JP6350768B1 - プレコート金属板 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2016年09月30日に、日本に出願された特願2016−193436号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
特許文献1では、この下塗り塗料組成物が塗装金属板の耐食性の向上に有用であることは記載されているものの、耐薬品性については何ら考慮されていない。
特許文献2では、この塗料組成物が、加工部や端面部の耐食性に優れた塗膜を形成できることは記載されているが、耐薬品性については何ら考慮されていない。
特許文献3では、この塗料組成物に基づく硬化塗膜が形成された塗装金属板が耐食性に優れることは記載されているものの、耐薬品性については何ら考慮されていない。
本発明者らの検討の結果、塗膜が防錆顔料を含んでいたとしても、それだけでは重塩害地仕様のエアコン室外機や住設機器に適用されるプレコート金属板に要求される高度の耐薬品性(耐酸性および耐アルカリ性)を満足できないことが分かった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされた。本発明の目的は、耐食性に加えて高度の耐薬品性を備えたプレコート金属板を提供することである。
高度な耐薬品性として、例えば、耐酸性として5%硫酸に120時間浸漬しても異常がないこと、及び耐アルカリ性として5%水酸化ナトリウム水溶液に120時間浸漬しても異常がないこと、という条件を満足することが求められる場合がある。しかしながら、本発明者らが、従来の一般的な塗料を塗装したプレコート鋼板を用いて、上記の耐薬品性試験を行った結果、耐酸性試験では約50時間、耐アルカリ試験では約24時間を超えた時点で塗膜に膨れが発生し、要求を満足できなかった。
そのため、本発明者らは、その原因を調査するため、耐酸性および耐アルカリ性試験における、最も初期段階の膨れ部分の断面顕微鏡観察を実施した。その結果、プレコート金属板を、酸、アルカリのいずれに浸漬した場合も、塗膜とめっきとの界面に小さな隙間が生じているだけで、めっき自体に腐食は見られなかった。すなわち塗膜膨れの起点は、薬品が塗膜を透過してめっき表面(めっき金属板が有するめっき層の表面)に到達し、めっきの最表層が溶解して生じた微細な隙間であると考えられる。このことから、耐薬品性を向上させるには、薬品が塗膜を透過しにくい構造とすること、塗膜とめっき表層との密着性を向上させて薬品が浸入する隙間を生じさせないようにすること、およびめっき表面が薬品により溶解しにくいようにバリア層を形成させることが、効果的であることが示唆された。
本発明は、以上の知見をもとに完成されたものであって、具体的には、以下の通りである。
(2)上記(1)に記載のプレコート金属板は、前記プライマー層の膜厚が3〜15μmであり、前記顔料粒子の前記膜厚方向の最大長径が、前記プライマー層の膜厚の80%以下であってもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載のプレコート金属板は、前記バインダー樹脂がイソシアネート樹脂を含んでもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のプレコート金属板は、前記顔料粒子の含有量が、前記プライマー層の全固形分質量に対して、15〜70質量%であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のプレコート金属板は、前記めっき金属板と前記プライマー層との間に、更に化成処理皮膜を有してもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のプレコート金属板は、前記めっき金属板がZn−Al−Mgめっき鋼板であってもよい。
前記プライマー層は、バインダー樹脂と、バナジウム化合物及びマグネシウム化合物を含む顔料粒子とを含む。
