JP6446869B2 - エチレン変性ポリビニルアルコール及び水性エマルジョン - Google Patents

エチレン変性ポリビニルアルコール及び水性エマルジョン Download PDF

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Description

本発明は、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と略することがある。)のクロマトグラム上で特定のシンメトリー係数を示すエチレン変性ポリビニルアルコール、並びに当該エチレン変性ポリビニルアルコールを含有する水性エマルジョン、接着剤及び乳化重合用分散剤に関する。
ポリビニルアルコールに代表されるビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある。)は、水溶性の合成高分子として知られており、合成繊維であるビニロンの原料、紙加工剤、繊維加工剤、接着剤、乳化重合及び懸濁重合用の安定剤、無機物のバインダー、フィルム等の用途に広く用いられている。特に、PVAは酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体の乳化重合用保護コロイドとして知られており、これを乳化重合用分散剤として用い、乳化重合して得られるビニルエステル系水性エマルジョンは、紙用、木工用、プラスチック用等の各種接着剤、含浸紙用及び不織製品用等の各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工、繊維加工等の分野で広く用いられている。
このようにPVAを乳化重合用分散剤として用いる場合、乳化重合時にエマルジョンの凝集を抑制し、優れた重合安定性を発揮させることが求められる。一方、PVAは水溶性であるため、得られるエマルジョンから形成される皮膜の耐水性が低下する、また、得られるエマルジョンの流動性(流動速度依存性)が低下する等の欠点を有しており、これらの性質は乳化重合に用いたPVAに依るところが大であることが知られている。そこで、PVAの特定の性能を向上させるために、結晶性の制御、官能基の導入等による各種変性PVAの開発が行われている。このような変性PVAとして、エチレン変性PVAを乳化重合用分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及び/又はジエン系単量体を乳化重合して得られる水性エマルジョン並びに多価イソシアネート化合物を含有する接着剤が提案されており、高い保存安定性、接着性及び耐水性を有するとされている(特許文献1参照)。また、変性PVAを用いて得られるエマルジョンとして、シリル基を有する不飽和単量体単位を特定の割合で含有する変性PVAを乳化重合用分散剤とし、分散質がエチレン性不飽和単量体から選ばれる一種又は二種以上の単量体の重合体である水性エマルジョンが提案されており、高い耐水性及び粘度安定性を有するとされている(特許文献2参照)。
上述のように、乳化重合用分散剤として用いられるPVAには優れた重合安定性を発揮することが求められるが、加えて、得られるエマルジョンには、例えば接着剤として用いられる場合は、接着剤の良好な伸びにより基材に塗工し易い等の流動性に優れることや、皮膜の耐水性が要求されている。しかしながら、上記従来のエマルジョンでは、これらを共に満足することができておらず、上記の効果を満足するエマルジョン、及びそのようなエマルジョンを提供することができるPVAが必要とされている。
特開平8−259659号公報 特開2007−23148号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、水溶液にした際の透明性及び粘度安定性に優れる特定のエチレン変性ポリビニルアルコール、並びに、当該ポリビニルアルコールを含有する、重合安定性に優れる乳化重合用分散剤の提供を目的とする。さらに、当該エチレン変性ポリビニルアルコールを含有する、流動性及び皮膜の耐水性に優れる水性エマルジョン及び接着剤の提供を目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特にHPLCで測定され、JIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が特定の範囲を満たすエチレン変性ポリビニルアルコール、並びに当該エチレン変性ポリビニルアルコールを含有する水性エマルジョン、接着剤及び乳化重合用分散剤によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1]エチレン単位の含有率が1〜15モル%であり、けん化度が80〜99.5モル%であり、粘度平均重合度が200〜5000であり、水−1−プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が下記式(1)を満たすエチレン変性ポリビニルアルコール;
0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1)
(式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)
[2]けん化度が85〜98.5モル%である上記[1]のエチレン変性ポリビニルアルコール;
[3]上記[1]又は[2]のポリビニルアルコールを含有する分散剤、及び主としてエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体からなる分散質を含有する水性エマルジョン;
[4]前記エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体が、ビニルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体及びジエン系単量体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する特定単位を有する重合体であり、この重合体の全単量体単位に対する上記特定単位の含有率が70質量%以上である上記[3]の水性エマルジョン;
[5]さらに多価イソシアネート化合物を含有する上記[3]又は[4]の水性エマルジョン;
[6]上記[5]の水性エマルジョンを含有する接着剤;
[7]上記[1]又は[2]のエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する乳化重合用分散剤。
以上説明したように、本発明のエチレン変性ポリビニルアルコールは、水溶液にした際の透明性及び粘度安定性に優れる。また、このようなエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する乳化重合用分散剤は、優れた乳化重合安定性を発揮することができる。さらに、このような本発明のエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する水性エマルジョンは、優れた流動性と皮膜の耐水性とを両立させることができる。従って、当該水性エマルジョンは、各種接着剤、塗料、繊維加工剤、紙加工剤、無機物バインダー、セメント混和剤、モルタルプライマー等に好適に用いられる。
本発明の実施の形態にかかる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析において得られるチャートの例を示す図である。 本発明の実施形態に係るエチレン変性PVA樹脂の製造方法で使用するけん化装置の例示的構成を模式的に示す図である。 (a)は図2に示すけん化装置の触媒導入機構の構成例を示す断面図であり、(b)は(a)に示すA−A線による断面図である。
