JP2020153332A - 低熱伝導部材、低熱伝導部材の製造方法および内燃機関のピストン - Google Patents

低熱伝導部材、低熱伝導部材の製造方法および内燃機関のピストン Download PDF

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宏 稲葉
Hiroshi Inaba
宏 稲葉
飯田 淳
Atsushi Iida
淳 飯田
圭太郎 宍戸
Keitaro Shishido
圭太郎 宍戸
高橋 智一
Tomokazu Takahashi
智一 高橋
正登 佐々木
Masato Sasaki
正登 佐々木
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Abstract

【課題】 低熱伝導化を実現できる低熱伝導部材、低熱伝導部材の製造方法および内燃機関のピストンを提供する。【解決手段】 ピストン1の低熱伝導部材3は、低熱伝導層8の表面に、ケイ素を含有する非晶質炭素からなる封孔層9を備える。【選択図】 図3

Description

本発明は、低熱伝導部材、低熱伝導部材の製造方法および内燃機関のピストンに関する。
従来、内燃機関のピストン冠面に陽極酸化皮膜による多孔部材とそのポア(空孔)を封止することにより、断熱性を高め、冷却損失の低減を図る技術が知られている。
特許文献1には、上記ポアを封止する手段として多孔部材の表面にケイ素系ポリマー溶液を塗布する技術が開示されている。
特開2016-29200号公報
しかしながら、上記従来技術にあっては、多孔部材の表面にケイ素系ポリマー溶液を塗布する際、毛細管現象によって溶液がポアに浸透することにより、多孔部材の空隙率が低下するため、十分な低熱伝導化を実現できないという問題があった。
本発明の目的は、低熱伝導化を実現できる低熱伝導部材、低熱伝導部材の製造方法および内燃機関のピストンを提供することにある。
本発明は、好ましくは、多孔部材の表面に、ケイ素を含有する非晶質炭素からなる封孔層を備える。
よって、本発明によれば、低熱伝導化を実現できる。
実施形態1の1つのシリンダの軸線を通る平面でエンジンの一部を切った断面の模式図である。 実施形態1のピストンの模式的な斜視図である。 実施形態1の低熱伝導部材3の断面を表す模式図である。 従来技術を適用したピストンにおける低熱伝導部材の断面を表す模式図である。 従来技術を適用したピストンの低熱伝導部材の断面電子顕微鏡写真である。 図5の封孔層部分の拡大図である。 実施形態1の低熱伝導部材3の断面電子顕微鏡写真である。 図7の封孔層9部分の拡大図である。 非晶質炭素における炭素含有量およびケイ素含有量に対する加熱時の膜減り量を示す図である。 非晶質炭素における窒素含有量に対する封孔膜の硬度を示す図である。 圧力に対する平均自由行程を示す図である。 陽極酸化皮膜の温度負荷に対する表面構造の変化を示す電子顕微鏡写真である。
〔実施形態1〕
図1は実施形態1の1つのシリンダの軸線を通る平面でエンジンの一部を切った断面の模式図、図2は実施形態1のピストンの模式的な斜視図である。
実施形態1の内燃機関(エンジン)100は、4ストローク・ガソリンエンジンである。図1に示すように、エンジン100は、ピストン1、シリンダブロック101、シリンダヘッド104、コネクティングロッド(コンロッド)106、クランクシャフト(不図示)、バルブ107および点火装置108を備える。バルブ107は、2つの吸気バルブと2つの排気バルブを有する。シリンダブロック101は、円筒状のシリンダライナ(シリンダスリーブ)102を備える。シリンダライナ102の内周側はシリンダ10の内壁として機能する。シリンダヘッド104は、シリンダ10の開口を塞ぐようにシリンダブロック101に設置されている。シリンダヘッド104には、バルブ107、燃料噴射弁のノズル(不図示)および点火装置108が設置されている。シリンダブロック101にはクランクシャフトが回転可能に設置されている。ピストン1は、シリンダ10の内部に、往復移動可能に収容される。燃焼室11は、シリンダ10の内壁面、ピストン1の頂面、シリンダヘッド104の底面およびバルブの頂面により画成される。なお、エンジン100の形式は任意である。例えば、エンジン100は2ストロークエンジンでもよいしディーゼルエンジンでもよい。燃料の供給方式は、シリンダ10(燃焼室11)内に直接噴射する筒内直噴式でもよいし、吸気ポートに噴射するポート噴射式でもよい。
