JP6436807B2 - 保護層用塗工液、保護層及び感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
また、無機フィラーは、耐ブロッキング性向上、感熱記録媒体の強度向上のために含有させるものであり、カオリンやシリカ、炭酸カルシウムなどが主に用いられている。
従って、このような感熱記録媒体の保護層には、感熱発色層の保護能力だけでなく、印刷特性も求められる。
また、本発明では、前記保護層用塗工液を塗工して得られた層を少なくとも1層有する感熱記録媒体をも提供するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で用いられるAA化PVA系樹脂(A)について説明する。
本発明に用いられるAA化PVA系樹脂(A)は、PVA系樹脂の主鎖に直接、あるいは酸素原子や連結基を介してアセトアセチル基(AA基)が結合したもので、例えば一般式(4)で表されるAA基を有する構造単位を含むポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。なお、かかるAA化PVA系樹脂(A)は、AA基を有する構造単位以外にビニルアルコール構造単位を有し、更に未ケン化部分のビニルエステル構造単位を有する。
また、20℃における4質量%水溶液粘度は(JIS K6726に準拠)は、通常3〜100mPa・s、好ましくは4〜50mPa・s、特に好ましくは5〜20mPa・sである。
かかる平均重合度や4質量%水溶液粘度が小さすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に大きすぎると、水溶液として使用した場合に、その粘度が高くなりすぎ、基材への塗工が困難になるなど、各種工程への適用が難しくなる傾向がある。
かかるAA化PVA系樹脂(A)以外のPVA系樹脂としては、未変性のPVAや、前述のビニルエステル系モノマーと共重合性を有する各種モノマーを共重合して得られた各種変性PVAを挙げることができる。
AA化PVA系樹脂(A)には、耐水性向上のために架橋剤(B)を配合することが必要で、PVA系樹脂に一般的に用いられているグリオキザールなどのアルデヒド化合物、ヒドラジンの有機塩類、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン化合物、グリオキシル酸の金属塩、メチロール化メラミンなどのメチロール化合物、塩基性塩化ジルコニウムなどの金属化合物が挙げられ、好ましくはグリオキシル酸の金属塩であり、特に好ましくはグリオキシル酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
かかる架橋剤の含有量は、架橋剤(B)の種類にもよるが、AA化PVA系樹脂(A)100重量部に対して通常、0.5〜30重量部、好ましく1〜20重量部、更に好ましくは2〜15重量部である。また、グリオキシル酸の金属塩を用いた場合の含有量はAA化PVA系樹脂(A)100重量部に対して通常、0.5〜30重量部、好ましく1〜20重量部、更に好ましくは2〜15重量部である。かかる架橋剤(B)の含有量が多すぎても少なすぎても耐水性が低下する傾向がある。
本発明で用いられる無機フィラー(C)としては、例えば、焼成カオリン、タルク、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、無定形シリカ等が挙げられ、好ましくは耐油性の点でカオリンが用いられる。
無機フィラー(C)の含有量としては、AA化PVA系樹脂(A)100重量部に対して、通常50〜300重量部、好ましくは50〜200重量部である。無機フィラー(C)の含有量が多すぎるとバインダー強度の低下となる傾向があり、少なすぎると耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
本発明で用いられる化合物(D)は下記一般式(1)で表される。
置換基の位置は、1置換の場合は、R3の場所が好ましく、2置換の場合は、R2とR4の場所、3置換の場合は、R1とR3とR5の場所、4置換の場合はR3が水素原子であることが好ましい。
炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、直鎖構造だけでなく、イソ、ターシャルなどの分岐構造であっても、環状構造であってもよい。好ましくは、ブチル基であり、特に好ましくはイソブチル基である。
また、炭素−炭素結合及びエーテル結合の少なくとも一方を有していれば、それ以外の結合鎖を有していてもよく、例えば−COO−、−O−などの結合鎖が挙げられる。好ましくは、下記一般式(2)で示される結合鎖を有する化合物である。
また、Mは一価の金属イオンであり、かかる金属としては、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられ、好ましくはLi、Na、Kであり、特に好ましくは、他の物性に与える影響が小さい点で、Naである。
