JP2004011026A - アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法 - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法 Download PDF

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三保家 誠
Masaya Nomura
野村 雅也
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Abstract

【課題】 設備が簡略であり処理費用が低減できるとともに、優れた耐摩耗性,耐腐食性等を有するアルミニウム又はアルミニウム合金が得られる表面処理方法、および優れた耐摩耗性等を有する摺動部材、ピストン等を提供する。
【解決手段】 フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液に、アルミニウム合金を浸漬して、75〜99℃の温度範囲で処理することを特徴とする表面処理方法、該表面処理が施されたピストン及びAl−OH−F化合物よりなる皮膜がコーティングされているピストン。
【選択図】     なし

Description

 本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法及びピストン、並びに、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理皮膜あるいは摺動面を被覆した摺動部材に関する。
 より詳しくは、設備が簡略であり処理費用が低減できるとともに、優れた耐摩耗性,耐腐食性等を有するアルミニウム又はアルミニウム合金が得られる表面処理方法、並びに、その方法によって表面処理されたピストンに関する。さらに、内燃機関の摺動面(スリーブ面)に用いられる優れた耐摩耗性,初期なじみ性,オイル保持性等を有する表面処理皮膜、及びそのような摺動皮膜で被覆された摺動部材に関する。
 従来から行われているアルマイト処理は、酸性浴中で陽極酸化することにより、アルミニウム表面に酸化アルミニウムの硬質膜を形成する方法である。しかし、この方法では、通電するための設備が必要であること、及び成膜速度が遅いことにより、コスト高になるという欠点があった。
 一方、錫メッキは、E/G部品であるアルミニウム製ピストンのスカート部に施される。この錫メッキは軟質であり、初期的な馴染みの効果はあるものの、耐摩耗性を向上させる効果は期待できない。
本発明者らは、上記従来の表面処理技術の問題点に鑑み、設備が簡略であり処理コストを低くできるとともに、均一な成膜ができ、かつ得られる膜が耐腐食性及び耐摩耗性等に優れる表面処理方法や摺動部材を開発すべく鋭意検討を行った。
 その結果、本発明者らは、フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液に、アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して、75〜99℃の温度範囲で処理する表面処理方法等により、上記問題点が解決されることを見い出した。また、摺動部材全体もしくは摺動面に、アルミニウムとフッ素と水酸基とからなる特定の皮膜等を被覆すること、あるいは、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成されるシリコン粒子を分散含有するフッ化水酸化アルミニウム化合物からなる特定の皮膜を用いること等によっても上記問題点が解決されることを見い出した。
 本発明は、かかる見地より完成されたものである。
 すなわち、本発明は、フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液(加熱水溶液)に、アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して、75〜99℃の温度範囲で処理することを特徴とする表面処理方法を提供するものである。このような本発明は、上記処理液(加熱水溶液)が水100重量部に対し、上記フッ素化合物0.1〜20重量部及びケイフッ化アンモニウム0.05〜15重量部を含むことが好ましい。ここで、フッ素化合物とは、ケイフッ化アンモニウム((NH)SiF)を除くフッ素化合物であり、ケイフッ化塩が好ましく用いられ、特にケイフッ化マグネシウム MgSiF・6HOが好ましく用いられる。
 また、本発明は、上記表面処理方法によって、表面処理が施されたことを特徴とするピストンを提供するものである。
