲に調整することが好ましい。
本発明の抗菌液のpHは、3〜10が好ましく、4〜9がより好ましい。
更に、近年は、ノロウイルス等のウイルスに対する衛生管理の重要性が増しており、抗ウイルス性の観点からは、本発明の抗菌液のpHを、6以下にすることが好ましい。
なお、本発明において、pHは、東亜ディーケーケー社製のpHメータ HM−30Rを用いて測定する。
〔抗菌液の表面張力〕
本発明の抗菌液の表面張力は、特に限定されないが、本発明の抗菌液を塗布する際の濡れ性を考慮すると、適切な範囲に調整することが好ましい。
本発明の抗菌液の表面張力は、80mN/m以下が好ましく、60mN/m以下がより好ましく、40mN/m以下が更に好ましい。一方、下限は特に限定されないが、例えば、5mN/m以上である。
なお、本発明において、表面張力は、協和界面科学社製の表面張力計 DY−300を用い測定する。
[抗菌膜]
本発明の抗菌膜は、本発明の抗菌液を用いて形成される塗膜であり、例えば、本発明の抗菌液を基材上に塗布し、乾燥させることによって形成できる。
本発明の抗菌液が塗布される基材は特に限定されず、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、布などが適宜使用される。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、ラテックス、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、メラミン樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)等が挙げられる。基材の形状は特に限定されず、板状、フィルム状、シート状などが挙げられる。また、基材表面は、平坦面でも、凹面でも、凸面でもよい。更に、基材の表面には、従来公知の易接着層が形成されていてもよい。
本発明の抗菌液を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗装法、バーコート法、ロールコート法、フローコート法、ダイコート法、不織布塗り法、インクジェット法、キャスト法、回転塗布法、LB(Langmuir-Blodgett)法などが挙げられる。
塗布後の乾燥は、室温での乾燥でもよく、40〜120℃での加熱でもよい。乾燥時間は、例えば、1〜30分間程度である。
〔抗菌膜の水接触角〕
本発明の抗菌膜の表面の水接触角は、60°以下が好ましく、40°以下がより好ましく、20°以下が更に好ましい。これにより、本発明の抗菌膜は、洗浄等による汚染物質の除去性(防汚性)が優れ、また、親水性を示すことで抗菌性にも優れる。
抗菌膜が親水性を示すことで、水分が抗菌膜中に浸透しやすくなり、抗菌膜中の抗菌剤微粒子(銀担持無機酸化物)にも水分が届いて銀イオンを放出できるようになり、こうして、抗菌層中の抗菌剤微粒子も有効活用されて、銀の供給を持続できるようになり、抗菌性が良好になると考えられる。
なお、水接触角の下限は特に限定されないが、例えば、5°以上の場合が多い。
本発明において、水接触角は、JIS R 3257:1999の静滴法に基づいて測定を行なう。測定には、協和界面科学株式会社製FAMMS DM−701を用いる。より具体的には、純水を用いて室温20℃で、水平を保った抗菌層表面上に液滴2μLを滴下し、滴下後20秒時点での接触角を10箇所で測定し、測定結果の平均値を接触角とする。
なお、本発明の抗菌液を用いて基材上に形成した抗菌膜(第1の抗菌膜)の抗菌性が低下した場合には、二度塗りを行なってもよい。すなわち、第1の抗菌膜の上に、同じ本発明の抗菌液を用いて第2の抗菌膜を形成してもよい。このとき、第2の抗菌膜の物性は、第1の抗菌膜から影響を受けないことが好ましい。
例えば、本発明の抗菌液を基材上に塗布して形成される第1の抗菌膜の水接触角Xと、この第1の抗菌膜上に塗布して形成される第2の抗菌膜の水接触角Yとの差の絶対値|X−Y|が、防汚性を安定して維持する観点から、10°以下であることが好ましい。
〔抗菌膜の膜厚〕
本発明の抗菌液が含有する抗菌性微粒子の平均粒径は1.0μm以下と小さいため、これを用いて形成される本発明の抗菌膜の膜厚が厚すぎる、抗菌性微粒子が埋もれてしまい、抗菌性が発揮しにくくなる。このため、本発明の抗菌膜の膜厚(平均膜厚)は、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。膜厚の下限は特に限定されないが、例えば、0.01μm以上である。
なお、本発明において、膜厚は、次のように求める。まず、抗菌膜のサンプル片を樹脂に包埋して、ミクロトームで断面を削り出し、削り出した断面を走査電子顕微鏡で観察し、抗菌膜の任意の10点の位置における膜厚を測定し、それらを算術平均した値を、抗菌膜の膜厚(平均膜厚)とする。
上述したように、抗菌膜において抗菌性微粒子が埋もれてしまうと抗菌性が発揮しにくくなることから、抗菌剤微粒子は凸状に配置されている(抗菌剤微粒子が抗菌膜の表面から突出している)ことが好ましい。具体的には、膜厚Aに対する抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比(B/A)が、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。
〔用途〕
抗菌膜は、それ自体を抗菌シートとして使用できる。抗菌膜(抗菌シート)を各装置に配置する方法としては、例えば、装置の表面(前面)に本発明の抗菌液を直接塗布して抗菌膜を形成してもよいし、抗菌膜を別途形成しておいて粘着剤層等を介して装置の表面に張り合わせてもよい。
また、抗菌膜付き基材を、各装置の前面板として使用することもできる。
なお、抗菌膜(抗菌シート)および抗菌膜付き基材が使用される装置としては、例えば、放射線撮影装置、タッチパネルなどが挙げられる。
その他、医療現場での交差感染を抑制するために、本発明の抗菌液を直接塗布する場所としては、例えば、病院、介護施設など施設における、壁、天井、床、ドアノブ、手すり、スイッチ、ボタン、便座などが挙げられる。また、本発明の抗菌液を塗布して形成される抗菌膜は、親水性に優れるため、医療現場での汚れ(例えば、血液、体液などの汚れ)が付着した際に、水拭きで簡単に汚れを取り除くことができる。
[ウェットワイパー]
本発明のウェットワイパーは、本発明の抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパーである。基布としては、例えば、不織布などが好適に挙げられる。基布の目付(単位面積当たりの質量)は、100g/m2以下が好ましい。本発明の抗菌液を基布に含浸させる際の含浸量は、基布の質量に対して1倍以上の量が好ましい。
本発明のウェットワイパーは、それ自体を、抗菌性を有するウェットワイパーとして使用できる。また、本発明のウェットワイパーを用いて、基材表面に本発明の抗菌液を塗布することもできる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
