JP2011084561A - 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子 - Google Patents

抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子 Download PDF

Info

Publication number
JP2011084561A
JP2011084561A JP2010209306A JP2010209306A JP2011084561A JP 2011084561 A JP2011084561 A JP 2011084561A JP 2010209306 A JP2010209306 A JP 2010209306A JP 2010209306 A JP2010209306 A JP 2010209306A JP 2011084561 A JP2011084561 A JP 2011084561A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibacterial
resin
pva
agent
zinc
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010209306A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5595197B2 (ja
Inventor
Shinichi Tanaka
晋一 田中
Hiroyuki Ono
裕之 小野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Synthetic Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Nippon Synthetic Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Synthetic Chemical Industry Co Ltd filed Critical Nippon Synthetic Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP2010209306A priority Critical patent/JP5595197B2/ja
Publication of JP2011084561A publication Critical patent/JP2011084561A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5595197B2 publication Critical patent/JP5595197B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】 抗菌性に優れ、各種基材、特にポリビニルアルコール系樹脂に対する反応性を有する抗菌剤を提供すること。
【解決手段】 グリオキシル酸亜鉛を有効成分とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、グリオキシル酸亜鉛を有効成分とする抗菌剤に関し、さらに詳しくは抗菌性と耐久性に優れた抗菌剤に関する。さらに、かかる抗菌剤を含有する抗菌性樹脂組成物、およびこれから得られた抗菌性架橋高分子に関する。
近年、清潔感への意識の高まりにより、繊維製品、紙製品、木材製品、プラスチック製品など、様々な工業製品に対して抗菌処理が施されている。処理方法としては、抗菌剤を含有する塗工液を製品の表面にコーティングする方法や、プラスチック製品の場合には、抗菌剤をプラスチック原料に混練する方法などが用いられている。
かかる抗菌剤としては、各種有機系抗菌剤や、銀、銅などの金属をゼオライト、シリカなどの無機系担体に担持させた無機系抗菌剤が用いられている。
かかる有機系抗菌剤は、少量で効果が得られ、基材への分散性や塗工性に優れる利点を有するが、耐熱性に劣るため、高温での熱加工等によって失活する場合があり、また、基材から揮発、溶出しがちであるため、長期間、効果を持続させることが困難である。
一方、無機系抗菌剤は耐熱性に優れ、人体に対する毒性が低く、耐性菌も出現しにくいという利点を有するが、十分な抗菌性を得るには添加量を多くする必要があり、プラスチック基材に適用した場合、着色や各種機械物性低下などが懸念される。
有機系抗菌剤、および無機系抗菌剤に関する、かかる課題を解決する方法として、抗菌金属成分がポリマー粒子にイオン結合によって担持されている抗菌性ポリマー粒子が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
かかる抗菌性ポリマー粒子は、抗菌成分が金属であることから、無機系抗菌剤の利点を有し、さらに有機基材との良好な親和性を有することから、プラスチック基材に好適に用いることができる。
特開2001−40222号公報
しかしながら、特許文献1に記載の抗菌性ポリマー粒子は、基材との親和性を分子間力に依存しているため、例えば、流水に常時さらされるような過酷な条件下での耐久性の点で、まだまだ改良の余地があるものであった。
すなわち、優れた耐久性を有する抗菌剤、例えば、基材との間に強固な結合が形成されるような抗菌剤が望まれていた。
このような抗菌剤に用いられる化合物としては、様々な官能基に対して良好な反応性を有するアルデヒド基を持つグリオキシル酸と抗菌性金属による金属塩が考えられる。
そこで、本発明者らが、代表的な抗菌性金属である銅を含有するグリオキシル酸銅について検討したところ、基材等との反応性については良好な結果が得られたものの、抗菌性が不十分であることが判明した。
すなわち、本発明は、各種基材との結合を形成することで優れた耐久性が得られ、優れた抗菌性を有する抗菌剤の提供を目的とするものである。
本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、意外にもグリオキシル酸亜鉛によって本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
かかるグリオキシル酸亜鉛は、分子内にアルデヒド基を有し、かかるアルデヒド基が、各種有機基材と反応することによって、耐久性が得られるものである。
また、カルボキシル基を介してイオン結合している亜鉛によって、抗菌性が発現するものである。
