JP2016193593A - 耐吸湿性に優れる塗膜を有する端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板 - Google Patents

耐吸湿性に優れる塗膜を有する端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板表面から白錆を発生させることなく高度な端面赤錆抑制効果を発揮し、かつ高湿度環境下で塗膜に濡れの生じにくい、耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板を提供すること。
【解決手段】本発明のプレコート鋼板は、亜鉛系めっき鋼板の両面にクロメートフリー型化成処理層と、その上に形成した、最上層塗膜及びそれに隣接した下層塗膜を少なくとも含む複数の塗膜とを有し、片面の最上層の塗膜は下記(1)〜(4)の条件を満たし、かつ該最上層の塗膜に隣接する下層塗膜は、端面の赤錆発生の防止に有効な1種又は2種以上の潮解性の防錆顔料を含有していることを特徴とする:(1)塗膜表面の水に対する接触角が65〜75°、(2)塗膜の膜厚が0.5〜10μm、(3)塗膜中の顔料の含有量が、乾燥塗膜質量に対し15〜70質量%、及び(4)前記顔料のうち、平均一次粒径1μm以上のものの合計量が乾燥塗膜質量に対し5質量%以上。
【選択図】なし

Description

本発明は、端面の赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板に関する。より詳しく言えば、本発明は、例えば電気製品、建築などの分野において、水に濡れる環境、特に雨水等にさらされる屋外環境で使用されるクロメートフリー型プレコート鋼板であり、耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面の赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板に関する。
梅雨などの高温多雨時に屋外にクロメートフリー型プレコート鋼板を設置すると、塗膜のない切断端面から短期間に赤錆が発生する問題が過去に発生した。この問題の解決のため、異なる考え方に基づく2種類のプレコート鋼板が提案されている。
1つ目は、特許文献1に記載される、めっき鋼板の少なくとも片面の塗膜中に赤錆抑制効果を示す防錆顔料を添加した端面赤錆抑制型プレコート鋼板である。これは、プレコート鋼板の端面が水に浸漬したとき、塗膜中から防錆顔料が溶出し、その成分が端面を保護することによって赤錆の発生を抑制するものである。防錆顔料として効果が大きく実用化された例としてはタングステン酸ナトリウムが挙げられるが、タングステン酸ナトリウム以外にも赤錆抑制効果を示す防錆顔料は種々見出され、これらを塗膜中に含有させた様々なプレコート鋼板が提案されている。同じように耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板を記載している特許文献2には、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩が、赤錆抑制効果を示す防錆顔料として使用できることが記載されている。
2つ目は、特許文献3に記載される、めっき鋼板の一方の表面に水を透過しやすい皮膜層(以下「水透過性皮膜」と呼ぶ)を塗装したプレコート鋼板である。これは、皮膜中を容易に水が浸透し原板の鋼板表面にまで到達することにより、鋼板の切断端面の地鉄とめっき間に積極的にカップル電流を生じさせ、亜鉛の犠牲防食効果により端面からの赤錆の発生を抑制しようとするものである。水透過性皮膜としては、比較的薄い皮膜中に所定量の顔料を含有させ、かつ少なくともその一部は比較的大きな粒径の顔料とすることで、外界の水分が塗膜を通過して亜鉛系めっき層に到達しやすくなるよう設計した皮膜が提案されている。
国際公開第2011/071175号 特開2009−045923号公報 特開2010−083075号公報
これまでに提案されている2種類のプレコート鋼板にはそれぞれ課題がある。特許文献1、2に記載されたプレコート鋼板については、防錆顔料が、いずれも水濡れによって塗膜中から溶出することが前提となるため、水溶性が高く高湿度で潮解性を有する物質である点で共通している。このような潮解性物質を含有する塗膜は、高湿度環境下で吸湿しやすく、塗膜表面が濡れた状態になる問題が顕在化した。例えば、プレコート鋼板を機器類の筐体として使用する場合に、塗膜表面が濡れた状態になると、注意書きのステッカーや気密性向上のための発泡材等を粘着剤で塗装面に貼り付ける際、粘着剤が接着できない問題が発生した。この問題を解決するために、高湿度環境になっても塗膜が濡れた状態にならないようにすることが課題となっている。
一方、特許文献3に記載されたプレコート鋼板については、皮膜が吸湿しやすい問題は存在しないが、亜鉛の犠牲防食効果だけでは赤錆抑制効果が不十分であり、かつ亜鉛の溶解による鋼板表面からの白錆の発生が回避できないことが問題である。
このように、従来の端面赤錆耐食性を備えたクロメートフリー型プレコート鋼板に関しては、鋼板表面から白錆を発生させることなく高度な端面赤錆抑制効果を発揮し、かつ高湿度環境下で塗膜が濡れた状態にならないようにすることが課題となっている。
本発明は、この課題の解決を目的とするものである。
上記課題を解決する本発明の要旨は次のとおりである。
