以下、本発明に係る台車及び板状部材の部材取付構造を、台車1に適用した実施形態に基づいて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
尚、以下の説明においては、工場等の作業場において、運搬作業に利用可能な状態の台車1を基準として、台車1及び各構成部材の上下方向を定義する。そして、台車1は、主要な構成部品として台盤10を有しており、台盤10の平面形状は、略長方形をなしている。図1等に示すように、本実施形態における台車1及び各構成部材の前後方向は、略長方形をなす台盤10の短辺へ向かう方向と定義し、台車1及び各構成部材の左右方向は、台盤10の長辺へ向かう方向と定義する。
(台車の概略構成)
初めに、本実施形態に係る台車1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1、図2に示すように、本実施形態に係る台車1は、合成樹脂製の台盤10の下面に対して、複数のキャスター50を取付固定することによって構成されており、荷物等を台盤10上に載置して運搬する際に用いられる。当該台車1においては、平面形状が略長方形をなす台盤10の四隅に対して、キャスター50が、取り付けられると共に、容易に移動することのないように固定されている。即ち、台盤10は、本発明に係る板状部材に対する部材取付構造における板状部材の一例であり、キャスター50は、本発明に係る板状部材に対する部材取付構造における対象部材の一例である。
(台盤の構成)
次に、本実施形態に係る台車1を構成する台盤10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1、図2に示すように、台盤10は、合成樹脂の射出成形品であって、平面形状が長方形をなすように構成されており、天板壁11と、端部枠壁12と、側部枠壁13と、補強リブ14と、端部ストッパ15と、側部ストッパ16と、垂下部17とを有している。
天板壁11は、台盤10の上面において、略長方形の板状に形成されており、当該台車1における荷物が載置される載置面を構成している。端部枠壁12は、天板壁11の内、前後方向両端(即ち、短辺部分)の外縁部から、それぞれ下方に垂下している。そして、側部枠壁13は、天板壁11の内、左右方向両端(即ち、長辺部分)の外縁部から、それぞれ下方に垂下している。図2に示すように、天板壁11の下面には、補強リブ14が格子状に張り巡らされており、天板壁11の下面に対して垂直に立設されている。
端部ストッパ15は、台盤10の前側端縁及び後側端縁に沿って形成されており、天板壁11から上方に突出している。従って、各端部ストッパ15は、当該端部ストッパ15との接触によって、台盤10上に載置された物品(例えば、コンテナ)の前後方向へのずれ移動を規制することができ、もって、台盤10上からの当該物品の落下を防止することができる。
又、台盤10の左右の側端縁には、一対の側部ストッパ16が夫々形成されている。一対の側部ストッパ16は、台盤10の左側端縁及び右側端縁において、各側端縁に沿って天板壁11から上方へ突出するように形成されている。一対の側部ストッパ16における一方は、台盤10の前後方向における中央部に対してやや前方寄りに位置し、他方は、前後方向における中央部に対して後方寄りに位置している。即ち、台盤10の各側端縁において、一対の側部ストッパ16の間には、一定の間隔が形成されている。
そして、各側部ストッパ16は、台盤10の左側端縁及び右側端縁において、何れも天板壁11よりも上方に突出形成されているので、当該側部ストッパ16との接触によって、台盤10上に載置された物品(例えば、コンテナ)の左右方向へのずれ移動を規制することができ、もって、当該物品の台盤10からの落下を防止することができる。
図1、図2に示すように、垂下部17は、台盤10下面における左右の側端縁において、台盤10の前後方向における中央部から下方に突出形成されている。垂下部17の配設位置及び幅寸法は、上述した一対の側部ストッパ16の間に形成される間隔に対応しており、垂下部17の下端縁と走行面(車輪の接地面)の間の距離は、一対の側部ストッパ16の突出量よりも小さくなるように形成されている。従って、複数台の台車1を上下に積み重ねた場合、垂下部17は、一対の側部ストッパ16の間に嵌合する。この結果、複数台の台車1を上下に積み重ねた場合、2つの台車1の位置関係を適正な状態に位置決めすることができ、複数台の台車1の保管効率を高めることができる。
