JP6490491B2 - 被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基体の表面側が陽極酸化層(膜)で被覆された被覆部材とその製造方法に関する。
アルミニウム系部材は、耐食性、耐摩耗性、絶縁性等の向上を図るために、陽極酸化処理がなされることが多い。陽極酸化処理は、アルミニウム系部材の被処理部を電解液浴(硫酸浴、シュウ酸浴等)に浸漬等して、その被処理部を陽極として通電することによりなされる。この酸化処理により、被処理部の表面側に基体中のAlが酸化した酸化アルミニウム(Al)から主になる陽極酸化層(アルマイト皮膜)が形成される。このように陽極酸化層は、基体自体の酸化を伴う点でめっき層等とは異なる。
ところで、陽極酸化層は、通常、初期に形成される緻密で薄い(数十nm程度)バリヤー層(活性層)と、このバリヤー層上に通電量に応じて成長するポーラス層とからなる。陽極酸化層の厚さは通常数μm以上であるため、陽極酸化層の大部分はポーラス層からなる。ポーラス層は、通常、表面側に開口した多数の直管状の微細孔からなるため、沸騰水や高温水蒸気等を接触させて封孔する封孔処理または孔全体を埋める封止処理がなされることが多い。
このようなポーラス層を表面側に有する従来の陽極酸化層に対して、内部側(基体側)にも実質的に閉じた空孔を積極的に形成させた高空孔率の陽極酸化層の利用が検討されている。高空孔率な陽極酸化層は、本来の耐熱性と共に、高断熱性(低熱伝導性)を発現するため、高温環境下に曝される部材の断熱層として有効である。また陽極酸化層は、厚さ(膜厚)が高々数十μm〜数百μmであるため熱容量も十分に小さい。このため高空孔率の陽極酸化層は、高断熱性等と共に、雰囲気や基体の温度変化に即応できる高い温度追従性も発揮し得る。このような高空孔率の陽極酸化層に関する記載が、例えば下記の特許文献にある。
特許5642640号公報 特開2015−31226号公報
特許文献1および特許文献2は、例えば、内燃機関(ディーゼルエンジン等)の燃焼室に臨む壁面(ピストン頂面等)に、低熱伝導性と高い温度追従性(両者を併せて、適宜「スイング特性」という。)を高次元で両立し得る高空孔率な陽極酸化層(陽極酸化被膜)を形成することを提案している。
これら特許文献では、陽極酸化層の基体側(母材側)にある内部に、実質的に閉じた大きくて歪な空孔(第2ミクロ孔)を多数形成することにより、その空孔率を高めている。もっとも、このような空孔は陽極酸化層の破壊起点となり得るため、特許文献では、空孔率の向上を図る一方で、ポリシラザン等の表面塗布とその焼成によって空孔にシリカ等を充填させて陽極酸化層の補強を図っている。
しかし、ポリシラザン等を用いた封孔処理は、製造コストの上昇要因となる。また、厚い封孔層の形成は、陽極酸化層の表面側にある空孔の大部分を埋設させて閉塞するため、陽極酸化層全体としての空孔率ひいては断熱性は却って低下するおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、必ずしも特殊な封孔処理等を行うまでもなく、空孔率と機械的特性(強度、靱性等)を高次元で両立できる陽極酸化層で被覆された部材を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、陽極酸化層の基体側である内部領域に形成される空孔(適宜、「内部空孔」という。)の形態を制御することにより、陽極酸化層の空孔率と機械的特性の向上を図ることを着想した。そして、陽極酸化層が形成される基体の表面側にあるアルミニウム合金の金属組織を調整することにより、内部空孔の形態制御が可能になることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《被覆部材》
