JP5582109B2 - 耐端面赤錆性に優れたクリアコート鋼板 - Google Patents
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Description
1)鋼板端面からの赤錆
クリアコート鋼板は、例えば、家電製品に組み込まれる場合、家電メーカや部品加工メーカ等でプレスや打ち抜き等の加工がなされ、製品に組み込まれる。製品の仕様によっては、鋼板の切断部や打ち抜き部の端面が剥き出しの状態になっていることがある。このような製品では、使用環境によっては(たとえばエアコン室外機底板用途では、設置後数カ月程度で)、剥き出しの鋼板端面から赤錆が発生することがある。
前述のエアコン室外機底板用途の場合、底板に近接して冷却用配管としての銅管が配置されていることが多い。この銅配管の付近の底板が非常に早いスピードで腐食が進行する現象(以下、この現象を「銅食」という)が指摘されることがある。
a)鋼板と銅配管とのカップリングによる腐食
銅配管近傍の表面処理鋼板については、銅配管が結露することで、銅配管に水滴が発生し、銅配管と近傍の表面処理鋼板が(水滴による)水膜により接する環境下で、銅と鋼板とのカップリング作用により、腐食が発生する。
銅配管の結露水に銅成分が溶出または剥離・脱落し、そのような銅成分を含んだ水滴が鋼板上に付着し、上記と同様のメカニズムで腐食が促進する。
(1)亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の少なくとも片面に1層以上のクリア皮膜を備えるクロムフリークリアコート鋼板であって、前記1層以上のクリア皮膜のうち最外層のクリア皮膜は、
(A)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が−10℃以上である樹脂、
(B)平均粒径0.1μm以上かつ吸油量が50mL/100g以上の多孔質シリカ、ならびに
(C)ジルコニウム化合物および/またはシランカップリング剤
を含有し、それぞれ成分(A)、(B)及び(C)の全皮膜固形分に対する含有量(単位:質量%)であるA、BおよびCが以下の関係式を満足することを特徴とする、クリアコート鋼板。
C/A:0.05以上、0.35未満、
ここで、C/Aは成分(C)の合計質量の成分(A)の樹脂の固形分質量に対する比率であるが、成分(C)のジルコニウム化合物の含有量はZrO2換算での量である。
(D)平均粒径0.1μm未満のコロイダルシリカまたは気相シリカ
(E)固体潤滑剤、および
(F)バナジウム化合物
からなる群から選ばれる1種または2種以上をさらに含有し、それぞれ成分(D)、(E)及び(F)の全皮膜固形分に対する含有量(単位:質量%)であるD、EおよびFが以下の関係式を満足することを特徴とする、上記(1)記載のクロムフリークリアコート鋼板。
E/(A+B+C):0.03以上、0.22以下、
F/(A+B+C):0.005以上、0.1以下、
ここで、(A+B+C)は前記成分(A)から(C)の固形分含有量の総和であり、Fは成分(F)のバナジウム化合物のV2O5換算での含有量である。
(G)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が−10℃以上である樹脂
を含有し、平均粒径0.1μm以上の粒子からなる成分を含有しないことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のクロムフリークリアコート鋼板。
(G)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が−10℃以上である樹脂
を含有し、平均粒径0.1μm以上の粒子からなる成分を含有しないことを特徴とするクロムフリークリアコート鋼板。
1.基板
本発明のクリアコート鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板を基板としてその少なくとも片面のめっき面にクリア皮膜(透明皮膜)を備える。
基板表面に油分や汚れが付着していたり、基板の製造から長時間経過していたりする場合等は、市販の水系または溶剤系の洗浄剤でめっき基板の表面を洗浄する等の洗浄処理を行った方がよい。しかし、たとえば、鋼板の連続溶融めっきラインでめっき(必要に応じて、その後の調質圧延)に引き続いて、製造された溶融めっき鋼板にインラインでクリア皮膜が形成される場合等は、この洗浄は省略できる。
