JP5448929B2 - 耐折り曲げ性に優れたアルミニウム合金硬質箔およびその製造方法 - Google Patents
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Description
リチウムイオン電池の電極材は、正極板、セパレータおよび負極板で構成される。正極板は、15〜30μm程度の厚さの集電体用アルミニウム箔に、100μm程度の大きさの活物質を溶剤とともに両面に塗布する工程、塗布された溶媒を除去するための乾燥工程、さらに活物質の密度を増大させるための圧着工程を経て製造されている(例えば特許文献1、2、3参照)。このようにして製造された正極板は、負極板とセパレータを介して渦巻状に巻いた後に金属ケースに収納して密閉され電池となる。現在、上記用途のアルミニウム箔には、一般に、JISl085やJIS3003アルミニウム材が用いられている。
Feはアルミニウム合金箔の伸びや導電性をそれほど下げることなく、強度を高める効果がある。これによってアルミニウム合金硬質箔の高導電性を保ちながら、高荷重での圧着時に硬い活物質粒子によって受ける損害を弱め、電極材を生産するときの破断を防ぐことができる。Fe量は1.0%未満では、上記各効果は不十分であり、1.6%を超えると、鋳造時に粗大なAl−Fe−Mn系金属間化合物が生成し、圧延時にこの粗大な金属間化合物に起因するアルミニウム屑の脱落が生じて、アルミニウム合金箔の圧延性が著しく劣ってしまう。
Mnは、硬質合金箔の強度と伸びを同時に高める作用がある。Mnには固溶強化を高める効果と、再結晶粒の成長を制御し結晶粒を微細化する効果があり、この固溶強化と再結晶粒微細化の効果によって合金箔の強度が向上する。また、引張応力による硬質合金箔の破壊は、均一変形後の局部せん断変形によって発生するが、Mnを添加することで、引張破壊の原因となる局部せん断変形が緩和され伸びを向上させる効果もある。ただし、Mn含有量が0.3%未満であると、前記の各効果が充分得られず、1.0%を超えると粗大な金属間化合物が生じて箔圧延性が低下する。同様の理由により下限を0.3%、上限を0.75%とするのが望ましい。
Siは、Al−(Fe,Mn)金属間化合物に固溶できるため、インゴット均質化処理時のAl−(Fe,Mn)系分散相粒子の析出を促進し、伸びを向上させる効果がある。Si含有量が0.01%未満であると、上記効果は不十分であり、0.20%を超えると、硬いAl−(Fe,Mn)−Si系金属間化合物が生成しやすくなり、合金硬質箔の伸びが低下する。
同様の理由で上限を0.15%とするのが望ましい。
Mgはアルミニウム合金箔表面に偏析して多孔質のMgOを生成する。これによって、二次電池に用いる場合、合金箔と活物質粒子との間の接触抵抗が増え、二次電池の容量低下や放電特性の劣化を招く恐れがある。したがって、Mg含有量を0.02%未満に制限する。同様の理由により0.01%未満が望ましい。
引張強度が190MPa以上であると、二次電池に用いる場合、高荷重圧着時に活物質粒子が侵入するのを効果的に防止することができ、電極材を生産する際の破断が生じにくくなる。引張強度190MPa未満の場合は、渦巻状に巻いた際に硬い活物質によって容易に傷が付いてしまい、活物質との境界面で破断する恐れがある。280MPaを超えると、必然的にFeとMnの過飽和固溶度を最大限にまで高める必要があり、その結果、合金箔の導電率と伸びが大幅に低下し、電池特性の劣化や電極材生産の際の破断回数増加を招く恐れがある。
伸び率が4%以上であると、合金硬質箔を小さい半径で折り曲げても破断は生じにくい特徴がある。このため、電極材をより小さな曲げ半径で巻き締めることが可能となり、折れや破断がなくスムーズに電池缶、特に角型電池缶に装入することができる。4%未満では電極材を巻き締める際に折れや破断が生じやすくなる。
同様の理由により、伸び率を5%以上にすることはさらに望ましい。一方、高強度を保ちながら8%を超える伸び率のアルミニウム合金硬質箔を製造することは、現在の工業規模の技術では非常に難しい。
二次電池の電池容量を大きくするためは合金箔の厚さはできるだけ薄くして電極材の巻き枚数を増やした方が良いが、12μm未満の厚さでは電気抵抗が増え、電池総合特性が落ちる恐れがある。また12μm未満の高強度合金硬質箔を作製することは製造上難しく、工程の追加を余儀なくされる。合金箔の厚さが35μmを超えると、決められた体積のケース中に充分な枚数を巻き込めず、電池容量が低下する。したがって、合金箔の厚さは12〜35μmとするのが望ましい。同様な理由で下限を13μm、上限を25μmとするのがさらに望ましい。