(1)本発明の被覆部材は、アルミニウム合金からなる表層部を有する基体と、該表層部上に形成された陽極酸化層とを備え、該基体の少なくとも一部の表面側にある表層部が該陽極酸化層で被覆された被覆部材であって、前記表層部のアルミニウム合金は、全体を100質量%(単に「%」という。)としてSi:13〜40%含むと共に、平均粒径が0.1μm〜10μmである初晶Si粒が分散した金属組織からなり、前記陽極酸化層は、厚さが30μm〜300μmであると共に、前記基体側にある内部領域に平均孔径が1μm〜10μmかつ平均円形度が0.27以上である空孔が分散した多孔質状となっており、該陽極酸化層が内燃機関の燃焼室に臨む壁面を構成する内燃機関用部材であることを特徴とする。
(2)本発明に係る陽極酸化層は、微細な特定粒子(Si粒)がほぼ均一的に分散した金属組織を有するアルミニウム合金からなる表層部上に形成されるため、自ずと、微細な内部空孔が基体側でほぼ均一的に分散した多孔質状となる。この結果、本発明に係る陽極酸化層は、断熱性に優れるのみならず、機械的特性(強度、靱性等)にも優れたものとなり、ひいては被覆部材(例えば、ピストン等の内燃機関用部材)の熱的特性等の向上、さらにはその被覆部材を用いた装置(例えば、内燃機関)の性能向上(例えば、高出力化、低燃費化)に寄与し得る。
本発明に係る陽極酸化層が、微細な内部空孔が分散した多孔質状となり、断熱性(低熱伝導性)と機械的特性の両方を向上させ得る理由は、現状、次のように考えられる。陽極酸化層は、通常、電解液浴(硫酸浴、シュウ酸浴等)に浸漬等された被処理部(表層部)へ、それを陽極として通電することにより形成される。このため陽極酸化層は、一般的なめっき被膜等とは異なり、被処理部を構成するAl自体が酸化され酸化アルミニウム(主にAlや水酸化アルミニウム)となって形成される。この際、陽極酸化層は、被処理部(表層部)に含まれるSi粒を回避して成長する。逆にいえば、表層部中に分散しているSi粒の周囲では酸化アルミニウムが成長せず、結果的に空孔が形成される。ここで本発明に係る表層部は、Si粒が微細分散した金属組織からなるため、それらに依って形成される空孔も微細に分散したものとなる。しかも、このようにして形成される微細な空孔は、特定方向に成長した歪な形状とはなり難く、円形度が大きい略球状に近いものとなり易い。こうして、少なくとも基体側の内部領域に、破壊起点とはなり難い略球状の微細な空孔が分散した多孔質状の陽極酸化層が得られ、この陽極酸化層で被覆された本発明の被覆部材は、優れた断熱性(低熱伝導性)と機械的特性(強度、靱性等)を発揮すると考えられる。
《被覆部材の製造方法》
本発明は被覆部材としてのみならず、その製造方法としても把握できる。例えば本発明は、基体の少なくとも表層部を電解液に接触させて通電することにより該表層部に陽極酸化層を形成する陽極酸化処理工程を備え、前記表層部は、平均粒径が0.1μm〜10μmである初晶Si粒が分散した金属組織を有するアルミニウム合金からなり、前記基体の少なくとも一部の表面側が前記陽極酸化層で被覆された被覆部材が得られることを特徴とする被覆部材の製造方法でもよい。
《その他》
(1)本発明に係るSi粒は、基本的にSiの結晶粒(単結晶粒でも多結晶粒でもよい。)からなる初であるSi粒は、鋳造したままの形態でもよいし、その後に塑性加工や熱処理等を施されて粒形態が調整されたものでもよい
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
試料1に係る陽極酸化層の内部領域を観察した顕微鏡写真である。 試料C1に係る陽極酸化層の内部領域を観察した顕微鏡写真である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の被覆部材としてのみならず、その製造方法にも適宜該当し、また方法的な構成要素であっても物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《表層部》
表層部は、Si粒が微細に分散した金属組織を有するアルミニウム合金からなる。高空孔率による低熱伝導性と、空孔の形態制御による機械的特性の確保とを図る観点から、Si粒の大きさは平均粒径が0.1μm〜10μmさらには1μm〜7μmであると好ましい