<エチレン変性PVA>
本発明のエチレン変性PVAは、エチレン単位の含有率が1〜15モル%であり、けん化度が80〜99.5モル%であり、粘度平均重合度が200〜5000であり、水−1−プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が下記式(1)を満たすことを特徴とする。技術的な理由は十分明らかになっていないが、特に、本発明のエチレン変性PVAが下記式(1)で示される特定のシンメトリー係数を満たすことにより、水溶液にした際の透明性及び粘度安定性に優れるエチレン変性PVAが得られる。そして、このような特定のシンメトリー係数を満たす本発明のエチレン変性PVAを含有する水性エマルジョンは、流動性及び皮膜の耐水性に優れる。さらに、このような本発明のエチレン変性PVAを含有する乳化重合用分散剤は、粗大粒子の形成を抑えることができ乳化重合安定性に優れる。
0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1)
(式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)
本発明のエチレン変性PVAのエチレン単位の含有率は、1〜15モル%であり、1.5〜12モル%が好ましく、2〜10モル%がより好ましく、2〜8.5モル%が特に好ましい。エチレン単位の含有率が1モル%未満の場合には、得られる水性エマルジョンの皮膜の耐水性が不十分となる場合がある。エチレン単位の含有率が15モル%を超える場合には、エチレン変性PVAが水不溶となる場合があり、水性エマルジョンの調製が困難となる。
上記エチレン単位の含有率は、例えば、該エチレン変性PVAの前駆体又は再酢化物であるエチレン単位を含有するポリビニルエステルの1H−NMRから求められる。すなわち、得られたエチレン変性ポリビニルエステルをn−ヘキサン/アセトンで再沈精製を3回以上十分に行った後、80℃での減圧乾燥を3日間して分析用のエチレン変性ポリビニルエステルを作製する。該ポリマーをDMSO−D6に溶解し、1H−NMR(例:500MHz)を用いて80℃で測定する。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピーク(4.7〜5.2ppm)とエチレン、ビニルエステル及び第3成分の主鎖メチレンに由来するピーク(0.8〜1.6ppm)を用いてエチレン単位の含有量を算出することができる。
本発明のエチレン変性PVAのけん化度はJIS K 6726(1994年)に準じて測定される。上記エチレン変性PVAのけん化度は80〜99.5モル%である。けん化度が80モル%に満たない場合、上記エチレン変性PVA水溶液の透明性、及び当該エチレン変性PVAの乳化重合安定性が不十分となる。けん化度は82モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましい。一方、けん化度が99.5モル%を超える場合、上記エチレン変性PVAを安定に製造することができない。けん化度は99モル%以下であることが好ましく、98.5モル%以下であることがより好ましい。
本発明のエチレン変性PVAの粘度平均重合度(以下、「重合度」と略記することがある。)はJIS K 6726(1994年)に準じて測定される。すなわち、該エチレン変性PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](リットル/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
本発明のエチレン変性PVAの粘度平均重合度は200〜5000である。粘度平均重合度が200未満の場合には、得られる水性エマルジョンの皮膜の耐水性が不十分となる。粘度平均重合度は250以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましい。一方、粘度重合度が5000を超える場合、上記エチレン変性PVAを溶解した水溶液の粘度が高くなりすぎるため、水性エマルジョンの取り扱いが困難となる。粘度平均重合度は4500以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましく、3500以下であることがさらに好ましい。
本発明のエチレン変性PVAは、水−1−プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づく測定されるシンメトリー係数(W0.05h/2f)が下記式(1)を満たす。
0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1)
(式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)
HPLCカラムはスチレン−ジビニルベンゼン共重合体カラムを用い、水−1−プロパノール溶離液のグラジエント条件は後述する実施例で規定する。上記エチレン変性PVAのシンメトリー係数が0.70に満たない場合、エチレン変性PVA水溶液の粘度安定性、乳化重合安定性及び得られる水性エマルジョンの皮膜の耐水性が不十分となる。シンメトリー係数は0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.83以上であることがさらに好ましい。一方、シンメトリー係数が1.10を超える場合、エチレン変性PVA水溶液の透明性、乳化重合安定性及び得られる水性エマルジョンの流動性が不十分となる。シンメトリー係数は1.05以下であることが好ましく、1.00以下であることがより好ましく、0.99以下であることがさらに好ましい。ここで、シンメトリー係数は、高速液体クロマトグラフィーを用いて得られる測定ピークの対称性の度合いを示す係数である。図1にHPLC測定結果の一例を示す。図1にて、得られた測定ピークの5%高さ位置でのピーク幅(W0.05h)及び当該ピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離(f)を用いてシンメトリー係数(W0.05h/2f)を算出する。本明細書において、「ピークの5%高さ位置」とは、後記する条件で測定したHPLC分析の測定ピークのベースラインからのピーク高さの1/20の高さを意味する。また、本明細書において、fは、図1に示されるab間の距離、すなわち、後記する条件で測定したHPLC分析の測定ピークの高さ5%位置でのピーク開始点aから、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点bまでの距離(言い換えれば、ピーク5%高さ位置でのピーク幅をピーク頂点を含む垂線で二分したときのピークの立ち上がり側の距離)を意味する。図1中、横軸と平行な点線がベースラインを表し、aはピーク開始点を表す。W0.05h及びfは同じ単位を用いる。シンメトリー係数が1.0に近いほどピークの対称性が高いことを示す。
本発明におけるHPLC分析の具体的な測定条件は、以下のとおりである。
試料濃度:0.5mg/mL
試料溶媒:水/1−プロパノール=8/2[体積比]
注入量:20μL
検出器:Polymer Laboratories社製 「PL−EMD960」
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体カラム:Polymer Laboratories社製 「PLRP−S 4000Å Lot No.8M-PPS40-171-311(内径4.6mm×長さ5cm、充填剤粒径8μm)」
カラム温度:60℃