アルミニウム合金硬質箔は、一般には、溶解・鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延という主な工程を経て製造される。最終冷間圧延時の圧下率(((圧延前厚さ−圧延後厚さ)/圧延前厚さ)×100%)は本発明の合金硬質箔の引張強度と伸びに大きく影響する。圧下率が大きくなるに従って合金箔の引張強度と伸びが同時に向上する。92.5%未満では、引張強度と伸びの向上は不十分である。99.9%を超えると、引張強度と伸びの向上がほぼ飽和となることに加えて箔の圧延性が大幅に低下し、製造工程の歩留まりが顕著に悪化する。同様の理由により下限を95.5%、上限を99.8%とするのが望ましい。
本発明の組成としたアルミニウム合金は常法により溶製することができ、既知の半連続鋳造法や連続鋳造圧延法を採用することができる。
半連続鋳造により得られる鋳塊は、所望により均質化処理を行うことができる。均質化処理をする場合、Al−(Fe,Mn)系分散相粒子が析出するので、この分散相粒子を微細化し、高密度に析出させるために、均質化処理の条件を昇温速度20〜60℃/時間、保持温度420〜570℃、保持時間6〜16時間に制御することが好ましい。これにより、固溶Fe量と固溶Mn量を充分低下させることができ、合金箔の良好な導電性を維持することができる。次いで、熱間圧延を行ってアルミニウム合金板を得る。熱間圧延は常法により行うことができる。
下記表1に示す各種組成(残部Alおよびその他の不可避不純物)からなるアルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造により鋳造した。得られた鋳塊を、昇温速度50℃/時間、保持温度490℃、保持時間8時間で均質化処理を行った後、面削して表面の不均一層を除去した。その後、熱間圧延にて厚さ2.7mm、または7.0mmの板材とした。次いで冷間圧延に供し、冷間圧延途中で350℃×4時間の条件で中間焼鈍を行い、表1に示す厚さとなるように最終冷間圧延を行ってアルミニウム合金硬質箔を得た。最終冷間圧延における圧下率を表1に示す。作製したアルミニウム合金硬質箔を供試材として以下の評価を行った。
上記で作製したアルミニウム合金硬質箔の表面を肉眼で観察し、圧延後の箔表面に粗大な金属間化合物による剥離および/またはアルミニウム屑が発生しているか否か(有無)を調べた。剥離またはアルミニウム屑のいずれかが1個以上/m2確認された場合、当該硬質箔の圧延性を×とし、剥離およびアルミニウム屑の発生が全くなかったものは圧延性を○として表1に示した。
上記で作製したアルミニウム合金硬質箔のうち、圧延性が○と評価された供試材について、以下の引張試験および折り曲げ評価に供した。
上記で作製したアルミニウム合金硬質箔から切出した長さ180mm、幅15mmの短柵状引張試験片を長手方向に速度5mm/分で引っ張り、引張強度および伸びを測定した。伸びは、試験前に50mm間隔で引いた、引張方向に垂直の2本平行線を基準として測定した。引張強度および伸びの測定結果を表1に示した。
上記で作製したアルミニウム合金硬質箔を幅30mmに切断し、片側100μmの厚さで両面に活物質を塗布し、150℃×5時間の条件で乾燥した。その後、荷重55tに設定して二本のロールの間に供試材を通して圧着し、正極板材を作製した。この正極板材から長さ150mm、幅15mmの短冊状に試料を切出し、この短冊状試験片の長さ中央に合わせて180°折り曲げを行い、密着させた。折り曲げ部の合金硬質箔をCCDカメラで観察し、挫折、折れ、亀裂の発生有無を調べた。これらの発生のいずれかが認められるものは×、発生が認められないものは○と評価し、結果を表1に示した。
Claims (3)
- 質量%で、Fe:1.0〜1.6%、Mn:0.3〜1.0%、Si:0.01〜0.20%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなり、前記不可避不純物中でMg:0.02%未満の組成を有し、引張強度が190〜280MPa、伸び率が4〜8%であることを特徴とする耐折り曲げ性に優れたアルミニウム合金硬質箔。
- 箔の厚さが12〜35μmであることを特徴とする請求項1に記載の耐折り曲げ性に優れたアルミニウム合金硬質箔。
- 質量%で、Fe:1.0〜1.6%、Mn:0.3〜1.0%、Si:0.01〜0.20%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなり、前記不可避不純物中でMg:0.02%未満の組成を有するアルミニウム合金材を、冷間加工する際に、該冷間加工途中で中間焼鈍を行い、その後、圧下率92.5〜99.9%の最終冷間圧延を施して最終厚さを12〜35μmとすることを特徴とする耐折り曲げ性に優れたアルミニウム合金硬質箔の製造方法。
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