〈実施例1〉
容器中でエタノール260gを攪拌しながら、純水200g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)4.7g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)2.2gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−1を得た。
なお、抗菌剤微粒子の平均粒径は、ビーズミルを用いてジルコニアビーズを混合し振動させることで湿式粉砕により事前に調節した(以下、同様)。
更に、片面に易接着処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−1を塗布し、20分間室温で乾燥し、塗膜である抗菌膜B−1を得た。
〈実施例2〉
上記抗菌液A−1の組成を変更した。具体的には、エタノール345g、純水115gに配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌液A−2を得た。
また、実施例1と同様にして、抗菌液A−2を用いて抗菌膜B−2を得た。
〈実施例3〉
上記抗菌液A−1の組成を変更した。具体的には、エタノール427g、純水33gに配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌液A−3を得た。
また、実施例1と同様にして、抗菌液A−3を用いて抗菌膜B−3を得た。
〈実施例4〉
容器中でエタノール280gを攪拌しながら、純水185g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)24g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)11.5gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−4を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−4を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−4を得た。
〈実施例5〉
容器中でエタノール360gを攪拌しながら、純水94g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)15g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10g、および、シリカ粒子(日産化学工業社製「スノーテックスO−33」、純水希釈:固形分濃度33質量%)22gを順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)2.4gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−5を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−5を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−5を得た。
〈実施例6〉
上記抗菌液A−5を使用した。
片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、実施例5で用いたバーコーターとは異なるバーコーターを用いて抗菌液A−5を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−6を得た。
〈実施例7〉
上記抗菌液A−5の組成を変更した。具体的には、エタノール384g、純水94g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)17g、シリカ粒子(日産化学工業社製「スノーテックスO−33」、純水希釈:固形分濃度33質量%)32gに配合量を変更し、かつ、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)0.6gを添加した以外は、実施例5と同様にして抗菌液A−7を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−7を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−7を得た。
〈実施例8〉
上記抗菌液A−7の組成を変更した。具体的には、エタノール360g、純水88g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)14g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)3.6gに配合量を変更し、かつ、イソプロパノール15gを添加した以外は、実施例7と同様にして抗菌液A−8を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−8を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−8を得た。
〈実施例9〉
上記抗菌液A−7の組成を変更した。具体的には、エタノール540g、純水20g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)14g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)2.88gに配合量を変更し、かつ、抗菌剤微粒子を、平均粒径を0.7μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度30質量%)2.4gに変更した以外は、実施例7と同様にして抗菌液A−9を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−9を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−9を得た。
〈実施例10〉
容器中でエタノール560gを攪拌しながら、純水10g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)50g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)30g、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10g、シリカ粒子(日産化学工業社製「スノーテックスO−33」、純水希釈:固形分濃度33質量%)40g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)3.6gを順次加えた後、平均粒径を0.5μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度40質量%)1.2gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−10を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−10を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−10を得た。
