JP6515383B2 - 黒色亜鉛合金めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

黒色亜鉛合金めっき鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、一般に亜鉛めっき鋼板が使用される事務用品、電気製品または自動車部品などの装飾が必要な部材に用いる黒色亜鉛合金めっき鋼板とその製造方法に関する。
事務用品や電気製品の外板、自動車内装部品などには黒色が色調的な安定感を与えるために、黒色のものが汎用的に使用されている。亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板は外観が銀白色や灰白色であるため、安定感や重圧感に欠け、裸のままではこのような用途には適さない。このため、従来から亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板にカーボンブラック等の顔料を添加した艶消し黒色塗料を薄膜の塗装下地処理皮膜を介して10μm超の厚膜に塗装したものが使用されている。しかし、このような塗装鋼板は高価であるため、10μm以下の薄膜塗装、あるいは塗装省略による安価化を目指して、めっき層自体の黒化処理が試みられてきた。
従来、めっき層自体を黒化処理する方法としては、例えば特許文献1に硝酸を主成分とする混酸に浸漬してなる黒色化鋼板とその製法が記載されている。しかしながら、硝酸または次亜塩素酸主体の溶液による黒化処理は簡単な製法ではあるが、生成した黒色のNi酸化物の安定性が悪いため、Ni酸化物の生成と剥離が並行して起こるため均一な黒色膜の製造ができない。
硝酸または次亜塩素酸主体の溶液で黒化処理を行うと、Niは酸化されて黒色を呈するが、めっき表面での固定化が不足するため、引っ掻き疵に弱く、黒化処理皮膜に疵が入る。更に上層に有機皮膜処理等を施して使用するときにNiの酸化物層が皮膜剥離の要因となる等の多々課題がある。
一方、特許文献2にりん酸系酸性水溶液に浸漬してなる黒色化亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が記載されているが、酸性溶液中に過酸化水素およびインヒビターが含まれていることにより、エッチングを伴いながら黒化処理皮膜表層にインヒビターの表面吸着が不均一に起こり、黒化処理後に後処理や有機皮膜処理を行うと皮膜密着性にムラが出る要因となる。このため黒化処理後の各種被覆構造設計には向かない。
加えて、インヒビターの分解が経時で起こるため、浴のコンタミの要因となり操業性に課題がある。過酸化水素は酸化力が強すぎるのでめっきのエッチングが進みやすいことに加え、薬剤消耗が速いため頻繁に薬剤補給が必要であり、操業コストが高くなる。また、酸化剤に過酸化水素を用いているため、めっきの過剰溶解を抑制するためにインヒビターを添加しており、複雑な処理浴となっており、操業性が悪いという一連の課題がある。
他方、特許文献3にはりん酸と硝酸塩からなる酸性水溶液中でスプレーもしくは浸漬処理することを特徴とする黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が開示されている。しかしながら、めっき表層をクラックが入らないように平滑にエッチングし且つ黒色化するものであり、これは一般的に電解処理、アノード(陽極)処理後のめっき表面で見られる性状である。黒化処理時にめっき表面にクラックが入らないと曲げ加工を行ったときにめっきに微小クラックが発生し、且つ黒化処理されていないクラック内面が露出するため、見た目には曲げ白化として製品不具合となる。
特開昭60−121275号公報 特開平01−255675号公報 特開昭62−070583号公報
本発明は、上記現状に鑑み、耐曲げ白化性および耐引っ掻き疵付き性に優れた黒色亜鉛合金めっき鋼板とその製造方法を提供することを目的とするものである。さらに、加工後塗装皮膜密着性、および耐食性にも優れた黒色亜鉛合金めっき鋼板と、その製造方法を提供することを目的とするものである。
ここで、耐曲げ白化性とは、上記の黒色亜鉛合金めっき鋼板およびこの上に黒色塗装皮膜等を被覆した状態で曲げ加工したときの曲げ部外面のめっきおよび塗装皮膜割れ(クラック)の部位が目視で白く見えないかどうかを意味し、耐引っ掻き疵付き性とは、鋼板切断面のバリ部先端で摺れたときに入る引っ掻き疵に対する耐性のことを示す。
本発明者らは種々鋭意検討を行った結果、特定濃度でりん酸イオンと硝酸塩イオンを含む特定のpH、特定の液温の酸性水溶液を、亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板上へ特定の液流束(L/m2/min)で、特定時間、スプレーシャワー処理することで、陽極処理のような設備を必要とせず安価で且つ操業性も良好な耐曲げ白化性および耐引っ掻き疵付き性に優れた黒化処理皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板とその製造方法を見出した。さらに、上記黒化処理皮膜上に特定の固形分比率を有する塗装下地処理皮膜を介して黒色塗装皮膜を設けることにより、加工後塗装皮膜密着性、および耐食性にも優れた黒色塗装皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板と、その製造方法を見出した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、本発明の要旨は次の通りである。
(1) 亜鉛と黒色化する金属の合金めっき層の大気環境に露出した表面全体にりん元素を含む黒化処理皮膜を有し、上記黒化処理皮膜の明度*値で37以下であり、且つ上記合金めっき層の表面全体に曲げ加工に伴う応力を緩和して曲げ加工による新生クラック発生を防止する方向性を持たないマイクロクラックが存在し、上記マイクロクラックの内部の全面にりん元素を含む黒化処理皮膜を有し、