また、前記プライマー層では、膜厚方向の断面の、前記めっき金属板と前記プライマー層との界面から前記膜厚方向に1.0μm以内の領域を、EPMAマッピングにより観察したとき、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満である領域が前記膜厚方向と垂直な方向に2.0μm以上連続して存在せず、かつ、マグネシウム元素の検出濃度が3.0%未満である領域が前記膜厚方向と垂直な方向に2.0μm以上連続して存在しない。
本実施形態に係るプレコート金属板は、用途に応じ、金属板の両面が上述の塗膜で被覆されていても、片面のみが被覆されていてもよく、また、表面の一部が被覆されていても、全面が被覆されていてもよい。金属板の塗膜で被覆された部位において耐薬品性、耐食性が優れる。上述の皮膜を片面にのみ形成する場合、反対側の面には、最低限の耐食性と意匠性とを付与するため、公知の皮膜を形成してもよい。
本実施形態に係るプレコート金属板(塗装金属板)に用いるめっき金属板は、表面にめっき層を有する金属板である。金属板の構成金属としては、特に限定しないが、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛、銅、ニッケル、そして鋼等が適用可能である。鋼を使用する場合には、普通鋼であっても、クロム等の添加元素を含有する鋼であってもよく、特に限定されない。
また、金属板の表面に形成されるめっき層の種類も、特に限定されない。
適用可能なめっき層としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケルのうちのいずれか1種からなるめっき、および、これらの金属元素にさらに他の金属元素、非金属元素を含む合金めっき等が挙げられる。特に、亜鉛系めっき層としては、例えば、亜鉛からなるめっき、亜鉛と、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケル、鉄、クロム、チタン、マグネシウム、マンガンの少なくとも1種との合金めっき、または、さらに他の金属元素、非金属元素を含む種々の亜鉛系合金めっき(例えば、亜鉛と、アルミニウム、マグネシウム、シリコンの4元合金めっき)が挙げられる。
めっき金属板の表面に形成されるプライマー層は、バインダー樹脂と、バナジウム化合物及びマグネシウム化合物を含む顔料粒子とを含む。
また、本実施形態に係るプレコート金属板のプライマー層では、バナジウム化合物およびマグネシウム化合物が、プライマー層の下側の領域(めっき金属板とプライマー層との界面から膜厚方向に1.0μm以内の領域)において、後述するように、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満である領域が前記膜厚方向と垂直な方向に2.0μm以上連続して存在せず、かつ、マグネシウム元素の検出濃度が3.0%未満である領域が膜厚方向と垂直な方向に2.0μm以上連続して存在しないように分布していることが必要である。
プライマー層中のバナジウム化合物は、浸入した酸あるいはアルカリ成分を含む水に対して溶解し、その際、バナジン酸イオンが放出される。このバナジン酸イオンは、めっき表面の金属と反応して塩を生成する。この塩は、めっきとプライマー層との界面に緻密なバリア層を形成することで、浸入した薬品がめっき表面を浸食するのを抑制する。そのため、プライマー層の下側の領域にバナジウム化合物が密に存在することで、めっき表面に到達した酸またはアルカリによりめっきが溶解したごく初期段階から、速やかに高濃度のバナジン酸イオンがめっき表面に供給され、緻密なバリア層を形成することができる。
これらのバナジウム化合物の中では、防錆顔料として適度な溶解性を有することで耐食性と耐水性とのバランスが良好であるという理由から、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム、及び/またはメタバナジン酸アンモニウムが特に好ましい。
一方、プライマー層の全固形分質量に対するバナジウム化合物の含有量が50質量%を超えると、耐食性や耐薬品性向上の効果が飽和して経済的でないだけでなく、顔料の合計含有量の上昇を招き、加工性が低下する場合があるので好ましくない。耐食性及び耐薬品性を向上させた上で、プレコート金属板として求められる加工性を確保する観点から、バナジウム化合物の含有量は、プライマー層の全固形分質量に対して、4〜50質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
