JP2021046797A - 内燃機関用ピストンおよびその製造方法、ならびに車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性がさらに向上する内燃機関用ピストンおよび当該内燃機関用ピストンの製造方法を提供すること。【解決手段】ピストンヘッドにピストンリング溝が形成された内燃機関用ピストン。上記ピストンリング溝は、表面に陽極酸化皮膜を有し、上記陽極酸化皮膜は、モリブデン硫化物を有する。上記内燃機関用ピストンは、ピストンヘッドにピストンリング溝が形成されたピストン基材を用意する工程と、上記ピストンリ2ング溝に陽極酸化皮膜を形成する工程と、上記形成された陽極酸化皮膜に、二次電解によりモリブデン硫化物を析出させる工程と、を有する方法により、製造され得る。【選択図】図2

Description

本開示は、内燃機関用ピストンおよびその製造方法、ならびに車両に関する。
内燃機関用ピストン(以下、単に「ピストン」ともいう。)として、ピストンヘッドと、一方の端部がピストンヘッドに接続されて閉鎖され、かつ他方の端部が開放された筒状のスカート部と、を有し、スカート部の側面に一対のピストンピン孔が形成された形状のものが知られている。ピストンヘッドには、通常、外周に、ピストンリングが嵌め込まれる複数のピストンリング溝が形成される。
これらのピストンリング溝のうち、最も燃焼室側に設けられたトップリング溝を構成するリング状部材を予め形成し、当該リング状部材とアルミ合金に鋳込んで、ピストンを製造する方法が知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2)。
特許文献3には、上記リング状部材を、スピネル(MgAl)粒子またはアルミナ(Al)粒子で強化されたアルミニウム合金からなるものとすることが記載されている。特許文献3には、上記材料によりリング状部材を形成することで、ピストンの強度、耐摩耗性、高温特性が向上するとともに、難切削性も改善されると記載されている。
特開2001−99001号公報 特開2003−90432号公報 特開2011−190719号公報
特許文献3には、スピネル粒子またはアルミナ粒子で強化されたアルミニウム合金により上記リング状部材を形成することにより、種々の利点があると記載されている。ここで、ピストンに要求される特性は様々であり、たとえば耐久性をさらに向上させたいとの要求は、常に存在する。
本開示の目的は、耐久性がさらに向上する内燃機関用ピストンおよび当該内燃機関用ピストンの製造方法、ならびに当該内燃機関用ピストンを有する車両を提供することにある。
一態様に係る内燃機関用ピストンは、ピストンヘッドにピストンリング溝が形成された内燃機関用ピストンであって、上記ピストンリング溝は、表面に陽極酸化皮膜を有し、上記陽極酸化皮膜は、モリブデン硫化物を有する。
また、一態様に係る内燃機関用ピストンの製造方法は、ピストンヘッドにピストンリング溝が形成されたピストン基材を用意する工程と、上記ピストンリング溝に陽極酸化皮膜を形成する工程と、上記形成された陽極酸化皮膜に、二次電解によりモリブデン硫化物を析出させる工程と、を有する。
本開示によれば耐久性がさらに向上する内燃機関用ピストンおよび当該内燃機関用ピストンの製造方法、ならびに当該内燃機関用ピストンを有する車両が提供される。
図1は、本開示の一実施形態に関する内燃機関用ピストンの、例示的な断面図である。 図2は、図1に示す内燃機関用ピストンの、ピストンリング溝の付近を示す、例示的な拡大断面図である。 図3は、本開示の他の実施形態に関する内燃機関用ピストンの製造方法を示すフローチャートである。
以下、本開示の実施形態をより詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。
[内燃機関用ピストン]
図1は、本開示の一実施形態に関する内燃機関用ピストンの、例示的な断面図である。図2は、図1に示す内燃機関用ピストンの、ピストンリング溝の付近を示す、例示的な拡大断面図である。
ピストン100は、図2に示すように、頂部102および外周面104を有するピストンヘッド110と、筒状の壁状部材であるスカート部120と、を有する。スカート部120は、上記筒状の形状の一方の端部122がピストンヘッド110に接続されて閉鎖され、一方で、他方の端部124は開放された、中空形状を有する。また、スカート部120の側面には、一対のピストンピン孔130が互いに対向する位置に開口している。ピストンピン孔130は、いずれもピストンヘッド110とスカート部120とによって形成される中空部140に接続しており、かつ、いずれもピストンピンを挿通可能な内径を有する。また、ピストン100は、ピストンピン孔130に接したスカート部120の内面に、ピストンピン孔130に挿通されたピストンピンを支持するための肉厚のピストンボス部150を有する。