曲げ加工に伴う応力を緩和して曲げ加工による新生クラック発生を防止する方向性を持たないマイクロクラックとして、最大幅が0.3〜0.6μmの幅のクラックが、縦横斜めランダムに、10μm幅の視野あたり1個以上存在し、更に最大幅が0.3μm未満の幅のクラックが、縦横斜めランダムに、10μm幅の視野あたり5個以上存在することを特徴とする黒色亜鉛合金めっき鋼板。
)黒色化する金属がニッケル、コバルト、鉄、銅、錫、モリブデン、の一種以上を含む金属であることを特徴とする上記(1)に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板。
)亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板を、0.25〜0.67mol/Lのりん酸イオンと1.17〜1.65mol/Lの硝酸イオンを含むpH1.5以下、液温20〜70℃の酸性水溶液を用いてスプレーシャワー処理するに際し、鋼板上への液流束を60〜300L/m2/minとすると共に、処理時間を2〜10secとすることを特徴
とする上記(1)又は(2)に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
(1)に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板の黒化処理皮膜上に、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物を含む塗装下地処理皮膜が形成され、塗装下地処理皮膜の固形分合計を100質量部としたとき、塗装下地処理皮膜におけるウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分合計がそれぞれ30〜60質量部、20〜40質量部、10〜20質量部であり、
塗装下地処理皮膜の上に黒色塗装皮膜が形成されたことを特徴とする塗装皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板
(5)黒色化する金属がニッケル、コバルト、鉄、銅、錫、モリブデン、の一種以上を含む金属であることを特徴とする上記()に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板。
)亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板を、0.25〜0.67mol/Lのりん酸イオンと1.17〜1.65mol/Lの硝酸イオンを含むpH1.5以下、液温20〜70℃の酸性水溶液を用いてスプレーシャワー処理するに際し、鋼板上への液流束を60〜300L/m2/minとすると共に、処理時間を2〜10secとして黒化処理皮膜を形成し、
当該黒化処理皮膜上に、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物を含有する水性処理液を塗布、乾燥して塗装下地処理皮膜を形成し、その上に黒色の塗料を塗布、乾燥して黒色塗装皮膜を形成することを特徴とする黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法であって、
水性処理液中の固形分合計を100質量部としたとき、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分合計がそれぞれ30〜60質量部、20〜40質量部、10〜20質量部であることを特徴とする上記(又は)に記載の塗装皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
上記(1)〜(4)および(5)の本発明の黒色亜鉛合金めっき鋼板およびその製造方法は耐曲げ白化性、耐引っ掻き疵付き性および易製造性に優れたものであり、上記(6)〜(9)および(10)の本発明の黒色亜鉛合金めっき鋼板およびその製造方法は耐曲げ白化性、耐引っ掻き疵付き性、加工後塗膜密着性、耐食性および易製造性に優れたものであり、事務用品、電気製品または自動車部品などの装飾が必要な部材に好適に使用することができる。
黒化処理工程での黒色亜鉛合金めっき層の経時変化を示した模式図である。 曲げ加工前後の黒色亜鉛合金めっき鋼板の断面を示した模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の黒化処理反応の原理はりん酸イオンと硝酸イオンを含む酸化性のある酸性水溶液を用いた化学処理によって亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板の表面を水素イオンによるエッチング力と硝酸イオンによる酸化力でめっきを溶解させながら黒色化する金属の酸化物生成により黒色が発現するものである。この黒色の酸化物はりん酸イオンとめっき層成分との反応生成物であるりん酸塩とともにめっき表面に固定化される。極めて簡便で安価な手法である。この固定化の作用によって黒化処理皮膜は剥離しづらく、且つ固体潤滑作用も有するため、引っ掻き疵が入りにくい。
上記酸化性のある酸性水溶液とは、金属を酸化する能力のある硝酸イオンを含有する酸性水溶液を意味し、硝酸イオン以外の酸化剤(例えば過酸化水素や過マンガン酸塩)を更に含有していてもかまわない。
ただし、特許文献3のように酸性水溶液中での浸漬処理やスプレー処理では鋼板上への液流束が低いため、処理速度が遅く充分な黒色外観とならず、クラックも発生しづらい。
このためより高液流束なスプレーシャワー処理を用いることで迅速且つ均一な黒色化が実現できる。しかも、高液流束なスプレーシャワー処理なので高速な液接触の効果で、めっきの溶解が促進し、クラックが発生するとクラックの内部まで充分に液が入り込むためクラック内も完全に黒色化できる。このため、曲げ加工により黒化処理で発生したクラックが広げられてもクラック内面が黒いため、見た目には耐曲げ白化性が良好となる。
上記鋼板上への液流束は60〜300L/m2/min.である。液流束が60L/m2/min.未満では処理速度が遅く充分な黒色外観とならず、クラックも発生しづらい。他方、300L/m2/min.を超えるとエッチング力が強すぎて、めっきの溶解が速く、且つ黒色の酸化物を固定化できなくなるためである。
