JP4379852B2 - アルミ合金製内燃機関用ピストン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミ合金製のピストンに陽極酸化皮膜を被せた内燃機関用のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の燃費やエンジン出力を向上させるためにピストンの摺動抵抗を減少させる方法が知られている。このピストンの一例として、特開平11−336895号公報「ピストン及びピストンの加工方法」が提案されている。この技術はピストンのスカート部に陽極酸化皮膜を形成し、陽極酸化皮膜に化成処理皮膜を形成することで、ピストンの摺動抵抗を減少させるものである。
【0003】
一方、摺動抵抗を減少させるために、ピストンのスカート部に条痕を形成する方法も知られており、条痕を上記公報の技術と併用すること(すなわち、条痕に皮膜を被せること)で摺動抵抗をより減少することができる。以下、条痕に皮膜を被せた例を、次図で詳しく説明する。
【0004】
図15(a),(b)は従来の内燃機関用ピストンのスカート部の断面図であり、(a)はスカート部に条痕を形成した例を示し、(b)は条痕に皮膜を被せた例を示す。
(a)において、ピストン130のスカート部131に条痕132・・・(・・・は複数個を示す)を形成する。条痕132・・・の凹部133・・・を深さA1に一定に確保し、凹部133・・・に油を溜めることにより、スカート部131全体に油膜を均一に保持することができる。このため、ピストン130の摺動抵抗を減少することができる。
(b)において、条痕132・・・を形成したスカート部131に陽極酸化皮膜135を形成し、陽極酸化皮膜135に化成処理皮膜136を形成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、条痕132・・・に陽極酸化皮膜135及び化成処理皮膜136を形成することで、化成処理皮膜136の凹部137・・・を条痕132の凹部133・・・に合せて一定ピッチに形成することはできない。
加えて、化成処理皮膜136の凹部137・・・は深さA2も不均一なので、スカート部131全体に油膜を均一に保持することはできない。従って、条痕132・・・に皮膜135,136を被せても、ピストン130の摺動抵抗を大きく減らすことはできない。
【0006】
また、化成処理皮膜136の頂部138a,138b(その他の頂部は符号を付さない)は不均一に突出するので、ピストン130をシリンダ内で往復運動する際に、特に高く突出した頂部138aがシリンダに接触する際の面圧が高くなる。よって、摺動抵抗が高くなることが考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スカート部の全域に油膜を均一に保持することができ、かつシリンダに接触する際の面圧を抑えることができるアルミ合金製内燃機関用ピストンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、スカート部の外表面に条痕を形成し、この条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングし、内燃機関のならし運転で、条痕の頂部に相当する二硫化モリブデン被膜を摩耗させることにより、二硫化モリブデン被膜の頂部の領域を平坦部とすることで、平坦部から前記陽極酸化皮膜の頂部を露出させたことを特徴とする。
【0009】
電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合することで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これにより、陽極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成して、陽極酸化皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすることができる。よって、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングすることで、二硫化モリブデン皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすることができる。このため、二硫化モリブデン皮膜の表面全域に油膜を均一に保持することができる。
加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔の孔径を大きくする作用がある。このため、微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実に固着させることができる。
【0010】
さらに、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングした。二硫化モリブデンは自己潤滑性に優れているため、ならし運転の際にピストンの摺動抵抗を低く抑えることができる。このため、シリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることができる。
【0011】
加えて、ならし運転で条痕の頂部に相当する二硫化モリブデンの皮膜を摩耗させることにより、陽極酸化皮膜の一部を二硫化モリブデンの皮膜から露出させることができる。陽極酸化皮膜は対摩耗性に優れているので、露出した一部の陽極酸化皮膜をシリンダに当接させることで、ならし運転後のピストンの摩耗を十分に抑えることができる。
この際に、露出した一部の陽極酸化皮膜に加えて二硫化モリブデンもシリンダの摺動面に接触させることができるので、ならし運転後のシリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることもできる。
【0012】
請求項2は、二硫化モリブデンの皮膜厚さを5〜15μmとしたことを特徴とする。
