JP2001279495A - アルミ合金製内燃機関用ピストン - Google Patents

アルミ合金製内燃機関用ピストン

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JP2001279495A
JP2001279495A JP2000089757A JP2000089757A JP2001279495A JP 2001279495 A JP2001279495 A JP 2001279495A JP 2000089757 A JP2000089757 A JP 2000089757A JP 2000089757 A JP2000089757 A JP 2000089757A JP 2001279495 A JP2001279495 A JP 2001279495A
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oxide film
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internal combustion
combustion engine
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JP2000089757A
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Hajime Miyasaka
一 宮坂
Ryotaro Takada
亮太郎 高田
Yuji Marui
勇治 丸井
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Honda Motor Co Ltd
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Honda Motor Co Ltd
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    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/02Light metals
    • F05C2201/021Aluminium

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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 摺動抵抗を十分に減少させることができるア
ルミ合金製内燃機関用ピストンを提供する。 【解決手段】 アルミ合金製内燃機関用ピストン10
は、スカート部20の外表面21aに条痕22を形成し
た部材であって、スカート部20の外表面21aに、り
ん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜
50を被せ、この陽極酸化皮膜50の微細な孔52に熱
硬化性樹脂54を含浸させたものである。これで、陽極
酸化皮膜50を条痕22の形状に倣わせて形成して、陽
極酸化皮膜50の皮膜面21を条痕22と略同じ形状に
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルミ合金で鋳造し
た内燃機関用のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の燃費やエンジン出力を向上させ
るためにピストンの摺動抵抗を減少させる方法が知られ
ている。このピストンの一例として、特開平11−33
6895号公報「ピストン及びピストンの加工方法」が
提案されている。この技術はピストンのスカート部に陽
極酸化皮膜を形成し、陽極酸化皮膜に化成処理皮膜を形
成することで、ピストンの摺動抵抗を減少させるもので
ある。
【0003】一方、摺動抵抗を減少させるために、ピス
トンのスカート部に条痕を形成する方法も知られてお
り、条痕を上記公報の技術と併用すること(すなわち、
条痕に皮膜を被せること)で摺動抵抗をより減少するこ
とができる。以下、条痕に皮膜を被せた例を、次図で詳
しく説明する。
【0004】図14(a),(b)は従来の内燃機関用
ピストンのスカート部の断面図であり、(a)はスカー
ト部に条痕を形成した例を示し、(b)は条痕に皮膜を
被せた例を示す。(a)において、ピストン130のス
カート部131に条痕132・・・(・・・は複数個を示す)
を形成する。条痕132・・・の凹部133・・・を深さHに
一定に確保することで、スカート部131全体に油膜を
均一に保持することができる。このため、ピストン13
0の摺動抵抗を減少することができる。(b)におい
て、ピストン130のスカート部131に条痕132を
形成した、スカート部131に陽極酸化皮膜135を形
成し、陽極酸化皮膜135に化成処理皮膜136を形成
する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、陽極酸化皮膜
135及び化成処理皮膜136を形成することで、条痕
132の凹部133が埋め込まれた状態になる。このた