ここで、Zn−Ni合金めっき鋼板を例に鋼板上への液流束が60〜300L/m2/min.であるスプレーシャワー処理によるめっき表面の黒化処理の経時変化を模式的に示したのが図1である。図1(a)で示されるとおりZn−Niのような合金めっきは製造時に既に合金めっき特有の引っ張り内部応力に起因しためっき割れ(初期クラック)が存在しているものが多い。図1(b)に示されるようにスプレーシャワーによる黒化処理中にめっき溶解に伴って新生クラック発生とNi酸化物とりん酸(Zn、Ni)からなる黒化処理皮膜の成長が並行して起こる。図1(c)の黒化処理の終了時にはめっきに多数大小のクラック生成し充分な黒化処理皮膜形成もなされる。
更に、液流束が高いためにクラック内に液が充分に侵入し、めっき外面表層ばかりでなく、クラック内面も迅速に黒色化する。したがって、図2に示されるように、(a)の曲げ加工前は当然、黒色外観を呈しているが、(b)のように性能として求められている曲げ加工後の曲げ部外面の白化外観をも抑制する。これは曲げ加工時に既に生成しているめっきのクラック内面が目視できるくらいに広げられるが、クラック内が黒色のため見た目には黒色外観に見えるためである。このようにマイクロクラックの内部の全面にりん元素を含む黒化処理皮膜を有することは目視によって容易に検知できうる。
一方、黒化処理皮膜の上に塗装下地処理皮膜を介して10μm以下の薄膜の黒色塗装皮膜が被覆されている場合にも曲げ部外面で塗装皮膜割れが起きても、クラックが露出するため、見た目にはやはり曲げ白化を抑制することになる。
本発明において亜鉛と黒色化する金属の合金めっき層の表面全体にりん元素を含む黒化処理皮膜を有する。これは前述の黒化処理反応の原理に示されたように黒色の酸化物がりん酸塩とともにめっき表面に固定化されるため、黒化処理皮膜中のりん酸塩に起因したりん元素が存在するためである。
上記の黒化処理皮膜は明度L*値で37以下である。37を超えると、見た目にも真の黒色外観には見えず、明らかに青黒ないし灰黒な不均一外観を呈するため需要家要求に対応できないためである。また、SEM−EDXにより、合金めっき層表面の皮膜中にりん元素が観測されることにより、黒化処理皮膜中にりん元素を含むことを確認することができる。
上記の黒色亜鉛合金めっきは表面全体に方向性を持たないマイクロクラックが存在する。Zn−Niのような引っ張り内部応力を有する合金めっきは製造時に既に初期クラックが存在しているものが多く、スプレーシャワーによる黒化処理中に更に新生クラックが発生する。黒化処理皮膜を伴った多数大小の不均一な方向性を持たないクラックが生成していることで、曲げ加工時に新たなクラックが発生しないため耐曲げ白化性が向上する。
前記の方向性を持たないマイクロクラックのより好ましい形態を以下説明する。マイクロクラックとしては、最大幅が0.3〜0.6μmの幅のクラックが、縦横斜めランダムに、10μm幅の視野あたり1個以上存在することが望ましい。クラックの状態はFE−SEMによる1万倍程度の倍率による観察で行うことができる。クラックの個数は、縦横斜めに任意の10μm長さの直線を引き、この直線と交差するクラックの個数を計測し、それらの平均値で定義した。「方向性を持たない」とは、縦横斜めいずれの直線をひいても交差するクラックが1個以上存在することを意味する。
前記のクラックに加えて、更にやや幅の狭いクラックが共存すると更に好ましい。具体的には、最大幅が0.3μm未満の幅のクラックが、縦横斜めランダムに、10μ幅の視野あたり5個以上存在することが望ましい。クラックの個数の定義は先と同一である。
黒色亜鉛合金めっき表面にこのようなマイクロクラックが存在することにより、曲げ加工に伴う応力を緩和して曲げ加工による新生クラック発生を防止することが可能である。
本発明は、上記マイクロクラックの内部の全面にりん元素を含む皮膜を有している。この点は、断面TEM−EDXにより、マイクロクラック内部の表面にりんを含有する酸化膜を検出することで確認することができる。また、曲げ加工時にマイクロクラックが開いても白化しないことから、マイクロクラック内部表面に黒化処理皮膜を有することを確認
できる。
本発明における黒色化する金属の広義な条件としては、(1)金属が酸化して黒化すること、ないし、黒色化する金属の酸化および黒色発現の触媒効果を有すること、(2)亜鉛より電気化学的に貴な金属でめっき表面に残留することが可能なこと、(3)充分な合金組成が得られる点である。黒色化する金属としてはニッケル、コバルト、鉄、銅、錫、モリブデンの一種以上を含む金属が挙げられる。
本発明に用いる亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板の組成は目的の黒色外観(すなわち黒色度合)によって異なる。真の黒色外観を得る一例としては一種以上の黒色化する金属がその全量を合金めっき層中に1〜50質量%含むことが望ましい。1質量%未満では黒色化する金属の濃度が低すぎて黒化しづらく、50質量%を超えるとエッチングが起こりづらいためである。好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。
上記の酸性水溶液と合金めっきの反応量が一定の場合、黒色化する金属の含有率に比例して黒色の度合は強くなり、高含有率の合金めっき鋼板ほど短時間で充分な黒色化が可能である。黒色度合は需要家の要求により決まるものではあるが、具体的には酸性水溶液濃度(合金めっきの反応量)や合金めっき組成の変更により諸要求に対応できる。ちなみに、黒色度合としては明度L*値で37以下が需要家の要求に応え得る一般的な値とされる。
上記の酸性水溶液は基本となる薬剤がりん酸イオンと硝酸イオンの水溶液からなるが、酸性水溶液中のりん酸イオンの濃度は0.25〜0.67mol/Lである。0.25mol/L未満であると黒色の酸化物を固定できるだけのりん酸塩が生成されないため、密着性の良い黒化処理皮膜が形成されない。一方、0.67mol/Lを超すとエッチング力が強すぎて、黒色の酸化物を固定化できなくなるためである。
