JP2003013802A - アルミ合金製内燃機関用ピストン - Google Patents
アルミ合金製内燃機関用ピストンInfo
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Abstract
とができ、かつシリンダに接触する際の面圧を抑えるこ
とができるアルミ合金製内燃機関用ピストンを提供す
る。 【解決手段】 アルミ合金製内燃機関用ピストン10
は、スカート部20の外表面21aに条痕22・・・を形
成し、条痕22・・・の表面にりん酸塩並びにふっ化物を
混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜50を被せ、この
陽極酸化皮膜50の微細な孔52に潤滑材54を含浸さ
せ、さらに陽極酸化皮膜50の表面に二硫化モリブデン
皮膜60を形成したものである。
Description
トンに陽極酸化皮膜を被せた内燃機関用のピストンに関
する。
るためにピストンの摺動抵抗を減少させる方法が知られ
ている。このピストンの一例として、特開平11−33
6895号公報「ピストン及びピストンの加工方法」が
提案されている。この技術はピストンのスカート部に陽
極酸化皮膜を形成し、陽極酸化皮膜に化成処理皮膜を形
成することで、ピストンの摺動抵抗を減少させるもので
ある。
トンのスカート部に条痕を形成する方法も知られてお
り、条痕を上記公報の技術と併用すること(すなわち、
条痕に皮膜を被せること)で摺動抵抗をより減少するこ
とができる。以下、条痕に皮膜を被せた例を、次図で詳
しく説明する。
ピストンのスカート部の断面図であり、(a)はスカー
ト部に条痕を形成した例を示し、(b)は条痕に皮膜を
被せた例を示す。(a)において、ピストン130のス
カート部131に条痕132・・・(・・・は複数個を示す)
を形成する。条痕132・・・の凹部133・・・を深さA1
に一定に確保し、凹部133・・・に油を溜めることによ
り、スカート部131全体に油膜を均一に保持すること
ができる。このため、ピストン130の摺動抵抗を減少
することができる。(b)において、条痕132・・・を
形成したスカート部131に陽極酸化皮膜135を形成
し、陽極酸化皮膜135に化成処理皮膜136を形成す
る。
・に陽極酸化皮膜135及び化成処理皮膜136を形成
することで、化成処理皮膜136の凹部137・・・を条
痕132の凹部133・・・に合せて一定ピッチに形成す
ることはできない。加えて、化成処理皮膜136の凹部
137・・・は深さA2も不均一なので、スカート部13
1全体に油膜を均一に保持することはできない。従っ
て、条痕132・・・に皮膜135,136を被せても、
ピストン130の摺動抵抗を大きく減らすことはできな
い。
a,138b(その他の頂部は符号を付さない)は不均
一に突出するので、ピストン130をシリンダ内で往復
運動する際に、特に高く突出した頂部138aがシリン
ダに接触する際の面圧が高くなる。よって、摺動抵抗が
高くなることが考えられる。
域に油膜を均一に保持することができ、かつシリンダに
接触する際の面圧を抑えることができるアルミ合金製内
燃機関用ピストンを提供することにある。
に本発明の請求項1は、スカート部の外表面に条痕を形
成し、この条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合
した電解液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化
皮膜の微細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃
機関用ピストンであって、陽極酸化皮膜に二硫化モリブ
デンをコーティングしたことを特徴とする。
ることで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これによ
り、陽極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成して、陽
極酸化皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすることができ
る。よって、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーテ
ィングすることで、二硫化モリブデン皮膜の表面を条痕
と略同じ形状にすることができる。このため、二硫化モ
リブデン皮膜の表面全域に油膜を均一に保持することが
できる。加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔
の孔径を大きくする作用がある。このため、微細な孔に
多量の潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実に固
着させることができる。
をコーティングした。二硫化モリブデンは自己潤滑性に
優れているため、ならし運転の際にピストンの摺動抵抗
を低く抑えることができる。このため、シリンダに対す
るピストンの面圧を低く抑えることができる。
る二硫化モリブデンの皮膜を摩耗させることにより、陽
極酸化皮膜の一部を二硫化モリブデンの皮膜から露出さ
せることができる。陽極酸化皮膜は対摩耗性に優れてい
るので、露出した一部の陽極酸化皮膜をシリンダに当接