め、化成処理皮膜136の凹部137は、条痕の凹部と
比べて深さH1が浅くなる。加えて、化成処理皮膜13
6の凹部137は深さが不均一なので、スカート部13
1全体に油膜を均一に保持することはできない。従っ
て、条痕132・・・に皮膜135,136を被せても、
ピストン130の摺動抵抗を大きく減らすことはできな
い。
【0006】そこで、本発明の目的は、ピストンの摺動
抵抗を十分に減少させることができるアルミ合金製内燃
機関用ピストンを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の請求項1は、スカート部の外表面に条痕を形
成したアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、前記
スカート部の外表面に、りん酸塩並びにふっ化物を混合
した電解液で陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮膜の
微細な孔に潤滑剤を含浸させたことを特徴とする。
【0008】電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合す
ることで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これで、陽
極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成して、陽極酸化
皮膜の表面を条痕と略同じ形状にする。このため、スカ
ート部の条痕と同じ量の油膜を陽極酸化皮膜の表面に保
持する。加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔
の孔径を大きくする作用があるので、微細な孔に多量の
潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実に固着させ
る。
【0009】請求項2において、潤滑剤はふっ素系樹脂
であることを特徴とする。ふっ素系樹脂は耐摩耗性や耐
熱性に優れており、ピストンのような高温状態で使用す
る部材に好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基
づいて以下に説明する。図1は本発明に係るアルミ合金
製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の斜視図であ
る。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、Si(シ
リコン)系アルミニウム合金で形成した部材であって、
ピストン頭部12にピストンリング溝13,14及びオ
イルリング溝15を形成し、オイルリング溝15の下側
に一対のスカート部20,25を形成し、スカート部2
0,25の外表面21a(スカート部25の外表面は図
示しない)に条痕22を形成し、一対のスカート部2
0,25の間に一対のピンボス部35,37(ピンボス
部37は図2参照)を形成した部材である。
【0011】スカート部20,25は、条痕22を形成
した外表面21aに、りん酸塩並びにふっ化物を混合し
た電解液で陽極酸化皮膜(特殊な陽極酸化皮膜)50,
50を被せ、特殊な陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑
剤(図4に示す)を含浸させた部材である。なお、陽極
酸化皮膜50を被せた領域を「網目」で示す。
【0012】図2は図1の2矢視図であり、この図でア
ルミ合金製内燃機関用ピストンの形状を詳しく説明す
る。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、コンロッ
ド(図示しない)側から見たときに、一対のスカート部
20,25を対向する一対で構成し、これら一対のスカ
ート部20,25の対向する端部(一端)20a,25
a同士を壁部30で連結し、スカート部20,25の対
向する端部(他端)20b,25b同士を壁部32で連
結することで、これら壁部30,32とスカート部2
0,25とで略矩形を形成させ、且つ壁部30,32の
中央にピンボス部35,37を膨出形成した部材であ
る。
【0013】加えて、アルミ合金製内燃機関用ピストン
10は、壁部30,32がスカート部20,25に交わ
る部位(すなわち、スカート部20,25の一端20
a,25a及び他端20b,25b)において、これら
の部位の内壁40〜43を円弧状に形成し、スカート部
20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より
薄く設定した。
【0014】スカート部20,25の対向する一端20
a,25aを壁部30で連結し、他端20b,25bを
壁部32で連結することで、壁部30,32及びスカー
ト部20,25で略矩形を形成する。このため、スカー
ト部20,25の幅Wをピンボス部35,37の幅W1
より小さくすることができる。従って、スカート部2
0,25を幅狭まとすることで、アルミ合金製内燃機関