更に、酸性水溶液中の硝酸イオンの濃度は1.17〜1.65mol/Lである。1.17mol/L未満であると酸化力が弱くて黒色化する金属の酸化が起こりづらくなるため、真に黒い黒化処理皮膜が形成されない。一方、1.65mol/Lを超すと均一な黒色皮膜が形成されにくくなる。理由は定かではないが、酸化力が増すことにより間接的にエッチング力も増すため、黒色の酸化物を固定化できなくなるためと推定している。
上記のスプレーシャワー処理の酸性水溶液のpHは1.5以下である。水素イオンによるエッチング力の指標となるpHが1.5を超えると、エッチング力が弱くなり、黒化処理反応ムラ起因の不均一な青黒ないし灰黒の外観となるためである。
りん酸イオンはりん酸またはりん酸塩で添加し、硝酸イオンは硝酸または硝酸塩で添加する。それぞれの酸と塩の比率を調整することでpHを調整することが可能である。例えば、硝酸と硝酸塩で前者の比率を上げればpHを下げることができ、りん酸とりん酸塩で後者の比率を上げればpHを上げることが可能である。またpH調整のために他の酸(硫酸、塩酸など)や塩基(水酸化ナトリウム、アンモニアなど)を添加することも排除するものではない。
上記のスプレーシャワー処理の酸性水溶液の液温は20〜70℃である。70℃を超えると、エッチング力が強すぎて、黒色の酸化物を固定化できなくなるためである。一方、20℃未満ではエッチング力が弱くなり、黒色化する金属の酸化が起こりづらくなるため、真に黒い黒化処理皮膜が形成されない。
上記のスプレーシャワー処理の処理時間は2〜10secである。10secを超えると、エッチングが進み過ぎて、黒色の酸化物を固定化できなくなるためである。一方、2sec未満ではエッチングが足りないため、黒色化する金属の酸化が起こりづらくなるため、真に黒い黒化処理皮膜が形成されない。
上記のスプレーシャワー処理後、水洗および乾燥工程を経て黒化処理が完了する。
上記の黒化処理反応を阻害しない限りにおいては、艶・光沢の付与や耐食性向上の目的で種々添加剤を上記酸性水溶液中に加えてもかまわない。添加剤の例としては、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、ふっ化物、ふっ化水素酸塩、チタニア化合物、ジルコニア化合物等である。
上記の黒化処理が完了した黒色亜鉛合金めっき鋼板の黒化処理皮膜上に、塗装下地処理皮膜を設け、さらに黒色塗装皮膜を設けてもよい。この場合の塗装下地処理皮膜および黒色塗装皮膜は、どのような皮膜でもよいが、特に、加工後塗装皮膜密着性、および耐食性にも優れた黒色亜鉛合金めっき鋼板を得るためには、塗装下地処理皮膜に特定の固形分比率を有するウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物からなる塗装下地処理皮膜を形成することが望ましい。
ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂が有するウレタン結合により、黒色塗装皮膜の樹脂との相互作用により皮膜の密着性を付与する。
ウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールに代表されるポリオールとジイソシアネートとからなるポリウレタンを、必要に応じてジオール、ジアミンなどのような2個以上の活性水素を持つ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長し、溶剤中に安定に分散もしくは溶解させたものを用いればよい。
上記のウレタン樹脂に使用されるジイソシアネートとしては、芳香族、脂環族及び脂肪族のジイソシアネートが挙げられ、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−(ジイソシアナトメチル)シクロヘキサノン、1,4−(ジイソシアナトメチル)シクロヘキサノン、4,4'−ジイソシアナトシクロヘキサノン、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのうち2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
また、ポリエステル骨格はポリエステルポリオール化合物、ポリエーテル骨格はポリエーテルポリオール化合物からそれぞれ得ることができる。
ポリエステルポリオール化合物は有機酸とポリオールとのエステル反応によって得られるものである。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、およびグリセリン等の低分子量ポリオールが例示される。一方、有機酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸との反応によって得られるものであって、その末端にヒドロキシル基を有するものが例示される。
ポリエーテルポリオール化合物は同一または異なるポリオールを脱水縮合させることで得られるものである。ポリオールとしては上記のポリオールが例示され、ビスフェノール骨格含有グリコールが好ましい。その具体例を示せば、メチレンビスフェノール、エチリデンビスフェノール、ブチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノールなどのビスフェノールに、炭素原子数2〜4のアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)を付加したものが挙げられる。
本発明に係るウレタン樹脂は、特に制約は無いが、水溶性樹脂や水分散性樹脂のものが望ましい。
また、シランカップリング剤は加水分解後、合金めっき層の表面に形成した黒化処理皮膜との結合により密着性を付与する。
シランカップリング剤には、具体的には以下の(i)〜(v)のような組成のものが例示される。
(i)アミノ基を有するもの:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン;