〔1〕亜鉛系めっき鋼板の両面にクロメートフリー型化成処理層と、その上に形成した、最上層塗膜及びそれに隣接した下層塗膜を少なくとも含む複数の塗膜とを有するクロメートフリー型プレコート鋼板であって、片面の最上層塗膜は下記(1)〜(4)の条件を満たし、かつ該最上層の塗膜に隣接する下層塗膜は、端面の赤錆発生の防止に有効な1種又は2種以上の潮解性の防錆顔料を含有していることを特徴とする、耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板:
(1)塗膜表面の水に対する接触角が65〜75°、
(2)塗膜の膜厚が0.5〜10μm、
(3)塗膜中の顔料の含有量が、乾燥塗膜質量に対し15〜70質量%、及び
(4)前記顔料のうち、平均一次粒径1μm以上のものの合計量が乾燥塗膜質量に対し5質量%以上。
〔2〕前記潮解性の防錆顔料が、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選ばれることを特徴とする、上記〔1〕に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
〔3〕前記タングステン酸塩が、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸マグネシウム又はそれらの混合物であることを特徴とする、上記〔2〕に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
〔4〕前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はそれらの混合物であることを特徴とする、上記〔2〕に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
〔5〕前記アルカリ金属リン酸塩が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物又はそれらの混合物であることを特徴とする、上記〔2〕に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
〔6〕前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであることを特徴とする、上記〔2〕に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
〔7〕前記次亜リン酸塩が次亜リン酸カルシウムであることを特徴とする、上記〔2〕に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
本発明によれば、鋼板表面からの白錆の発生がなく、かつ端面赤錆抑制効果を発揮しつつ、高湿度環境下での塗膜の濡れを回避できるクロメートフリー型プレコート鋼板の利用が可能になる。
様々な温度と相対湿度に調整した試験環境に30分間暴露したプレコート鋼板裏面の吸湿による塗膜の濡れを観察した結果を示す図である。 プレコート鋼板に貼付した貼付材の剥離荷重測定方法を説明する図である。 プレコート鋼板に貼付した各種貼付材の剥離荷重の測定結果を示すグラフである。 屋外暴露試験に供したプレコート金属板ノックアウト部の端面赤錆発生状況を示す図である。
本発明者らは、上述の目的達成のためいろいろと検討する過程で、端面の赤錆防止に有効な防錆顔料を含有する塗膜の表面を、防錆顔料の効果発現のために液体の水は通すが、塗膜中の防錆顔料の潮解による吸湿の原因となる気体の水(水蒸気)は透過させない皮膜で覆うことの有効性を検証した。そのような皮膜として有望と考えた様々な水透過性−水蒸気不透過性皮膜(一例として、シリカ粒子を分散した樹脂膜)で実験を重ねたところ、有効であることが確認できた唯一の膜が、上記の本発明の要旨〔1〕に挙げた4つの条件を満たす最上層塗膜であった。
より具体的に言えば、本発明者らは、プレコート鋼板の端面赤錆耐食性に有効であるが潮解性による吸湿のために塗膜表面の濡れの原因となる防錆顔料を含有している塗膜の表面に、下記の(1)〜(4)の条件を満たす最上層塗膜、すなわち、
(1)塗膜表面の水に対する接触角が65〜75°、
(2)塗膜の膜厚が0.5〜10μm、
(3)塗膜中の顔料の含有量が、乾燥塗膜質量に対し15〜70質量%、及び
(4)前記顔料のうち、平均一次粒径1μm以上のものの合計量が乾燥塗膜質量に対し5質量%以上、
の条件を満たす塗膜を設けることで、上述の目的を達成できることを見いだして、本発明を完成するに至った。
本発明のプレコート鋼板は、亜鉛系めっき鋼板の両面にクロメートフリー型化成処理層とその上に形成した複数の塗膜を有する。化成処理層の上にプライマー塗膜層を設け、その上に1以上の上層塗膜を設けた構造のものが一般的であるが、これに限定されることはない。本発明のプレコート鋼板の特徴は、片面の最上層の塗膜が上記の(1)〜(4)の条件を満たし、これに隣接した下層塗膜が端面赤錆耐食性に有効な1種又は2種以上の潮解性防錆顔料を含有していることである。端面耐食性に有効な防錆顔料を含有する下層塗膜は、プライマー塗膜であっても差し支えない。本発明では、最上層塗膜に隣接した下層塗膜が上述の防錆顔料を含有することが必要であるが、この要件を満たす限り、最上層塗膜の下方に位置する他の任意の塗膜が上述の防錆顔料を含有することも可能である。
端面耐食性に有効な潮解性防錆顔料としては、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
タングステン酸塩としては、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム又はタングステン酸マグネシウムを用いることができ、それらの混合物を用いてもよい。タングステン酸塩は、塗膜中に6〜50wt%程度混入することができる。6wt%より少ないと、端面赤錆耐食性の発現に不足し、50wt%より多くなると、成膜後の塗膜が湿潤環境に曝されたときにタングステン酸塩が過度に溶出し、塗膜に膨れや剥離が発生しかねない。塗膜中のタングステン酸塩含有量は、より好ましくは7〜40wt%、最も好ましくは10〜30wt%である。