用ピストン10の軽量化を図ることができる。また、ス
カート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚
t2より薄く設定したので、アルミ合金製内燃機関用ピ
ストン10をより軽量にすることができる。
【0015】一方、スカート部20,25及び壁部3
0,32で略矩形を形成することにより、スカート部2
0,25を壁部30,32で補強することができる。従
って、スカート部20,25の剛性を高めることができ
る。また、壁部30,32がスカート部20,25に交
わるスカート部の一端20a,25a及び他端20b,
25bの内壁40〜43を円弧状に形成したので、スカ
ート部の一端20a,25a及び他端20b,25bに
応力が集中することを防ぐことができる。従って、スカ
ート部20,25の剛性をより高めることができる。
【0016】一対のスカート部20,25は、幅W及び
長さL(図1に示す)の網目で示した外表面21aに条
痕22・・・(図1に示す)を形成し、外表面21aに特
殊な陽極酸化皮膜50,50を被せ、特殊な陽極酸化皮
膜50,50の微細な孔に潤滑剤を含浸させたものであ
る。なお、特殊な陽極酸化皮膜及び潤滑剤については図
4でさらに詳しく説明する。
【0017】図3は図1の3矢視図であり、スカート部
20,25の下端23,28(下端28は図1に示す)
をピンボス部35,37の下端36,38より延した状
態を示す。スカート部20,25の下端23,28をピ
ンボス部35,37の下端36,38より延すことによ
り、アルミ合金製内燃機関用ピストン10がシリンダ内
を移動している際に、スカート部20,25をシリンダ
に接触させることでピストン10の姿勢を正規の状態に
容易に保つことができる。
【0018】図4は本発明に係るアルミ合金製内燃機関
用ピストンの特殊な陽極酸化皮膜の表面を拡大した断面
図である。なお、潤滑剤54として熱硬化性樹脂を使用
した例を説明する。特殊な陽極酸化皮膜50は、膜厚t
3が略一定で皮膜面21を平坦に形成し、皮膜面21に
微細な孔52・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)を
備えたものである。孔52・・・は孔径d1が比較的大き
い孔である。このため、孔52・・・に十分な量の潤滑剤
(熱硬化性樹脂)54を含浸することができ、含浸した
熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着すること
ができる。
【0019】このため、熱硬化性樹脂54を陽極酸化皮
膜50の微細な孔52・・・に固着させることで、陽極酸
化皮膜50で耐摩耗性を高めるとともに、潤滑剤で摺動
抵抗を減らすことができる。加えて、特殊な陽極酸化皮
膜50は、皮膜面21を平坦にすることで、摺動抵抗を
さらに減らすことができる。
【0020】図5は図3の5−5線断面図である。特殊
な陽極酸化皮膜50は、電解液にりん酸塩並びにふっ化
物を混合することで、Siを溶かして平坦に形成するこ
とができる。これで、陽極酸化皮膜50を条痕22の形
状に倣わせて形成して、陽極酸化皮膜50の表面を条痕
22と略同じ形状にすることができる。すなわち、条痕
22の凹部深さHを5μmに形成すると、陽極酸化皮膜
50の凹部深さH3を5μmに形成することができ、極
酸化皮膜50の凹部深さH3を、条痕22の凹部深さH
と同じ(又は略同じ)にすることができる。このため、
スカート部20の条痕22と同じ量の油膜を陽極酸化皮
膜50の表面に保持することができる。従って、アルミ
合金製内燃機関用ピストン10の摺動抵抗を低減するこ
とができる。
【0021】以下、図6で普通の陽極酸化皮膜の形成方
法を比較例として説明する。図6(a)〜(c)は内燃
機関用ピストンのスカート部に普通の陽極酸化皮膜を形
成した比較例を示す。(a)は、硫酸電解液で生成した
普通の陽極酸化皮膜を示す。母材としてのアルミ合金製
内燃機関用ピストンのスカート部100にSi粒111
・・・が分布し、そのうちの表面近傍のSi粒112・・・が
陽極酸化皮膜113に悪影響を及ぼして、陽極酸化皮膜
113が全体的に凹凸となっている。
【0022】(b)は、(a)の拡大図であり、たまた
ま表面に出ていたSi粒115の部分には陽極酸化皮膜
を形成できずに大きな窪みD1となり、また、表面にご
く近いSi粒116の部分には陽極酸化皮膜117が形
成できたけれども、膜厚は周囲の陽極酸化皮膜113と
比べると小さく、窪みD2ができている。すなわち、S
iを含むアルミニウム合金製ピストン100を硫酸電解
液で陽極酸化処理をしても、平坦な陽極酸化皮膜113
が得られないことが分かった。また、硫酸電解液では、
微細な孔118・・・の孔径をd2とすると、d2は一般
的に15nm程度と小さいことが分かった。
【0023】(c)は、液状の熱硬化性樹脂を微細な孔
118・・・に含浸させ、含浸した液状の熱硬化性樹脂を
加熱して硬化樹脂119・・・に変えた状態を示す。樹脂
は摩擦抵抗が小さいので、陽極酸化皮膜113,117
に硬化樹脂119・・・を含浸させることで、Si系アル
