JP4261016B2 - アルミ合金製内燃機関用ピストン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミ合金で鋳造した内燃機関用のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の内燃機関用ピストンの品質を高めるためにピストンのピンボス穴に陽極酸化皮膜を形成してスコーリング(scoring:いわゆる「かじり」)を防止させたものがある。このピストンの代表的な例として、特開平11−336895号公報「ピストン及びピストンの加工方法」が提案されている。この技術を、次図で詳しく説明する。
【0003】
図11は従来の内燃機関用ピストンの断面図であり、アルミニウム合金製のピストン120を示す。ピストン120は、ピンボス部121のピン孔122を含む全表面に陽極酸化皮膜を形成したものであるが、ここではピンボス部121のピン孔122にのみ陽極酸化皮膜123(「網目」で示す領域)を形成したものとして説明する。
ピン孔122に陽極酸化皮膜123を形成することで、ピン孔122にかじりが発生すること防ぎ、ピストン120の品質を高めることができる。加えて、かじりの発生を防ぐことで燃費やエンジン出力を向上させることも可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、燃費やエンジン出力を十分に高めるためにはピストン120を軽量にすればよく、その一例としてピンボス部121の厚さt2を小さくすることが考えられる。
しかし、アルミニウム合金にはSi粒子が含まれており、このSi粒子がピン孔122の表面に露出していると、Si粒子に陽極酸化皮膜123を形成することができない。このため、陽極酸化皮膜123の皮膜表面はSi粒の部分が凹んだ状態になり、皮膜表面を平坦に形成することはできない。
従って、皮膜表面の凹みを考慮してピンボス部121の厚さt2を比較的大きく設定する必要がある。このため、ピストン120では燃費やエンジン出力を十分に高めることはできない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ピンボス部を軽量にして燃費やエンジン出力を十分に向上させることができるアルミ合金製内燃機関用ピストンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、ピストンピンを挿入する一対のピンボス部のピン孔に、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を被せ、陽極酸化皮膜の微細な孔を孔径100nmとし、この微細な孔に液状の熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含浸し、含浸した液状の樹脂を硬化することで微細な孔に潤滑剤を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、前記アルミ合金製内燃機関用ピストンは、コンロッド側から見たときに、スカート部を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結することで、これら壁部と前記スカート部とで略矩形を形成させ、前記壁部の中央にピンボス部を膨出形成し、且つ、ピンボス部を中央に寄せるために前記壁部を傾斜させたことを特徴とする。
【0007】
ピンボス部のピン孔に、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を被せた。電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合することでピンボス部のピン孔に平坦な陽極酸化皮膜を被せ、ピン孔を平坦にする。
加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔の孔径を大きくする作用があるので、平坦な陽極酸化皮膜の微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させる。
摺動抵抗が減少するので、ピンボス部の厚さを小さくすることができる。
【0008】
また、アルミ合金製内燃機関用ピストンコンロッド側から見たときに、スカート部を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結することで、これら壁部とスカート部とで略矩形を形成させ、壁部の中央にピンボス部を膨出形成し、且つ、ピンボス部を中央に寄せるために壁部を傾斜させた。
【0009】
一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結し、この壁部を傾斜させることでピンボス部に合せてピストン中央に寄せる。壁部を傾斜させることでピストンの剛性を確保する。
【0010】
請求項は、潤滑剤はふっ素系樹脂であることを特徴とする。
ふっ素樹脂は耐摩耗性や耐熱性に優れているので、潤滑剤の耐摩耗性や耐熱性を高め、ピストンの品質を高める作用を発揮する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の斜視図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、Si(シリコン)系アルミニウム合金で形成した部材であって、ピストン頭部12にピストンリング溝13,14及びオイルリング溝15を形成し、オイルリング溝15の下側に一対のスカート部20,25を形成し、一対のスカート部20,25の間に一対のピンボス部30,35(ピンボス部35は図2参照)を形成した部材である。
【0012】