〈実施例11〉
上記抗菌液A−10の組成を変更した。具体的には、エタノール640g、純水15g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)6g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)16g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)40g、シリカ粒子(日産化学工業社製「スノーテックスO−33」、純水希釈:固形分濃度33質量%)29g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)2.88g、平均粒径を0.5μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度60質量%)0.8gに配合量を変更した以外は、実施例10と同様にして抗菌液A−11を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−11を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−11を得た。
なお、実施例10および11においては、抗菌液をスポイトでPET基材に適量を滴下した後、不織布(日本製紙クレシア社製「ワイプオール」)で拭きのばしても、同様に抗菌膜を形成できた。また、不織布(日本製紙クレシア社製「ワイプオール」)に抗菌液を含浸させてウェットワイパーとしても、同様にPET基材に塗布することができた。
〈実施例12〉
容器中でエタノール350gを攪拌しながら、純水135g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)4.9g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)16g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60gを順次加えた後、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持アパタイト、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度20質量%)6gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−12を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−12を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−12を得た。
〈実施例13〉
上記抗菌液A−1の組成を変更した。具体的には、エタノール40g、純水430g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)5g、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)2.4gに配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして抗菌液A−13を得た。
また、実施例1と同様にして、抗菌液A−13を用いて抗菌膜B−13を得た。
〈実施例14〉
容器中でエタノール400gを攪拌しながら、純水30g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)9.5g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)40g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)2.16g、および、平均粒径を0.7μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度30質量%)2.4gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−14を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−14を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−14を得た。
〈実施例15〉
上記抗菌液A−14の組成を変更した。具体的には、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)2.88gに配合量を変更し、かつ、抗菌剤微粒子を、平均粒径0.5μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度60質量%)2.4gに変更した以外は、実施例14と同様にして抗菌液A−15を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−15を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−15を得た。
〈実施例16〉
容器中でエタノール360gを攪拌しながら、純水60g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)14g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、イソプロパノール18g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)3.6g、および、平均粒径を0.5μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度60質量%)2.4gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−16を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−16を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−16を得た。
なお、実施例15および16においては、抗菌液をスポイトでPET基材に適量を滴下した後、不織布(旭化成せんい社製「ベンコット」)で拭きのばしても、同様に抗菌膜を形成できた。また、不織布(旭化成せんい社製「ベンコット」)に抗菌液を含浸させてウェットワイパーとしても、同様にPET基材に塗布することができた。