図2に示すように、ピストン1は、本体部2および低熱伝導部材3を有する。本体部2は、アルミニウム合金(例えばAl-Si系のAC8A)を材料(素材)として形成されている。ピストン1(本体部2)は、有底筒状であり、ピストンヘッド4、ピストンボス5およびピストンスカート6を有する。以下、ピストン1の軸線が延びる方向(シリンダ10内における本体部2の移動方向に沿う方向)を軸線方向という。また、軸線方向でピストンボス5やピストンスカート6に対しピストンヘッド4の側を一方側といい、その反対側を他方側という。
ピストンヘッド4は、冠面部40およびランド部41を有する。冠面部40は、ピストンヘッド4の軸線方向一方側にあり、冠面(頂面)400を有する。冠面400は、ピストン1の軸線に直交して広がる平面状であり、軸線方向一方側からみて略円形の輪郭を有する。図1に示すように(ピストン1が上死点にあるとき)、冠面400とシリンダヘッド104との間に、燃焼室11が区画される。燃焼室11はペントルーフ型である。冠面400は燃焼室11内の燃焼ガスに直接暴露される。ランド部41は冠面部40の外周側から軸線方向他方側に延びる。ランド部41の外周には、環状の溝(リング溝)410が3つある。リング溝410にはピストンリング7が設置されている。ランド部41の内部には、環状の通路411がある。通路411は、ピストン1の周方向に延びる。通路411は、軸線方向で、リング溝410が形成された領域の少なくとも一部と重なる。
ピストンボス5およびピストンスカート6は、ピストンヘッド4(ランド部41)から軸線方向他方側に延び、ピストンヘッド4に対し燃焼室11の反対側にある。ピストンスカート6およびピストンボス5の内周側は中空である。ピストンボス5は、ピストン1の径方向両側に一対ある。各ピストンボス5はピンボス50を有する。各ピンボス50はピストンピン穴51を有する。ピストンピン穴51は、ピンボス50を貫通してピストン1の径方向に延びる。ピストンスカート6は、ピストン1の径方向両側に一対ある。ピストンスカート6は、ピストン1の周方向で両ピストンボス5,5に挟まれる。両ピストンスカート6,6はピストンボス5によって連結されている。ピストンスカート6はシリンダ10の内壁に対し摺動する。ピストンピン穴51にはピストンピンの端部が嵌合する。ピストン1は、ピストンピンを介してコンロッド106の一端側(小端部)に連結されている。コンロッド106の他端側(大端部)はクランクシャフトに連結されている。
シリンダライナ102の内部の通路103には冷却水が循環する。シリンダブロック101にはオイルジェット105が設置されている。燃焼室11からピストンヘッド4に伝わった熱は、ピストンリング7を介してシリンダライナ102およびその内部の冷却水に伝わることで放出される。また、上記熱は、ピストン1の内周側(裏側)にオイルが付着し流出したり、通路411内をオイルが流通したりすることでも、放出される。このオイルの付着や流通は、例えばオイルジェット105からのオイルの噴射により行われる。通路411は冷却通路(クーリングチャネル)として機能する。
低熱伝導部材3は、低熱伝導層8を有する。低熱伝導層8は、燃焼室11から本体部2への熱伝導性を低めるための多孔部材(多孔層)である。低熱伝導層8は、冠面400に沿って広がる平面状に形成されている。低熱伝導層8は、冠面400を陽極酸化処理(アルマイト)することにより形成されている。低熱伝導層8の軸線方向の長さは、例えば、70〜100[μm]である。図3は、実施形態1の低熱伝導部材3の断面を表す模式図である。低熱伝導層8は、その内部に、軸線方向に延びる多数のポア(空孔)30を有する。ポア30は、例えば10〜30[nm]の内径を有する。一部のポア30の内部圧力は、大気圧よりも低圧である。