送液流量:総流量0.8mL/分
また、本発明のエチレン変性PVAのHPLC分析は、以下の手順で行う。移動相には極性の異なる種類の液体を用いる。高極性の移動相Aとして水、及び低極性の移動相Bとして1−プロパノールを使用する。サンプル注入前の時点においては、HPLCシステムのカラム内部は移動相Aで満たされた状態である。この状態でサンプルを注入する。そして、サンプル注入の直後から30分かけて移動相中における移動相Bの割合を一定速度(2.5vol%/分)で増加させる。サンプル注入から30分後(この時点で移動相は完全に移動相Bに置換される)から2分間は移動相Bを流す。
後述のように、エチレン変性PVAはエチレン変性ビニルエステル系樹脂をアルカリを用いてけん化反応させることで得られる。即ち、エチレン変性PVAは分子中にエチレン単位及びビニルエステル系単量体由来の低極性部位と、けん化後のビニルアルコール単位に由来する高極性部位を有している。そのためPVA分子中には低極性部位と高極性部位の分布が存在し、水溶液の界面活性等の物性に大きく影響する。ここで、HPLC分析によるシンメトリー係数は、エチレン変性PVA中の低極性部位と高極性部位の分布を判断できる尺度となり有用である。エチレン変性PVA中の低極性部位と高極性部位の分布は、けん化条件の選定によりある程度制御が可能である。
PVA中の低極性部位(ビニルエステル系単量体由来の部位)と高極性部位(ビニルアルコール単位)の分布を制御しシンメトリー係数を調整する方法としては、1)けん化工程でのポリビニルエステルと有機溶媒からなるけん化原液と、けん化触媒を含む溶液を混合し、ゲル化するまでのゲル化時間を制御する方法、2)けん化工程でよりランダムにビニルエステル部位のけん化を行う方法、3)PVA中の低極性部位と高極性部位との間で交換反応を起こし、よりランダムな存在状態にさせる方法等が挙げられる。1)の方法としては、例えば、けん化工程でのスタティックミキサーを用いた混合において、所望の混合状態と流動性を確保する様にせん断速度を適正化する方法が挙げられる。また、2)の方法としては、けん化工程でのポリビニルエステルと有機溶媒からなるけん化原液と、けん化触媒を含む溶液に所定量の水を添加し、直接けん化をする方法が挙げられる。さらに、3)の方法としては、粉体のPVAを100〜180℃程度の温度で所定時間熱処理する方法等が挙げられる。
<エチレン変性PVAの製造方法>
以下、本発明のエチレン変性PVAの製造方法について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示されるように、エチレン変性PVAの前駆体であるエチレン変性ポリビニルエステルのけん化工程においてスタティックミキサー2を用いて、特定の条件でけん化反応を行うことにより、本発明のエチレン変性PVAを得ることができる。
本発明のエチレン変性PVAは、例えば、エチレンとビニルエステル系単量体とを共重合する工程、及び、前記工程で得られたエチレン変性ポリビニルエステルをけん化する工程を有し、前記けん化工程において、けん化原料溶液とけん化触媒を含む溶液とをスタティックミキサーを用いて、せん断速度5〜90s-1にて混合する製造方法により製造することができる。工業的観点から好ましい重合方法は、溶液重合法、乳化重合法及び分散重合法である。重合操作にあたっては、回分法、半回分法及び連続法のいずれの重合方式を採用することも可能である。重合反応器としては、回分反応器、管型反応器、連続槽型反応器等を使用することができる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコールである。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールである。重合系における溶媒の使用量は、目的とするビニルアルコール重合体の粘度平均重合度に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよい。
重合に用いることができるビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等を挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲であればエチレン及びビニルエステル系単量体と共重合可能な他の単量体を共重合させても差し支えない。使用しうる他の単量体として、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
共重合に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択される。アゾ系開始剤は、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)である。過酸化物系開始剤は、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート系化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートである。過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を上記開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。レドックス系開始剤は、例えば上記の過酸化物系開始剤或いは酸化剤(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等)と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。重合開始剤の使用量は、重合触媒により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて選択される。例えば重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルあるいは過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。例えば、溶液重合において、重合開始剤を供給する場合、重合開始剤の供給速度は、特に限定されないが、0.1〜200L/hが好ましく、0.2〜150L/hがより好ましい。
重合温度は特に限定されないが、室温〜180℃程度が適当であり、好ましくは30℃〜150℃である。重合時に使用する溶媒の沸点以下で重合する際は減圧沸騰重合、常圧非沸騰重合のいずれの条件でも選択できる。
エチレンとビニルエステルとの共重合の重合条件は、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、特に限り限定されない。重合時における重合反応器の槽内エチレン圧力としては、0.05〜0.9MPaが好ましく、0.1〜0.7MPaがより好ましい。重合反応器出口での重合率は、特に限定されないが、10〜90%が好ましく、15〜85%がより好ましい。例えば、溶液重合において、ビニルエステル系単量体の供給速度は、特に限定されないが、100〜2000L/hが好ましく、150〜1500L/hがより好ましい。また、例えば、溶液重合において、重合溶媒の供給速度は、特に限定されないが、5〜800L/hが好ましく、10〜700L/hがより好ましい。
