JP2923434B2 - 内燃機関のピストン及びその製造方法 - Google Patents

内燃機関のピストン及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は内燃機関のピストンに関
し、その作動中に於いてピストンボス部近傍(ピストン
ボス部及びピン穴近傍)の熱変形に基づく、トラブル発
生を防止したピストン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ピストンとシリンダーとの摺動性改善の
ためには、ピストンリング溝の耐摩耗性を向上するため
に、少なくともトップリング溝を含む外部外周面に陽極
酸化をしたり、その上に合成樹脂や潤滑剤を被覆、含浸
させる方法(特願昭62−000033号)が知られて
いる。又、ピストンの頭頂部の熱的、機械的応力に耐久
性を向上するために陽極酸化処理することは知られてい
る。
【0003】そして、これは一応の成果を収めているも
のの、地球環境保護の見地から、排出ガス中のCO,H
C,NOXを低減させることが重要な課題となってきた
が、これらの要求事項に対応しようとすると、希薄燃焼
比(空燃比)すなわちA:空気の重量、F:燃料の重量
とするときのA/F比を大きくすると、ピストン頂部の
温度も上昇するので、その高い温度が同じピストン内に
設けられたピストンボス部にも伝達され、ピンとピスト
ンボス穴の熱変形を促進するとの知見を得た。すなわ
ち、発生する高温域の燃焼によりピストンのピンボスに
変形が生じ、ピンとピンボスの回転が不規則となり、そ
れによりピストンとシリンダーの摺動に異常を生じ、か
じり等と云う問題が発生していた。
【0004】一般にピストンのシリンダー内での上下摺
動はコネクティングロッドを介して、クランクシャフト
に回転力として伝達されるが、コネクティングロッドと
ピストンとはピンとピストンボスに接合されている。そ
してピストン摺動中はピンはピストンボスとの間で若干
の動きをしている。この動きがスムースであれば、エン
ジンの回転もスムースである。
【0005】従って空燃比の余り大きくない場合は、C
O,HC,NOXの発生は相当あるけれども、ピンとピ
ストンボスの若干の動きもスムースであり、この観点か
らのシリンダーとピストンのかじり等の問題は余り生じ
ないが、CO,HC,NOXを低減する必要性と燃料の
動的の見地からは空燃比を従来よりも若干増加させなけ
ればならず、空燃比の増加により、ピストン頭頂部の温
度は上昇し、熱伝達により、ピストンボスの温度も高く
なる。
【0006】ピストンボスの温度が高くなると、ピスト
ンボスは不均一な熱変形を生じ、ピンはボス中で自由な
動きができなくなり、延いてはピストンとシリンダーの
上下摺動が円滑に行なわれず、シリンダー壁やピストン
のスカート部のかじりや焼付きが生じ、エンジントラブ
ルの原因となる。上記の問題は4サイクルエンジンや2
サイクルエンジンのいずれのエンジンにも発生するが、
特に2サイクルエンジンには発生し易い傾向がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のピストン又はピ
ストンの頭頂部やピストンリング溝あるいはピストンの
スカート部等には耐熱性や耐摩耗特性の向上のために、
硬質アルマイトが処理されたものがあるが、ピストンボ
スやピン穴周辺にまで硬質アルマイト処理をした例はな
く、この部分の改良は念頭になかった。我々の知見によ
れば、空燃比の増加により、燃焼爆発時のピストンの頂
部の温度が上昇し、その温度の影響で、ピストンボス部
に熱変形を起し易いことが判った。この熱変形を生じる
とコネクティングロッドを保持するピンとピストンボス
の動きを著るしく妨害し、エンジントラブルを惹き起こ
すこととなる。本発明は上記のような問題点を解決した
ピストンの提供と、かかるピストンの製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を解
決するためになされたもので、その概要は以下に記載の
とおりである。すなわち、ピストンボス部近傍に、多孔
質陽極酸化皮膜を設け、該皮膜にモリブデン硫化物、フ
ッ素系樹脂等の潤滑性物質を含浸したことを特徴とする
内燃機関のピストン、及びかかるピストンを製造するた