図2に示すように、天板壁11の下面における四隅には、キャスター50の座板51が取り付けられる座板受容部20及びリテーナ受容部30が形成されている。座板受容部20及びリテーナ受容部30の構成については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
(キャスターの構成)
続いて、本実施形態に係る台車1におけるキャスター50の構成について、図3を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、キャスター50は、台盤10の四隅に形成された座板受容部20及びリテーナ受容部30によって、台盤10に対して取付固定される。キャスター50は、汎用部品として流通している部品であって、座板51と、車輪支持脚52と、車輪53を有しており、本発明における対象部材として機能している。
当該キャスター50は、座板51の下面中央に車輪支持脚52を旋回可能に連結して備え、その車輪支持脚52によって、車輪53を回転可能に保持した構造になっている。座板51は、例えば、平面形状が長方形をなす板状部材であり、台盤10に対してキャスター50を取付固定する為の部材である。尚、車輪53の回転軸は、座板51に対する車輪支持脚52の旋回軸からずれている。これにより、台車1の進む方向に応じて車輪支持脚52が自在に旋回する。
尚、本実施形態においては、キャスター50は、座板51に対して、車輪支持脚52を旋回可能に取り付けた構成であったが、この態様に限定されるものではない。即ち、キャスター50は、座板51に対して車輪支持脚52が所定方向で固定された構成を用いることも可能である。
(座板受容部及びリテーナ受容部の構成)
次に、本実施形態における座板受容部20及びリテーナ受容部30の具体的構成について、図4、図5を参照しつつ詳細に説明する。図2に示すように、座板受容部20及びリテーナ受容部30は、台盤10下面の四隅にそれぞれ形成されており、基本的に同一の構成である。従って、以下の説明においては、台盤10の左前方に位置する座板受容部20及びリテーナ受容部30を例に挙げて説明する。
先ず、座板受容部20の構成について説明する。座板受容部20は、天板壁11の四隅における下面に形成されており(図2参照)、キャスター50の座板51が収容可能に構成されている。従って、座板受容部20は、台盤10の四隅を構成する天板壁11によって上部が閉じられている。
そして、座板受容部20は、天板壁11から垂下した側部リブ22によって、前後方向両側部が閉じられており、更に、天板壁11から垂下した奥部リブ23によって、奥部(左右方向における外側方向)が閉じられている。当該奥部リブ23は、側部リブ22の端部と直交して繋がっている。座板受容部20は、側部リブ22及び奥部リブ23によって、キャスター50の座板51に対応したサイズに区画されている。
図4、図5に示すように、座板受容部20は、台盤10の左右方向における内側(この場合、右側)の端面に座板挿入口21を開放して備えており、当該座板挿入口21は、座板51の板厚に対応する高さ寸法及び幅寸法を有している。従って、キャスター50の座板51は、座板挿入口21を介して、座板受容部20内に挿入される。尚、座板受容部20内の上面(天板壁11の下面)には、補強リブ14が升目状に延びており、当該補強リブ14の端面は、座板挿入口21の上端縁と面一となるように形成されている。
そして、座板受容部20の内、一対の側部リブ22の各下端縁には、下方支持部24が形成されている。各下方支持部24は、側部リブ22の下端縁から、互いに接近するように水平方向へ張り出されている。各下方支持部24は、座板受容部20の座板挿入口21から奥部リブ23に亘って延び、奥部リブ23の下端に対して接続されている。又、下方支持部24の上面は、座板受容部20内を構成する天板壁11下面(具体的には、座板受容部20内の補強リブ14下端面)に対して、座板51の板厚に対応する寸法離間している。従って、座板51を座板受容部20内に挿入すると、当該座板51の前後方向における両端部は、座板受容部20内における天板壁11下面と、下方支持部24上面とによって挟持され、座板51の上下方向における位置決めがなされる。