図2は図1の2−2線断面図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストンの形状を詳しく説明した図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、スカート部20,25を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部20,25の対向する端部(一端)21,26同士を壁部40で連結し、対向する端部(他端)22,27同士を壁部42で連結することで、これら壁部40,42とスカート部20,25とで略矩形を形成させ、壁部40,42の各々の中央にピンボス部30,35を膨出形成し、且つ、ピンボス部30,35をピストン中央に寄せるために壁部40,42を傾斜させた部材である。
【0013】
スカート部20,25は、一対のピンボス部30,35の両側に分割して形成したものである。
壁部40は、ピンボス部30の両側に形成した一対の傾斜壁40a,40bからなる。傾斜壁40aは、スカート部20の一端21からピンボス部30の外周壁30aに向けてピストン中心側に傾斜させたながら延した壁部である。また、傾斜壁40bは、スカート部25の一端26からピンボス部30の周壁に向けてピストン中心側に傾斜させたながら延した壁部である。これで、壁部40は略く字形を形成する。
【0014】
壁部42は、ピンボス部35の両側に形成した一対の傾斜壁42a,42bからなる。傾斜壁42aは、スカート部20の他端22からピンボス部35の外周壁35aに向けてピストン中心側に傾斜させたながら延した壁部である。また、傾斜壁42bは、スカート部25の他端27からピンボス部35の外周壁35aに向けてピストン中心側に連続的に傾斜させたながら延した壁部である。これで、壁部42は略く字形を形成する。
このように、壁部40の傾斜壁40a,40b及び壁部42の傾斜壁42a,42bをピストン10の半径方向に近づけるように傾斜させることで、壁部40及び壁部42をそれぞれ略く字形に形成してピストンの剛性を確保することができる。
【0015】
ピンボス部30,35は、ピストンピン45(図1に示す)を挿入するそれぞれのピン孔31,36に、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で特殊な陽極酸化皮膜50を被せ、特殊な陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸させることにより、それぞれの厚さtを小さくしたものである。
ピン孔31,36の間には、コンロッド47(想像線で示す)を取り付けるので、ピンボス部30,35の内端33,38間の距離t1はコンロッド47の厚さで規制される。このため、ピンボス部30,35の外端32,37をピストン中心側に寄せることで各々の厚さtを小さく設定する。
【0016】
特殊な陽極酸化皮膜50は、アルミ合金製内燃機関用ピストン10の全表面に形成してもよく、またピン孔31,36以外にマスクをしてピン孔31,36のみに形成してもよい。
34aはオイル溝、34bはスナップリング溝である。スナップリング溝34bはピストンピン45の抜けを防止するスナップリング(図示しない)を嵌める溝である。
なお、特殊な陽極酸化皮膜及び潤滑剤については図4でさらに詳しく説明する。
【0017】
図3は図1の3矢視図であり、ピンボス部30,35の厚さtを小さくすることで、ピンボス部30,35の外端32,37をピストン中心側に寄せてスカート部20,25の左右端より内側に配置した状態を示す。
ピンボス部30,35の外端32,37をピストン中心側に寄せることで、ピストンピン45(想像線で示す)の長さLを短くすることができる。ピストンピン45の長さLは、一対のスナップリング溝34b,34b間の間隔より僅かに短い寸法である。
ピストンピン45を短くすることで、アルミ合金製内燃機関用ピストン10の軽量を図ることができる。
【0018】
図4は図3の4−4線断面図であり、ピンボス部30のピン孔31に形成した特殊な陽極酸化皮膜50を示す。なお、潤滑剤54として熱硬化性樹脂を使用した例を説明する。
特殊な陽極酸化皮膜50は、膜厚t3が略一定で皮膜表面50aを平坦に形成し、皮膜表面50aに微細な孔52・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)を備えたものである。孔52・・・は孔径d1が比較的大きい孔である。このため、孔52・・・に十分な量の潤滑剤(熱硬化性樹脂)54を含浸することができ、含浸した熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着することができる。
【0019】
このため、熱硬化性樹脂54を陽極酸化皮膜50の微細な孔52・・・に固着させることで、陽極酸化皮膜50で耐摩耗性を高めるとともに、潤滑剤で摺動抵抗を減らすことができる。
また、特殊な陽極酸化皮膜50は、皮膜表面50aを平坦にすることで、摺動抵抗を減らすことができる。
従って、図2に示すピンボス部30,35の厚さtを小さくすることができ、かつ図3に示すピストンピン45(想像線で示す)の長さLを短くすることができる。この結果、アルミ合金製内燃機関用ピストン10の軽量化を図ることができる。
【0020】
以下、図5で普通の陽極酸化皮膜の形成方法を比較例として説明する。
図5(a)〜(c)は内燃機関用ピストンのピン孔に普通の陽極酸化皮膜を形成した比較例を示す。
(a)は、硫酸電解液で生成した普通の陽極酸化皮膜を示す。母材としてのアルミ合金製内燃機関用ピストンのピン孔100にSi粒111・・・が分布し、そのうちの表面近傍のSi粒112・・・が陽極酸化皮膜113に悪影響を及ぼして、陽極酸化皮膜113が全体的に凹凸となっている。
【0021】
