JP4156762B2 - Si系アルミニウム合金の表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はSi粒を含んだアルミニウム合金に陽極酸化被膜を形成し、この酸化被膜にメッキ被膜を形成するSi系アルミニウム合金の表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の内燃機関用シリンダブロックとして、Si系アルミニウム合金でシリンダブロックとシリンダ内面とを一体にダイカスト成形したSi系アルミ合金製シリンダブロックがある。
【0003】
このシリンダブロックは、アルミ合金製とすることで軽量化を図ることができ、アルミ合金にSi粒を含めることで耐摩耗性を高めることができる。
ここで、シリンダブロックのシリンダ内面は、ピストンが摺動する面なので、特に耐摩耗性に優れていることが要求される。この要求を満たすために、シリンダ内面に陽極酸化被膜(Al2O3)を形成したものがある。次図で陽極酸化被膜について説明する。
【0004】
図10は従来のSi系アルミニウム合金製シリンダブロックのシリンダ内面に陽極酸化被膜を形成した断面図である。
Si系アルミ合金製シリンダブロック100のシリンダ内面101に陽極酸化被膜105を形成する際、シリンダブロック100を陽極とし、硫酸電解液中で直流を流すことにより水を分解して酸素を発生させ、この酸素をアルミニウムと反応させてシリンダ内面101に陽極酸化被膜105を形成する。なお、102はSi系アルミ合金製シリンダブロック100に分布したSi粒である。
陽極酸化被膜105は不動態の被膜であり、特に耐摩耗性に優れているので、シリンダ内面101の摩耗性を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、燃料(ガソリン)には不純物として微量の硫黄成分が含まれており、万一シリンダ内で硫黄成分から硫酸が生成された場合、シリンダ内面101の陽極酸化被膜105が硫酸で腐食される虞がある。このため、内燃機関用シリンダブロック100の耐久性をより高めることが難しい。
従って、硫酸に対してシリンダ内面101の耐食性を高めることで、内燃機関用シリンダブロック100の耐久性をより優れたものにすることが望まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、耐久性をさらに高めることができる内燃機関用シリンダブロックを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、硫酸に対する耐食性の実験を進めるなかで、陽極酸化被膜の表面にニッケル(Ni)−銅(Cu)合金のメッキ被膜を形成することで、硫酸に対して耐食性を高めることができることを見い出した。
ここで、シリンダ内面はピストンリングが摺動する面なので、メッキ被膜は密着性に優れている必要がある。これらの観点から検討した結果、陽極酸化被膜の表面を平坦にすることでメッキ被膜の密着性を高めることができるとの見通しを得た。
【0008】
具体的には請求項1は、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液でSiを含むアルミニウム合金に陽極酸化被膜を形成する工程と、陽極酸化被膜上にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成する工程とからSi系アルミニウム合金の表面処理方法である。
【0009】
陽極酸化被膜には微細な孔が存在するが、りん酸塩にはこれらの孔の孔径を大きくする作用がある。このため、微細な孔内にメッキ被膜を確実に埋め込むことができるので、メッキ被膜の密着性を高めることができる。
加えて、ふっ化物はSiを溶解する作用と増膜する作用の双方を合わせもつ。このため、ふっ化物でSiの適度な溶解作用と増膜作用の双方を引き出すことで、陽極酸化被膜の表面を平坦にすることができる。従って、陽極酸化被膜の表面にメッキ被膜を確実に付着させることができる。
【0010】
さらに、陽極酸化被膜の表面を平坦にして、この表面にメッキ被膜を形成するので、メッキ被膜の表面を平坦にすることができる。このため、ピストンに対する摩擦抵抗を小さくでき、ピストンの移動中にかじり(スコーリング:scoring)や焼付きが発生することを防ぐことができる。
【0011】
請求項2は、Ni−Cu合金のNi成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分とすることを特徴とする。
【0012】