 本発明における第2の発明は、ピストンの表面に、Al−OH−F化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物よりなる皮膜がコーティングされていること、好ましくはピストンリング溝,ピストンピンボス,スカート,ピストンヘッド及びピストン内面を含む全面に該皮膜がコーティングされていること、を特徴とするピストンをも提供するものである。この際、該Al−OH−F化合物等よりなる皮膜の厚さは、1μm〜10μmの範囲内にあることが好ましい。
 本発明における第3の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金製母材からなる摺動部材において、該摺動部材全体又は摺動面に、アルミニウムとフッ素と水酸基とからなる皮膜若しくはその水和物からなる皮膜又はNHMgAlF化合物からなる皮膜若しくはそれらの混合物からなる皮膜であって、立方晶系に属し、配向性を有しない摺動皮膜が被覆されている摺動部材を提供するものである。また、上記摺動部材全体もしくは摺動面に、1μm以下の微細結晶が集合して1μm〜100μmの集合体を形成し、1μm〜100μmの厚さの複数の該集合体からなる摺動皮膜が被覆されている摺動部材をも提供するものである。
 さらに、本発明における第4の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成されるシリコン粒子を分散含有するフッ化水酸化アルミニウム化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物からなる皮膜であって、該皮膜中に分散するシリコン粒子含有量が1〜24重量%,好ましくは6〜24重量%であり、かつ、該アルミニウム合金中のシリコン含有量が4〜24重量%,好ましくは7〜24重量%であることを特徴とするアルミニウム合金の表面処理皮膜を提供するものである。
本発明のアルミニウム合金の表面処理方法は、設備が簡略であり処理費用が低減できるとともに、優れた耐摩耗性,耐腐食性等を有するアルミニウム又はアルミニウム合金の表面皮膜方法を提供できる。
 すなわち、本発明によれば、処理条件が簡易であるため設備が簡略化でき、得られる表面被膜されたアルミニウム等は耐摩耗性に優れ、フリクション・ロスを低減できる。また、本発明の方法によって得られる膜は保護性があるため、処理条件によらず、アルミニウム等の全面に均一な膜厚となり、膜厚の不均衡が少ない。更に、得られた膜は優れた耐腐食性を有し、腐食環境下においても耐摩耗性に優れる。
 また、本発明の方法により表面処理されたピストンは、耐腐食性,耐摩耗性等に優れるので、優れた耐久性を有しており、各種エンジンのピストンとして有効に用いることが可能である。
 さらに、本発明によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金製摺動部材の摺動面(スリーブ面)に被覆することで、エンジンあるいはコンプレッサー等の耐摩耗性等の摺動特性,耐久性が向上する。
 以下、本発明について、詳細に説明する。
 先ず、本発明の表面処理方法について説明する。
 本発明の表面処理方法は、フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液(加熱水溶液)に、アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して、75〜99℃の温度範囲で処理するものである。
 本発明で用いられる処理液には、フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウム((NH)SiF)が含まれる。ここで、本発明におけるフッ素化合物とは、ケイフッ化アンモニウムを除くフッ素化合物を意味する。
 よって、本発明の処理液に用いられるフッ素化合物としては、ケイフッ化アンモニウムを除くフッ素元素を有する種々の化合物を挙げることができるが、具体的には、例えばケイフッ化マグネシウム(MgSiF・6HO),ケイフッ化亜鉛(ZnSiF・6HO),ケイフッ化カリウム(KSiF),ケイフッ化ソーダ(NaSiF),ケイフッ化マンガン(MnSiF・6HO)等のケイフッ化塩、ホウフッ化塩、フッ化ジルコニウム塩又はフッ化チタン塩などが挙げられる。これらのフッ素化合物の中でも、ケイフッ化塩が好ましく用いられ、特にケイフッ化マグネシウム,ケイフッ化マンガン等が好ましく用いられる。
 また、本発明で用いられる処理液には、水100重量部に対して、フッ素化合物が好ましくは0.1重量部〜20重量部,より好ましくは0.2〜15重量部、ケイフッ化アンモニウム((NH)SiF)が好ましくは0.05重量部〜15重量部,より好ましくは0.1〜10重量部含まれる。このような処理液を用いることによってアルミニウム合金の表面に、より一層の均一かつ耐腐食性等に優れた成膜が可能となる。
 本発明で用いられる処理液において、フッ素化合物が0.1重量部未満の場合、あるいはケイフッ化アンモニウムが0.05重量部未満の場合には、反応が遅くなり、処理時間が長くなってしまうので好ましくない。