ここでいう平均粒径は、陽極酸化層の形成前の表層部または陽極酸化層が形成されていない領域の表層部について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した金属組織(被覆面側から観た金属組織)を画像処理することにより算出される。具体的にいうと、視野(5000μm×500μm)内にある各粒について、それぞれの占有面積(s)に相当する円直径(d=(4s/π)1/2:面積相当径)を求め、その総和(Σd)を各粒のカウント数(n)で除した平均値(dm=Σd/n)として、平均孔径は求まる。
なお、本発明に係るSi粒の平均粒径は、金属組織中に単独で存在するSi粒について算出する。つまり、表層部を構成する金属組織中に、共晶または化合物等として存在するSi(粒)は除外して、Si粒の平均粒径を算出する。例えば、表層部が鋳造したままの金属組織からなる場合であれば、初晶Si粒について、その平均粒径を上述した方法により算出する。また、鋳造材に塑性加工や熱処理等が施されて、初晶Si粒の粒子形態が調整されたものに関しては、その調整後のSi粒(初晶Si粒が分割等されてできたSi粒)について、上述した平均粒径を算出する。
表層部中におけるSi粒の分散量は、アルミニウム合金中に含まれるSiなどの添加元素量による影響が大きい。そこで表層部のアルミニウム合金は、全体を100質量%(単に「%」という。)としてSi:11〜60%、12〜50%、13〜40%または17〜30%含むと好ましい。なお、本発明に係るアルミニウム合金は、SiとCuを同時に含んでもよい
本発明に係るアルミニウム合金は、Al、Si、Cu以外に、種々の合金元素を含み得る。例えば、Mgを0.5〜3%さらには0.7〜2%含んでもよい。また、アルミニウム合金は、機械的特性を改善する他の改質元素や金属組織(特にSi粒)を微細化する微細化剤等を少量(例えば0.01〜1%程度)含んでもよい。一例を挙げると、Siを13%以上含む過共晶アルミニウム合金の場合なら、微細化剤としてPを含むと好ましい。Pは、例えば、Al−Cu−P合金等として鋳造用アルミニウム合金に添加される。この場合、少なくとも表層部は、微細化剤が添加された鋳造材からなるといえる。なお、本発明に係るアルミニウム合金にも、コスト的または技術的な理由等により除去することが困難な元素である不可避不純物が含まれ得る。
表層部は、Si粒が晶出した鋳造組織からなる場合の他、塑性加工(鍛造、展伸加工等)が施された加工材、アブレーションや摩擦撹拌等の処理が施された処理材等からなってもよいし、さらには基体とは別に、基体の表面側に溶射された溶射材または基体の表面側に別途貼着された貼着材からなってもよい。溶射材には、例えば、Si:40〜70質量%含むアルミニウム合金粉末を用いることができる。また、貼着材には、例えば、JIS規格やAA規格の4000番系の展伸用アルミニウム合金(例えば、Si量:8〜20%さらには10〜17%)を用いることができる。
《陽極酸化層》
本発明に係る陽極酸化層は、内部空孔が基体側に微細分散した多孔質状であればよく、陽極酸化層の厚さ、空孔率、さらには陽極酸化層の表面側にある空孔(適宜、「表面空孔」という。)の形態や封孔処理の有無等は、陽極酸化層または被覆部材の要求仕様に応じて適宜調整され得る。
例えば、陽極酸化層の断熱性、温度追従性、機械的特性、生産性(処理時間)等を考慮して、その厚さは、30μm〜300μmさらには50μm〜150μmとするとよい。なお、本発明に係る陽極酸化層の厚さは、SEMで観察した表層部の断面写真(画像)に基づいて測定される基体と陽極酸化層の界面から陽極酸化層の表面までの距離とする。
内部空孔の具体的な形態(形状やサイズ)は、被覆部材の仕様に応じて調整され得るが、例えば、基体の表面側にある内部領域にある空孔(内部空孔)は、平均孔径が1μm〜10μmさらには2μm〜5μmであると好ましい。また、内部空孔の平均円形度は、0.27以上、0.28以上さらには0.29以上であると好ましい。さらに陽極酸化層は、内部領域内の空孔率が20〜80%さらには40〜75%であると好ましい。