また、ピストンヘッド110は、頂部102の中央部を含む領域に凹溝状の窪みである燃焼室160が凹設されており、ピストン(特には燃焼室160)を冷却するためのオイルを流通させる環状の空洞部である冷却空洞170を、燃焼室160の周囲に有している。
また、ピストンヘッド110は、1つまたは複数のピストンリング溝106を備える。本実施形態において、ピストンリング溝106は、トップリング溝106a、セカンドリング溝106bおよびオイルリング溝106cの3つの溝を有する。ピストン100の使用時には、トップリング溝106aおよびセカンドリング溝106bには、それぞれコンプレッションリング(いずれも不図示)が嵌め込まれ、オイルリング溝106cには、オイルリング(不図示)が嵌め込まれる。
また、ピストンヘッド110は、その外周面に沿って鋳込まれたリング状部材180を有する。リング状部材180は、ピストンヘッド110の外周に沿って鋳込まれており、その外周面がピストンヘッド110の外に露出して、ピストンヘッド110の外周面の一部を構成している。そして、上記露出したリング状部材180の外周面を切削加工することにより、トップリング溝106aが形成されている。一方で、本実施形態において、リング状部材180は、その内周面が冷却空洞170に露出して、冷却空洞170の壁面の一部を構成している。
(リング状部材180)
リング状部材180は、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金を材料として成形されたものである。
ピストン100の断熱性をより高める観点からは、リング状部材180は、マグネシウムを含有するアルミニウム合金と、ウィスカー状のホウ酸アルミニウム(9Al・2B)(以下、単に「ウィスカー」とも言う)と、で構成され、上記ウィスカー中に上記アルミニウム合金が含浸した構成を有する多孔質セラミックス体であることが好ましい。
上記ウィスカーは、上記多孔質セラミックス体に十分かつ均一に分布するサイズであればよく、例えばその直径は0.2〜1.5μmであればよく、また、その長さは5〜60μmであればよい。また、上記多孔質セラミックス体中の上記ウィスカーの含有量は、上記多孔質セラミックス体に十分かつ均一に分布するサイズであればよく、例えば体積分率で15〜50体積%であればよい。
上記ウィスカーは、ホウ酸、水酸化アルミニウムとウィスカー成長の助剤である酸化ニッケルの粉末の成形体を1100〜1300℃で焼成することによって作製することができる。
上記多孔質セラミックス体は、上記ウィスカーの表面にスピネル(MgAl)粒子を有することが好ましい。
上記スピネル粒子は、多孔質セラミックス体中の上記ウィスカーの表面の全域に分散して存在することが好ましい。個々のスピネル粒子の大きさは、上記アルミニウム合金へのアンカー効果を十分に発現させる観点から、その最大径が10nm程度であることが好ましい。上記最大径は、例えばスピネル粒子の観察したときの視野における最長部の長さであり、例えば上記多孔質セラミックス体の断面中の任意の複数のスピネル粒子の上記最大径の平均値であってよい。
上記ウィスカーの表面積に対する上記スピネル粒子の存在量は、上記アンカー効果をより十分に発現させる観点から、1%以上であることが好ましい。また、上記ウィスカーの表面積に対する上記スピネル粒子の存在量は、上記ウィスカーによる強化効果を十分に発現させる観点から、20%以下であることが好ましい。
また、上記スピネル粒子の存在量は、上記アンカー効果を十分に発現させる観点から、上記ウィスカーの表面積1平方マイクロメートルに対する上記スピネル粒子の個数で、5〜40個以上であることが好ましい。上記スピネル粒子の存在量は、走査電子顕微鏡写真から、またはその画像処理によって確認することが可能である。
上記ウィスカー表面のスピネル粒子は、溶湯アルミニウム(Al)合金中のマグネシウム(Mg)と上記ウィスカーとが反応して生成されるもので、溶湯アルミニウム合金中のマグネシウムの量が多くなると、スピネル粒子の生成反応が激しくなり、上記ウィスカーの表面に生成されるスピネル粒子の量が増える。また、溶湯アルミニウムの温度が高ければ高いほど、上記生成反応が激しくなり、生成されるスピネル粒子の量が増える。
