JP2000045096A - 自己潤滑性アルマイト皮膜の製造方法 - Google Patents

自己潤滑性アルマイト皮膜の製造方法

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JP2000045096A
JP2000045096A JP11141691A JP14169199A JP2000045096A JP 2000045096 A JP2000045096 A JP 2000045096A JP 11141691 A JP11141691 A JP 11141691A JP 14169199 A JP14169199 A JP 14169199A JP 2000045096 A JP2000045096 A JP 2000045096A
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Kazuhiko Inoguchi
和彦 井野口
Ryoji Okabe
良次 岡部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルマイト処理後、迅速に処理が可能で、一
貫ラインの設定が容易であり、しかも従来法と同等以上
の耐摩耗性及び自己潤滑性を有するアルマイト皮膜の形
成が可能なアルマイト皮膜の製造方法を提供すること。 【解決手段】 アルミニウム母材にアルマイト処理を施
した後、モリブデンイオンを含有する水溶液中で前記ア
ルマイト処理を施したアルミニウム母材を陰極として電
解を行ってアルマイト皮膜の微細孔中にモリブデンイオ
ンを集積するか、又はモリブデンイオンを含有する水溶
液中に浸漬してアルマイト皮膜の微細孔中にモリブデン
イオンを含浸させ、次いで硫黄化合物含有ガス雰囲気中
に曝して微細孔中にモリブデン硫化物を形成させること
を特徴とする自己潤滑性を有するアルマイト皮膜の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性及び自己潤
滑性を有するアルマイト皮膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムやアルミニウム合金などの
アルミニウム母材を陽極酸化して酸化皮膜(アルマイト
皮膜)を形成させるアルマイト処理は、アルミニウム母
材への耐摩耗性付与の表面処理方法として広く一般に用
いられている。アルマイト皮膜自体は高硬度で耐摩耗性
を有するものの、摺動部位に使用する場合には潤滑油等
の潤滑剤が不可欠であり、各種機械類に適用する場合に
はこれらの点を配慮した設計がなされている。しかし、
近年使用条件が過酷になり、潤滑剤の供給が不十分な状
況が生じる場合があり、その結果焼付き、摩耗損傷等に
至る例が多くなってきている。そのための対策として、
これらの損傷が生じる部位に固体潤滑剤を配置し、潤滑
剤が枯渇した場合にも自己潤滑性によって補えるように
した皮膜が開発されている。このような皮膜の例とし
て、アルマイト皮膜上にPTFE(ポリテトラフルオロ
エチレン)を吸着させたPTFE吸着アルマイト皮膜、
あるいは二硫化モリブデン(MoS2 )を含浸させたモ
リブデン硫化物含浸アルマイト皮膜がある。これらのう
ち、PTFE吸着アルマイト皮膜は初期なじみには効果
があるものの、表層のPTFEが除去されてしまうと、
それ以後の自己潤滑効果は望めない。一方、モリブデン
硫化物含浸アルマイト皮膜ではモリブデン硫化物が皮膜
の厚さ方向に分布しており、皮膜が存在する間は自己潤
滑性が発揮される効果があり、モリブデン硫化物の含浸
処理は有効な方法である。
【0003】このようなモリブデン硫化物含浸アルマイ
ト皮膜の形成方法として、種々の方法が提案されてお
り、例えば特開昭53−146938号公報には、アル
マイト皮膜の多孔質表面をチオモリブデン酸アンモニウ
ム水溶液中で電解し、更に加熱処理することにより微細
孔中に二硫化モリブデンを含浸固定させるか(従来方法
)、あるいはアルマイト皮膜の多孔質表面をチオモリ
ブデン酸アンモニウム水溶液中で電解し、次いで、チオ
モリブデン酸アンモニウム水溶液と希硫酸に交互に浸漬
し、更に加熱処理する方法(従来方法)が、また、特
開昭59−41518号公報には、アルミニウム母材を
酸性電解浴にモリブデン酸の塩を添加して陽極酸化処理
するかもしくはアルカリ電解浴にチオモリブデン酸の塩
