JP5369986B2 - 塗装金属材とそれを用いてなる筐体 - Google Patents
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Description
したがって、本発明に係る塗装金属材は、その化成皮膜が形成された面を電気・電子機器用筐体の裏面として使用した場合に特に優れた効果をもたらすことが可能である。
本発明に係る塗装金属材は、金属基材と、この金属基材上に設けられた亜鉛−ニッケル合金めっき層と、この亜鉛−ニッケル合金めっき層上に設けられたクロムフリーの化成皮膜とを備える。ここで、亜鉛−ニッケル合金めっき層は、ニッケル含有量が10質量%以上15質量%以下であって、化成皮膜との界面にクラックを有する。そのクラックについて、塗装金属材から化成皮膜を除去して得られる、少なくとも金属基材と亜鉛−ニッケル合金めっき層とを備える部材の表面を走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が2000個/mm2以上150000個/mm2以下である。また、化成皮膜は、水溶性または水分散性ウレタン樹脂、リン酸化合物およびバナジウム化合物を含む水性化成処理液から形成され、その化成皮膜の付着量が0.02g/m2以上1.0g/m2以下である。
本発明に係る塗装金属材の基材をなす金属基材の材質は、後述する亜鉛−ニッケルめっき層による犠牲防食の効果が得られる材料であれば、特に限定されない。典型的な金属基材は鉄を主成分とする鋼材である。金属基材の形状は特に限定されないが、本発明に係る塗装金属材は塗膜層を有する状態でプレス加工などの二次加工が施されるため、典型的には板状である。板材の場合における厚み(板厚)は特に限定されない。二次加工、特にプレス加工のしやすさを考慮すると2mm程度を上限とすることが好ましい。
本発明に係る塗装金属材が備える亜鉛−ニッケル合金めっき層は、前述のように、組成および表面性状について次の特徴を有する。
めっき層におけるニッケル含有量は10質量%以上15質量%以下である。ニッケル含有量が10質量%未満の場合には、ニッケルを含有させたことに起因する平面部耐食性の向上の効果が安定的に得られなくなり、平面部から白錆が発生しやすくなる。ニッケル含有量が15質量%超の場合には、犠牲防食の効果が得られにくくなり、平面部から赤錆が発生しやすくなる。より好ましいニッケル含有量の範囲は、11.5質量%以上13.5質量%以下である。
本発明に係るめっき層は、化成皮膜との界面にクラックを有する。かかるクラック内に塗膜層、特に化成皮膜をなす成分が入り込むことにより、塗膜層がめっき層上に強固に固定されるアンカー効果が得られ、密着性が向上すると推測される。
まず、塗装金属材から樹脂皮膜を除去する。樹脂皮膜を除去することにより、少なくとも金属基材と亜鉛−ニッケル合金めっき層とを備える部材の表面を露出させることができる。ここで、樹脂皮膜とめっき層との間にある化成皮膜については、必ずしも除去されていなくともよい。化成皮膜は一般的に極めて薄く、後述するようにシランカップリング剤からなる場合には単層膜として存在している場合もあり、その後のSEMによるクラック観察にとって障害とならない。もちろん、化成皮膜が厚く、しかも導電性が低い場合には、クラック観察の障害となるため、除去しておくことが好ましい。
本発明に係るめっき層における付着量は特に限定されない。付着量が過度に少ない場合にはめっき層が均一に形成されず、高い耐食性を金属材の全面にわたり実現することが困難となる。一方、付着量が過度に多い場合には、製造コストが高くなる、パウダリングが発生しやすくなって加工性、特にめっき層上に形成された皮膜の加工後密着性が低下する等の問題を生ずることが懸念される。したがって、付着量は2g/m2以上25g/m2以下であることが好ましい。生産性、加工性および耐食性を高度に兼ね備える観点からは、5g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。
本発明に係るめっき層におけるクラック形成方法は特に限定されない。化学的な処理によりクラックを形成させてもよいし、熱的または物理的な処理によりクラックを形成させてもよい。
本発明に係る塗装金属材は、上記のめっき層上に化成皮膜(化成処理により形成された皮膜)を有する。本発明において、化成皮膜は、環境の観点よりクロムを全く含有しない、いわゆるクロムフリー化成皮膜とする。
