JP5966977B2 - エンジンの断熱層形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、エンジンを構成する部品やその部品の一部表面を断熱するために設けられる断熱層とその形成方法に関するものである。
エンジンの冷却損失を軽減するために、燃焼室の断熱が有効であることが知られており、セラミック材料を使用した断熱層を有するエンジンが多数、提案されている。
また、特許文献1には、断熱性の高い樹脂をエンジンの断熱層として使用することによって、燃費を向上させる断熱エンジンが開示されている。具体的な材料として、耐熱性に優れるシリコーン系樹脂が一例として挙げられており、上記シリコーン系樹脂であれば、高い断熱性及び高い表面平滑性を備えるため、エンジンの燃費向上、ノッキングの抑制に効果的であると示唆している。
しかし、シリコーン系樹脂を断熱層とする場合は、耐ガソリン性が十分とは云えず、ガソリンが浸み込み、シリコーン系樹脂を溶解し、断熱層が剥離する可能性があり、長期にわたって安定的な性能を保つのが難しい。
特開2012−172619号公報
上記問題に対する解決策として、シリコーン系樹脂の断熱層の表面一部がSi系酸化物となるようにシリコーン系樹脂を焼成する工程を追加すると、シリコーン系樹脂の断熱層の硬さが向上して、断熱層の変形を防止することができる。また、Si系酸化物とするのは表面近傍のみなので、断熱層内部(深層部)がシリコーン系樹脂を含んでいるため柔軟性を有している。この柔軟性によりエンジン基材の変形に追従することができ、これにより、断熱層にクラックが生じたり、断熱層が剥離したりすることを防止することができる。この結果、クラック等を介した断熱層内への燃料の浸み込みを防止することができると考えられる。さらに、焼成したシリコーン系樹脂自体は緻密であるので、断熱層にクラックが生じていない状態では断熱層内に燃料が浸み込むことはないと考えられる。
上記シリコーン系樹脂の断熱層の一部をSi系酸化物とする焼成工程を追加する際、一部表面の有機物は酸化して二酸化炭素等となり層外へ排出される。近年のエンジンにおいて用いられるようになっているアルミニウム合金製であれば、一般的な熱処理法として知られる約500℃で4時間+急冷(溶体化処理)と、約180℃で10時間(人工時効処理)とを行っているため、シリコーン系樹脂を焼成する工程において、180℃超の焼成温度ではアルミニウム合金の機械的強度が低下してしまい、シリコーン系樹脂を断熱層として形成することが不可能であった。したがって、180℃以下で50時間以上にわたって焼成を行う必要があり、生産性が悪かった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンの所定部位に形成される断熱層であるシリコーン系樹脂の一部をSi系酸化物とする焼成工程において、その焼成時間を短縮することで、より生産性の良いエンジンの断熱層の形成方法を確立することである。

本発明者は、上記課題を解決するために、エンジン基材に熱処理を施す工程を有し、シリコーン系樹脂の断熱層の一部がSi系酸化物となるような焼成工程に、2段階の焼成を施す工程を設けることで、上記課題を解決することができるエンジンの断熱層の形成方法を完成した。
すなわち、本願の請求項1に係る発明は、エンジンの所定部位に断熱層を形成する方法であって、前記エンジンの所定部位に熱処理を施す熱処理工程と、前記熱処理工程後、前記エンジンの所定部位の少なくとも一部にシリコーン系樹脂を含む材料を塗布する断熱層塗布工程と、前記断熱層塗布工程後、前記断熱層に対して2段階の焼成を行う焼成工程とを有し、第1段階の焼成の後に行われる第2段階の焼成が230℃以上250℃以下で3時間以上10時間以下の範囲であり、前記第1段階の焼成温度が第2段階の焼成温度よりも低い焼成温度であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法である。
この断熱層形成方法によれば、エンジン基材に熱処理(溶体処理×過時効処理)を施す工程を有することで、エンジン基材に、寸法安定性を与えることができるため、第2段階の焼成温度を高くしても、エンジンの所定部位に変形を伴わない。したがって、第2段階焼成温度においてシリコーン系樹脂を高く短時間で焼成することができ、断熱層形成の生産性が向上する。