 一方、フッ素化合物が20重量部を越える場合、あるいはケイフッ化アンモニウムが15重量部を越える場合には、溶解が困難となるため好ましくない。
 本発明の表面処理の対象となるのは、アルミニウム又はアルミニウム合金である。具体的には、純アルミニウム,アルミニウム展伸材,アルミニウム鋳物又はアルミニウム・ダイカスト材等であり、いずれの材質,材料に対しても適用が可能であり、表面処理により耐摩耗性及び耐腐食性等が向上する効果がある。
 また、処理物の前処理としては、油等の付着物を除去するだけで十分であるが、可性ソーダ等を用いたアルカリ・エッチングや酸洗処理を施した後に表面処理を施しても良い。
 本発明では、上記処理液(加熱水溶液)に、表面処理の対象であるアルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して表面処理を行う。
 アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬する際の処理液の温度は、75℃〜99℃の範囲内であり、好ましくは80℃〜98℃の範囲内である。処理液の温度が75℃未満であるような温度の低い場合には、反応が遅くなり、処理時間が長くなってしまうので好ましくない。一方、処理液の温度が99℃を越えてしまうような高い温度の場合には、処理液の蒸発が多くなってしまうので好ましくない。
 処理時間については、成膜反応は約1分間程度で終了するため、2分間程度の浸漬を行えば表面処理としては十分である。但し、この皮膜は保護作用があるので、一旦、成膜した後は30分以上浸漬しておいても何ら問題は生じない。
 そして、このような本発明の表面処理方法により成膜されたアルミニウム等の表面処理膜には保護作用があり、アルミ基材の耐腐食性を向上させることができる。また、得られる表面処理膜は耐摩耗性に優れる。
 一方、本発明の表面処理方法によれば、通電させるための設備が一切不要であることから、設備を簡略化することができ、コスト的にも極めて有利である。また、本発明の表面処理方法は、従来の表面処理技術よりアルミニウム等の表面への成膜速度が速いので生産性が高い。
 次に、本発明における第2の発明であるピストンについて説明する。
 本発明のピストンは、ケイフッ化塩等のフッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液(加熱水溶液)に、アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して、70〜100℃の温度範囲で処理する表面処理方法によって、表面処理が施されたものである。ここで、上記処理液が水100重量部に対し、上記フッ素化合物0.1〜20重量部及びケイフッ化アンモニウム0.05〜15重量部を含むことが好ましい。
 本発明のピストンは、上記表面処理方法による成膜を施す前に、有機溶剤,脱脂剤等を用いて清浄化する。対象としては、通常のアルミニウム合金製エンジン・ピストンを広く用いることができる。
 清浄化したエンジン・ピストンは、上記表面処理方法により処理液に浸漬され、ピストン表面にAl−OH−F化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物が成膜される。この処理においては、例えばAl−OH−F化合物の場合には、アルミニウム製ピストン表面からアルミニウムが僅かに溶解して、このアルミニウムと溶液中のフッ素基,水酸基とが反応して、Al−OH−F化合物がピストン表面に析出する。また、マグネシウムの存在により、NHMgAlF化合物がピストン表面に析出すること、あるいは、Al−OH−F化合物の析出とともにNHMgAlF化合物がピストン表面に析出することによっても本発明のピストンが得られる。
 処理時間については、上記の表面処理方法と同様に、成膜反応が約1分間程度で終了するため、2分間程度の浸漬を行えば表面処理としては十分であり、好ましくは3〜10分間程度行われる。但し、この皮膜は保護作用があるので、一旦、成膜した後は30分以上浸漬しておいても何ら問題はない。
 上記のようにして得られる本発明のピストンは、ピストンの表面にAl−OH−F化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物よりなる皮膜がコーティングされているので、表面状態が優れる。また、Al−OH−F化合物等よりなる該皮膜は、ピストンリング溝,ピストンピンボス,スカート面,ピストンヘッドあるいはピストン内面のいずれの箇所にコーティングされていても成膜の効果が認められるが、これらの箇所を含む全面に該皮膜がコーティングされていることが好ましい。