本実施形態において、上記アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分として含有し、さらにマグネシウムを含有するものであればよい。上記アルミニウム合金におけるマグネシウムの含有量は、上記スピネル粒子をより十分に存在せしめる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、上記アルミニウム合金におけるマグネシウムの含有量は、1.2質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましい。アルミニウム合金中のマグネシウムの含有量は、アルミニウム合金の種類によって調整することが可能であり、また、溶融されるアルミニウム合金へのマグネシウム(またはマグネシウム以外の金属材料)の添加量によって増減させることが可能である。
たとえば、前述したように、マグネシウムを含むアルミニウム合金を多孔質セラミックス中に含浸させた後、高温でマグネシウムと上記ウィスカーと反応させることによって、スピネル粒子が上記ウィスカーの表面に形成される。したがって、上記多孔質セラミックス体におけるアルミニウム合金中のマグネシウムの濃度は、原料としてのアルミニウム合金のマグネシウムの濃度よりも低くなる。当該合金中のマグネシウムの量と鋳造温度とを制御することにより、上記ウィスカーの表面に生成するスピネル粒子の量が決定される。よって、上記生成反応で消耗するマグネシウム量を計算し、上記鋳造前に、マグネシウムの消耗量に対応する量のマグネシウム量をアルミニウム合金にあらかじめ添加すればよい。
上記アルミニウム合金は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、アルミニウムおよびマグネシウム以外の他の金属元素をさらに含んでいてもよい。当該他の金属元素の例には、Si、Cu、Ni、Mn、Fe、Zn、V、Zr、PおよびBが含まれる。また、上記アルミニウム合金の例には、AC8AおよびAC8Bが含まれる。
上記アルミニウム合金の組成は、複合部材でない部分(たとえば多孔質セラミックス体外の部分)の発光分光法により同定することできる。
上記多孔質セラミックス体は、軽量かつ高強度である。そのため、上記多孔質セラミックス体を含むリング状部材180は、他の材料から形成されたリング状部材180と比べて、ピストンヘッド110の他の材料との界面において亀裂が発生しにくい。また、上記多孔質セラミックス体を含むリング状部材180は、十分な強度を有するため、トップランドの高さを低くすることも可能である。
(陽極酸化皮膜)
リング状部材180は、トップリング溝106aを構成する表面(リング状部材180が切削加工されて生じた面)に、陽極酸化皮膜を有する。
図2は、トップリング溝106aに陽極酸化皮膜180aが形成されている様子を示す、ピストン100のトップリング溝106aの近辺の部分拡大断面図である。
陽極酸化皮膜180aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金を材料とするリング状部材180の表面が陽極酸化処理されてなる皮膜である。陽極酸化皮膜180aは、リング状部材180の表面のうち、少なくともトップリング溝106aを構成する表面が陽極酸化処理されてなる皮膜であればよいが、ピストンヘッド110の外周面を構成する他の面が同時に陽極酸化処理されていてもよい。
陽極酸化皮膜180aの厚さは、ピストン100に十分な強度および耐熱性を付与し、かつピストン100の使用時の耐久性を十分に高める観点から、3μm以上であることが好ましい。陽極酸化皮膜180aの厚さの上限は特に定められないものの、製造の容易さからは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
上記陽極酸化皮膜180aの厚さは、当該陽極酸化皮膜180aの厚さを代表する値であればよく、例えば任意の複数箇所の厚さの平均値であってよい。上記陽極酸化皮膜180aの厚さは、過電流式膜厚計によって求めることが可能である。
(モリブデン硫化物)
陽極酸化皮膜180aは、陽極酸化皮膜が有するポア中に析出したモリブデン硫化物(MoS)を含む。
モリブデン硫化物は、陽極酸化皮膜180aが形成されたトップリング溝106aの自己潤滑性を高めることができる。これにより、モリブデン硫化物は、使用時にトップリング溝106aが摩耗することによるピストン100の劣化を抑制することができる。
[内燃機関用ピストンの製造方法]