続いて、リテーナ受容部30の構成について説明する。リテーナ受容部30は、座板受容部20と同様に、台盤10の四隅における天板壁11の下面に形成されており(図2参照)、座板51を座板受容部20内の取付位置に固定する為のリテーナ部材40を収容可能に構成されている。当該リテーナ受容部30は、座板受容部20に対して、台盤10の左右方向における内側(この場合、右側)に隣接して形成されており、下方が開放された略直方形を為す箱状に形成されている。従って、リテーナ受容部30は、台盤10の四隅を構成する天板壁11によって上部が閉じられている
図4、図5に示すように、当該リテーナ受容部30は、台盤10の前後方向に沿って長手方向を有する箱状に形成されており、リテーナ保持部31と、リテーナ係止部35と、リブ38を有している。リテーナ保持部31は、本発明の保持機構部に相当し、リテーナ受容部30における長手方向一端側(この場合、台盤10の後方側)に形成されている。そして、リテーナ係止部35は、本発明のリテーナ係止部に相当し、リテーナ受容部30における長手方向他端側(この場合、台盤10の前方側)に形成されている。
尚、図2に示すように、台盤10の後方側におけるリテーナ受容部30の場合、リテーナ保持部31は、台盤10の前方側に形成され、リテーナ係止部35は、台盤10の後方側に形成されている。
リテーナ保持部31は、リテーナ受容部30における長手方向一端側において、スライド保持部32と、取付ガイド部33を有して構成されている。当該リテーナ保持部31は、後述するリテーナ部材40を、リテーナ受容部30内部において前後方向にスライド可能に保持すると共に、台盤10に対して垂直方向へ回動可能に保持する。
スライド保持部32は、リテーナ受容部30における長手方向一端部において、左右方向に対向する壁部に対して、前後方向に長手寸法を有する矩形の開口として形成されており、後述するリテーナ部材40の一端部に形成された回動軸48が夫々、スライド移動可能で且つ、回動可能に嵌め込まれる(図8、図9参照)。つまり、当該スライド保持部32の開口幅は、上下方向に関して、後述するリテーナ部材40の一端部に形成された回動軸48の外径よりもやや大きく、左右方向に関しては、リテーナ受容部30内部におけるリテーナ部材40のスライド移動量に相当する寸法である
又、当該スライド保持部32は、リテーナ受容部30の左右方向に対向する壁部において、天板壁11下面から下方へ所定距離離間した位置に形成されている。従って、当該台車1によれば、台盤10上に荷物等が載置され、天板壁11が下方に撓むように変形した場合であっても、その撓み変形がスライド保持部32に及ぼす影響を低減することができる。この結果、スライド保持部32に対する回動軸48の嵌合を維持することができ、リテーナ受容部30からリテーナ部材40が脱落することを抑制し得る。
取付ガイド部33は、リテーナ受容部30において左右方向に対向する壁部を、リテーナ受容部30の外側方向に窪ませた溝状に形成されており、リテーナ受容部30の壁部における下端縁からスライド保持部32の下側開口縁までを接続している。従って、リテーナ受容部30に対してリテーナ部材40を取り付ける際に、リテーナ部材40の回動軸48を、取付ガイド部33に沿って移動させることができ、もって、リテーナ部材40の回動軸48を、スライド保持部32内部に円滑に嵌合させることができる。
そして、リテーナ係止部35は、リテーナ受容部30における長手方向の他端側において、枠状係止部36及び係止穴37を有して構成されている。枠状係止部36は、リテーナ受容部30における長手方向の他端側に位置する壁部の下端縁から、水平方向へ張り出される枠状に形成されており、中央部分に係止穴37を有している。当該係止穴37は、後述するリテーナ部材40に形成された係止凸部49の外形よりもやや大きく開口されている。従って、後述するリテーナ部材40がリテーナ受容部30内部を所定方向(この場合、前方向)へスライド移動した場合、リテーナ係止部35を構成する枠状係止部36の係止穴37内部に、当該リテーナ部材40の係止凸部49を挿入することができ、もって、リテーナ受容部30内部におけるリテーナ部材40のスライド移動及び回動を規制できる(図13、図14参照)。
そして、リブ38は、リテーナ受容部30内における天板壁11の下面から下方に垂下して形成されており、リテーナ受容部30の長手方向(台盤10の前後方向)に沿って延びている。当該リブ38は、台盤10に対して垂直方向へかかる荷重に対し、リテーナ受容部30の剛性を高めている。