 そして、ピストン表面のAl−OH−F化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物よりなる皮膜の厚さは、1μm〜10μmの範囲内にあることが好ましい。
 このような本発明のピストンは、例えば従来の錫メッキ処理が施されたピストンのように軟質ではなく、耐摩耗性に優れ、耐久性に極めて優れるピストンである。
 次に、本発明における第3の発明である摺動部材について説明する。
 本発明の摺動部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金製母材からなり、該摺動部材全体又は摺動面に、アルミニウムとフッ素と水酸基とからなる皮膜若しくはその水和物からなる皮膜又はNHMgAlF化合物からなる皮膜若しくはそれらの混合物からなる皮膜であって、立方晶系に属し、配向性を有しない摺動皮膜が被覆されている。あるいは、上記摺動部材全体もしくは摺動面に、1μm以下の微細結晶が集合して1μm〜100μmの集合体を形成し、1μm〜100μmの厚さの複数の該集合体からなる摺動皮膜が被覆されている。ここで、上記Al−OH−F化合物の水和物としては、例えばAl(OH)2.763.24・HO,AlF1.65(OH)1.35・xHO等が挙げられる。以下、図1に基づいて詳細に説明する。
 図1において、摺動部材である内燃機関用ピストン1は、アルミニウム合金製母材2を有し、この母材表面に摺動特性を向上させるための摺動皮膜3が被覆させてある。スカート部5は、相手部材であるシリンダボア内壁と摺動し、リング溝4はピストンリングと摺動し、ピン穴部6はピストンピンと摺動する。
 母材2の材質としては、例えばAl−Si−Cu−Ni−Mg系合金等が用いられ、該合金として具体的には、AC8A,AC8B,AC9A,AC9B等が挙げられる。
 摺動皮膜3は、ピストン1に化成処理を施すことにより、ピストン1の表面に形成される。その皮膜3は、1つにはアルミニウムとフッ素(F)とOH(水酸基)とからなる皮膜、あるいは、例えばAl(OH)2.763.24・HOやAlF1.65(OH)1.35・xHO等のそれらの水和物である場合がある。また、この皮膜3は、他にはNHMgAlF化合物からなる皮膜である場合、あるいは、上記Al−OH−F化合物若しくはそれらの水和物及びNHMgAlF化合物等の混合物からなる皮膜である場合がある。これらいずれの組成からなる場合であっても、皮膜構造は立方晶系に属し、配向性を有していないものである。
 このような摺動皮膜3は1μm以下の微細結晶7からなり、これらが集合して1μm〜100μmの集合体8を形成し、この複数の集合体8が母材表面を1μm〜100μmの厚さで覆っている(図2参照)。この摺動皮膜が、新たな摺動面を形成している。
 この摺動皮膜3の微細結晶7及び集合体8により、摺動面の表面積が増加し、これによりオイル保持性が向上する。また、集合体8が優先的に摩耗するため、摺動面の初期なじみ性が良好となる。これらの摩耗特性の向上は、摺動部材の耐久性の向上、フリクションの低減、及び燃費の向上に効果がある。
 最後に、本発明における第4の発明である表面処理皮膜について説明する。
 本発明のアルミニウム合金の表面処理皮膜は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成されるシリコン粒子を分散含有するフッ化水酸化アルミニウム化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物からなる皮膜である。そして、皮膜中に分散するシリコン粒子含有量が1〜24重量%,好ましくは6〜24重量%であり、かつ、上記アルミニウム合金中のシリコン含有量が4〜24重量%,好ましくは7〜24重量%である。
 図3に、本発明による皮膜構造を示す。母材となるアルミニウム合金は、シリコン(Si)を4〜24%含有しており、アルミニウム基地中に、共晶Siあるいは共晶Si/初晶Siが分散している。アルミニウム合金の表面は、フッ化水酸化アルミニウム化合物若しくはNHMgAlF化合物又はこれら両方の化合物によって覆われており、この皮膜中には、アルミニウム合金母材中に分散する共晶Siあるいは共晶Si/初晶Siと同様のSi粒子が分散している。
 本発明の表面処理皮膜の上記構造は、以下の方法により得られる。
 シリコン(Si)を4〜24%含有するアルミニウム合金材を、有機溶剤あるいは市販される洗浄剤を用いて脱脂した後、アルカリ・エッチング,酸洗浄を行う。次いで、70〜100℃に加熱したケイフッ酸塩水溶液、例えばケイフッ化マグネシウムを成分の1つとする0.1〜20%濃度の加熱水溶液中に、30秒〜5分程度浸漬する。