一般に、銅、亜鉛、およびこれらを含有する化合物が抗菌性を有することは知られており、その効果は同等、あるいは銅のほうが優れている場合が多く、銅を含有する抗菌剤が広く用いられている。
ところが、グリオキシル酸塩の場合、銅塩では十分な抗菌性が得られなかったにもかかわらず、亜鉛塩とすることによって、優れた抗菌性を得ることができた。
本発明の抗菌剤は、抗菌性に優れる上に、各種官能基との反応性を有するため、耐久性に優れ、さらに着色などの基材への影響もないことから、各種基材に対する抗菌剤として有用である。
特に、本発明の抗菌剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)と併用することでPVA系樹脂に耐久性に優れた抗菌性を付与することが可能である。これは、PVA系樹脂の水酸基とグリオキシル酸亜鉛のアルデヒド基の反応によるものである。
また、PVA系樹脂の中でもアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)とともに用いることで、グリオキシル酸亜鉛がアセト酢酸エステル基と反応し、PVA系樹脂の架橋剤として機能するため、耐水性に優れ、抗菌性に優れた架橋高分子を得ることができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔グリオキシル酸亜鉛〕
まず、本発明の抗菌剤の有効成分であるグリオキシル酸亜鉛について説明する。
かかるグリオキシル酸亜鉛は、分子中に各種官能基に対する反応性に優れるアルデヒド基を有し、カルボキシル基を介して亜鉛がイオン結合しているものである。
なお、亜鉛は2価の陽イオンとなるため、一つの金属イオンに対しグリオキシル酸イオン2分子が結合しうるが、その一つが他のイオン、例えば他のカルボン酸イオンや水酸化物イオンであってもよい。
かかるグリオキシル酸亜鉛は、常温で固体であるが、表面積の増加による抗菌性向上や、基材への適用、樹脂等への配合の容易性などから、粒子状として用いることが好ましく、中でも平均粒子径で0.1〜30μm、特に0.5〜20μm、更に1〜15μmの範囲のものが好ましい。なお、かかる平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
かかるグリオキシル酸亜鉛の製造法としては公知の方法を用いることができるが、例えば、(1)グリオキシル酸と亜鉛水酸化物の中和反応による方法、(2)グリオキシル酸と酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩との塩交換反応による方法、(3)グリオキシル酸エステルを亜鉛の水酸化物を用いた加水分解による方法などを挙げることができる。
なお、(1)の方法は通常、水を媒体として行われ、グリオキシル酸と亜鉛水酸化物を水中で反応させ、析出したグリオキシル酸亜鉛を濾別し、乾燥して製造することができる。
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸亜鉛を得ることができる。
なお、グリオキシル酸亜鉛には、その製造に用いられる原料や原料に含まれる不純物、製造時の副生成物等が含まれる可能性があり、例えば、グリオキシル酸、金属水酸化物、アミン化合物、脂肪族カルボン酸塩、グリオキザール、シュウ酸、またシュウ酸塩、グリコール酸などが含有される場合がある。
特に、原料としてグリオキシル酸を用いる場合には、その製造時の副生成物であるグリオキザールを含有する可能性があり、かかるグリオキザールの含有量は0重量%であることが最も望ましいが、5重量%以下、特に2重量%以下、さらに1重量%以下であることが好ましい。グリオキザールの含有量が多いと、これと基材との反応生成物が経時で着色する場合がある。
また、本発明におけるグリオキシル酸亜鉛は、そのアルデヒド基が、メタノール、エタノールなどの炭素数が3以下のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数が3以下のジオール等によってアセタール化、およびヘミアセタール化された化合物を包含するものである。かかるアセタール基、およびヘミアセタール基は、水中、あるいは高温下では容易にアルコールが脱離し、アルデヒド基と平衡状態をとるため、アルデヒド基と同様に各種単量体や官能基と反応し、あるいは架橋剤として機能するものである。
〔抗菌剤〕
本発明の抗菌剤は、かかるグリオキシル酸亜鉛を有効成分として含有するもので、その含有量は、通常、全固形分中の50重量%以上、特に70重量%以上である。
かかる抗菌剤に含有される他の成分としては、一般の抗菌剤に添加剤として使用される公知の成分や、基材物性を改善するための添加剤であり、本発明の効果を阻害するものでなければ、特に制限なく用いることができる。具体的には、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料、リン酸ジルコニウムやゼオライトなどの無機イオン交換体、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、炭素繊維などの強化繊維、金属石鹸などの滑剤、防湿剤、増量剤、カップリング剤、核剤、流動性改善剤、防黴剤、防汚剤、防錆剤、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤などを挙げることができる。
また、本発明の効果を阻害しない程度であれば、グリオキシル酸亜鉛以外の公知の抗菌剤を併用することも可能である。かかる公知の抗菌剤としては、ベンツイミダゾール系、イソチアゾリン系、ピリチオン系、有機ヒ素系、有機銅系、有機ヨード系、クロロヘキシジン系などの有機系抗菌剤、銀、銅、リン酸カルシウムなどを主成分とする無機系抗菌剤、キチン、キトサン、カテキン、ヒノキチオールなどの天然抗菌剤などを挙げることができる。
本発明の抗菌剤は、植物由来、あるいは動物由来の天然材料や合成樹脂等に対して適用することが可能であるが、本発明の特徴である優れた耐久性を得るためには、アルデヒド基と反応しうる官能基を有するものであることが好ましい。かかる官能基としては、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アセトアセチル基などを挙げることができる。
本発明の抗菌剤を各種基材に適用する方法は対象となる基材、および適用する段階によって異なるが、既に形状が得られているものに対しては、水溶液あるいは水性液として塗布、あるいは噴霧し、乾燥する方法が好適である。この場合には、グリオキシル酸亜鉛のアルデヒド基が基材表面の官能基と反応することによって固定化される。