を添加して陽極酸化処理し、次いで得られた陽極酸化皮
膜をチオモリブデン酸の塩を含む電解液中で二次電解処
理する方法(従来方法)が開示されている。また、特
公平2−42916号公報には、アルミニウム母材を陽
極酸化処理し、必要により前処理した後、チオモリブデ
ン酸塩の水溶液と酸の水溶液とによる二液交互浸漬処理
を行い、次いでチオモリブデン酸塩の電解液中で二次電
解を行って、陽極酸化被膜中にモリブデン硫化物を含浸
させる方法が開示されている(従来方法)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらのモリブデン硫
化物含浸アルマイト皮膜の形成方法は、それぞれ特徴を
有するものではあるが、前記従来方法では200℃以
上の加熱処理が必要であり、この温度では母材のアルミ
ニウム合金の強度低下を招く恐れがあり、では交互浸
漬を行うため製造工程が複雑となり、ではベースとな
るアルマイト化処理に使用する液の組成が複雑化し、液
管理に多大な労力を要するという問題点がある。また、
前記の方法によれば、アルマイト処理後に2種類の水
溶液への交互浸漬、二次電解の処理を行うことになり、
製造工程が複雑なため処理時間が長く、工程管理、品質
管理に多大な労力を必要とする欠点がある。特に2種類
の水溶液への交互浸漬の工程を含むため、量産品の一貫
ラインの設定が難しく、別ラインを設けるかあるいはラ
インスピードを低下させ、全体をそのスピードに合わせ
ることになるので、全体の施工時間が長くなる。
【0005】摺動特性に影響を与える要因として、硬さ
及び潤滑剤の存在に加えて摺動部位の表面粗さがある。
アルマイト処理によって皮膜の硬さは向上するものの、
表面粗さは皮膜形成によって処理前の母材表面よりも劣
化し、粗度は悪くなる。そこで、モリブデン硫化物の含
浸効果を最大限に発揮させるため、できるだけ表面粗度
の劣化の少ないアルマイト処理方法の選定が望まれてい
る。アルマイト処理による表面粗度低下はアルミニウム
合金の中でもAl−Si系鋳物合金で特に著しく、母材
中に含まれるSiの影響によりアルマイト処理後の表面
粗度低下が大きい。中でもACD12あるいはACD1
0材を用いたダイカスト品では、母材中に針状Siが存
在するためこれがアルマイト処理時の電気の流れを阻害
し、一般的に行われる硫酸浴では皮膜が成長しにくい、
硬度が得られない、Si密集部の被膜が成長せず逆にア
ルミニウム生地部は成長が大きいなどの問題があり、結
果的に面粗度が極めて悪いものとなるが、これらの現象
は止むを得ないものとされていた。なお、Al−Si系
鋳物材でも熱処理(溶体化処理)が施されたものはSi
の形状が丸みを帯びるため通電状況がよくなり、ダイカ
スト品に比べれば被膜硬度が高く、表面粗度は良化する
傾向にある。本発明はこのような従来技術の実状に鑑
み、アルマイト処理後のモリブデン硫化物の含浸工程に
おいて、製造スピードを変えることなく迅速に処理が可
能で、一貫ラインの設定が容易であり、しかも従来法と
同等以上の耐摩耗性及び自己潤滑性を有するアルマイト
皮膜の形成が可能なアルマイト皮膜の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明はアルミニウム母
材にアルマイト処理を施した後、モリブデンイオンを含
有する水溶液中で前記アルマイト処理を施したアルミニ
ウム母材を陰極として電解を行ってアルマイト皮膜の微
細孔中にモリブデンイオンを集積するか、又はモリブデ
ンイオンを含有する水溶液中に浸漬してアルマイト皮膜
の微細孔中にモリブデンイオンを含浸させ、次いで硫黄
化合物含有雰囲気中に曝して微細孔中にモリブデン硫化
物を形成させることを特徴とする自己潤滑性を有するア
ルマイト皮膜の製造方法である。本発明の好ましい態様
として、前記アルマイト処理を150〜350g/リッ
トルの硫酸及び5〜60g/リットルのシュウ酸を含む
電解液を使用し、リップル率5%以内の波形の整流され
た直流電流により、電流密度0.5〜4A/dm 2 、液
温10〜35℃の条件で行うことを特徴とする前記の自
己潤滑性を有するアルマイト皮膜の製造方法がある。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の方法は、純アルミニウム
又はアルミニウム合金からなるアルミニウム母材にアル
マイト皮膜を形成させる工程と、得られたアルマイト皮