Ni−Cu合金のNi成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分とすることにより、Ni−Cuマトリックス中のCu成分を10〜50wt%に設定することができる。
Cu成分が10wt%未満では、Cu成分が少な過ぎてメッキ被膜の耐食性が低下する。そこで、Cu成分を10wt%以上に設定することで、メッキ被膜の耐食性を確保するようにした。
また、Cu成分が50wt%を超えると、Cu成分が多過ぎて耐摩耗性を確保することができない。そこで、Cu成分を50wt%以下に設定することで、メッキ被膜の耐摩耗性を確保するようにした。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法でシリンダ内面を処理したシリンダブロックの断面図である。
内燃機関用シリンダブロック10は、Si粒11・・・を含んだSi系アルミニウム合金(アルミ合金製シリンダブロック)であって、シリンダ内面12に陽極酸化被膜13を形成し、陽極酸化被膜13の表面にNi−Cu合金のメッキ被膜14を形成し、メッキ被膜14に沿ってピストン15を往復運動させるものである。
なお、16は圧縮用のトップリング、17は圧縮用のセカンドリング、18はオイルリング、19はコネクティングロッドである。
【0014】
陽極酸化被膜13は、メッキ被膜14の密着性を高めるために表面を平坦に形成したものである。
Ni−Cu合金のメッキ被膜14は、Ni成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分としたものである。このため、Ni−Cuマトリックス5はCu成分を10〜50wt%含んでいる。
メッキ被膜14をNi−Cuマトリックス5とし、Cu成分を10〜50wt%に設定した理由は後述する。
【0015】
図2は本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法を説明したフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;アルミ合金製シリンダブロックの表面を脱脂する。
ST11;脱脂処理を施した表面にエッチング処理を施す。
【0016】
ST12;りん酸塩(りん酸3ナトリウム)及びふっ化物(ふっ化ナトリウム)の混合水溶液中で電気分解して、アルミ合金製シリンダブロックのシリンダ内面に陽極酸化被膜を形成する。
ST13;陽極酸化被膜の表面に電気メッキ処理でNi−Cu合金のメッキ被膜を形成する。Ni−Cu合金は、Ni成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分としたものである。
これで、シリンダ内面の表面処理が完了する。
以下、前記ST10〜ST13を図3〜図4で詳しく説明する。
【0017】
図3(a),(b)は本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法の第1説明図である。
(a)は、ST10(脱脂)及びST11(エッチング)後の状態を示す図であり、アルミ合金製シリンダブロックのシリンダ内面12を脱脂した後、エッチング処理を施した状態を示す。
シリンダ内面12にはアルミニウム合金内に、図面上で右から左へSi粒11a,11b,11cが分散しているものとする。
【0018】
(b)は、ST12(陽極酸化)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及びふっ化ナトリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸化被膜13を形成した状態を示す。
りん酸3ナトリウムの腐食作用でアルミ合金製シリンダブロック10のシリンダ内面12((a)に示す)が溶解して、Si粒11a,11b,11cが露出する。これらSi粒11a,11b,11cがふっ化ナトリウムの作用で溶解して、小さくなる。
【0019】
このため、Si粒11a,11b,11cが存在するにも拘らず、陽極酸化被膜13が良好に成長する。すなわち、電解液中のふっ化ナトリウムでSiの適度な溶解作用と増膜作用の双方を引き出すことで、陽極酸化被膜13の表面13aが平坦になり、面粗度は小さくなる。従って、陽極酸化被膜13の膜厚t1はほぼ一定となる。
また、電解液のりん酸3ナトリウムは、陽極酸化被膜13に存在する微細な孔13b…の孔径を大きくする作用がある。従って、微細な孔13b…の孔径d1は100nmと十分に大きくなる。
【0020】
図4は本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法の第2説明図であり、ST13(メッキ被膜)後の、硫酸ニッケル及び硫酸銅を混合したメッキ液中で電気メッキ処理を施し、陽極酸化被膜13の表面にNi−Cu合金のメッキ被膜14を形成した状態を示す。