 以上の手順により、アルミニウム合金材の表面のアルミニウムが優先的に反応除去されるのと同時に、例えば溶解したアルミニウム成分と溶液中のフッ素基,水酸基とが反応し、フッ化・水酸化アルミニウム化合物として、反応除去され難いシリコン粒子を取り込みながら、アルミニウム合金表面に析出し、膜を形成する。また、合金材等に含まれるマグネシウムの存在によっても、同様にNHMgAlF化合物からなる膜、又はこれら両方の化合物からなる皮膜が、アルミニウム合金表面に形成され得る。
 但し、以上の手順中、脱脂,アルカリ・エッチング,酸洗浄は、素材を清浄化するためのものであり、本発明による皮膜構造を得る上で、直接的に必要となるものではない。
 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1
 ケイフッ化マグネシウム(MgAlF・6HO)0.67重量部及びケイフッ化アンモニウム((NH)SiF)0.33重量部を水100重量部に溶解した。この溶液を、90℃に加熱して処理液とした。
 この処理液に、有機溶剤,脱脂剤を用いて清浄化したφ50×t5mmのAC8A−T6 アルミ鋳物試験片を5分間浸漬し、表面処理を施した。表面処理したアルミ鋳物表面には、Al−OH−F化合物が成膜した。
 上記表面処理によって得られた本発明の試験片について、相手材としてSCM435熱処理材を用い、ボールオンディスク摩耗試験を行った。このときの摩耗痕の断面形状(プロフィール)を図4に示す。同様の方法により、成膜していない試験片(AC8A−T6材)についてもボールオンディスク摩耗試験を行い、そのときの摩耗痕の断面形状も図4に併せて示す。
 その結果、上記の表面処理方法によって成膜された試験片については、成膜していない試験片と比較し、摩耗体積は20分の1であった。
 また、上記の成膜された試験片の摩耗係数は0.09であり、成膜していない試験片に比べて20%以上低い値であった。
実施例2
 上記実施例1と同様の処理液に有機溶剤,脱脂剤等を用いて清浄化したエンジン・ピストン(AC8A−T6)を5分間浸漬し、ピストン表面にAl−OH−F化合物を成膜させた。
 上記表面処理によって得られた本発明のピストン(実施例2のピストン)及び上記表面処理をしないピストン(無処理のピストン)の双方について、エンジンに組み込み、最大負荷での実機運転を行った。
 運転後、それぞれのピストンを取り出して表面状態を検査した。項目としては、リングへのアルミニウムの付着,ピンボス面のかじり,スカート面のかじりについてそれぞれ調べた。
 結果を表1に示す。
 その結果、本発明の表面処理を行ったピストンは、無処理のピストンに比べて、リング溝,ピンボス,スカート面のいずれについても改善が認められた。
実施例3
 AC8A材及びADC12材について、実施例1と同様の方法によって表面処理を施した後、塩水噴霧試験により耐腐食性を調べた。
 この結果から、本発明による表面処理膜には保護作用があり、本発明の表面処理方法によればアルミ基材の耐腐食性が向上することがわかった。
実施例4
 実施例1と同様の方法によって表面処理を施したAC8A材(実施例4),硬質アルマイトによる表面処理を施したAC8A材(硬質アルマイト処理品)及び未処理のAC8A材(未処理品)について、相手材としてSCM材を用い、油潤滑下の摩擦係数を調べた。
 結果を表2に示す。
 上記の結果より、本発明のピストンは摩擦係数が低減されていることがわかった。
実施例5
 アルミニウム合金製母材であるAC8A材からなるピストン1に、前処理を施す(図1参照)。この前処理は、アルミニウム合金にメッキを施す場合に、一般に行われる処理である。以下に、前処理を示す。
   脱脂 → アルカリ・エッチング → 酸処理
 この前処理の後、化成処理を施す。以下に、化成処理条件を示す。
 MgSiF・6HO:(NHSiF=2:1の薬剤を、1リットル当たり20〜50g添加した処理液を90℃に加熱し、処理液が白濁したところにピストン1を5分間浸漬する。
 この化成処理により、ピストン1の表面に摺動皮膜3が形成される。
 ここで、図5は、本発明の皮膜のみをX線回折スペクトルで考察するための参考図であり、得られたデータから母材のアルミニウムとシリコンのピークを除去したものである。
 図6は、摺動皮膜3を有するピストン1から得られたX線回折図である。図6より、摺動皮膜3の組成は、Al(OH)2.763.24・HO,AlF1.65(OH)1.35・xHO,NHMgAlFであることがわかる。但し、このX線回折図には、摺動皮膜3のX線回折スペクトルと、母材2のアルミニウム(Al)及び母材2に含まれるシリコン(Si)のX線回折スペクトルとが混在している。また、このX線回折図から、摺動皮膜3は配向性を有していないことがわかる。
 なお、図6中の各ピーク(a〜l)の面指数は以下のようであった。
 a(1,1,1)、b(3,1,1)、c(2,2,2)、d(4,0,0)、e(3,3,1)、f(4,4,0)、g(5,3,1)、h(6,2,0)、i(5,3,3)、j(6,2,2)