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム又はケイ酸リチウムを用いることができ、それらの混合物を用いてもよい。ケイ酸塩は、塗膜中に5〜50wt%程度混入することができる。5wt%より少ないと、端面赤錆耐食性の発現に不足し、50wt%より多くなると、成膜後の塗膜が湿潤環境に曝されたときにケイ酸塩が過度に溶出し、塗膜に膨れや剥離が発生しかねない。塗膜中のケイ酸塩含有量は、より好ましくは7〜40wt%、最も好ましくは10〜30wt%である。
本発明で使用するタングステン酸塩又はケイ酸塩は常温で粉末であり、混入する塗膜の厚さを考慮して、最大粒径が5〜20μm、より好ましくは5〜10μm程度になるまで塗料中で分散して使用することが好ましい。
本発明では、端面赤錆耐食性を発現するこのほかの防錆顔料として、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を用いることも可能である。アルカリ金属リン酸塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物又はリン酸二水素ナトリウム二水和物を用いることができ、それらの混合物を用いてもよい。アルカリ金属塩化物としては、例えば塩化ナトリウムを用いることができる。次亜リン酸塩としては、例えば次亜リン酸カルシウムを用いることができる。塗膜中におけるこれらの防錆顔料の好適な含有量は0.5〜30wt%であり、1〜20wt%がより好適である。
本発明で用いる防錆顔料は、上述の物質の任意の組み合わせであることもできる。
最上層皮膜に隣接する下層皮膜中の端面赤錆耐食性の発現に有効な防錆顔料以外の構成成分は、通常のプレコート鋼板の塗膜層で用いられているものでよい。
最上層塗膜に隣接した下層塗膜は、膜厚が2〜20μmであるのが好ましい。2μm未満の場合は、添加した防錆顔料の絶対量が不足し、十分な端面赤錆耐食性が得られず、20μmを超えると、端面赤錆耐食性の効果が飽和し不経済であると同時に、加工時の密着性が低下する。より好ましい膜厚は3〜15μm、更に好ましくは5〜10μmである。ここで言う膜厚とは、当該塗膜層の平均膜厚、すなわち当該塗膜層の上層との界面と下層との界面との距離の平均である。膜厚は以下の方法で測定することができる。プレコート鋼板をエポキシ樹脂に埋め込み硬化させ、断面方向から研磨した後、塗膜の断面顕微鏡観察を行い、上下の界面間距離を実測する。上下の界面間距離が測定場所によりに変動することを考慮し、断面顕微鏡観察する範囲は少なくとも10mm以上であることが望ましい。添加した防錆顔料の粒径が大きく当該塗膜の樹脂から突出している場合は、その突出した顔料表面を当該塗膜層の上下層との界面とみなす。
防錆顔料を含有する下層塗膜に隣接する最上層塗膜は、
(1)塗膜表面の水に対する接触角が65〜75°、
(2)塗膜の膜厚が0.5〜10μm、
(3)塗膜中の顔料の含有量が、乾燥塗膜質量に対し15〜70質量%、及び
(4)前記顔料のうち、平均一次粒径1μm以上のものの合計量が乾燥塗膜質量に対し5質量%以上、
という条件を満たす必要がある。ここでの「顔料」とは、着色や、あるいは防錆などを目的とした顔料全体をいう。また、乾燥塗膜質量(塗膜の乾燥状態での質量)を構成する成分として、バインダー、顔料、およびビーズなどの他の成分が挙げられる。ここで言う膜厚は、当該塗膜層の平均膜厚、すなわち最上層塗膜層の表面と下層塗膜との界面との距離の平均である。膜厚は上述の下層塗膜の膜厚測定の際に併せて行うことができる。なお、下層塗膜に添加した防錆顔料の粒径が大きく下層塗膜の樹脂から最上層塗膜中に突出している場合は、その突出した顔料表面を下層塗膜層との界面とみなす。
塗膜表面の水に対する接触角は、65〜75°である必要がある。65°未満では、水蒸気に対するバリア層としての効果が不足し、隣接した下層塗膜中の防錆顔料の潮解作用による吸湿を十分に抑制することができず、75°を超えると、水に浸漬したとき下層塗膜中からの防錆顔料の溶出が阻害され、十分な端面赤錆耐食性が得られないからである。
接触角の測定は、作製した塗装鋼板からシャーリングにより30mm×60mmのサイズで切り出した試験片を湿潤試験条件(温度:49℃、相対湿度90〜95%)に15時間静置してからブロアーで十分に乾燥させた後、端面赤錆耐食性に有効な防錆顔料を含有する塗膜を設けた面の最上層塗膜(水透過性−水蒸気不透過性皮膜)の水との接触角を測定する。マイクロシリンジから最上層塗膜上に水滴を滴下して30秒後の水との接触角を、汎用の接触角測定器(例えば協和界面科学社製のCA−Aタイプの接触角測定器など)を用いて測定する。
上記(1)〜(4)の条件を満たして、最上層塗膜表面を親水性にするとともに、比較的薄い最上層塗膜中に所定量の顔料を含有させ、かつ少なくともその一部は比較的大きな粒径の顔料とすることで、最上層皮膜に接した気体としての水(水蒸気)に対しては最上層塗膜がバリア層となり、隣接した下層塗膜中の防錆顔料の潮解作用による吸湿を抑制する一方で、最上層塗膜に接した液体の水はこの塗膜の毛管作用によって下層塗膜表面に到達するのを可能にすることにより、防錆顔料の溶出による端面の赤錆防止効果の発現を可能にする。同時に、防錆顔料を含有している下層塗膜表面に達した液体の水が鋼板表面の亜鉛めっき層と接触することがないため、亜鉛の溶解による鋼板表面からの白錆の発生が回避される。