これらのマグネシウム化合物の中では、防錆顔料として適度な溶解性を有することで耐食性と耐水性とのバランスが良好であるとの理由から、バナジン酸マグネシウム、酸化マグネシウムが特に好ましい。
一方、プライマー層の全固形分質量に対するマグネシウム化合物の含有量が50質量%を超えると、耐食性や耐薬品性向上の効果が飽和して経済的でないだけでなく、顔料の合計含有量の上昇を招き、加工性が低下する場合があるので好ましくない。耐食性及び耐薬品性を向上させた上で、求められる加工性を確保する点から、マグネシウム化合物の含有量は、4〜50質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
プライマー層中での平均粒径を1.0μm以下とする場合、塗布液中に添加する顔料粒子の平均粒径も1.0μm以下とすることが好ましい。
対象とするプレコート金属板を適当な大きさに切断して板厚方向断面が見えるように樹脂に埋め込みし、断面を研磨し、その後、断面(研磨面)のプライマー層のEPMAマッピング分析を倍率6000倍で行う(加速電圧15kV)。検出対象元素としてVおよびMgを選択し、各元素の存在位置および元素濃度のマッピング撮影を行う。次に、同一サンプルの同じ位置を、倍率6000倍でSEM画像撮影し、先のEPMAマッピング画像と照合することにより、SEM画像上でのバナジウム化合物およびマグネシウム化合物を全て特定する。SEM画像上で金属板の平面方向に20μmを測定範囲とし、範囲内のプライマー層に存在する全てのバナジウム化合物およびマグネシウム化合物の粒径(真円でない場合は最も長い径:長径)を測定する。そして、バナジウム化合物、マグネシウム化合物のそれぞれについて平均粒径を算出し、これらをプライマー層に含有されるバナジウム化合物およびマグネシウム化合物の平均粒径とする。
複数個のバナジウム化合物およびマグネシウム化合物が凝集している場合は、凝集した化合物を1個とみなして粒径(長径)を測定する。
バナジウム化合物とマグネシウム化合物とを同時に含有すると、バナジウム化合物から放出されたバナジン酸イオンがめっき表面の金属と反応して塩を形成してめっき表面に吸着する一方、マグネシウム化合物から放出されたマグネシウムイオンがめっき表面で水酸化マグネシウムを形成し、めっき表面のバナジウム塩の被覆が十分でない部分を埋めるかたちでバリア性をより強固にする。その結果、特にAl含有めっきで劣るとされる耐アルカリ性を飛躍的に向上させることができる。この効果は、バナジウム化合物、マグネシウム化合物がそれぞれ単独で存在する場合に得られる効果を足し合わせたよりも大きい。すなわち、バナジウム化合物とマグネシウム化合物とを同時に含有することで相乗効果が得られ、非常に優れた耐薬品性、特に非常に優れた耐アルカリ性を得ることができる。
つまり、プライマー層の下側表面から膜厚方向に1.0μm以内の領域を、EPMAマッピングにより観察したとき、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満の領域またはマグネシウム元素の検出濃度3.0%未満の領域が、平面方向(膜厚方向と垂直な(直交する)方向)に2.0μm以上連続して存在する場合、その部分はバナジウム化合物およびマグネシウム化合物の存在が疎な部分であり、バナジン酸イオンまたはマグネシウムイオンが十分にめっき表面に供給されないので、十分な耐食性及び耐薬品性が得られない。そのため、本実施形態に係るプレコート金属板のプライマー層では、プライマー層の下側表面から膜厚方向に1.0μm以内の領域において、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満の領域、マグネシウム元素の検出濃度3.0%未満の領域のいずれも、平面方向(膜厚方向と垂直な方向)に2.0μm以上連続して存在しないように制御されている。
対象とするプレコート金属板を適当な大きさに切断して板厚方向断面が見えるように樹脂に埋め込み、断面を研磨し、その後、断面のプライマー層のEPMAマッピング分析を、プライマー層の膜厚方向と直交する方向に20μm以上の範囲に対して、倍率6000倍で行う(加速電圧15kV)。検出対象元素としてVおよびMgを選択し、各元素の存在位置および元素濃度のマッピングを行う。