基数(デイビス)の値は、−SO3Naは38.7、−COO−は2.4、−O−は1.3、−CH2CH2O−は0.33、−CH2−は−0.475、=CH―は―0.475、−CH2CH2CH2O―は―0.15を用いて、算出するものである。
上記式のnは通常1〜20で、好ましくは3〜10、特に好ましくは5〜9である。かかるnが大きすぎると親水性が強くなりすぎ、インキ密着性が低下する傾向がある。
上記化合物(D)を分散剤として用いたエマルジョン(d)について説明する。
本発明で用いられるエマルジョンは、分散剤として上記の一般式(1)で示される化合物(D)を含有し、分散質として重合体を含有するものである。かかるエマルジョン(d)を製造する方法としては、ア)上記化合物(D)を乳化剤として単量体を乳化重合する方法、イ)重合体溶液を上記化合物(D)の存在下で後乳化する方法、ウ)任意の方法で得られたエマルジョンに上記化合物(D)を添加してより安定なエマルジョンとする方法が挙げられる。
さらに、オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等を、アクリルアミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等をそれぞれ挙げることができる。
中でもインキ密着性の点でアクリル酸またはそのエステル系モノマー、アクリル系モノマーが好ましい。
エマルジョン(d)を得るにあたっては、乳化重合、後乳化方法等の方法があり、前者の乳化重合を実施するに当たっては、i)水、分散剤(界面活性剤)及び重合触媒の存在下にエチレン性不飽和単量体及び/又はジエン系単量体を一時又は連続的に添加して、加熱、撹拌する如き通常の乳化重合法、ii)水、分散剤(界面活性剤)及び重合触媒の存在下に、エチレン性不飽和単量体及び/又はジエン系単量体を分散剤(界面活性剤)の水溶液に混合分散した分散液(プレエマルジョン)を一時又は連続的に添加して、加熱、撹拌する如き乳化重合法が実施し得る。
重合開始剤の添加方法としては、特に制限はなく、初期に一括添加する方法や重合の経過に伴って連続的に添加する方法等を採用することができる。
かくして得られるエマルジョン(d)の固形分濃度は、通常、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜60重量%である。かかる濃度が低すぎると乾燥に時間がかかり効率が低下する傾向があり、高すぎると塗工が困難になる傾向がある。
また、エマルジョン(d)中の樹脂粒子の平均粒子径は、通常200〜1000nm、特に300〜800nmであることが好ましい。なお、この場合の平均粒子径は、ヒストグラム法にて算出した数平均粒子径(Dn)を指すものであり、例えば、大塚電子株式会社製ダイナミック光散乱光度計『DLS−700』を用いて測定することができる。
かかる含有量が少なすぎると本発明の効果が得られにくくなる傾向があり、多すぎると塗工液の他の物性に影響が出る傾向がある。
本発明の保護層用塗工液は、AA化PVA系樹脂(A)、架橋剤(B)、無機フィラー(C)及び化合物(D)を含有するものであり、好ましくは、AA化PVA系樹脂(A)を水溶液とし、各種成分を配合して用いられる。かかるAA化PVA系樹脂(A)水溶液の濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。
また、塗工液中のAA化PVA系樹脂(A)の含有割合は、塗工液全体に対して、通常0.5〜30重量%であり、好ましくは1〜15重量%とすることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、保護層としての効果を充分に発揮できない傾向があり、逆に多すぎると塗工液の粘度が高くなるため、塗工が困難になる傾向がある。
熱可塑性樹脂としてはアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物などが挙げられ、中でもインキ密着性の点からアクリル系樹脂が好ましい。
上記の熱可塑性樹脂の配合量は、塗工液の固形分全体の通常10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。
該顔料としては、例えば、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、デンプン粒子等の有機顔料が挙げられ、その他の添加剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、蛍光染料、剥離剤、酸化防止剤などが挙げられる。
配合方法としては、各成分を水溶液又は水分散液とする方法、固体状で混合した後に水で溶解又は分散させる方法、ある成分の水溶液又は水分散液に固体状で配合する方法などが挙げられる。好ましくは、各成分を水溶液又は水分散液とする方法である。
各成分を水溶液又は水分散液とする際の濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%とすることが好ましく、濃度が低すぎると乾燥に時間がかかり効率が低下する傾向があり、高すぎると塗工が困難となる傾向がある。