図3は、本開示の他の実施形態に関する内燃機関用ピストンの製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態に関する内燃機関用ピストンの製造方法は、リング状基材を用意する工程(工程S110)と、上記リング状基材を鋳込んで内燃機関用ピストンを鋳造する工程(工程S120)と、塩中子を除去する工程(工程S130)と、ピストンリング溝を形成する工程(工程S140)と、上記鋳造されたピストンが有する上記リング状基材を陽極酸化処理する工程(工程S150)と、上記陽極酸化処理されたリング状基材に、二次電解によりモリブデン硫化物を析出させる工程(工程S160)と、を有する。
[工程S110:リング状基材の用意]
本工程では、リング状基材を用意する。
上記リング状基材は、ピストンの鋳造時にピストンヘッドのトップリング溝に相当する位置に鋳込まれ得る形状であり、かつ、鋳込まれ後にその外周面にトップリング溝を形成し得る形状であればよい。
本工程では、上述したリング状部材の形状に配置(成形)された上記ウィスカーを、リング状基材として用いる。
また、本実施形態では、上記用意したリング状基材に、リング状の形状を有する塩中子を担持させる。上記塩中子は、鋳造後に除去することで、冷却用オイルを流通させる冷却空洞をピストンヘッド中に形成するためのものである。そのため、上記塩中子は、上記リング状基材の内周面に配置される。
[工程S120:ピストン基材の鋳造]
本工程では、上記リング状基材を鋳込んでピストン基材を鋳造する。
具体的には、本工程では、製造するピストンの形状を具した型の内部に上記リング状基材を配置し、ピストン(リング状基材以外の部分)の材料となる溶湯を注入して冷却または加圧凝固させればよい。
上記溶湯は、上述したアルミニウム合金からなる溶湯である。これにより、ウィスカー中に上記アルミニウム合金が含浸した構成を有し、かつ上記ウィスカーの表面にスピネル粒子を有する多孔質セラミックス体を本工程で形成させることができる。当該多孔質セラミックス体は、製造されるピストン100におけるリング状部材180となる。また、当該多孔質セラミックス体は、その表面の一部(型に保持されていた部分)が、鋳造されたピストン基材の外部に露出することになる。
注入する溶湯中の各元素の比率は、たとえば上述した各元素の組成と同様(あるいはスピネル粒子の形成により消耗する量のマグネシウムを予め添加した量)にすればよい。上記合金溶湯は、個別に用意した上記各元素を加熱し互いに溶解させて作製してもよいし、JIS H 5202(2010年)で規定されるAC8A、AC8B、AC9AおよびAC9Bなどの規格品を溶解させて作製してもよい。
本工程により、製造されるピストン100と略同一の形状を有するピストン基材が鋳造される。
[工程S130:塩中子の除去]
本工程では、塩中子を除去する。
塩中子は、公知の方法、たとえば水への溶解などにより除去すればよい。塩中子の除去により、鋳造されたピストン基材のうちピストンヘッドの内部に、冷却空洞に相当する空洞部が形成される。上記空洞部には、上記多孔質セラミックス体の表面の一部(塩中子を保持していた部分)が露出することになる。
[工程S140:ピストンリング溝の形成]
本工程では、ピストンリング溝を形成する。具体的には、鋳造されたピストン基材が有する多孔質セラミックス体(リング状部材)が有する、工程S120で形成されたピストン基材の外部に露出している表面を切削加工し、製造されるピストン100におけるトップリング溝106aを形成する。
[工程S150:陽極酸化]
本工程では、形成されたトップリング溝106aを陽極酸化処理する。
たとえば、鋳造されたピストン基材を上記電解液中に浸漬させるなどして、形成されたトップリング溝106aを上記電解液に接触させ、上記トップリング溝106aを陽極として上記電解液に通電させればよい。このとき、上記電解液は、0.5mol/L以上4.0mol/L以下の硫酸および0.05mol/L以上0.2mol/L以下の有機酸を含有することが好ましい。また、上記通電は0.5時間以上行うことが好ましい。
上記有機酸は、陽極酸化処理に通常用いられる有機酸、たとえば2個以上のカルボキシル基を有する有機酸であればよい。このような有機酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸などが含まれ、これらのうち、シュウ酸およびクエン酸が好ましい。
上記硫酸の濃度は、0.5mol/L以上4.0mol/L以下であればよく、1.0mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。
上記有機酸の濃度は、0.05mol/L以上0.2mol/L以下であればよく、0.08mol/L以上0.15mol/L以下であることが好ましい。