ここで、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmである。よって、二硫化モリブデンの皮膜厚さを5μm未満とすると、二硫化モリブデンの皮膜厚さが陽極酸化皮膜の表面最大粗さに近く、陽極酸化皮膜の表面全域に二硫化モリブデンを確実にコーティングすることができない虞れがある。このため、ならし運転時のシリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることができない虞れがある。
また、二硫化モリブデンの皮膜厚さが15μmを越えると、二硫化モリブデンの皮膜厚さが厚くなりすぎてコーティング処理に時間がかかる。このため、ピストンのコストアップの要因になる。
従って、二硫化モリブデンの皮膜厚さを5〜15μmに設定することとした。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の斜視図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、Si(シリコン)系アルミニウム合金で形成した部材であって、ピストン頭部12にピストンリング溝13,14及びオイルリング溝15を形成し、オイルリング溝15の下側に一対のスカート部20,25を形成し、スカート部20,25の外表面21a(スカート部25の外表面は図示しない)に条痕22を形成し、一対のスカート部20,25の間に一対のピンボス部35,37(ピンボス部37は図2参照)を形成した部材である。
【0014】
スカート部20,25は、条痕22を形成した各外表面21aに、りん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜(特殊な陽極酸化皮膜)50,50(スカート部25の陽極酸化皮膜50は図2に示す)をそれぞれ被せ、特殊な陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤54(図9(b)に示す)を含浸させた部材である。なお、陽極酸化皮膜50を被せた領域を「網目」で示す。
【0015】
図2は図1の2矢視図であり、この図でアルミ合金製内燃機関用ピストンの形状を詳しく説明する。
アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、コンロッド(図示しない)側から見たときに、一対のスカート部20,25を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部20,25の対向する端部(一端)20a,25a同士を壁部30で連結し、スカート部20,25の対向する端部(他端)20b,25b同士を壁部32で連結することで、これら壁部30,32とスカート部20,25とで略矩形を形成させ、且つ壁部30,32の中央にピンボス部35,37を膨出形成した部材である。
【0016】
加えて、アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、壁部30,32がスカート部20,25に交わる部位(すなわち、スカート部20,25の一端20a,25a及び他端20b,25b)において、これらの部位の内壁40〜43を円弧状に形成し、スカート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より薄く設定した。
【0017】
スカート部20,25の対向する一端20a,25aを壁部30で連結し、他端20b,25bを壁部32で連結することで、壁部30,32及びスカート部20,25で略矩形を形成する。このため、スカート部20,25の幅Wをピンボス部35,37の幅W1より小さくすることができる。従って、スカート部20,25を幅狭まとすることで、アルミ合金製内燃機関用ピストン10の軽量化を図ることができる。
また、スカート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より薄く設定したので、アルミ合金製内燃機関用ピストン10をより軽量にすることができる。
【0018】
一方、スカート部20,25及び壁部30,32で略矩形を形成することにより、スカート部20,25を壁部30,32で補強することができる。従って、スカート部20,25の剛性を高めることができる。
また、壁部30,32がスカート部20,25に交わるスカート部の一端20a,25a及び他端20b,25bの内壁40〜43を円弧状に形成したので、スカート部の一端20a,25a及び他端20b,25bに応力が集中することを防ぐことができる。従って、スカート部20,25の剛性をより高めることができる。
【0019】
一対のスカート部20,25は、幅W及び長さL(図1に示す)の網目で示した各外表面21aに条痕22・・・(図1に示す)を形成し、各々の外表面21aに特殊な陽極酸化皮膜50,50をそれぞれ被せ、特殊な陽極酸化皮膜50,50の微細な孔に潤滑剤を含浸させたものである。なお、特殊な陽極酸化皮膜及び潤滑剤については図8〜図9でさらに詳しく説明する。
【0020】
図3は図1の3矢視図であり、スカート部20,25(スカート部25は図2参照)の下端23,28(下端28は図1も参照)をピンボス部35,37の下端36,38より下方に延した状態を示す。
スカート部20,25の下端23,28をピンボス部35,37の下端36,38より下方に延すことにより、アルミ合金製内燃機関用ピストン10がシリンダ内を移動している際に、スカート部20,25をシリンダに接触させることでピストン10の姿勢を正規の状態に容易に保つことができる。
【0021】
図4は図3の4−4線断面図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、スカート部20,25の外表面21a(図1に示す)に条痕22・・・を形成し、この条痕22・・・の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜50を被せ、この陽極酸化皮膜50の微細な孔52に潤滑材54(図9(b)に示す)を含浸させ、陽極酸化皮膜50に二硫化モリブデン(MoS2)の皮膜(以下、「二硫化モリブデン皮膜」という)60を皮膜厚さt4が5〜15μmになるようにコーティングしたものである。