〈実施例17〉
上記抗菌液A−16の組成を変更した。具体的には、イソプロパノールをメタノールに変更した以外は、実施例16と同様にして抗菌液A−17を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−17を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−17を得た。
〈実施例18〉
上記抗菌液A−4の組成を変更した。具体的には、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)29g、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)14gを添加した以外は、実施例4と同様にして抗菌液A−18を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−18を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−18を得た。
〈実施例19〉
上記抗菌液A−4の組成を変更した。具体的には、エタノール350g、純水250g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)25g、平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)14gを添加した以外は、実施例4と同様にして抗菌液A−19を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−19を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−19を得た。
〈実施例20〉
上記抗菌液A−12の組成を変更した。具体的には、抗菌剤微粒子(銀担持アパタイト)を平均粒径を1.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度50質量%)2gに変更した以外は、実施例12と同様にして抗菌液A−20を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−20を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−20を得た。
〈実施例21〉
容器中でエタノール600gを攪拌しながら、純水8g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)5g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)16g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)40g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、イソプロパノール30g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)0.6g、および、平均粒径を0.5μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度25質量%)0.8gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−21を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−21を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−21を得た。
〈実施例22〉
上記抗菌液A−21の組成を変更した。具体的には、更にクエン酸3.5gを配合して撹拌した以外は、実施例21と同様にして抗菌液A−22を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−22を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−22を得た。
〈実施例23〉
上記抗菌液A−21の組成を変更した。具体的には、更にリンゴ酸3.5gを配合して撹拌した以外は、実施例21と同様にして抗菌液A−23を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−23を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−23を得た。
〈実施例24〉
容器中でエタノール830gを攪拌しながら、純水66g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)0.8g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)2.3g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)6g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)1.5gを順次加えた後、イソプロパノール4.5g、分散剤(BYK社製「DISPERBYK(登録商標)−180」)0.08g、および、平均粒径を0.5μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、エタノール希釈:固形分濃度25.4質量%)0.105gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液A−24を得た。
更に、片面に易接着処理がされたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液A−24を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜B−24を得た。
〈比較例1〉
容器中で純水470gを攪拌しながら、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、純水希釈:固形分濃度1質量%)60g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、平均粒径を3.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、純水希釈:固形分濃度50質量%)2.5gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液C−1を得た。
更に、片面に易接着処理が施されたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液C−1を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜D−1を得た。