陽極酸化層の内部領域は、微細な細孔(連通路)等の有無は別にして、ミクロ的に観て実質的に閉じた形状の空孔(内部空孔)が分散している。内部領域の大きさは、陽極酸化層の厚さにより変化する。上述した平均孔径または平均円形度を算出する際には、陽極酸化層の厚さの1/2に相当する基体側の領域を内部領域として、その断面写真(画像)を画像処理して算出する。
具体的にいうと、平均孔径は、Si粒等の平均粒径を算出する場合と同様に、内部領域に含まれる視野(例えば250μm×70μm)内にある各空孔の面積相当径(dpi)の平均値(dpm=Σdpi/n)として求められる。また空孔率は、その視野内の全面積(P)に対する各空孔の占有面積(p=πdpi /4)の総和の割合(100×Σp/P)として求められる。さらに、平均円形度は、その視野内にある各空孔について求めた円形度の平均値として求める。具体的には、各空孔の実際の外周長(l)に対する、各空孔の面積相当径(dpi)に基づく円周長(l=πdpi)の比率である円形度(l/l)を求め、その平均値(lm=(Σl/l)/n)を平均円形度とする。
陽極酸化層の表面側の領域(適宜、「表面領域」という。)は、適宜、封孔処理がなされると好ましい。封孔処理により、表面空孔の一部が実質的に閉じた閉孔となり、陽極酸化層の断熱性(熱伝導性)の向上と共に強度、耐熱性、耐久性等の向上も期待図ることができる。従って本発明に係る陽極酸化層は、その表面を封孔する封孔層を有すると好ましい。
封孔処理は、被覆部材の用途に応じて適切な方法が選択されると好ましい。例えば、陽極酸化層を沸騰水や高圧蒸気等に曝して封孔処理をしてもよい。この場合、陽極酸化層を構成する酸化アルミニウムが酸化アルミニウム水和物となり体積膨張するため、少なくとも表面領域にある細孔が封孔される。
また、内燃機関の燃焼室に臨む壁面のように、高温環境下に曝される陽極酸化層の場合、その表面にポリシラザンやポリシロキサン等のSi系ポリマーを塗布し、さらにそれを焼成して孔の入り口を塞ぐ封孔処理または孔全体を埋める封止処理をしてもよい。この場合、陽極酸化層の表面側が、ケイ素化合物(例えば、シリカを含むケイ酸塩)からなる封孔層または封止層によって閉塞される。
《用途》
本発明の被覆部材は、種々の用途が考えられるが、その低熱伝導性(断熱性)、温度追従性、機械的特性等から、例えば、陽極酸化層が内燃機関の燃焼室に臨む内燃機関用部材であると好適である。このような内燃機関用部材として、例えば、 ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに用いられるエンジンブロック、シリンダライナー、シリンダヘッド、ピストン、吸排気バルブ等がある。なお、被覆部材の基体は、表層部のアルミニウム合金と同種材で構成されてもよいし、異種材で構成されてもよい。勿論、表層部が基体の一部であり、陽極酸化層が基体の一部に形成されたものであると、別途、表層部を設ける必要もない。
Si粒の形態が異なる金属組織を有するアルミニウム合金からなる基材の表面に、それぞれ陽極酸化層を形成した試料を製作した。各試料の陽極酸化層の内部に形成される空孔を測定、観察して、内部空孔の形態におよぼす金属組織の影響を評価した。以下、このような具体例を挙げつつ、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本実施例は、その基材の表面部が本発明でいう基体の表層部に相当し、表層部を含む基体全体が同一材料からなる場合である。以下では、便宜上、用語を統一して供試材を「基体」という。
《試料の製造》
(1)基体
陽極酸化層を形成する基体(供試材)として、Al−18%Si鋳造合金(試料C1)と、それにPを100質量ppm添加して初晶Siを微細化した鋳造合金(試料1)を用意した。
試料1の基体は、溶湯中にPを添加することにより、微細なSi粒が分散した金属組織からなり、試料C1では、Pによる微細化処理をしてないため、粗大なSi粒が晶出している。各試料に係るSi粒の平均粒径は、既述した方法により算出して表1に示した。
(2)陽極酸化処理
硫酸水溶液(電解液)中に各基体(被処理面)を浸し、それを陽極、白金電極を陰極として通電した。この際、被処理面を除く供試材の他面はマスキングして、被処理面と白金電極の間で通電がされるようにした。また電解液は、硫酸濃度(質量%):20%、温度(浴温):10℃とした。