本実施形態に係るプレコート金属板のプライマー層断面内のバナジウム化合物の分布およびマグネシウム化合物の分布をそれぞれ示すEPMAマッピング写真(倍率6000倍)の一例を図2A、図2Bに、これらをトレースした図を、図3A、図3Bに示す。図2A、図2Bでは、マッピングの色で示された濃度とともに、平面方向に2.0μm以下の間隔で、詳細に測定した検出濃度を併記している。図2A、図2Bに示すように、本実施形態に係るプレコート金属板のプライマー層では、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満の領域も、マグネシウム元素の検出濃度3.0%未満の領域も、いずれも平面方向(膜厚方向と直角方向)に2.0μm以上連続して存在していない。
対象とするプレコート鋼板を適当な大きさに切断して板厚方向断面が見えるように樹脂に埋め込みし、断面を研磨し、その後、断面のプライマー層のSEM画像を倍率6000倍で撮影する。SEM画像上で鋼板の平面方向に100μmを測定範囲とし、測定範囲内に存在する全ての顔料のうち、プライマー層の膜厚方向の粒径(該顔料が真円でない場合は、該顔料の占める範囲の基板から最も近い位置から遠い位置までの距離)が最も大きな顔料の膜厚方向の粒径を、プライマー層に含有される全顔料の最大長径と定義する。複数個の顔料が凝集している場合はこれを1個とみなして最大長径を測定する。
バインダー樹脂がイソシアネート硬化であることを確認する方法としては、対象とするプレコート金属板を適当な大きさに切断して樹脂埋め込みし、断面方向を研磨し、その後、断面のプライマー層皮膜を顕微FT−IR等の方法によりIR測定を行い、1550cm-1近辺のウレタン結合の吸収や、2260cm-1付近に現れるイソシアネート由来のC=N吸収ピークを確認することで判断できる。
本実施形態に係るプレコート金属板では、プライマー層の上に上層皮膜を有する。この上層皮膜は、用途に応じた、バインダー樹脂、着色顔料を含有するものであれば、特に制限されない。上層皮膜は、通常のプレコート鋼板の上層皮膜と同様に1層又は複数層の皮膜とすればよい。
めっき金属板上に、必要に応じて公知の方法で化成処理を行って化成処理皮膜を形成し、その後、プライマー層形成用塗布液を塗布し、加熱乾燥してプライマー層を形成する。
化成処理は、公知の非クロメート型処理が広く使用できるが、特に、タンニン酸およびシランカップリング剤を含有する処理液を、乾燥膜重量で10〜1000mg/m2となるように塗布・乾燥させることにより、きわめて高い塗膜密着性が得られるので好ましい。
プライマー層を形成するための塗布液は、溶剤、上述したバインダー樹脂成分、並びに、バナジウム化合物およびマグネシウム化合物を含む顔料を含んで成ることが好ましい。これらの成分以外にも、レベリング剤、消泡剤、着色剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含んでもよい。
上述の顔料粒子が塗布液中で十分に自由に移動できる状態とするために、プライマー層を形成するための塗布液の粘度を、岩田カップ式粘度計で20秒〜50秒の範囲内とすることが望ましい。塗布液の粘度は、溶剤添加量により調整できる。塗布液の粘度が50秒よりも高粘度の場合、塗布液内でのバナジウム化合物およびマグネシウム化合物を含む顔料粒子が自由に移動することができず、結果として乾燥後のプライマー層中の下部領域からバナジウム元素およびマグネシウム元素が密に検出されない。一方、塗布液の粘度が20秒よりも低粘度では、塗布液中の溶剤比率が高すぎ、乾燥工程でいわゆる「わき」と呼ばれる塗膜中に気泡が残留する塗装欠陥が発生するため、製造条件として好ましくない。
上記プライマー層が形成されためっき金属板に、上層皮膜用塗布液を塗布した後、加熱乾燥して上層皮膜を形成する。上層皮膜が複数ある場合は、さらにこの工程繰り返してプレコート金属板を製造する。上層皮膜の塗布方法に関しては、特に制限はなく、例えば、浸漬法、カーテンフロー法、ロールコート法、バーコート法、静電法、刷毛塗り法、T−ダイ法、ラミネート法、スプレー法などが挙げられる。また、ウェット・オン・ウェットコート法や多層同時コート法を用いることもできる。