3.クリア皮膜
本発明に係るクロムフリークリアコート鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の少なくとも一方のめっき面に1層以上のクリア皮膜を備える。クリア皮膜はめっき鋼板の両面に設けることが実用上は一般的であるが、片面のみに設ける場合(反対面には、例えば意匠性目的で有色塗料による塗装を施す形態が例示される)も本発明に包含される。
本発明に係る上層のクリア皮膜は、以下の成分(A)、(B)および(C)を含有する:
(A)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が−10℃以上である樹脂、
(B)平均粒径0.1μm以上かつ吸油量が50mL/100g以上の多孔質シリカ、ならびに
(C)ジルコニウム化合物および/またはシランカップリング剤
本発明に係る上層のクリア皮膜は、さらに任意成分として(D)コロイダルシリカ、(E)固体潤滑剤、(F)バナジウム化合物から選ばれた成分を1種類以上含有しうる。
成分(A)の樹脂は、クリア皮膜のベース成分となる。樹脂の種類はクリアコート鋼板の用途によって選定される。一般に、金型との接触(しごき等)を伴う絞り等の成形を伴う用途(中でも、基板が亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板や、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板のような、めっき皮膜が硬い場合)や、屋外で耐候性が要求される皮膜としては、アクリル樹脂系やアクリル樹脂にポリエステルおよび/もしくはウレタン樹脂をブレンドした系(即ち、混合体)が好ましい。逆に比較的めっきが軟らかい場合や、曲げ加工等皮膜の伸びが求められる用途に使用される場合では、ウレタン樹脂や、ウレタン樹脂にポリエステルおよび/もしくはアクリル樹脂をブレンドした系(混合体)が好ましい。
平均粒径0.1μm以上かつ吸油量が50mL/100g以上のシリカ(本発明において、この特徴を有するシリカを「多孔質シリカ」という。)を皮膜中に含むことで、低電気伝導度の水が端面に付着した際に発生する赤錆を抑制することが可能である。
まず、端面付近に低電気伝導度の水が付着した際に、皮膜中のシリカが一部溶出し、めっき、鋼板端面に難溶性化合物として沈着することで、赤錆を抑制していると推定される。この赤錆抑制現象のメカニズムは明確化されていないが、粒径0.1μm以上かつ吸油量が50mL/100g以上のシリカにてこの現象が顕著に確認される。なお、本発明においてシリカなどの粒子の形状を示す「平均粒径」とは、光散乱回折法により求めることができる粒度分布における累積50%径として求められる平均粒径を意味する。具体的な測定装置としては、(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布計(LA−910)が例示される。なお、以下では、「平均粒径」を単に「粒径」と記すこともある。また、本発明における「粒径」は、いわゆる「一次粒子径」、つまり、粒子が凝集している場合でも、個々の粒子の粒子径を意味する。
成分(C)は、主として成分(A)をなす樹脂末端の官能基(カルボキシル基)に作用して、ディスパーション(分散質)同士を架橋するための架橋剤として機能するものと考えられる。
成分(D)を構成する「微粒シリカ」とは成分(B)を構成する多孔質シリカとは異なり、平均粒径が0.1μm未満のシリカをいう。本発明に係る上層のクリア皮膜は、成分(D)を含有していてもよい。成分(B)の多孔質シリカとは別に上層のクリア皮膜中に成分(D)が含有されると、クリアコート鋼板の耐ブロッキング性が改善されるのみならず、耐食性が向上する場合もある。成分(D)を構成する微粒シリカとしては、例えば、コロイダルシリカ(湿式シリカ)や気相シリカ(乾式シリカ)を使用することができる。これらの粒子の平均粒径(平均一次粒子径)は通常数〜数十nm程度である。