させることで、ならし運転後のピストンの摩耗を十分に
抑えることができる。この際に、露出した一部の陽極酸
化皮膜に加えて二硫化モリブデンもシリンダの摺動面に
接触させることができるので、ならし運転後のシリンダ
に対するピストンの面圧を低く抑えることもできる。
を5〜15μmとしたことを特徴とする。ここで、陽極
酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmである。
よって、二硫化モリブデンの皮膜厚さを5μm未満とす
ると、二硫化モリブデンの皮膜厚さが陽極酸化皮膜の表
面最大粗さに近く、陽極酸化皮膜の表面全域に二硫化モ
リブデンを確実にコーティングすることができない虞れ
がある。このため、ならし運転時のシリンダに対するピ
ストンの面圧を低く抑えることができない虞れがある。
また、二硫化モリブデンの皮膜厚さが15μmを越える
と、二硫化モリブデンの皮膜厚さが厚くなりすぎてコー
ティング処理に時間がかかる。このため、ピストンのコ
ストアップの要因になる。従って、二硫化モリブデンの
皮膜厚さを5〜15μmに設定することとした。
づいて以下に説明する。図1は本発明に係るアルミ合金
製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の斜視図であ
る。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、Si(シ
リコン)系アルミニウム合金で形成した部材であって、
ピストン頭部12にピストンリング溝13,14及びオ
イルリング溝15を形成し、オイルリング溝15の下側
に一対のスカート部20,25を形成し、スカート部2
0,25の外表面21a(スカート部25の外表面は図
示しない)に条痕22を形成し、一対のスカート部2
0,25の間に一対のピンボス部35,37(ピンボス
部37は図2参照)を形成した部材である。
した各外表面21aに、りん酸塩並びにふっ化物を混合
した電解液で陽極酸化皮膜(特殊な陽極酸化皮膜)5
0,50(スカート部25の陽極酸化皮膜50は図2に
示す)をそれぞれ被せ、特殊な陽極酸化皮膜50の微細
な孔に潤滑剤54(図9(b)に示す)を含浸させた部
材である。なお、陽極酸化皮膜50を被せた領域を「網
目」で示す。
ルミ合金製内燃機関用ピストンの形状を詳しく説明す
る。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、コンロッ
ド(図示しない)側から見たときに、一対のスカート部
20,25を対向する一対で構成し、これら一対のスカ
ート部20,25の対向する端部(一端)20a,25
a同士を壁部30で連結し、スカート部20,25の対
向する端部(他端)20b,25b同士を壁部32で連
結することで、これら壁部30,32とスカート部2
0,25とで略矩形を形成させ、且つ壁部30,32の
中央にピンボス部35,37を膨出形成した部材であ
る。
10は、壁部30,32がスカート部20,25に交わ
る部位(すなわち、スカート部20,25の一端20
a,25a及び他端20b,25b)において、これら
の部位の内壁40〜43を円弧状に形成し、スカート部
20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より
薄く設定した。
a,25aを壁部30で連結し、他端20b,25bを
壁部32で連結することで、壁部30,32及びスカー
ト部20,25で略矩形を形成する。このため、スカー
ト部20,25の幅Wをピンボス部35,37の幅W1
より小さくすることができる。従って、スカート部2
0,25を幅狭まとすることで、アルミ合金製内燃機関
用ピストン10の軽量化を図ることができる。また、ス
カート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚
t2より薄く設定したので、アルミ合金製内燃機関用ピ
ストン10をより軽量にすることができる。
0,32で略矩形を形成することにより、スカート部2
0,25を壁部30,32で補強することができる。従
って、スカート部20,25の剛性を高めることができ
る。また、壁部30,32がスカート部20,25に交
わるスカート部の一端20a,25a及び他端20b,
25bの内壁40〜43を円弧状に形成したので、スカ
ート部の一端20a,25a及び他端20b,25bに
応力が集中することを防ぐことができる。従って、スカ
ート部20,25の剛性をより高めることができる。
長さL(図1に示す)の網目で示した各外表面21aに
条痕22・・・(図1に示す)を形成し、各々の外表面2
1aに特殊な陽極酸化皮膜50,50をそれぞれ被せ、
特殊な陽極酸化皮膜50,50の微細な孔に潤滑剤を含
浸させたものである。なお、特殊な陽極酸化皮膜及び潤
滑剤については図8〜図9でさらに詳しく説明する。
20,25(スカート部25は図2参照)の下端23,
28(下端28は図1も参照)をピンボス部35,37
の下端36,38より下方に延した状態を示す。スカー
ト部20,25の下端23,28をピンボス部35,3
7の下端36,38より下方に延すことにより、アルミ
合金製内燃機関用ピストン10がシリンダ内を移動して
いる際に、スカート部20,25をシリンダに接触させ
ることでピストン10の姿勢を正規の状態に容易に保つ
ことができる。