ミニウム合金製ピストンがシリンダ内を高速で往復移動
するときの摺動抵抗は比較的小さくなる。
【0024】しかし、(b)に示したように、陽極酸化
皮膜113に窪みD1,D2が発生して陽極酸化皮膜1
13を平坦に生成することが困難であり、また、陽極酸
化皮膜113に発生した微細な孔118・・・の孔径d2
が小さいので陽極酸化皮膜113に樹脂119を十分に
含有することができない。このため、陽極酸化皮膜11
3に樹脂119を含浸させても摩擦抵抗を所望の値まで
小さくすることはできない。
【0025】以下、図4の断面拡大図に示した特殊な陽
極酸化皮膜を形成する方法を説明する。図7は本発明に
係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形
態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説明するフローチ
ャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。 ST10;アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわ
ち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニ
ウム合金製ピストン)のスカート部の外表面を脱脂す
る。 ST11;りん酸塩としてのりん酸3ナトリウム及びふ
っ化物としてのふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分
解して、スカート部の外側表面に特殊な陽極酸化皮膜を
生成する。この陽極酸化皮膜の表面に微細な孔が生成す
る。
【0026】ST12;ふっ素樹脂を含有する液状の熱
硬化性樹脂(ふっ素系樹脂)を準備し、この液状の熱硬
化性樹脂を陽極酸化皮膜の微細な孔に含浸させる。 ST13;微細な孔に含浸した液状の熱硬化性樹脂を加
熱することにより硬化させる。これで、本発明に係るア
ルミニウム合金製ピストンの陽極酸化処理が完了する。 以下、Si系アルミニウム合金の陽極酸化処理方法のS
T10〜ST13を図8〜図9で詳しく説明する。
【0027】図8(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な
陽極酸化皮膜処理方法の第1説明図である。(a)は、
ST10(脱脂)後の状態を示す図であり、アルミ合金
製内燃機関用ピストンのスカート部20の外表面21a
を脱脂した状態を示す。スカート部20の外表面21a
の近傍にはアルミニウムにSi粒55,56,57が分
散している。
【0028】(b)は、ST11(特殊な陽極酸化皮膜
処理)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及
びふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸
化皮膜50を生成した状態を示す。 りん酸3ナトリウムの腐食作用でスカート部20の外表
面21a((a)に示す)が溶解して、Si粒55,5
6,57が露出する。露出したSi粒55,56,57
がふっ化カリウムの作用で溶解して小さくなる。
【0029】このため、スカート部20の外表面21a
にSi粒55,56,57が存在するにも拘らず、陽極
酸化皮膜50が良好に成長する。この結果、陽極酸化皮
膜50の皮膜面21が揃うので、面粗度は小さくなり、
膜厚t3はほぼ一定となる。また、電解液にはりん酸3
ナトリウムを含むため、りん酸3ナトリウムの孔径を大
きくする作用で、微細な孔52・・・の孔径d1は略10
0nmと十分に大きくなる。
【0030】図9(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な
陽極酸化皮膜処理方法の第2説明図である。(a)は、
ST12(樹脂含浸処理)後の状態を示す図であり、ふ
っ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂53を準備し、
この液状の熱硬化性樹脂53を陽極酸化皮膜50の孔5
2・・・に含浸した状態を示す。孔52・・・の孔径d1が1
00nmと大きいので、多量の熱硬化性樹脂53を孔5
2・・・内に含浸させることができる。なお、熱硬化性樹
脂53は溶媒希釈しなくても液状をなす樹脂である。
【0031】(b)は、ST13(樹脂硬化処理)後の
状態を示す図であり、オーブンのコイル58から矢印の
如く熱を伝えることにより液状の熱硬化性樹脂53を加
熱する。液状の熱硬化性樹脂53が硬化して熱硬化性樹
脂54となる。これで、図4に示す特殊な陽極酸化皮膜
50に熱硬化性樹脂54を含浸させた状態になる。
【0032】本発明によれば、りん酸3ナトリウムには
微細な孔52・・・の孔径を大きくする作用がある。この
ため、陽極酸化皮膜50の微細な孔52・・・を大きな孔
径d1にすることができる。従って、陽極酸化皮膜50
に多量の熱硬化性樹脂54を含浸することができ、且つ
含浸した熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着
