(樹脂積層板)
本発明の樹脂積層板は、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料の20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値をa(ppm/K)(以下、線膨張係数平均値aということがある)とし、ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料の20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値をb(ppm/K)(以下、線膨張係数平均値bということがある)とするとき、線膨張係数平均値aから線膨張係数平均値bを差し引いた「a−b」が上述の関係を満足することで、高温環境へ暴露された後の耐反り変形性に優れるものとなる。熱可塑性樹脂材料の線膨脹係数平均値の決定方法はJIS K7197に記載されている。
線膨張係数平均値aと線膨張係数平均値bとは、高温環境下での耐反り変形性の観点から、−1≦a−b≦6の関係を満足するのが好ましく、0≦a−b≦6の関係を満足するのがより好ましく、0≦a−b≦3の関係を満足するのがさらに好ましい。樹脂積層板が、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に熱可塑性樹脂層が積層されてなる2層構成であるとき、「a−b」が小さすぎると、高温環境暴露後において、熱可塑性樹脂層側が凸となるように反り変形することがあり、「a−b」が大きすぎると、高温環境暴露後において、ポリカーボネート樹脂層側が凸となるように反り変形することがある。
線膨張係数平均値aと線膨張係数平均値bとが、上述の関係を満足するようにするためには、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料とポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料とを、適宜選択すればよい。例えば、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料が決定されているのであれば、その樹脂材料の線膨張係数平均値aに対して、「a−b」が上記所定の範囲内となるような線膨張係数平均値bを有する樹脂を、ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料として選択すればよいし、ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料が決定されているのであれば、その樹脂材料の線膨張係数平均値bに対して、a−bが上記所定の範囲内となるような線膨張係数平均値aを有する樹脂を、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料を選択すればよい。
本発明において、ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料や熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料として、2種以上の樹脂を含有する樹脂組成物を用いるとき、この樹脂材料の20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値は、樹脂組成物の20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値である。
樹脂積層板の全体の厚みは、表面硬度と高温環境へ暴露された後の耐反り変形性の観点から、好ましくは100〜3000μm、より好ましくは150〜2000μm、さらに好ましくは200〜1500μmである。ポリカーボネート樹脂層の厚みは、表面硬度と高温環境へ暴露された後の耐反り変形性の観点から、好ましくは50〜2980μm、より好ましくは70〜1950μm、さらに好ましくは100〜1450μmである。熱可塑性樹脂層の厚みは、表面硬度と高温環境へ暴露された後の耐反り変形性の観点から、好ましくは20〜200μm、より好ましくは40〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmである。
本発明の樹脂積層板は、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に熱可塑性樹脂層が積層されてなる2層構成でもよいし、ポリカーボネート樹脂層の両方の面に熱可塑性樹脂層が積層されてなる3層構成でもよい。樹脂積層板が3層構成であるとき、各熱可塑性樹脂層の厚みや組成は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(ポリカーボネート樹脂層)
ポリカーボネート樹脂層は、ポリカーボネート系樹脂を樹脂材料として構成される。ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られる樹脂、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られる樹脂、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られる樹脂などが挙げられる。
二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステルなどが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる二価フェノールを単独で、または2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や;ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
カルボニル化剤としては、例えば、ホスゲンなどのカルボニルハライド;ジフェニルカーボネートなどのカーボネートエステル;二価フェノールのジハロホルメートなどのハロホルメートなどが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリカーボネート系樹脂とポリカーボネート系樹脂以外の他の樹脂とを含有する樹脂組成物であってもよい。ポリカーボネート樹脂層におけるポリカーボネート系樹脂以外の他の樹脂の含有量は、ポリカーボネート系樹脂およびポリカーボネート系樹脂以外の他の樹脂の合計量を100重量部とするとき、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
ポリカーボネート樹脂層は、樹脂材料に加えて、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を1種または2種以上含有していてもよい。
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料としては、線膨張係数平均値bに対して、「a−b」が上述の所定の範囲内となるような線膨張係数平均値aを有する、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物であれば特に制限されないが、表面硬度、透明性、および高温環境へ暴露された後の耐反り変形性の観点から、スチレン系樹脂、またはアクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含有する樹脂組成物であって、線膨張係数平均値bに対して、「a−b」が上述の所定の範囲内となるような線膨張係数平均値aを有するものが好ましい。
スチレン系樹脂としては、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体のことをいう。ここで、スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2−メチル−4−クロロスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α―メチルスチレン、cis−β−メチルスチレン、trans−β−メチルスチレン、4−メチル−α−メチルスチレン、4−フルオロ−α−メチルスチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、4−ブロモ−α−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、4−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、α−ブロモスチレン、β−ブロモスチレン、2−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。これらスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの単量体のうち、共重合が容易なことから、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