めに、内燃機関のピストンの全表面に一次電解の多孔質
陽極酸化処理により多孔質の酸化皮膜を設け、しかる後
該酸化皮膜にモリブデン硫化物を二次電解処理法により
含浸するか、又はフッ素系樹脂を含浸させた後、少なく
ともピストンボス部近傍以外の部分を機械的,物理的に
もしくは化学的に研削して多孔質の酸化皮膜を除去する
内燃機関のピストンの製造方法、及びピストンボス部近
傍以外の部分を接着性テープ又は塗料によりマスキング
してピストンボス部近傍を陽極酸化し、これにモリブデ
ン硫化物、フッ素系樹脂等の潤滑性物質を含浸した後、
前記接着性テープ又は塗料の塗膜等のマスキングを剥離
する内燃機関のピストンの製造方法である。
【0009】本発明では、内燃機関のピストンに於い
て、コネクタにロッドを連結させるピンのためのピスト
ンボス(ピン軸受け)とピストンの表面側のピン穴の周
囲をピストンボス部近傍と称す。本発明では、少なくと
も上記のピストンボス部近傍に、多孔質陽極酸化皮膜を
設け、該皮膜にモリブデン硫化物、フッ素系樹脂等の潤
滑性物質(耐摩耗性材料)を含浸したことを特徴とする
内燃機関のピストンを提供するものであり、このように
したピストンを得るための方法であって、その1は全体
の表面を多孔質陽極酸化皮膜で覆うようにし、これに前
記した潤滑性物質(耐摩耗性材料)を含浸させ、ピスト
ンボス部近傍以外を研削して多孔質陽極酸化皮膜を除去
する方法であり、他の1つは、ピストンのピストンボス
部近傍以外をマスキングしておき、多孔質陽極酸化皮膜
を設け、該皮膜にモリブデン硫化物、フッ素系樹脂等の
潤滑性物質(耐摩耗性材料)を含浸するものであり、多
孔質陽極酸化皮膜に潤滑性物質を含浸するには、多孔質
陽極酸化処理により多孔質の酸化皮膜を設け、該皮膜に
モリブデン硫化物を金属のチオ酸塩の水溶液内における
二次電解処理により生成含浸せしめる方法、もしくはフ
ッ素系樹脂塗料例えばフッ素系樹脂エマルジョン塗料を
塗布後加熱するか、フッ素系樹脂粉体を加熱時噴射溶融
することにより含浸せしめることにより達成される。
【0010】本発明において、ピストン材料として、高
ケイ素含有のアルミニウム軽合金としたのは、軽量で機
械強度が強く、耐熱性もよいためである。又上記製造方
法で使用される化学研削材料は、苛性ソーダの如きアル
カリが用いられ、機械研削には旋盤その他の研削機及び
アランダム、コランダム等の硬質粒子を噴射する物理的
研削方法としてブラスト法が用いられる。又、マスキン
グ材料としては、塩化ビニル、ポリエチレン、塩化ビニ
リデンその他樹脂フィルム、及びフッ素系樹脂フィルム
の如き樹脂フィルムに粘着剤を塗布したもの、又はこれ
らの樹脂塗料を塗布し塗膜を形成することによって達成
される。
【0011】上記の各研削法を特徴を述べれば、機械研
削法は、研削厚さの制御がし易く、研削面が平滑で綺麗
である。ブラスト加工の如き物理研削法は、大量生産に
適する。研削面は微少に粗面化するため、放熱性がよ
く、また含油性も向上する。アルカリ液の如き化学的研
削法は、筆タッチ等で所定の部分に塗布することにより
微少部分等限定された部分の研削が可能であり、方法も
極めて簡単である。従ってこれらの方法は適用する部分
に適宜組み合わせて採用することもできる。
【0012】次にマスキング材料としては接着テープと
塗料が挙げられるが、接着テープとしては、耐酸性、耐
アルカリ性、電気絶縁性で、ある程度強度を有すると同
時に接着力に優れ、かつ剥離する場合に接着剤の残留し
ないようなものが好ましい。代表的の接着テープとして
は、例えば日東電工社製の塩化ビニルを支持体としたS
PV−214,SPV−224等が好適に用いられる。
この接着テープを用いる方法の長所は、使用に当たり特
別の装置を必要とせず、簡単に作業ができるが、凹面や
微少部分は処理しがたいという問題ある。
【0013】また、塗料について述べれば、耐酸性、耐
アルカリ性で、電気絶縁性もあり、皮膜は一定の強度を
有したものが用いられるが、一般には、アクリル系、ポ
リスチレン系、パラフィン系、シリコー樹脂系、フッ素
樹脂系等の塗料が用いられる。どのような部分でも十分
に塗布できるが、若干の治具や工具を必要とし、乾燥に
時間がかかることと、最終的にはこれらのマスクを有機
溶剤等で完全に溶解除去する必要があるので若干手間が
かかる欠点がある。実際の処理に当たりピンボス部と一