又、リテーナ部材40を回動させてリテーナ受容部30内部に収容した場合、当該リブ38の下端縁は、リテーナ部材40の上面(即ち、後述する板バネ44や第1破損防止部45等)と当接する。ここで、本実施形態における台車1では、使用者の要望に応じて台盤10の厚みが変更される場合がある。この点、台盤10の厚みを変更した場合であっても、天板壁11下面に対するリブ38の突出量を変更すれば、リテーナ部材40のサイズ変更を行うことなく、所定のリテーナ部材40を共通して利用することができる。
(リテーナ部材の構成)
次に、本実施形態に係るリテーナ部材40の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図6、図7に示すように、リテーナ部材40は、例えば、合成樹脂の射出成形品であって、リテーナ受容部30のサイズに対応した略角柱状に形成されており、リテーナ操作部41と、リテーナ付勢部43と、第1破損防止部45と、第2破損防止部46と、第3破損防止部47と、回動軸48と、係止凸部49とを有している。
リテーナ操作部41は、リテーナ部材40下面の前方側において、下方に突出形成されており、リテーナ受容部30におけるリテーナ部材40のスライド移動を行う際や、リテーナ受容部30に対してリテーナ部材40を回動させる際に、使用者に使用される。当該リテーナ操作部41の上方には、操作用凹部42が、リテーナ部材40の水平方向に係る両側面を窪ませることによって形成されている。当該操作用凹部42は、使用者の指を挿入可能に構成されている為、使用者は、自己の指を操作用凹部42に挿入して、リテーナ受容部30に対するリテーナ部材40の回動操作やスライド移動操作を行うことも可能である。
図7に示すように、リテーナ部材40の上面には、リテーナ付勢部43が、板バネ44を有して形成されている。リテーナ受容部30内部にリテーナ部材40を配置した場合に、当該リテーナ付勢部43は、リテーナ受容部30内部における天板壁11の下面を構成するリブ38と当接することによって、リテーナ部材40を下方に付勢する。
リテーナ付勢部43を構成する2つの板バネ44は、リテーナ部材40上面における所定位置から、それぞれ所定角度を為すように傾斜して伸びている。即ち、一方の板バネ44は、リテーナ部材40上面の所定位置から、リテーナ部材40の一端側へ向かう程、上方側となるように伸びており、他方の板バネ44は、リテーナ部材40上面の所定位置から、リテーナ部材40の他端側へ向かう程、上方側となるように伸びている。従って、リテーナ受容部30内部において、リテーナ部材40を天板壁11下面に近づく方向に変位させると、2つの板バネ44は、天板壁11の下面とリテーナ部材40上面との間で弾性変形して、リテーナ部材40を下方に付勢することができる。
尚、2つの板バネ44の下方に位置するリテーナ部材40の上面は、面状に形成されている為(図7参照)、リテーナ部材40を天板壁11下面に近づく方向に変位させた場合であっても、変位に伴う荷重が板バネ44に集中して作用することがない。即ち、リテーナ部材40の変位に伴う荷重によって、板バネ44が破損することを防止し得る。
そして、リテーナ部材40の上面には、第1破損防止部45が突出形成されている。当該第1破損防止部45は、リテーナ部材40上面の所定位置(即ち、2つの板バネ44の基端部)から、上方に向かって突出形成されている。当該第1破損防止部45は、リテーナ部材40を天板壁11下面に近づく方向に変位させた場合、天板壁11下面と当接することによって、天板壁11の下面とリテーナ部材40上面との間の間隔を、所定量以上に規制する。即ち、板バネ44の変形量が所定量以上となることを抑制することができるので、板バネ44の塑性変形等の影響によって、付勢力の低下を防止することができる。
リテーナ部材40上面における長手方向他端側(前方側)には、第2破損防止部46が突出形成されており、長手方向一端側(後方側)には、第3破損防止部47が形成されている。第2破損防止部46は、リテーナ部材40の回動軸48に対して逆側の端部側に形成されており、回動軸48を中心に回動した場合に、天板壁11下面と当接することによって、天板壁11下面とリテーナ部材40上面との間の間隔を、所定量以上に規制する。そして、第3破損防止部47は、リテーナ受容部30内部に収容されたリテーナ受容部30に対して、天板壁11に垂直な方向へ押圧荷重が作用した場合であっても、天板壁11下面と当接することで、天板壁11の下面とリテーナ部材40上面との間の間隔を、所定量以上に規制することができる。