また、スチレン系樹脂には、スチレン系単量体成分に他の単量体成分を共重合したものも含まれる。スチレン系単量体成分と共重合し得る他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル単量体、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエンが挙げられる。これらスチレン系単量体成分と共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン系樹脂としては、スチレン、メタクリル酸エステルおよび不飽和ジカルボン酸無水物の共重合体が好ましく、スチレン、メタクリル酸メチルおよび無水マレイン酸の共重合体(以下、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体ということがある)がより好ましい。この共重合体において、共重合比を変更したり、他の樹脂を混合したりすることにより、線膨張係数平均値a、得られる樹脂積層体における耐熱性、耐擦傷性樹脂板における樹脂積層板と硬化被膜との密着性を調整することができる。
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体に含まれるスチレン単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位、および無水マレイン酸単量体単位の重量割合は、スチレン単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位、および無水マレイン酸単量体単位の合計量を100重量%とするとき、スチレン単量体単位が50〜80重量%、メタクリル酸メチル単量体単位が5〜35重量%、無水マレイン酸単量体単位が5〜30重量%であることが好ましい。
スチレン単量体単位の前記重量割合は、透明性、耐熱性の観点から、好ましくは50〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%、さらに好ましくは55〜70重量%である。
メタクリル酸メチル単量体の前記重量割合は、透明性、耐熱性の観点から、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。
無水マレイン酸単量体単位の前記重量割合は、透明性、耐熱性の観点から、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体は、スチレン単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位、および無水マレイン酸単量体単位に加えて、これら単量体単位以外の他の単量体単位を含むものであってもよい。他の単量体単位としては、メタクリル酸メチル単量体単位、スチレン単量体単位、および無水マレイン酸単量体単位のうち、少なくとも1種の単量体単位と共重合しうるものであればよく、3種すべての単量体単位と共重合しうるものであるのが好ましい。このスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体における他の単量体単位の重量割合は、メタクリル酸メチル単量体単位、スチレン単量体単位、無水マレイン酸単量体単位、および他の単量体単位の合計量を100重量%とするとき、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
スチレン系樹脂は、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を1種または2種以上混合されていてもよい。
スチレン系樹脂としては、樹脂積層板の高温環境へ暴露された後の耐反り変形性の観点から、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル酸エステル単量体単位を主成分として含むメタクリル樹脂(以下、メタクリル樹脂ということがある)とを含有する樹脂組成物がより好ましい。スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂を混合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物をスチレン系樹脂として熱可塑性樹脂層を構成することで、樹脂積層板の高温環境へ暴露された後の耐反り変形性をより一層向上させることができる。
メタクリル樹脂は、1種のメタクリル酸エステル単量体のみからなる単独重合体であってもよいし、2種以上のメタクリル酸エステル、または1種以上のメタクリル酸エステルと該メタクリル酸エステルと共重合し得る他の単量体との共重合体であってもよい。メタクリル樹脂が共重合体であるとき、メタクリル酸エステル単量体単位の重量割合は、メタクリル樹脂100重量%に対して50重量%を超え、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
メタクリル酸エステル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらメタクリル酸エステル単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらメタクリル酸エステル単量体単位のうち、アルキル基の炭素数が1〜7であるメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、得られる単独重合体または共重合体の耐熱性や透明性が優れることから、メタクリル酸メチルが特に好ましい。これらメタクリル酸エステル単量体単位は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
メタクリル酸エステルと共重合し得る他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類;スチレン;クロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン類などの置換スチレン類;メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
メタクリル樹脂は、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を1種または2種以上混合されていてもよい。
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料が、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂とを含有する樹脂組成物であるとき、これらの含有量は、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂との合計量を100重量部とするとき、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体は好ましくは20〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部、さらに好ましくは35〜45重量部であり、メタクリル樹脂は好ましくは30〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部、さらに好ましくは55〜65重量部である。スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂の含有量がこの範囲内にあるとき、樹脂積層板は、表面硬度および耐熱性が優れるとともに、高温環境へ暴露された後の耐反り変形性に特に優れる。