低熱伝導部材3は、低熱伝導層8の表面(軸線方向一方側の端面)に、封孔層9を有する。封孔層9の膜厚(軸線方向の長さ)は、例えば0.1〜5.0[μm]である。封孔層9は、少なくともケイ素15〜30[at%]、炭素30〜60[at%]、窒素2〜25[at%]を含む非晶質炭素により形成されている。
次に、ピストン1の製造方法を説明する。
ピストン1の製造方法は、鋳造工程、熱処理工程、陽極酸化処理工程、封孔処理工程、機械加工工程を有する。
鋳造工程では、本体部2の原型(中間加工材)を鋳造する。具体的には、母材金属としてのアルミニウム合金を金型に流し込み、凝固させる。このとき、本体部2の内周が形成され、冠面400および通路411が形成される。
熱処理工程では、酸素を含む気体中で、本体部2の上記原型を所定温度で加熱する工程である。実施形態1では、熱処理工程として、T6処理またはT7処理を行う。T6処理は、溶体化処理後焼入れし、人工時効処理を行う処理であり、高強度が得られる。T7処理は、T6処理と同様であるが、人工時効処理を若干高温または長時間行い、過時効状態とする処理であり、機械的性質(寸法精度等)を向上できる。溶体化処理では、大気中で上記原型を400℃以上かつ600℃以下の温度で1〜1.5時間程度加熱した後、水または温水に漬けて急冷させる。これにより、上記原型の性質を改善して適当な強度・硬さに調整できる。
陽極酸化処理工程では、本体部2の上記原型における冠面400を陽極酸化処理(アルマイト)することにより、内部に多数のポア30を有する低熱伝導層8を形成する。陽極化処理の具体的な工程は、周知のものを適宜採用すればよい。
封孔処理工程では、低熱伝導層8の表面に封孔層9を形成し、低熱伝導層8を封孔する。実施形態1では、封孔層9を液状原料であるHMDS(ヘキサメチルジシラザン,((CH3)3Si)2NH)を加熱気化させた原料ガスを用いたCVD(化学気相成長,Chemical Vapor Deposition)法により形成する。また、封孔層9の含有窒素量を増加させるために、ガス状HMDSと同時または別に窒素を導入したCVD法によって窒素注入を行う。プロセスは13[Pa]程度の真空状態(中真空:ISO 3529-1)で行われるため、上記原型表面の有機物、無機物等からなる汚染物は封孔層9の成膜前にアルゴンガス等によるエッチングにより除去した上で上記のCVD法を行う。
具体的なプロセスを以下に示す。
CVD装置の450kHz-RF(高周波)電源に接続された電極側へ、上記原型を設置後、2.4[Pa]以下の真空域までメカニカルブースターポンプとドライポンプを用いて排気を行う。その後、Ar10[sccm]を導入し、プロセスガス圧8[Pa]、RF電力100[W]でプラズマを発生させて60secのクリーニングを行い、表面の汚染物を除去する。
次に、ガス状HMDS20[sccm]と窒素10[sccm]を導入後、プロセスガス圧13[Pa]、RF電力500[W]でプラズマを発生させ、成膜を行う。このとき、成膜時間240[s]で得られた膜厚は約3[μm]、堆積速度は約12.5[nm/s]である。
その後、大気圧にパージして上記原型を取り出す。
機械加工処理では、封孔処理された本体部2の上記原型を旋盤等により機械加工する。例えば、ピストンピン穴51やリング溝410を加工すると共に、ピストンヘッド4やピストンスカート6の外周等、本体部2の外形を仕上げる。これにより、実施形態1のピストン1が得られる。
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