(ii)エポキシ基を有するもの:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン;
(iii)ビニル基を有するもの:ビニルトリエトキシシラン;
(iv)メルカプト基を有するもの:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;
(v)メタクリロキシ基を有するもの:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン。
なお、シランカップリング剤は一種類でもよいし複数種類を混合させてもよい。
上記のウレタン樹脂とシランカップリング剤の結合により、優れた密着性を有する下地処理皮膜が形成される。
また、りん酸系化合物は、皮膜に存在することにより防錆作用を付与する作用と、シランカップリング剤の加水分解の触媒としての作用を併せ持つものである。
りん酸系化合物としては、特に限定するものではないが、りん酸、亜りん酸および次亜りん酸、りん酸のアンモニウム塩、りん酸のアルカリ金属塩、りん酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
加工後塗装皮膜密着性、および耐食性に優れた黒色亜鉛合金めっき鋼板を得るため、塗装下地処理皮膜の固形分合計を100質量部としたとき、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分合計がそれぞれ30〜60質量部、20〜40質量部、10〜20質量部であればより望ましい。
ウレタン樹脂比率が上記の範囲外の場合、耐食性の不良が認められる。シランカップリング剤比率が上記の範囲より高いと、耐食性の不良が認められ、一方、上記の範囲より低いと、加工後塗膜密着性の不良が認められる。りん酸比率が上記の範囲より低いと、耐食性の不良が認められ、一方、上記の範囲より高いと、加工後塗膜密着性の不良が認められる。
その他の添加物として、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、造膜助剤が塗装下地処理皮膜の機能を損ねない程度に入っていてよい。
塗装下地処理皮膜を形成するためには、上記の成分を含有する処理液を用いることによりなされる。
塗装下地処理皮膜を形成するための処理液における媒体(溶媒・分散媒)は、水を主成分とする。溶質・分散質の溶解・分散を良好にするために、水に対する溶解度が高い極性を有する液状有機物(極性有機溶媒)、例えばアルコール、エーテル、ケトンなどを水とともに使用してもよい。
塗装下地処理皮膜の形成方法は限定されない。ロールコータ法、スプレー法、浸漬(ディッピング)法、スピンコート法、カーテンフローコート法など、任意の適当な方法で行うことができる。
塗装下地処理皮膜を形成する処理液に適した形成方法を適宜実施すればよい。典型的には、黒色亜鉛合金めっき鋼板の黒化処理皮膜上に上記の処理液を接触させ、引き続いてこれを焼き付けて塗装下地処理皮膜を形成する。
黒色亜鉛合金めっき鋼板の黒化処理皮膜と処理液との具体的な接触方法として、浸漬、スプレー、ロールコートなどが例示される。塗布は常温〜50℃程度の温度で行うことが好ましい。塗装下地処理皮膜の焼付け温度は、最適な温度を適宜選択すればよい。例えばPMT(基板の最高到達温度)を80℃以上150℃以下とするなどにより皮膜を乾燥させることで、耐食性を十分に満足する塗装下地処理皮膜が得られる。塗装下地処理皮膜の焼付け時間は焼付け温度との兼ね合いで適宜選択すればよい。
また、塗装下地処理皮膜の付着量については、0.2g/m2より少ないと、耐食性の不足や塗膜密着性の不良を起こしやすく、一方、1.5g/m2より多いと、コスト高や塗膜密着性の不良を起こすやすく、0.2から1.5g/m2とするのが好ましく、0.3から1.0g/m2とするのがさらに好ましい。
上記で形成された塗装下地処理皮膜の上の黒色塗装皮膜は、以下の成分から構成される塗料により形成されると好ましい。
A)バインダー樹脂
i)ポリエステル樹脂単独
バインダー樹脂として水分散のポリエステル樹脂を単独で用いてもよい。その分子量は3000以上30000以下であることが好ましい。分子量が3000未満であると十分な加工性を確保するのが困難になることが懸念される。一方、分子量が30000を超えると樹脂自体の結合サイトが低下するため塗装下地処理皮膜と優れた密着性を確保するのが困難になるとともに、メラミン等の硬化剤との架橋反応が十分に行われず塗装皮膜を構成する樹脂皮膜としての性能低下(例えば硬度低下)が懸念される。ポリエステル樹脂は単一種類であってもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
ii)ウレタン樹脂単独
バインダー樹脂として水分散のウレタン樹脂を単独で用いてもよい。ウレタン樹脂のエマルジョン粒子径は、10nm以上100nm以下、より好ましい範囲としては、20nm以上60nm以下である。粒子径が過度に小さいものはコスト高になることが懸念される。一方、粒子径が過度に大きいものは、塗膜化した際にエマルジョン同士の隙間が大きくなり塗装皮膜としてのバリア性(腐食性物質が塗装皮膜の表面から金属基材へと貫通することを抑制する性質)が低下することが懸念される。ウレタン樹脂のタイプとしては、エーテル系、ポリカーボネイト系、エステル系、アクリルグラファイトタイプ等あるが、これらの単独または、混合系を用いてもよい。別の観点からは、バインダー樹脂として、Tgが異なるものをブレンドして用いてもよい。その場合には、Tgが高い樹脂によりもたらされる優れたバリア性と、Tgが低い樹脂によりもたらされる優れた加工性とを兼ね備える塗装皮膜を得ることが実現される。
iii)ブレンド樹脂
上記ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂をブレンドした樹脂として用いてもよい。ブレンド比率は特に限定されない。用途に応じて適切なブレンド比率を設定すればよい。もちろん、この場合においても、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂のそれぞれが複数種類の樹脂から構成されていてもよい。