上記硫酸と上記有機酸との濃度比は、(硫酸の濃度)/(有機酸の濃度)=1/20以上1/5以下となる濃度比が好ましく、(硫酸の濃度)/(有機酸の濃度)=1/15以上1/8以下となる濃度比がより好ましい。
上記通電の電流密度も、通常の陽極酸化処理を施す際の電流密度と同等であればよく、たとえば1.0A/dm以上30A/dm以下とすることができ、2A/dm以上8A/dm以下とすることが好ましい。
本工程により、トップリング溝106aに陽極酸化皮膜を形成することができる。
[工程S160:二次電解]
本工程では、二次電解によりモリブデン硫化物(MoS)を析出させる。
二次電解は、上記陽極酸化処理により形成された陽極酸化皮膜に、二次電解用の電解液が接触した状態で、上記形成された陽極酸化皮膜と、二次電解用の電解液に接触させた陰極と、の間に電圧を印加し、通電させることにより、行うことができる。たとえば、上記トップリング溝106aに陽極酸化皮膜が形成されたピストン基材を上記二次電解用の電解液中に浸漬させるなどして、形成されたトップリング溝106aを上記二次電解用の電解液に接触させ、上記トップリング溝106aを陽極として上記二次電解用の電解液に通電させればよい。
上記二次電解用の電解液は、テトラチオモリブデン酸アンモニウム((NHMoS)を溶解させた水溶液などの、モリブデン硫化物を析出させるための公知の電解液であればよい。
このとき、印加される電圧は、たとえば15V以上90V以下であればよく、このときの電流密度は、たとえば0.05A/dm以上20A/dm以下であればよい。
本工程における二次電解の処理時間は、1分以上45分以下とすることができ、2分以上20分以下とすることが好ましい。
本工程により、トップリング溝106aに形成された陽極酸化皮膜に、モリブデン硫化物を析出させることができる。
[用途]
上記内燃機関用ピストンは、各種用途の内燃機関に用いることができる。上記内燃機関は、ディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンやジェットエンジンであってもよい。また、上記内燃機関は、車両、船舶および飛行機などの各種用途に用いることができる。
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態はそれぞれ本開示の一例を示すものであり、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、上述の各実施形態では、トップリング溝に陽極酸化皮膜を形成し、モリブデン硫化物を析出させていたが、セカンドリング溝やオイルリング溝などの他のピストンリング溝に陽極酸化皮膜を形成し、モリブデン硫化物を析出させてもよい。
また、上述の内燃機関用ピストンの製造方法では、リング状基材に塩中子を坦持させていたが、後の除去が容易である限りにおいて、塩中子以外の中子を用いてもよい。
また、上述の内燃機関用ピストンの製造方法では、陽極酸化処理の前に塩中子を除去していたが、陽極酸化処理の後や、モリブデン硫化物の析出の後に塩中子を除去してもよい。
また、上述の各実施形態では、多孔質セラミックス体からなるリング状部材にピストンリング溝(トップリング溝)を形成し、陽極酸化皮膜を形成してモリブデン硫化物を析出させていたが、上記多孔質セラミックス体以外の、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるトップリング溝に、陽極酸化皮膜を形成してモリブデン硫化物を析出させてもよい。
また、上述の内燃機関用ピストンの製造方法では、リング状部材の形状に配置(成形)されたウィスカーを、リング状基材として用いていたが、予め上記ウィスカーの中に上記アルミニウム合金を含浸させた多孔質セラミックス体を、リング状基材として用いてもよい。
また、上記ウィスカーのかわりに、炭化珪素(SiC)、コーディエライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、アルミニウムチタネート、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、マグネシア、セリア、およびチタニアなどからなる多孔質体を用いてもよい。
リング状基材として、複数のホウ酸アルミニウムウィスカを用意した。これらのホウ酸アルミニウムウィスカは、ホウ酸アルミニウムの針状結晶体(ウィスカー)からなる骨格構造を有していた。
