JP7163637B2 - ポリビニルアルコール系樹脂、樹脂組成物、水性塗工液、保護層及び感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
かかる水溶性を利用し、溶剤不要の水性塗工液として、感熱記録媒体の保護層等に好適に用いられている。
しかしながら、PVA系樹脂は水溶性であるため耐水性に乏しいため、水にさらされたり、高湿度下に置かれたりするような用途に適用する際にはPVA系樹脂の耐水性が必要であり、そのため、PVA系樹脂の耐水化の検討が種々行われている。
中でも、高い反応性を有することから、カルボキシル基を含有するPVA系樹脂が用いられている。また、カルボキシル基含有PVA系樹脂は、エポキシ系化合物と反応するため、架橋剤としてポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂が広く用いられている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
そこで、本発明は、このような背景下において、架橋剤と反応させて得られる架橋構造体の耐水性に優れるPVA系樹脂を提供することを目的とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるPVA系樹脂は、ラクトン環構造とカルボキシル基とを特定比率で含有するものである。
ラクトン環変性率(モル%)/カルボキシル基変性率(モル%)の値は0.3~2、好ましくは0.5~1.9、更に好ましくは0.7~1.7、殊には1.0~1.5である。かかる比率はこれまでのカルボキシル基含有PVA系樹脂と比べても大きな数値となるものである。かかる比率が小さすぎると親水性が高く、架橋剤との反応性が悪くなり、耐水性が低下する傾向があり、大きすぎると架橋点が少なくなり耐水性が低下する傾向がある。
中でも、本発明の効果が得られやすい点から、炭素数4のγ-ブチロラクトンが好ましい。
即ち、1H-NMR測定において、溶媒:重水、測定温度50℃、積算回数16回、400Hzで、Bruker社製の「AVANCE III HD」を用いて測定する。
上記カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、等)、又はエチレン性不飽和カルボン酸モノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、等)、又はエチレン性不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸、等)、あるいは(メタ)アクリル酸等の単量体、及びこれらの塩が挙げられ、エチレン性不飽和カルボン酸モノエステル又はその塩が好適に使用される。
中でも、ビニルエステル単量体との反応性の点でエチレン性不飽和カルボン酸モノエステルが好ましく、更にはマレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルが好ましく、特にはマレイン酸モノアルキルエステルが好ましい。
酸の添加量としては、ケン化触媒の投入量や目標のケン化度により変化するが、PVA系樹脂100重量部に対して、例えば、0.01~10重量部、好ましくは0.05~5重量部、特に好ましくは0.1~3重量部である。
酸としては、例えば、硝酸、塩酸、リン酸などが用いられるが、安全性の点から酢酸が好ましい。
また、酸を添加した後のpHは、10.0以下が好ましく、より好ましくは1.0~7.0、さらに好ましくは1.5~5.0であり、特に好ましくは2.0~4.5である。かかるpHが高すぎると本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
本発明においては、上記カルボキシル基およびラクトン環を含有するPVA系樹脂と架橋剤を含有して樹脂組成物とする。
本発明で用いられる架橋剤としては、例えば、ポオキサゾリン基を有する化合物、グリオキザール誘導体、メチロール誘導体、エピクロルヒドリン誘導体などのエポキシ化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン、ヒドラジド誘導体、カルボジイミド誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性の点で、エポキシ化合物が好ましく、更にはエピクロルヒドリン誘導体が特に好ましい。更に、エピクロルヒドリン誘導体としては、ポリアミドポリアミンにエピクロロヒドリンを付加した化合物(以下、ポリアミドポリアミン-エピクロロヒドリン系樹脂と表記することがある。)が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記のカルボキシル基およびラクトン環を含有するPVA系樹脂と架橋剤を含有するものである。
本発明の樹脂組成物における、架橋剤の含有量はカルボキシル基およびラクトン環を含有するPVA系樹脂100重量部に対して、0.5~50重量部であることが好ましく、特には1~25重量部、更には2~15重量部であることが好ましい。
かかる架橋剤の含有量が多すぎても少なすぎても耐水性が低下する傾向がある。
本発明の水性塗工液は、上記の樹脂組成物及び水を含有するものである。
かかる水性塗工液の固形分濃度は、通常0.1~50重量%、好ましくは1~20重量%とすることが好ましく、かかる濃度が低すぎると、本発明の効果を充分に発揮できない傾向があり、逆に高すぎると塗工液の粘度が高くなるため、塗工が困難になる傾向がある。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物などが挙げられ、中でも耐水性の点からアクリル系樹脂が好ましい。
上記の熱可塑性樹脂の配合量は、塗工液の固形分全体の通常10~70重量%、好ましくは20~60重量%である。
上記顔料としては、例えば、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、デンプン粒子等の有機顔料が挙げられ、その他の添加剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、蛍光染料、剥離剤、酸化防止剤などが挙げられる。
本発明の保護層は、上記の水性塗工液から形成されるものである。かかる水性塗工液を、各種基材などに塗工して水分を除去することにより、保護層となる。水分を除去する場合には、通常水性塗工液を塗工した後に乾燥するわけであるが、かかる乾燥条件としては、通常は5~150℃、さらには30~120℃、特には50~110℃の温度条件で行うことが好ましく、0.01~60分、さらには0.1~30分、特には0.2~20分の乾燥時間で行うことが好ましい。
かかる保護層の厚みは、通常0.01~100μm、好ましくは0.05~20μm、特に好ましくは0.1~10μmである。かかる厚みが厚すぎると乾燥に時間がかかり、不効率となる傾向があり、薄すぎると耐水性が低下する傾向がある。
塗工量としては、通常0.1~20g/m2、好ましくは0.2~15g/m2、特に好ましくは0.3~10g/m2である。
感熱記録媒体には、基材上に感熱発色層が設けられるのであるが、かかる感熱発色層は、バインダー(例えば、PVA系樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類、ラテックス類等)にさらに発色性物質と顕色剤を配合した水溶液(発色液)を得た後、該水溶液を基材に塗工することにより形成させることができる。