一般に、水性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン−カルボン酸系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオキシアルキレン鎖を有する樹脂、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられるが、これらの中でも、本発明に係る化成処理液では、ウレタン系の水性樹脂を用いる。
ポリエステルポリオール化合物は有機酸とポリオールとのエステル反応によって得られるものである。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、およびグリセリン等の低分子量ポリオールが例示される。一方、有機酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸との反応によって得られるものであって、その末端にヒドロキシル基を有するものが例示される。
本発明に係る化成処理液におけるウレタン系水性樹脂の含有量は、この化成処理液から形成される化成皮膜の全皮膜形成成分(ウレタン系水性樹脂および下記の成分の総和を意味する。)に対する割合としてウレタン系水性樹脂由来の樹脂成分の含有量が30〜90質量%となる範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで高い導電性を実現しつつ優れた平面部耐食性を得ることが実現される。ウレタン系水性樹脂の含有量のさらに好ましい範囲は、化成皮膜の全皮膜形成成分に対する割合としてウレタン系水性樹脂由来の樹脂成分の含有量が40〜80質量%となる範囲であり、50〜70質量%とすれば特に好ましい。
リン酸化合物として、リン酸、亜リン酸および次亜リン酸、ならびにこれらのアルカリ金属塩が例示される。リン酸化合物を含有することにより、得られた化成皮膜の耐食性が向上する。
バナジウム化合物として、無機バナジウム化合物および有機バナジウム化合物が挙げられる。バナジウム化合物を含有することにより、得られた化成皮膜の耐食性が向上する。
有機バナジウム化合物として、トリエトキシバナジル、ペンタエトキシバナジウム、トリアミロキシバナジル、トリイソプロポキシバナジル等のアルコキシド;ビスアセチルアセトネートバナジル、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムオキシアセチルアセトネート等のアセトネート;ステアリン酸バナジウム、ピバリン酸バナジウム、酢酸バナジウム等の有機酸塩が挙げられる。
本発明に係る水性化成処理液は、二次加工性、特にプレス加工性を高める観点からワックスを含有していてもよい。ワックスの種類は限定されず、その含有量も加工の程度を考慮して適宜設定すればよい。ただし、含有量が過度に多くなると、相対的に上記の成分の含有量が低下するために、優れた平面部耐食性と高い導電性とを兼ね備えた化成皮膜を得ることが困難となる。したがって、ワックスを含有させる場合であっても、その含有量は、全皮膜形成成分に対する割合として15質量%を上限とすることが好ましい。
化成皮膜を形成するための処理液、および樹脂皮膜を形成するための塗料組成物における媒体(溶媒・分散媒)は、水を主成分とする。溶質・分散質の溶解・分散を良好にするために、水に対する溶解度が高い極性を有する液状有機物(極性有機溶媒)、例えばアルコール、エーテル、ケトンなどを水とともに使用してもよい。
本発明に係る塗装金属材は、上記の金属基材上に、上記の亜鉛−ニッケル合金めっき層、およびその上に形成された上記の化成皮膜からなる表面処理層を備えていれば、その表面処理層を備える面については優れた耐食性および高い導電性を有することができる。
ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、N-(2-アミノメチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノメチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラメトキシシラン。