このように水透過性であってかつ水蒸気不透過性である最上層塗膜は、主にバインダーと顔料で構成され、必要に応じてその他の成分を含有する。
バインダーは、主成分であるバインダー樹脂と硬化剤、およびその他の成分から構成される。
バインダー樹脂の種類は、実用的には塗装鋼板として要求される性能に応じて適宜選択され、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂など、これまでも塗装鋼板に用いられてきた各種の樹脂を使用することができる。とは言え、本発明では最上層塗膜表面の水に対する接触角を65〜75°にする必要があり、従って他の成分を加えて最上層塗膜を形成したときに接触角をこの範囲内とすることが可能な樹脂を用いることが求められる。そのような樹脂として、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂をベース樹脂として、例えば、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含有させた樹脂等が例示される。
テトラアルコキシシランの例としては、メチルシリケート51、 エチルシリケート40、 エチルシリケート48 (コルコート社製)や、MKCシリケートMS51、MS56(三菱化学社製)等の市販品等が挙げられる。また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のモノマーに水及び触媒を加えて加水分解縮合させてもよい。
バインダー樹脂に組み合わせる硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。必要であれば、架橋触媒を配合してもよい。
バインダー成分の乾燥塗膜質量に対する含有量は、30〜85質量%とすることが好ましい。バインダー成分の含有量が過度に多い場合には相対的に顔料の含有量が低下し、液体の透過のために利用できる細孔の数が不足することになるとともに、耐食性が低下したり、所望の色調の着色が困難となったりする。一方、その含有量が過度に低い場合には、塗膜自身の硬度は上昇し耐疵付き性は向上するが、塗膜自身の伸びが低下するため、加工性が低下したりする。特に好ましい含有量の範囲は乾燥塗膜質量に対して40〜60質量%である。
顔料の種類は特に限定されず、防錆顔料、着色顔料などいずれを用いてもよい。
防錆顔料の例としては、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸および亜リン酸のZn、Mg、Al、Ti、Zr、及びCe塩、Caイオン交換シリカ、並びに吸油量100〜1000ml/100g、比表面積200〜1000m2/g、平均粒径2〜30μmの非晶質シリカ粒子が挙げられる。
着色顔料の例としては、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンなどの無機顔料、銅フタロシアニン、トルイジンレッドなどの有機顔料、さらにはカーボンブラックなどが挙げられる。
顔料の含有量は、乾燥塗膜質量に対して15〜70質量%とする。顔料の含有量が15質量%未満では、液体の水が塗膜を透過しにくくなるため、下層塗膜中の防錆顔料の溶出が妨げられ、端面の赤錆の防止効果が現れにくくなってしまう。一方、顔料の含有量が70質量%を超えると、加工性が低下するなどプレコート鋼板に求められる他の特性を満足することが困難となる。
また、顔料のうち、平均一次粒径1μm以上の顔料の乾燥塗膜質量に対する合計含有量を、5質量%以上とする必要がある。このような粒径が比較的大きな顔料の存在することが、液体の水の透過を可能にする上で重要である。平均一次粒径1μm以上の顔料の乾燥塗膜質量に対する合計含有量の上限は特に設定されないが、塗装後の加工性維持の理由から70質量%以下とすることが好ましい。とは言え、平均一次粒径1μm以上の顔料の乾燥塗膜質量に対する合計含有量は5〜30質量%がより好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
顔料の平均一次粒径は塗膜の厚さよりも小さいことが好ましい。顔料の平均一次粒径が塗膜の厚さよりも大きいものが過度に多い場合には、塗装面の耐食性が低下することが懸念される。
最上層塗膜は、上記のバインダー及び顔料成分以外に、必要に応じて、レベリング剤、外観の凹凸を得るためのビーズ、溶接性や電磁波シールド性を向上させるための導電粉、加工性を向上させるためのワックス等のその他の成分を含有してもよい。但し、これらの成分の含有量が増えると、液体の水の透過性や気体の水に対するバリア効果等の最上層塗膜の本来の特性の低下を招くため、これらの他の成分の乾燥塗膜質量に対する合計含有量は20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることが特に好ましい。
最上層塗膜の厚さは0.5〜10μmとする。0.5μm未満の場合には、気体の水(水蒸気)に対するバリア効果が小さくなる。10μmを超えると、端面の赤錆発生の抑制に必要な液体の水の透過量の確保が困難となる。最上層塗膜の厚さは、1〜5μm程度が好適であり、1〜2μm未満がより好適である。なお、上述のように、塗膜の厚さは含有させた顔料の平均一次粒径以上とすることが好ましい。