通電は、直流電源を用いて、125mA/cm、通電時間16分として電解処理を行った。こうして各試料の基体表面(表層部)に陽極酸化層を形成した。
通電終了後、各基体を電解液から取り出して蒸留水でよく洗浄し、圧縮空気を吹き付けて水分を除去した後、大気中で十分に乾燥させた。こうして基体表面に陽極酸化層が形成された各試料に係る試験片を得た。
《観察・測定》
(1)各試験片を切断し、陽極酸化層の基体側近傍(内部領域)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真を図1Aおよび図1B((両者を併せて単に「図1」という。))に示した。
(2)各試験片を切断し、その切断面を顕微鏡観察することにより、陽極酸化層の厚さ(層厚)、基体側に形成された空孔(内部空孔)の平均孔径、平均円形度、空孔率を、それぞれ既述した方法により算出した。こうして得られた結果を、表1に併せて示した。
《評価》
図1および表1からわかるように、陽極酸化層を形成する基体表面側(表層部)の金属組織(具体的にはSi粒サイズ)により、陽極酸化層の内部領域に形成される空孔形態を制御できることが明らかとなった。具体的にいうと、基体表面側に分散するSi粒を微細にすることにより、微細で略球形状の空孔が基体側に多数分布した多孔質状の陽極酸化層が形成されることが明らかとなった。このような陽極酸化層は、単に断熱性(低熱伝導性)に優れるのみならず、強度等の機械的特性にも優れるといえる。

Claims (11)

  1. アルミニウム合金からなる表層部を有する基体と、
    該表層部上に形成された陽極酸化層とを備え、
    該基体の少なくとも一部の表面側にある表層部が該陽極酸化層で被覆された被覆部材であって、
    前記表層部のアルミニウム合金は、全体を100質量%(単に「%」という。)としてSi:13〜40%含むと共に、平均粒径が0.1μm〜10μmである初晶Si粒が分散した金属組織からなり、
    前記陽極酸化層は、厚さが30μm〜300μmであると共に、前記基体側にある内部領域に平均孔径が1μm〜10μmかつ平均円形度が0.27以上である空孔が分散した多孔質状となっており、
    該陽極酸化層が内燃機関の燃焼室に臨む壁面を構成する内燃機関用部材であることを特徴とする被覆部材。
  2. 前記表層部のアルミニウム合金は、Si:130%含む請求項1に記載の被覆部材。
  3. 前記陽極酸化層は、厚さが50μm〜150μmである請求項1または2に記載の被覆部材。
  4. 前記表層部は、微細化剤が添加された鋳造材からなる請求項1〜3のいずれかに記載の被覆部材。
  5. 前記微細化剤は、Pである請求項4に記載の被覆部材。
  6. 前記Pは、前記表層部のアルミニウム合金全体を100%として、0.01〜1%含まれる請求項5に記載の被覆部材。
  7. 記平均孔径は2μm〜μmであり、
    前記平均円形度0.2以上である請求項1〜のいずれかに記載の被覆部材。
  8. さらに、前記陽極酸化層の表面を封孔する封孔層を有する請求項1〜7のいずれかに記載の被覆部材。
  9. 記内燃機関用部材は、エンジンブロック、シリンダライナー、シリンダヘッド、ピストンまたは吸排気バルブのいずれかである請求項1〜のいずれかに記載の被覆部材。
  10. 前記内燃機関用部材は、ピストンであり、
    前記陽極酸化層は、該ピストンの頂面に形成されている請求項9に記載の被覆部材。
  11. 平均粒径が0.1μm〜10μmである初晶Si粒が分散した金属組織からなるアルミニウム合金からなる表層部を有する基体を準備し、該表層部を電解液に接触させて通電することにより該表層部に陽極酸化層を形成する陽極酸化処理工程を備え、
    請求項1〜10のいずれかに記載の被覆部材が得られることを特徴とする被覆部材の製造方法。
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