膜中に潤滑剤であるモリブデン硫化物を含浸させる工程
の2工程で構成される。アルマイト処理は電解液中で処
理対象物のワーク(アルミニウム母材)を陽極とし、陰
極には鉛合金あるいは黒鉛板等を用いて電解し、陽極酸
化により多孔質のアルマイト皮膜を形成させるもので、
皮膜の性状に影響を及ぼす主な要因としては電解液の組
成、液温、電流密度、電流波形等がある。このアルマイ
ト処理の一般的な条件は表1のとおりであり、これは通
常のアルマイト処理方法として広く行われている方法で
ある。本発明の方法におけるアルマイト処理方法として
はこのような一般的な方法のほか、母材の種類や使用目
的等に応じて適当な条件を組み合わせた方法を採ること
ができる。
【0008】
【表1】
【0009】前記アルマイト処理において、電解液に1
50〜350g/リットルの硫酸及び5〜60g/リッ
トルのシュウ酸を含む水溶液を使用し、処理温度を高め
とし、リップル率5%以内の波形の整流された直流電流
を使用することによって、十分な皮膜硬さで、表1に示
す通常のアルマイト処理に比較して平滑で表面粗度の良
好なアルマイト皮膜を得ることができる。この場合のア
ルマイト処理条件を表2に示す。アルミニウム母材のア
ルマイト処理においては、Al−Si系鋳物材が最も皮
膜形成が難しく、次いで熱処理された鋳物材、純アルミ
ニウムに近い展伸材の順で皮膜形成は容易となる。Al
−Si系鋳物材の場合、表1に示す通常のアルマイト処
理では形成された皮膜の硬度が低い、膜厚が薄く、表面
粗さが大きいなどの問題あるが、表2の処理方法によれ
ばAl−Si系鋳物材(ダイカスト品を含む)について
も、実用レベルのアルマイト皮膜を形成することができ
る。
【0010】
【表2】
【0011】このようにして多孔質のアルマイト皮膜を
形成させたアルミニウム母材を被処理物とし、モリブデ
ンイオンを含有する水溶液中で前記被処理物を陰極とし
て電解を行い、アルマイト皮膜の微細孔中にモリブデン
の陽イオンを集積させる。モリブデンイオンを含有する
水溶液は、塩化モリブデン(IV、V)、酸化モリブデ
ン、モリブデン酸ナトリウムなどのモリブデンの陽イオ
ンを生じるモリブデン化合物を水に溶解させて調製す
る。モリブデン化合物として塩化モリブデン(V)を使
用した場合の電解条件を表3に示す。なお、アルミニウ
ム母材の性状、目的とする自己潤滑性を有するアルマイ
ト皮膜の性能等によっては、アルミニウム母材をモリブ
デンイオンを含有する水溶液中に浸漬し、アルマイト皮
膜の微細孔中にモリブデンイオンを含浸させるだけでも
よい。
【0012】
【表3】
【0013】次に微細孔中にモリブデンイオンが集積し
た被処理物又はモリブデンイオンを含浸させた被処理物
を硫化水素、二硫化ジメチル、二硫化炭素などの硫黄化
合物含有雰囲気中に曝してモリブデンイオンと硫黄化合
物を反応させ、微細孔中に二硫化モリブデンなどのモリ
ブデン硫化物を形成させる。硫黄化合物含有ガス雰囲気
に曝す方法としては、前記微細孔中にモリブデンイオン
が集積した被処理物を水中に浸漬し、硫化水素などの硫
黄化合物含有ガスを吹き込んでバブリングさせ、飽和状
態として反応させる方法が好適である。
【0014】図1に示すように、アルミニウム母材3の
表面に形成させたアルマイト皮膜には、一般にポアと呼
ばれる微細孔が存在する(図1の符号1)。本発明の方
法においてはこのポア1を利用し塩化モリブデン等のモ
リブデンイオン含有水溶液中での電解によってモリブデ
ンイオンをポア1内に引き寄せ、微細孔中にモリブデン
イオンを集積した形とし、その後硫化水素などの硫黄化
合物含有ガスをバブリングさせて水中で反応させ、二硫
化モリブデンなどのモリブデン硫化物を形成させるので
ある。すなわち、図1に示すアルマイト膜壁2に囲まれ
たポア1内の反応物4がモリブデンイオンであり、これ
が次の工程で硫化水素等と反応してモリブデン硫化物と
なり、ポア1内に堆積する。なお、アルミニウム母材を
モリブデンイオンを含有する水溶液中に浸漬して微細孔
中にモリブデンイオンを含浸させたものでは、電解処理
を行ったものに比較して微細孔中のモリブデンイオンの
集積密度は小さくなるが、使用目的によっては十分な量
のモリブデン硫化物を形成させることができる。
【0015】このようにして得られた微細孔中に二硫化
モリブデンなどのモリブデン硫化物を堆積させたアルマ
イト皮膜は、高い耐摩耗性及び自己潤滑性を有するもで