ミ合金製内燃機関用ピストン10は、スカート部20,
25の外表面21a(図1に示す)に条痕22・・・を形
成し、この条痕22・・・の表面にりん酸塩並びにふっ化
物を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜50を被せ、
この陽極酸化皮膜50の微細な孔52に潤滑材54(図
9(b)に示す)を含浸させ、陽極酸化皮膜50に二硫
化モリブデン(MoS2)の皮膜(以下、「二硫化モリ
ブデン皮膜」という)60を皮膜厚さt4が5〜15μ
mになるようにコーティングしたものである。
トン10は、ならし運転で条痕22・・・の頂部に相当す
る二硫化モリブデン皮膜60を摩耗させることにより、
二硫化モリブデン皮膜60の頂部の領域Hを平坦部61
・・・にすることで、平坦部61・・・から陽極酸化皮膜50
の頂部51・・・を露出させたものである。
酸塩並びにふっ化物を混合することで、Siを溶かして
平坦に形成することができる。これで、陽極酸化皮膜5
0をスカート部20の条痕22・・・の凹凸形状に倣わせ
て形成して、陽極酸化皮膜50の表面を条痕22・・・と
略同じ凹凸形状にすることができる。
リブデン皮膜60をコーティングすることで、二硫化モ
リブデン皮膜60の表面を条痕22・・・の凹凸形状に倣
わせて形成することができる。よって、二硫化モリブデ
ン皮膜60の表面全域に油膜を均一に保持することがで
きる。
イミド(PAI)をバインダーにしてその中に二硫化モ
リブデン(MoS2)を混合し、これを陽極酸化皮膜5
0の表面に塗布し、この状態で焼き固めることにより二
硫化モリブデン皮膜60を形成したものである。なお、
二硫化モリブデン皮膜60を皮膜厚さt4を5〜15μ
mになるようにコーティングした理由は次の通りであ
る。
maxは2〜3μmである。よって、二硫化モリブデン
皮膜60の皮膜厚さt4を5μm未満とすると、陽極酸
化皮膜50の表面全域に二硫化モリブデン皮膜60を確
実にコーティングすることができない虞れがある。よっ
て、ならし運転時のシリンダに対するピストン10の面
圧を低く抑えることができない虞れがある。そこで、二
硫化モリブデン皮膜60の皮膜厚さt4を5μm以上に
設定して、ならし運転時のシリンダに対するピストン1
0の面圧を低く抑えるようにした。
さt4が15μmを越えると、二硫化モリブデン皮膜6
0の皮膜厚さt4が厚くなりすぎてコーティング処理に
時間がかかる。このため、ピストン10のコストアップ
の要因になる。そこで、二硫化モリブデン皮膜60の皮
膜厚さt4を15μm以下に抑えて、二硫化モリブデン
のコーティング処理に時間をかけないようにした。
2B以上であり、陽極酸化皮膜の硬度は260〜280
(ビッカース)である。二硫化モリブデンは陽極酸化皮
膜と比較して柔らかく自己潤滑性を有するため、ピスト
ン10のならし運転の際に初期なじみがつきやすい。よ
って、ピストン10(スカート部20)の摺動抵抗を低
く抑えることができる。このため、ならし運転時のシリ
ンダに対するピストン10の面圧を低く抑えることがで
きる。従って、短いならし運転で所望のエンジン出力特
性を得ることができる。
で、条痕22・・・の頂部に相当する二硫化モリブデン皮
膜60を摩耗させることにより、陽極酸化皮膜50の頂
部51・・・を露出させることができる。よって、ならし
運転を実施した後は、陽極酸化皮膜50の頂部51・・・
と二硫化モリブデン皮膜60の平坦部61がシリンダの
摺動面に接触する。
2の孔径を大きくすることで、微細な孔52に多量の潤
滑剤54を含浸させ、その潤滑剤54を孔52内に確実
に固着させることができる。このため、陽極酸化皮膜5
0は、耐摩耗性に優れているととともに、潤滑性にも優
れている。加えて、二硫化モリブデンは自己潤滑性を有
している。このため、ならし運転を実施した後の通常の
ピストン運動の際に、シリンダに対するピストンの面圧
を低く抑えることができ、かつピストンの摩耗を十分に
抑えることができる。
法を比較例として説明する。図5(a)〜(c)は内燃
機関用ピストンのスカート部に普通の陽極酸化皮膜を形
成した比較例を示した説明図である。(a)は、硫酸電
解液で生成した普通の陽極酸化皮膜を示す。母材として
のアルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部100
にSi粒111・・・が分布し、そのうちの表面近傍のS
i粒112・・・が陽極酸化皮膜113に悪影響を及ぼし
て、陽極酸化皮膜113が全体的に凹凸となっている。
ま表面に出ていたSi粒115の部分には陽極酸化皮膜
を形成できずに大きな窪みD1となり、また、表面にご
く近いSi粒116の部分には陽極酸化皮膜117が形
成できたけれども、膜厚は周囲の陽極酸化皮膜113と
比べると小さく、窪みD2ができている。
ピストン100を硫酸電解液で陽極酸化処理をしても、
平坦な陽極酸化皮膜113が得られないことが分かっ
た。また、硫酸電解液では、微細な孔118・・・の孔径
をd2とすると、d2は一般的に15nm程度と小さい
ことが分かった。
118・・・に含浸させ、含浸した液状の熱硬化性樹脂を
加熱して硬化樹脂119・・・に変えた状態を示す。樹脂
は摩擦抵抗が小さいので、陽極酸化皮膜113,117
に硬化樹脂119・・・を含浸させることで、Si系アル
ミニウム合金製ピストンがシリンダ内を高速で往復移動