かかる基材の形状としては特に制限されないが、木質材料による構造体、天然材料や合成樹脂による紙状物、繊維、およびその織布や不織布、フィルム、シートなどを挙げることができる。
また、かかる水性液、あるいは水溶液に用いられる溶剤としては、水、またはアルコール類が好適であるが、基材に応じてその他の溶剤を用いることも可能であり、それらの混合物を用いることもできる。
かかる水性液中のグリオキシル酸亜鉛の濃度としては、基材の形状や状態、塗布、あるいは噴霧などの適用方法によって適宜調整すればよいが、通常は0.1〜10重量%の範囲が好適に用いられる。
なお、基材が有する官能基と本発明の抗菌剤に含まれるグリオキシル酸亜鉛のアルデヒド基との反応を考慮し、水性液の性状を適宜調整することが好ましく、例えば、水酸基を有する基材に対して用いる場合には、水性液のpHを酸性側、特にpH2〜5の範囲とすることにより、速やかにアセタール化反応が進行する。
〔抗菌性樹脂組成物〕
本発明の抗菌剤は、製品形状とする前の原料に配合することも可能であり、かかる原料としては、合成樹脂が代表的である。
以下、本発明の抗菌剤を樹脂に配合することによって得られる、抗菌性樹脂組成物について説明する。
本発明の抗菌剤が適用できる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチルなどのポリビニル系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジオレフィン系樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンオキサイドなどのポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリオール系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などを挙げることができる。
中でも、本発明の目的である抗菌剤の耐久性を効果的に得るには、グリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド基と反応しうる官能基、例えば水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アセトアセチル基など有するものが好ましい。
本発明の抗菌剤の樹脂に対する配合量は、通常、0.05〜30重量%であり、特に0.1〜10重量%、さらに1〜5重量%の範囲が好適に用いられる。かかる配合量が少なすぎると、樹脂組成物の抗菌性が不十分となる傾向があり、逆に多すぎると、樹脂物性を低下させる傾向がある。
本発明の抗菌剤を樹脂に配合する方法としては、樹脂に添加剤を配合する各種方法を採用することが可能であり、例えば、ドライブレンドする方法や溶液あるいは水性液として添加、、混合、乾燥する方法、さらには熱可塑性樹脂に対しては溶融混練法などを用いることができる。
〔PVA系樹脂との樹脂組成物〕
上述の通り、本発明の抗菌剤は各種樹脂に対して適用することが可能であるが、特に、PVA系樹脂は分子鎖中に水酸基を多数有しており、これがグリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド基と容易に反応して、強固なアセタール構造を形成し、本発明の効果である抗菌性の耐久性が顕著に得られることから好ましく用いられる。
かかるPVA系樹脂は、一般的にはビニルエステル系モノマーの重合体のケン化物又はその誘導体が用いられ、かかるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済性の点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また、ビニルエステル系モノマーと該ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることもでき、かかる共重合モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
なお、かかる共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする場合があるため好ましくない。
又、ビニルエステル系モノマーおよびその他のモノマーを重合、共重合する際の重合温度を調整し、主として生成する1,3−結合に対する異種結合の生成量を増減して、PVA主鎖中の1,2−ジオール結合を1.0〜3.5モル%程度としたものを使用することが可能である。
本発明で用いられるPVA系樹脂の平均重合度は、その用途によって適宜選択すればよいが、通常、300〜4000であり、特に400〜3500、さらに500〜3000のものが好適に用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると、皮膜としたときの強度が不十分となる場合があり、逆に大きすぎると、水溶液として使用する場合に、高粘度となって、取扱い性や塗工性などが低下する場合がある。
また、PVA系樹脂のケン化度についても、その用途によって適宜好適なものが選択されるが、通常、80モル%以上のものが用いられ、さらには85モル%以上、特には90モル%以上ものが好適に用いられる。かかるケン化度が低い場合には、水溶液とすることが困難になったり、水溶液の安定性が低下する場合がある。
本発明の抗菌剤とPVA系樹脂とを混合する方法としては、PVA系樹脂に各種添加剤を配合する方法を用いることができるが、例えば、粉末状の抗菌剤をPVA系樹脂とドライブレンドする方法、さらにこれを水溶液として各種用途に供する方法、あるいは予めPVA系樹脂の水溶液を調製し、これに本発明の抗菌剤を添加、混合する方法などが好適である。
かかる本発明の抗菌剤とPVA系樹脂を含有する樹脂組成物は、PVA系樹脂が通常用いられる各種用途に適用することができる。
本発明の樹脂組成物で用いられるPVA系樹脂としては、上述のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位のみを有する、いわゆる未変性PVA系樹脂や、各種変性変性PVA系を用いることができるが、中でもアセト酢酸エステル基を有するPVA系樹脂(AA化PVA系樹脂)は、本発明の抗菌剤に含有されるグリオキシル酸亜鉛によって架橋され、抗菌性架橋高分子を得ることができる。
〔AA化PVA系樹脂との樹脂組成物、および架橋高分子〕