また、2段階の焼成を行う焼成工程を有し、第1段階の焼成の後に行われる第2段階の焼成が230℃以上250℃以下で3時間以上10時間以下であり、前記第1段階の焼成温度が第2段階の焼成温度よりも低い焼成温度とすることで、エンジン基材の変形を抑制することができる。また、第2段階の焼成温度によって、シリコーン系樹脂が十分に焼成される。ここで言う焼成とは、シリコーン系樹脂を架橋させて三次元的なSi−O−Si−O構造を得ることである。また、前述した熱処理の効果により、エンジン基材に寸法安定性を持たせたため、シリコーン系樹脂の焼成工程において、第2段階の温度を高く設定しても、エンジン基材の変形等、熱による悪影響が起きない。
また、上記塗布工程において、断熱層は前記部材の燃焼室壁面形状に倣うように略均一な厚さで形成されていることが好ましい。このようにすると、断熱層の厚さの差による断熱性能の差に起因する、局所的な過剰断熱や熱引けを防止できる。
また、上記塗布工程において、エンジンの断熱層は、厚さが60μm以上200μm以下であり、20vol%以上60vol%以下の中空状粒子を含むことが好ましい。断熱層の厚さを60μm以上とすると、必要とする断熱特性を得ることができ、一方、200μm以下とするとエンジンの高温時における断熱層の収縮、及び断熱層からのアウトガスの発生を抑制できるため、断熱層の剥離を防ぐことができる。このため、断熱層の厚さは60μm以上200μm以下が好ましい。
さらに、上記樹脂焼成工程において、断熱層の表面部の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましい。このようにすると、断熱層の表面の強度が高いため、燃焼圧力等による断熱層における変形及びクラックの発生等を防止することができる。
本願の請求項2に係る発明は、前記エンジンの所定部位がアルミニウム合金製であり、前記熱処理がT7処理であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法である。
アルミニウム合金製のエンジンであれば、例えば鋳鉄等の金属よりも軽量とすることができる。さらにT7処理を施すことで、シリコーン系樹脂の断熱層の一部がSi系酸化物となるように焼成工程に必要な温度(230℃以上250℃以下)に耐え、アルミニウム合金製のエンジンの変形を抑制することができる。
本願の請求項3にかかわる発明は、請求項1又は2において、上記エンジンの所定部位が、エンジンの燃焼室に臨む部位であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法である。
上記断熱層を設けるエンジンの所定部位がエンジンの燃焼室に臨む部位であれば、燃焼熱を効率よく断熱することができる。
本願の請求項4にかかわる発明は、請求項1乃至3のいずれか一において、前記焼成工程の第1段階の焼成が180℃以上200℃以下で5時間以上20時間以下の範囲であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法である。
シリコーン系樹脂含有断熱材料は、急激に200℃を超える高温で焼成を行うと、シリコーン樹脂の炭化水素成分の燃焼や、上記断熱材料に含まれる残溶剤が一気に気化して、上記断熱材料に大きな空孔が生じる。断熱層表面に空孔があると、燃料や空気が空孔に溜ることで異常燃焼を起こし、断熱層表面温度の局所的な上昇を生じる可能性がある。燃焼時に第1段階の焼成温度が上記温度で、シリコーン系樹脂含有断熱材料から断熱層を形成すれば、上記空孔形成による断熱層表面温度の局所的な上昇を防ぎ、異常燃焼及び断熱層の熱損を防ぐことができ、さらに、断熱層の強度の低下や剥離、及び断熱層表面が荒れることも防止できる。さらに、請求項2のアルミニウム合金エンジンが変形することなく、シリコーン系樹脂の第1段階焼成を行うことができる。
本願の請求項5にかかわる発明は、請求項1乃至4のいずれか一において、前記エンジンの所定部位表面に表面処理加工を行う表面処理加工工程を有し、前記熱処理工程後に前記表面処理加工工程を行うとともに、前記表面処理加工工程後に前記断熱層塗布工程を行うことを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法である。