するときの摺動抵抗は比較的小さくなる。
皮膜113に窪みD1,D2が発生して陽極酸化皮膜1
13を平坦に生成することが困難であり、また、陽極酸
化皮膜113に発生した微細な孔118・・・の孔径d2
が小さいので陽極酸化皮膜113に樹脂119を十分に
含有することができない。このため、陽極酸化皮膜11
3に樹脂119を含浸させても摩擦抵抗を所望の値まで
小さくすることはできない。
形成する方法を説明する。図6は本発明に係るアルミ合
金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法を
説明するフローチャートであり、図中ST××はステッ
プ番号を示す。 ST10;アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわ
ち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニ
ウム合金製ピストン)のスカート部の外表面に条痕を形
成する。
表面を脱脂する。 ST12;りん酸塩としてのりん酸3ナトリウム及びふ
っ化物としてのふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分
解して、スカート部の外側表面に特殊な陽極酸化皮膜を
生成する。この陽極酸化皮膜の表面に微細な孔が生成す
る。 ST13;ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂
(ふっ素系樹脂)を準備し、この液状の熱硬化性樹脂を
陽極酸化皮膜の微細な孔に含浸させる。
化性樹脂を加熱することにより硬化させる。これで、本
発明に係るアルミニウム合金製ピストンの陽極酸化処理
が完了する。 ST15;陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティ
ングする。 以下、Si系アルミニウム合金の陽極酸化処理方法のS
T10〜ST15を図7〜図10で詳しく説明する。
用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第1説明図で
あり、ST10を示す。アルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(すなわち、Si系アルミニウム合金としてのAC8
Cアルミニウム合金製ピストン)のスカート部20の外
表面21a(図1に示す)に条痕22を形成する。
合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法
の第2説明図であり、特殊なる陽極酸化皮膜50の処理
方法を示す。なお、理解を容易にするためスカート部2
0の外表面を横向きに配置した状態で説明する。
す図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカー
ト部20の外表面21aを脱脂した状態を示す。スカー
ト部20の外表面21aの近傍にはアルミニウムにSi
粒55,56,57が分散している。
処理)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及
びふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸
化皮膜50を生成した状態を示す。りん酸3ナトリウム
の腐食作用でスカート部20の外表面21a((a)に
示す)が溶解して、Si粒55,56,57が露出す
る。露出したSi粒55,56,57がふっ化カリウム
の作用で溶解して小さくなる。
にSi粒55,56,57が存在するにも拘らず、陽極
酸化皮膜50が良好に成長する。この結果、陽極酸化皮
膜50の皮膜面21が揃うので、面粗度は小さくなり、
膜厚t3はほぼ一定となる。また、電解液にはりん酸3
ナトリウムを含むため、りん酸3ナトリウムの孔径を大
きくする作用で、微細な孔52・・・の孔径d1は略10
0nmと十分に大きくなる。
合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法
の第3説明図であり、特殊なる陽極酸化皮膜50の処理
方法を示す。(a)は、ST13(樹脂含浸処理)後の
状態を示す図であり、ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬
化性樹脂53を準備し、この液状の熱硬化性樹脂53を
陽極酸化皮膜50の孔52・・・に含浸した状態を示す。
孔52・・・の孔径d1が100nmと大きいので、多量
の熱硬化性樹脂53を孔52・・・内に含浸させることが
できる。なお、熱硬化性樹脂53は溶媒希釈しなくても
液状をなす樹脂である。
状態を示す図であり、オーブンのコイル58から矢印の
如く熱を伝えることにより液状の熱硬化性樹脂53を加
熱する状態を示す。液状の熱硬化性樹脂53が硬化して
熱硬化性樹脂(潤滑剤)54となる。これで、特殊な陽
極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂54を含浸させた状態に
なる。
ミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方
法の第4説明図であり、二硫化モリブデン皮膜60のコ
ーティング処理方法を示す。(a)は、スカート部20