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料が、少なくともスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体を含有する樹脂組成物であるとき、この樹脂組成物には、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体に加えて、さらに、上述のメタクリル樹脂以外の他の樹脂が含有されていてもよい。他の樹脂の含有量は、他の樹脂成分とスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体との合計量、メタクリル樹脂を含有する場合は、他の樹脂成分とスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂との合計量を100重量部とするとき、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料が、2種以上の樹脂(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂)を含有する樹脂組成物であるとき、この樹脂組成物は、例えば、これら2種以上の樹脂を含む樹脂混合物を溶融混練することで得ることができる。溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機、混練機を用いることができる。具体的には、一軸混練押出機、二軸混練押出機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー等を用いることができ、中でも、二軸混練押出機が好ましい。また、溶融混練は、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料としては、樹脂積層板の高温環境へ暴露された後の耐反り変形性の観点から、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂を含有する樹脂組成物であって、アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチル、下記式(I)
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はシクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキル基で置換されたシクロアルキル基、ナフチル基で置換されたアルキル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基、フェニル基で置換されたアルキル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基を表す。)で示される(メタ)アクリル酸エステル(以下、(メタ)アクリル酸エステル(I)ということがある)、および必要に応じてさらにこれら以外の単官能単量体からなる単量体成分を重合させて得られる共重合であるものも好ましい。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料が、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含有する樹脂組成物であるとき、これらの含有量は、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との合計量を100重量部とするとき、アクリル系樹脂は好ましくは10〜95重量部、より好ましくは30〜90重量部、さらに好ましくは40〜70重量部であり、ポリカーボネート系樹脂は好ましくは5〜90重量部、より好ましくは10〜70重量部、さらに好ましくは30〜60重量部である。アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂の含有量がこの範囲内にあるとき、樹脂積層板は、表面硬度が優れるとともに、高温環境へ暴露された後の耐反り変形性に特に優れる。
アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エステル(I)、および必要に応じてさらにこれら以外の単官能単量体からなる単量体成分を重合させて得られる共重合であるとき、アクリル系樹脂に含まれるメタクリル酸メチル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル(I)単量体単位、およびこれら以外の単官能単量体単位の重量割合は、メタクリル酸メチル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル(I)単量体単位、およびこれら以外の単官能単量体単位の合計量を100重量%とするとき、メタクリル酸メチル単量体単位が50〜95重量%、(メタ)アクリル酸エステル(I)単量体単位が5〜50重量%、これら以外の単官能単量体単位が0〜20重量%であることが好ましい。
メタクリル酸メチル単量体単位の前記重量割合は、透明性、耐熱性の観点から、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは70〜85重量%である。
(メタ)アクリル酸エステル(I)単量体単位の前記重量割合は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。
(メタ)アクリル酸エステル(I)単量体単位の重量割合があまり小さいと、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との相溶性が低下するとともに、樹脂積層板の透明性が低下することがあり、重量割合があまり大きいと、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との相溶性が低下するとともに、樹脂積層板が成形し難くなることがある。
メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エステル(I)以外の、単官能単量体単位の前記重量割合は、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。単官能単量体単位の重量割合があまり小さいと、アクリル系樹脂の耐熱性が低下することがあり、重量割合があまり大きいと、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との相溶性が低下することがある。
(メタ)アクリル酸エステル(I)において、R2は、シクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキル基で置換されたシクロアルキル基、フェニル基で置換されたアルキル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ナフチル基で置換されたアルキル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基、ジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基を表し、中でも、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基が好ましい。R2におけるシクロアルキル基としては、炭素数が5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
R2で示される「シクロアルキル基で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、その置換基である「シクロアルキル基」としては、炭素数5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。なお、置換基である「シクロアルキル基」の数およびアルキル基における置換位置に特に制限はない。R2で示される「シクロアルキル基で置換されたアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)が上記の炭素数5〜12のシクロアルキル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
R2で示される「シクロアルキル基」としては、炭素数5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。また、必要に応じて、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基でさらに置換されていてもよい。
R2で示される「アルキル基で置換されたシクロアルキル基」の「シクロアルキル基」としては、炭素数5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられ、その置換基である「アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「アルキル基」の数およびシクロアルキル基における置換位置に特に制限はない。R2で示される「アルキル基で置換されたシクロアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)が上記のアルキル基で置換されたシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