あって、各種機械類の摺動部位に適用する材料として好
適なものである。特にアルマイト処理を前記表2の条件
で行う場合には、表1に示す一般的なアルマイト処理条
件では良好なアルマイト皮膜が得られなかったAl−S
i系鋳物材についても表面が平滑で面粗度が良好なアル
マイト皮膜が形成できるので、これにモリブデン硫化物
を含浸させることによって、摺動特性が優れた自己潤滑
性アルマイト皮膜を得ることができる。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。 (実施例1)供試体としてアルミニウムのA1100材
を用い、硫酸300g/リットル、溶存アルミニウム5
g/リットルの電解液中にて液温を5℃に保持して、被
処理物を陽極としてアルマイト処理を行った。アルマイ
ト処理の条件は電流密度3A/dm2 (電流はリップル
率5%以内の整流された直流)で20分間の処理とし、
厚さが約20μmのアルマイト皮膜を形成させた。この
皮膜の固さはHv350、表面粗度はRmax.が6μmで
あった。
【0017】このアルマイト皮膜を形成させた供試体を
塩化モリブデンの1wt%水溶液中に浸漬し、供試体
(被処理物)を陰極に設定し、黒鉛板を対極として電解
を行った。この時の通電条件は電流密度50mA/dm
2 で30分間の処理を行った。次いで、この供試体を水
中に浸漬して硫化水素をバブリングさせ20分間処理し
て微細孔中に集積しているモリブデンイオンと反応さ
せ、二硫化モリブデンを主体とするモリブデン硫化物を
生成させた。
【0018】得られた自己潤滑性を有するアルマイト皮
膜試料についてX線マイクロアナライザによるMo分布
の測定及びX線回折分析の結果、アルマイト皮膜中に二
硫化モリブデンが分布していることが確認された。ま
た、ピンオンディスク試験機による摩擦試験の結果は図
2に示すとおりであり、アルマイトに比べて低い摩擦系
数を有していることがわかる。
【0019】(実施例2)テストピースとしてAl−S
i系鋳物材のT6処理を施工した小片を陽極とし、陰極
としてTi板を用いて、硫酸300g/リットル及びシ
ュウ酸10g/リットルを含む電解液中で、液温30℃
で3A/dm2 の電流密度でリップル率5%以内の整流
された直流電流を20分間印加するアルマイト処理を行
って厚さ約20μmのアルマイト皮膜を形成させた。そ
の結果、テストピース表面は処理前の加工面の面粗度が
Rmax.で約1μmであったものがRmax.で約5μmとな
っており、良好な粗さを保持していた。通常、この材料
でこの厚さの皮膜では面粗度はRmax.が10〜15μm
程度となるが、このアルマイト処理の場合は通常のアル
マイト処理に比較して面粗度は大幅に改良されることが
明らかとなった。なお、皮膜の硬さはHv300であ
り、十分な硬さを有していた。
【0020】次にこの平滑なアルマイト皮膜を形成した
テストピースを、塩化モリブデンの1wt%水溶液に浸
漬し、被処理物であるテストピースを陰極とし、対極の
陽極に黒鉛板を使用して電流密度10mA/dm2 、2
0〜25℃で10分間直流電解を行った。その後、この
テストピースを水中に浸漬して硫化水素をバブリングさ
せ20分間処理を行い、微細孔中に集積しているモリブ
デンイオンと反応させ、二硫化モリブデンを主体とする
モリブデン硫化物を生成させた。このようにして得られ
た自己潤滑性を有するアルマイト皮膜を形成させたテス
トピースを用いて摺動試験を行った。試験は相手材とし
て工具鋼を使用し、本処理材と工具鋼との摺動による耐
焼付性試験を実施した。また、通常のアルマイトと工具
鋼との摺動による耐焼付性試験を実施し、本処理材との
比較を行った。その結果、この実施例により得られたテ
ストピースの皮膜は、通常のアルマイト処理を行ったも
のに比べて2倍の焼付限界値を有していた。
【0021】(実施例3)Al−Si系鋳物材でダイカ
ストされた材料(ADC12)を供試材として皮膜形成
を行った。この供試材を陽極とし、陰極としてTi板を
用いて、硫酸200g/リットル及びシュウ酸50g/
リットルを含む電解液中で、液温30℃で3A/dm2
の電流密度でリップル率5%以内に整流された直流電流
を20分間印加するアルマイト処理を行って厚さ約15
μmのアルマイト皮膜を形成させた。その結果、テスト
ピース表面は処理前の加工面の面粗度がRmax.で約1μ
mであったものがRmax.で約5μmとなっており、良好