この場合、上記表面処理加工はブラスト処理及び陽極酸化処理の少なくとも一方であることが好ましい。このような処理を用いれば、表面粗さが大きくなり、断熱層に対するアンカー効果が得られる。また、陽極酸化処理を用いる場合では、その面にシリコーン系樹脂の有機基等と結合可能な反応基(OH基)が生成されるため、断熱層との密着性を向上でき、剥離を防止できる。
本願の請求項6にかかわる発明は、請求項1乃至5のいずれか一において、前記焼成工程の後に、前記焼成された断熱層表面に金属層を設ける工程を含むことを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法である。
シリコーン系樹脂断熱層上に金属層を設けることによって、極めて厳しい熱及び圧力環境に晒される断熱層の表面の硬度、耐熱性及び耐燃料性を更に向上できる。例えばNiからなるめっき層を形成できる。
なお、このとき、シリコーン系樹脂に直接にめっき層を形成することは、困難なため、めっき層の核材(触媒金属)を担持させる。触媒金属としては、例えばPd−Sn錯体を用いることができる。
本発明のエンジンの断熱層形成方法であれば、短時間で、且つ断熱層を形成したエンジンの所定部位を変形させることなく、シリコーン系樹脂の断熱層の一部をSi系酸化物とすることができる。
燃焼室側表面に断熱層を形成したピストン 燃焼室側表面に断熱層を形成し、金属めっきを施したピストン 燃焼室側表面の一部に断熱層を形成したピストン エンジンの断熱層の形成方法のフローチャート エンジンの断熱層上に金属めっきを施す形成方法のフローチャート FT−IR分光分析によるシリコーン系樹脂の振動ピーク測定結果
以下に本発明の好ましい形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
図1は、本発明の方法により、エンジンの構成部品であるピストンの燃焼室側表面に断熱層が形成されている、本発明の実施形態の一つである。断熱層1は、シリコーン系樹脂含有断熱材料2からなり、エンジンの構成部品であるピストン4の表面処理加工面3の上に堆積して形成されている。シリコーン系樹脂を含む断熱材料2には、中空状粒子5を含んでおり、中空粒子を含むことで熱伝導性の低い空気が多く存在し、低熱伝導性の層になっている。これにより、高い断熱性を有する燃焼室が得られる。
図2は、断熱層1上に金属めっき6を施した、本発明の実施形態の一つである。このような形態により、シリコーン系樹脂の断熱層が断熱効果を持ちつつ、めっきした金属により断熱層の耐熱性、強度、耐ガソリン性等の耐久性を向上できる。
図3は、断熱層1を上記エンジンの構成部品であるピストン4の頂面の一部にのみ施した、本発明の実施形態の一つである。図3の実施例の場合、比較的動的負荷が起きやすいピストン頂面のシリンダライナに接する個所には断熱層を施さず、強度の高い金属とすることで、断熱層の断熱性能を得つつ、耐久性を維持することができる。

<エンジンの所定部位>
エンジンの所定部位には、AC8A、AC9Aなどのアルミニウム合金を使用する。アルミニウム合金であれば、例えば鋳鉄等の金属よりも軽量という点で優れている。
<シリコーン系樹脂>
シリコーン系樹脂としては、例えば、メチルシリコーン系樹脂、メチルフェニルシリコーン系樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコーン系樹脂を好ましく用いることができる。シリコーン系樹脂の具体例としては、例えばポリアルキルフェニルシロキサンを挙げることができる。
断熱層1が上記のようなシリコーン系樹脂を含むことで断熱層1が柔軟性を有するので、エンジン運転中のピストンの変形に追従することができ、断熱層1にクラックが生じたり剥離したりすることを防止することができる。この結果、クラック等を介した断熱層1内への燃料の浸み込みを防止することができる。また、焼成したシリコーン系樹脂自体は緻密であるので、断熱層1にクラック等が生じていない状態では、断熱層1内に燃料が浸み込むことはない。