(b)は、(a)の拡大図であり、たまたま表面に出ていたSi粒115の部分には陽極酸化皮膜を形成できずに大きな窪みD1となり、また、表面にごく近いSi粒116の部分には陽極酸化皮膜117が形成できたけれども、膜厚は周囲の陽極酸化皮膜113と比べると小さく、窪みD2ができている。
すなわち、Siを含むアルミニウム合金製ピストン100を硫酸電解液で陽極酸化処理をしても、平坦な陽極酸化皮膜113が得られないことが分かった。
また、硫酸電解液では、微細な孔118・・・の孔径をd2とすると、d2は一般的に15nm程度と小さいことが分かった。
【0022】
(c)は、液状の熱硬化性樹脂を微細な孔118・・・に含浸させ、含浸した液状の熱硬化性樹脂に熱を加えて硬化樹脂119・・・に変えた状態を示す。
樹脂は摩擦抵抗が小さいので、陽極酸化皮膜113,117に硬化樹脂119・・・を含浸させることで、Si系アルミニウム合金製ピストンがシリンダ内を高速で往復移動するときの摺動抵抗は比較的小さくなる。
【0023】
しかし、(b)に示したように、陽極酸化皮膜113に窪みD1,D2が発生して陽極酸化皮膜113を平坦に生成することが困難であり、また、陽極酸化皮膜113に発生した微細な孔118・・・の孔径d2が小さいので陽極酸化皮膜113に樹脂119を十分に含有することができない。
このため、陽極酸化皮膜113に樹脂119を含浸させても摩擦抵抗を所望の値まで小さくすることはできない。
【0024】
以下、図4の断面拡大図に示した特殊な陽極酸化皮膜を形成する方法を説明する。
図6は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニウム合金製ピストン)のピンボス部のピン孔を脱脂する。ピンボス部のピン孔以外をマスクする。なお、アルミ合金製内燃機関用ピストンの全表面に陽極酸化皮膜を形成する場合はマスクをしない。
ST11;りん酸塩としてのりん酸3ナトリウム及びふっ化物としてのふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して、ピンボス部のピン孔に特殊な陽極酸化皮膜を生成する。この陽極酸化皮膜の表面に微細な孔が生成する。
【0025】
ST12;ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂を準備し、この液状の熱硬化性樹脂を陽極酸化皮膜の微細な孔に含浸させる。
ST13;微細な孔に含浸した液状の熱硬化性樹脂を加熱することにより硬化させる。これで、本発明に係るアルミニウム合金製ピストンの陽極酸化処理が完了する。
以下、Si系アルミニウム合金の陽極酸化処理方法のST10〜ST13を図7〜図8で詳しく説明する。
【0026】
図7(a),(b)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第1説明図である。
(a)は、ST10(脱脂)後の状態を示す図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストンのピンボス部30のピン孔31を脱脂した状態を示す。
ピンボス部30のピン孔31の近傍にはアルミニウムにSi粒55,56,57が分散している。
【0027】
(b)は、ST11(特殊な陽極酸化皮膜処理)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及びふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸化皮膜50を生成した状態を示す。
りん酸3ナトリウムの腐食作用でピンボス部30のピン孔31((a)に示す)が溶解して、Si粒55,56,57が露出する。露出したSi粒55,56,57がふっ化カリウムの作用で溶解して小さくなる。
【0028】
このため、ピンボス部30のピン孔31にSi粒55,56,57が存在するにも拘らず、陽極酸化皮膜50が良好に成長する。この結果、陽極酸化皮膜50の皮膜表面50aが揃うので、面粗度は小さくなり、膜厚t3はほぼ一定となる。
また、電解液にはりん酸3ナトリウムを含むため、りん酸3ナトリウムの孔径を大きくする作用で、微細な孔52・・・の孔径d1は略100nmと十分に大きくなる。
【0029】
図8(a),(b)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第2説明図である。
(a)は、ST12(樹脂含浸処理)後の状態を示す図であり、ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂53を準備し、この液状の熱硬化性樹脂53を陽極酸化皮膜50の孔52・・・に含浸した状態を示す。
孔52・・・の孔径d1が100nmと大きいので、多量の熱硬化性樹脂53を孔52・・・内に含浸させることができる。
なお、熱硬化性樹脂53は溶媒希釈しなくても液状をなす樹脂である。
【0030】
(b)は、ST13(樹脂硬化処理)後の状態を示す図であり、オーブンのコイル58から矢印の如く熱を伝えることにより液状の熱硬化性樹脂53を加熱する。液状の熱硬化性樹脂53が硬化して熱硬化性樹脂54となる。
これで、図4に示す特殊な陽極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂54を含浸させた状態になる。
【0031】
本発明によれば、りん酸3ナトリウムには微細な孔52・・・の孔径を大きくする作用がある。このため、陽極酸化皮膜50の微細な孔52・・・を大きな孔径d1にすることができる。従って、陽極酸化皮膜50に多量の熱硬化性樹脂54を含浸することができ、且つ含浸した熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着することができる。この結果、摺動抵抗を減らすことができ、かつ耐久性を高めることができる。