(ア)1成分ずつ順番に配合する方法
(イ)任意の2〜3成分を混合した後、残りの成分を順次又は一括にて配合する方法
(ウ)すべての成分を同時に配合する方法
(エ)架橋反応の進行のスピードに合わせて架橋剤(B)を一番最後に配合する方法
かかる保護層の厚みは、通常0.01〜100μm、好ましくは0.05〜20μm、特に好ましくは0.1〜10μmである。
感熱記録媒体には、基材上に感熱発色層が設けられるのであるが、かかる感熱発色層は、バインダー(例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類、ラテックス類等)にさらに発色性物質と顕色剤を配合した水溶液(発色液)を得た後、該水溶液を基材に塗工することにより形成させることができる。
得られる感熱記録用媒体は、基材/(アンダーコート層)/感熱発色層/保護層の層構成となる。
本発明の感熱記録用媒体は、基材上に任意の感熱発色層を有し、その上に本発明の保護層用塗工液を塗工して乾燥したものである。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
〔AA化PVA系樹脂(A)の作製〕
加温可能な撹拌機を備えた反応缶に、原料PVA(ケン化度99.2モル%、平均重合度1200)100部を仕込んだ後、酢酸20部を入れ、膨潤させ、回転数20rpmで撹拌しながら、50℃に昇温後、ジケテン14部を5時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後メタノール500部で3回洗浄した後60℃で、10時間乾燥し、アセトアセチル基含有量5モル%のAA化PVA系樹脂(A)を得た。ケン化度、平均重合度は原料PVAに準ずる。
無機フィラー(C)としてのカオリン(白石カルシウム社製『カオグロス90』)50部を水50部に投入し、ホモジナイザー(TKロボミクス プライミクス社製)にて、2000rpmで30分間攪拌し、カオリンを水に分散させた。レーザー回折装置(堀場製作所製『Partica LA−950V2』)を用い、カオリンが約0.2μmに分散されていることを確認した後、更に水で希釈し、カオリンの10%水分散液を得た。
上記で得られたAA化PVA系樹脂(A)の10%水溶液100部と、上記で得られたカオリンの10%水分散液50部と架橋剤(B)としてのグリオキシル酸ナトリウム10%水溶液6部と下記式(5)で表される化合物(D)10%水溶液40部を混合し、塗工液とした。
感熱記録媒体の保護層として評価する代わりに、市販のコピー用紙の表面にコーティング層を形成したコーティング紙によって評価した。
市販のコピー用紙に上記で得られた塗工液をクリアランス50μmのアプリケーターで塗工し、105℃で5分間乾燥させた後、23℃、50%RHで3日間乾燥させ、コーティング紙を得た。
なお、上記評価方法においては、感熱記録層を有しないコーティング紙を用いているが、本発明において重要であるのは保護層とインキとの密着性であるため、感熱記録層の有無は本発明の効果に影響を及ぼさないものであり、上記評価方法で充分に本発明の効果は確認できるものである。
上記で得られたコーティング紙に、有機溶剤系インキであるUVオフセットインキ(DICグラフィックス社製『ダイキュア・アビリオ・プロセス・EP墨』)で20mm×100mmの範囲に印刷し、紫外線照射装置にて、下記の条件で紫外線を照射し、インキを硬化させた。
装置:紫外線照射装置(アイグラフィックス社)
ランプ:メタルハライド
照射量:1140mW/cm2
照射時間:1秒
印刷部分にセロハンテープ{ニチバン社製 セロテープ(登録商標)No.405 幅24mm}を貼り、剥がした時のインキの剥がれた面積の割合を目視で観察し、下記の通り評価した。結果を表1に示す。
○:インキの剥がれ無し又は基材(紙)が剥がれた
×:インキが塗工面から剥がれた
〔エマルジョン(d)の作製〕
予め容器に、水20部、実施例1で用いた化合物(D)1.0部、ノニオン性界面活性剤(日本乳化剤株式会社製 ニューコール568)0.2部、スチレン26部、2−メチルヘキシルアクリレート19部、メタクリル酸0.9部、80%アクリルアミド0.6部を秤量し、単量体乳化混合液を調製した。
つぎに、温度計、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に投入し、水25部、リン酸水素二ナトリウム0.1部、実施例1で用いた化合物(D)0.8部、ノニオン性界面活性剤(日本乳化剤株式会社製 ニューコール568)0.3部を溶解した。
実施例1において、化合物(D)を配合しなかった以外は同様に行い、塗工液及びコーティング紙を作製し、実施例1と同様に評価した。
結果を表1に示す。
Claims (4)
- 請求項1又は2記載の保護層塗工液を基材上に塗布、乾燥してなることを特徴とする保護層。
- 請求項3記載の保護層を少なくとも1層有することを特徴とする感熱記録媒体。
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