シリコーン系樹脂含有断熱材料2は、シリコーン系樹脂よりなる母材に多数の無機酸化物の中空状粒子を含有していてもよく、無機酸化物の中空状粒子としては、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、エアロゲルバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、SiO2)を含有するセラミック系中空状粒子を採用することが好ましい。
例えば、フライアッシュバルーンの化学組成は、SiO2;40.1〜74.4%、Al2O3;15.7〜35.2%、Fe2O3;1.4〜17.5%、MgO;0.2〜7.4%、CaO;0.3〜10.1%(以上は質量%)である。シラスバルーンの化学組成は、SiO2;75〜77%、Al2O3;12〜14%、Fe2O3;1〜2%、Na2O;3〜4%、K2O;2〜4%、IgLoss;2〜5%(以上は質量%)である。なお、中空状粒子の粒子径は平均で10(μm)、最大でも50(μm)以下が好ましく、その含有率は、信頼度という点から、50%以下が好ましい。
本実施例では、シラスバルーンが上記シリコーン系樹脂と当該中空状粒子との合計体積に対して、20vol%以上60vol%以下の範囲で含有されている。
<シリコーン系樹脂焼成温度>
シリコーン系樹脂によって形成される断熱層が、耐ガソリン性をもつには、シリコーン系樹脂に含まれている有機物を焼成し、断熱層表面の一部の樹脂を熱分解および酸化させ、Si系酸化物とすることが必要である。こうして、上記シリコーン系樹脂含有断熱材料2が断熱層1となる。
上記断熱層1が、シリコーン系樹脂の一部が酸化されてなるSi系酸化物を含むので、断熱層1の硬さが向上して、燃焼圧によって断熱層1が変形することを防止することができる。また、シリコーン系樹脂が柔軟性を有するので、シリコーン系樹脂がピストン4の変形に追従することができ、断熱層1にクラックが生じたり、剥離したりすることを防止することができる。この結果、クラック等を介した断熱層1内への燃料の浸み込みを防止することができる。また、シリコーン系樹脂自体は緻密であるので、断熱層1にクラックが生じていない状態では、断熱層1内に燃料が浸み込むことはない。
ここで、表面層にSi系酸化物が形成されているか否かを確認すべく、基材表面に形成した厚さ200μmの断熱層1等について、フーリエ変換型の赤外分光分析(FT−IR分光分析)を行い、断熱層1の厚さ方向における構造変化を測定した。図6は、上記断熱層形成工程の後、上記焼成工程にて180℃で65時間の焼成をした場合と、250℃で3時間の焼成をした場合の断熱層をKRS5レンズ付ダイヤモンドを用いたATR法(分解能:4(cm−1)、圧力ゲージ:50(psi))により、FT−IR分光分析で測定した、シリコーン系樹脂の振動ピークを示す。
180℃で65時間の焼成では、C−H、Si−C等の有機官能基の振動ピークが見られるが、250℃で3時間の焼成を行うと、それらの振動ピークが小さくなり、シリコーン樹脂の架橋がより進んでいることが示唆された。この結果から焼成温度を上げることにより、シリコーン樹脂の架橋をより速く進めることができ、より速くSi系酸化物が形成され得ることが示唆された。
上記測定結果より、上記焼成工程の焼成範囲は第1段階の焼成が180℃以上200℃以下で5時間以上20時間以下、第2段階の焼成が230℃以上250℃以下で3時間以上20時間以下が実用上有効な範囲である。
<エンジンの断熱層の形成方法>
以下に述べる方法では、エンジンの構成部品であるピストンに断熱層を形成することを前提としているが、ピストン以外にもシリンダライナ側面やシリンダヘッドなど、どのエンジンの所定部位においてもピストンの場合と同様の方法で、短時間で断熱層を形成することができる。
図4はエンジンの断熱層の形成方法のワークフローである。ステップS1(エンジンの熱処理工程)において、上記エンジンの所定部位に熱処理を施す。一般的に、上記熱処理には、T5、T6、T7熱処理等が知られている。本願実施例では、寸法安定性の高い、T7熱処理(500℃で4時間+急冷の溶体化処理と、250℃で4時間の人工時効処理)を施した。
