JP6431315B2 - アルミニウム合金箔およびその製造方法 - Google Patents
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Description
質量%で、Fe:1.0%超〜1.8%未満、Cu:0.01%以下、Si:0.06〜0.15%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金溶湯を、600℃/秒以上の冷却速度で厚さ3〜20mmの板材に連続鋳造圧延し、前記板材を加熱処理を行うことなく、厚み10〜20μmのアルミニウム合金箔に冷間圧延することを特徴とする。
Feを含有することで箔の強度と伸びを向上させ、再結晶粒を微細化する効果がある。1.0%以下では十分な強度と伸びが得られず、1.8%以上では鋳造時にAl−Fe系またはAl−Fe−Si系の粗大な金属間化合物が生成し、圧延時に破断や穴あき等が発生して圧延性や伸び特性の低下が生じる。そこで、Feの含有量は、1.0%超〜1.8%未満とする。なお、同様の理由により、Fe含有量は、1.2%以上が望ましく、1.6%以下が望ましい。
Cuは箔の強度を向上させる効果がある一方で、圧延時にエッジクラックが発生する等圧延性を極めて悪化させ、固溶量が増す程材料の導電性を低下させる。したがって、圧延性を重視する場合、不可避不純物として扱う。極端に含有量を規制するものではないが、0.01%を超えて含有すると伸び特性を低下させるため、上限を0.01%とする。なお、同様の理由により、Cu含有量は、上限を0.008%とするのが望ましい。なお、圧延性よりも強度を重視する場合にはCu含有量を0.001%以上とするのが望ましい。
Siを含有することで強度を向上させるが、Cuに比べその効果は高くない。Siは本来不純物元素であり含有しないことが望ましい。SiはFeと金属化合物を生成するため、Siを過剰に含有するとFeはSiと共に析出が増加してしまい、強度と伸びが低下する。そのため、不純物としてSiが含有する場合は、0.15%以下とすることで、伸びの低下やFeの固溶量低下を防ぐことができる。なお、同様の理由により、Si含有量は上限を0.1%とするのが望ましい。
Feを400ppm以上固溶させることで、高強度を達成することが出来る。Fe固容量が400ppm未満の場合、十分な強度を得ることが出来ない。
引張強さが250MPa未満、伸び3%未満の場合、箔をコイルから巻き出し、表面に活物質を塗工、プレス、乾燥する電極製造工程の途中で箔が破断してしまう危険性がある。そこで、引張強度を250MPa以上、伸び3%以上とする。
Fe含有量を1.0%超として冷却速度を300℃/秒以上にすることで、Alマトリクス中にFeが400ppm以上で過飽和に固溶され、金属間化合物を十分微細かつ高密度に分布させることができ、固溶強化及び分散強化による高強度化が図れる。冷却速度が300℃/秒未満の場合、Feの固溶量が減少し、かつ金属間化合物の粗大化が生じ、圧延性や強度の低下が生じる。
厚さ3〜20mmとすることで、鋳造時に十分な冷却速度と冷間圧延率を確保する事が出来、高強度・高伸びが達成できる。厚さ3mm以下では冷間圧延率が不足し、強度が確保できず、厚さ20mmを超えると鋳造時の冷却速度が低下しFe固溶量の減少により、やはり高い強度を得にくい。
アルミニウム合金箔のND−RD切断面をSEMにて観察を行い、金属間化合物のサイズ及び分布密度を求めた。分散強化に寄与する円相当径0.1〜1.0μmの金属間化合物の分布密度が高い程、強度が向上する。しかしあまり密度が高すぎても分散強化により変形抵抗が増加し、箔圧延が困難となる恐れがある。上限としては106個/mm2が目安である。
鋳造時にFeを過飽和に固溶させ、金属間化合物を微細に分散させた状態を最終の箔まで維持することで高強度・高伸びの箔が得られる。冷間圧延途中で高温の焼鈍を行った場合Feの固溶量が低下し、かつ金属間化合物が粗大化し分布密度も減少してしまうため、箔の強度が大幅に低下してしまう。なお、圧延性の改善を目的とした200℃以下の回復焼鈍などに関しては、圧延工程中、圧延工程後のどこで付加しても問題はない。