従来のピストンでは、ピストンの冠面に形成した陽極酸化皮膜の表面に、ポアの内径よりも大きな粒子を含むケイ素系ポリマー溶液を塗布することにより、陽極酸化皮膜の表面を封止している。ところが、ケイ素系ポリマー溶液を塗布する際、図4に示すように、毛細管現象が発現し、ケイ素系ポリマー溶液がポアに流れ込む。このため、従来のピストンでは、ポアにケイ素系ポリマー溶液が浸透することにより、陽極酸化皮膜の空隙率が低下するため、本来の目的である空気層の作り込みができない。すなわち、ケイ素系ポリマー溶液の塗布はウェットプロセスであるため、陽極酸化皮膜のポアやクラックに浸透しやすく、陽極酸化皮膜の空隙を最大限に活用できない。また、浸透量はポアの不均一性に依存するため、封孔層の膜厚も不均一となるおそれがある。つまり、封孔層をウェットプロセスにより形成した場合、封孔膜としての機能性が低く、不均一なため遮熱性が非効率であった。
これに対し、実施形態1の低熱伝導部材3は、低熱伝導層8の表面に、ケイ素を含有する非晶質炭素からなる封孔層9を備える。非晶質炭素の成膜法は、CVD法、PVD(物理気相成長:Physical Vapor Deposition)法やプラズマ重合等のドライプロセスであるため、非晶質炭素の成膜時に毛細管現象が発現せず、ポア30やクラックへの浸透がない。よって、低熱伝導層8の空隙率低下を抑制でき、陽極酸化皮膜の空隙を最大限活用できるため、低熱伝導化を実現できる。また、非晶質炭素はケイ素系ポリマーと比べて耐摩耗性および耐熱性が高いため、封孔膜としての機能性に優れ、ピストン1の耐久性を向上できる。
図5は従来技術を適用したピストンの低熱伝導部材の断面電子顕微鏡写真、図6は図5の封孔層部分の拡大図である。従来の低熱伝導層では、クラック部分には空隙(黒色部分を囲う白色部分)が確認できるものの、ポア部分の空隙はごく一部でしか確認できなかった。また、封孔層の膜厚は0.1[μm]程度と非常に薄く、かつ不均一であった。一方、実施形態1の低熱伝導部材3では、図7および図8に示すように、従来の低熱伝導層と比べて空隙(黒色部分を囲う白色部分)の占める割合が多く、全断面域に亘ってポア部分の空隙が確認できた。また、封孔層の膜厚は約3[μm]で均一であった。図7の電子顕微鏡写真を画像解析し、低熱伝導層8において、封孔処理工程前のポアに対する封孔処理工程後のポアの残存率である空隙利用率を計算したところ、実施形態1の低熱伝導部材3では、90%以上の空隙利用率が得られ、熱伝導率が2[W/mK]以下となる低熱伝導化を実現できた。
実施形態1において、封孔層9を構成する非晶質炭素は、窒素を有する。窒素は不対電子対を含むため、外環境元素と結合し自己潤滑性を発現する。よって、封孔層9に窒素を含めることにより、封孔層9の自己潤滑性が高められ、例えばエンジンオイルとの濡れ性向上、あるいは、その他の表面潤滑膜との密着性を向上することができる。
また、非晶質炭素は、少なくともケイ素15〜30[at%]、炭素30〜60[at%]、窒素2〜25[at%]を含有する。発明者は、封孔層3[μm]、陽極酸化皮膜70[μm]を構成要素とする低熱伝導部材を、100時間大気中において300[℃]で加熱する実験を行い、加熱時の封孔層の膜減り量[a.u.]を、蛍光X線(XRF)を用いて測定した。この結果、図9に示すように、炭素含有量が30[at%]未満、ケイ素含有量が15[at%]未満となる封孔層で大きな膜減り量[a.u.]を確認した。これは、炭素含有量が30[at%]未満になると、その減少分の酸素含有量が増加し、封孔層の気化(CO2化)が促進され、消失したと考えられる。また、炭素含有量60[at%]、ケイ素含有量30[at%]よりも成分比率の高い封孔層はガス状HMDSを用いた場合は作成できなかった。よって、封孔膜としての300[℃]以上の耐熱温度を確保するためには、膜成分比率として炭素含有量30〜60[at%]、ケイ素含有量15〜30[at%]の範囲である必要がある(ただしケイ素含有量はHMDS構造に依存し炭素含有量の約1/2となる)。