図6、図7に示すように、リテーナ部材40の左右側面における長手方向一端側(後方側)には、回動軸48が、リテーナ部材40の左右側面に対して垂直な円柱状に突出形成されている。当該回動軸48は、リテーナ保持部31を構成するスライド保持部32に対して嵌め込まれる(図8〜図14参照)。従って、リテーナ部材40は、リテーナ受容部30に対して、当該回動軸48を軸として回動可能に保持されると同時に、リテーナ受容部30の前後方向へスライド移動可能に保持される。
リテーナ部材40下面における長手方向他端側(前方側)には、係止凸部49がリテーナ部材40下面に対して突出形成されている。当該係止凸部49は、リテーナ受容部30内部において、リテーナ部材40をリテーナ係止部35側にスライド移動させると、リテーナ付勢部43を構成する板バネ44の付勢力によって、枠状係止部36の係止穴37に対して挿入される(図13、図14参照)。この場合、リテーナ部材40は、リテーナ係止部35、係止凸部49及びリテーナ付勢部43の協働によって、天板壁11に近づく方向への回動を除き、リテーナ部材40のスライド移動及び回動を規制された状態になる。
(キャスターの取付固定作業)
以上のように構成された本実施形態に係る台車1において、台盤10に対してキャスター50を取り付けて固定する取付固定作業について、図8〜図14を参照しつつ詳細に説明する。
尚、以下の説明においても、台盤10の左前方に位置する座板受容部20及びリテーナ受容部30に対するキャスター50の取付固定作業を例として説明し、他の3カ所についての説明は省略する。又、座板受容部20内部には、キャスター50の座板51が配置されておらず、リテーナ部材40は、リテーナ受容部30内部において、回動軸48が第1軸孔に嵌合されている状態であるものとする。
初めに、使用者は、リテーナ部材40のリテーナ操作部41を指等で摘み、リテーナ保持部31のスライド保持部32に嵌合している回動軸48を軸に、リテーナ部材40を台盤10に対して垂直に回動させる。これにより、リテーナ部材40が、台盤10の左右方向内側(この場合、右側)から、座板受容部20の座板挿入口21へと延びる経路上から移動する為、キャスター50の座板51を水平にスライド移動させることで、座板挿入口21を介して、座板受容部20内部に配置することが可能となる(図8参照)。
キャスター50の座板51を座板受容部20内に配置した場合、座板51の前端縁及び後端縁は、夫々、座板受容部20を構成する側部リブ22と接触し、座板51における一方の側端縁(この場合、左側端縁)は、座板受容部20の奥部リブ23と接触する。従って、当該座板51は、座板受容部20内に配設されると、座板挿入口21が位置する方向を除く水平方向への移動が規制される。
又、座板受容部20内を構成する天板壁11下面と下方支持部24上面は、座板51の板厚に対応する寸法離間している。従って、座板51を座板受容部20内に挿入すると、当該座板51の前後方向における両端部は、座板受容部20内の天板壁11下面と、下方支持部24上面とによって挟持され、座板51の上下方向への移動が規制される。
こうして、キャスター50の座板51を、座板受容部20内の取付位置に配置すると、使用者は、リテーナ操作部41を用いて、リテーナ部材40を、スライド保持部32に嵌合されている回動軸48を軸に回動させて、リテーナ受容部30内部に収容する。
図9、図10に示すように、リテーナ受容部30内部に収容された場合、リテーナ部材40は、台盤10の左右方向内側(この場合、右側)から、座板受容部20の座板挿入口21へと延びる経路上に位置する。この時、リテーナ部材40の一側面は、座板受容部20の座板挿入口21に隣接して配置され、座板受容部20内に収容された座板51の他方の側端縁と接触可能に配置される(図9〜図14参照)。従って、リテーナ部材40の一側面は、座板受容部20を構成する側部リブ22及び奥部リブ23と協働することで、座板受容部20内における座板51の水平方向への移動を規制する。
尚、図9、図10に示すように、リテーナ受容部30にリテーナ部材40を回動させただけでは、リテーナ部材40の端部(この場合、前端部)は、台盤10に鉛直な方向に移動可能な状態にある。即ち、リテーナ部材40が回動軸48を中心に自由に回動することが可能であり、リテーナ受容部30の外部へ移動してしまう可能性が高い。上述したように、リテーナ部材40がリテーナ受容部30外部へ移動した場合、座板51は、座板挿入口21を介して、座板受容部20外部へ移動可能となり、キャスター50が外れてしまう場合がある。