【0022】
加えて、このアルミ合金製内燃機関用ピストン10は、ならし運転で条痕22・・・の頂部に相当する二硫化モリブデン皮膜60を摩耗させることにより、二硫化モリブデン皮膜60の頂部の領域Hを平坦部61・・・にすることで、平坦部61・・・から陽極酸化皮膜50の頂部51・・・を露出させたものである。
【0023】
特殊な陽極酸化皮膜50は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合することで、Siを溶かして平坦に形成することができる。これで、陽極酸化皮膜50をスカート部20の条痕22・・・の凹凸形状に倣わせて形成して、陽極酸化皮膜50の表面を条痕22・・・と略同じ凹凸形状にすることができる。
【0024】
そして、この陽極酸化皮膜50に二硫化モリブデン皮膜60をコーティングすることで、二硫化モリブデン皮膜60の表面を条痕22・・・の凹凸形状に倣わせて形成することができる。よって、二硫化モリブデン皮膜60の表面全域に油膜を均一に保持することができる。
【0025】
二硫化モリブデン皮膜60は、ポリアミドイミド(PAI)をバインダーにしてその中に二硫化モリブデン(MoS2)を混合し、これを陽極酸化皮膜50の表面に塗布し、この状態で焼き固めることにより二硫化モリブデン皮膜60を形成したものである。
なお、二硫化モリブデン皮膜60を皮膜厚さt4を5〜15μmになるようにコーティングした理由は次の通りである。
【0026】
すなわち、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmである。よって、二硫化モリブデン皮膜60の皮膜厚さt4を5μm未満とすると、陽極酸化皮膜50の表面全域に二硫化モリブデン皮膜60を確実にコーティングすることができない虞れがある。よって、ならし運転時のシリンダに対するピストン10の面圧を低く抑えることができない虞れがある。そこで、二硫化モリブデン皮膜60の皮膜厚さt4を5μm以上に設定して、ならし運転時のシリンダに対するピストン10の面圧を低く抑えるようにした。
【0027】
また、二硫化モリブデン皮膜60の皮膜厚さt4が15μmを越えると、二硫化モリブデン皮膜60の皮膜厚さt4が厚くなりすぎてコーティング処理に時間がかかる。このため、ピストン10のコストアップの要因になる。そこで、二硫化モリブデン皮膜60の皮膜厚さt4を15μm以下に抑えて、二硫化モリブデンのコーティング処理に時間をかけないようにした。
【0028】
ところで、二硫化モリブデンは鉛筆硬度が2B以上であり、陽極酸化皮膜の硬度は260〜280(ビッカース)である。二硫化モリブデンは陽極酸化皮膜と比較して柔らかく自己潤滑性を有するため、ピストン10のならし運転の際に初期なじみがつきやすい。よって、ピストン10(スカート部20)の摺動抵抗を低く抑えることができる。
このため、ならし運転時のシリンダに対するピストン10の面圧を低く抑えることができる。従って、短いならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができる。
【0029】
ピストン10のならし運転を実施することで、条痕22・・・の頂部に相当する二硫化モリブデン皮膜60を摩耗させることにより、陽極酸化皮膜50の頂部51・・・を露出させることができる。
よって、ならし運転を実施した後は、陽極酸化皮膜50の頂部51・・・と二硫化モリブデン皮膜60の平坦部61がシリンダの摺動面に接触する。
【0030】
ここで、陽極酸化皮膜50は、微細な孔52の孔径を大きくすることで、微細な孔52に多量の潤滑剤54を含浸させ、その潤滑剤54を孔52内に確実に固着させることができる。このため、陽極酸化皮膜50は、耐摩耗性に優れているととともに、潤滑性にも優れている。加えて、二硫化モリブデンは自己潤滑性を有している。
このため、ならし運転を実施した後の通常のピストン運動の際に、シリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることができ、かつピストンの摩耗を十分に抑えることができる。
【0031】
以下、図5で普通の陽極酸化皮膜の形成方法を比較例として説明する。
図5(a)〜(c)は内燃機関用ピストンのスカート部に普通の陽極酸化皮膜を形成した比較例を示した説明図である。
(a)は、硫酸電解液で生成した普通の陽極酸化皮膜を示す。母材としてのアルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部100にSi粒111・・・が分布し、そのうちの表面近傍のSi粒112・・・が陽極酸化皮膜113に悪影響を及ぼして、陽極酸化皮膜113が全体的に凹凸となっている。
【0032】
(b)は、(a)の拡大図であり、たまたま表面に出ていたSi粒115の部分には陽極酸化皮膜を形成できずに大きな窪みD1となり、また、表面にごく近いSi粒116の部分には陽極酸化皮膜117が形成できたけれども、膜厚は周囲の陽極酸化皮膜113と比べると小さく、窪みD2ができている。
【0033】
すなわち、Siを含むアルミニウム合金製ピストン100を硫酸電解液で陽極酸化処理をしても、平坦な陽極酸化皮膜113が得られないことが分かった。
また、硫酸電解液では、微細な孔118・・・の孔径をd2とすると、d2は一般的に15nm程度と小さいことが分かった。
【0034】
(c)は、液状の熱硬化性樹脂を微細な孔118・・・に含浸させ、含浸した液状の熱硬化性樹脂を加熱して硬化樹脂119・・・に変えた状態を示す。
樹脂は摩擦抵抗が小さいので、陽極酸化皮膜113,117に硬化樹脂119・・・を含浸させることで、Si系アルミニウム合金製ピストンがシリンダ内を高速で往復移動するときの摺動抵抗は比較的小さくなる。
【0035】
しかし、(b)に示したように、陽極酸化皮膜113に窪みD1,D2が発生して陽極酸化皮膜113を平坦に生成することが困難であり、また、陽極酸化皮膜113に発生した微細な孔118・・・の孔径d2が小さいので陽極酸化皮膜113に樹脂119を十分に含有することができない。