な粗さを保持していた。皮膜の硬さはHv250であ
り、目標とするHv250以上を確保していた。得られ
たアルマイト処理材を、実施例2と同様に処理してモリ
ブデン硫化物含浸皮膜とした。
【0022】得られた自己潤滑性を有するアルマイト皮
膜を形成させた供試材について、実施例2と同様に摺動
試験を行った結果、通常のアルマイト処理を行ったもの
に比べて2倍の焼付限界値を有していた。なお、実施例
2及び3で得られた自己潤滑性を有するアルマイト皮膜
の摩擦係数は、実施例1で得られたものとほぼ同等であ
った。Al−Si系鋳物材においては、ほぼ同等の成分
組成であっても鋳造方法、熱処理方法によって存在する
Siの形状が異なってくる。特にADC12材等ダイカ
ストされた材料は針状の微細なSiが分布し、これらが
アルマイト処理時の電流を阻害するため、十分な膜厚を
確保できない、表面粗さが劣化する、十分な硬さの皮膜
が得られない等の問題がある。市場ではダイカスト品の
場合、これらの現象はやむを得ないものとして受け止め
られていたが、本発明によりこれらの問題点は改良さ
れ、良好な品質の自己潤滑性を有するアルマイト皮膜を
得ることができた。
【0023】(実施例4)テストピースとしてAl−S
i系鋳物材のT6処理を施行した小片を陽極とし、陰極
としてTi板を用い、実施例2に示した条件でアルマイ
ト処理を行い、約20μmの膜厚で表面粗さがRmax.で
約5μmの皮膜を形成した。このテストピースを塩化モ
リブデンの1wt%水溶液中に40分間浸漬し、その
後、このテストピースを水中に浸漬し硫化水素をバブリ
ングさせ20分間処理を行い、微細孔中に集積している
モリブデンイオンと反応させ、二硫化モリブデンを主体
とするモリブデン硫化物を生成させた。このアルマイト
処理材について実施例2と同様の摺動試験を実施した結
果、通常のアルマイト処理を行ったものに比べて約1.
5倍の焼付限界値を有していた。
【0024】
【発明の効果】本発明の方法によれば、従来法と同等以
上の耐摩耗性及び自己潤滑性を有するアルマイト皮膜
を、比較的簡単な操作により製造することができる。特
に、特定のアルマイト処理条件を設定することにより、
Al−Si系鋳物材についても平滑なアルマイト皮膜と
することができ、摺動特性の優れた自己潤滑性を有する
アルマイト皮膜を得ることができる。本発明の方法は、
アルミニウム母材のアルマイト処理後、製造スピードを
変えることなく迅速な処理が可能で、一貫ラインの設定
が容易な方法であり、工業的な利用価値の高いものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルマイト皮膜の断面を示す模式図。
【図2】実施例で得られた自己潤滑性を有するアルマイ
ト皮膜試料の摩擦試験結果を示す図。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム母材にアルマイト処理を施
    した後、モリブデンイオンを含有する水溶液中で前記ア
    ルマイト処理を施したアルミニウム母材を陰極として電
    解を行ってアルマイト皮膜の微細孔中にモリブデンイオ
    ンを集積するか、又はモリブデンイオンを含有する水溶
    液中に浸漬してアルマイト皮膜の微細孔中にモリブデン
    イオンを含浸させ、次いで硫黄化合物含有雰囲気中に曝
    して微細孔中にモリブデン硫化物を形成させることを特
    徴とする自己潤滑性を有するアルマイト皮膜の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記アルマイト処理を150〜350g
    /リットルの硫酸及び5〜60g/リットルのシュウ酸
    を含む電解液を使用し、リップル率5%以内の波形の整
    流された直流電流により、電流密度0.5〜4A/dm
    2 、液温10〜35℃の条件で行うことを特徴とする請
    求項1に記載の自己潤滑性を有するアルマイト皮膜の製
    造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1306070C (zh) * 2003-12-04 2007-03-21 中国科学院兰州化学物理研究所 多孔阳极氧化铝膜的自润滑处理方法
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