一方、ふっ化カリウムにはSiを溶解する作用と増膜作用とがある。このため、陽極酸化皮膜50の皮膜表面50aを平坦にすることができるので、摺動抵抗をより減らすことができる。
【0032】
さらに、熱硬化性樹脂54に含有したふっ素樹脂は、耐摩耗性や耐熱性に優れており、熱硬化性樹脂54を耐摩耗性や耐熱性に優れた樹脂にすることができる。従って、熱硬化性樹脂54を、例えば100℃〜300℃以上の高温において使用することができるので、ピストンのような高温状態で使用する部材に好適である。
【0033】
【実施例】
本発明に係る実施例及び比較例を表1、表2及び図9に基づいて説明する。
共通条件:
供試材 AC8C(JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物)
成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳物である。
【0034】
【表1】
Figure 0004261016
【0035】
【表2】
Figure 0004261016
【0036】
実施例:
アルミ合金製内燃機関用ピストンのピンボス部のピン孔を脱脂した後、0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、ピンボス部のピン孔に特殊な陽極酸化皮膜を生成した。
特殊な陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d1(図8(a)参照)が100nmと大きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmと平坦である。
なお、Rmaxは、JIS B 0601で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表面最大粗さRmax」を表記した。
【0037】
次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmHgの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレート(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレートを硬化した。
この結果、面圧30kgf/cm2で摩擦係数μを0.006と小さくすることができた。なお、摩擦係数μについては図9のグラフで詳しく説明する。
なお、パーフロロオクチルエチルメタクレートの化学式は以下の通りである。
【0038】
【化1】
Figure 0004261016
【0039】
比較例:
アルミ合金製内燃機関用ピストンのピンボス部のピン孔を脱脂した後、15%硫酸の電解液で、電解液温度を0℃、電圧を15Vとして20分間電気分解して、アルミニウム合金製ピストンのピン孔に普通の陽極酸化皮膜を生成した。
普通の陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d2(図5(b)参照)が15nmと小さく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは12〜13μmと凸凹である。
【0040】
次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmHgの減圧状態でパーフロロオクチルエチルメタクレート液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレートを硬化した。
この結果、面圧30kgf/cm2で摩擦係数μは0.07であった。この摩擦係数μは実施例の0.006と比較して大きい。なお、摩擦係数μについては図9のグラフで詳しく説明する。
【0041】
図9は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜の摩擦係数を示すグラフであり、縦軸は摩擦係数μを示し、横軸は面圧kgf/cm2を示す。実線は実施例のグラフを示し、破線は比較例のグラフを示す。
実施例おいて、摩擦係数μは、面圧10kgf/cm2のとき0.013、面圧20kgf/cm2のとき0.008、面圧30kgf/cm2のとき0.006、面圧40kgf/cm2のとき0.008、面圧50kgf/cm2のとき0.006である。
実施例によれば、面圧が10〜50kgf/cm2の範囲で摩擦係数μを0.013以下に小さくすることができる。従って、摺動抵抗を十分に減少させることができる。
【0042】
一方、比較例において、摩擦係数μは、面圧10kgf/cm2のとき0.06、面圧20kgf/cm2のとき0.069、面圧30kgf/cm2のとき0.069、面圧40kgf/cm2のとき0.062、面圧50kgf/cm2のとき0.054である。
比較例によれば、面圧が10〜50kgf/cm2の範囲で摩擦係数μは0.054以上になり、実施例の摩擦係数μ0.013より大きくなる。従って、摺動抵抗を十分に減少させることはできない。
【0043】
次に、第2実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
図10は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実施の形態)の断面図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン60は、第1実施の形態のアルミ合金製内燃機関用ピストン10から壁部40、42を取り除いたものである。壁部40、42を取り除くことでアルミ合金製内燃機関用ピストン60をより軽量にすることができる。
【0044】