このため、陽極酸化皮膜113に樹脂119を含浸させても摩擦抵抗を所望の値まで小さくすることはできない。
【0036】
以下、本発明に係る特殊な陽極酸化皮膜を形成する方法を説明する。
図6は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニウム合金製ピストン)のスカート部の外表面に条痕を形成する。
【0037】
ST11;条痕を形成したスカート部の外表面を脱脂する。
ST12;りん酸塩としてのりん酸3ナトリウム及びふっ化物としてのふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して、スカート部の外側表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成する。この陽極酸化皮膜の表面に微細な孔が生成する。
ST13;ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂(ふっ素系樹脂)を準備し、この液状の熱硬化性樹脂を陽極酸化皮膜の微細な孔に含浸させる。
【0038】
ST14;微細な孔に含浸した液状の熱硬化性樹脂を加熱することにより硬化させる。これで、本発明に係るアルミニウム合金製ピストンの陽極酸化処理が完了する。
ST15;陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングする。
以下、Si系アルミニウム合金の陽極酸化処理方法のST10〜ST15を図7〜図10で詳しく説明する。
【0039】
図7は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第1説明図であり、ST10を示す。
アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニウム合金製ピストン)のスカート部20の外表面21a(図1に示す)に条痕22を形成する。
【0040】
図8(a),(b)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第2説明図であり、特殊なる陽極酸化皮膜50の処理方法を示す。なお、理解を容易にするためスカート部20の外表面を横向きに配置した状態で説明する。
【0041】
(a)は、ST11(脱脂)後の状態を示す図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部20の外表面21aを脱脂した状態を示す。
スカート部20の外表面21aの近傍にはアルミニウムにSi粒55,56,57が分散している。
【0042】
(b)は、ST12(特殊な陽極酸化皮膜処理)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及びふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸化皮膜50を生成した状態を示す。
りん酸3ナトリウムの腐食作用でスカート部20の外表面21a((a)に示す)が溶解して、Si粒55,56,57が露出する。露出したSi粒55,56,57がふっ化カリウムの作用で溶解して小さくなる。
【0043】
このため、スカート部20の外表面21aにSi粒55,56,57が存在するにも拘らず、陽極酸化皮膜50が良好に成長する。この結果、陽極酸化皮膜50の皮膜面21が揃うので、面粗度は小さくなり、膜厚t3はほぼ一定となる。
また、電解液にはりん酸3ナトリウムを含むため、りん酸3ナトリウムの孔径を大きくする作用で、微細な孔52・・・の孔径d1は略100nmと十分に大きくなる。
【0044】
図9(a),(b)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第3説明図であり、特殊なる陽極酸化皮膜50の処理方法を示す。
(a)は、ST13(樹脂含浸処理)後の状態を示す図であり、ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂53を準備し、この液状の熱硬化性樹脂53を陽極酸化皮膜50の孔52・・・に含浸した状態を示す。
孔52・・・の孔径d1が100nmと大きいので、多量の熱硬化性樹脂53を孔52・・・内に含浸させることができる。
なお、熱硬化性樹脂53は溶媒希釈しなくても液状をなす樹脂である。
【0045】
(b)は、ST14(樹脂硬化処理)後の状態を示す図であり、オーブンのコイル58から矢印の如く熱を伝えることにより液状の熱硬化性樹脂53を加熱する状態を示す。液状の熱硬化性樹脂53が硬化して熱硬化性樹脂(潤滑剤)54となる。
これで、特殊な陽極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂54を含浸させた状態になる。
【0046】
図10(a)〜(c)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第4説明図であり、二硫化モリブデン皮膜60のコーティング処理方法を示す。
(a)は、スカート部20の条痕22・・・に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、この陽極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂54(図9(b)に示す)を含浸させた状態を示す。
特殊な陽極酸化皮膜50は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合することで、Siを溶かして平坦に形成することができるので、その表面を条痕22・・・と略同じ形状にすることができる。
【0047】
(b)は、ST15(二硫化モリブデンのコーティング処理)後の状態を示す図である。陽極酸化皮膜50に二硫化モリブデン皮膜60を形成することで、二硫化モリブデン皮膜60の表面を条痕22・・・と略同じ形状にすることができる。このため、二硫化モリブデン皮膜60の表面全域に油膜を均一に保持することができる。
【0048】