共重合に際して、得られるエチレン変性PVAの重合度を調節すること等を目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン;チオ酢酸等のチオカルボン酸;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられ、中でもアルデヒド及びケトンが好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするエチレン変性PVAの重合度に応じて決定されるが、一般に、使用されるビニルエステル系単量体に対して0.1〜10質量%が望ましい。
共重合工程で得られたポリビニルエステルを、有機溶媒中において、触媒の存在下で加アルコール分解ないし加水分解反応でけん化する。けん化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒;または、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒が挙げられる。けん化に用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノールまたはメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
けん化工程では、前記重合工程で得たエチレン変性ポリビニルエステルと有機溶媒とからなるけん化原料溶液と、けん化触媒を含む溶液とをスタティックミキサーで混合し、けん化反応を進行させる。例えば、図2、図3に示されるように、けん化反応装置の流路1内に、前記重合工程で得たエチレン変性ポリビニルエステルと有機溶媒とからなるけん化原料溶液を通流させ、その中心部にけん化触媒を含む溶液を導入する。そして、これらを、スタティックミキサーで混合した後、その混合物を、例えばベルト上等に載置してけん化反応を進行させる。けん化反応時の温度は、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、特に限り限定されないが、室温〜100℃程度が適当であり、好ましくは30℃〜90℃である。
このとき、けん化原料溶液の粘度は、特に限定されないが、0.01〜30Pa・sとすることが好ましい。けん化原料溶液の粘度を上記範囲にすることで、製造コストを抑えることができ、移送も容易であるため好ましい。粘度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法によって測定できる。測定機器としては、B型回転粘度計が挙げられる。
さらに、けん化原料溶液中のエチレン変性ポリビニルエステル濃度は、特に限定されないが、20〜60質量%とすることが好ましい。エチレン変性ポリビニルエステル濃度を上記範囲とすることで、製造コストを抑えることができ、移送も容易であるため好ましい。けん化原料溶液のフィード量は、特に限定されず、例えば5000L/h以下であってもよい。
一方、けん化触媒溶液中のけん化触媒濃度は、0.2〜10質量%とすることが好ましい。けん化触媒濃度を上記範囲とすることで、適度な反応速度でけん化反応が進行するため好ましい。けん化触媒溶液のフィード量は、特に限定されず、例えば50〜500L/hであってもよく、100〜450L/hであってもよい。
また、けん化原料溶液が通流する流路の中心部にけん化触媒溶液を導入する方法としては、例えば、図3に示すように、流路1に、その通流方向と直交する方向に、導入口5aを備えたけん化触媒導入管を貫通させて、その導入口5aを、流路2の中心部に通流方向下流側に向けて配置する方法が挙げられる。
更に、流路1の中心部にけん化触媒溶液を導入しているのは、混合効率を良好にするためである。なお、流路1の中心部から外れた位置にけん化触媒溶液を導入した場合、通流方向に直交する断面における各位置において濃度むらが生じる。なお、導入口5aの大きさは、特に限定されるものではないが、流路1の直径に対して、0.05〜0.5倍であることが望ましい。触媒導入機構をこのような構成にすることにより、けん化原料溶液の流れの乱れを抑制し、効率的に原料を混合することができる。
なお、けん化触媒溶液の導入方法は、図3に示す方法に限定されるものではなく、装置構成等に応じて適宜選択することができる。例えば、けん化触媒導入管5をL字状の片持ちとしたり、けん化触媒導入管5を十字状とし、その中心に導入口5aを設けたりすることもできる。
一方、スタティックミキサー2の種類や配設数(エレメント数)は、特に限定されるものではなく、流量、流速及び濃度等の条件に応じて適宜選択することができる。その際、スタティックミキサー2としては、1エレメントあたりの圧力損失が0.05MPa未満のものを使用することが好ましい。これにより、許容圧力が高い高価なポンプを使用しなくても、複数のエレメントを配設することが可能となり、良好な混合状態を達成することができる。
また、スタティックミキサー2の1エレメントあたりの圧力損失は、0.03MPa未満であることがより好ましく、これにより、スタティックミキサーの配設数を多くすることができるため、混合度をより高めることができる。ただし、スタティックミキサーの配設数(エレメント数)を多くすると、混合度合いが高くなる一方で圧力損失が大きくなるため、原料供給ポンプや供給配管の許容圧力に応じて、口径を選択することが望ましい。
スタティックミキサーの配設数、すなわち、エレメント数は通常5〜40であり、好ましくは6〜35である。エレメント数が5未満であると、けん化原料溶液とけん化触媒とが十分に混ざり合わず、けん化反応が十分に進行しない。一方、エレメント数が40を超えると、圧力損失が大きくなるため、原料供給のポンプの大型化が必要となり、生産コストが著しく高くなる傾向がある。
このようなスタティックミキサーを用いて、けん化原料溶液と導入されたけん化触媒とをせん断速度5〜90s-1にて混合する。本発明のエチレン変性PVAを得る製造方法では、特にせん断速度が5〜90s-1であることが重要であり、6〜70s-1であることが好ましく、7〜50s-1であることがより好ましい。せん断速度が5s-1未満であると、けん化原料溶液とけん化触媒とが十分に混ざり合わず、けん化反応が十分に進行しない。一方、せん断速度が90s-1を超えると、本発明の要件を満たすエチレン変性PVAが得られない。せん断速度は、けん化原料溶液の供給速度、スタティックミキサーのサイズ等で調整できる。せん断速度の測定方法は、後記する実施例において記載される方法と同様にして測定できる。
スタティックミキサー2で混合した混合物4は、所定の温度条件下で所定時間保持し、けん化反応を進行させる。例えば、図2に示されるベルト上を移動させながら、20〜50℃の温度条件下で保持する。このときの保持時間は、目的とするけん化度に応じて設定することができ、例えば平均けん化度を90モル%程度にしたいときは、30分程度保持すればよい。なお、本発明は、ベルト型反応器を使用するものに限定されるものではなく、ベルト型反応器以外に、例えばニーダー型反応器及び塔型反応器等にも適用することができる。
このけん化工程により、エチレン変性ポリビニルエステルにおけるビニルエステル単位の一部又は全部がけん化されて、ビニルアルコール単位となる。なお、前述したけん化工程により得られるエチレン変性PVAのけん化度は、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜設定することができる。
さらに、前述した重合工程及びけん化工程を行った後、必要に応じて、酢酸ナトリウム等の不純物を除去するための洗浄工程や乾燥工程を行ってもよい。
以上詳述したように、本発明のエチレン変性PVAを得るための製造方法においては、けん化原料溶液とけん化触媒溶液とを、特定のエレメント数を有するスタティックミキサーで混合し、さらに混合時のせん断速度を特定の範囲にすることにより、本発明のエチレン変性PVAを容易に製造することができる。また、スタティックミキサーは、混合熱が発生しないため、混合時にけん化反応が進行することがない。このため、製造されるエチレン変性PVAの品質を安定化することができる。
