JP2011084561A - 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 グリオキシル酸亜鉛を有効成分とする。
【選択図】 なし
Description
かかる抗菌剤としては、各種有機系抗菌剤や、銀、銅などの金属をゼオライト、シリカなどの無機系担体に担持させた無機系抗菌剤が用いられている。
一方、無機系抗菌剤は耐熱性に優れ、人体に対する毒性が低く、耐性菌も出現しにくいという利点を有するが、十分な抗菌性を得るには添加量を多くする必要があり、プラスチック基材に適用した場合、着色や各種機械物性低下などが懸念される。
かかる抗菌性ポリマー粒子は、抗菌成分が金属であることから、無機系抗菌剤の利点を有し、さらに有機基材との良好な親和性を有することから、プラスチック基材に好適に用いることができる。
このような抗菌剤に用いられる化合物としては、様々な官能基に対して良好な反応性を有するアルデヒド基を持つグリオキシル酸と抗菌性金属による金属塩が考えられる。
また、カルボキシル基を介してイオン結合している亜鉛によって、抗菌性が発現するものである。
ところが、グリオキシル酸塩の場合、銅塩では十分な抗菌性が得られなかったにもかかわらず、亜鉛塩とすることによって、優れた抗菌性を得ることができた。
特に、本発明の抗菌剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)と併用することでPVA系樹脂に耐久性に優れた抗菌性を付与することが可能である。これは、PVA系樹脂の水酸基とグリオキシル酸亜鉛のアルデヒド基の反応によるものである。
また、PVA系樹脂の中でもアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)とともに用いることで、グリオキシル酸亜鉛がアセト酢酸エステル基と反応し、PVA系樹脂の架橋剤として機能するため、耐水性に優れ、抗菌性に優れた架橋高分子を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の抗菌剤の有効成分であるグリオキシル酸亜鉛について説明する。
かかるグリオキシル酸亜鉛は、分子中に各種官能基に対する反応性に優れるアルデヒド基を有し、カルボキシル基を介して亜鉛がイオン結合しているものである。
なお、亜鉛は2価の陽イオンとなるため、一つの金属イオンに対しグリオキシル酸イオン2分子が結合しうるが、その一つが他のイオン、例えば他のカルボン酸イオンや水酸化物イオンであってもよい。
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸亜鉛を得ることができる。
本発明の抗菌剤は、かかるグリオキシル酸亜鉛を有効成分として含有するもので、その含有量は、通常、全固形分中の50重量%以上、特に70重量%以上である。
かかる抗菌剤に含有される他の成分としては、一般の抗菌剤に添加剤として使用される公知の成分や、基材物性を改善するための添加剤であり、本発明の効果を阻害するものでなければ、特に制限なく用いることができる。具体的には、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料、リン酸ジルコニウムやゼオライトなどの無機イオン交換体、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、炭素繊維などの強化繊維、金属石鹸などの滑剤、防湿剤、増量剤、カップリング剤、核剤、流動性改善剤、防黴剤、防汚剤、防錆剤、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤などを挙げることができる。
かかる基材の形状としては特に制限されないが、木質材料による構造体、天然材料や合成樹脂による紙状物、繊維、およびその織布や不織布、フィルム、シートなどを挙げることができる。
また、かかる水性液、あるいは水溶液に用いられる溶剤としては、水、またはアルコール類が好適であるが、基材に応じてその他の溶剤を用いることも可能であり、それらの混合物を用いることもできる。
かかる水性液中のグリオキシル酸亜鉛の濃度としては、基材の形状や状態、塗布、あるいは噴霧などの適用方法によって適宜調整すればよいが、通常は0.1〜10重量%の範囲が好適に用いられる。
本発明の抗菌剤は、製品形状とする前の原料に配合することも可能であり、かかる原料としては、合成樹脂が代表的である。
以下、本発明の抗菌剤を樹脂に配合することによって得られる、抗菌性樹脂組成物について説明する。
中でも、本発明の目的である抗菌剤の耐久性を効果的に得るには、グリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド基と反応しうる官能基、例えば水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アセトアセチル基など有するものが好ましい。
上述の通り、本発明の抗菌剤は各種樹脂に対して適用することが可能であるが、特に、PVA系樹脂は分子鎖中に水酸基を多数有しており、これがグリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド基と容易に反応して、強固なアセタール構造を形成し、本発明の効果である抗菌性の耐久性が顕著に得られることから好ましく用いられる。