そこで、使用者は、リテーナ操作部41等を用いて、リテーナ受容部30内部の前方側に向かって、リテーナ部材40をスライド移動させる(図11〜図14参照)。この時、リテーナ部材40の各回動軸48は、前後方向に長手寸法を有する矩形の開口として形成されたスライド保持部32に沿って前方へ移動する。このスライド移動の過程においても、リテーナ部材40の各回動軸48は、リテーナ部材40を回動可能な状態のままである。
その為、使用者は、リテーナ受容部30内部において、天板壁11下面側に向かってリテーナ部材40を回動させた状態で、前方側に向かってリテーナ部材40をスライド移動させることができる。これにより、リテーナ部材40の係止凸部49は、板バネ44の付勢力に抗して枠状係止部36の上方を通過し、その後、板バネ44の付勢力に従って係止穴37内部に挿入される。この時、リテーナ部材40における係止凸部49の周囲には、枠状係止部36が位置している為、リテーナ部材40の水平方向への移動を規制することができる。又、枠状係止部36は、リテーナ部材40の下面に対して下側に位置している為、リテーナ部材40の前端部は、リテーナ係止部35の枠状係止部36上面と接触することによって、下方向への移動が規制され、リテーナ受容部30内に固定される。
一方、各回動軸48がリテーナ保持部31を構成するスライド保持部32にそれぞれ嵌合している為、リテーナ部材40の後端部は、上下方向の移動が規制されている。即ち、当該台車1においては、リテーナ受容部30内部において、リテーナ部材40を前方にスライド移動させ、係止凸部49を係止穴37に挿入させることによって、リテーナ部材40をリテーナ受容部30内に固定することができる。
図13、図14に示すように、リテーナ部材40をリテーナ受容部30内部に収容して固定した場合、リテーナ部材40の一側面(この場合、左側面)は、座板受容部20の座板挿入口21に隣接して配置され、座板受容部20内に収容された座板51の他方の側端縁と接触可能に配置される。即ち、当該台車1によれば、リテーナ受容部30内部において、リテーナ部材40を上方へ回動させつつスライド移動させ、リテーナ係止部35で規制することによって、キャスター50の座板51を、座板受容部20内の取付位置に取付固定することができる。又、当該キャスター50の座板51は、その前後方向両端部において、座板受容部20の下方支持部24によって上下方向の移動が規制されている為、当該台車1は、キャスター50の座板51を、座板受容部20内の取付位置に対して、より正確に取付固定することができる。
(キャスターの取り外し作業)
そして、本実施形態において、台盤10下面からキャスター50を取り外す場合には、上述した取付固定作業と逆の手順を行えばよい。具体的に、図8〜図14と同様に、台盤10の左前方に位置するキャスター50の取り外し作業について説明する。
キャスター50を取り外す場合、使用者は、図13、図14に示す状態から、リテーナ操作部41等を利用して、天板壁11下面に近づくように上方へ回動させつつ、リテーナ部材40を、リテーナ受容部30内部において後方へスライド移動させる。この時、板バネ44の付勢力に抗して、天板壁11下面に近づくように、リテーナ部材40を回動させることで、係止凸部49がリテーナ係止部35の係止穴37から抜け出す為、リテーナ部材40は、リテーナ受容部30の後方に向かってスライド移動可能な状態となる。
そして、リテーナ部材40を、リテーナ受容部30内部において後方へスライド移動させると、リテーナ部材40の前端部は、リテーナ係止部35の枠状係止部36における上方から移動する。これにより、リテーナ部材40は、当該リテーナ部材40の後端部に形成された回動軸48を軸として、台盤10下面に対して垂直方向へ回動可能な状態となる(図9、図10参照)。
その後、使用者は、リテーナ操作部41や操作用凹部42を用いて、スライド保持部32に嵌合している回動軸48を中心として、リテーナ部材40を、台盤10下面に対して垂直方向へ回動させる。図8に示すように、リテーナ部材40が、台盤10の左右方向内側(この場合、右側)から、座板受容部20の座板挿入口21へと延びる経路上から移動する。これにより、キャスター50の座板51は、座板受容部20の内部から、座板挿入口21方向へスライド移動可能な状態となる。使用者は、キャスター50の座板51を、座板挿入口21方向へスライド移動させることで、座板51を座板受容部20内から取り外すことができ、もって、キャスター50の取り外し作業を完了する。