ピストン製造用の型の中に、冷却空洞の形状を有する塩中子を上記リング状の内周面に坦持させた上記リング状基材を配置した。上記型の中に、マグネシウムを含有するアルミニウム合金を注入し、加圧凝固させてピストン基材を得た。冷却後に型から取りだしたピストン基材は、上記リング状基材のウィスカーの内部にアルミニウム合金が浸漬されたリング状部材を有していた。
上記ピストン基材が有する塩中子を水への溶解により除去し、さらに上記リング状部材を切削加工してトップリング溝を形成した。
上記ピストン基材を、形成されたトップリング溝が確実に電解液と接触するように、1.5mol/Lの硫酸および0.1mol/Lのシュウ酸を含む電解液に浸漬し、電流密度を10A/dmとした電流を20分通電して、トップリング溝に陽極酸化皮膜を有する試験片を得た。
さらに、上記ピストン基材を、形成されたトップリング溝が確実に電解液と接触するように、モリブデン酸アンモニウムの水溶液に浸漬し、電流密度を1A/dmとした電流を5分通電して、陽極酸化皮膜にモリブデン硫化物を有する試験片(「試験片A」とする。)を得た。
試験片Aの皮膜をグロー放電発光分析法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry:GD−OES)で解析したところ、トップリング溝中に形成された陽極酸化皮膜からモリブデン硫化物が検出された。
モリブデン酸アンモニウムの水溶液に浸漬しての通電をしなかった以外は試験片Aと同様にして、陽極酸化皮膜にモリブデン硫化物を有さない試験片(「試験片B」とする。)を得た。
試験片Aおよび試験片Bを、耐久性試験(耐凝着摩耗試験)に供した。凝着摩耗が発生するまでの時間を測定し、その結果、試験片Aの凝着摩耗が発生するまでの時間は試験片Bの20倍であった。
本開示の内燃機関用ピストンは、従来よりも耐久性が高い。本開示の内燃機関用ピストンは、車両、船舶などの、内燃機関が用いられる各用途におけるピストンの寿命を延ばし、当該分野のさらなる発展に寄与することが期待される。
100 内燃機関用ピストン
102 頂部
104 外周面
106 ピストンリング溝
106a トップリング溝
106b セカンドリング溝
106c オイルリング溝
110 ピストンヘッド
120 スカート部
122 一方の端部
124 他方の端部
130 ピストンピン孔
140 中空部
150 ピストンボス部
160 燃焼室
170 冷却空洞
180 リング状部材

Claims (9)

  1. ピストンヘッドにピストンリング溝が形成された内燃機関用ピストンであって、
    前記ピストンリング溝は、表面に陽極酸化皮膜を有し、
    前記陽極酸化皮膜は、モリブデン硫化物を有する
    内燃機関用ピストン。
  2. 前記ピストンリング溝は、前記ピストンヘッドに鋳込まれた、アルミニウムまたはアルミニウム合金を材料とするリング状部材の外周面に形成されている、請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
  3. 前記リング状部材は、多孔質体中に前記アルミニウムまたはアルミニウム合金が含浸された多孔質セラミックス体を含む、請求項2に記載の内燃機関用ピストン。
  4. 前記ピストンヘッドは、冷却空洞を有し、
    前記リング状部材は、前記冷却空洞の壁面の一部を構成する、請求項2または3に記載の内燃機関用ピストン。
  5. ピストンヘッドにピストンリング溝が形成されたピストン基材を用意する工程と、
    前記ピストンリング溝に陽極酸化皮膜を形成する工程と、
    前記形成された陽極酸化皮膜に、二次電解によりモリブデン硫化物を析出させる工程と、
    を有する、内燃機関用ピストンの製造方法。
  6. 前記ピストン基材は、リング状基材を鋳込んで鋳造され、
    前記鋳込まれたリング状基材を切削加工して前記ピストンリング溝を形成する工程を有する、
    請求項5に記載の内燃機関用ピストンの製造方法。
  7. 前記リング状基材は、多孔質体により形成されている、請求項6に記載の内燃機関用ピストンの製造方法。
  8. 前記鋳込まれるリング状基材は、中子を担持し、
    前記鋳造されたピストン基材から前記中子を除去する工程を有する、
    請求項6または7に記載の内燃機関用ピストンの製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関用ピストンを有する車両。
JP2019168173A 2019-09-17 2019-09-17 内燃機関用ピストンおよびその製造方法、ならびに車両 Pending JP2021046797A (ja)

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