(c)は、ピストン10をならし運転することにより、条痕22・・・の頂部に相当する二硫化モリブデン皮膜60を摩耗させて平坦部61・・・とすることで、平坦部61・・・から陽極酸化皮膜50を露出させた状態を示す。
二硫化モリブデンは自己潤滑性を有するため、ならし運転の際にピストン10の摺動抵抗を低く抑えることができる。よって、ならし運転時のシリンダに対するピストン10の面圧を低く抑えることができる。従って、短いならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができる。
【0049】
【実施例】
本発明に係る実施例及び比較例を表1、表2、図11及び図12に基づいて説明する。
共通条件:
供試材 AC8C(JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物)
成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳物である。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
実施例:
アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部の外表面を脱脂した後、0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、スカート部の外表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成した。
特殊な陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d1(図9(a)参照)が100nmと大きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmと平坦である。
なお、Rmaxは、JIS B 0601で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表面最大粗さRmax」を表記した。
【0053】
次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmHgの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレート(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレートを硬化した。
【0054】
次いで、陽極酸化皮膜の表面に二硫化モリブデン(MoS2)の皮膜をコーティングする。すなわち、ポリアミドイミド(PAI)をバインダーにしてその中に二硫化モリブデンを混合し、これを陽極酸化皮膜の表面に塗布し、この状態で焼き固めることにより二硫化モリブデンの皮膜を皮膜厚さ15μmに形成する。
【0055】
このピストンをエンジンに組込んでならし運転をおこない、そのときのエンジン出力特性を測定した。その結果、ならし運転の当初から所望のエンジン出力特性を得ることができることが判かった。
その理由は、二硫化モリブデンは自己潤滑性を有するため、ならし運転の際にピストンの摺動抵抗を低く抑えることができる。よって、ならし運転時のシリンダに対するピストンの面圧を低く抑えて、初期摺動抵抗を低くすることができるからである。
なお、パーフロロオクチルエチルメタクレートの化学式は以下の通りである。
【0056】
【化1】
【0057】
比較例:
実施例と同様に、アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部の外表面を脱脂した後、0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、スカート部の外表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成した。
【0058】
特殊な陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d1(図9(a)参照)が100nmと大きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmと平坦である。
なお、Rmaxは、JIS B 0601で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表面最大粗さRmax」を表記した。
【0059】
次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmHgの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレート(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレートを硬化した。
【0060】
このピストンをエンジンに組込んでならし運転をおこない、そのときのエンジン出力特性を測定した。その結果、所望のエンジン出力特性を得るまでには、ならし運転を比較的長い時間実施する必要があることが判かった。
その理由は、陽極酸化皮膜において条痕の頂部に相当する部位が頂部として存在しているため、ピストンがシリンダに接触する際の面圧が高くなり、初期摺動抵抗が高くなるからである。
【0061】
次に、図11及び図12に基づいてアルミ合金製内燃機関用ピストンの作用について説明する。
図11(a)〜(d)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の作用を説明する断面図であり、(a)〜(b)は表1の比較例、(c)〜(d)は表1の実施例を示す。
また図12は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の作用を説明するグラフである。縦軸は摩擦係数を示し、横軸はピストンの運転時間を示し、破線のグラフは比較例、実線は実施例を示す。
【0062】
図11(a)は、アルミ合金製内燃機関用ピストン120のスカート部121に条痕122・・・を形成し、条痕122・・・に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸させた状態を示す。
【0063】
特殊な陽極酸化皮膜50は条痕122・・・に沿って均一の厚さで陽極酸化皮膜50を被せることが可能であり、陽極酸化皮膜50において条痕122・・・の頂部に相当する部位(頂部)51・・・が突出する。従って、ピストン120がシリンダ59内で矢印▲1▼の如く往復運動する際に、突出した頂部51・・・がシリンダ59に当接するので、図12のグラフに示すように摩擦係数がμ1と大きくなり、陽極酸化皮膜50の頂部51・・・に大きな面圧がかかる。
【0064】
(b)において、陽極酸化皮膜50の頂部51・・・((a)に示す)に陽極酸化皮膜50の頂部51・・・や条痕122の頂部122aが摩耗して条痕122の頂部122a・・・が露出する。
ならし運転完了後は、図12のグラフに示すように摩擦係数がμ2と小さくなる。しかし、条痕122の頂部122a・・・が露出してしまい、頂部122a・・・を陽極酸化皮膜50で保護することができないので、スカート部20の耐摩耗性を十分に確保することは難しい。
【0065】
(c)は、アルミ合金製内燃機関用ピストン10のスカート部20に条痕22・・・を形成し、条痕22・・・に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸させ、この陽極酸化皮膜50に二硫化モリブデン皮膜60を皮膜厚さが15μmになるようにコーティングした状態を示す。
【0066】
ピストン10がシリンダ59内で矢印▲2▼の如くならし運転を実施する。二硫化モリブデンは自己潤滑性を有するため、ピストン10の摺動抵抗を低く抑えることができる。このため、図12のグラフに示すように摩擦係数をμ3と小さくでき、シリンダ59に対するピストン10の面圧を低く抑えることができるので、短いならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができる。
【0067】
(d)において、ならし運転で条痕22・・・の頂部に相当する二硫化モリブデン皮膜60を摩耗させることで平坦部61・・・とし、平坦部61・・・から陽極酸化皮膜50を露出させることができる。
【0068】
陽極酸化皮膜50は対摩耗性に優れているとともに、微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させているのでならし運転後のピストンの摩耗を十分に抑えることができる。加えて、二硫化モリブデン皮膜60の平坦部61・・・でピストン10の摺動抵抗を低く抑えることができる。
【0069】
従って、ならし運転後のピストン運転においても、図12のグラフに示すように摩擦係数をμ3と小さくでき、シリンダ59に対するピストン10の面圧を低く抑えることができる。このため、ピストン10の摺動抵抗を減少させて円滑に運動させることができる。
【0070】
次に、第2〜第3実施形態を図13〜図14に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
図13は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実施形態)の側面図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン70は、ピンボス部35の下端36及びピンボス部37の下端38より一対のスカート部72(奥側のスカート部は図示しない)の下端73をδ寸法だけ上方に上げたものである。
このため、一対のスカート部72を、第1実施形態のスカート部20,25より小さくすることができる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストン70をよりアルミ合金製内燃機関用ピストン10より軽量にすることができる。
【0071】
図14は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第3実施形態)の側面図である。
アルミ合金製内燃機関用ピストン80は、スカート部82を略逆台形、すなわち下端83からピストン頭部84に向けてスカート幅をW3からW4に徐々に大きく形成したものである。
スカート部82を略逆台形に形成することにより、スカート部82の剛性を高めることができる。
【0072】
なお、前記実施形態では、りん酸塩としてりん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他にりん酸ナトリウムなどを使用してもよい。
また、ふっ化物としてふっ化カリウムを使用した例を示したが、その他にふっ化ナトリウムなどを使用してもよく、アルカリ金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。
【0073】
さらに、液状の熱硬化性樹脂としてパーフロロオクチルエチルメタクレート液を使用した例を説明したが、ふっ素を含んだその他の熱硬化性樹脂を使用してもよい。
また、潤滑剤として熱硬化性樹脂を使用した例を説明したが、光硬化性樹脂などのその他の樹脂を使用しても同様の効果を得ることができる。光硬化性樹脂は、例えば紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂が該当する。
さらに、前記実施形態では、条痕22の凹部を略V形に形成した例について説明したが、その他に条痕の凹部を湾曲形や台形などに形成してもよく、凹部の形状は任意である。