R2で示される「フェニル基で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「フェニル基」の数およびアルキル基における置換位置に特に制限はない。R2で示される「フェニル基で置換されたアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)がフェニル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)。
R2で示される「フェニル基」に特に制限はなく、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基で更に置換されていてもよい。
R2で示される「アルキル基で置換されたフェニル基」のフェニル基の置換基である「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「アルキル基」の数およびフェニル基における置換位置に特に制限はない。R2で示される「アルキル基で置換されたフェニル基」としては、例えば、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基などが挙げられる。
R2で示される「ナフチル基で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「ナフチル基」の数およびアルキル基における置換位置に特に制限はない。R2で示される「ナフチル基で置換されたアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)がナフチル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる(例えば、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル等)。
R2で示される「ナフチル基」に特に制限はなく、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基で更に置換されていてもよい。
R2で示される「アルキル基で置換されたナフチル基」のナフチル基の置換基である「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「アルキル基」の数およびナフチル基における置換位置に特に制限はない。R2で示される「アルキル基で置換されたナフチル基」としては、例えば、メチルナフチル基、エチルナフチル基などが挙げられる。
また、R2で示される「ジシクロペンタニル基」および「ジシクロペンテニル基」は、それぞれアルキル基、水酸基、アミノ基、スルホン基などで置換されていてもよい。なお、置換基である「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基の数および「ジシクロペンタニル基」および「ジシクロペンテニル基」における置換位置に特に制限はない。
なお、本発明におけるR2は、アクリル系樹脂に脂環式炭化水素、および/または芳香族炭化水素基を与えるものであれば、上記のものに限定されるものではない。
R2は、好ましくはシクロアルキル基(好ましくはシクロヘキシル基)、フェニル基、ナフチル基、ジシクロペンタニル基およびジシクロペンテニル基であり、より好ましくは、シクロヘキシル基およびフェニル基である。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル(I)としては、好ましくはアクリル酸シクロヘキシル(R1=水素原子、R2=シクロヘキシル基)、メタクリル酸シクロヘキシル(R1=メチル基、R2=シクロヘキシル基)、アクリル酸フェニル(R1=水素原子、R2=フェニル基)、メタクリル酸フェニル(R1=メチル基、R2=フェニル基)、アクリル酸ナフチル(R1=水素原子、R2=ナフチル基)、メタクリル酸ナフチル(R1=メチル基、R2=ナフチル基)、アクリル酸ジシクロペンタニル(R1=水素原子、R2=ジシクロペンタニル基)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(R1=メチル基、R2=ジシクロペンタニル基)、アクリル酸ジシクロペンテニル(R1=水素原子、R2=ジシクロペンテニル基)、メタクリル酸ジシクロペンテニル(R1=メチル基、R2=ジシクロペンテニル基)であり、好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル(R1=水素原子、R2=シクロヘキシル基)、メタクリル酸シクロヘキシル(R1=メチル基、R2=シクロヘキシル基)、アクリル酸フェニル(R1=水素原子、R2=フェニル基)、メタクリル酸フェニル(R1=メチル基、R2=フェニル基)であり、より好ましくは、メタクリル酸シクロヘキシル(R1=メチル基、R2=シクロヘキシル基)およびメタクリル酸フェニル(R1=メチル基、R2=フェニル基)である。(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
メタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル(I)以外の単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル(I)以外の、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、ビニルシアン化合物等が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、メタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル(I)以外の、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルが好ましい。メタクリル酸アルキルとしては、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルが好ましく、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル等が挙げられる。メタクリル酸アルキルは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、中でも、アクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸アルキルは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ビニルシアン化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。ビニルシアン化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記単量体成分を重合する際の重合方法については、特に制限はなく、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合法を採用することができる。重合には通常ラジカル重合開始剤が用いられ、好ましくはラジカル重合開始剤および連鎖移動剤が用いられる。
前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、1,1―ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの如き有機過酸化物等のラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合開始剤の量は、単量体の種類やその割合等に応じて、適宜決定すればよい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート等のメルカプタン類等が好ましく用いられる。連鎖移動剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類やその割合等に応じて、適宜決定すればよい。
前記単量体成分を重合する際の重合温度は、適宜設定すればよく、特に限定されない。
アクリル系樹脂は、質量平均分子量が50000〜300000であるのが好ましく、60000〜200000であるのがより好ましく、70000〜150000であるのがさらに好ましい。アクリル系樹脂の質量平均分子量があまり小さいと、機械強度が低下することがあり、質量平均分子量があまり大きいと、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との相溶性が低下することがある。