することができる。この結果、摺動抵抗を減らすことが
でき、かつ耐久性を高めることができる。一方、ふっ化
カリウムにはSiを溶解する作用と増膜作用とがある。
このため、陽極酸化皮膜50の皮膜面21を平坦にする
ことができるので、摺動抵抗をより減らすことができ
る。
【0033】さらに、熱硬化性樹脂54に含有したふっ
素樹脂は、耐摩耗性や耐熱性に優れており、熱硬化性樹
脂54を耐摩耗性や耐熱性に優れた樹脂にすることがで
きる。従って、熱硬化性樹脂54を、例えば100℃〜
300℃以上の高温において使用することができるの
で、ピストンのような高温状態で使用する部材に好適で
ある。
【0034】
【実施例】本発明に係る実施例及び比較例を表1、表2
及び図10、図11に基づいて説明する。共通条件:供
試材 AC8C(JIS H 5202 アルミニウム合
金鋳物)成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳
物である。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】実施例:アルミ合金製内燃機関用ピストン
のスカート部の外表面を脱脂した後、0.4モル/lり
ん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウ
ムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70V
として30分間電気分解して、スカート部の外表面に特
殊な陽極酸化皮膜を生成した。特殊な陽極酸化皮膜の微
細な孔は孔径d1(図9(a)参照)が100nmと大
きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μ
mと平坦である。なお、Rmaxは、JIS B 060
1で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表
面最大粗さRmax」を表記した。
【0038】次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmH
gの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレー
ト(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放
して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出
した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチル
エチルメタクレートを硬化した。この結果、面圧30k
gf/cm2で摩擦係数μを0.006と小さくするこ
とができた。なお、摩擦係数μについては図10のグラ
フで詳しく説明する。なお、パーフロロオクチルエチル
メタクレートの化学式は以下の通りである。
【0039】
【化1】
【0040】比較例:アルミ合金製内燃機関用ピストン
のスカート部の外表面を脱脂した後、15%硫酸の電解
液で、電解液温度を0℃、電圧を15Vとして20分間
電気分解して、アルミニウム合金製ピストンの表面に普
通の陽極酸化皮膜を生成した。普通の陽極酸化皮膜の微
細な孔は孔径d2(図6(b)参照)が15nmと小さ
く、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは12〜13
μmと凸凹である。
【0041】次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmH
gの減圧状態でパーフロロオクチルエチルメタクレート
液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に
10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで
5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレート
を硬化した。この結果、面圧30kgf/cm2で摩擦
係数μは0.07であった。この摩擦係数μは実施例の
0.006と比較して大きい。なお、摩擦係数μについ
ては図10のグラフで詳しく説明する。
【0042】図10は本発明に係るアルミ合金製内燃機
関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜
の摩擦係数を示すグラフであり、縦軸は摩擦係数μを示
し、横軸は面圧kgf/cm2を示す。実線は実施例の
グラフを示し、破線は比較例のグラフを示す。実施例お
いて、摩擦係数μは、面圧10kgf/cm2のとき
0.013、面圧20kgf/cm2のとき0.00
8、面圧30kgf/cm2のとき0.006、面圧4
0kgf/cm2のとき0.008、面圧50kgf/
cm2のとき0.006である。実施例によれば、面圧
が10〜50kgf/cm2の範囲で摩擦係数μを0.