なお、前記実施の形態では、りん酸塩としてりん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他にりん酸ナトリウムなどを使用してもよい。
また、ふっ化物としてふっ化カリウムを使用した例を示したが、その他にふっ化ナトリウムなどを使用してもよく、アルカリ金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。
【0045】
さらに、液状の熱硬化性樹脂としてパーフロロオクチルエチルメタクレート液を使用した例を説明したが、ふっ素を含んだその他の熱硬化性樹脂を使用してもよい。
また、潤滑剤として熱硬化性樹脂を使用した例を説明したが、光硬化性樹脂などのその他の樹脂を使用しても同様の効果を得ることができる。光硬化性樹脂は、例えば紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂が該当する。
【0046】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、ピンボス部のピン孔に、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を被せた。電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合することで、ピンボス部のピン孔に平坦な陽極酸化皮膜を被せることができる。このため、ピン孔を平坦にすることができる。
加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔の孔径を大きくする作用があるので、平坦な陽極酸化皮膜の微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させることができる。
【0047】
従って、摺動抵抗を減少させてピンボス部の厚さを小さくすることによりピストンの軽量化を図り、加えてピストンピンの長さを短くすることでピストンピンの軽量化を図ることができる。この結果、燃費やエンジン出力を十分に向上させることができる。
【0048】
さらに、一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結し、この壁部を傾斜させることでピンボス部に合せてピストン中央に寄せ。壁部を傾斜させることでピストンの剛性を確保することができる。従って、例えば壁部を比較的薄くすることも可能になり、ピストンの軽量化を図ることができる。
【0049】
請求項は、潤滑剤をふっ素系樹脂とした。ふっ素樹脂は耐摩耗性や耐熱性に優れているので、潤滑剤の耐摩耗性や耐熱性を高め、ピストンの品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の斜視図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図3は図1の3矢視図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】内燃機関用ピストンのピン孔に普通の陽極酸化皮膜を形成した比較例
【図6】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説明するフローチャート
【図7】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第1説明図
【図8】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第2説明図
【図9】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜の摩擦係数を示すグラフ
【図10】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実施の形態)の断面図
【図11】従来の内燃機関用ピストンの断面図
【符号の説明】
10,60…アルミ合金製内燃機関用ピストン、20,25…スカート部、30,35…ピンボス部、31,36…ピン孔、40,42…壁部、45…ピストンピン、47…コンロッド、50…陽極酸化皮膜、52…微細な孔、54…潤滑剤、t…ピンボス部の厚さ。

Claims (2)

  1. ピストンピン(45)を挿入する一対のピンボス部(30,35)のピン孔(31,36)に、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜(50)を被せ、陽極酸化皮膜の微細な孔(52)を孔径100nmとし、この微細な孔に液状の熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含浸し、含浸した液状の樹脂を硬化することで微細な孔に潤滑剤(54)を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピストン(10,60)であって、
    前記アルミ合金製内燃機関用ピストンは、コンロッド(47)側から見たときに、スカート部(20,25)を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部の対向する端部(21,26,22,27)同士を壁部(40,42)で連結することで、これら壁部と前記スカート部とで略矩形を形成させ、前記壁部の中央にピンボス部を膨出形成し、且つ、ピンボス部を中央に寄せるために前記壁部を傾斜させたことを特徴とするアルミ合金製内燃機関用ピストン。
  2. 前記潤滑剤はふっ素系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のアルミ合金製内燃機関用ピストン。
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