JP2011084738A - グリオキシル酸塩組成物、それを含有する樹脂組成物、およびその架橋高分子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】グリオキシル酸のアルカリ金属塩、および/またはアルカリ土類金属塩(A)を主成分とし、グリオキシル酸亜鉛(B)を副成分として含有し、グリオキシル酸塩組成物によってアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂が架橋されてなる架橋高分子であり架橋高分子を含有する紙である。
【選択図】なし
Description
中でも、種々の架橋剤を用いることができ、反応性に優れるアセトアセチル基を側鎖に有する変性PVA系樹脂としてアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)が知られている。
さらに、PVA系樹脂は親水性素材に対する親和性・接着性に優れることから、繊維製品や紙製品の表面処理剤として広く用いられており、耐水性が求められる場合には架橋剤が併用されるが、これらの製品は人の手や皮膚に直接に触れる機会が多いことから、特に抗菌性であることが求めらる用途である。
また、架橋高分子中に取り込まれたグリオキシル酸亜鉛(B)に由来するカルボン酸亜鉛基により、抗菌性が得られるものと推測される。
中でも、PVA系樹脂の架橋剤として好適であり、特にAA化PVA系樹脂の架橋剤として用いることによって、耐水性に優れ、さらに抗菌性を有する架橋高分子が得られる。
さらに、グリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩(A)とグリオキシル酸亜鉛(B)の配合比を最適化すれば、各々を単独で用いた場合よりも優れた耐水性を得ることが可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の組成物中に主成分として含有されるグリオキシル酸アルカリ金属塩、およびアルカリ土類金属塩について説明する。
かかるグリオキシル酸アルカリ(土類)金属塩(A)は、分子中にアルデヒド基を有志、さらにカルボン酸基を介してアルカリ(土類)金属がイオン結合しているものである。
アルカリ金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム、カルシウムなどを挙げることができる。
本発明においては、グリオキシル酸アルカリ(土類)金属塩(A)は単一であっても、複数のものの混合物であっても良い。
なお、アルカリ土類金属は2価の陽イオンとなるため、一つの金属イオンに対しグリオキシル酸イオン2分子が結合しうるが、その一つが他のイオン、例えば他のカルボン酸イオンや水酸化物イオンであってもよい。
従って、本発明の組成物に用いるグリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩(A)としては、水への溶解度が小さいものが好ましく、具体的には、23℃における水への溶解度が0.01〜100%、特に0.1〜50%、さらに0.5〜20%のものが好ましく用いられる。例えば、グリオキシル酸ナトリウムの溶解度は約17%であり、グリオキシル酸カルシウムの溶解度は約0.7%である。
特に、グリオキシル酸との中和反応に用いるアルカリ(土類)金属水酸化物の水溶性が高い場合は(1)の方法が、また得られるグリオキシル酸のアルカリ金属塩、あるいはアルカリ土類金属塩の水溶性が低く、酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩の水溶性が高い場合は(2)の方法が好ましく用いられる。
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸のアルカリ金属塩、あるいはアルカリ土類金属塩を得ることができる。なお、(2)の方法において用いられるグリオキシル酸より解離定数が大きい酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
次に、本発明の組成物中に副成分として含有されるグリオキシル酸亜鉛について説明する。
かかるグリオキシル酸亜鉛は、分子中にアルデヒド基を有し、さらにカルボン酸基を介して亜鉛がイオン結合しているものである。
なお、亜鉛は2価の陽イオンとなるため、一つの亜鉛イオンに対しグリオキシル酸イオン2分子が結合しうるが、その一つが他のイオン、例えば他のカルボン酸イオンや水酸化物イオンであってもよい。
本発明で用いられるグリオキシル酸亜鉛の製造法は、上述のグリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩の製造法と同様の方法で製造することができ、その不純物や構造等についても、アルカリ(土類)金属塩と同様である。
本発明のグリオキシル酸塩組成物は、上述のグリオキシル酸アルカリ(土類)金属塩(A)を主成分とし、グリオキシル酸亜鉛(B)を副成分として含有するものであるが、これらの含有比率(A/B)(重量比)は、通常、2/1〜2000/1であり、特に3/1〜1000/1、さらに5/1〜200/1の範囲が好適に用いられる。
かかる含有比率において、グリオキシル酸アルカリ(土類)金属塩(A)の含有量が少なすぎると、架橋剤としての特性が不充分となり、例えば、PVA系樹脂の架橋剤として用いた場合に、得られた架橋高分子の耐水性が不足する場合があり、また、グリオキシル酸亜鉛(B)の含有比率が小さい場合には、得られた架橋高分子の抗菌性が不充分となる場合がある。
次に、本発明のグリオキシル酸塩組成物を含有する樹脂組成物、およびかかる樹脂組成物から得られる架橋高分子について説明する。
従って、本発明のグリオキシル酸塩組成物は、PVA系樹脂、特にAA化PVA系樹脂と組み合わせることによって、その能力を最も強く発揮できるものと考えられる。