以下、本発明の抗菌剤中に有効成分として含有されるグリオキシル酸亜鉛とAA化PVA系樹脂を含有する樹脂組成物、およびこれらが架橋反応してなる架橋高分子について説明する。
AA化PVA系樹脂は、架橋前は水溶性であるが、架橋高分子とすることによって耐水性を付与することができ、架橋の効果が極めて顕著である。さらに、グリオキシル酸亜鉛は分子内にイオン性基(カルボン酸塩)を有することからPVA系樹脂およびアセトアセチル基との親和性に優れており、その結果、架橋密度のばらつきが少ない、均一性の高い架橋構造が得られる。
従って、本発明で用いられるグリオキシル酸亜鉛は、AA化PVA系樹脂と組み合わせることによって、その能力を最も強く発揮できるものである。
以下、AA化PVA系樹脂およびその架橋高分子について詳細に説明する。
本発明に用いるAA化PVA系樹脂は、側鎖にアセトアセチル基を有するPVA系樹脂であり、その含有量は構造単位全体の0.1〜20モル%程度であり、その他の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と、酢酸ビニル構造単位である。
かかるAA化PVA系樹脂の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
原料となるPVA系樹脂としては、上述のPVA系樹脂を用いることができ、通常は未変性PVA系樹脂が用いれるが、樹脂特性を大きく阻害しない限り、各種変性基を有するPVA系樹脂を用いることも可能である。
かかるPVA系樹脂とジケテンとの反応によるアセトアセチル基の導入には、PVA系樹脂とガス状或いは液状のジケテンを直接反応させても良いし、有機酸をPVA系樹脂に予め吸着吸蔵せしめた後、不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを噴霧、反応するか、またはPVA系樹脂に有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応する等の方法が用いられる。
上記の反応を実施する際の反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置であれば十分である。例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダー、撹拌乾燥装置を用いることができる。
かくして得られるAA化PVA系樹脂の平均重合度は、その用途によって適宜選択すればよいが、通常、300〜4000であり、特に400〜3500、さらに500〜3000のものが好適に用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に大きすぎると、水溶液として使用した場合に、その粘度が高くなりすぎ、作業性が低下する傾向がある。
また、本発明に用いられるAA化PVA系樹脂のケン化度は、通常、80モル%以上であり、さらには85モル%以上、特には90モル%以上ものが好適に用いられる。かかるケン化度が低い場合には、水溶液とすることが困難になったり、水溶液の安定性が低下したり、得られる架橋高分子の耐水性が不十分となる傾向がある。なお、平均重合度およびケン化度はJIS K6726に準じて測定される。
また、AA化PVA系樹脂中のアセトアセチル基含有量(以下AA化度と略記する。)は、通常、0.1〜20モル%であり、さらには0.2〜15モル%、特には0.3〜10モル%であるものが一般的に広く用いられる。かかる含有量が少なすぎると、耐水性が不十分となったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液の安定性が低下する傾向がある。
本発明においては、PVA系樹脂のすべてがAA化PVA系樹脂であることが好ましいが、AA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂が併用されていてもよく、その含有量は通常20重量%以下であり、特に10重量%以下であることが好ましい。
かかるAA化PVA系樹脂以外の各種のPVA系樹脂の例としては、未変性のPVAや上述の各種変性PVA系樹脂が挙げられる。
また、本発明のAA化PVA系樹脂には、製造工程で使用あるいは副生した酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩(主として、ケン化触媒として用いたアルカリ金属水酸化物とポリ酢酸ビニルのケン化によって生成した酢酸との反応物等に由来)、酢酸などの有機酸(PVA系樹脂にアセト酢酸エステル基を導入する際の、ジケテンとの反応時にPVAに吸蔵させた有機酸等に由来)、メタノール、酢酸メチルなどの有機溶剤(PVA系樹脂の反応溶剤、AA化PVA製造時の洗浄溶剤等に由来)が一部残存していても差し支えない。
かくして得られるAA化PVA系樹脂は、本発明の抗菌剤を混合し、抗菌剤中のグリオキシル酸亜鉛によって架橋させることによって、本発明の抗菌性架橋高分子が得られる。
アセトアセチル基とグリオキシル酸亜鉛との反応は、アセトアセチル基の二つのカルボニル基にはさまれた活性メチレンがグリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド炭素に求核攻撃することによって起こり、その架橋構造部分は下記構造式に示すものであると推測される。
なお、式中のXは亜鉛を表わし、亜鉛は2価金属であるから、通常、他の架橋構造、あるいはフリーのグリオキシル酸と金属を共有している。
本発明の樹脂組成物中の、AA化PVA系樹脂と本発明の抗菌剤の配合割合は特に制限されるものではないが、通常、AA化PVA系樹脂100重量部に対してグリオキシル酸亜鉛が0.1〜200重量部、さらには0.5〜100重量部、特には1〜50重量部となるような範囲が好適に用いられる。また、AA化PVA系樹脂中の総AA基量(Y)に対するグリオキシル酸亜鉛中のアルデヒド基量(X)のモル比(X/Y)は通常0.01〜50、好ましくは0.05〜20、特には0.1〜10の範囲である。かかるグリオキシル酸亜鉛の配合量、あるいはアルデヒド基量が少なすぎると得られる架橋高分子の耐水性が不十分となる場合があり、逆に多すぎるとその使用環境等によっては混合水溶液が増粘しやすくなり、ポットライフが短くなる場合がある。