緒に処理した方がよい部分は、作動時に顕著な熱変形を
受け易い部分、作動時にシリンダーと強く摩擦して摩耗
し易い部分、極端にマスキングし難い部分等であり、具
体的にはピストンの形状により各々その部分が相違する
が、一般的にはピンボス部の出入口の円周部や隆起した
部分は必ず一緒に処理して置く必要がある。
【0014】以下本発明を図面を参照しながら説明す
る。図1は4サイクルエンジンのピストンの一例で、ピ
ストン本体1には、その上部に下から順にオイルリング
嵌入グルーブ2a、ファーストリング嵌入グルーブ2b
が設けられており、それらにはそれぞれリングが嵌めら
れる。又、オイルリング嵌入グーブ2aの下方にはピス
トンボス3が設けられ、これには図示してないがピスト
ンピンを両端にスナップリングを用いて嵌入し、更にこ
のピストンピンにコンロッドが取り付けられる。本発明
で処理の対象としているのは上記のピストンボス3及び
その周辺で、図では薄墨で表示されている。なお、4は
スカート部、5は頭頂部を示す。更にピストンの材質
は、4サイクルエンジンではAC8A、いわゆるローエ
ックス合金が多く、それぞれSi(ケイ素)を多量に含
む金型鋳物からなるものであって、Siは12〜23重
量%の程度まで含有するものである。
【0015】図2は2サイクルエンジンのピストンの一
例で、ピストン本体1には、その上部に下から順にオイ
ルリング嵌入グーブ2a、セカンドリング嵌入グーブ2
c,ファーストリング嵌入グーブ2bが設けられてお
り、それらにはそれぞれリングが嵌められる。又、オイ
ルリング嵌入グーブ2aの下方にはピストンボス3が設
けられ、これには図示してないがピストンピンを両端に
スナップリングを用いて嵌入し、更にこのピストンピン
にコンロッドが取り付けられる。本発明で処理の対象と
しているのは上記のピストンボス3及びその周辺で、図
では薄墨で表示されている。なお、4はスカート部、5
は頭頂部を示す。なお、空燃比の増大により、高温域の
燃焼を生じ易い2サイクルエンジンのピストン材質はA
C9A,AC9Bであって、Siが19〜23%と多
く、その結果、熱膨張係数を少しでも低減させることが
試みられている。また形状面からピストンボスの熱変形
対策も多種多用に行なわれ、円滑にピンとピストンボス
が摺動可能なように要所にエンジンオイル供給のための
オイル穴やピストンボス近傍のスカート部分のスリット
等実施されている。
【0016】空燃比が例えば10%ほど増大した場合、
ピストン頭頂部の温度は約数十度近く上昇すると言わ
れ、これにより、ピストンボス部では数度の温度上昇と
なり、この数度の影響で、ピンとピストンボス間のミク
ロンレベルのクリアランスは変形を開始してしまう。
【0017】一般に、単純な穴やピストンボス部であれ
ば、温度上昇によって穴径やボス内径が、均一に減小
(縮少)されるものであるが、ピストンのように複雑な
形状になると、従来の単純な円筒体の熱変形対策では対
処出来ない。単純な内径縮少の変形であればピンとピス
トンボスの径の許容差範囲で+側に大き目にしておけば
良いわけであるが、実際には不均一な変形となり、予
測、推定がつけにくいのが実体である。このようなこと
から、空燃比は今や10%前後増大せざるを得ない実情
の中で、空燃比増大による高温域の燃焼、それによるピ
ストンボスの不規則変形、それによるピストンの上下往
復運動がスムースに行われず、エンジン回転の乱れを発
生するという重大な問題に突き合っている。
【0018】実際のピストンボス径は14〜16mmφ
程度の場合が多く、熱膨張係数はAC8A材で約19×
10-6とすると、仮りに数度の温度上昇があるとピスト
ンボス径は数μmの不規則変形を行うことになり、ピン
とピストンボス径との組合せ許容差を越えて順調なピン
の動きが不可能となる。更に高温域の燃焼により、ピス
トンボスの不規則な変形のみならずピンの直径をも膨張
させ、ますます、組合せ許容差を越えてピンの動きは制
限され、ピストンはますます変形,軟化が著しくなり、
シリンダー壁との間で”かじり”や”焼き付き”が発生
しだし、エンジン回転を乱すのみに留まらず、ピスト
ン,シリンダー,ピストンピン等の破損に至る。このよ
うな一連の因果関係を把握出来たので以下に示す発明に
至った。
【0019】すなわち、高ケイ素含有のアルミニウム軽