の条痕22・・・に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、こ
の陽極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂54(図9(b)に
示す)を含浸させた状態を示す。特殊な陽極酸化皮膜5
0は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合すること
で、Siを溶かして平坦に形成することができるので、
その表面を条痕22・・・と略同じ形状にすることができ
る。
コーティング処理)後の状態を示す図である。陽極酸化
皮膜50に二硫化モリブデン皮膜60を形成すること
で、二硫化モリブデン皮膜60の表面を条痕22・・・と
略同じ形状にすることができる。このため、二硫化モリ
ブデン皮膜60の表面全域に油膜を均一に保持すること
ができる。
ことにより、条痕22・・・の頂部に相当する二硫化モリ
ブデン皮膜60を摩耗させて平坦部61・・・とすること
で、平坦部61・・・から陽極酸化皮膜50を露出させた
状態を示す。二硫化モリブデンは自己潤滑性を有するた
め、ならし運転の際にピストン10の摺動抵抗を低く抑
えることができる。よって、ならし運転時のシリンダに
対するピストン10の面圧を低く抑えることができる。
従って、短いならし運転で所望のエンジン出力特性を得
ることができる。
2、図11及び図12に基づいて説明する。 共通条件:供試材 AC8C(JIS H 5202 ア
ルミニウム合金鋳物) 成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳物であ
る。
のスカート部の外表面を脱脂した後、0.4モル/lり
ん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウ
ムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70V
として30分間電気分解して、スカート部の外表面に特
殊な陽極酸化皮膜を生成した。特殊な陽極酸化皮膜の微
細な孔は孔径d1(図9(a)参照)が100nmと大
きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μ
mと平坦である。なお、Rmaxは、JIS B 060
1で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表
面最大粗さRmax」を表記した。
gの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレー
ト(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放
して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出
した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチル
エチルメタクレートを硬化した。
ブデン(MoS2)の皮膜をコーティングする。すなわ
ち、ポリアミドイミド(PAI)をバインダーにしてそ
の中に二硫化モリブデンを混合し、これを陽極酸化皮膜
の表面に塗布し、この状態で焼き固めることにより二硫
化モリブデンの皮膜を皮膜厚さ15μmに形成する。
運転をおこない、そのときのエンジン出力特性を測定し
た。その結果、ならし運転の当初から所望のエンジン出
力特性を得ることができることが判かった。その理由
は、二硫化モリブデンは自己潤滑性を有するため、なら
し運転の際にピストンの摺動抵抗を低く抑えることがで
きる。よって、ならし運転時のシリンダに対するピスト
ンの面圧を低く抑えて、初期摺動抵抗を低くすることが
できるからである。なお、パーフロロオクチルエチルメ
タクレートの化学式は以下の通りである。
燃機関用ピストンのスカート部の外表面を脱脂した後、
0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル
/lふっ化カリウムの混合電解液で、電解液温度を22
℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、スカー
ト部の外表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成した。
(図9(a)参照)が100nmと大きく、陽極酸化皮
膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmと平坦である。
なお、Rmaxは、JIS B 0601で定義する表面
粗さの最大高さであるが、便宜上「表面最大粗さRma
x」を表記した。
gの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレー
ト(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放
して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出
した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチル
エチルメタクレートを硬化した。