B)硬化剤
硬化剤は水溶性のものを用いることが好ましく、具体的には、メラミンを用いることが好ましい。硬化剤の添加量は、樹脂固形分100質量部に対して5質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。ここで、「樹脂固形分」とは、塗料組成物を焼き付けた際の固形分(樹脂皮膜)のうち、バインダー成分に由来する固形分をいう。したがって「樹脂固形分に対する質量%」とは、実質的に、バインダー成分のみを硬化させたときの重量計測値を100%としたときの質量割合をいう。
添加量が5質量部未満の場合には、主樹脂がポリエステル樹脂のときには特に、樹脂と硬化剤との十分な架橋反応が期待できず、黒色塗装皮膜としての性能が不十分となることが懸念される。一方、添加量が30質量部より多くなると架橋反応が進みすぎて黒色塗装皮膜が過度に硬くなり、加工性の低下が懸念されるようになる。なお、好ましい硬化剤の種類としては、優れた加工性と適度な硬度との両立の観点から、黒色塗装皮膜に濃化しやすい表面自由エネルギーの比較的小さい硬化剤を用いることが好ましい。具体的には、メチル化メラミンやブチル化メラミン等が挙げられる。
C)黒色着色顔料
樹脂皮膜を黒色に調色するために添加する着色顔料として、安価、安全、耐水性、耐候性に優れるカーボンブラックを用いることが好ましい。また、黒色塗装皮膜の加工性、薄膜での隠蔽性等を確保する上で、これら着色顔料の粒径は0.5μm以下であることが好ましい。
その他の成分として、体質顔料、防錆顔料、界面活性剤、消泡剤、増粘剤や、ビーズ、ワックス、等を適宜含有させることができる。
D)溶媒
本発明に係る黒色塗装皮膜の形成工程で使用される塗料の主成分は水であるが、分散性を向上させるなどの観点から、アルコール、エーテル、ケトン、アミンなどの極性有機溶媒を用いてもよい。その含有量の上限は、得られた黒色塗装皮膜の特性に悪影響を及ぼさない範囲で、塗料成分に応じて適宜決定される。溶媒に有機溶媒を含有させる場合の典型的な含有量は、全溶媒に対する比率として10〜20質量%である。
本発明に係る黒色塗装皮膜の形成工程では、ロールコータ法、スプレー法、浸漬(ディッピング)法、スピンコート法、カーテンフローコート法など、任意の適当な方法で塗布することで実施することができる。塗布は常温〜50℃程度の温度で行うことが好ましい。
上記の方法で塗料を塗布したら、引き続いて熱処理を行う。熱処理における加熱温度は、PMTで下地処理皮膜の形成工程における乾燥温度よりも高く、かつ120〜240℃の範囲とすることが好ましく、150〜220℃であれば特に好ましい。
黒色塗装皮膜の皮膜厚は、コストの観点から10μm以下とするのがよく、5μm以下であることが好ましい。
なお、ここでの厚みの定義は、平均厚みであって、重量法で測定した重量を別途単離塗膜から測定した比重で割り戻して厚みに換算したものである。
さらに黒色塗装皮膜の皮膜厚は、黒化処理皮膜の皮膜厚に対して一定範囲にあることがより好ましい。具体的には、黒化処理皮膜の皮膜厚の黒色塗装皮膜の皮膜厚に対する比が0.0010以上0.0210以下であるのがより好ましく、更に0.0070以上0.0130以下であるのがより好ましい。0.0010未満あるいは0.0210超だと耐引っ掻き疵付き性あるいは耐曲げ白化性が低下する場合がある。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜23、比較例1〜12の黒色亜鉛合金めっき鋼板の作製と評価方法
試験板の作製
厚さ0.45mmの電気Zn−Ni(13.5質量%)合金めっき鋼板(めっき付着量:10g/m2)をアルカリ脱脂水溶液(FC−E6406(日本パーカライジング社製)、20g/L、60℃)を用いて2分間スプレーシャワー処理して脱脂し水洗した。次に、硝酸ナトリウムとりん酸と第二りん酸ナトリウムが混合された0.25〜0.67mol/Lのりん酸イオンと1.17〜1.65mol/Lの硝酸イオンを含むpH1.5以下、液温20〜70℃の酸性水溶液を鋼板上への液流束が60〜300L/m2/min.のスプレーシャワー処理にて種々の表面性状となるように黒化処理(処理時間2〜10sec)を行って実施例となる評価用試験板とした。また比較例となる評価用試験板を、黒化処理条件(酸性水溶液の組成と温度、pHおよびスプレーシャワー処理の液流束と処理時間、浸漬処理時間)を種々変化させて作製した(実施例1〜11(表1−1)、比較例1〜12(表1−2))。処理条件及び評価結果を表1に示し、皮膜性能は表1の*1)に示している。
更に、上記実施例1〜11、比較例1〜12のめっき鋼板の黒化処理皮膜上にシランカップリング剤系皮膜(下地処理皮膜)を0.55g/m2の付着量で形成後、カーボンブラックを15質量%含んだポリエステル樹脂系皮膜(黒色塗装皮膜)を2μmの厚みで形成したものも評価用試験板とした。皮膜性能は表1の*2)に示している。
具体的には、上記シランカップリング剤系皮膜(下地処理皮膜)は、水性処理液におけるウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分比率が「ウレタン樹脂:シランカップリング剤:りん酸系化合物=45:30:15」の水性処理液を塗布、乾燥して形成し、また、上記カーボンブラックを15質量%含んだポリエステル樹脂系皮膜(黒色塗装皮膜)は、ポリエステル樹脂:ウレタン樹脂:メラミン硬化剤:カーボンブラック:ポリエチレンワックス=55:15:12:15:2の固形分比からなる黒色塗料を塗布、乾燥して形成したものである。なお、下地処理皮膜の乾燥はPMT120℃で、黒色塗装皮膜の乾燥はPMT200℃で行った。