ところで、ガス状HMDSのみで封孔層を成膜した場合、窒素含有量は2[at%]であるが、窒素ガスの追加導入を行うことで最大35[at%]まで含有させることができた。しかしながら、図10に示すように、非晶質炭素における窒素含有量[at%]に対する封孔膜の硬度[GPa]を測定すると、窒素含有量が25[at%]以上で、封孔層の硬度が大幅に劣化した。これは、含有窒素が炭素のsp3構造を減少させたためであると推測される。封孔層にDiamond-Like Carbon(DLC)膜と同等の耐摺動性を付与するためには、10[GPa]以上の硬度が必要であるから、最適封孔層の窒素含有量は2〜25[at%]とすべきである。
以上の実験結果から、非晶質炭素において、ケイ素含有量を15〜30[at%]、炭素含有量を30〜60[at%]、窒素含有量を2〜25[at%]とすることにより、低熱伝導化を図りつつ、耐熱性(耐熱温度300[℃]以上)および耐摺動性(表面硬度10[GPa]以上、摩擦係数0.3以下)の最適解を実現できることが確認できた。
実施形態1の低熱伝導部材3は、封孔層9の膜厚が0.1〜5.0[μm]である。例えば、膜厚が0.1[μm]未満の場合には、封孔性の悪化を伴う。一方、膜厚が5.0[μm]を超える場合には、低熱伝導部材3との密着性が低下し、内部応力によって剥離が生じやすくなる。よって、封孔層9の膜厚を0.1〜5.0[μm]の範囲とすることにより、封孔膜としての機能を維持できると共に、低熱伝導部材3との密着性を確保できる。
実施形態1では、減圧下でのCVD法により封孔層9を形成するため、封孔層9の成膜後のポア30およびクラックの一部において、残留ガスの圧力は、プロセス圧力(Process pressure=13[Pa])となり、大気圧(Atmosphere=101,325[Pa])よりも低圧となる。図11は、圧力(Pressure)[Pa]に対する平均自由行程(Mean free pass)[μm]を示す図である。平均自由行程とは、ある閉じた空間内で分子同士が衝突(非弾性衝突)してから次の分子に衝突するまでの距離を表す。図11に示すように、平均自由行程は、圧力に逆比例するため、真空度が高いほど平均自由行程は長くなる。そして、ポア30の軸線方向の長さが平均自由行程よりも長くなるように封孔層9を形成することにより、理論的にはポア30内における分子同士の衝突を無くせるため、熱伝導率[W/mK]は0となる。例えば、ポア30内の圧力が13[Pa]のとき、平均自由行程は900[μm]であるから、ポア30の軸線方向の長さが900[μm]以下とすることにより、熱伝導率[W/mK]を0にできる。よって、封孔層9を除く低熱伝導部材3の少なくとも一部のポア30内を、大気圧よりも低圧とすることにより、さらなる低熱伝導化を実現できる。
実施形態1における低熱伝導部材3の製造方法は、本体部2の表面に陽極酸化皮膜を形成することにより、低熱伝導層8を形成する陽極酸化処理工程と、低熱伝導層8の表面に、蒸着によりケイ素を含有する非晶質炭素の封孔層9を形成する封孔処理工程と、を有する。よって、封孔層9を形成する際に毛細管現象が発現せず、ポア30やクラックへの浸透がないため、封孔層9の成膜に伴う低熱伝導層8の空隙率低下を抑制でき、低熱伝導性に優れた低熱伝導部材3を製造できる。
封孔処理工程における蒸着は、CVD法(化学蒸着)である。CVD法は、PVD法と比較して、成膜速度が高く、処理面積も大きくできるため、生産性を向上できる。また、CVD法は高真空を必要としないため、成膜速度や処理面積に比して装置規模を小さくできる。さらに、PVD法やMBE法(分子線エピタキシー法)などの真空蒸着と比較して、凹凸のある表面でも満遍なく成膜できる。
CVD法は、大気圧よりも低圧の真空状態で実施される。これにより、封孔層9を除く低熱伝導部材3の少なくとも一部のポア30内を、真空(大気圧よりも低圧)にできるため、低熱伝導部材3のさらなる低熱伝導化を図れる。