微細な孔13b…の孔径d1が100nmと大きいので、微細な孔13b…内にメッキ被膜14を十分に埋め込むことができる。
また、陽極酸化被膜13の表面13aを揃えて面粗度を小さくしたので、表面13aに密着させた状態でメッキ被膜14を形成することができる。
【0021】
さらに、平坦な表面13aにメッキ被膜14を形成することにより、メッキ被膜14の表面14aを平坦にすることができる。
このため、摩擦抵抗を小さくして、ピストンの移動中にかじり(スコーリング:scoring)や焼付きが発生することを防ぐことができる。この結果、内燃機関用シリンダブロックの耐久性を高めることができる。
【0022】
次に、図10に戻って従来技術を比較例として説明する。シリンダブロック100にSi粒102・・・が分布し、そのうちのシリンダ内面101近傍のSi粒102a・・・が陽極酸化被膜105に悪影響を及ぼして、陽極酸化被膜105が全体的に凹凸となっている。
【0023】
図5はシリンダ内面に陽極酸化被膜を形成した比較例の断面図で、図10の拡大図である。
シリンダ内面からSi粒102bが出ている場合、Si粒102bの部分には陽極酸化被膜を形成できずに大きな窪みD1となる。また、表面にごく近いSi粒102cの部分には陽極酸化被膜106が形成できるが、膜厚は周囲の陽極酸化被膜105と比べると小さく、窪みD2ができる。
【0024】
すなわち、Siを含むアルミ合金製シリンダブロック100のシリンダ内面101を硫酸電解液で陽極酸化処理をしても、陽極酸化被膜の表面最大粗さRmaxは12〜13μmと凸凹であり、平坦な陽極酸化被膜106が得られないことが分かった。
また、硫酸電解液では、微細な孔1105a…の孔径をd2とすると、d2は一般的に15nm程度と小さいことが分かった。
なお、Rmaxは、JIS B 0601で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表面最大粗さRmax」を表記した。
【0025】
図6は陽極酸化被膜の表面にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成した比較例の断面である。
陽極酸化被膜の表面が凸凹なので、メッキ被膜108を陽極酸化被膜105に密着させ難い。
加えて、Si粒102bがシリンダ内面から露出している場合、Si粒102bの部分は非通電状態になり、Si粒102bの表面にメッキ被膜を形成することはできない。従って、メッキ被膜108に孔108aが開いた状態になるので、メッキ被膜108の密着性を十分に確保することができない。
【0026】
【実施例】
本発明に係る実施例及び比較例を表1、表2及び図7に基いて説明する。
共通条件:
供試材 AC8C(JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物)
成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳物である。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
比較例:
Si系アルミ合金製シリンダブロックのシリンダ内面を脱脂した後、エッチング処理を施す。この後、表1に示すように15%硫酸の電解液で、電解液温度を0℃、電圧を15Vとして20分間電気分解して、Si系アルミ合金製シリンダブロックのシリンダ内面に陽極酸化被膜を形成した。
次に、硫酸ニッケル及び硫酸銅を混合したメッキ液で、メッキ液温度を60℃、電圧を5Vとして7分30秒間電気分解して、陽極酸化被膜の表面にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成した。
【0030】
実施例:
Si系アルミ合金製シリンダブロックのシリンダ内面を脱脂した後、エッチング処理を施す。この後、表2に示すように0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化ナトリウムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、Si系アルミ合金製シリンダブロックのシリンダ内面に陽極酸化被膜を形成した。
次に、硫酸ニッケル及び硫酸銅を混合したメッキ液で、メッキ液温度を60℃、電圧を5Vとして7分30秒間電気分解して、陽極酸化被膜の表面にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成した。