チタン化合物としては、Tiアルコキシド、あるいは塩基性Ti炭酸塩、Tiフッ化物、Ti含有有機キレート、Ti含有カップリング剤(Tiアルコキシドにエポキシ基、ビニル基、アミノ基、メタクリロキシ基などの有機官能基が結合した化合物)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
第2の化成皮膜の付着量は20mg/m2以上1000mg/m2以下であれば良好な密着性、耐食性を安定的に確保できる。付着量が過度に少ない場合にはめっき層上に第2の化成皮膜が十分に存在しておらず、優れた密着性を発現するのが困難になる。一方、付着量が過度に多い場合には第2の化成皮膜自体が凝集破壊してしまう可能性がある上、コストが高くなってしまう。
第2の表面処理層は、第2の化成皮膜の上に樹脂皮膜を備える。ここで、「樹脂皮膜」とは、皮膜を形成するための塗料組成物を構成する成分の一つであるバインダー成分が主として樹脂から構成されるものをいう。
バインダー成分は、バインダー成分の主成分となる樹脂であるバインダー樹脂、硬化剤、およびその他の成分から構成される。以下に各成分について詳しく説明する。
バインダー樹脂は、主樹脂が水分散のポリエステル、ウレタン樹脂の少なくとも一方または、これらをブレンドした樹脂であることが好ましく、具体的には次の3つの態様を含む。
バインダー樹脂として水分散のポリエステル樹脂を単独で用いてもよい。その分子量は10000以上30000以下であることが好ましい。分子量が10000以下であると十分な加工性を確保するのが困難になることが懸念される。一方、分子量が30000を超えると樹脂自体の結合サイトが低下するため化成皮膜と優れた密着性を確保するのが困難になるとともに、メラミン等の硬化剤との架橋反応が十分に行われず塗膜層を構成する樹脂皮膜としての性能低下(例えば硬度低下)が懸念される。ポリエステル樹脂は単一種類であってもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
バインダー樹脂として水分散のウレタン樹脂を単独で用いてもよい。ウレタン樹脂のエマルジョン粒子径は、10nm以上100nm以下、より好ましい範囲としては、20nm以上60nm以下である。粒子径が過度に小さいものはコスト高になることが懸念される。一方、粒子径が過度に大きいものは、塗膜化した際にエマルジョン同士の隙間が大きくなり塗膜としてのバリア性(腐食性物質が塗膜層の表面から金属基材へと貫通することを抑制する性質)が低下することが懸念される。ウレタン樹脂のタイプとしては、エーテル系、ポリカーボネイト系、エステル系、アクリルグラファイトタイプ等あるが、これらの単独または、混合系を用いてもよい。別の観点からは、バインダー樹脂として、Tgが異なるものをブレンドして用いてもよい。その場合には、Tgが高い樹脂によりもたらされる優れたバリア性と、Tgが低い樹脂によりもたらされる優れた加工性とを兼ね備える樹脂皮膜を得ることが実現される。
上記ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂をブレンドした樹脂として用いてもよい。ブレンド比率は特に限定されない。用途に応じて適切なブレンド比率を設定すればよい。もちろん、この場合においても、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂のそれぞれが複数種類の樹脂から構成されていてもよい。
硬化剤は水溶性のものを用いることが好ましく、具体的には、メラミンを用いることが好ましい。硬化剤の添加量は、樹脂固形分100質量部に対して5質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。ここで、「樹脂固形分」とは、塗料組成物を焼き付けた際の固形分(樹脂皮膜)のうち、バインダー成分に由来する固形分をいう。したがって「樹脂固形分に対する質量%」とは、実質的に、バインダー成分のみを硬化させたときの重量計測値を100%としたときの質量割合をいう。
バインダー成分は硬化触媒を含むことが好ましい。硬化触媒の役割の一つとして、硬化剤同士の自己縮合反応の促進や硬化剤と樹脂との架橋反応の促進等が挙げられる。また上記の表面自由エネルギーの小さなメチル化メラミンやブチル化メラミンを用いることで、樹脂皮膜表面に硬化剤が表面に濃化し、架橋反応、自己縮合反応も促進される。このため、表面近傍の樹脂皮膜は耐溶剤性および耐薬品性が特に向上する。しかも、樹脂皮膜が後述する樹脂粒子を含有する場合には、表面に濃化した硬化剤によって樹脂皮膜の表面近傍の硬度が上昇し、プレス加工時に樹脂粒子が欠落しにくくなる。