図12は、陽極酸化皮膜の温度負荷に対する表面構造の変化を示す断面電子顕微鏡写真であり、陽極酸化皮膜を形成した母材(アルミニウム合金)を室温(RT)に放置した後、300[℃]で100時間加熱し、さらに500[℃]で100時間加熱したときの陽極酸化皮膜の状態を(a),(b),(c)の順に示している。図12に示すように、陽極酸化皮膜(アルマイト)は、室温から300[℃]まで加熱するとクラックが成長し、さらに加熱温度を500[℃]まで高めるとクラックが増加している。これは、アルマイトと母材(アルミニウム合金)との線膨張係数が異なるため、加熱時に母材のみが大きく膨張しようとすることで応力が発生し、その応力に耐えられないアルマイトにクラックが生じるからである。そこで、実施形態1における低熱伝導部材3の製造方法において、封孔処理工程の前に低熱伝導部材3に大気中での熱処理(300℃ x 20分)を施す熱処理工程を加えることで、熱処理に伴い低熱伝導層8の表面に生じたクラックを封孔層9で封止でき、低熱伝導層8の空隙率がより高められ、さらなる低熱伝導化を図れる。また、クラックへのエンジンオイルの浸透を抑制でき、耐食性も向上できる。
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
本発明の低熱伝導部材は、内燃機関のピストンに限らず、低熱伝導性が要求される種々の部位に適用可能である。また、本発明の低熱伝導部材は、耐熱性および耐摺動性にも優れるため、例えば、ブレーキキャリパのピストン等の摺動部材としても好適である。
多孔部材を焼結により形成してもよい。
化学蒸着は、大気圧よりも低圧の環境下であれば、低真空または高真空で実施してもよい。
1 ピストン
3 低熱伝導部材
8 低熱伝導層(多孔部材、多孔層)
9 封孔層
100 内燃機関
400 冠面

Claims (13)

  1. 多孔部材の表面に、ケイ素を含有する非晶質炭素からなる封孔層を備える低熱伝導部材。
  2. 請求項1に記載の低熱伝導部材であって、
    前記非晶質炭素は、窒素を含有する低熱伝導部材。
  3. 請求項2に記載の低熱伝導部材であって、
    前記非晶質炭素は、少なくともケイ素15〜30at%、炭素30〜60at%、窒素2〜25at%を含有する低熱伝導部材。
  4. 請求項1に記載の低熱伝導部材であって、
    前記封孔層の膜厚は、0.1〜5.0μmである低熱伝導部材。
  5. 請求項1に記載の低熱伝導部材であって、
    前記封孔層を除く前記多孔部材の少なくとも一部の空孔内は、大気圧よりも低圧である低熱伝導部材。
  6. 多孔部材の表面に、ケイ素を含有する非晶質炭素からなる封孔層を備える低熱伝導部材の製造方法であって、
    焼結、または金属の表面に陽極酸化皮膜を形成することにより、前記多孔部材を形成する工程と、
    蒸着により、前記多孔部材の表面に、ケイ素を含有する非晶質炭素の前記封孔層を形成する工程と、
    を有する低熱伝導部材の製造方法。
  7. 請求項6に記載の低熱伝導部材の製造方法であって、
    前記蒸着は、化学蒸着である低熱伝導部材の製造方法。
  8. 請求項7に記載の低熱伝導部材の製造方法であって、
    前記化学蒸着は、大気圧よりも低圧の環境下で実施される低熱伝導部材の製造方法。
  9. 請求項8に記載の低熱伝導部材の製造方法であって、
    前記化学蒸着は、真空状態で実施される低熱伝導部材の製造方法。
  10. 請求項6に記載の低熱伝導部材の製造方法であって、
    前記非晶質炭素は、前記ケイ素の他に窒素を含有する低熱伝導部材の製造方法。
  11. 請求項6に記載の低熱伝導部材の製造方法であって、
    前記蒸着の前に、前記多孔部材に熱処理を施す工程を有する低熱伝導部材の製造方法。
  12. 冠面の少なくとも一部に、非晶質炭素が表面に形成された多孔層を有する内燃機関のピストン。
  13. 請求項12に記載の内燃機関のピストンであって、
    前記非晶質炭素は、ケイ素および窒素を含有する内燃機関のピストン。
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