以上説明したように、本実施形態に係る台車1は、合成樹脂製の台盤10と、前記台盤10の下面に対して取り付けられた複数のキャスター50と、を有しており、当該台盤10上に物品を積載して運搬作業に利用することができる。図2等に示すように、前記台盤10の下面には、座板受容部20とリテーナ受容部30が形成されており、リテーナ受容部30は、前記座板受容部20の座板挿入口21側において、水平方向に隣接した位置に配置されている。従って、当該台車1によれば、座板受容部20とリテーナ受容部30が水平方向に隣接して形成されているので、上下方向に関する台盤10の小型化及び軽量化に対応することができ、もって、台車1自体の小型化及び軽量化に対応することができる。
そして、当該台車1においては、前記リテーナ受容部30内を、リテーナ付勢部43を構成する板バネ44の付勢力に抗して、前記リテーナ部材40を垂直方向に変位させつつ、前記所定方向へスライド移動させることができる。当該台車1によれば、このようにしてリテーナ部材40を、リテーナ受容部30内をリテーナ係止部35側へスライド移動させた場合に、リテーナ付勢部43における板バネ44の付勢力によってリテーナ係止部35とリテーナ部材40の係止凸部49が係合して、リテーナ受容部30内に固定することができ、当該リテーナ部材40の一側面を、前記座板受容部20の座板挿入口21に隣接する位置で固定することができる。これにより、座板受容部20内の取付位置に配置された座板51の水平移動を規制することができ、キャスター50の座板51を、座板受容部20内の取付位置に取付固定することができる。即ち、当該台車1によれば、前記リテーナ受容部30内において、前記リテーナ部材40を、リテーナ付勢部43における板バネ44の付勢力に抗して垂直方向に変位させつつ、前記所定方向へスライド移動させるという簡単な操作で、キャスター50の座板51を前記座板受容部20内に、容易かつ確実に取り付け固定することができる。
更に、リテーナ部材40の上面には、第1破損防止部45、第2破損防止部46、第3破損防止部47が形成されており、天板壁11下面とリテーナ部材40上面との間隔を所定値以上に規制することができる。リテーナ付勢部43の板バネ44は、リテーナ部材40の上面に形成されており、天板壁11下面とリテーナ部材40上面との間隔に対応する付勢力を発生させるが、天板壁11下面とリテーナ部材40上面との間隔が狭まりすぎると、板バネ44の塑性変形等や破損を招き、付勢力の低下を招く。この点、当該台車1によれば、第1破損防止部45〜第3破損防止部47によって、前記台盤10の下面と前記リテーナ部材40上面との間隔を所定値以上に規制することで、リテーナ付勢部43の破損や付勢力の低下を抑制することができる。
又、前記リテーナ受容部30のリテーナ保持部31は、スライド保持部32を有しており、当該スライド保持部32によって、天板壁11下面に対して垂直方向への回動を可能としつつ、前後方向へのスライド移動を可能に、前記リテーナ部材40の一端部を保持する。即ち、当該台車1によれば、リテーナ保持部31によってリテーナ部材40の一端部を保持することによって、リテーナ受容部30内において、前記リテーナ部材40を前記前後方向へスライド移動させることができる。
そして、当該リテーナ部材40は、リテーナ保持部31によって、天板壁11下面に対して垂直方向への回動を可能に保持されている為、天板壁11下面に近づくようにリテーナ部材40を回動させることで、リテーナ付勢部43の付勢力に抗して、リテーナ部材40を垂直方向に変位させることができる。又、天板壁11下面から離間するようにリテーナ部材40を回動させることで、前記取付位置へ向かう前記キャスター50の座板51の移動方向上流側の位置から、リテーナ部材40を移動させることができる。そして、当該台車1において、リテーナ部材40はリテーナ操作部41を有している為、リテーナ保持部31に従って、前記リテーナ受容部30内における前後方向へのスライド移動に関する操作と、前記天板壁11下面に対して垂直方向への回動及び変位に関する操作を、より容易に行うことができる。
そして、リテーナ部材40の上面には、リテーナ付勢部43を構成する板バネ44と、第1破損防止部45〜第3破損防止部47が形成されている。つまり、当該台車1によれば、リテーナ部材40の一面に、板バネ44及び、第1破損防止部45〜第3破損防止部47を形成することで、確実に、板バネ44の付勢力とリテーナ係止部35を協働させて、キャスター50を確実に取付固定すると同時に、リテーナ付勢部43を構成する板バネ44の破損や付勢力の低下を抑制することができる。