ステップS2(エンジンの表面処理加工工程)において、エンジンの所定部位と断熱材、特にシリコーン系樹脂との付着力を高めるべく、必要に応じてエンジンの所定部位にブラスト処理及び陽極酸化処理の少なくとも一方を行なう。
ステップS3(シリコーン系樹脂塗布工程)において、シリコーン系樹脂と中空状粒子とを攪拌・混合してなる断熱材を準備する。必要に応じて増粘剤や希釈溶剤を添加して塗料の粘度を調整する。上記断熱材をピストン本体4の頂面にスプレーや刷毛を用いて塗布して断熱層を形成する。塗布した後、熱風乾燥、赤外線ヒータ等により、ピストン本体4の頂面の断熱材層の予備乾燥を行う。断熱材層の厚さが所望の厚さ(例えば、100μm)に至っていない場合には、所望の厚さに至るまで塗布して、予備乾燥する工程を繰り返し行なう(重ね塗り)。或いは、ピストン本体4の頂面に断熱材を載せ、ピストン頂面形状に倣った成型面を有する成型型によって断熱材をピストン本体4の頂面に押し付け、その頂面全体にわたって拡げることで、断熱材層を形成するようにしてもよい。
ステップS4(焼成工程)において、断熱層の表面を、シリコーン系樹脂の酸化温度以上の温度に熱風乾燥、赤外線ヒータ等により加熱する。このとき熱は断熱層の表面から内部に伝わるため、断熱層にはその表面から内部に向かって温度が漸次低くなる温度勾配ができる。断熱層の表面はシリコーン系樹脂の酸化温度以上の温度に加熱されているため、この表面のシリコーン系樹脂は酸化されて、Si系酸化物が生成する。すなわち、ピストン4の燃焼室表面側には、図3に示す上述のSi系酸化物を主体とするエンジンの所定部位の表面上に中空状粒子5が分散した表面層1が形成される。
当該加熱により、断熱層内部のシリコーン系樹脂も架橋が進むものの、上記温度勾配により、断熱層内部はシリコーン系樹脂が酸化するほどには温度が上がらず、シリコーン系樹脂を母材として中空状粒子が分散した断熱層1が形成され、図3に示す断熱層1がピストン本体4の頂面に形成される。
また、断熱層上に金属めっきを施す場合の形成方法の工程図を図5に示す。S11からS14までの工程は、図4のS1からS4までと同じである。S15からS17は、断熱層焼成後、さらにめっきを施す場合の工程を示す。
ステップS15(エッチング処理工程)において、ピストン4の断熱層1以外の非処理部をマスキング材の塗布によってマスキングし、シリコーン系樹脂含有断熱材料2のエッチング処理を行なう。本実施形態では、エッチング液として、硝酸とフッ化水素酸の混酸(硝酸200mL/L,フッ化水素酸200mL/L)を用いた。エッチング処理は室温で1分間とした。このエッチングにより、シリコーン系樹脂含有断熱材料2の表面に微細突起ができる。
ステップS16(触媒金属付与工程)において、ピストン本体4のシリコーン系樹脂含有断熱材料2の表面に無電解めっき用の触媒金属を付与する。すなわち、Pd−Sn錯体を含むキャタリスト液にピストン4を浸漬した後、活性化促進処理を行なう。
本実施形態では、キャタリスト液として、酸性パラジウム・スズコロイドタイプの触媒化処理剤(奥野製薬工業株式会社製商品CRP(登録商標)キャタリスト)50mL/Lと35%塩酸250mL/Lの混合液(Pd−Snコロイド触媒)を用い、浴温は35℃とし、浸漬時間は6分間とした。これにより、Pd−Sn錯体がシリコーン系樹脂含有断熱材料2の表面のシリコーン系樹脂由来のSi系酸化物及び中空状粒子由来のSi系酸化物に付着する。
活性化処理では、活性化浴として、濃硫酸100ml、アクセレーター(奥野製薬工業株式会社製商品アクセレーターX)5g及び水の混合液を用い、浴温は35℃とし、浸漬時間は3分間とした。これにより、塩化錫が溶解し、酸化還元反応により金属Pdよりなる触媒金属がSi系酸化物上に生成される。すなわち、触媒金属がSi系酸化物に担持された状態になる。
ステップS17(無電解めっき処理工程)において、断熱層1に触媒金属が付与されたピストン本体4を水洗して過剰の硫酸等を除去した後、無電解Niめっき浴に浸漬する。本実施形態では、無電解Ni−P合金めっき液(奥野製薬工業株式会社製商品トップニコロン(登録商標)LPH−LF)250mL/Lを用いた。浴温は90℃とし、浸漬時間は12分間(めっき膜厚3μm)とした。なお、このめっき浴の場合、めっき金属の析出速度は12〜18μm/hである。この無電解めっきにより、上記触媒金属Pdを核としてNi−P合金が析出し、図に示すように、シリコーン系樹脂含有断熱材料2の表面にめっき膜6が形成される。また、先のエッチング処理により、シリコーン系樹脂含有断熱材料2の表面に微細突起が形成されているため、めっき膜6は、微細突起のアンカー効果によりシリコーン系樹脂含有断熱材料2の表面に強固に固定されることとなる。