アクリル系樹脂は、温度230℃、荷重3.8kgで測定されるメルトマスフローレイト(MFR)が0.1〜30g/10minであるのが好ましく、0.2〜20g/10minであるのがより好ましい。
アクリル系樹脂は、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を1種または2種以上混合されていてもよい。
アクリル系樹脂とともに樹脂組成物に含有されるポリカーボネート系樹脂としては、ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料として例示したポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を1種または2種以上、添加してもよい。
アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含有する樹脂組成物は、例えば、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含む樹脂混合物を溶融混練することで得ることができる。樹脂混合物の溶融混練時の温度および剪断速度としては、これらの樹脂を均一に溶融混練する点から、温度は、通常180〜320℃、好ましくは200〜300℃とし、剪断速度は、通常10〜300sec−1、好ましくは30〜150sec−1とする。溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機、混練機を用いることができる。具体的には、一軸混練押出機、二軸混練押出機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー等を用いることができ、中でも、二軸混練押出機が好ましい。また、溶融混練は、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
樹脂組成物は、樹脂材料以外に、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を1種または2種以上含有していてもよい。また、他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。これらの添加剤や他の熱可塑性樹脂は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物の溶融混練時に加えてもよいし、溶融混練の前または後に加えてもよい。
熱可塑性樹脂層には、樹脂材料に加えて、必要に応じて、例えば、ゴム粒子、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤が1種または2種以上含有されていてもよい。
(樹脂積層板の製造方法)
樹脂積層板の製造方法としては、例えば、ポリカーボネート樹脂層と、熱可塑性樹脂層とを溶融共押出成形により積層一体化する方法や、ポリカーボネート樹脂層と、熱可塑性樹脂層とを、粘着剤や接着剤を介して貼合する方法が挙げられる。中でも、溶融共押出成形が好ましい。溶融共押出成形により製造された樹脂積層板は、ポリカーボネート樹脂層と熱可塑性樹脂層とを粘着剤や接着剤を介して貼合して製造された樹脂積層板に比べて、二次成形し易い。
以下、本発明の樹脂積層板を製造する方法の一実施形態について、溶融共押出成形で製造する場合を例に挙げ、図1を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂材料、および熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料を、それぞれ別個の押出機1、2で加熱して溶融混練し、それぞれマルチマニホールド型ダイス3に供給し、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に熱可塑性樹脂層が積層されてなる2層構成、またはポリカーボネート樹脂層の両方の面に熱可塑性樹脂層が積層されてなる3層構成に溶融積層一体化して押し出す。前記熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料が、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体とメタクリル樹脂とを含有する樹脂組成物、またはアクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含有する樹脂組成物のように、2種以上の樹脂を含有する樹脂組成物であるとき、これら樹脂組成物に含有される2種以上の樹脂は従来公知の方法で混合しうる。2種類以上の樹脂を混合するには、それぞれを上記押出機に供給して、該押出機にて両者を混合してもよいし、予め両者を混合して混合物を得ておき、この混合物を上記押出機に供給してもよい。なお、マルチマニホールド型ダイスに替えて、フィードブロックとダイを組み合わせて使用してもよい。
次いで、マルチマニホールド型ダイス3から押し出したシート状またはフィルム状の溶融樹脂4を、略水平方向に対向配置した第1冷却ロール5と第2冷却ロール6との間に挟み込む。第1冷却ロール5および第2冷却ロール6は、少なくとも一方がモータなどの回転駆動手段に接続されており、両ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。両ロールのうち、第2冷却ロール6は、両ロール間で挟持された後のシート状またはフィルム状の溶融樹脂4が巻き掛けられる、巻き掛けロールである。
第1冷却ロール5および第2冷却ロール6は、金属ロールまたは金属弾性ロールで構成してもよく、金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせて構成してもよい。
リタデーション値が低減された樹脂積層板8を得る場合には、第1冷却ロール5および第2冷却ロール6を、金属ロールと金属弾性ロールとの組み合わせで構成するのが好ましい。すなわち、溶融樹脂を金属ロールと金属弾性ロールとの間に挟持すると、金属弾性ロールが溶融樹脂を介して金属ロールの外周面に沿って凹状に弾性変形し、金属弾性ロールと金属ロールとが溶融樹脂を介して所定の接触長さで接触する。これにより、金属ロールと金属弾性ロールとが、溶融樹脂に対して面接触で圧着するようになり、これらロール間に挟持される溶融樹脂は、面状に均一加圧されながら成膜される。その結果、リタデーション値が低減された樹脂積層板8が得られる。
また、金属ロールと金属弾性ロールとの間に挟持されて面状に均一加圧されながら成膜された樹脂積層板は、成膜時の歪みが低減されることで、高温環境へ暴露された後の耐反り変形性に優れたものになる。
金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせる場合には、金属弾性ロールを第1冷却ロール5、金属ロールを第2冷却ロール6とするのが好ましい。これにより、得られる樹脂積層板8の成膜時の歪み及びリタデーション値をより低減することができる。
上述した第1冷却ロール5と第2冷却ロール6との間に挟み込んだ溶融樹脂4を、第2冷却ロール6および第3冷却ロール7の順に巻き掛ける。具体的には、第2冷却ロール6に巻き掛けられた溶融樹脂4を、第2冷却ロール6と第3冷却ロール7との間に通して第3冷却ロール7に巻き掛けるようにする。これにより、溶融樹脂4が緩やかに冷却されるので、得られる樹脂積層板8のリタデーション値を低減することができる。なお、第2冷却ロール6と第3冷却ロール7との間は、所定の間隔を設けて開放状態にしてもよく、所定の間隔を設けずに溶融樹脂4が両ロール間に挟み込まれるようにしてもよい。
第3冷却ロール7としては、特に限定されるものではなく、従来、押出成形で使用されている通常の金属ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロール、スパイラルロールなどが挙げられる。第3冷却ロール7の表面状態は、鏡面であるのが好ましい。なお、第3冷却ロール7以降に第4冷却ロール、第5冷却ロール、・・・と複数本の冷却ロールを設け、第3冷却ロール7に巻き掛けたシート状またはフィルム状の樹脂積層板8を順次、次の冷却ロールに巻き掛けるようにしてもよい。
第3冷却ロール7に巻き掛けて緩やかに冷却した樹脂積層板8を、図示しない引取りロールによって引き取り、これを巻き取ると、本発明の樹脂積層板8が得られる。樹脂積層板8全体の厚さは、溶融状態の溶融樹脂4全体の厚さ、冷却ユニットが備える冷却ロールやベルトの間隔、周速度などを調整することにより、任意に調整することができる。
ポリカーボネート樹脂層、および熱可塑性樹脂層の厚さは、それぞれ押出機からの供給量などを調整することにより、任意に調整することができる。