運転をおこない、そのときのエンジン出力特性を測定し
た。その結果、所望のエンジン出力特性を得るまでに
は、ならし運転を比較的長い時間実施する必要があるこ
とが判かった。その理由は、陽極酸化皮膜において条痕
の頂部に相当する部位が頂部として存在しているため、
ピストンがシリンダに接触する際の面圧が高くなり、初
期摺動抵抗が高くなるからである。
合金製内燃機関用ピストンの作用について説明する。図
11(a)〜(d)は本発明に係るアルミ合金製内燃機
関用ピストン(第1実施形態)の作用を説明する断面図
であり、(a)〜(b)は表1の比較例、(c)〜
(d)は表1の実施例を示す。また図12は本発明に係
るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の
作用を説明するグラフである。縦軸は摩擦係数を示し、
横軸はピストンの運転時間を示し、破線のグラフは比較
例、実線は実施例を示す。
ピストン120のスカート部121に条痕122・・・を
形成し、条痕122・・・に特殊な陽極酸化皮膜50を形
成し、陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸させ
た状態を示す。
に沿って均一の厚さで陽極酸化皮膜50を被せることが
可能であり、陽極酸化皮膜50において条痕122・・・
の頂部に相当する部位(頂部)51・・・が突出する。従
って、ピストン120がシリンダ59内で矢印の如く
往復運動する際に、突出した頂部51・・・がシリンダ5
9に当接するので、図12のグラフに示すように摩擦係
数がμ1と大きくなり、陽極酸化皮膜50の頂部51・・・
に大きな面圧がかかる。
51・・・((a)に示す)に陽極酸化皮膜50の頂部5
1・・・や条痕122の頂部122aが摩耗して条痕12
2の頂部122a・・・が露出する。ならし運転完了後
は、図12のグラフに示すように摩擦係数がμ2と小さ
くなる。しかし、条痕122の頂部122a・・・が露出
してしまい、頂部122a・・・を陽極酸化皮膜50で保
護することができないので、スカート部20の耐摩耗性
を十分に確保することは難しい。
ン10のスカート部20に条痕22・・・を形成し、条痕
22・・・に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、陽極酸化
皮膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸させ、この陽極酸化
皮膜50に二硫化モリブデン皮膜60を皮膜厚さが15
μmになるようにコーティングした状態を示す。
如くならし運転を実施する。二硫化モリブデンは自己潤
滑性を有するため、ピストン10の摺動抵抗を低く抑え
ることができる。このため、図12のグラフに示すよう
に摩擦係数をμ3と小さくでき、シリンダ59に対する
ピストン10の面圧を低く抑えることができるので、短
いならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることがで
きる。
・の頂部に相当する二硫化モリブデン皮膜60を摩耗さ
せることで平坦部61・・・とし、平坦部61・・・から陽極
酸化皮膜50を露出させることができる。
とともに、微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させているの
でならし運転後のピストンの摩耗を十分に抑えることが
できる。加えて、二硫化モリブデン皮膜60の平坦部6
1・・・でピストン10の摺動抵抗を低く抑えることがで
きる。
いても、図12のグラフに示すように摩擦係数をμ3と
小さくでき、シリンダ59に対するピストン10の面圧
を低く抑えることができる。このため、ピストン10の
摺動抵抗を減少させて円滑に運動させることができる。
4に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一部材
については同一符号を付して説明を省略する。図13は
本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実
施形態)の側面図である。アルミ合金製内燃機関用ピス
トン70は、ピンボス部35の下端36及びピンボス部
37の下端38より一対のスカート部72(奥側のスカ
ート部は図示しない)の下端73をδ寸法だけ上方に上
げたものである。このため、一対のスカート部72を、
第1実施形態のスカート部20,25より小さくするこ
とができる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストン
70をよりアルミ合金製内燃機関用ピストン10より軽
量にすることができる。
関用ピストン(第3実施形態)の側面図である。アルミ
合金製内燃機関用ピストン80は、スカート部82を略
逆台形、すなわち下端83からピストン頭部84に向け
てスカート幅をW3からW4に徐々に大きく形成したも
のである。スカート部82を略逆台形に形成することに
より、スカート部82の剛性を高めることができる。
りん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他に
りん酸ナトリウムなどを使用してもよい。また、ふっ化
物としてふっ化カリウムを使用した例を示したが、その
他にふっ化ナトリウムなどを使用してもよく、アルカリ