【0031】
図7は本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法の密着強さ示すグラフであり、比較例及び実施例の夫々の密着強さを示す。縦軸は密着強さkgf/cm2を示す。
比較例ではメッキ被膜の密着強さは6kgf/cm2であり、実施例ではメッキ被膜の密着強さは22.5kgf/cm2であった。
この結果、実施例のメッキ被膜は、比較例のメッキ被膜と密着強さを比べて略4倍と高くすることができることが分かった。
【0032】
次に、メッキ被膜14のNi成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分とした理由を説明する。
図8(a),(b)は本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法で形成したメッキ被膜の硫酸濃度と腐食摩耗量との関係を説明したグラフであり、横軸は硫酸濃度を示し、縦軸は腐食摩耗量を示す。なお、(a)は比較例1、(b)は実施例1を示し、比較例1及び実施例1は陽極酸化被膜13(図4に示す)にメッキ被膜を形成したものである。
【0033】
このグラフは、電気化学測定方法で測定した結果を示したもので、測定条件は以下の通りである。
メッキ被膜を陽極とし、硫酸水溶液の温度を80℃に設定し、この硫酸水溶液にメッキ被膜を10分間浸漬した後、掃引速度50mV/分をかけて硫酸水溶液中で電解を行い、メッキ被膜の腐食摩耗量を測定する。
【0034】
ここで、腐食摩耗とは、摩擦面が化学変化を起こして変質し、変質した部分が相互運動により取り去られて摩耗が進行することをいい、酸化などもこの範疇に入る。
【0035】
(a)において、Ni−9wt%Cu合金のメッキ被膜は、硫酸濃度が30%を超えると腐食摩耗量が大きくなり、硫酸濃度が50%で腐食摩耗量は4.5μmと多くなる。従って、Cuの含量が9wt%と少ないと、耐食性を確保することができない。
【0036】
(b)において、Ni−10wt%Cu合金のメッキ被膜(実線で示す)は、硫酸濃度が増しても腐食摩耗量を2μm未満に抑えることができる。従って、Cuの含量が10wt%のとき耐食性を確保することができる。
また、Ni−50wt%Cu合金のメッキ被膜(破線で示す)は、硫酸濃度が増しても腐食摩耗量を2μm未満に抑えることができる。従って、Cuの含量が50wt%のとき耐食性を確保することができる。
この結果、Ni−Cu合金のメッキ被膜の場合、Cuの含量が10wt%以上であれば、耐食性に優れたメッキ被膜を得ることができることが分かった。
【0037】
図9(a),(b)は本発明に係る本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法で形成したメッキ被膜の摩擦距離と凝着摩耗量との関係を説明したグラフであり、横軸は摩擦距離を示し、縦軸は凝着摩耗量を示す。(a)は比較例2、(b)は実施例2を示し、比較例2及び実施例2は陽極酸化被膜13(図4に示す)にメッキ被膜を形成したものである。
【0038】
ここで、凝着摩耗とは、摩擦面において金属同士の凝着が起こり、柔らかいほうの金属が引きさかれて、硬いほうの金属に移行することにより起こる摩耗をいい、正常な摩耗をいう。
【0039】
(a)において、Ni−51wt%Cu合金のメッキ被膜は、摩擦距離が略20kmで凝着摩耗量が1.5μmとなり、摩擦距離が略50kmで凝着摩耗量が1.8μmと大きくなり、さらに摩擦距離が100km以上になると凝着摩耗量は2.0μmになる。従って、Cuの含量が51wt%と多いと、耐摩耗性を確保することができない。
【0040】
(b)において、Ni−50wt%Cu合金のメッキ被膜(破線で示す)は、摩擦距離が略50kmで凝着摩耗量が略0.25μmと少なく、摩擦距離が100kmを超えても凝着摩耗量を0.5μm未満に抑えることができる。従って、Cuの含量が50wt%のとき耐摩耗性を確保することができる。
【0041】
また、Ni−10wt%Cu合金のメッキ被膜(実線で示す)は、摩擦距離が100kmを超えるまでは凝着摩耗量は略0で、摩擦距離が180kmを超えても凝着摩耗量を0.1μm未満に抑えることができる。従って、Cuの含量が10wt%のとき耐摩耗性を確保することができる。
この結果、Ni−Cu合金のメッキ被膜の場合、Cuの含量が50wt%以下であれば、耐摩耗性に優れたメッキ被膜を得ることができることが分かった。
【0042】
なお、前記実施の形態では、Si系アルミニウム合金としてSi系アルミニウム合金製シリンダブロックを例に説明したが、その他のSi系アルミニウム合金鋳物に適用することも可能であり、鋳物以外の部材に適用することも可能である。