かかる樹脂組成物中のAA化PVA系樹脂をグリオキシル酸亜鉛によって架橋して得られる架橋高分子は、通常、AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸亜鉛とを含有する樹脂組成物水溶液とした後、コーティング剤用途、塗料用途、等の各種用途に適用される。かかる樹脂組成物水溶液は、(i)AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸亜鉛の混合物を水に投入して溶解する方法、(ii)予めAA化PVA系樹脂とグリオキシル酸亜鉛を別々に溶解したものを混合する方法、(iii)AA化PVA系樹脂の水溶液にグリオキシル酸亜鉛を添加して混合する方法、などによって調製できる。また、
かかる樹脂組成物水溶液の調整方法におけるAA化PVA系樹脂水溶液の濃度は0.05〜40重量%、さらには1〜30重量%、特には1〜20重量%であることが好ましい。AA化PVA系樹脂水溶液の濃度が大きすぎると粘度が高くなりすぎ、基材への塗工や、各種工程への適用が困難になる場合があるため好ましくない。また、濃度が小さすぎると樹脂量が不足したり、乾燥に長時間を要したりするため好ましくない。
かかる樹脂組成物水溶液のpHは、通常2〜10、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜9である。かかるpHが低すぎると、樹脂組成物水溶液の塗布に使用する装置の腐食等を招く場合があるため、その対策が必要となり、逆に高すぎると、樹脂組成物水溶液が増粘しやすくなり、ポットライフが短くなる傾向にある。
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の特性を阻害しない範囲内で他の公知の架橋剤を配合しても良く、そのような架橋剤の例としては、水溶性チタニウム化合物や水溶性ジルコニウムもしくは水溶性アルミニウム化合物等に代表されるような多価金属化合物、硼酸や硼砂といったホウ素化合物、アミン化合物、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン化合物、シラン化合物、メチロール化メラミンなどのメチロール基含有化合物、アルデヒド基含有化合物、エポキシ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物、ポリイソシアナート化合物、ブロックイソシアナート化合物、水溶性または水分散性のエポキシ樹脂または化合物、水溶性または水分散性のオキセタン樹脂または化合物、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン等を用いることができる。これらは単独で用いても二種類以上を組み合わせて用いても良い。
さらに、本発明の樹脂組成物、あるいはその水溶液・水分散液には、本発明の特性を阻害しない範囲内で消泡剤、防黴剤、防腐剤、レベリング剤等の添加剤、などを配合しても良い。
このようにして調整された本発明の樹脂組成物の水溶液は、塗工、注型、浸漬等の公知の方法によって各種用途に適用され、その後、必要に応じて加熱乾燥、あるいは低温〜常温乾燥することで、PVA系樹脂の耐水化という目的を達成することができる。
かかる乾燥条件としては、特に限定されるものではなく、使用形態によって適宜選択されるものではあるが、通常は5〜150℃、さらには30〜150℃、特には50〜150℃の温度条件で、0.1〜60分、さらには0.1〜30分、特には0.2〜20分の乾燥時間が好ましく用いられる。
本発明の抗菌剤を用いて得られる架橋高分子は耐水性が要求される各種用途に対して有用であり、さらに抗菌性が求められる用途に好適である。
かかる用途の一例として抗菌紙を挙げることができ、例えば、ノート、便箋、封筒、ファイル用紙、レポート用紙、アルバム用紙、情報用紙などの事務用紙;ノンカーボン紙、PPC用紙、インクジェット紙、熱転写紙などの記録紙;カルテ用紙、診察券、薬袋などの病院で使用される紙類;便座シート、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、紙おむつ、ナプキンなどの介護・生理用品;紙ナプキン、紙雑巾などの清掃用品;食肉、鮮魚、魚介類、野菜、果物などの食品用包装紙;紙皿、紙コップ、紙製弁当箱などの飲食用紙製品;粘着テープ、粘着シートなどに用いられる原紙;エアフィルター、メンブレンフィルターなどのフィルター用紙、などに用いられる。
かかる抗菌紙を得る方法としては、和紙、洋紙、板紙などの原紙に本発明の抗菌剤とPVA系樹脂、特にAA化PVA系樹脂、を含有する樹脂組成物の水溶液を塗布、あるいは含浸した後、これを乾燥する方法や、原紙製造時の抄紙工程において、抄紙液に本発明の樹脂組成物を配合しておき、紙繊維表面に本発明の樹脂組成物を付着させ、乾燥時に架橋高分子とする方法などを挙げることができる。
上記のもの以外にも、本発明の抗菌剤とAA化PVA系樹脂を含有する組成物、およびその架橋物は、耐水性が必要とされる用途に適用することが可能であり、その具体例としては以下のものが挙げられる。
(1)紙加工剤
各種加工紙のアンダーコート層やバックコート層、昇華型感熱記用媒体の発色層や中間層、空隙型インクジェット記録用媒体の無機微粒子バインダー、膨潤型インクジェット記録用媒体のインク受容層、紙のクリアコーティング剤、塗工紙の顔料バインダー、電子写真用記録媒体の顔料バインダー、離型紙の表面塗工剤や顔料バインダーやバックコート、熱転写記録媒体の耐熱保護層など。
(2)接着剤
1液接着剤、2液型接着剤、ハネムーン型接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、建材用バインダー(石膏ボード、繊維板等)、各種粉体造粒用バインダー、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤など。
(3)水性ゲル
排水処理用担体、保水剤、保冷剤、バイオリアクター、芳香剤、地盤強化剤、臓器モデル、人工関節、人口筋肉、疑似餌など。
(4)被覆剤
繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、結露防止剤、導電剤、暫定塗料、暫定保護膜、永久保護膜など。
(5)フィルム、膜、繊維
電解質膜、包装用フィルム、セパレーター用不織布、有機溶剤フィルター用不織布、吸音材用不織布、包装用不織布、ナノファイバー不織布など。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
製造例1:グリオキシル酸亜鉛