<耐ガソリン性評価方法>
上記図4の方法により、断熱層が形成されたテストピースをガソリン中に24時間浸漬する。浸漬後、渦電流式膜厚計により断熱層の厚さを測定し、断熱層の厚さ減少度を測定する。また、目視にて断熱層の剥離がないかを確認する。
各シリコーン系樹脂焼成条件による、耐ガソリン性の浸漬評価の実施例・比較例を以下に示す。
[実施例1]
実施例1は、エンジンの構成部品の表面に見立てたテストピース(丸平板、φ40mmで厚さ5mm、基材:AC8Aアルミニウム合金)に、図1と同様の断熱層(ポリアルキルフェニルシロキサン)を図4に記載のフローにて形成した。断熱層厚みは100μmとし、シリコーン系樹脂焼成条件は、第1段階の焼成が180℃で10時間、第2段階の焼成が250℃で3時間とした。
[比較例1] 比較例1は、熱処理工程S1の熱処理条件をT6熱処理とし、シリコーン系樹脂焼成条件を180℃で65時間とした以外は、実施例1と同様の製法で作成した。
[比較例2] 比較例2は、比較例1について、シリコーン系樹脂の焼成条件を180℃で0.5時間としたものである。
<評価結果> 耐ガソリン性の評価結果を表1に示す。
実施例1では、耐ガソリン試験において断熱層の厚さに変化はなく、剥離も見られなかった。
比較例1では剥離は見られなかったが、断熱層の厚さが減少しており、少量のシリコーン系樹脂がガソリンに溶解した。
比較例2では、断熱層として塗布されたシリコーン系樹脂は耐ガソリン性を有さず、すべて溶解した。
本発明は、エンジンの断熱性を向上させるために、エンジンの所定部位に断熱層を形成する場合に有効である。
1 断熱層
2 シリコーン系樹脂含有断熱材料
3 ピストンの表面処理加工面
4 ピストン
5 中空粒子
6 金属めっき

Claims (6)

  1. エンジンの所定部位に断熱層を形成する方法であって、
    前記エンジンの所定部位に熱処理を施す熱処理工程と、
    前記熱処理工程後、前記エンジンの所定部位の少なくとも一部にシリコーン系樹脂を含む材料を塗布する断熱層塗布工程と、
    前記断熱層塗布工程後、前記断熱層に対して2段階の焼成を行う焼成工程とを有し、
    第1段階の焼成の後に行われる第2段階の焼成が230℃以上250℃以下の温度で3時間以上10時間以下の範囲であり、前記第1段階の焼成温度が第2段階の焼成温度よりも低い焼成温度であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法。
  2. 請求項1において、前記エンジンの所定部位がアルミニウム合金製であり、前記熱処理がT7処理であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法。
  3. 請求項1又は2において、上記エンジンの所定部位が、エンジンの燃焼室に臨む部位であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一において、前記焼成工程の第1段階の焼成が180℃以上200℃以下の温度で5時間以上20時間以下の範囲であることを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一において、前記エンジンの所定部位表面に表面処理加工を行う表面処理加工工程を有し、
    前記熱処理工程後に前記表面処理加工工程を行うとともに、前記表面処理加工工程後に前記断熱層塗布工程を行うことを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一において、前記焼成工程の後に、前記焼成された断熱層表面に金属層を設ける工程を含むことを特徴とする、エンジンの断熱層形成方法。
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