【0043】
また、りん酸塩としてりん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他にりん酸ナトリウムなどを使用してもよい。
さらに、ふっ化物としてふっ化ナトリウムを使用した例を示したが、その他にふっ化カリウムなどを使用してもよく、アルカリ金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。
【0044】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、陽極酸化被膜には微細な孔が存在するが、りん酸塩にはこれらの孔の孔径を大きくする作用がある。りん酸塩で微細な孔の孔径を大きくすることができるので、微細な孔内にメッキ被膜を確実に埋め込むことができる。従って、メッキ被膜の密着性を高めることができる。
【0045】
加えて、ふっ化物はSiを溶解する作用と増膜する作用との双方を合わせもつ。電解液中のふっ化物でSiの適度な溶解作用と増膜作用の双方を引き出すことができるので、陽極酸化被膜の表面を平坦にすることができる。従って、陽極酸化被膜の表面にメッキ被膜を確実に付着させることができる。
この結果、メッキ被膜の密着性さを高めることができるので、内燃機関用シリンダブロックの耐久性をさらに高めることができる。
【0046】
さらに、陽極酸化被膜の表面を平坦にして、この表面にメッキ被膜を形成するので、メッキ被膜の表面を平坦にすることができる。このため、ピストンに対する摩擦抵抗を小さくして、ピストンの移動中にかじり(スコーリング:scoring)や焼付きが発生することを防ぐことができる。
この結果、内燃機関用シリンダブロックの耐久性を高めることができる。
【0047】
請求項2は、Ni−Cu合金のNi成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分とした。このため、Ni−Cuマトリックス中のCu成分を10wt%以上に設定してメッキ被膜の耐食性を確保し、かつCu成分を50wt%以下に設定してメッキ被膜の耐摩耗性を確保することができる。
この結果、メッキ被膜の耐食性や耐摩耗性を確保して、耐久性の高い内燃機関用シリンダブロックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法でシリンダ内面を処理したシリンダブロックの断面図
【図2】本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法を説明したフローチャート
【図3】本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法の第1説明図
【図4】本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法の第2説明図
【図5】シリンダ内面に陽極酸化被膜を形成した比較例の断面図
【図6】陽極酸化被膜の表面にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成した比較例の断面
【図7】本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法の密着強さ示すグラフ
【図8】本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法で形成したメッキ被膜の硫酸濃度と腐食摩耗量との関係を説明したグラフ
【図9】本発明に係る本発明に係るSi系アルミニウム合金の表面処理方法で形成したメッキ被膜の摩擦距離と凝着摩耗量との関係を説明したグラフ
【図10】従来のSi系アルミニウム合金製シリンダブロックのシリンダ内面に陽極酸化被膜を形成した断面図
【符号の説明】
10…Si系アルミニウム合金(アルミ合金製シリンダブロック)、11,11a,11b,11c…Si(Si粒)、12…シリンダ内面、13…陽極酸化被膜、14…メッキ被膜。
Claims (2)
- りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液でSiを含むアルミニウム合金に陽極酸化被膜を形成する工程と、
陽極酸化被膜上にNi−Cu合金のメッキ被膜を形成する工程とからなるSi系アルミニウム合金の表面処理方法。 - 前記Ni−Cu合金のNi成分を50〜90wt%とし、残部をCu成分とすることを特徴とする請求項1記載のSi系アルミニウム合金の表面処理方法。
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