1Lの2口反応缶に水285g、酢酸亜鉛(75g、0,34mol)を加え、室温で攪拌し、20%酢酸亜鉛水溶液を調整した。これに50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸50.1g、0.68mol)100gを加えて、滴下終了後1時間攪拌した。さらにアセトン460gを滴下し、滴下終了後6時間攪拌した。反応液を濾過して白色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で3時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸亜鉛の白色粉末58.1g(0.24mol、収率69.0%、純度100%)を得た。
製造例2:グリオキシル酸銅
3Lの2口反応缶中の50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸101.8g、1.37モル)203.2gに、5%酢酸銅水溶液(酢酸銅125g、0.69モル)2500gを、室温、攪拌下で滴下し、滴下終了後2時間攪拌した。反応液を濾過して青色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で4時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸銅の青色粉末74.3g(0.30モル、収率43.4%、純度100%)を得た。
実施例1
製造例1で得られたグリオキシル酸亜鉛について、試験菌の増殖を阻止するための最小発育阻止濃度(MIC)を下記の要領で評価した。
(1)試験菌株
細菌株としてEscherichia coli NBRC 3972(大腸菌)、カビ株としてCladosporium cladosporioides NBRC 6348(クロカワカビ)を用いた。
(2)感受性測定用培地
細菌にはMueller Hinton Agar、カビにはサブロー寒天培地を用いた。
(3)感受性測定用平板の作製
精製水を用いて検体の希釈溶液を調整した。次に、滅菌、溶解後50℃±1℃に保った感受性測定用培地を添加し、十分に混合後、シャーレに分注、固化させて感受性測定用平板とした。
(4)接種菌溶液の調整
細菌株をMuller Hinton Broth(Difco)で37℃±1℃、18〜20時間培養後、Muller Hinton Brothを用いて菌数が約10/mlとなるように調整した。
カビ菌株をMuller Hinton Broth(Difco)で25℃±1℃、7〜10日間培養後、胞子(分生子)を0.005%スルホこはく酸ジオクチルナトリウム溶液に浮遊させ、ガーゼでろ過後、菌数が約10/mlとなるように調整した。
(5)培養
接種用菌液を感受性測定用平板にプラスチック製ループ(内径約1mm)で2cm程度画線塗抹し、細菌は37℃±1℃、18〜20時間、カビは25℃±1℃、7日間培養した。
(6)判定
所定時間培養後、菌の発育が阻止された最低濃度をもって最小発育阻止濃度とした。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、グリオキシル酸亜鉛に代えてグリオキシル酸銅を用いた以外は実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
かかる結果から、グリオキシル酸塩の場合、亜鉛塩が銅塩に対し、細菌である大腸菌、カビであるクロカワカビのいずれに対しても、優れた抗菌性を示すことが明らかである。
〔AA化PVA系樹脂の架橋構造体〕
実施例2
平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%、水酸基平均連鎖長22であるAA化PVA系樹脂の7%水溶液100重量部に、架橋剤として製造例1で得られたグリオキシル酸亜鉛を0.7重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。
かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの条件下で48時間放置後、70℃で5分間加熱処理を行って厚さ100μmの白色フィルムを得た。
得られたフィルムの抗菌性、および耐水性を以下の要領で評価した。
(抗菌性)
JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2プラスチック製品、に準拠して、検体の抗菌力試験を行った。
試験菌株は、細菌株としてEscherichia coli NBRC 3972(大腸菌)、およびStaphylococcus aureusu subsp. aureus NBRC 12732(黄色ブドウ級球菌)を用いた。
得られたフィルム上に上記菌種を所定数接種し、35℃、90%RHの条件で24時間培養した後の菌数(Y)を測定、ブランクとしてグリオキシル酸亜鉛を配合せずに得られたフィルムを用い、同様にして、24時間培養後の菌数(Y)を測定した。これらの値から、下記式より抗菌活性値(n=3の平均値)を求めた。結果を表2に示す。
抗菌活性値=logY−logY
(耐水性)
得られたフィルムを80℃の熱水に1時間浸漬して、フィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、熱水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X)および熱水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。結果を表2に示す。
溶出率(%)={(X―X)/X}×100
このように、グリオキシル酸亜鉛を抗菌剤として用いて得られたPVA系樹脂の架橋高分子は、大腸菌、黄色ブドウ球菌のいずれに対しても、24時間で菌数がほぼ1/10となり、死滅に近い状態であることを示すものである。さらに、優れた耐水性を示し、そのフィルムの色調も白色であった。
本発明の抗菌剤は、抗菌性に優れる上に、基材との反応性を有するため、抗菌性が長期間持続し、さらに少量で良好な抗菌性が得られ、着色などの基材への影響もないことから、各種基材への抗菌剤として有用である。
また、本発明の抗菌剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)、特にアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)とともに用いることで、これらの樹脂の架橋剤として機能し、耐水性に優れ、抗菌性に優れた架橋高分子を得ることができる。