本発明に係る樹脂皮膜に含有される顔料は、必要に応じ着色顔料、防錆顔料および光輝顔料も含有する。
樹脂皮膜を特定の色調に調色するために添加する着色顔料として、安価、安全、耐水性、耐候性に優れる無機系の顔料を用いることが好ましい。また着色顔料に加え、カーボンブラックまたは、チタニアのいずれか一方または両方の顔料が含有されていると、樹脂皮膜自体の熱放射性が向上する。したがって、熱放射性が求められる電気・電子機器の筐体に適用する場合にはこれらの顔料を含有させることが好ましい。
ここで、顔料における「平均粒径」とは、樹脂皮膜中に存在する顔料が単独で存在する場合は平均1次粒径を指し、顔料同士が凝集して存在する場合は凝集時の顔料の粒径を表す平均2次粒径を意味し、次の計測方法で求めることが好ましい。まず、塗膜層が形成された塗装鋼板を切断してその断面を露出させ、その断面をさらに研摩する。こうして得られた断面をSEMで観察して、樹脂皮膜中の断面の観察像を得る。その観察像の視野に存在する顔料から数個を選び出し、それぞれの顔料の長辺長さと短辺長さを測定し、これら長辺の平均値と短辺の平均値を算出し、さらにこれらを平均して平均1次粒径を算出する。
樹脂皮膜は体質顔料を含有してもよい。体質顔料は、それ自体に着色力、隠蔽力はないものの、他の顔料の希釈や増量の目的や樹脂皮膜の強度向上の目的で使用される顔料であり、具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリンなどが例示される。
メタリック調などの意匠性が求められる用途に適用する場合には、マイカやアルミフレーク等の光輝顔料を添加することで、メタリック調を発現させることができる。これら光輝顔料についての顔料の平均粒径は、樹脂皮膜厚の4倍以下程度が好ましい。また、添加量としては、加工性、特にプレス加工性を確保する上で、光輝顔料と上記防錆顔料の総量(平均平均粒径0.5μm以上の顔料)として、塗料固形分に対して15質量%以下にすることが好ましい。
また、これら光輝顔料については、0.5μmよりも大きな粒径となっており、添加量を増大することで、加工性、平面部の耐食性が低下することが懸念される。好ましい添加量としては、上記性能を確保する上で、光輝顔料を含む0.5μmよりも大きい顔料全体として、塗料固形分に対して20質量%以下とすることが好ましい。
樹脂皮膜に添加する防錆顔料として、吸油量が50ml/100g以上1000ml/100g以下であって平均粒径が10μm以下である多孔質シリカが適している。他のリン酸系防錆顔料、イオン交換シリカを単独で用いた場合には、多孔質シリカと同添加量入れた際に十分な耐食性向上効果が得られず、また、多孔質シリカと同じような耐食性性能を発現するために大量に防錆顔料を添加すると樹脂皮膜自体の加工性を損なうとともに、意匠性を損なうという問題もある。
上記のバインダー成分および顔料以外に樹脂皮膜中に含まれる成分として、レベリング剤、樹脂粒子、溶接性や電磁波シールド性を向上させるための導電粉、耐候性を改善するのに有効な紫外線吸収剤および光安定剤、プレス加工性の改善に有効なワックス等が挙げられ、これらを必要に応じて適宜含有させてもよい。
樹脂皮膜の焼付け温度は塗料の組成や求められる特性に応じて最適な温度を適宜選択すればよい。樹脂皮膜の焼き付け温度に関しては、PMTで170℃以上であることが好ましい。170℃未満であると、樹脂皮膜の架橋開始温度に十分に達していないため樹脂皮膜が未硬化な状態になる可能性がある。
樹脂皮膜の焼付け時間は焼付け温度との兼ね合いで適宜選択すればよい。
第2の表面処理層上に、さらに付加機能を有する付加層として、クリア塗料および/または着色塗料を塗布してもよい。そのような塗料を塗布することで、従来の3コート3ベークの塗装工程で、従来の塗装金属材にない新たな性能を有する塗装金属材を安価で製造することが可能となる。付加機能としては、光触媒機能等を有する耐汚染性、防臭、消臭性等が挙げられるが、これに限らない。
第2の化成皮膜を形成するための処理液、および樹脂皮膜を形成するための塗料組成物における媒体(溶媒・分散媒)は、水を主成分とする。溶質・分散質の溶解・分散を良好にするために、水に対する溶解度が高い極性を有する液状有機物(極性有機溶媒)、例えばアルコール、エーテル、ケトンなどを水とともに使用してもよい。