なお、かかる共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする場合があるため好ましくない。
以下、本発明の抗菌剤中に有効成分として含有されるグリオキシル酸亜鉛とAA化PVA系樹脂を含有する樹脂組成物、およびこれらが架橋反応してなる架橋高分子について説明する。
従って、本発明で用いられるグリオキシル酸亜鉛は、AA化PVA系樹脂と組み合わせることによって、その能力を最も強く発揮できるものである。
本発明に用いるAA化PVA系樹脂は、側鎖にアセトアセチル基を有するPVA系樹脂であり、その含有量は構造単位全体の0.1〜20モル%程度であり、その他の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と、酢酸ビニル構造単位である。
かかるAA化PVA系樹脂以外の各種のPVA系樹脂の例としては、未変性のPVAや上述の各種変性PVA系樹脂が挙げられる。
アセトアセチル基とグリオキシル酸亜鉛との反応は、アセトアセチル基の二つのカルボニル基にはさまれた活性メチレンがグリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド炭素に求核攻撃することによって起こり、その架橋構造部分は下記構造式に示すものであると推測される。
なお、式中のXは亜鉛を表わし、亜鉛は2価金属であるから、通常、他の架橋構造、あるいはフリーのグリオキシル酸と金属を共有している。
かかる乾燥条件としては、特に限定されるものではなく、使用形態によって適宜選択されるものではあるが、通常は5〜150℃、さらには30〜150℃、特には50〜150℃の温度条件で、0.1〜60分、さらには0.1〜30分、特には0.2〜20分の乾燥時間が好ましく用いられる。
かかる用途の一例として抗菌紙を挙げることができ、例えば、ノート、便箋、封筒、ファイル用紙、レポート用紙、アルバム用紙、情報用紙などの事務用紙;ノンカーボン紙、PPC用紙、インクジェット紙、熱転写紙などの記録紙;カルテ用紙、診察券、薬袋などの病院で使用される紙類;便座シート、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、紙おむつ、ナプキンなどの介護・生理用品;紙ナプキン、紙雑巾などの清掃用品;食肉、鮮魚、魚介類、野菜、果物などの食品用包装紙;紙皿、紙コップ、紙製弁当箱などの飲食用紙製品;粘着テープ、粘着シートなどに用いられる原紙;エアフィルター、メンブレンフィルターなどのフィルター用紙、などに用いられる。
(1)紙加工剤
各種加工紙のアンダーコート層やバックコート層、昇華型感熱記用媒体の発色層や中間層、空隙型インクジェット記録用媒体の無機微粒子バインダー、膨潤型インクジェット記録用媒体のインク受容層、紙のクリアコーティング剤、塗工紙の顔料バインダー、電子写真用記録媒体の顔料バインダー、離型紙の表面塗工剤や顔料バインダーやバックコート、熱転写記録媒体の耐熱保護層など。
(2)接着剤
1液接着剤、2液型接着剤、ハネムーン型接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、建材用バインダー(石膏ボード、繊維板等)、各種粉体造粒用バインダー、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤など。
(3)水性ゲル
排水処理用担体、保水剤、保冷剤、バイオリアクター、芳香剤、地盤強化剤、臓器モデル、人工関節、人口筋肉、疑似餌など。
(4)被覆剤
繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、結露防止剤、導電剤、暫定塗料、暫定保護膜、永久保護膜など。
(5)フィルム、膜、繊維
電解質膜、包装用フィルム、セパレーター用不織布、有機溶剤フィルター用不織布、吸音材用不織布、包装用不織布、ナノファイバー不織布など。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
1Lの2口反応缶に水285g、酢酸亜鉛(75g、0,34mol)を加え、室温で攪拌し、20%酢酸亜鉛水溶液を調整した。これに50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸50.1g、0.68mol)100gを加えて、滴下終了後1時間攪拌した。さらにアセトン460gを滴下し、滴下終了後6時間攪拌した。反応液を濾過して白色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で3時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸亜鉛の白色粉末58.1g(0.24mol、収率69.0%、純度100%)を得た。
3Lの2口反応缶中の50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸101.8g、1.37モル)203.2gに、5%酢酸銅水溶液(酢酸銅125g、0.69モル)2500gを、室温、攪拌下で滴下し、滴下終了後2時間攪拌した。反応液を濾過して青色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で4時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸銅の青色粉末74.3g(0.30モル、収率43.4%、純度100%)を得た。