(耐擦傷性樹脂積層板)
樹脂積層板の少なくとも一方の面に硬化被膜を備えることで耐擦傷性樹脂板が得られる。耐擦傷性樹脂板は、樹脂積層板の少なくとも一方の面に硬化被膜を備えることで、表面硬度により優れる。
耐擦傷性樹脂積層板の層構成としては、下記(i)〜(v)が挙げられる。なお、ポリカーボネート樹脂層をPC層、熱可塑性樹脂層をTR層と省略表記した。
(i) TR層/PC層/硬化被膜
(ii) 硬化被膜/TR層/PC層
(iii)硬化被膜/TR層/PC層/硬化被膜
(iv) TR層/PC層/TR層/硬化被膜
(v) 硬化被膜/TR層/PC層/TR層/硬化被膜
なお、樹脂積層板の両方の面に硬化被膜を形成する場合には、両方の面の硬化被膜の組成や厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般に、PC層表面に比較してTR層表面は硬度が高くなることが多く、PC層表面に硬化被膜を積層するよりもTR層表面にことでより高い耐擦傷性が得られ易い。そのため、樹脂積層板の一方の面にのみ硬化被膜を形成する場合には、硬化被膜はTR層の表面に形成することが好ましい。
硬化被膜の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmである。硬化被膜は、その厚みが薄い程、亀裂が生じ難くなる傾向にあるが、あまり硬化被膜の厚みが薄いと、耐擦傷性が不十分となり好ましくない。
耐擦傷性樹脂積層板は、必要に応じて、その表面に、コート法、スパッタ法、真空蒸着法等により反射防止処理が施されてもよい。また、耐擦傷性樹脂積層板は、反射防止効果を付与の目的で、その少なくとも一方の面に、別途作製した反射防止性のシートが貼合されてもよい。
(耐擦傷性樹脂積層板の製造方法)
耐擦傷性樹脂積層板の製造方法としては、例えば、樹脂積層板の少なくとも一方の面に硬化性塗料組成物を塗布して、硬化性塗膜を形成し、次いでこの硬化性塗膜を硬化させて、硬化被膜とする方法などが挙げられる。
(硬化性塗料組成物)
硬化性塗料組成物は、耐擦傷性をもたらす硬化性化合物を必須成分とし、必要に応じて、硬化触媒、導電性粒子、溶媒、レベリング剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤等を含有する。
(硬化性化合物)
硬化性化合物としては、例えば、アクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、共重合系アクリレート化合物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
中でも、硬化被膜の耐擦傷性の点から、多官能アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレート化合物、多官能エポキシアクリレート化合物等のラジカル重合系の硬化性化合物や;アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等の熱重合系の硬化性化合物等が好ましい。これらの硬化性化合物は、例えば電子線、放射線、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものであるか、加熱により硬化するものであるのがよい。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
特に好ましい硬化性化合物は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいい、その他、本明細書において、(メタ)アクリレート等というときの「(メタ)」も同様の意味である。
硬化性化合物の一例である分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−、ヘキサ−またはヘプタ−(メタ)アクリレートなどの、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;分子中にイソシアナト基を少なくとも2個有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを、イソシアナト基に対して水酸基が等モル以上となる割合で反応させて得られ、分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となったウレタン(メタ)アクリレート〔例えば、ジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの反応により、6官能のウレタン(メタ)アクリレートが得られる〕;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここには単量体を例示したが、これら単量体のままで用いてもよいし、例えば2量体、3量体等のオリゴマーの形になったものを用いてもよい。また、単量体とオリゴマーを併用してもよい。これらの(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独か、または2種以上を混合して用いられる。
硬化性化合物の一例である分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、市販のものを用いることができる。その具体例としては、いずれも新中村化学工業(株)製の"U−6HA"(ウレタンアクリレートオリゴマー)、"NKハ−ド M101"(ウレタンアクリレート系)、"NKエステル A−TMM−3L"(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、"NKエステル A−TMMT"(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、"NKエステル A−9530"(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)および"NKエステル A−DPH"(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、日本化薬(株)製の"KAYARAD DPCA"(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、サンノプコ(株)製の"ノプコキュア 200"シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製の"ユニディック"シリーズ等が挙げられる。
(他の硬化性化合物)
なお、硬化性化合物として分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を用いる場合には、必要に応じて、他の硬化性化合物、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの、分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を併用してもよい。その使用量は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物100重量部に対して、通常20重量部までである。
(光重合開始剤)
硬化性塗膜を紫外線で硬化させる場合には、硬化性塗料組成物は、硬化触媒として光重合開始剤を含有するのがよい。光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類等が挙げられ、必要に応じてこれらの2種以上からなる混合物を用いることもできる。光重合開始剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
光重合開始剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の"IRGACURE 651"、"IRGACURE 184"、"IRGACURE 500"、"IRGACURE 1000"、"IRGACURE 2959"、"DAROCUR 1173"、"IRGACURE 907"、"IRGACURE 369"、"IRGACURE 1700"、"IRGACURE 1800"、"IRGACURE 819"、"IRGACURE 784"等の、IRGACURE(イルガキュア)シリーズおよびDAROCUR(ダロキュア)シリーズ、いずれも日本化薬(株)製の"KAYACURE ITX"、"KAYACURE DETX−S"、"KAYACURE BP−100"、"KAYACUREBMS"、"KAYACURE 2−EAQ"等の、KAYACURE(カヤキュア)シリーズ等が挙げられる。
(導電性粒子)