本発明に係る塗装金属材の金属基材が板状部材である場合には、この塗装金属材に対して適宜二次加工、具体的には切断加工、曲げ加工、プレス加工など、を行うことにより、製品またはその内部部品を収容する箱状体である筐体を形成することができる。この筐体において、第1の表面処理層を備える面を内部部品に対向する面、すなわち裏面とし、第2の表面処理層を備える面を外側の面、すなわちおもて面とすることが好ましい。このような構成の場合には、裏面においては優れた平面部耐食性と高い導電性とを兼ね備え、おもて面においては優れた平面部耐食性と優れた加工後密着性とを兼ね備えるため、電気・電子機器の筐体として理想的である。
(1)めっき鋼板
基材の亜鉛系めっき鋼板として、下表に示す亜鉛−ニッケル合金電気めっき鋼板(SZ)、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を使用した。鋼板はいずれも250×300mmのサイズであった。
すなわち、電気めっきラインでの最終の1、2セルを無通電浸漬処理することで、クラックを発生させた。また、ラインスピード、めっき液pH、無通電セルの数を調整することで、クラック密度を増減させた。
SEM観察で用いたSEMは、(株)日立ハイテクサイエンスシステムズ社製S−3400N型走査電子顕微鏡で、加速電圧25.0kVのSE像にてクラックを観察し、1000倍の画像を用いて、無作為に30枚撮影し、各写真にて無作為に選択した0.1mm×0.05mmの範囲で、クラックに囲まれた領域(クラック領域)の個数、すなわちクラック個数を測定した。
さらに、30枚の写真の各計測範囲におけるクラック領域数の平均値を算出し、200倍した値をクラック密度とした。図1の写真の鋼板のクラック密度は、4000個/mm2であった。
化成処理液(おもて面)については、下表2に示すシランカップリング剤を含有、非含有の化成処理薬液3種を作製した。
チッソ(株)製 サイラエース S510
・コロイダルシリカ:日産化学工業(株)製 スノーテックスN
・炭酸ジルコニウムアンモニウム:一般試薬
・水分散フェノール樹脂:DIC(株)製 フェノライト PE−602
使用した水分散または水溶性樹脂に関しては、表3記載のとおりである。
・CB:三菱化学(株)製カーボンブラック MA100
・シリカ:富士シリシア化学社製 サイロマスク(Ca0%タイプ)吸油量50ml/100g以上、平均粒径1.0μ以上
・ビーズ:平均粒径8μmのアクリル樹脂ビーズ
・光輝顔料:平均粒径8μmのマイカ、平均粒径10μmのアルミフレークを1:1にブレンド
上記の化成処理薬液を作製し、めっき鋼板上にバーコーターを用いて塗布し、10秒で、板の最高到達温度(PMT)が80℃になるように加熱し、おもて面の化成処理皮膜を形成した。
次に表4に記載の塗料組成物を用い、化成皮膜が形成された鋼板サンプルにバーコーターを用いて塗布し、板の最高到達温度180℃に50秒で達するように加熱し、おもて面の上塗り塗膜をなす樹脂皮膜を形成した。溶剤の添加、バーコーター番手変更をすることで膜厚調整を行い、7μmの膜厚を得た。
基材、化成処理、樹脂皮膜の組合せで作製したサンプルを表5に示す。
化成処理液については、下表5に示すウレタン系水性樹脂、リン酸化合物およびバナジウム化合物を含有、非含有の化成処理薬液4種を作製した。
上記の化成処理薬液を作製し、めっき鋼板上にバーコーターを用いて塗布し、10秒で、板の最高到達温度(PMT)が80℃になるように加熱し、裏面の化成処理皮膜を形成した。
・水分散フェノール樹脂:DIC(株)製 フェノライト PE−602
・リン酸化合物:リン酸
・バナジウム化合物:5酸化バナジウム
(1)加工後密着性
サンプルを常温密着曲げ実施し、曲げ部をセロハンテープで貼付、常温で1時間静置した後テープを剥離した。そして、テープの粘着面に付着している塗膜を目視で観察し、下記の判定基準で評価した。○以上を合格とした:
◎ : 塗膜剥離無し、
○ : 一部塗膜剥離発生、
△ : 塗膜発生、素地露出、
× : 曲げ部全体で塗膜剥離。
70mm×150mmサイズの試験辺の4辺をシールし、JIS2371に指定された条件で塩水噴霧試験を実施し、試験後サンプルの平面部の腐食面積率を求めて評価した。判定基準は下記の通りであり、◎および○を合格とした:
◎ : 240時間後白錆発生無し、
○ : 120時間後白錆発生無し、240時間後白錆発生有り、
△ : 120時間後白錆発生有り(点状)、
× : 120時間後赤錆発生有り、全面白錆発生有り。
導電性を評価するために、図6に示す装置を用いて表面抵抗値を測定した。
図6に示されるように、ほぼ直方体のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のブロックに所定の間隔(本実施例では60mm)で離間した2本の平行な溝を形成し、その溝に、部分的にPTFEブロックに埋設されるようにほぼ直方体の銅製のブロックが設置・固定されている。この2つの銅ブロックには、それぞれPTFEブロックの溝と平行な溝が設けられており、その溝に、金属メッシュを絶縁材に巻きつけたガスケット(フォーム化成株式会社製 EGUN1―0707)が銅ブロックに部分的に埋設されるように設置・固定されている。また、銅ブロックのそれぞれについて、リード線の一方の端部がはんだ付けされており、各リード線の他方の端部はマルチメーター(横河電機株式会社製 DIGITAL MULTIMETER 734 01)に接続されている。
◎:表面抵抗値が5Ω以下 (特に良好)
○:表面抵抗値が10Ω以下 (良好)
×:表面抵抗値が10Ωを超える (不芳)
うら面についても表面同様に耐食性の評価を行った。塩水噴霧試験を実施し、試験後サンプルの平面部の腐食面積率を求めて評価した。判定基準は下記の通りであり、◎および○を合格とした:
◎ : 120時間後白錆発生無し、
○ : 120時間後白錆発生有り(点状)、
× : 120時間後赤錆発生有り、全面白錆発生有り。
上記の評価を行った結果を表6に示す。
表6における判定(裏面)の欄における判定基準は次のとおりである。
○:裏面における耐食性および導電性がいずれも合格であった場合
×:裏面の評価の結果に不合格が含まれている場合
×:裏面およびおもて面の評価の結果に不合格が含まれている場合
Claims (4)
- 板状の金属基材と、
当該金属基材の双方の主面上に設けられた亜鉛−ニッケル合金めっき層と、
前記金属基材の一方の主面上に設けられた当該亜鉛−ニッケル合金めっき層上に設けられたクロムフリーの第1の化成皮膜と、
前記金属基材の他方の主面上に設けられた当該亜鉛−ニッケル合金めっき層上に設けられたクロムフリーの第2の化成皮膜と、
前記第2の化成皮膜上に設けられた2μm以上15μm以下の厚さの樹脂皮膜とを備え、
前記第1の化成皮膜上には皮膜が形成されていない塗装金属材であって、
前記亜鉛−ニッケル合金めっき層は、ニッケル含有量が10質量%以上15質量%以下であって、その付着量が2g/m2以上25g/m2以下であり、
前記亜鉛−ニッケル合金めっき層は前記化成皮膜との界面にクラックを有し、前記塗装金属材から前記第1の化成皮膜を除去して得られる少なくとも前記金属基材と前記亜鉛−ニッケル合金めっき層とを備える部材の一方の表面、および前記塗装金属材から前記樹脂皮膜を除去して得られる少なくとも前記金属基材と前記亜鉛−ニッケル合金めっき層とを備える部材の他方の表面のそれぞれについて、走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が、いずれも、2000個/mm2以上150000個/mm2以下であり、
前記第1の化成皮膜は、ウレタン系水性樹脂、リン酸化合物およびバナジウム化合物を含む水性化成処理液から形成され、前記リン酸化合物はリン酸、亜リン酸および次亜リン酸、ならびにこれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物であり、前記第1の化成皮膜の付着量が0.02g/m2以上1.0g/m2以下であること
を特徴とする塗装金属材。 - 前記第2の化成皮膜がシランカップリング剤および/またはシリカ微粒子を含有する化成処理液から形成されたものである請求項1記載の塗装金属材。
- 前記樹脂皮膜がウレタン系樹脂および/またはポリエステル系樹脂を含有する請求項1または2に記載の塗装金属材。
- 請求項1から3のいずれかに記載される塗装金属材をその樹脂皮膜が形成された面が外側になるように用いてなることを特徴とする筐体。
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