製造例1で得られたグリオキシル酸亜鉛について、試験菌の増殖を阻止するための最小発育阻止濃度(MIC)を下記の要領で評価した。
細菌株としてEscherichia coli NBRC 3972(大腸菌)、カビ株としてCladosporium cladosporioides NBRC 6348(クロカワカビ)を用いた。
(2)感受性測定用培地
細菌にはMueller Hinton Agar、カビにはサブロー寒天培地を用いた。
(3)感受性測定用平板の作製
精製水を用いて検体の希釈溶液を調整した。次に、滅菌、溶解後50℃±1℃に保った感受性測定用培地を添加し、十分に混合後、シャーレに分注、固化させて感受性測定用平板とした。
(4)接種菌溶液の調整
細菌株をMuller Hinton Broth(Difco)で37℃±1℃、18〜20時間培養後、Muller Hinton Brothを用いて菌数が約106/mlとなるように調整した。
カビ菌株をMuller Hinton Broth(Difco)で25℃±1℃、7〜10日間培養後、胞子(分生子)を0.005%スルホこはく酸ジオクチルナトリウム溶液に浮遊させ、ガーゼでろ過後、菌数が約106/mlとなるように調整した。
(5)培養
接種用菌液を感受性測定用平板にプラスチック製ループ(内径約1mm)で2cm程度画線塗抹し、細菌は37℃±1℃、18〜20時間、カビは25℃±1℃、7日間培養した。
(6)判定
所定時間培養後、菌の発育が阻止された最低濃度をもって最小発育阻止濃度とした。結果を表1に示す。
実施例1において、グリオキシル酸亜鉛に代えてグリオキシル酸銅を用いた以外は実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例2
平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%、水酸基平均連鎖長22であるAA化PVA系樹脂の7%水溶液100重量部に、架橋剤として製造例1で得られたグリオキシル酸亜鉛を0.7重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。
かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの条件下で48時間放置後、70℃で5分間加熱処理を行って厚さ100μmの白色フィルムを得た。
得られたフィルムの抗菌性、および耐水性を以下の要領で評価した。
JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2プラスチック製品、に準拠して、検体の抗菌力試験を行った。
試験菌株は、細菌株としてEscherichia coli NBRC 3972(大腸菌)、およびStaphylococcus aureusu subsp. aureus NBRC 12732(黄色ブドウ級球菌)を用いた。
得られたフィルム上に上記菌種を所定数接種し、35℃、90%RHの条件で24時間培養した後の菌数(Y1)を測定、ブランクとしてグリオキシル酸亜鉛を配合せずに得られたフィルムを用い、同様にして、24時間培養後の菌数(Y0)を測定した。これらの値から、下記式より抗菌活性値(n=3の平均値)を求めた。結果を表2に示す。
抗菌活性値=logY0−logY1
得られたフィルムを80℃の熱水に1時間浸漬して、フィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、熱水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X1)および熱水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X2)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。結果を表2に示す。
溶出率(%)={(X1―X2)/X1}×100
また、本発明の抗菌剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)、特にアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)とともに用いることで、これらの樹脂の架橋剤として機能し、耐水性に優れ、抗菌性に優れた架橋高分子を得ることができる。
Claims (5)
- グリオキシル酸亜鉛を有効成分とすることを特徴とする抗菌剤。
- 請求項1記載の抗菌剤を含有することを特徴とする抗菌性樹脂組成物。
- 請求項1記載の抗菌剤とポリビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする抗菌性樹脂組成物。
- アセト酢酸エステル基を含有する樹脂を用いることを特徴とする請求項2または3記載の抗菌性樹脂組成物。
- グリオキシル酸亜鉛によってアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂が架橋されてなることを特徴とする抗菌性架橋高分子。
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