【0074】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、スカート部の外表面に条痕を形成し、この条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングし、内燃機関のならし運転で、条痕の頂部に相当する二硫化モリブデン被膜を摩耗させることにより、二硫化モリブデン被膜の頂部の領域を平坦部とすることで、平坦部から前記陽極酸化皮膜の頂部を露出させたことを特徴とし、先ず、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合することで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これにより、陽極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成して、陽極酸化皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすることができる。このため、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングすることで、二硫化モリブデン皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすることができる。従って、二硫化モリブデン皮膜の表面全域に油膜を均一に保持することができる。
加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔の孔径を大きくする作用がある。このため、微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実に固着させることができる。
【0075】
さらに、陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングした。二硫化モリブデンは自己潤滑性に優れているので、ならし運転の際にピストンの摺動抵抗を低く抑えることができる。このため、ならし運転時のシリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることができる。
【0076】
加えて、ならし運転で条痕の頂部に相当する二硫化モリブデンの皮膜を摩耗させることにより、陽極酸化皮膜の一部を露出させることができる。陽極酸化皮膜は対摩耗性に優れているので、露出した一部の陽極酸化皮膜をシリンダに当接させることで、ならし運転後のピストンの摩耗を十分に抑えることができる。
【0077】
この際に、露出した一部の陽極酸化皮膜に加えて二硫化モリブデンもシリンダの摺動面に接触させることができるので、ならし運転後のシリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることができる。
このように、油膜を均一に保持し、潤滑剤を確実に固着させ、加えて面圧を抑えることができるので、ピストンを円滑に摺動させることができる。
【0078】
請求項2は、二硫化モリブデンの皮膜厚さを5μm以上に設定したので、陽極酸化皮膜の表面全域に二硫化モリブデンの皮膜を確実にコーティングすることができる。このため、ならし運転時のシリンダに対するピストンの面圧を低く抑えることができるので、短いならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができる。
【0079】
また、二硫化モリブデンの皮膜厚さを15μm以下に設定したので、二硫化モリブデンの皮膜厚さを好適な範囲に抑えることができ、コーティング処理を比較的時間をかけるないで行うことができる。このため、ピストンのコストアップを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の斜視図
【図2】図1の2矢視図
【図3】図1の3矢視図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】内燃機関用ピストンのスカート部に普通の陽極酸化皮膜を形成した比較例を示した説明図である。
【図6】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法を説明するフローチャート
【図7】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第1説明図
【図8】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第2説明図
【図9】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第3説明図
【図10】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の製造方法の第4説明図
【図11】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の作用を説明する断面図
【図12】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の作用を説明するグラフ
【図13】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実施形態)の側面図
【図14】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第3実施形態)の側面図
【図15】従来の内燃機関用ピストンのスカート部の断面図
【符号の説明】
10,70,80…アルミ合金製内燃機関用ピストン、20,25,72,82…スカート部、21a…スカート部の外表面、22…条痕、50…陽極酸化皮膜、51…露出した頂部、52…微細な孔、54…潤滑剤、60…二硫化モリブデン皮膜、61…二硫化モリブデン皮膜の平坦部、t4…二硫化モリブデン皮膜の皮膜厚さ。
Claims (2)
- スカート部の外表面に条痕を形成し、この条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、
前記陽極酸化皮膜に二硫化モリブデンをコーティングし、
内燃機関のならし運転で、前記条痕の頂部に相当する二硫化モリブデン被膜を摩耗させることにより、前記二硫化モリブデン被膜の頂部の領域を平坦部とすることで、前記平坦部から前記陽極酸化皮膜の頂部を露出させた、
ことを特徴とするアルミ合金製内燃機関用ピストン。 - 前記二硫化モリブデンの皮膜厚さを5〜15μmとしたことを特徴とする請求項1記載のアルミ合金製内燃機関用ピストン。
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