本発明の最上層塗膜として使用するような塗膜は、水が透過するものとして特許文献3に記載されている。特許文献3における水透過性の塗膜の役割は、液体としての水が塗膜に触れたときに水が塗膜中を自由に透過して塗膜中の空隙を満たし、塗膜下のめっき表面を液体(水)で濡らすことである。本発明では、最上層塗膜に隣接する下層がめっき層でなく防錆顔料を含有する塗膜層であるが、下層へ液体の水を浸透させるという塗膜の役割は、特許文献3におけるものと同じである。すなわち、屋外に設置されたプレコート鋼板製品が降雨などで水に濡れたとき、切断端面からの赤錆発生を抑制するためには、水に溶出することで赤錆防止効果を発揮する防錆顔料を含有する下層塗膜中から確実に防錆顔料を溶出させ切断端面に作用させることが必要であるため、最上層塗膜には、塗膜中に水を含浸し、下層から溶出した防錆顔料をプレコート鋼板製品の表面を濡らしている水の方まで自由に拡散させる役割を担わせている。
一方、本発明においては、最上層塗膜に新たにそれ以外の役割も担わせている。それは、気体としての水(水蒸気)が最上層塗膜に触れた場合には、最上層塗膜がバリア層となって下層中に含有する潮解性防錆顔料が吸湿するのを抑制する効果である。上述のように、本発明では最上層塗膜に隣接する下層がめっき層でなく防錆顔料を含有する塗膜層である。下層が塗膜層の場合には、最上層塗膜と下層塗膜層の密着性は下層がめっき層の場合より良い。そうすると、上層内で水を透過させる空隙は下層塗膜層で密閉された構造になり、毛管現象で水は下層塗膜層に達する事が出来るが、気体の場合には、下層塗膜に接する部位にある最上層塗膜の空隙の下部は密閉されているので、空隙中に有る気体は置換しにくい。この理由により、液体の水は透過するが気体は透過しないという新しい機構が発現すると考えられる。結果として、防錆顔料含有層の上層に上述の最上層塗膜を設けることによって、高湿度環境下でもその環境に直接触れているプレコート鋼板製品表面が容易には濡れるに至らないようにすることができる。
以上のように本発明では、特許文献3の水透過性塗膜に、従来の機能に加えて、更にそれとは効果が逆方向ともいえる新たな機能を担わせている。すなわち、最上層塗膜に液体の水が触れた場合には下層からの防錆顔料の溶出を妨げず(従来の機能)、気体の水が触れた場合には容易に溶出させない機能(新たな機能)である。本発明では、適切な塗膜設計により、これらの機能を両立させることに成功した。
本発明のクロメートフリー型プレコート鋼板において、片面に設ける上記(1)〜(4)の条件を満たす最上層塗膜とこれに隣接する潮解性防錆顔料含有の下層塗膜以外の塗膜(反対面の全ての塗膜を含めて)は、クロメートフリー型プレコート鋼板の製造に用いられる一般的な材料から形成することが可能である。その一方、両面の全ての塗膜は、通常の製造設備、製造方法により容易に形成することができ、それらについてここで詳細に説明するには及ばない。
本発明のプレコート鋼板の基材である鋼板としては、亜鉛系めっき鋼板を用いることができる。亜鉛系めっき鋼板としては、例えば溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、Al−亜鉛めっき鋼板、Al−Mg−Si−亜鉛めっき鋼板など任意のものが使用できる。中でも、Al−Mg−Si−亜鉛めっき鋼板を使用した場合に、耐赤錆性の向上が特に顕著であり、好ましい。
亜鉛系めっき鋼板の表面には、塗膜用塗料を塗布するための前処理層として、通常のクロメートフリー型化成処理層を設けることができる。一例として、化成処理層は、シリカ、シランカップリング剤、タンニンまたはタンニン酸、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物のいずれか2種以上と樹脂を含有する皮膜を用いることができる。化成処理層は、化成処理液を浸漬塗布、ロールコーター塗装、リンガーロール塗装、刷毛塗り、スプレー塗装などにより形成することができる。
次に、実施例により本発明を説明する。以下の実施例は例示を目的としたものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
製品としてのプレコート鋼板は一般に、それを加工して最終製品を製造する需要家が求める意匠性の要件を満足する塗膜を、最終製品において外側に位置し人の目に触れる面である一方の面に設けた形で需要家に供給され、それに対して他方の面の塗膜には、一方の面の塗膜に求められるほどの意匠性の要件は求められず、他方の面の塗膜は端面赤錆耐食性顔料のように需要家が求める意匠性には直接影響しない成分を含有する。一般に、注意書きのステッカーや気密性向上のための発泡材等を粘着剤で貼付する面は、最終製品において人の目に触れないこの他方の面である。そこで、以下においては、便宜上、需要家が求める性能の塗膜を備えた面を「オモテ面」、端面赤錆耐食性顔料含有塗膜とこれに隣接した最上層塗膜を備えた面を「裏面」と称することにする。
原板として、11%Al−3%Mg−0.2%Si−亜鉛めっき鋼板(0.6mm厚、片面めっき付着量80g/m2)(以後SDと呼ぶ)、および溶融亜鉛めっき鋼板(0.6mm厚、片面めっき付着量80g/m2)(以後GIと呼ぶ)を使用した。これらの原板の表面をアルカリ脱脂した後、クロメートフリー化成処理液(シランカップリング剤、タンニン酸、シリカ、及びポリエステル樹脂混合系処理液)(以後、処理Aと呼ぶ)により化成処理(付着量:片面100mg/m2)した。
オモテ面の塗装処理として、化成処理した原板に、一般プライマー塗装を施し(日本ファインコーティングス社製のポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型FLC687樹脂塗料(一般的顔料含有))、乾燥膜厚5μm、PMT:到達板温度215℃にて熱風乾燥した。その上に一般トップ塗料として、高分子ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC7000樹脂塗料(淡ベージュ色))を乾燥膜厚15μm、PMT:到達板温度230℃にて熱風乾燥し、トップ塗膜を形成した。