実施例(本発明例)および比較例で使用した、めっき金属板、プライマー層、上層皮膜の内容を表1〜表4及び以下に示す。
SD:Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Si合金めっき鋼板(板厚:0.6mm、めっき付着量:片面当たり40g/m2)
GI:溶融亜鉛めっき鋼板(板厚:0.6mm、めっき付着量:片面当たり40g/m2)
これらの原板の表裏面をアルカリ脱脂した後、クロメートフリー化成処理液(シランカップリング剤、タンニン酸、シリカ、及びポリエステル樹脂混合系)により化成処理(付着量:片面100mg/m2)してから使用した。めっき層は金属板の両面に形成した。
化成処理されためっき金属板の片面にプライマー層を形成した。実施例および比較例に用いたプライマー層のバインダー樹脂に使用したフィルム形成性樹脂成分および硬化剤は、以下のとおりである。
・ポリエステル樹脂「バイロン300」(東洋紡社製;Tg7℃、数平均分子量26000、水酸基価4、酸価2以下)
・メラミン樹脂「サイメル235」(三井化学社製;メトキシ/ブトキシ混合変性メラミン樹脂)
・イソシアネート「コロネート2536」(日本ポリウレタン工業社製;ラクタムブロック/メチレンジイソシアネート(MDI))
フィルム形成性樹脂成分と硬化剤の混合比率は、硬化剤がメラミン樹脂の場合は80対20、硬化剤がイソシアネートの場合は90対10(いずれも固形分重量比率)とした。
A:バナジン酸カルシウム
B:バナジン酸マグネシウム
C:バナジン酸カルシウム−マグネシウム
D:酸化マグネシウム
E:Caイオン交換シリカ(グレース社製:シールデックスC303)
F:リン酸アルミ(テイカ社製:K−ホワイト#82)
表1中、顔料濃度が斜体で示されているものは、粒径1.0μm未満の顔料を除去して使用したことを示している。
G:硫酸バリウム(堺化学工業社製:沈降性硫酸バリウム100)5%
H:酸化チタン(石原産業社製:CR95)2%
プライマー層を形成させた上に、プレコート用白色塗料(日本ペイント社製の高分子ポリエステル/ブチル化メラミン硬化型FLC7000塗料(酸化チタン白色顔料を固形分濃度で50質量%含有))を、種々の乾燥膜厚になるようにバーコーターで塗布し、PMT(到達板温度)230℃に45秒で到達する条件で熱風オーブンにて乾燥させた。
全実施例および比較例に共通で、プレコート裏面用塗料(BASF社製RB02塗料)を、化成処理を施した金属板の裏面(プライマー層を形成しなかった面)に乾燥膜厚が5μmになるようにバーコーターで塗布し、PMT(到達板温度)230℃に45秒で到達する条件で、熱風オーブンにて乾燥した。
上記のように作製した実施例および比較例のプレコート金属板を15×20mmの大きさに切断して板厚方向が見えるように樹脂に埋め込み、断面を研磨し、その後、断面のプライマー層のEPMAマッピング分析を倍率6000倍で行った(加速電圧15kV)。プライマー層の断面の下側表面から膜厚方向に1.0μm以内の領域において、平面方向(膜厚と直交する方向)に20μmの範囲について、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満の領域、およびマグネシウム元素の検出濃度が3.0%未満の領域が、平面方向に2.0μm以上連続して存在するか否かを確認した。
実施例および比較例のプレコート金属板を用い、耐食性(SST)、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)、および加工性(T曲げ)について評価を行った。以下に、各試験と評価の方法を示す。
プレコート金属板から、70×150mmのサンプルを採取した、このサンプルの切断端面を塗装シールし、鋼板表面の塗膜にカッターナイフで鉄地に至るまでの深い傷をX形状に入れた試験片と、上下短辺を塗装シールし、左右2つの長辺が裏面側にバリが向く方向にシャーにて切断した試験片とを準備した。これらの試験片について、JIS K5600−7−1の方法で、960時間および1500時間、塩水噴霧試験を実施した。
4:2mm未満
3:2mm以上4mm未満
2:4mm以上6mm未満
1:6mm以上