<水性エマルジョン>
本発明の水性エマルジョンは、上記エチレン変性PVAを含有する分散剤とエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体からなる分散質とを含有する水性エマルジョンである。ここで、エチレン性不飽和単量体の重合体は2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
上記エチレン性不飽和単量体としては、
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン;
塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリド等のハロゲン化オレフィン;
ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル;
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル;
アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの四級化物、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアクリルアミド系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体;
その他、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらは単独又は二種以上を混合して重合に用いられる。
上記エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体の中でも、ビニルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体及びジエン系単量体からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「特定単量体」ともいう)に由来する単量体単位(以下、「特定単位」ともいう)を有する重合体(以下、「特定重合体」ともいう)が好ましい。上記特定重合体における特定単位の含有率としては、当該重合体の全単量体単位に対して70質量%以上が好ましい。特定単位の含有率が70質量%未満であると、水性エマルジョンの乳化重合安定性が不足するおそれがある。さらに、特定単量体の中でも、ビニルエステル系単量体が特に好ましく、酢酸ビニルが最も好ましい。すなわち、特定単位がビニルエステル系単量体に由来することが好ましく、酢酸ビニルに由来することがより好ましい。上記特定重合体において、このビニルエステル系単量体に由来する単量体単位の含有率を当該重合体の全単量体単位に対して70質量%以上とすることが好ましく、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有率を当該重合体の全単量体単位に対して70質量%以上とすることがより好ましい。
本発明の水性エマルジョンを得る方法としては、例えば、(a)上記エチレン変性PVAを含有する分散剤の存在下でエチレン性不飽和単量体を乳化重合させる方法を挙げることができる。このようにして得られた水性エマルジョンは流動性及び皮膜の耐水性に優れる。
上記方法(a)において、重合系内へ上記乳化重合用分散剤を仕込む場合、その仕込み方や添加方法については特に制限はない。重合系内に乳化重合用分散剤を初期一括で添加する方法や、重合中に連続的に添加する方法を挙げることができる。なかでも、エチレン変性PVAのエマルジョン分散質へのグラフト率を高める観点から、重合系内に乳化重合用分散剤を初期一括で添加する方法が好ましい。
乳化重合時における、上記乳化重合用分散剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.2〜40質量部、より好ましくは0.3〜20質量部、更に好ましくは0.5〜15質量部である。本発明の乳化重合用分散剤の使用量が、0.2質量部未満の場合には、水性エマルジョンの分散質粒子の凝集が生じたり、重合安定性が低下する場合がある。また、本発明の乳化重合用分散剤の使用量が、40質量部を超える場合には、重合系の粘度が高くなりすぎることがあり、均一に重合を進行することができなかったり、重合熱の除熱が不十分であったりする場合がある。
上記乳化重合用分散剤を用いた乳化重合において、重合開始剤としては、乳化重合に通常用いられる水溶性の単独開始剤あるいは水溶性のレドックス系開始剤が適用される。例えば、単独開始剤としては、過酸化水素、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)等が挙げられる。レドックス系開始剤としては、過酸化物と金属イオンを組み合わせたものや、過酸化物、金属イオン、還元性物質を組み合わせたものが挙げられる。上記過酸化物としては、過酸化水素、クメンヒドロキシパーオキサイド、t−ブチルヒドロキシパーオキサイド等のヒドロキシパーオキサイド、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)、過酢酸t−ブチル、過酸エステル(過安息香酸t−ブチル)が挙げられる。上記金属イオンとしては、Fe2+、Cr2+、V2+、Co2+、Ti3+、Cu+等の1電子移動を受けることのできる金属イオンが挙げられる。上記還元性物質としては、ロンガリット、1−エチル−アスコルビン酸が挙げられる。
上記乳化重合における分散媒は、水を主成分とする水性媒体であることが好ましい。水を主成分とする水性媒体には、水と任意の割合で可溶な水溶性の有機溶媒(アルコール類、ケトン類等)を含んでいても構わない。ここで、「水を主成分とする水性媒体」とは水を50質量%以上含有する分散媒のことである。コスト及び環境負荷の観点から、分散媒は水を90質量%以上含有する水性媒体であることが好ましく、水であることがより好ましい。製造方法(a)において、乳化重合の開始の前に、上記エチレン変性PVAを加熱し、前記分散媒に溶解させたのち、冷却し、窒素置換を行うことが好ましい。前記加熱温度は90℃以上が好ましい。乳化重合の温度は、特に限定されないが、20〜85℃程度が好ましく、40〜80℃程度がより好ましい。
また、本発明の水性エマルジョンを得る他の方法としては、例えば、(b)エチレン性不飽和単量体を乳化重合させて水性エマルジョンを得てから、当該水性エマルジョンに上記エチレン変性PVAを含有する分散剤を添加する方法を挙げることもできる。このように、水性エマルジョンに上記エチレン変性PVAを含有する分散剤を添加して得られた本発明の水性エマルジョンは、皮膜の耐水性に優れる。また、水性エマルジョンに上記エチレン変性PVAを含有する分散剤を添加することで、水性エマルジョンの安定性や流動性をより向上させることができる。
水性エマルジョンに上記エチレン変性PVAを含有する分散剤を添加する方法としては、当該分散剤を水等の溶媒に溶解させた水溶液を水性エマルジョンに添加する方法を挙げることができる。このとき、水性エマルジョンを室温で撹拌しながら上記水溶液を添加する。また、上記エチレン変性PVAを含有する分散剤をそのまま添加する方法を挙げることもできる。上記エチレン変性PVAを含有する分散剤が粉末の場合、水性エマルジョンを撹拌しながら粉末を添加し、50〜85℃に加温する。上記分散剤の添加量は、エチレン性不飽和単量体を乳化重合させてなる水性エマルジョンの固形分に対して、通常、1〜40質量%であり、好ましくは2〜30質量%である。