合金を材料としたピストンの少くともピストンボス部近
傍すなわちピン軸受部とピン穴周辺部を、硫酸,蓚酸あ
るいはある種の有機酸の単独または混合したものを電解
液として、陽極酸化処理して、数μmから数十μmの厚
さの陽極酸化皮膜を生成後、続いてテトラチオモリブデ
ン酸アンモニウム((NH4 2 MoS4 )等のモリブ
デン硫化物のような潤滑性を示す金属硫化物を陰極イオ
ン集団として有する物質を水中に解離し、先に生成され
た多孔質陽極酸化皮膜をこのMoS4 2- が解離して存在
する水溶液中にて再度、陽極として通電することによ
り、MoS4 2- は陽極側である多孔質皮膜の孔底に引き
こまれて、酸化され、最終的にはMoS2 で示される潤
滑性のあるモリブデン硫化物として、多孔質層全体に均
一に析出される。
【0020】このモリブデン硫化物が陽極酸化皮膜の多
孔質層全体に存在すると、従来のように表面からコート
したような密着性の弱い潤滑処理方法とは異なり、酸化
皮膜が完全に摩耗されてなくなるまで優れた潤滑性,耐
摩耗性を示すものであり、エンジン関連部品のように厳
しい摩耗条件では、本発明はなくてはならない技術であ
る。さらに本発明にてはこのモリブデン硫化物を有する
陽極酸化皮膜がピストンボス部としてピンと接すること
により、ピンの鋼材面にもこのモリブデン硫化物が反応
して鋼材と硫化物の反応物質の生成が必然的に生じ、こ
れが、ピンにスムースな運動を自主的にさせる大きな働
きをしていることも本発明の特徴である。
【0021】このように、モリブデン硫化物を含浸した
陽極酸化皮膜はピストンボス部においては、ピンとのス
ムースな動きを促進し、ピストンのスカート部にあるピ
ン穴近傍においてはシリンダーとピストンとのスムース
な上下摺動を促進している。そして、最も大切な効果と
してピストンボスとピンとの摺動の結果、ピン表面に鉄
の硫化物層や、モリブデン硫化物層が生成又は転移さ
れ、空燃比の増大による高温域の燃焼に対しても、ピン
とピストンボスの熱変形で生ずるクリヤランスの変動か
ら発生する摺動上のトラブルを解決している。
【0022】本発明者等は、上に述べた、モリブデン硫
化物という潤滑性物質の一次的,二次的潤滑効果とは別
に、陽極酸化皮膜が存在するかしないかで、熱膨張によ
る変形を大幅に制御出来ることを見出した。従って、本
発明における重要なことの2点目は、ピストンボス(ピ
ン軸受け)部を数μmから数十μmに至る硬い熱膨張率
の小さい(アルミ地金の約1/5前後とされている)陽
極酸化皮膜でカバーすれば、丁度熱変形しやすい軟かい
アルミ地金が熱変形しにくい硬い鎧のようなもので覆わ
れているため、熱変形を十分に抑制することが可能とな
る。本発明の対象となる熱変形の温度範囲はピストンの
頭頂部で400℃前後、ピストンボス部でもこれに匹適
する高温であるので、ピストンボス部の陽極酸化皮膜の
存在による熱膨張の抑制は十分に効果を発揮することが
出来る。
【0023】
【実施例】本発明のピストンの構造例を示せば図1、図
2に記載のとおりである。すなわち、図1は、本発明の
一実施例のピストンの(イ)は正面図、(ロ)は側面
図、(ハ)は(イ)の底面図である。参考までに寸法単
位を入れてある。図1において、ピストン本体1、オイ
ルリング嵌入グループ2、ファーストリング嵌入グルー
プ3よりなり、5はピストンボスで図示していないピス
トンピンが嵌入される。この場合本発明で表面処理を施
す部分はピストンボス5の入口の周囲部分及びピストン
ボスの近傍の薄墨部分である。
【0024】図2は、本発明の他の実施例のピストンの
(イ)は正面図、(ロ)は側面図、(ハ)は(イ)の底
面図である。図2において図1と同一部分には同じ符合
が付されているので説明を省略する。
【0025】
【方法の実施例】
実施例1 本発明の方法について説明すれば、高ケイ素含有のアル
ミニウム系合金で形成された内燃機関のピストンの全表
面に陽極酸化処理により多孔質の酸化皮膜を設け、これ
にモリブデン硫化物を二次電解処理法により含浸させ、
ピンボス部近傍以外の部分は旋盤等の研削機により研削
して本発明のピストンを得た。この場合、酸化皮膜の厚
さは数μm〜数十μmであるが、不要部分は問題無く除
去できた。
【0026】実施例2 実施例1において、モリブデン硫化物の含浸に代えてフ