013以下に小さくすることができる。従って、摺動抵
抗を十分に減少させることができる。
【0043】一方、比較例において、摩擦係数μは、面
圧10kgf/cm2のとき0.06、面圧20kgf
/cm2のとき0.069、面圧30kgf/cm2のと
き0.069、面圧40kgf/cm2のとき0.06
2、面圧50kgf/cm2のとき0.054である。
比較例によれば、面圧が10〜50kgf/cm2の範
囲で摩擦係数μは0.054以上になり、実施例の摩擦
係数μ0.013より大きくなる。従って、摺動抵抗を
十分に減少させることはできない。
【0044】図11(a),(b)は本発明に係るアル
ミ合金製内燃機関用ピストンの特殊な陽極酸化皮膜を説
明する断面図であり、(a)は表1の比較例、(b)は
表1の実施例を示す。(a)は、アルミ合金製内燃機関
用ピストン120のスカート部121に条痕122を形
成し、条痕122に普通の陽極酸化皮膜123を形成
し、陽極酸化皮膜123の微細な孔に潤滑剤を含浸させ
た状態を示す。
【0045】普通の陽極酸化処理ではスカート部121
の表面にSiがあると陽極酸化皮膜123の形成を阻止
して、陽極酸化皮膜123を平坦に形成することができ
ない。このため、陽極酸化皮膜123を条痕122の形
状に倣わせることができないので、陽極酸化皮膜123
の表面形状は条痕122の表面形状と異なる。加えて、
陽極酸化皮膜123の凹部深さH2は条痕122の凹部
深さHと比較して小さくなる。従って、条痕122と同
じ量の油膜を陽極酸化皮膜123の表面に保持すること
ができないので、アルミ合金製内燃機関用ピストン12
0の摺動抵抗を十分に低減して燃費の向上を図ることが
できない。
【0046】(b)は、アルミ合金製内燃機関用ピスト
ン10のスカート部20に条痕22を形成し、条痕22
に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、陽極酸化皮膜50
の微細な孔に潤滑剤を含浸させた状態を示す。特殊な陽
極酸化処理は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合
することで、Siを溶かして陽極酸化皮膜50を平坦に
形成することができる。これで、陽極酸化皮膜50を条
痕22の形状に倣わせて形成して、陽極酸化皮膜50の
表面を条痕22と略同じ形状にすることができる。
【0047】このため、陽極酸化皮膜50の凹部深さH
3は、条痕22の凹部深さHと略同じになる。加えて、
陽極酸化皮膜50の凹部51は深さが不均一なので、ス
カート部20全体に十分な油膜を均一に保持することが
できる。加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔
の孔径を大きくする作用があるので、微細な孔に多量の
潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実に固着させ
る。従って、ピストン20の摺動抵抗を低減することに
より燃費向上を図ることができる。
【0048】次に、第2実施の形態および第3実施の形
態について説明する。なお、第1実施の形態と同一部材
については同一符号を付して説明を省略する。図12は
本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実
施の形態)の側面図である。アルミ合金製内燃機関用ピ
ストン60は、ピンボス部35の下端36及びピンボス
部37の下端38を一対のスカート部62(奥側のスカ
ート部は図示しない)の下端63よりδ寸法延したもの
である。このため、一対のスカート部62を、第1実施
の形態のスカート部20,25より小さくすることがで
きる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストン60を
よりアルミ合金製内燃機関用ピストン10より軽量にす
ることができる。
【0049】図13は本発明に係るアルミ合金製内燃機
関用ピストン(第3実施の形態)の側面図である。アル
ミ合金製内燃機関用ピストン70は、スカート部72を
略逆台形、すなわち下端73からピストン頭部74に向
けてスカート幅をW3からW4に徐々に大きく形成した
ものである。スカート部72を略逆台形に形成すること
により、スカート部72の剛性を高めることができる。
【0050】なお、前記実施の形態では、りん酸塩とし
てりん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他
にりん酸ナトリウムなどを使用してもよい。また、ふっ
化物としてふっ化カリウムを使用した例を示したが、そ
の他にふっ化ナトリウムなどを使用してもよく、アルカ
リ金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。
【0051】さらに、液状の熱硬化性樹脂としてパーフ
ロロオクチルエチルメタクレート液を使用した例を説明
したが、ふっ素を含んだその他の熱硬化性樹脂を使用し
てもよい。また、潤滑剤として熱硬化性樹脂を使用した
例を説明したが、光硬化性樹脂などのその他の樹脂を使
用しても同様の効果を得ることができる。光硬化性樹脂
は、例えば紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂が該当