この時の発色性物質や顕色剤は水溶液中ではブロッキングするのでビーズミル、ボールミル、ビスコミル等で0.1~5μm程度に粉砕される。
本発明の感熱記録媒体は、基材上に任意の感熱発色層を有し、その上に本発明の保護層用の水性塗工液を塗工して乾燥したものである。
得られる感熱記録媒体は、基材/(アンダーコート層)/感熱発色層/保護層の層構成となる。他に中間層、バック層などを設けてもよい。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
〔カルボキシル基およびラクトン環を含有するPVA系樹脂(1)の作製〕
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル100部、メタノール26部、マレイン酸モノメチル0.1部(酢酸ビニル総量に対して0.09モル%)を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で60℃まで上昇させてから、重合触媒としてt-ブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が1時間になる温度が65℃)を0.001モル%(酢酸ビニル総量に対して)投入し、重合を開始した。重合開始直後にマレイン酸モノメチル2.2部(酢酸ビニル総量に対して2モル%)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート0.008モル%(酢酸ビニル総量に対して)を重合速度に合わせて連続追加し、酢酸ビニルの重合率が73%となった時点で、4-メトキシフェノールを0.01部及び希釈・冷却用メタノールを58部添加して重合を終了した。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して2ppmであった。
続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整して水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して30ミリモルとなる割合で混合し、温度を40~50℃にてケン化反応を行った。ケン化反応により固化した樹脂をカットし、70℃で乾燥し、カルボキシル基およびラクトン環を含有するPVA系樹脂(1)を得た。
上記で得られたカルボキシル基およびラクトン環を含有するPVA系樹脂(1)の10%水溶液100部を作製し、酢酸を加えて、pHを2.6にした、pH調整済みPVA系樹脂水溶液を得た。
かかる水溶液を乾燥させ、カルボキシル基変性率0.90モル%、ラクトン環変性率1.10モル%のPVA系樹脂(1a)を得た。酢酸ビニル成分のケン化度は94モル%、平均重合度は1700であった。
下記の条件でNMR測定を行って、PVA系樹脂(1a)のラクトン環の変性率及びカルボキシル基の変性率を測定した。
1H-NMR測定において、溶媒として重水を用い、PVA系樹脂(1a)の5重量%重水溶液を調整し、測定温度50℃、積算回数16回で、Bruker社製の「AVANCE III HD」を用いて測定した。
結果を表1に示す。
PVA系樹脂(1a)水溶液100部に、ポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂(四日市合成社製 EPA-SK01)の10%水溶液10部を加えて、水性塗工液として、10cm×10cmの型枠が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、水性塗工液を流しいれて、23℃、50%RHで3日間乾燥させ、膜厚100μmのキャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムについて、以下の評価を行った。
得られたキャストフィルムを70℃、5分間熱処理をした後、80℃の水に1時間浸漬して、フィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X1)および水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X2)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。結果を表1に示す。
溶出率(%)=[(X1―X2)/X1]×100
実施例1において、PVA系樹脂として、pHを4.0とした以外は実施例1と同様にし、カルボキシル基変性率0.92モル%、ラクトン環変性率1.08モル%のPVA系樹脂(1b)を得た。得られたPVA系樹脂(1b)を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、PVA系樹脂として、pHを4.1とした以外は実施例1と同様にし、カルボキシル基変性率0.94モル%、ラクトン環変性率1.06モル%のPVA系樹脂(1c)を得た。得られたPVA系樹脂(1c)を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、PVA系樹脂として、pHを5.0とした以外は実施例1と同様にし、カルボキシル基変性率1.06モル%、ラクトン環変性率0.94モル%のPVA系樹脂(1d)を得た。得られたPVA系樹脂(1d)を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、PVA系樹脂として、水酸化ナトリウムを加えて、pHを9とした以外は実施例1と同様にし、カルボキシル基変性率1.56モル%、ラクトン環変性率0.44モルモル%のPVA系樹脂(1e)を得た。得られたPVA系樹脂(1e)を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (6)
- カルボキシル基およびラクトン環を含有するポリビニルアルコール系樹脂であって、カルボキシル基の変性率が0.1~20モル%、ラクトン環の変性率が0.1~20モル%であり、ラクトン環変性率(モル%)/カルボキシル基変性率(モル%)の値が、0.3~2であるポリビニルアルコール系樹脂、及び架橋剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
- 前記ラクトン環の炭素数が3~10であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物脂。
- ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が、60~100モル%であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- 請求項1~3いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする水性塗工液。
- 請求項4記載の水性塗工液から形成されることを特徴とする保護層。
- 請求項5記載の保護層を少なくとも1層有することを特徴とする感熱記録媒体。
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