ッ素樹脂ディスパージョン塗料を用いてフッ素樹脂を付
着させ、加熱乾燥することにより、容易にフッ素樹脂を
酸化皮膜中に含浸することができた。なお、フッ素樹脂
は粉体塗料の吹き付け、加熱含浸法でも同様に実施でき
る。またピンボス部近傍以外の部分の研削は実施例1と
同様にして、旋盤等の研削機により研削して本発明のピ
ストンを得た。
【0027】実施例3 実施例1において、旋盤等の研削機による研削に代え
て、アランダム、コランダム等硬質微粒子のブラストに
より物理的に研削して本発明のピストンを得た。
【0028】実施例4 実施例1において、旋盤等の研削機による研削に代え
て、3%の苛性ソーダで処理して陽極酸化皮膜を除去
し、1%の硝酸で処理して付着したアルカリを中和除去
し、水で洗浄して本発明のピストンを得た。
【0029】実施例5 高ケイ素含有のアルミニウム系合金で形成された内燃機
関のピストンのピストンボス部以外の部分は塩化ビニル
樹脂粘着フィルムでマスキングをして、残余の部分を陽
極酸化処理をし、ついでモリブデン硫化物を二次電解処
理法により含浸させ、その後前記塩化ビニル樹脂粘着フ
ィルムを除去して、粘着剤を拭き取り本発明のピストン
を得た。
【0030】実施例6 塩化ビニル樹脂粘着フィルムによるマスキングに代えて
ポリスチレン塗料を塗布した他は実施例5と同様にして
本発明のピストンを得た。
【0031】次に、図1,図2に示すような形状の2つ
のピストンについて、全く陽極酸化処理も、潤滑性材料
の含浸も行なわない全く無処理の状態のものと、ピスト
ンボスおよびスカート部にあるピン穴の周辺を陽極酸化
処理によって15μmの多孔質酸化皮膜を生成させた状
態のもの、さらに、この多孔質酸化皮膜にテトラチオモ
リブデン酸アンモニウム((NH4 2 MoS4 )水溶
液中にて陽極電解により、モリブデン硫化物を前記酸化
皮膜中に均一に含浸させた状態のものとの3つの表面状
態のピストンについて、空燃比を従来よりも5%,10
%,15%増大した時の高温域の燃焼によるピストンボ
スの熱変形度合を定性的に観察した結果を纏めて表1に
示す。
【0032】
【表1】
【0033】なお、表1はピストンボス部でのピンとの
摺動のあとを観察したものであり、◎は熱変形の影響を
全く受けていない場合、○は若干、摺動あとに熱変形の
影響が見受けられるが、実用上全く差支えないと思われ
る場合を示し、△は短期間の使用には問題が無いが、長
期間の使用では実用上問題となる場合を示し、×は短期
間でも危い場合を示し、××は全く実用不可能な場合で
ある。
【0034】これによれば、無処理のものでは、空燃比
が従来どおりの場合若干熱変形の影響を受けるが、短期
間ならば使用可能であるが、空燃比が5%以上アップす
ると熱変形の影響を受け、短期間でも使用不可能であ
り、陽極酸化のみの場合には空燃比が5%程度アップす
る場合に、若干熱変形の影響を受けるが、短期間ならば
使用可能であるものと認められ、陽極酸化にモリブデン
硫化物含浸を組み合わせたものでは空燃比が15%程度
アップする場合にも、なおほぼ問題無く使用できること
を示している。なお、モリブデン硫化物含浸に代えてフ
ッ素樹脂を含浸した場合もほぼ同様なデータが得られる
ことが判った。
【0035】本発明による効果を更に確認するために、
750cc空冷4サイクル エンジンにより、ベンチテ
ストを行なった。ベンチテストの条件は、図3に示すよ
うに、縦軸を回転数r.p.mとし、横軸をHr時間と
した。但し10,000r.p.mはフルトルクとし
た。ピストンはAC8A Si12%、ピストンピンは
SCM422浸炭焼入、外径研摩、スーパフィニッシュ
仕上げとした。ピストンピン穴は、 試料A:ピストンピン穴 ボーリングしたのちバーニシ
ュ仕上げした。 試料B:ピストンピン穴 ボーリングしたのち潤滑アル
マイト処理し、バーニシュ仕上げした。 これについて100Hrテスト後の摩耗量を径変化で示
せば下記のとおりである。 試料A:ピン外径22μm、ピン穴内径25μm、合計
47μm 試料B:ピン外径 9μm、ピン穴内径10μm、合計
19μm 以上潤滑アルマイト処理によりピン外径、ピン穴内径の
径変化は潤滑アルマイト処理なしの場合の約40%程度
であることが判る。この試料Bのレベルの径変化であれ
ば市場において、十分に市場価値があるものと認められ