する。さらに、前記実施の形態では、条痕22の凹部を
略台形に形成した例について説明したが、その他に条痕
の凹部を湾曲形などに形成してもよく、凹部の形状は任
意である。
【0052】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮
する。請求項1は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を
混合することで、Siを溶かして陽極酸化皮膜を平坦に
形成することができる。これで、陽極酸化皮膜を条痕の
形状に倣わせて形成して、陽極酸化皮膜の表面を条痕と
略同じ形状にすることができる。このため、スカート部
の条痕と同じ量の油膜を陽極酸化皮膜の表面に保持する
ことができる。加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微
細な孔の孔径を大きくする作用があるので、微細な孔に
多量の潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実に固
着させる。従って、ピストンの摺動抵抗を十分に低減さ
せて燃費向上を図ることができる。
【0053】請求項2は、潤滑剤としてふっ素系樹脂を
採用した。ふっ素系樹脂は耐摩耗性や耐熱性に優れてお
り、ピストンのような高温状態で使用する部材に使用す
ることにより、ピストンの品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施の形態)の斜視図
【図2】図1の2矢視図
【図3】図1の3矢視図
【図4】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
の特殊な陽極酸化皮膜の表面を拡大した断面図
【図5】図3の5−5線断面図
【図6】内燃機関用ピストンのスカート部に普通の陽極
酸化皮膜を形成した比較例
【図7】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説
明するフローチャート
【図8】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第
1説明図
【図9】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第
2説明図
【図10】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜の摩擦係数
を示すグラフ
【図11】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ンの特殊な陽極酸化皮膜を説明する断面図
【図12】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第2実施の形態)の側面図
【図13】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第3実施の形態)の側面図
【図14】従来の内燃機関用ピストンのスカート部の断
面図
【符号の説明】
10,60,70…アルミ合金製内燃機関用ピストン、
20,25,62,72…スカート部、21a…外表
面、21…皮膜面、22…条痕、50…陽極酸化皮膜、
52…微細な孔、54…潤滑剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16J 1/08 F16J 1/08 (72)発明者 丸井 勇治 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 3J044 AA12 AA20 BA04 BB11 BB14 BB26 BB40 BC04 DA09

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スカート部の外表面に条痕を形成したア
    ルミ合金製内燃機関用ピストンであって、 前記スカート部の外表面に、りん酸塩並びにふっ化物を
    混合した電解液で陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮
    膜の微細な孔に潤滑剤を含浸させたことを特徴とするア
    ルミ合金製内燃機関用ピストン。
  2. 【請求項2】 前記潤滑剤はふっ素系樹脂であることを
    特徴とする請求項1記載のアルミ合金製内燃機関用ピス
    トン。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010090812A (ja) * 2008-10-08 2010-04-22 Art Metal Mfg Co Ltd 内燃機関用ピストンスカート部の表面処理方法及び内燃機関用ピストン
CN101280447B (zh) * 2007-04-07 2011-03-09 山东滨州渤海活塞股份有限公司 铝活塞环槽自动硬质阳极氧化装置
US8789509B2 (en) 2009-03-17 2014-07-29 Hitachi Automotive Systems, Ltd. Piston for internal combustion engine and piston surface treatment method

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