裏面には、下層塗膜用プライマーとして、3種類の塗料を使用した。うち2種類は、前述の端面赤錆耐食性顔料としてタングステン酸ナトリウムあるいはリン酸二水素カリウムを18wt%含有するもので、残りの1種類は前述の端面赤錆耐食性顔料を含有せず、一般的な顔料のみ含有する一般プライマー(前述のオモテ面プライマーと同一塗料)である。塗料に使用した樹脂はいずれもポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型樹脂(日本ファインコーティングス社製FLC687樹脂)である。プライマーは乾燥膜厚として5μmを形成(PMT:到達板温度215℃にて熱風乾燥)した。その上層に形成するトップ塗膜として、12種類を使用した。うち9種類は前述の特許文献3の水透過性皮膜又は本発明による水透過性−水蒸気不透過性皮膜に該当するもの、2種類は前述の端面赤錆耐食性顔料としてタングステン酸ナトリウムあるいはリン酸二水素カリウムを18wt%含有するもの、残りの1種類は前述の端面赤錆耐食性顔料を含有せず、一般的な顔料のみ含有する一般の裏面トップ塗膜である。最初の9種類のうち1種類(表1中に「タイプI」と表記)は、本願の最上層塗膜の条件を満たす基本的塗膜である(但し、比較のために膜厚が本発明の範囲を外れるものも使用した)。このタイプIの皮膜の形成は、NKC1200SCクリア(日本ファインコーティングス社製の低汚染性付与(シラノール基表面濃化)焼付け型ポリエステル樹脂のクリアタイプ塗料)に、チタニア(石原産業社製タイペークCR−90)40wt%、トリポリリン酸アルミニウム(テイカ社製K−WHITE #82)5wt%、多孔質シリカ(洞海化学工業社製H−33)5wt%を配合して調製した塗料(乾燥塗膜質量に対する顔料含有量50wt%)を使って行った。塗料中の平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量は、乾燥塗膜重量に対して10%と算出された。形成した最上層塗膜の接触角は、前述の測定方法に従い協和界面科学社製のCA−Aタイプの接触角測定器で測定して、70°であった。残りの8種類は、本願の最上層塗膜の条件を満たしているが、各種条件が種々変化したものとして使用した。NKC1200SCクリア中のシラノール基付与添加剤の添加量を増量し、形成した最上層塗膜の接触角が65°となるようにしたもの(この変更に伴い接触角以外の条件に変化なし)が「タイプII」、シラノール基付与添加剤の添加量を減量し、形成した最上層塗膜の接触角が75°となるようにしたもの(この変更に伴い接触角以外の条件に変化なし)が「タイプIII」、各種顔料の添加量の調整により塗料中の顔料の含有量が乾燥塗膜重量に対して15%としたもの(この変更に伴い、平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量は乾燥塗膜重量に対して8%となるが、それ以外の条件に変化なし)が「タイプIV」、各種顔料の添加量の調整により塗料中の顔料の含有量が乾燥塗膜重量に対して70%としたもの(この変更に伴い、平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量は乾燥塗膜重量に対して12%となるが、それ以外の条件に変化なし)が「タイプV」、各種顔料の添加量の調整により塗料中の平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量が乾燥塗膜重量に対して5%としたもの(この変更に伴い、それ以外の条件に変化なし)が「タイプVI」、各種顔料の添加量の調整により塗料中の平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量が乾燥塗膜重量に対して15%としたもの(この変更に伴い、それ以外の条件に変化なし)が「タイプVII」、各種顔料の添加量の調整により塗料中の平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量が乾燥塗膜重量に対して30%としたもの(この変更に伴い、それ以外の条件に変化なし)が「タイプVIII」、各種顔料の添加量の調整により塗料中の平均一次粒径1μm以上の顔料の合計量が乾燥塗膜重量に対して40%としたもの(この変更に伴い、それ以外の条件に変化なし)が「タイプIX」である。
一方、タングステン酸ナトリウムあるいはリン酸二水素カリウムを含有する塗膜、および一般塗膜は、いずれも塗料樹脂として日本ファインコーティングス社製ポリエステル/メラミン硬化型FLC100HQ樹脂を使用した。裏面の最上層塗膜は、乾燥膜厚として表1に示す膜厚を形成(PMT:到達板温度230℃にて熱風乾燥)した。
作製したプレコート鋼板の概要を表1に示す。
〔評価1〕裏面塗膜の吸湿による濡れの評価