Claims (5)

  1. グリオキシル酸亜鉛を有効成分とすることを特徴とする抗菌剤。
  2. 請求項1記載の抗菌剤を含有することを特徴とする抗菌性樹脂組成物。
  3. 請求項1記載の抗菌剤とポリビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする抗菌性樹脂組成物。
  4. アセト酢酸エステル基を含有する樹脂を用いることを特徴とする請求項2または3記載の抗菌性樹脂組成物。
  5. グリオキシル酸亜鉛によってアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂が架橋されてなることを特徴とする抗菌性架橋高分子。
JP2010209306A 2009-09-18 2010-09-17 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子 Active JP5595197B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010209306A JP5595197B2 (ja) 2009-09-18 2010-09-17 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009216584 2009-09-18
JP2009216584 2009-09-18
JP2010209306A JP5595197B2 (ja) 2009-09-18 2010-09-17 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011084561A true JP2011084561A (ja) 2011-04-28
JP5595197B2 JP5595197B2 (ja) 2014-09-24

Family

ID=44077780

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010209306A Active JP5595197B2 (ja) 2009-09-18 2010-09-17 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5595197B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011084738A (ja) * 2009-09-18 2011-04-28 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The グリオキシル酸塩組成物、それを含有する樹脂組成物、およびその架橋高分子
JP2018178498A (ja) * 2017-04-11 2018-11-15 Toto株式会社 浴室洗い場における排水部構造
JP2018197489A (ja) * 2017-02-28 2018-12-13 Toto株式会社 排水部構造
JP7011100B1 (ja) 2021-08-10 2022-01-26 ユシロ化学工業株式会社 光触媒組成物、光触媒組成物溶液、光触媒部材、及び空間除菌方法
WO2022080101A1 (ja) * 2020-10-15 2022-04-21 ユシロ化学工業株式会社 光触媒組成物、光触媒組成物溶液、光触媒部材、光触媒組成物の使用方法、及び空間除菌方法

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0559662A (ja) * 1991-08-30 1993-03-09 Nippon Zeon Co Ltd 抗菌性繊維製品
JPH09164763A (ja) * 1995-12-14 1997-06-24 Oji Paper Co Ltd 感熱記録体
JPH10265310A (ja) * 1997-03-21 1998-10-06 Houyuu Syst Kk 抗微生物剤および坑微生物性高分子組成物
JPH1143427A (ja) * 1997-07-29 1999-02-16 Tomita Seiyaku Kk 浴用剤
JP2006282647A (ja) * 2005-04-01 2006-10-19 Kyuuken:Kk 抗菌防カビ剤及びそれを配合した使途ごとの二次製品
JP2008007408A (ja) * 2006-06-27 2008-01-17 K I Chemical Industry Co Ltd 染色特性の低下された殺菌組成物及び染色特性の低下方法
JP2010077385A (ja) * 2008-03-18 2010-04-08 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 架橋剤、架橋高分子、およびそれらの用途
JP2010095516A (ja) * 2008-09-22 2010-04-30 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The α−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法
JP5528274B2 (ja) * 2009-09-18 2014-06-25 日本合成化学工業株式会社 グリオキシル酸塩組成物、それを含有する樹脂組成物、およびその架橋高分子