 図7及び8は、摺動皮膜3の摺動面10の電子顕微鏡写真であり、図2は図7の模式図である。図2及び図7より、摺動皮膜3は微細結晶7からなり、これらの微細結晶が集合体8を形成していることがわかる。また、図8より、複数の集合体8が母材2の表面を覆い、摺動皮膜3を形成していることがわかる。
 図9は、アルミニウム合金製母材(AC8A材)2上に被覆された摺動皮膜3の断面の顕微鏡写真である。図9より、摺動皮膜3が母材表面を覆っている様子がわかる。但し、この顕微鏡写真の摺動皮膜中には、母材(AC8A材)2に含まれるシリコン(Si)粒子が摺動皮膜に取り込まれている。これは、母材(AC8A材)2中に含まれるシリコン粒子が、母材表面に残留し、化成処理工程で形成される摺動皮膜中に取り込まれたものである。
実施例6
 シリコン(Si)含有量の異なる6種類のアルミニウム合金材を脱脂した後、アルカリ・エッチング,酸洗浄を行った。次いで、アルミニウム合金材を、ケイフッ化マグネシウムを含み、加熱されたケイフッ酸塩水溶液中に浸漬した。アルミニウム合金材は溶液中で反応し、シリコン粒子を取り込みながら、アルミニウム合金表面に膜を形成した。これにより、Si含有量の異なる皮膜に覆われた種々の試験片を得た。
 得られた試験片を用いて、ピンオンディスク式摩擦・摩耗試験装置により、皮膜の耐摩耗性を測定した。得られた皮膜の特徴である耐摩耗性の結果について、図10に示す。
 図10は、試験片をディスク側に、相手材としてSCM420浸炭焼入れ・焼戻しを行ったピンを用い、油潤滑下で試験した後の摩耗体積で比較した。
 皮膜中にシリコン(Si)を含有しない試験片に対し、Siを1%程度でも含有する試験片では、耐摩耗性の向上が認められた。Siを6%以上含む試験片の場合には、耐摩耗性が極めて向上することがわかった。
本発明のアルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法によれば、例えば、エンジンのピストンに被覆することで、耐摩耗性,初期なじみ性,オイル保持性等が向上し、その結果、耐久性の向上,フリクションの低減,燃費の向上などの効果があり、その産業上の意義は極めて大きい。
本発明によるピストンの概略図である。 本発明の母材表面(摺動面)の微細結晶および集合体を、模式的に表した図である。 本発明に係るアルミニウム合金の表面処理皮膜の模式図である。 実施例1において、本発明の試験片(処理品)及び成膜しない試験片(無処理品)についてボールオンディスク摩耗試験を行った際の摩耗痕の断面形状を示す図である。 本発明の表面処理方法により得られる皮膜の代表的な皮膜構造を示す概念図である。 本発明の摺動部材を被覆している摺動皮膜のX線回折図である。 本発明の摺動部材を被覆している摺動皮膜の電子顕微鏡写真である(倍率20000倍)。 本発明の摺動部材を被覆している摺動皮膜の電子顕微鏡写真である(倍率1000倍)。 本発明の摺動部材を被覆している摺動皮膜断面の顕微鏡写真である(倍率400倍)。 実施例6における耐摩耗性試験の結果を示す図である。
符号の説明
 1  ピストン
 2  母材
 3  摺動皮膜
 4  リング溝
 5  スカート部
 6  ピン穴部
 7  微細結晶
 8  微細結晶の集合体
 9  シリコン
10  アルミニウム合金
11  アルミニウム表面皮膜


Claims (5)

  1. フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液に、アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して、75〜99℃の温度範囲で処理することを特徴とする表面処理方法。
  2. フッ素化合物及びケイフッ化アンモニウムを含む処理液に、アルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して、80〜98℃の温度範囲で処理することを特徴とする表面処理方法。
  3. 上記処理液が水100重量部に対し、上記フッ素化合物0.1〜20重量部及びケイフッ化アンモニウム0.05〜15重量部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理方法。
  4. 上記フッ素化合物がケイフッ化マグネシウム MgSiF・6HOであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理方法によって、表面処理が施されたことを特徴とするピストン。
JP2003329494A 1997-10-31 2003-09-22 アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法 Pending JP2004011026A (ja)

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