本発明に用いるAA化PVA系樹脂は、側鎖にアセトアセチル基を有するPVA系樹脂であり、その含有量は構造単位全体の0.1〜20モル%程度であり、その他の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と、酢酸ビニル構造単位である。
なお、かかる共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする場合があるため好ましくない。
かかるAA化PVA系樹脂以外の各種のPVA系樹脂の例としては、未変性のPVAや各種変性PVA系樹脂、例えば、ビニルエステル系モノマーと該ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることができ、かかるモノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
アセトアセチル基とグリオキシル酸塩との反応は、アセトアセチル基の二つのカルボニル基にはさまれた活性メチレンがグリオキシル酸塩中のアルデヒド炭素に求核攻撃することによって起こり、その架橋構造部分は下記構造式に示すものであると推測される。
なお、式中のXは金属元素を表わし、グリオキシル酸塩がアルカリ金属のような一価金属の塩である場合を代表的に例示しているが、アルカリ土類金属や亜鉛のような多価金属の場合、他の架橋構造、あるいはフリーのグリオキシル酸と金属を共有している場合がある。
かかる樹脂組成物水溶液は、(i)AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸塩組成物の混合物を水に投入して溶解する方法、(ii)予めAA化PVA系樹脂とグリオキシル酸塩組成物を別々に溶解したものを混合する方法、(iii)AA化PVA系樹脂の水溶液にグリオキシル酸組成物を添加して混合する方法、などによって調製できる。また、前述のようにグリオキシル酸塩を系中で製造し、単離せずに用いる場合には、かかる反応をAA化PVA系樹脂の存在下で行うことも可能であり、例えば、グリオキシル酸をアルカリ性化合物によって中和してグリオキシル酸塩を得る場合には、AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸の混合水溶液にアルカリ性化合物を添加する方法を用いることもできる。
かかる乾燥条件としては、特に限定されるものではなく、使用形態によって適宜選択されるものではあるが、通常は5〜150℃、さらには30〜150℃、特には50〜150℃の温度条件で、0.1〜60分、さらには0.1〜30分、特には0.2〜20分の乾燥時間が好ましく用いられる。
かかる用途の一例として抗菌紙を挙げることができ、例えば、ノート、便箋、封筒、ファイル用紙、レポート用紙、アルバム用紙、情報用紙などの事務用紙;ノンカーボン紙、PPC用紙、インクジェット紙、熱転写紙などの記録紙;カルテ用紙、診察券、薬袋などの病院で使用される紙類;便座シート、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、紙おむつ、ナプキンなどの介護・生理用品;紙ナプキン、紙雑巾などの清掃用品;食肉、鮮魚、魚介類、野菜、果物などの食品用包装紙;紙皿、紙コップ、紙製弁当箱などの飲食用紙製品;粘着テープ、粘着シートなどに用いられる原紙;エアフィルター、メンブレンフィルターなどのフィルター用紙、などに用いられる。
(1)紙加工剤
各種加工紙のアンダーコート層やバックコート層、昇華型感熱記用媒体の発色層や中間層、空隙型インクジェット記録用媒体の無機微粒子バインダー、膨潤型インクジェット記録用媒体のインク受容層、紙のクリアコーティング剤、塗工紙の顔料バインダー、電子写真用記録媒体の顔料バインダー、離型紙の表面塗工剤や顔料バインダーやバックコート、熱転写記録媒体の耐熱保護層など。
(2)接着剤
1液接着剤、2液型接着剤、ハネムーン型接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、建材用バインダー(石膏ボード、繊維板等)、各種粉体造粒用バインダー、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤など。
(3)水性ゲル
排水処理用担体、保水剤、保冷剤、バイオリアクター、芳香剤、地盤強化剤、臓器モデル、人工関節、人口筋肉、疑似餌など。
(4)被覆剤
繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、結露防止剤、導電剤、暫定塗料、暫定保護膜、永久保護膜など。
(5)フィルム、膜、繊維
電解質膜、包装用フィルム、セパレーター用不織布、有機溶剤フィルター用不織布、吸音材用不織布、包装用不織布、ナノファイバー不織布など。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
2Lの2口反応缶中の50%グリオキシル酸水溶液456g(3.10モル)に、20%水酸化ナトリウム水溶液645g(3.22モル)を加え、生じた白色結晶をろ過、水洗した後、50℃にて1時間乾燥して、グリオキシル酸ナトリウム(A)210g(1.84モル、収率59.5%)を得た。かかるグリオキシル酸ナトリウム(A)の23℃における水への溶解度は、17.1%であった。
1Lの2口反応缶に水285g、酢酸亜鉛(75g、0,34mol)を加え、室温で攪拌し、20%酢酸亜鉛水溶液を調整した。これに50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸50.1g、0.68mol)100gを加えて、滴下終了後1時間攪拌した。さらにアセトン460gを滴下し、滴下終了後6時間攪拌した。反応液を濾過して白色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で3時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸亜鉛(B)の白色粉末58.1g(0.24mol、収率69.0%、純度100%)を得た。得られたグリオキシル酸亜鉛(B)の23℃における水への溶解度は0.07%であった。