一方、厚さ0.45mmの黒色化する金属の一種以上を含む亜鉛合金めっき鋼板(めっき付着量:10g/m2)も上記同様の脱脂および黒化処理(硝酸ナトリウムとりん酸が混合された0.46mol/Lのりん酸イオンと1.41mol/Lの硝酸イオンを含むpH0.6、液温30℃の水溶液、鋼板上への液流束が200L/m2/min.、スプレーシャワー処理時間が4sec)を行って評価用鋼板とした(実施例12〜23(表2))。
評価方法
黒化処理皮膜中りん元素の有無、黒色度合、耐曲げ白化性および耐引っ掻き疵付き性を評価した。評価は下記の方法で行った。
黒化処理皮膜中りん元素の有無
SEM−EDXを用いて試験板の黒化処理皮膜中のりん元素を観測し、下記基準で評価した。
有:りん元素が観測された。
無:りん元素が観測されなかった。
マイクロクラックの状態
FE−SEMを用い、1万倍の視野で観察した。クラックの最大幅が0.3〜0.6μmのものの有無、および最大幅が0.3μm未満のものの有無を観察するとともに、圧延方向に、平行、直交、45度のそれぞれの方向に10μmの直線を引き、交差するそれぞれのクラック数を計測し、その平均値を算出した。
黒色度合
色差計を用いて黒化処理完了後の黒色亜鉛合金めっき鋼板の明度L*値を測定した。L*値が37以下であれば良好と判断した。
耐曲げ白化性
試験板をL字(直角)曲げ加工(家電製品匡体のトップカバー類の曲げ加工を模擬)を行い、曲げ部外面のクラック発生部の黒色外観を目視および10倍ルーペで観察し下記基準で評価した。
◎:曲げ加工による新生クラックは発生しない。黒化処理でできたクラック内面にも黒化処理皮膜を有する新生クラックは、曲げ加工に伴ってクラック内面が拡げられ露出する。このとき目視および10倍ルーペでの観察のいずれでもクラックがない正常部とクラック部の黒色外観に差がなく、曲げ部外面が均一黒色外観に見える。
○:曲げ加工による新生クラックは発生しない。黒化処理でできたクラック内面にも黒化処理皮膜を有する新生クラックは、曲げ加工に伴ってクラック内面が拡げられ露出する。このとき10倍ルーペでは僅かにクラックがない正常部とクラック部の黒色外観に僅かに差が見られるものの、目視での観察ではクラックがない正常部とクラック部の黒色外観に差がなく、曲げ部外面が均一黒色外観に見える。
△:曲げ加工による新生クラックと黒化処理でできたクラック内面にも黒化処理皮膜を有する新生クラックが混在するため、曲げ部外面がやや白色外観に見える。
×:黒化処理時にクラック内面にも黒化処理皮膜を有する新生クラックが殆ど発生していないため、曲げ加工時に発生した新生クラックが多数を占め、正常部の黒色外観に対し、明らかにクラック部は白く(青白く)、曲げ部外面が不均一な白色外観に見える。
耐引っ掻き疵付き性
冷延鋼板(0.8mm厚)を40mmφの円盤に打ち抜き、円盤を試験板との仰角45°に傾斜させて円盤面と垂直方向に1kgの荷重をかけながら10mm/secのスピードで50mm引っ掻く。引っ掻いた疵部の黒色外観を目視および10倍ルーペで観察し下記基準で評価した。
◎:目視および10倍ルーペでの観察のいずれでも正常部と引っ掻いた疵部の黒色外観に差なし。疵部も含めほぼ均一黒色外観に見える。
○:10倍ルーペでの観察では正常部と引っ掻いた疵部の黒色外観に僅かに差が見られるものの、目視での観察では正常部と引っ掻いた疵部の黒色外観に差なし。疵部も含めほぼ均一黒色外観に見える。
△:引っ掻いた疵部がやや白く見える。
×:正常部の黒色外観に対し、明らかに引っ掻いた疵部は白く(青白く)見える。
Figure 0006515383
Figure 0006515383
Figure 0006515383
上記表1−1、表2の実施例および表1−2の比較例の結果から、黒色亜鉛合金めっき鋼板は、耐曲げ白化性および耐引っ掻き疵付き性に優れた性能を有することが明らかである。比較例1、7,9,12では最大幅が0.3μm未満のクラックしか存在せず、また比較例4,6,8,11では最大幅が0.6μm超または0.3μm未満のクラックしか存在しなかった。
黒化処理皮膜の膜厚
実施例1、3、5の黒化処理ままの試験板を、X線光電子分光(ESCA)により深さ方向の分析を実施した。その結果、最表面から酸素が検出された。ESCAの深さ方向分析での、酸素ピークの最大強度が1/2となるまでを黒化処理皮膜の膜厚と定義した。その結果、実施例1,3,5の黒化処理まま試験板の黒化処理皮膜は、それぞれ5nm、37nm、41nmであった。
実施例24〜39、比較例13〜18の黒色亜鉛合金めっき鋼板の作製と評価方法
試験板の作製
表1−1の実施例1、3、5の黒化処理条件で作製した、黒化処理ままサンプルの上に、ウレタン樹脂:シランカップリング剤:りん酸系化合物を種々の固形分比率で含有する水系処理液を塗布し、塗装下地処理皮膜を0.5g/m2の付着量で形成した。その後、ポリエステル樹脂:ウレタン樹脂:メラミン硬化剤:カーボンブラック:ポリエチレンワックス=55:15:12:15:2の固形分比からなる黒色塗料を塗布し、黒色塗装皮膜(黒色塗膜)を3.5μmの厚みで形成したものを評価用試験板(実施例24〜39、比較例13〜18)とした。
下地処理皮膜の乾燥はPMT120℃で、黒色塗装皮膜の乾燥はPMT200℃で行った。
実施例24〜39の下地処理条件および皮膜性能の評価結果を表3に示し、比較例13〜18の下地処理条件および皮膜性能の評価結果を表4に示している。
皮膜性能の評価は、前記耐曲げ白化性、耐引っ掻き疵付き性に加えて、加工後塗膜密着性、耐食性を評価した。評価は以下の方法で行った。
加工後塗装皮膜密着性
黒色塗装皮膜(黒色塗膜)を形成した黒色塗装板サンプルを50mm×50mmサイズに切断し、JIS Z2248に準じ常温で密着曲げを実施し、曲げ部の頂点にポリエステルテープで貼付けした後、テープを剥離した。そして、テープの粘着面に付着している塗装皮膜を目視で観察し、下記の判定基準で評価した。評価基準は下記の通りであり、○を合格とした:
○ : 塗装皮膜剥離発生無し、
△ : 塗装皮膜剥離が曲げ部の一部で発生、
× : 塗装皮膜剥離が曲げ部の全体で発生。
耐食性
黒色塗装皮膜(黒色塗膜)を形成した黒色塗装板サンプルを70mm×150mmサイズに切断し、4辺をシールし、JIS Z2371に指定された条件で塩水噴霧試験を実施し、試験後サンプルの平面部の腐食面積率を求めて評価した。判定基準は下記の通りであり、○を合格とした:
○ : 120時間後白錆発生無し、
△ : 120時間後白錆発生有り(点状)、
× : 120時間後赤錆発生有り、全面白錆発生有り。
Figure 0006515383
Figure 0006515383
Figure 0006515383
表3の実施例および表4の比較例の結果から、塗装下地処理皮膜の固形分合計を100質量部としたとき、塗装下地処理皮膜におけるウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分合計がそれぞれ30〜60質量部、20〜40質量部、10〜20質量部を満たすものは、耐引っ掻き疵付き性、耐曲げ白化性の他に、加工後塗膜密着性、耐食性において優れた性能を示すことが明らかである。
一方、りん酸比率が低い比較例13では、耐食性の不良が認められ、りん酸比率が高い比較例14では、加工後塗膜密着性の不良が認められた。シランカップリング剤比率が高い比較例15では、耐食性の不良が認められ、シランカップリング剤比率が低い比較例16では、加工後塗膜密着性の不良が認められた。ウレタン樹脂比率が高い比較例17、および低い比較例18では、いずれも耐食性の不良が認められた。
表3の実施例および表4の比較例の結果から、耐曲げ白化性および耐引っ掻き疵付き性に優れた黒色亜鉛合金めっき鋼板における黒化処理皮膜と黒色塗装皮膜との比は、0.0014〜0.0205であり、0.0074〜0.0123の範囲にすると耐曲げ白化性および耐引っ掻き疵付き性のいずれもの評点が◎となり、より好ましい。
本発明の黒色亜鉛合金めっき鋼板は、事務用品、電気製品または自動車部品などの装飾が必要な部材に好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. 亜鉛と黒色化する金属の合金めっき層の大気環境に露出した表面全体にりん元素を含む黒化処理皮膜を有し、上記黒化処理皮膜の明度*値で37以下であり、且つ上記合金めっき層の表面全体に曲げ加工に伴う応力を緩和して曲げ加工による新生クラック発生を防止する方向性を持たないマイクロクラックが存在し、上記マイクロクラックの内部の全面にりん元素を含む黒化処理皮膜を有し、
    曲げ加工に伴う応力を緩和して曲げ加工による新生クラック発生を防止する方向性を持たないマイクロクラックとして、最大幅が0.3〜0.6μmの幅のクラックが、縦横斜めランダムに、10μm幅の視野あたり1個以上存在し、更に最大幅が0.3μm未満の幅のクラックが、縦横斜めランダムに、10μm幅の視野あたり5個以上存在することを特徴とする黒色亜鉛合金めっき鋼板。
  2. 黒色化する金属がニッケル、コバルト、鉄、銅、錫、モリブデン、の一種以上を含む金属であることを特徴とする請求項1に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板。
  3. 亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板を、0.25〜0.67mol/Lのりん酸イオンと1.17〜1.65mol/Lの硝酸イオンを含むpH1.5以下、液温20〜70℃の酸性水溶液を用いてスプレーシャワー処理するに際し、鋼板上への液流束を60〜300L/m2/minとすると共に、処理時間を2〜10secとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項1に記載の黒色亜鉛合金めっき鋼板の黒化処理皮膜上に、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物を含む塗装下地処理皮膜が形成され、塗装下地処理皮膜の固形分合計を100質量部としたとき、塗装下地処理皮膜におけるウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分合計がそれぞれ30〜60質量部、20〜40質量部、10〜20質量部であり、
    塗装下地処理皮膜の上に黒色塗装皮膜が形成されたことを特徴とする塗装皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板。
  5. 黒色化する金属がニッケル、コバルト、鉄、銅、錫、モリブデン、の一種以上を含む金属であることを特徴とする請求項に記載の塗装皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板。
  6. 亜鉛と黒色化する金属の合金めっき鋼板を、0.25〜0.67mol/Lのりん酸イオンと1.17〜1.65mol/Lの硝酸イオンを含むpH1.5以下、液温20〜70℃の酸性水溶液を用いてスプレーシャワー処理するに際し、鋼板上への液流束を60〜300L/m2/minとすると共に、処理時間を2〜10secとして黒化処理皮膜を形成し、
    当該黒化処理皮膜上に、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物を含有する水性処理液を塗布、乾燥して塗装下地処理皮膜を形成し、その上に黒色の塗料を塗布、乾燥して黒色塗装皮膜を形成することを特徴とする黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法であって、
    水性処理液中の固形分合計を100質量部としたとき、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、りん酸系化合物の固形分合計がそれぞれ30〜60質量部、20〜40質量部、10〜20質量部であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の塗装皮膜を有する黒色亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
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