上記方法(b)における乳化重合に際して、エチレン性不飽和単量体は上記(a)で説明したものを用いることができる。エチレン性不飽和単量体を乳化重合させる際に用いる分散媒も上記で説明したものを用いることができる。エチレン性不飽和単量体を乳化重合するに際して、上記エチレン変性PVAを含有する乳化重合用分散剤を用いても構わないし、従来公知のPVAを含有する乳化重合用分散剤を用いても構わない。
上記方法(a)及び(b)で得られる本発明の水性エマルジョンの固形分含有量は特に限定されず、通常、30〜60質量%である。
本発明の乳化重合用分散剤は、従来公知のPVAを分散剤に用いた乳化重合によって得られる水性エマルジョンと比較して、PVAの低極性部位によるエマルジョン分散質への吸着状態が安定しやすいため、有機粒子の水分散性及び重合安定性に優れる。さらには、水性エマルジョンから得られる皮膜の耐水性に優れる。
エチレン性不飽和単量体を乳化重合させて水性エマルジョンを得てから、当該水性エマルジョンに上記エチレン変性PVAを添加しても、皮膜の耐水性に優れる水性エマルジョンを得ることができる。
上記の方法で得られる本発明の水性エマルジョンはそのままの状態で用いることができるが、必要であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョンや、通常使用される添加剤を併用することができる。添加剤としては、例えば、有機溶剤(トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アルコール、ケトン、エステル、含ハロゲン系溶剤等)、架橋剤、界面活性剤、可塑剤、沈殿防止剤、増粘剤、流動性改良剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、充填剤、湿潤剤、着色剤、結合剤、保水剤等が挙げられる。
上記架橋剤としては、多価イソシアネート化合物が挙げられる。多価イソシアネート化合物は分子中に2個以上のイソシアネート基を有する。多価イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、水素化TDI、トリメチロールプロパン−TDIアダクト(例えばバイエル社の「Desmodur L」)、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、ポリオールに過剰のポリイソシアネートで予めポリマー化した末端基がイソシアネート基を持つプレポリマーを用いてもよい。これらは、単独で使用してもよく、二種類以上併用してもよい。
<接着剤>
上記本発明の水性エマルジョンを含有する接着剤も本発明の態様の一つである。このような本発明の接着剤の製造方法としては、上記エチレン変性PVA及び主としてエチレン性不飽和単量体からなる重合体を含有する主剤に、上記多価イソシアネート化合物を含む副剤を配合することによって製造することが好ましい。
多価イソシアネート化合物の含有量は、各種の状況に応じて適宜選定すればよく、固形分換算で上記主剤の固形分100質量部に対して、3〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。多価イソシアネート化合物の含有量が上記範囲にあることにより、接着性に優れる水性エマルジョンを安価に製造することができる。その他、本発明の水性エマルジョンは、例えば、塗料、繊維加工剤、紙加工剤、無機物バインダー、セメント混和剤、モルタルプライマー等広範な用途に利用される。さらには、得られた水性エマルジョンを噴霧乾燥等により粉末化した、いわゆる粉末エマルジョンとしても有効に利用される。
<乳化重合用分散剤>
本発明の乳化重合用分散剤は、上記本発明のエチレン変性PVAを含有してなり、乳化重合における分散剤として用いることで、優れた乳化重合安定性を発揮することができる。また、優れた流動性と耐水性とを共に有する水性エマルジョンを形成することができる。当該乳化重合用分散剤については、上述の当該水性エマルジョンにおける分散剤としてのエチレン変性PVAとして説明している。当該乳化重合用分散剤は、上記本発明のエチレン変性PVAのみからなっていてもよく、上記本発明のエチレン変性PVA以外にも、例えば、界面活性剤、上記本発明のエチレン変性PVA以外の他のPVA系重合体、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子等の他の成分を含んでいてもよい。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
[せん断速度の測定]
実施例及び比較例の製造方法において、せん断速度は、PVAc溶液のフィード量(m3/s)、スタティックミキサーの断面積(m2)及びスタティックミキサーの直径(m)から、次式により求められる。
せん断速度(s-1)=PVAc溶液のフィード量/(スタティックミキサーの断面積×スタティックミキサーの直径)
前記直径はスタティックミキサーの配管内径を意味し、前記断面積は前記配管内径を用いて算出した値を意味する。
下記製造例により得られたエチレン変性PVAの物性値について、以下の方法に従って測定した。
[エチレン変性PVAの粘度平均重合度]
各エチレン変性PVAの粘度平均重合度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法により求めた。
[エチレン変性PVAのけん化度]
各エチレン変性PVAのけん化度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法により求めた。
[エチレン変性PVAのHPLC測定条件]
後記する実施例及び比較例で得たエチレン変性PVAを、水を溶媒として濃度:0.5mg/mLに調整し、測定サンプルとした。HPLC装置として株式会社島津製作所製「LC−10AT」、HPLCカラムとして、Polymer Laboratories社製 「PLRP−S 4000Å(内径4.6mm×長さ5cm、充填剤粒径8μm)」を使用し、蒸発光散乱検出器としてPolymer Laboratories社製「PL−EMD960」)を使用した。分析は、以下の手順で行った。移動相Aとして水、及び移動相Bとして1−プロパノールを使用した。当初はHPLC装置内部を移動相Aで満たした状態である。この状態で上記サンプル(濃度:0.5mg/mL、溶媒:水/1−プロパノール=8/2[体積比]、注入量:20μL)を注入する。そして、サンプル注入直後から30分かけて移動相中の移動相Bの割合を一定速度(2.5vol%/分)で増加させた。30分後(この時点で移動相は完全に移動相Bに置換される)から2分間は移動相Bを流した。カラム温度は60℃であり、送液流量は総流量0.8mL/分であった。なお、ベースラインの決定は、エチレン変性PVAを溶解すること以外は前記分析サンプルの調製と同様の方法で準備した空試験液を分析して行った。
[シンメトリー係数の算定]
シンメトリー係数(W0.05h/2f)は、JIS K 0124(2011年)に基づいて水−1−プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定した。W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。即ち、上記条件で測定したHPLC分析の測定ピークの5%高さ位置(ベースラインからのピーク高さの1/20の高さ)でのピーク幅(W0.05h)、及び測定ピークの高さ5%位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、当該ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離(f)を用いてシンメトリー係数(W0.05h/2f)を算出した。図1にHPLC測定結果の一例を示す。