こうして作製した実施例および比較例から選択したプレコート鋼板から切り出した50×100mmの試験片を、様々な温度と相対湿度に調整した試験環境に30分間暴露して、裏面の吸湿による塗膜の濡れを観察した。結果は図1(a)〜(c)に示す3パターンに集約された。本発明の実施例のプレコート鋼板では、特に常温(20℃)付近で観測される濡れがなくなっている(図1(c)参照)。これを要約して○と評価し、表1に記載した。これは、前述のとおり、最上層皮膜に接した気体としての水(水蒸気)に対して最上層塗膜がバリア層となり、隣接した下層塗膜中の防錆顔料の潮解作用による吸湿を抑制した結果であると考えられる。プレコート鋼板を使用して最終製品を製造する需要家でのステッカーや発泡材等の貼付材の貼り付け作業効率の向上にとって極めて有利である(一旦貼り付けたステッカー等は、その後プレコート鋼板表面に濡れが生じる環境下に置かれても、剥がれることはない)。なお、最上層皮膜の膜厚が本発明の下限(0.5μm)である実施例3では、複数回の試験で結果がばらついて塗膜の濡れが観察されるケースもあった。よって、最上層皮膜の膜厚は1μm以上がより好ましいと考えられる。一方、潮解性を持った端面赤錆耐食性顔料を含有する塗膜を裏面に形成していない比較例7、8、10のプレコート鋼板では、裏面塗膜表面の濡れは観測されなかった(図1(a)参照)。これを要約して◎と評価し、表1に記載した。また、裏面の最上層に本発明の最上層塗膜を設けずに潮解性を持った端面赤錆耐食性顔料を含有する塗膜を形成した比較例3、4と、最上層塗膜が膜厚の点で本発明の要件を満たさない比較例1と、最上層塗膜が潮解性の端面赤錆耐食性顔料を含有している比較例5、6、9のプレコート鋼板では、10〜20℃の温度領域で裏面塗膜表面の濡れが観測された(図1(b)参照)。これを要約して×と評価し、表1に記載した。
〔評価2〕高湿度環境下での貼付材接着性
各試験片の裏面塗膜の高湿度条件下での貼付材の接着性を試験した。各試験片を20℃、相対湿度95%の環境に30分間放置後、図2に示したように試験片1の塗膜にエアコン分野で用いられている各種の貼付材2(15mm幅)を貼り付け、その直後に貼付材2の一端をばねばかり3で塗膜と垂直方向に引っ張って剥離荷重を測定した。測定結果を図3に示し、その要約を表1に示す。本発明の実施例4のプレコート鋼板では、高湿度環境下で貼付材を貼付しても高い接着強度が示されることが分かった(表1における評価「○」)。それに対し、比較例5のプレコート鋼板における接着強度は格段に低かった(表1における評価「×」)。
〔評価3〕蒸留水浸漬試験による端面赤錆耐食性
非電解質の湿潤環境下で短期間に発生する赤錆に対する耐性を簡易的に評価する目的で、蒸留水浸漬試験を行った。実施例および比較例から選択した各プレコート鋼板について、10×40mmの試験片20枚をそれぞれ、直径80mmのシャーレに入れた蒸留水40mlに浸漬して、端面の赤錆発生の推移を次の基準による評点で評価した。
評点5: 赤錆の発生全くなし。
評点4: 赤錆5点以下。
評点3: 赤錆が端面面積の1/4未満。
評点2: 赤錆が端面面積の1/2未満。
評点1: 赤錆が端面面積の1/2以上。
得られた結果を表2に示す。
裏面塗膜中に端面赤錆を抑制する防錆顔料を含有していない比較例7および10では浸漬48時間以降に赤錆が発生する。また、最上層皮膜の膜厚が上限を超えた比較例2でも赤錆が発生する。これは膜厚が厚く液体としての水の透過性が低下し、下層からのタングステン酸ナトリウムの溶出量が低下するためである。これに対し、本発明による実施例はいずれも、比較例5、6、および9(タングステン酸ナトリウムあるいはリン酸二水素カリウムを添加した塗膜を裏面最表層に有する)と同等に、端面赤錆耐食性は良好である。なお、最上層膜厚が3μm以上では、若干ではあるが端面赤錆耐食性が低下する傾向が見られる。これは最上層皮膜の厚さにより下層からの防錆顔料の溶出量が若干低下するためである。とはいえ、最上層膜厚が10μmの上限を超えない限りは十分に高い端面赤錆耐食性を有していると言える。通常168時間で赤錆が発生しないと、実使用上問題ないことが分かっている。
ここでは、蒸留水浸漬時間が500時間超でも赤錆が発生しないものを◎、240時間で赤錆の発生が無く500時間超で評点4レベルの赤錆が発生したものを◎〜○、500時間超では赤錆が発生するが168時間では発生しないものを○、168時間未満から赤錆が発生するものを×と評価した。評価結果を同じく表2に示すとともに、結果の要約を表1に示す。
なお、参考試験として、蒸留水浸漬試験による端面からの白錆発生の推移についても評価した。評価基準は以下のとおりとし、結果を表2に併せて記載した。
評点5: 白錆の発生全くなし。
評点4: 若干の白錆発生。
評点3: 白錆が端面面積の1/4未満。
評点2: 白錆が端面面積の1/2未満。
評点1: 白錆が端面面積の1/2以上。
白錆が多く発生しているのは比較例2、7、8および10である。特許文献3によるめっき層上に直接水透過性皮膜を設けたプレコート金属板(比較例8)は、裏面塗膜中に防錆顔料を含有していない比較例7および10や、防錆顔料の溶出が阻害される比較例2と同様に、亜鉛めっきの溶出による白錆の発生を抑制できないが、防錆顔料含有層の上層に本発明による最上層塗膜を設けた各種実施例は、白錆の発生も抑制傾向にあることがわかる。
〔評価4〕曝露試験によるノックアウト部の赤錆耐食性評価
プレコート鋼板において端面赤錆が最も発生しやすい部位のひとつであるノックアウト部の曝露試験を行った。試験は、ノックアウト部(30×40mm)を設けた試験片を、新日鐵住金社のウェザリングサイト君津(千葉県君津市の海岸沿岸から十分に離れた内陸山間部にある屋外曝露場)に梅雨時期から3か月間(6〜8月)暴露して行った。ノックアウト部の曝露試験の評価は、全く赤錆が発生していないものを◎、赤錆の発生が若干にとどまるもの(赤錆発生長さが概ね5%未満)を○、それを超える赤錆が発生しているものを×とした。
結果を表1に示す。また、一部の試験片の曝露後の写真を図4に示す(試験片に設けたノックアウト部を11で表示している)。図4の比較例10の写真において、ノックアウト部のほぼ四角形の境界端部と左右の垂直境界端部の近傍に見られる黒味の強い領域に、顕著な赤錆の発生が認められた。