〈比較例2〉
容器中でエタノール33gを攪拌しながら、純水460g、シロキサン化合物であるバインダ(三菱化学社製「MKC(登録商標)シリケート」MS51」)9g、アルミキレートD(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、エタノール希釈:固形分濃度1質量%)15g、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、平均粒径を2.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、純水希釈:固形分濃度80質量%)9gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液C−2を得た。
更に、片面に易接着処理が施されたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液C−2を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜D−2を得た。
〈比較例3〉
容器中で純水470gを攪拌しながら、ノニオン性界面活性剤(日本エマルジョン社製「エマレックス715」、純水希釈:固形分濃度0.5質量%)60g、および、アニオン性界面活性剤(ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純水希釈:固形分濃度0.2質量%)10gを順次加えた後、リンゴ酸10g、および、平均粒径を3.0μmに制御した抗菌剤微粒子(銀担持ガラス、富士ケミカル社製、純水希釈:固形分濃度50質量%)2.5gを加えて、20分間攪拌し、抗菌液C−3を得た。
更に、片面に易接着処理が施されたPET基材の易接着処理面上に、バーコーターを用いて抗菌液C−3を塗布し、20分間室温で乾燥し、抗菌膜D−3を得た。
〈抗菌液および抗菌膜の物性〉
各抗菌液について、上述した測定方法により、25℃における粘度(単位:cP)、濁度(単位:ppm)、pH、および、表面張力(単位:mN/m)を求めた。
粘度および濁度については、抗菌液をキャップ付きガラス瓶に入れたうえで、温度5℃の低温環境下に500時間保管した場合の変化量、および、温度40℃および相対湿度80%の高温環境下に500時間保管した場合の変化量も求めた。
また、各抗菌膜について、上述した測定方法により、膜厚(平均膜厚、単位:μm)および水接触角(単位:°)を求めた。更に、二度塗りを行ない、水接触角差の絶対値(|X−Y|)も求めた。いずれも結果を下記表1および表2に示す。
〈評価〉
各抗菌液および各抗菌膜について、以下の評価を行なった。結果を下記表1および表2に示す。なお、評価を行なわなかった場合には「−」を記載した。
(耐沈降性)
各抗菌液を室温で静置保管し、目視により沈降の有無を確認し、沈降の抑制が可能であった時間により、以下の基準に従って耐沈降性を評価した。実用上、「S」、「A」、「B」、「B-」または「C」であることが好ましい。
「S」:300時間以上
「A」:100時間以上300時間未満
「B」:72時間以上100時間未満
「B-」:48時間以上72時間未満
「C」:24時間以上48時間未満
「D」:24時間未満(24時間経過時点で沈降が飽和)
(抗菌性)
抗菌膜の抗菌性の評価は、JIS Z 2801記載の評価方法に準拠し、菌液への接触時間を3時間に変更して試験を実施した。試験後の抗菌活性値を測定し、以下の基準に従って評価を行なった。実用上、「A」、「B」または「C」であることが好ましい。
「A」:抗菌活性値が3.5以上
「B」:抗菌活性値が2.0以上3.5未満
「C」:抗菌活性値が1.0以上2.0未満
「D」:抗菌活性値が1.0未満
(防汚性)
抗菌膜の水接触角に基づいて防汚性を評価した。水接触角が20°未満の場合は「A」、20°以上40°未満の場合は「B」、40°以上60°以下の場合は「C」、60°より大きい場合は「D」とした。
(重ね塗り性)
不織布(日本製紙クレシア社製「ワイプオール」)に抗菌液を、不織布の質量に対して4倍の質量で含浸させて、ウェットワイパーとした。
このウェットワイパーを用いて、透明なPET基材の表面に抗菌液を塗布し、20分間室温で乾燥することによって抗菌膜を形成した。その後、同様に、新しいウェットワイパーを用いて、既に形成された抗菌膜の上に、抗菌液を塗布し、抗菌膜を形成した。このような抗菌液の塗布および抗菌膜の形成を、50回繰り返した。
1回目の塗布後の抗菌膜、および、50回目の塗布後の抗菌膜について、それぞれ、ヘイズ値を測定した。測定したヘイズ値どうしの差を、ヘイズ値変化量(単位:%)として求め、以下の基準に従って評価を行なった。なお、ヘイズ値の測定には、日本電色工業社製のヘイズメータ NDH5000を用いた。
ヘイズ値変化量が小さいほど、重ね塗りによって得られる抗菌膜の白色化を抑制する効果が優れていると評価できる。実用上、「A」、「B」または「C」であることが好ましく、「A」または「B」であることがより好ましい。
「A」:ヘイズ値変化量が3未満
「B」:ヘイズ値変化量が3以上10未満
「C」:ヘイズ値変化量が10以上
「D」:ヘイズ値変化量が15以上
(抗ウイルス性)
抗菌液の抗ウイルス性を次のように評価した。
まず、5×106PFU/mLに調整したネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)のウイルス液を、抗菌液に対して等量滴下し、10秒間撹拌した後、25℃で1分間放置した。その後、液を回収し、SCDLP培地によく混合し、得られた混合物を、6穴プレートに培養したCRFK細胞に0.1mLずつ接種し、37℃で1時間吸着させた。その後、接種液を洗い流し、寒天培地を重層して2日間培養した。培養後のプラーク数をカウントし、下記式を用いて抗ウイルス活性値を算出した。
Mv=lg(Va)−lg(Vb)
ここで、Mv:抗ウイルス活性値、lg(Va):比較対象液のウイルス感染価の常用対数、lg(Vb):実施例または比較例の抗菌液のウイルス感染価の常用対数である。比較対象液は、滅菌済蒸留水とし、上記試験と同じ試験を行ない、以下の基準に従って評価を行なった。実用上、「A」、「B」、「C」または「D」であることが好ましく、「A」または「B」であることがより好ましい。
なお、PFUは「Plaque Forming Unit」の略語であり、SCDLPは「Soybean-Casein Digest Agar with Lecithin & Polysorbate 80」の略語であり、CRFKは「Crandell Rees feline kidney」の略語である。
「A」:抗ウイルス活性値が3.0以上
「B」:抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満
「C」:抗ウイルス活性値が1.0以上2.0未満
「D」:抗ウイルス活性値が0.2以上1.0未満