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0559662A (ja) * 1991-08-30 1993-03-09 Nippon Zeon Co Ltd 抗菌性繊維製品
JPH09164763A (ja) * 1995-12-14 1997-06-24 Oji Paper Co Ltd 感熱記録体
JPH10265310A (ja) * 1997-03-21 1998-10-06 Houyuu Syst Kk 抗微生物剤および坑微生物性高分子組成物
JPH1143427A (ja) * 1997-07-29 1999-02-16 Tomita Seiyaku Kk 浴用剤
JP2006282647A (ja) * 2005-04-01 2006-10-19 Kyuuken:Kk 抗菌防カビ剤及びそれを配合した使途ごとの二次製品
JP2008007408A (ja) * 2006-06-27 2008-01-17 K I Chemical Industry Co Ltd 染色特性の低下された殺菌組成物及び染色特性の低下方法
JP2010077385A (ja) * 2008-03-18 2010-04-08 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 架橋剤、架橋高分子、およびそれらの用途
JP2010095516A (ja) * 2008-09-22 2010-04-30 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The α−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法
JP5528274B2 (ja) * 2009-09-18 2014-06-25 日本合成化学工業株式会社 グリオキシル酸塩組成物、それを含有する樹脂組成物、およびその架橋高分子

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011084738A (ja) * 2009-09-18 2011-04-28 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The グリオキシル酸塩組成物、それを含有する樹脂組成物、およびその架橋高分子
JP2018197489A (ja) * 2017-02-28 2018-12-13 Toto株式会社 排水部構造
JP2018178498A (ja) * 2017-04-11 2018-11-15 Toto株式会社 浴室洗い場における排水部構造
JP2022103305A (ja) * 2017-04-11 2022-07-07 Toto株式会社 浴室洗い場における排水部構造
JP7363963B2 (ja) 2017-04-11 2023-10-18 Toto株式会社 浴室洗い場における排水部構造
WO2022080101A1 (ja) * 2020-10-15 2022-04-21 ユシロ化学工業株式会社 光触媒組成物、光触媒組成物溶液、光触媒部材、光触媒組成物の使用方法、及び空間除菌方法
JP7011100B1 (ja) 2021-08-10 2022-01-26 ユシロ化学工業株式会社 光触媒組成物、光触媒組成物溶液、光触媒部材、及び空間除菌方法
JP2023025385A (ja) * 2021-08-10 2023-02-22 ユシロ化学工業株式会社 光触媒組成物、光触媒組成物溶液、光触媒部材、及び空間除菌方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5595197B2 (ja) 2014-09-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5595197B2 (ja) 抗菌剤、抗菌性樹脂組成物、および抗菌性架橋高分子
JP5813635B2 (ja) アルキル変性ビニルアルコール系重合体、並びにこれを含む組成物、増粘剤、紙用塗工剤、塗工紙、接着剤及びフィルム
JP6322341B2 (ja) 抗菌抗ウイルス性組成物
EP0123927B1 (en) Water resistant compositions
CN106660344A (zh) 抗菌片、抗菌涂层、层叠体及抗菌液
JP5528274B2 (ja) グリオキシル酸塩組成物、それを含有する樹脂組成物、およびその架橋高分子
JP2012188661A (ja) 水性塗工液、これを用いた多層構造体およびその製造方法
JP5795111B2 (ja) 架橋剤、架橋高分子
JP4968657B2 (ja) ハイドロゲル
JP4828279B2 (ja) 耐水性組成物
JP2006152206A (ja) ポリビニルアルコール系樹脂及びその用途
CN113574120B (zh) 树脂组合物、薄膜和多层结构体
KR102193847B1 (ko) 친환경 종이 코팅제
JP6753333B2 (ja) 架橋構造体の製造方法、及びインクジェット記録媒体
JP2016113484A (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物
JP6497613B2 (ja) ポリ(メタ)アクリル酸イオンコンプレックス
JP2013209491A (ja) 水性塗工液、それを用いて得られるガスバリア性塗工層、および多層構造体
KR102167281B1 (ko) Uv 경화용 항균성 및 상용성이 우수한 유/무기 하이브리드 수지 및 그 제조방법
KR101469963B1 (ko) 나노 입자를 포함한 폴리비닐알코올/에틸렌-아크릴산 복합수지 수분산체의 제조방법 및 이 방법에 의해 제조된 폴리비닐알코올/에틸렌-아크릴산 복합수지 수분산체
JPS6172047A (ja) 耐水性組成物
JPWO2016051444A1 (ja) 抗菌性樹脂フィルム及び抗菌性物品
JP2023145330A (ja) 樹脂組成物
JPH11165379A (ja) アルデヒド吸収フィルム
JP2013240975A (ja) インクジェット記録材、その製造方法、及びそれを用いた印刷物の製造方法
KR20080112309A (ko) 폴리비닐 알코올계 수지 및 이의 용도

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130821

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140805

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140805

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5595197

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350