サンプルサイズ50×50mmのプレコート金属板の切断端面および裏面をテフロン(登録商標)性粘着テープでシールした試験片を、耐酸性試験として5%硫酸に120時間、耐アルカリ性試験として5%水酸化ナトリウム水溶液に120時間浸漬した。試験終了後、塗膜の膨れの程度を評価した。
4:全く膨れ無し
3:軽度の膨れ(膨れ面積率1%未満)
2:中程度の膨れ(膨れ面積率1〜10%未満)
1:重度の膨れ(膨れ面積率10%以上)
T曲げ試験を行った。20℃にて、0T曲げを行い、加工部の亀裂および剥離の状態を10倍ルーペで観察し、以下のように評価し、1を不合格とした。
4:亀裂、剥離が全く見られない。
3:きわめて軽微な亀裂または剥離が見られる。
2:中程度の亀裂または剥離が見られる。
1:重度の亀裂または剥離が見られる。
比較例1、2、3、4、6および7は、顔料粒子がバナジウム化合物、マグネシウム化合物のどちらか、あるいは両方を含有していない。そのため、プライマー層の断面の下側表面から膜厚方向に1.0μm以内の領域にバナジウム元素の検出濃度0.6%未満の領域が平面方向に2.0μm以上連続して存在せず、かつ、マグネシウム元素の検出濃度3.0%未満の領域が平面方向に2.0μm以上連続して存在しない、という条件を満たさなかった。その結果、耐薬品性、特に耐アルカリ性が低下した。また耐食性についても低かった。
バナジウム元素の検出濃度0.6%未満の領域が平面方向に2.0μm以上連続して存在せずかつマグネシウム元素の検出濃度3.0%未満の領域が平面方向に2.0μm以上連続して存在しないということは、測定範囲全体にわたって、バナジウム元素の検出濃度が0.6%以上の領域が2.0μm以下の間隔で存在し、かつ、マグネシウム元素の検出濃度3.0%以上の領域が2.0μm以下の間隔で存在することを意味する。
Claims (6)
- めっき金属板と、
前記めっき金属板の表面に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の表面に形成された上層皮膜と、
を有し、
前記プライマー層が、バインダー樹脂と、バナジウム化合物及びマグネシウム化合物を含む顔料粒子とを含み、
前記バナジウム化合物が、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム及びメタバナジン酸アンモニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記マグネシウム化合物が、バナジン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記プライマー層の膜厚方向の断面の、前記めっき金属板と前記プライマー層との界面から前記膜厚方向に1.0μm以内の領域を、EPMAマッピングにより観察したとき、バナジウム元素の検出濃度が0.6%未満である領域が前記膜厚方向と垂直な方向に2.0μm以上連続して存在せず、かつ、マグネシウム元素の検出濃度が3.0%未満である領域が前記膜厚方向と垂直な方向に2.0μm以上連続して存在しない、
ことを特徴とするプレコート金属板。 - 前記プライマー層の膜厚が3〜15μmであり、
前記顔料粒子の前記膜厚方向の最大長径が、前記プライマー層の膜厚の80%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のプレコート金属板。 - 前記バインダー樹脂がイソシアネート樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のプレコート金属板。
- 前記顔料粒子の含有量が、前記プライマー層の全固形分質量に対して、15〜70質量%である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレコート金属板。 - 前記めっき金属板と前記プライマー層との間に、更に化成処理皮膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレコート金属板。
- 前記めっき金属板がZn−Al−Mgめっき鋼板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレコート金属板。
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