硬化性塗料組成物は導電性粒子を含有してもよい。これにより、硬化被膜に帯電防止性を付与することができる。導電性粒子としては、例えば、アンチモン−スズ複合酸化物、リンを含有する酸化錫、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、アンチモン−亜鉛複合酸化物、酸化チタン、インジウム−錫複合酸化物(ITO)などの無機粒子が好ましく用いられる。導電性粒子は、固形分濃度が10〜30重量%程度のゾルの形態で使用することもできる。
導電性粒子の粒子径は、通常0.5μm以下であり、硬化被膜の帯電防止性や透明性の点からは、平均粒子径で表して、好ましくは0.001μm以上であり、また好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が小さい程、耐擦傷性樹脂積層板の曇度を低くすることができ、透明性を高めることができる。
導電性粒子の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常2〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。導電性粒子の使用量が多い程、硬化被膜の帯電防止性が向上する傾向にあるが、導電性粒子の使用量があまり多いと、硬化被膜の透明性が低下するので好ましくない。
導電性粒子は、例えば、気相分解法、プラズマ蒸発法、アルコキシド分解法、共沈法、水熱法等により製造することができる。また、導電性粒子の表面は、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で表面処理されていてもよい。
(溶媒)
硬化性塗料組成物は、その粘度調整等を目的として、溶媒を含有してもよい。特に硬化性塗料組成物が導電性粒子を含む場合には、その分散のために溶媒を含有するのがよい。
導電性粒子および溶媒を含有する硬化性塗料組成物を調製する場合には、例えば、導電性粒子および溶媒を混合して、溶媒に導電性粒子を分散させた後、この分散液を硬化性化合物と混合してもよいし、硬化性化合物と溶媒を混合した後、この混合液に導電性粒子を分散させてもよい。
溶媒は、硬化性化合物を溶解することができ、かつ塗布後に容易に揮発し得るものであるのがよく、また塗料成分として導電性粒子を用いる場合には、それを分散させることができるものであるのがよい。このような溶媒としては、例えば、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;水等が挙げられる。溶媒の使用量は、硬化性化合物の性状等に合わせて、適宜調整すればよい。
(レベリング剤)
硬化性塗料組成物にレベリング剤を含有させる場合には、シリコーンオイルが好ましく用いられる。その具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、フェノール基含有シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらのレベリング剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。レベリング剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部である。
レベリング剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の"SH200−100cs"、"SH28PA"、"SH29PA"、"SH30PA"、"ST83PA"、"ST80PA"、"ST97PA"および"ST86PA"、いずれもビック・ケミー・ジャパン(株)製の"BYK−302"、"BYK−307"、"BYK−320"および"BYK−330"等が挙げられる。
(硬化性塗料組成物の塗布方法)
硬化性塗料組成物を樹脂積層板の少なくとも一方の面に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法等のコート法などが挙げられる。
(硬化性塗膜の硬化方法)
硬化性塗膜を硬化させるには、硬化性塗料組成物の種類に応じて、エネルギー線の照射や加熱等により行えばよい。
エネルギー線の照射により硬化性塗膜を硬化させる場合のエネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、放射線等が挙げられる。その強度や照射時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択される。
また、加熱により硬化性塗膜を硬化させる場合において、その温度や時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択され、加熱温度は、樹脂積層板が変形を起こさないよう、100℃以下であるのが好ましい。硬化性塗料組成物が溶媒を含有する場合には、塗布後、溶媒を揮発させた後に硬化性塗膜を硬化させてもよいし、溶媒の揮発と硬化性塗膜の硬化とを同時に行ってもよい。
(用途)
樹脂積層板は、表面硬度に優れ、かつ、高温環境へ暴露された後の耐反り変形性に優れることで、ディスプレイ、タッチパネルおよび携帯型情報端末などの表示窓保護板用途、エクステリア用途、看板用途、照明用途などに好適に用いることができ、ディスプレイ、タッチパネルおよび携帯型情報端末などの表示窓保護板としてより好適に用いることができる。さらに、樹脂積層板は、硬化被膜との密着性に優れることで、耐擦傷性樹脂積層板の樹脂基板として好適に用いることができる。樹脂積層板の少なくとも一方の面に硬化被膜を備えてなる耐擦傷性樹脂積層板は、より表面硬度に優れることで、ディスプレイ保護板、タッチパネル保護板および携帯型情報端末の表示窓用保護板として特に好適に用いることができる。
保護されるディスプレイの種類としては、例えば、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等が挙げられる。また、保護されるディスプレイの用途としては、例えばテレビやコンピューターのモニター、タブレット、スマートフォン、携帯電話、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型情報端末の表示窓、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラのファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓等が挙げられる。
保護されるタッチパネルの用途としては、例えば、カーナビゲーションシステム、携帯型情報端末、銀行の現金自動預け払い機(ATM)、産業機械等の操作パネル、パーソナルコンピューターの画面、携帯型ゲーム機等のタッチパネル等が挙げられる。
ディスプレイ保護板、タッチパネル保護板および携帯型情報端末の表示窓用保護板を作製するには、まず必要に応じて耐擦傷性樹脂積層板に印刷、穴あけ等の加工を行い、必要な大きさに切断処理すればよい。しかるのちに、ディスプレイ、タッチパネルおよび携帯型情報端末の表示窓にセットすれば、ディスプレイ、タッチパネルおよび携帯型情報端末の表示窓を効果的に保護することができる。その際、樹脂積層板の一方の面に硬化被膜が形成されている場合には、硬化被膜が形成されている面が表側(視認者側)となるように設置するのがよい。また、樹脂積層板が、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に熱可塑性樹脂層が積層されてなる場合には、熱可塑性樹脂層が表側(視認者側)となるように設置するのがよい。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した押出装置は、図1で示す装置であり、その構成は、以下の通りである。
押出機1:スクリュー径65mm、一軸、ベント付きの押出機(東芝機械(株)製)。
押出機2:スクリュー径45mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)。
マルチマニホールド型ダイス3:2種2層分配型のマルチマニホールド型ダイス(日立造船(株)製)。
第1冷却ロール5:金属弾性ロール
第2冷却ロール6:金属ロール
第3冷却ロール7:金属ロール
金属弾性ロールは、ステンレス鋼からなる軸ロールの外周部を覆うように、片面が鏡面化された厚さ2mmのステンレス鋼製薄膜を鏡面仕上げ面がロール外面になる様に配置し、軸ロールと金属性薄膜との間に熱媒油からなる流体を封入した、外径が250mmである金属弾性ロールである。金属ロールは、表面を鏡面仕上げしたステンレス鋼からなり、外径250mmであるスパイラルロールである。