[エチレン変性PVA水溶液の透明性]
後記する実施例及び比較例で得たエチレン変性PVAを溶解濃度が10質量%になるように、所定量のPVAを蒸留水中に分散させた後、温度95℃で3時間加熱攪拌を行ってエチレン変性PVA水溶液を調製した。次いで60℃に冷却し、目視により以下の基準で評価した。
A:水溶液は無色透明であった。
B:水溶液は白濁していた。
C:一部不溶物が生じた。
[エチレン変性PVA水溶液の粘度安定性]
後記する実施例及び比較例で得たエチレン変性PVAを10質量%に調製し、PVA水溶液を得た。ついで、該PVA水溶液を300mlのガラス製ビーカーにいれ、20℃で1日間放置し、20℃放置後粘度(η1日)と20℃の初期粘度(η初期)との比(増粘倍率=η1日/η初期)を求め以下の基準で評価した。測定は、JIS K 6726(1994年)の回転粘度計法に準じてB型粘度計(回転数12rpm)を用い20℃で行った。
A:η1日/η初期が1以上10未満であった。
B:η1日/η初期が10以上50未満であった。
C:η1日/η初期が50以上又は、水溶液がゲル化した。
[水性エマルジョンの乳化重合安定性]
後記する実施例及び比較例におけるエマルジョン重合終了後に60メッシュフィルターにてろ過し、ろ過残分にて以下の基準で評価した。
A:ろ過残分が0.1g以下であった。
B:ろ過残分が0.1gを超え0.5g以下であった。
C:ろ過残分が0.5gを超え3.0g以下であった。
D:ろ過残分が3.0gを超え、又はエマルジョンを得られなかった。
[水性エマルジョンの流動性(水性エマルジョンの粘度の流動速度依存性)]
後記する実施例及び比較例で得られたポリ酢酸ビニルエマルジョンの固形分100質量部に対して、可塑剤としてジブチルフタレート5質量部を添加混合した。得られた水性エマルジョンの粘度を上述の方法により測定した。2rpmにおける粘度(η2rpm)及び20rpmにおける粘度(η20rpm)からその比(η2rpm/η20rpm)を求めた。この値が大きいほど、流動性が良好であると評価できる。
[水性エマルジョンの皮膜の耐水性]
本発明の実施例及び比較例で用いたPVAを分散剤に使用して得られたポリ酢酸ビニルエマルジョンを20℃、65%RHの温・湿度下で、PETフィルム上に流延し、1週間乾燥させて、前記PETフィルムから剥離して、厚さ450μmのフィルムを得た。そのフィルムの一部を採取して、105℃で2時間乾燥することで、乾燥前後の質量変化からフィルムの固形分(i)質量%を測定した。これとは別に、上記厚み450μmのフィルムからから、10cm×10cmの大きさに切り出し、質量(ii)を測定し、先のフィルム固形分(i)質量%より、フィルム質量補正を行った(ii’)。90℃の温水に30分浸漬した後室温まで冷却し、遠心分離機(日立工機株式会社製;SCR−20B)にて20000回転で30分間遠心分離し、得られた固形物を回収し、105℃で2時間乾燥して質量(iii)を測定した。ここで、浸漬前の固形分(i)及び浸漬し、遠心分離前後の質量(ii)及び質量(iii)より、次式より溶出率を算出し、以下の基準で皮膜の耐水性を評価した。
浸漬前のフィルム質量補正:(ii’)=(ii)×(i)/100
溶出率(%)=[(ii’)−(iii)]/(ii’)×100
A:55%未満
B:55%以上60%未満
C:60%以上65%未満
D:65%以上70%未満
E:70%以上
[実施例1]
(PVA−1の製造)
還流冷却器、原料供給ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた、重合容器(連続重合槽)と、還流冷却器、原料供給ライン、反応液取出ライン、温度計、窒素導入口、エチレン導入口、攪拌翼を備えた装置を用いた。連続重合槽には酢酸ビニル(680L/h)、メタノール(182L/h)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)の1%メタノール溶液(2.9L/h)を定量ポンプを用いて連続的に供給した。槽内エチレン圧力が0.15MPaになるように調整した。重合槽内の液面が一定になるように重合槽から重合液を連続的に取り出した。重合槽出口の重合率が30.0%になるよう調整した。重合槽の滞留時間は5時間であった。重合槽出口の温度は60℃であった。重合槽より重合液を回収し、回収した液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、酢酸ビニル系重合体のメタノール溶液(濃度32%)を得た。
前記共重合工程で得られたエチレン変性ポリ酢酸ビニル(PVAc)/メタノール溶液(濃度32質量%)をけん化原料溶液として4700L/hでフィードし、けん化触媒溶液として水酸化ナトリウム/メタノール溶液(濃度4質量%)を178L/hでフィードした。フィードされたけん化原料溶液及びけん化触媒溶液をエレメント数22個のスタティックミキサーを用いて、せん断速度10.6s-1の条件で混合した。なお、1エレメントあたりの圧力損失は0.04MPaであった。得られた混合物を、ベルト上に載置し、40℃の温度条件下で18分保持して、けん化反応を進行させた。その後、粉砕・乾燥を行い、エチレン変性ポリビニルアルコール(PVA−1)を得た。得られたPVA−1のエチレン単位の含有率は2モル%であり、粘度平均重合度は1700であり、けん化度は93モル%であり、式(1)で表されるシンメトリー係数は0.88であった。PVA−1水溶液の物性の評価結果を表2に示す。
(水性エマルジョンの製造)
還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素吹込口を供えた1Lガラス製重合容器に、イオン交換水258.1g及びPVA−1を17.6g仕込み95℃で完全に溶解し、PVA水溶液を得た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら酢酸ビニル25.2gを加え、60℃に昇温した後、5%過酸化水素6.9g/20%酒石酸3.0gのレドックス開始剤を添加して乳化重合を開始した。重合開始15分後から酢酸ビニル226.4gを3時間にわたって連続的に添加した後、5%過酸化水素0.9g/20%酒石酸0.3gを添加して重合を完結させ、固形分濃度49.5%のポリ酢酸ビニルエマルジョンを得た。当該エマルジョンにおいて、分散質である重合体の全単量体単位に対するビニルエステル(特定単位)の含有率は100質量%であった。得られたエマルジョンの物性の評価結果を表2に示す。
[実施例2〜6及び比較例1、2]
(PVA−2〜PVA−6、PVA−7及びPVA−8の製造、並びに評価)
エチレン、酢酸ビニル及びメタノールのフィード量、添加する開始剤の量、重合率等の重合条件、けん化時におけるエチレン変性PVAc溶液及びけん化触媒溶液のフィード量や濃度、スタティックミキサーのエレメント数、せん断速度等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により各種エチレン変性PVA(PVA−2〜PVA−8)を製造した。得られたPVA水溶液の物性の評価結果を表2に示す。
さらに、実施例1のPVA−1に代えて、表2に示した各種エチレン変性PVAを用いたこと以外は、実施例1と同様に水性エマルジョンを調製した。当該エマルジョンにおいて、分散質である重合体の全単量体単位に対するビニルエステル(特定単位)の含有率は100質量%であった。当該エマルジョンの物性について評価した。その結果を表2に示す。得られたエマルジョンの物性の評価結果を表2に示す。