金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。
ロロオクチルエチルメタクレート液を使用した例を説明
したが、ふっ素を含んだその他の熱硬化性樹脂を使用し
てもよい。また、潤滑剤として熱硬化性樹脂を使用した
例を説明したが、光硬化性樹脂などのその他の樹脂を使
用しても同様の効果を得ることができる。光硬化性樹脂
は、例えば紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂が該当
する。さらに、前記実施形態では、条痕22の凹部を略
V形に形成した例について説明したが、その他に条痕の
凹部を湾曲形や台形などに形成してもよく、凹部の形状
は任意である。
する。請求項1は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を
混合することで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これ
により、陽極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成し
て、陽極酸化皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすること
ができる。このため、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデン
をコーティングすることで、二硫化モリブデン皮膜の表
面を条痕と略同じ形状にすることができる。従って、二
硫化モリブデン皮膜の表面全域に油膜を均一に保持する
ことができる。加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微
細な孔の孔径を大きくする作用がある。このため、微細
な孔に多量の潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確
実に固着させることができる。
をコーティングした。二硫化モリブデンは自己潤滑性に
優れているので、ならし運転の際にピストンの摺動抵抗
を低く抑えることができる。このため、ならし運転時の
シリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることがで
きる。
る二硫化モリブデンの皮膜を摩耗させることにより、陽
極酸化皮膜の一部を露出させることができる。陽極酸化
皮膜は対摩耗性に優れているので、露出した一部の陽極
酸化皮膜をシリンダに当接させることで、ならし運転後
のピストンの摩耗を十分に抑えることができる。
加えて二硫化モリブデンもシリンダの摺動面に接触させ
ることができるので、ならし運転後のシリンダに対する
ピストンの面圧を低く抑えることができる。このよう
に、油膜を均一に保持し、潤滑剤を確実に固着させ、加
えて面圧を抑えることができるので、ピストンを円滑に
摺動させることができる。
を5μm以上に設定したので、陽極酸化皮膜の表面全域
に二硫化モリブデンの皮膜を確実にコーティングするこ
とができる。このため、ならし運転時のシリンダに対す
るピストンの面圧を低く抑えることができるので、短い
ならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができ
る。
μm以下に設定したので、二硫化モリブデンの皮膜厚さ
を好適な範囲に抑えることができ、コーティング処理を
比較的時間をかけるないで行うことができる。このた
め、ピストンのコストアップを抑えることができる。
(第1実施形態)の斜視図
酸化皮膜を形成した比較例を示した説明図である。
(第1実施形態)の製造方法を説明するフローチャート
(第1実施形態)の製造方法の第1説明図
(第1実施形態)の製造方法の第2説明図
(第1実施形態)の製造方法の第3説明図
ン(第1実施形態)の製造方法の第4説明図
ン(第1実施形態)の作用を説明する断面図
ン(第1実施形態)の作用を説明するグラフ
ン(第2実施形態)の側面図
ン(第3実施形態)の側面図
面図
20,25,72,82…スカート部、21a…スカー
ト部の外表面、22…条痕、50…陽極酸化皮膜、51
…露出した頂部、52…微細な孔、54…潤滑剤、60
…二硫化モリブデン皮膜、61…二硫化モリブデン皮膜
の平坦部、t4…二硫化モリブデン皮膜の皮膜厚さ。
Claims (2)
- 【請求項1】 スカート部の外表面に条痕を形成し、こ
の条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解
液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮膜の微
細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピ
ストンであって、 前記陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングし
たことを特徴とするアルミ合金製内燃機関用ピストン。 - 【請求項2】 前記二硫化モリブデンの皮膜厚さを5〜
15μmとしたことを特徴とする請求項1記載のアルミ
合金製内燃機関用ピストン。
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