実施例および比較例では、以下に示す樹脂を使用した。各々の樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定により求めた。
ポリカーボネート樹脂1:住化スタイロンポリカーボネート(株)製の「カリバー 301−10」(質量平均分子量:50000、ガラス転移温度:145℃、20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値:68(ppm/K)(すなわち、線膨張係数平均値b:68(ppm/K)))を用いた。なお、ポリカーボネート樹脂1のガラス転移温度と、20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値(線膨張係数平均値b)とは、後述する樹脂材料についてガラス転移温度と線膨張係数平均値aとを測定した方法とそれぞれ同様にして求めた。
ポリカーボネート樹脂2:住化スタイロンポリカーボネート(株)製の「カリバー 301−40」(質量平均分子量:31000)を用いた。
スチレン系樹脂:メタクリル酸メチル単量体単位、スチレン単量体単位、および無水マレイン酸単量体単位からなり、メタクリル酸メチル単量体単位、スチレン単量体単位、および無水マレイン酸単量体単位の合計量を100重量%とするとき、メタクリル酸メチル単量体単位が20重量%、スチレン単量体単位が65重量%、無水マレイン酸単量体単位が15重量%であるスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(質量平均分子量:157000)を用いた。
メタクリル樹脂:メタクリル酸メチル単量体単位、およびアクリル酸メチル単量体単位からなり、メタクリル酸メチル単量体単位、およびアクリル酸メチル単量体単位の合計量を100重量%とするとき、メタクリル酸メチル単量体単位が97.8重量%、アクリル酸メチル単量体単位が2.2重量%であるメタクリル樹脂(質量平均分子量:124000)を用いた。
アクリル系樹脂:メタクリル酸メチル単量体単位、メタクリル酸シクロヘキシル単量体単位、およびアクリル酸メチル単量体単位からなり、メタクリル酸メチル単量体単位、メタクリル酸シクロヘキシル単量体単位、およびアクリル酸メチル単量体単位の合計量を100重量%とするとき、メタクリル酸メチル単量体単位が79.7重量%、メタクリル酸シクロヘキシル単量体単位が20重量%、およびアクリル酸メチル単量体単位が0.3重量%であるアクリル系樹脂(質量平均分子量:130000)を用いた。
[実施例1〜5および比較例1〜2]
(樹脂材料の調製)
スクリュー径20mmの一軸押出機((株)東洋精機製作所製)を用い、各熱可塑性樹脂を表1に示す割合で溶融混練し、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂材料をペレットとして得た。
得られた各樹脂材料(実施例1〜5および比較例1〜2)について、ガラス転移温度、および20℃から90℃までにおける線膨張係数の平均値(線膨張係数平均値a)を、それぞれ下記の方法によって求めた。結果を表1に示す。
<ガラス転移温度>
JIS K7121:1987に従い、加熱速度10℃/分として示差走査熱量測定により測定した。
<線膨張係数平均値a>
得られた各ペレット状の樹脂材料を、230℃、0.8MPaの条件で熱プレスして、厚さ1mmの樹脂板を作製した。この樹脂板を、長辺を15mm、短辺を5mmの大きさに切断して試験片とし、得られた各試験片について、それぞれ各試験片を構成する樹脂材料のガラス転移温度よりも10℃低い温度で24時間加熱した。加熱後の各試験片について、熱機械分析装置(セイコーインスツル(株)製)を用い、JIS K7197に従って圧縮膨張モード、荷重50mN、昇温速度5℃/min、窒素雰囲気下で、20℃での試験片の長辺の長さL0と、20℃から90℃まで昇温したときの試験片の長辺の長さの変位量ΔLを測定した。得られたL0およびΔL、ならびに20℃から90℃までの温度の変位量ΔT(ΔT=90℃−20℃=70℃=70K)から、線膨張係数平均値a(ppm/K)を、式:a(ppm/K)=(ΔL/L0)/ΔTに従って算出した。
(樹脂積層板の作製)
まず、押出機1、2、マルチマニホールド型ダイス3、および第1〜第3冷却ロール5〜7を、図1に示すように配置した。次いで、ポリカーボネート樹脂層を形成する樹脂材料としてポリカーボネート樹脂1を押出機1にて溶融混練し、熱可塑性樹脂層を形成する樹脂材料として上記で調整し得られた樹脂材料を押出機2にて溶融混練し、それぞれを設定温度260℃のマルチマニホールド型ダイス3に供給した。
そして、押出機1からマルチマニホールド型ダイス3に供給されるポリカーボネート樹脂層の一方の面に、押出機2からマルチマニホールド型ダイス3に供給される熱可塑性樹脂層が積層された、フィルム状の溶融樹脂4を、マルチマニホールド型ダイス3から押し出した。
次いで、マルチマニホールド型ダイス3から押し出したフィルム状の溶融樹脂4を、対向配置した第1冷却ロール5と第2冷却ロール6との間に挟み込み、第3冷却ロール7に巻き掛けて成形・冷却し、厚みが430μmのポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚みが70μmの熱可塑性樹脂層が積層されてなる、全体の厚みが500μmの2層構成の樹脂積層板を得た。得られた各樹脂積層板について、線膨張係数平均値aから線膨張係数平均値bを差し引いてa−bを算出した結果を表1に示す。
なお、第1冷却ロール5の表面温度は110℃、第2冷却ロール6の表面温度125℃、第3冷却ロール7の表面温度は120℃であった。これらの温度は、各冷却ロールの表面温度を実測した値である。
得られた各樹脂積層板(実施例1〜5および比較例1〜2)について、表面硬度を評価するために、下記の方法によって鉛筆硬度を測定した。さらに、各樹脂積層板の温度85℃湿度85%環境へ暴露された後の耐反り変形性を評価するために、下記の方法によって反り量を測定した。結果を表1に示す。
<鉛筆硬度>
JIS K5600に従い、得られた樹脂積層板の熱可塑性樹脂層面について測定した。
<反り量>
樹脂積層板を押出方向に200mm、押出方向と直交する方向に200mmの大きさに正方形状に切断して試験片とした。得られた試験片を、凸状に反っている面を接地面側として定盤の上に載置し、試験片を載置した定盤面からの試験片の4隅の浮き上がり量を位置センサで測定して平均値を算出し、この平均値を反り量Aとした。次に、この試験片を吊るした状態で、温度85℃湿度85%の恒温恒湿機内に設置して72時間静置し、次いで試験片を恒温恒湿機内から取り出して、吊るした状態で温度25℃湿度50%の環境下で4時間静置した後、反り量Aと同様にして、試験片の4隅の浮き上がり量の平均値を算出し、この平均値を反り量Bとした。そして、反り量Bから反り量Aを差し引くことで、反り量を求めた。反り量の値が小さいほど、樹脂積層板は高温環境下での耐反り変形性に優れる。
(耐擦傷性樹脂板の作製)
ウレタンアクリレートオリゴマー〔新中村化学工業(株)製の“U−6HA”〕25部、光重合開始剤〔チバスペシャリティーケミカルズ(株)製の“IRGACURE 184”〕1部、溶媒として、1−メトキシ−2−プロパノール37部およびイソブチルアルコール37部を混合して硬化性塗料を調製した。
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた各樹脂積層板を押出方向に100mm、押出方向と直交する方向に80mmの大きさに切断し、ディッピング法にて各樹脂積層板の両方の面に上記で調製した硬化性塗料の塗膜を形成した。次いで、この塗膜が形成された各樹脂積層板を室温で1分間乾燥させ、さらに50℃の熱風オーブン内で3分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、この塗膜に、120Wの高圧水銀ランプを用いて、0.5J/cm2の紫外線を照射して硬化させ、両面に厚さが3.5μmの硬化被膜が形成された各耐擦傷性樹脂積層板を得た。
得られた各耐擦傷性樹脂積層板について、樹脂積層板と硬化被膜との密着性を評価するために、下記の方法によって密着性を評価した。結果を表1に示す。
<密着性>
耐擦傷性樹脂積層板の熱可塑性樹脂層面に形成した硬化被膜の表面にカッターによって2mm×2mmのクロスハッチを100個入れ、その上にセロハンテープ(ニチバン(株)製)を貼り付けした後、該セロハンテープを剥がした。セロハンテープを貼り付けした後、該セロハンテープを剥がす操作をさらに2回繰り返し、この操作を全部で3回繰り返した後の硬化被膜が樹脂積層板から剥がれた升目の数を計測した。剥がれた升目がなかったものを「○」、剥がれた升目があったものを「×」と評価した。