[実施例7]
窒素吹き込み口、温度計、攪拌機を備えた5L耐圧性オートクレーブに、上記のようにして得られたPVA−1を28.4g、PVA−3を47.3g、イオン交換水を1451.2g、ロンガリットを0.85g、酢酸ナトリウムを0.5g、及び塩化第一鉄を0.04g仕込み、95℃で完全に溶解し、PVA水溶液を得た。その後、このPVA水溶液を60℃に冷却し、窒素置換を行った。次に酢酸ビニル1516.1gを仕込んだ後、エチレンを45kg/cm2まで加圧して導入し、4%過酸化水素水溶液100gを5時間かけて圧入し、60℃で乳化重合を行った。残存酢酸ビニル濃度が10%となったところで、エチレンを放出して、エチレン圧力20kg/cm2とし、3%過酸化水素水溶液5gを圧入し、重合を完結させた。冷却後、60メッシュのステンレス製金網を用いてろ過し、固形分濃度55.3%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンが得られた。当該エマルジョンにおいて、分散質である重合体の全単量体単位に対するビニルエステル(特定単位)の含有率は82質量%(エチレンの含有率は18質量%)であった。当該エマルジョンについて、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に合わせて示す。得られたエマルジョンの物性の評価結果を表2に示す。
Figure 0006446869
Figure 0006446869
表2に示されるように、実施例1〜7のエチレン変性PVAは、水溶液にした際の透明性及び粘度安定性に優れることがわかる。また、そのようなエチレン変性PVAを含有する乳化重合用分散剤は、優れた乳化重合安定性を発揮できることが分かる。さらに、そのようなエチレン変性PVAを用いて調製した水性エマルジョンは、優れた流動性と皮膜の耐水性とを両立できることが分かる。
一方、式(1)で表されるシンメトリー係数が高すぎる場合(比較例1)、エチレン変性PVA水溶液の透明性、乳化重合安定性及び得られる水性エマルジョンの皮膜の耐水性が低下することがわかる。また、上記シンメトリー係数が低すぎる場合(比較例2)、エチレン変性PVA水溶液の粘度安定性、乳化重合安定性及び得られる水性エマルジョンの流動性が低下することが分かる。
本発明のエチレン変性ポリビニルアルコールは、水溶液にした際の透明性及び粘度安定性に優れる。また、このようなエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する本発明の乳化重合用分散剤は、優れた乳化重合安定性を発揮することができる。さらに、このような本発明のエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する水性エマルジョンは、優れた流動性と皮膜の耐水性とを両立させることができる。従って、当該水性エマルジョンは、各種接着剤、塗料、繊維加工剤、紙加工剤、無機物バインダー、セメント混和剤、モルタルプライマー等に好適に用いられる。
1 流路
2 スタティックミキサー
3 ベルト
4 混合物
5 けん化触媒導入管
5a 導入口
a ピーク開始点
b ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点

Claims (14)

  1. エチレン単位の含有率が2〜8.5モル%であり、けん化度が88〜98.5モル%であり、粘度平均重合度が400〜3500であり、水−1−プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が下記式(1)を満たすエチレン変性ポリビニルアルコール。
    0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1)
    (式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)
  2. シンメトリー係数が下記式(1)を満たす、請求項1に記載のエチレン変性ポリビニルアルコール。
    0.81≦W0.05h/2f≦1.03 (1)
    (式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)
  3. 請求項1又は2に記載のエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する分散剤と、エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体からなる分散質と、を含有する水性エマルジョン。
  4. 前記エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体が、ビニルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体及びジエン系単量体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する特定単位を有する重合体であり、
    この重合体の全単量体単位に対する上記特定単位の含有率が70質量%以上である請求項3に記載の水性エマルジョン。
  5. さらに多価イソシアネート化合物を含有する請求項3又は4に記載の水性エマルジョン。
  6. 請求項5に記載の水性エマルジョンを含有する接着剤。
  7. 請求項1又は2に記載のエチレン変性ポリビニルアルコールを含有する乳化重合用分散剤。
  8. エチレンとビニルエステル系単量体とを共重合する工程、及び、前記工程で得られたエチレン変性ポリビニルエステルのけん化工程を含み、前記けん化工程において、前記エチレン変性ポリビニルエステルを含むけん化原料溶液と、けん化触媒を含む溶液とをスタティックミキサーを用いて、せん断速度5〜90s-1にて混合し、前記スタティックミキサーのエレメント数が、5〜40である、請求項1に記載されたエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
  9. 前記スタティックミキサーの1エレメントあたりの圧力損失が0.05MPa未満である、請求項に記載のエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
  10. 前記けん化工程において、けん化反応温度が、室温から100℃の範囲内である、請求項8又は9に記載のエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
  11. 前記けん化原料溶液中のエチレン変性ポリビニルエステル濃度が、20〜60質量%である、請求項8〜10のいずれかに記載のエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
  12. 前記けん化原料溶液のフィード量が、5000L/h以下である、請求項8〜10のいずれかに記載のエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
  13. 前記けん化触媒を含む溶液中のけん化触媒濃度が、0.2〜10質量%である、請求項8〜12のいずれかに記載のエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
  14. 前記けん化触媒を含む溶液のフィード量が、50〜500L/hである、請求項8〜13のいずれかに記載のエチレン変性ポリビニルアルコールの製造方法。
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