アルミニウム合金箔の厚みが10μm未満の場合、電気抵抗の増加により電池特性が低下するおそれがある。また、圧延により厚さ10μm未満のアルミニウム箔を製造するのは難しく、工程の追加を余儀なくされるおそれがある。アルミニウム合金箔の厚みが20μmを超える場合、電池内に巻き込めるアルミニウム合金箔の枚数が減り、電池容量が低下する懸念がある。
(1)Cu、Siの含有量を規制し、Feを所定量含有することで、Feの固溶量低下を防ぎ金属間化合物を微細に分散させ、高強度、高伸びを実現することができる。
(2)Al−Fe系合金について鋳造を急冷で行い、Alマトリクス中にFeを過飽和に固溶させ、金属間化合物を微細且つ高密度に分散させることで高強度・高伸びの箔を得ることができる。
(3)加熱処理を実施せずに冷間圧延のみを行うことで、Fe固溶量と金属間化合物の分散状態を最終製品まで維持することができる。
したがって、本発明によれば、高強度・高伸び・高導電性を有するアルミニウム合金箔を得ることができる。
アルミニウム合金箔の材料となるアルミニウム合金は、本発明の成分範囲となる、Fe:1.0%超〜1.8%未満、Cu:0.01%以下、Si:0.15%以下を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成が得られるように用意し、連続鋳造圧延法(CC方法)に供される。連続鋳造圧延では、合金溶湯を300℃/秒以上の冷却速度で冷却して厚さ3〜20mmのアルミニウム合金板材を得る。
なお、連続鋳造圧延法としては、双ロール法、ベルト法等を適宜選択することができるが、本発明としては連続鋳造圧延法の方法が特定のものに限定されるものではない。
本発明のアルミニウム合金箔は、二次電池電極集電体用に用いることができ、特にリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。電極集電体としては、正極、負極のどちらにも用いることができるが、主として正極に用いられる。
表1に示す組成(残部がAlおよび不可避不純物)を有するアルミニウム合金を溶解し、双ロール式連続鋳造圧延法にて板材を連続鋳造圧延する。
合金溶湯は連続鋳造圧延で表1に示す冷却速度で鋳造し、厚さ5mmのアルミニウム合金板材を得た。冷却速度は、約600〜700℃/秒である。
比較例12を除きすべて前記アルミニウム合金板材を、熱処理を行うことなく冷間圧延で厚さ12μmのアルミニウム合金箔とした。比較例12は、前記アルミニウム合金板材を冷間圧延途中において、厚さ1mmで360℃×3時間.の中間焼鈍を実施し、その後、最終冷間圧延を実施して厚さ12μmのアルミニウム合金箔とした。
比較例13では、表1に示す組成(残部がAlおよび不可避不純物)を有するアルミニウム合金を半連続鋳造で鋳造し、得られた鋳塊に対し、490℃×6時間の均質化処理を実施し、熱間圧延にて厚さ7mmのアルミニウム合金熱板材とした。前記アルミニウム合金熱板材を冷間圧延で厚さ12μmのアルミニウム合金箔とした。
Claims (3)
- 質量%で、Fe:1.0%超〜1.8%未満、Cu:0.01%以下、Si:0.06〜0.15%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、Fe固溶量が400ppm以上で、円相当径0.1〜1.0μmの金属間化合物が6.0×10 5 個/mm 2 以上の分布密度で分散し、引張強さ250MPa以上、伸び3%以上であることを特徴とするアルミニウム合金箔。
- 二次電池電極集電体用であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金箔。
- 請求項1または2に記載のアルミニウム合金箔の製造方法であって、
質量%で、Fe:1.0%超〜1.8%未満、Cu:0.01%以下、Si:0.06〜0.15%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金溶湯を、600℃/秒以上の冷却速度で厚さ3〜20mmの板材に連続鋳造圧延し、前記板材を加熱処理を行うことなく、厚み10〜20μmのアルミニウム合金箔に冷間圧延することを特徴とするアルミニウム合金箔の製造方法。
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