「E」:抗ウイルス活性値が0.2未満
上記表1および表2から明らかなように、抗菌剤微粒子の平均粒径が1.0μm超であり、かつ、アルコールの含有量が10質量%未満である比較例1〜3は、耐沈降性が不十分であった。また、シロキサン化合物を含有せず水接触角が80°である比較例1および3は、抗菌性も不十分であった。
これに対して、実施例1〜24は、いずれも耐沈降性および抗菌性が良好であった。
なお、抗菌剤微粒子の平均粒径が0.7μm以下である実施例9〜11および14〜17は、耐沈降性がより良好であった。
また、実施例4と実施例18とを対比すると、抗菌液の全質量に対する抗菌剤微粒子の含有量が固形分で1.0質量%以下である実施例4の方が、実施例18よりも耐沈降性が良好であった。
また、実施例4と実施例19とを対比すると、抗菌液の全固形分質量に対する抗菌剤微粒子の含有量が固形分で20質量%以下である実施例4の方が、実施例18よりも耐沈降性が良好であった。
また、実施例12と実施例20とを対比すると、抗菌剤微粒子(銀担持無機酸化物)として、銀担持ガラスを使用した実施例20の方が、実施例12よりも抗菌性が良好であった。
また、実施例1〜24を対比すると、抗菌液の全質量に対する抗菌剤微粒子の含有量が固形分で0.2質量%以下である場合は、これが0.2質量%超である場合よりも、重ね塗り性が良好であることが分かる。
また、抗菌液中のアルコール含有量(対全質量)が10質量%以上である実施例1〜24を対比すると、抗菌液のpHが6以下である場合は、抗菌液のpHが6超である場合よりも、抗ウイルス性が良好であった。
なお、比較例3の結果から、酸性材料を配合することによって抗菌液のpHを低下させた場合であっても、抗菌液がアルコールを含有しない場合には、抗ウイルス性が十分でないことが分かる。
図1は、実施例8の抗菌膜B−8の表面を走査型電子顕微鏡像で撮影(倍率5000倍)した電子顕微鏡写真である。なお、撮影は、抗菌膜の表面上に、金属蒸着膜(金属種:白金パラジウム)を形成してから行なった。図1に示す電子顕微鏡写真から、抗菌膜において抗菌剤微粒子が凸状に配置されていることが分かる。

Claims (21)

  1. 抗菌剤微粒子、バインダおよび溶媒を含有する抗菌液であって、
    前記抗菌剤微粒子が、銀担持無機酸化物を含み、
    前記抗菌剤微粒子の平均粒径が、1.0μm以下であり、
    前記バインダが、少なくとも1種のシラン化合物を含み、
    前記シラン化合物が、下記一般式()で表されるシロキサン化合物であり、
    前記抗菌液の全質量に対する前記バインダの含有量が、10質量%以下であり、
    前記溶媒が、アルコールおよび水を含み、
    前記抗菌液の全質量に対する前記アルコールの含有量が、10質量%以上である、抗菌液であって、
    前記アルコールが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、t−アミルアルコール、および、n−ヘキサノールからなる群から選択され、
    前記抗菌液の全質量に対する前記抗菌剤微粒子の含有量が、固形分で、1.5質量%以下である、抗菌液。
    一般式(1)中、R 1 〜R 4 はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、nは2〜100の整数を表す。
  2. さらに、シリカ粒子を含む、請求項に記載の抗菌液。
  3. 前記抗菌剤微粒子の平均粒径が0.7μm以下である、請求項1または2に記載の抗菌液。
  4. 前記銀担持無機酸化物が銀担持ガラスである、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  5. 前記抗菌液の全質量に対する前記アルコールの含有量が50質量%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  6. 前記抗菌液の全質量に対する前記抗菌剤微粒子の含有量が、固形分で、0.2質量%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  7. 前記抗菌液の全固形分質量に対する前記抗菌剤微粒子の含有量が、固形分で、20質量%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  8. 25℃における粘度が0.5〜5cPである、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  9. 濁度が100ppm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  10. 更に、アニオン系分散剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の抗菌液。
  11. 前記アニオン系分散剤の含有量が、前記抗菌剤微粒子の含有量に対して、50質量%以上である、請求項10に記載の抗菌液。
  12. 温度5℃の低温環境下に500時間保管した場合において、25℃における粘度の変化量が2cP以下であり、濁度の変化量が10ppm以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗菌液。
  13. 温度40℃および相対湿度80%の高温環境下に500時間保管した場合において、25℃における粘度の変化量が2cP以下であり、濁度の変化量が20ppm以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗菌液。
  14. 基材上に塗布して形成される第1の抗菌膜の水接触角Xと、前記第1の抗菌膜上に塗布して形成される第2の抗菌膜の水接触角Yとの差の絶対値|X−Y|が、10°以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗菌液。
  15. pHが6以下である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗菌液。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗菌液を用いて形成される抗菌膜。
  17. 水接触角が60°以下である、請求項16に記載の抗菌膜。
  18. 前記抗菌剤微粒子が凸状に配置されている、請求項16または17に記載の抗菌膜。
  19. 膜厚Aに対する前記抗菌剤微粒子の平均粒径Bの比B/Aが、1以上である、請求項1618のいずれか1項に記載の抗菌膜。
  20. 膜厚が1.0μm以下である、請求項1619のいずれか1項に記載の抗菌膜。
  21. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗菌液が基布に含浸されたウェットワイパー。
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