本発明による実施例1、3、4、8、12、13のプレコート鋼板の試験片の端面赤錆耐食性はいずれも評価が◎あるいは○であり、比較例5および9(タングステン酸ナトリウムあるいはリン酸二水素カリウムを添加した塗膜を裏面最表層に有する)と同様に良好であることが実証された。端面赤錆対策なしの試験片(比較例7および10)では、顕著な赤錆の発生が認められた。また、特許文献3によるめっき層上に直接水透過性皮膜を設けたプレコート金属板(比較例8)の試験でも、赤錆の発生が認められた。
〔評価5〕裏面塗膜の加工密着性
各種プレコート鋼板の裏面塗膜の加工密着性として、耐屈曲性(20℃における0T、1T、2T、3T、および4T曲げ試験による)、およびカップ成形性を評価した。耐屈曲性は、先ず各T曲げ後の亀裂の程度を、評点7を最高評価(亀裂なし)、評点1を最低評価(激しい亀裂)として、7〜1の7段階にて評価した。その後、T曲げ頭頂部のセロハンテープによる剥離試験を行い、剥離の程度を、評点Aを最高評価(剥離なし)、評点Gを最低評価(全面剥離)として、A〜Gの7段階にて評価した。カップ成形性は、対象面(裏面)を外側にして絞り比2.0でカップ成形後、カップ胴部中央の塗膜にカッターナイフでXカットを入れ、沸騰水に1時間浸漬したのち、Xカット部からの最大剥離幅を測定した。本試験方法での剥離幅が1.0mm以上になると、厳しい加工性が要求される場合に加工部から剥離が発生する等の実使用上の問題が発生することがわかっている。以上の加工密着性の結果を総合的に評価し、裏面の加工性として全く問題のないものを◎、十分に優れるものを◎〜○、過不足ないものを○、若干問題があると判断されるものを△、問題があると判断されるものを×と評価した。結果を表3(その1)〜表3(その3)に示すとともに、その要約を表1に示す。表3(その1)〜表3(その3)の評価項目「カップ成形性」において、n1およびn2はそれぞれ、同一試験をそれぞれ2回ずつ実施した結果を示している。加工密着性は、種々の要因によって変化する。それは、原板の種類によっても変化し、本発明による実施例および比較例では、GIのほうがSDよりも比較的良好である。これは加工時のめっきの亀裂がGIのほうが少ないため、塗膜へのダメージが少なく密着性が維持されるためと考えられる。下層あるいは最上層皮膜の膜厚が厚くなると加工密着性は低下傾向にある(実施例8、10および11、比較例2)。これは、塗膜の膜厚が厚くなることで加工時に塗膜に亀裂などのダメージが生じやすくなり、密着性が低下するためと考えられる。潮解性の防錆顔料を含有する塗膜が単層の比較例3および4では、テープ剥離により塗膜が凝集破壊しやすく加工密着性は低下する。特許文献3によるめっき層上に直接水透過性皮膜を設けたプレコート金属板(比較例8)は、水透過性皮膜の原板との密着性が悪いためテープ剥離した時に剥離しやすく、加工密着性は低下する。平均一次粒径1μm以上の顔料濃度が増加しても、加工密着性は低下傾向にある。実施例20および21では、平均一次粒径1μm以上の顔料が30%以上となり加工密着性が低下している。なお、厳しい加工性を要求されない用途においては、本判定が×であっても支障は無い。
本発明のプレコート鋼板の裏面の耐屈曲性、深絞り成形性が良好であることが示された。
1 試験片
2 貼付材
3 ばねばかり
11 プレコート鋼板のノックアウト部

Claims (7)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の両面にクロメートフリー型化成処理層と、その上に形成した、最上層塗膜及びそれに隣接した下層塗膜を少なくとも含む複数の塗膜とを有するクロメートフリー型プレコート鋼板であって、片面の最上層の塗膜は下記(1)〜(4)の条件を満たし、かつ該最上層の塗膜に隣接する下層塗膜は、端面の赤錆発生の防止に有効な1種又は2種以上の潮解性の防錆顔料を含有していることを特徴とする、耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板:
    (1)塗膜表面の水に対する接触角が65〜75°、
    (2)塗膜の膜厚が0.5〜10μm、
    (3)塗膜中の顔料の含有量が、乾燥塗膜質量に対し15〜70質量%、及び
    (4)前記顔料のうち、平均一次粒径1μm以上のものの合計量が乾燥塗膜質量に対し5質量%以上。
  2. 前記潮解性の防錆顔料が、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
  3. 前記タングステン酸塩が、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸マグネシウム又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
  4. 前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
  5. 前記アルカリ金属リン酸塩が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
  6. 前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであることを特徴とする、請求項2に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
  7. 前記次亜リン酸塩が次亜リン酸カルシウムであることを特徴とする、請求項2に記載の耐吸湿性に優れる塗膜を有し端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板。
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