る。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、ピストンのピスト
ンボス部とピン穴入口スカート近傍に、陽極酸化皮膜
と、その皮膜中にモリブデン硫化物を含浸させているの
で、エンジン回転時、ピンとピストンボスとの摺動、運
動においても、空燃比増大の結果、発生する高温域の燃
焼によるピストンボスの熱変形、熱軟化等を防止するこ
とが出来、空燃比を増大させても、従来通りの正常なエ
ンジン回転を行うことが出来る。又、ピストンボス部以
外のスカート部や頭頂部は酸化皮膜がないので、ピスト
ン運動に伴うピストンの温度上昇を防止することができ
る。なお、本発明の重要な効果として以下の3点が挙げ
られる。 モリブデン硫化物を含浸した潤滑アルマイトとして
のピンに対する潤滑効果と、ピン穴と接するシリンダー
に対する潤滑効果。 ピストンボスの潤滑アルマイトを介してピン表面に
転移、生成される鉄の硫化物やモリブデン硫化物の効
果。 ピストンボス部では、熱膨張率がアルミ地金の数分
の一という膨張が小さく、かつ、硬い鎧のようなアルマ
イト皮膜による熱膨張抑制効果。上記効果の中では特に
の効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のピストンの構造を示す(イ)
は正面図、(ロ)は側面図、(ハ)は(イ)の底面図。
【図2】本発明の実施例のピストンの構造を示す(イ)
は正面図、(ロ)は側面図、(ハ)は(イ)の底面図。
【図3】ベンチテストの条件を示すグラフ
【符号の説明】
1 ピストン本体 2a オイルリング嵌入グルーブ 2b ファーストリング嵌入グルーブ 2c セカンドリング嵌入グルーブ 3 ピストンボス 4 頭頂部 5 スカート部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石塚 豊昭 東京都江東区木場一丁目5番1号株式会 社フジクラ内 (72)発明者 伊藤 六郎 静岡県浜松市豊町3226−1 株式会社ミ ヤキ内 (72)発明者 横山 實 静岡県浜松市豊町3226−1 株式会社ミ ヤキ内 (56)参考文献 特開 昭57−140543(JP,A) 特開 昭59−121256(JP,A) 特開 昭63−170546(JP,A) 特開 平5−25696(JP,A) 実開 平4−106555(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F02F 3/00 F02F 3/02 F02F 3/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高ケイ素含有のアルミニウム系合金で形
    成された内燃機関のピストンにおいて、ピストンボス部
    近傍に、多孔質陽極酸化皮膜を設け、該皮膜にモリブデ
    ン硫化物、フッ素系樹脂等の潤滑性物質を含浸したこと
    を特徴とする内燃機関のピストン。
  2. 【請求項2】 高ケイ素含有のアルミニウム系合金で形
    成された内燃機関のピストンの全表面に多孔質陽極酸化
    処理により多孔質の酸化皮膜を設ける工程と、該酸化皮
    膜にモリブデン硫化物を二次電解処理法により含浸する
    か、又はフッ素系樹脂を含浸させる工程と、少なくとも
    ピストンボス部近傍以外の部分を機械的,物理的もしく
    は化学的に研削して多孔質の酸化皮膜を除去する工程と
    からなることを特徴とする内燃機関のピストンの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 高ケイ素含有のアルミニウム系合金で形
    成された内燃機関のピストンにおいて、ピストンボス部
    近傍以外の部分を接着性テープ又は塗料の塗布塗膜から
    なるマスキング材により隠蔽する工程と、ピストンボス
    部近傍を陽極酸化する工程と、該皮膜にモリブデン硫化
    物、フッ素系樹脂等の潤滑性物質を含浸する工程と、前
    記接着性テープ又は塗料の塗布塗膜からなるマスキング
    材を剥離する工程とからなることを特徴とする内燃機関
    のピストンの製造方法。
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