JP6513896B2 - リチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔およびその製造方法 - Google Patents
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Description
このリチウムイオン電池の正極集電体には、高い電位に対する耐酸化性が要求されるため、一般にアルミニウム合金箔が使用される
前記第1〜第3の本発明のいずれかに記載の組成のアルミニウム合金を冷間圧延する際に、前記冷間圧延に際し、昇温速度が10〜250℃/秒、加熱温度が400〜550℃、保持時間が5〜60秒、冷却速度が20〜200℃/秒の中間焼鈍を行うことを特徴とする。
Feは、鋳造時にAl−Fe系金属間化合物として晶出し、それが核となって結晶粒を微細化する効果がある。それに加えて、圧延により微細な化合物粒子が均一に分散することでアルミニウム合金箔の強度と伸びを向上させる効果がある。1.0%未満では後述するMnと共に添加した際の伸び向上の効果が十分に発揮されず、1.7%超では強度は上がるものの伸びの上昇が飽和し、さらに鋳造時に生成されるAl−Fe系化合物のサイズが大きくなり、箔の伸びと圧延性が低下する。このため、Feは1.0%以上1.7%以下が好ましい。
MnはFeと同様に強度と伸びを共に向上させる効果がある。0.05%未満ではその効果が十分発揮されず、0.3%以上では強度は向上する一方で伸びの低下が生じる。さらにMnの過剰な添加は粗大金属間化合物生成のリスクを高め、圧延性が極端に低下する危険性がある。このため、Mnは0.05%以上0.3%未満が好ましい。
FeとMnはそれぞれ単体で用いるより、合わせて添加することで伸びが向上するので、所望により制限する。本比率は発明者らがこれまで様々な合金を検討する中で得られたものであり、Fe/Mnが4.3以下では伸びの向上は見られず、数値が小さくなるにつれ徐々に伸びが低下することを見出した。5.0%以上の安定した高伸びを達成するために、下限を7.0とするのがより好ましい。
伸び率が4.0%以上であると、合金箔を圧延加工しても破断は生じにくい特徴がある。このため、広幅圧延中の破断や電池製造にかかる不具合を防ぐことができる。4.0%未満では圧延加工中に破断が生じやすくなる。同様の理由により、伸び率を5.0%以上にすることはさらに好ましい。
引張強度が200MPa以上であると、圧延の際の破断防止に有効で有り、また、二次電池に用いる場合、高荷重圧着時に活物質粒子が侵入するのを効果的に防止することができ、電極材を生産する際の破断が生じにくくなる。引張強度200MPa未満の場合は、加工の際に硬い活物質によって容易に傷が付いてしまい、活物質との境界面で破断する恐れがある。
中間焼鈍は一般的にコイルを炉に投入し一定時間保持するバッチ焼鈍(Bach Annealing、以下BACHという)と、連続焼鈍ライン(Continuous Annealing Line、以下CALという)により材料を急加熱・急冷する2種類の方式がある。バッチ焼鈍でも圧延性の改善は計れるが箔の強度と伸びが不足する。一方、CALにて、昇温速度:10〜250℃/秒、加熱温度:400℃〜550℃、保持時間:5〜60秒、冷却速度:20〜200℃/秒の条件で中間焼鈍を行うことで、焼鈍後の再結晶が微細になり箔の強度と伸びが向上する。
昇温速度が10℃/秒より遅い場合、この昇温過程で冷間圧延時に導入された蓄積エネルギーが解放されるため、再結晶核生成率が低下して焼鈍後の結晶粒径が大きくなり、最終冷延後の箔の伸びが低下してしまう。これは、最終冷延後の箔は結晶粒がより微細で均一なファイバー組織である程伸びが高いことに起因する。一方、昇温速度を250℃/秒より速くしても、それ以上の効果はほとんど得られず、却って高価な加熱設備が必要となってアルミニウム合金板の生産コストが増加する。したがって、昇温速度を10〜250℃/秒とすることが好ましい。
加熱温度が400℃未満だと再結晶が終了するまでの時間が長くなるため、アルミニウム合金板の製造効率が低下してしまう。保持温度が550℃を超えると焼鈍中に材料に局部溶融が起き、圧延性や材料特性の低下が生じるおそれがある。したがって、加熱温度を400℃〜550℃とすることが好ましい。
保持時間が5秒未満だと再結晶が完全に完了せず、最終冷延後に箔の結晶粒サイズが不均一となり伸びが低下するおそがある。保持時間が60秒を超えると再結晶粒の粗大化が懸念される。したがって、保持時間を5〜60秒とすることが好ましい。
冷却速度が20℃/秒未満であると溶質元素の固溶量が低下し、強度が低下するおそれがある。一方冷却速度を200℃/秒より速くしても、強度向上は殆ど得られず、却って高価な冷却設備が必要となってアルミニウム合金板の生産コストが増加する。したがって、冷却速度を20〜200℃/秒とすることが好ましい。
本発明の組成としたリチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔は、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、仕上げの最終冷間圧延をこの順に施して製造される。中間焼鈍は、冷間圧延前に行うこともできる。
均質化処理条件については特に指定しないが、例えば、温度430〜595℃で、保持時間3〜7時間の条件で行うことが出来る。また、温度を430〜490℃とすることで伸びの向上を図ることができる。次いで、熱間圧延を行ってアルミニウム合金板を得る。熱間圧延については、仕上がり温度を材料の再結晶温度以下である300℃以下とする事が好ましい。再結晶温度以下で仕上げる事で熱間圧延後の結晶粒組織が均一かつ微細なファイバー組織となり、最終冷間圧延の安定性が向上し、最終製品である箔の伸びのバラつきが抑制される。
中間焼鈍した材料を最終冷間圧延する。この場合、強度と伸びを得るために冷延率を96%以上とすることが好ましい。
(引張り強度、伸び率)
引張り強度と伸び率は、JIS Z2241に準拠し、試料からJIS5号試験片を採取し、万能引張試験機(島津製作所製)で引張り速度2mm/sにて測定を行った。
(圧延性)
圧延性は、幅1200mmを超える広幅の圧延において、最終パス(圧下率)で破断することなく圧延できたものを○、最終パスで1コイル(約10000m)につき3回以下の破断が生じた場合は△、3回を超える破断もしくは硬過ぎる等の理由で圧延継続が難しいと判断されたものについては×とした。○が好ましいが、△以上(約10000mの最終パスで破断が3回以内)であれば製造上は問題ない。
Claims (4)
- 質量%で、Fe:1.0%以上1.7%以下、Mn:0.20%以上0.3%未満を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、厚さが10〜20μmであり、引張強度が215MPa以上かつ伸びが4.0%以上であることを特徴とするリチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔。
- FeとMnの含有量の比率:Fe/Mnが4.3以上であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔。
- Fe含有量が、質量%で、1.12%以上1.7%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔を製造する方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の組成のアルミニウム合金を冷間圧延する際に、昇温速度が10〜250℃/秒、加熱温度が400〜550℃、保持時間が5〜60秒、冷却速度が20〜200℃/秒の中間焼鈍を行うことを特徴とするリチウムイオン電池正極集電体用アルミニウム合金箔の製造方法。
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