実施例1
平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%、水酸基平均連鎖長22であるAA化PVA系樹脂の7%水溶液100重量部に、架橋剤として製造例1で得られたグリオキシル酸ナトリウム(A)と製造例2で得られたグリオキシル酸亜鉛(B)を重量比で3/1となるように配合したものを0.35重量部(AA化PVA系樹脂に対して5重量%)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。
かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの条件下で48時間放置後、70℃で5分間加熱処理を行って厚さ100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの抗菌力及び耐水性を以下の要領で評価した。
JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2プラスチック製品、に準拠して、検体の抗菌力試験を行った。
試験菌株は、細菌株としてEscherichia coli NBRC 3972(大腸菌)、およびStaphylococcus aureusu subsp. aureus NBRC 12732(黄色ブドウ級球菌)を用いた。
得られたフィルム上に上記菌種を所定数接種し、35℃、90%RHの条件で24時間培養した後の菌数(Y1)を測定、ブランクとしてグリオキシル酸塩組成物を配合せずに得られたフィルムを用い、同様にして、24時間培養後の菌数(Y0)を測定した。これらの値から、下記式より抗菌活性値(n=3の平均値)を求めた。結果を表1に示す。
抗菌活性値=logY0−logY1
得られたフィルムを80℃の熱水に1時間浸漬して、フィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、熱水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X1)および熱水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X2)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。結果を表1に示す。
溶出率(%)={(X1―X2)/X1}×100
実施例1において、架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウム(A)とグリオキシル酸亜鉛(B)を重量比で10/1となるように配合した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウム(A)とグリオキシル酸亜鉛(B)を重量比で100/1となるように配合した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウム(A)とグリオキシル酸亜鉛(B)を重量比で1000/1となるように配合した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウム(A)のみを用いた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキシル酸亜鉛(B)のみを用いた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
一方、グリオキシル酸アルカリ金属のみを用いた場合(比較例1)、耐水性は得られるものの、抗菌性が不充分であり、グリオキシル酸亜鉛のみを用いると(比較例2)、抗菌性は優れるものの、耐水性が不充分であった。
なお、グリオキシル酸アルカリ金属塩(A)とグリオキシル酸亜鉛(B)の配合比が10/1および100/1である場合(実施例2、3)には、グリオキシル酸アルカリ金属塩単独の場合(比較例1)よりも、優れた耐水性が得られた。
実施例1で得られた樹脂組成物水溶液を、PPC紙上にバーコーター(番線番号No.60)を用いて塗工し、100℃の乾燥機中で10分間乾燥させ、抗菌紙を得た。
得られた抗菌紙の抗菌性を、ブランクとしてグリオキシル酸塩組成物を配合していない樹脂組成物水溶液を用いて得られた塗工紙を用いたこと以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
実施例5において、樹脂組成物水溶液として実施例2で得られたものを用いた以外は実施例5と同様に抗菌紙を得て、同様に評価した。結果を表2に示す。
Claims (6)
- グリオキシル酸のアルカリ金属塩、および/またはアルカリ土類金属塩(A)を主成分とし、グリオキシル酸亜鉛(B)を副成分として含有することを特徴とするグリオキシル酸塩組成物。
- 請求項1記載のグリオキシル酸塩組成物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂と、請求項1記載のグリオキシル酸塩組成物を架橋剤として含有することを特徴とする樹脂組成物。
- ポアセト酢酸エステル基を含有する樹脂を用いることを特徴とする請求項2または3記載の樹脂組成物。
- 請求項1記載のグリオキシル酸塩組成物によってアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂が架橋されてなることを特徴とする架橋高分子。
- 請求項5記載の架橋高分子を含有することを特徴とする紙。
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