又、上述した実施形態においては、板状部材に対する部材取付構造として、台盤10に対するキャスター50の取付固定に用いている。即ち、本発明に係る板状部材に対する部材取付構造によれば、リテーナ部材40における板バネ44の付勢力とリテーナ係止部35の協働により、リテーナ受容部30内におけるリテーナ部材40の位置を、前記取付位置へ向かう前記対象部材としてのキャスター50の座板51の移動方向上流側に係合固定することができ、当該キャスター50を確実に取付固定することができる。本発明に係る板状部材に対する部材取付構造によれば、前記リテーナ部材40を、板バネ44の付勢力に抗して垂直方向に変位させつつ、前記前後方向へスライド移動させるという簡単な操作で、当該対象部材としてのキャスター50を、板状部材である台盤10の所定位置に取付固定することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本発明に係る台車1においては、リテーナ部材40の上面に、リテーナ付勢部43を構成する板バネ44を形成していたが、この構成に限定されるものではない。本発明に係る付勢部は、リテーナ部材40と一体に形成される板バネ44に限定されるものではなく、天板壁11下面とリテーナ部材40上面との間で、上下方向に付勢力を生じさせるものであれば、種々の構成を採用することができる。例えば、天板壁11下面と一体に板バネを形成してもよいし、付勢部を、台盤10及びリテーナ部材40とは別部材に形成することもできる。又、付勢部は、板バネに限定されるものではなく、例えば、コイルスプリングを用いることも可能である。
又、上述した実施形態においては、リテーナ部材40上面に、第1破損防止部45〜第3破損防止部47を一体形成していたが、この態様に限定されるものではない。本発明における破損防止部は、天板壁11下面とリテーナ部材40上面との間隔を規制することができればよく、例えば、天板壁11下面から下方に向かって突出形成して、破損防止部とすることも可能である。
そして、上述した実施形態においては、キャスター50の座板51の着脱作業に際し、リテーナ部材40の係止凸部49と、リテーナ受容部30のリテーナ係止部35との係合又は係合解除を行う場合、リテーナ保持部31に保持された回動軸48を中心として、リテーナ部材40を天板壁11下面に向かって回動させた後、リテーナ受容部30内をスライド移動させていたが、この態様に限定されるものではない。
リテーナ係止部35と係止凸部49の係合又は係合解除においては、リテーナ部材40の長手方向他端側が、板バネ44の付勢力に抗して、天板壁11下面に向かって変位していれば、リテーナ部材40のスライド移動を行うことで、係止穴37に対する係止凸部49の係合又は係合解除を行うことができる。即ち、この場合における天板壁11下面に向かうリテーナ部材40の変位の態様としては、種々の態様を採用することができる。例えば、リテーナ部材40全体を、板バネ44の付勢力に抗して、天板壁11下面側に向かって変位させてもよい。
又、上述した実施形態において、リテーナ保持部31は、スライド保持部32と、取付ガイド部33を有して構成されており、リテーナ部材40の回動軸48を嵌合させて、リテーナ受容部30に対して一体的に取り付けていたが、この態様に限定されるものではない。本発明における保持機構部(即ち、スライド保持部32)は、天板壁11下面に対して垂直方向への回動を可能としつつ、前記所定方向へのスライド移動を可能に、前記リテーナ部材40の一端部を保持することができれば、種々の態様を採用することができる。上述のように、リテーナ受容部30に対して、リテーナ部材40を一体的に取り付ける構成とすれば、キャスター50の着脱作業時等においても、リテーナ部材40がリテーナ受容部30から外れることはなく、もって、リテーナ部材40の紛失を防止することができる。
又、上述した実施形態においては、本発明に係る板状部材に対する部材取付構造を、板状部材である台盤10に対して、座板51を有するキャスター50を取り付ける構成に適用していたが、この態様に限定されるものではない。本発明に係る板状部材に対する部材取付構造は、板状部材に対して座板を有する対象部材を取り付ける構成であれば、種々の物品に適用することができる。例えば、板状部材としてのテーブルの天板に対して、対象部材としてのテーブルの脚を取り付ける構成に適用してもよいし、板状部材としての椅子の座面に対して、対象部材としての椅子の足を取り付ける構成に適用することも可能である。