クリアコート鋼板の用途によっては、上層のクリア皮膜が固体潤滑剤からなる成分(E)をさらに含有することが好ましい。固体潤滑剤としては、ワックス、フッ素樹脂粒子、金属石鹸等があげられるが、代表的なものはポリオレフィンワックス、パラフィンワックスをはじめとするワックスである。ワックスの含有量や粒径は、用途、特に採用される成形条件に応じて、適切に選択されることが好ましい。たとえば次の通りである。
上層クリア皮膜は成分(F)としてバナジウム化合物を含有するのが好ましい。成分(F)として好適なバナジウム化合物を例示すると、バナジン酸アンモニウムが挙げられる。バナジウム化合物を含有することによってクリアコート鋼板の加工後の耐食性が向上する。この効果を得るには、成分(F)の含有量が、バナジウム化合物のV2O5換算での含有量の基本成分含有量に対する比、すなわちF/(A+B+C)が0.005以上となる量とすることが好ましい。
上層のクリア皮膜は、クリアコート鋼板の耐食性をさらに向上させる目的で、さらに公知の防錆添加剤を含有してもよい。そのような防錆添加剤の例としては、リン酸(ポリリン酸を含み、またそれらの塩を含む)、メルカプト基を有する含窒素複素環化合物(例えば、メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプトチアジアゾール)等が挙げられる。防錆添加剤の含有量は特に限定されない。上述の成分(A)から(F)の機能を阻害しない範囲で適宜含有させればよい。
viii)処理液の調製
本発明に係る上層のクリア皮膜を形成するための処理液(以下、「上層用処理液」という。)の調製方法は特に限定されない。各成分を上記の範囲で含有し、適当な溶媒・分散媒に溶解・分散させることにより、上層用処理液を得ることができる。成分(A)がアクリル系樹脂を含む場合を例として、やや詳しく説明すれば、成分(A)としてアクリル系エマルション樹脂を用い、この樹脂をエマルション状態として、残りの成分(具体的には成分(B)および(C)ならびに必要に応じ配合される成分(D)〜(F)およびその他の成分)を必要に応じて溶媒の水と共に添加し、これらを混合し、適宜手段で粉末成分を分散させることにより調製することができる。溶媒(分散媒)は通常は水だけであるが、少量の水混和性有機溶媒(アルコール、ケトンなど)を併用することもできる。処理液中の成分の合計固形分濃度は、塗布工程および乾燥工程の双方の作業性を考慮すると、10〜35%程度が適当である。
端面赤錆の抑制の観点のみからは、上述の上層のクリア皮膜がクリアコート鋼板の最外層に形成されていればよく、たとえば、上層のクリア皮膜1層が直接(または必要に応じ下地処理を介して)めっき表面に形成されていてもよい。しかし、平面部の耐食性等の他の性能が高度に要求される場合等には、めっき皮膜と上層のクリア皮膜との間に1層以上のクリア皮膜が形成されていてもよい。特に、銅食に対する耐食性が要求される場合には、次に説明する下層のクリア皮膜を、上層のクリア皮膜とめっき皮膜との間に備えることが好ましい。
なお、本発明に係る下層のクリア皮膜は上記のように銅食に対する耐食性に優れることから、その耐食性向上のみを目的として、鋼板上に形成されるクリア皮膜がこの本発明に係る下層のクリア皮膜のみからなるものとしてもよい。ただし、この場合には、クリア皮膜の形成過程において不可避的に発生してしまう微細な塗膜欠陥の影響を最小限とするために、クリア皮膜の厚みをかなり大きくする(付着量として4.0g/m2程度)ことが現実には必要とされる。また、優れた加工性の確保等の観点から固体潤滑剤からなる成分(E)を含有させることを検討する場合には、固体潤滑剤として最も一般的なワックスでは粒径が0.1μm未満とするという要件を安定的に満たすことが容易でない。このため、本発明に係る下層のクリア皮膜のみからなるクリア皮膜を備えるクリアコート鋼板は、銅食に対する耐食性および加工性(または耐ブロッキング性)を高度に達成することが容易でない。
本発明のクリアコート鋼板の付着量は、クリア皮膜の全体の付着量として8g/m2以下(膜厚に換算するとおおむね8μm以下)とすることが好ましい。
本発明のクリアコート鋼板は、基板となるめっき鋼板の表面に、前述したクリア塗膜を形成するための処理液を、通常の手段で塗布(連続塗装ラインの場合には、ロールコータでの塗布やまたは塗布液をスプレー後にリンガーロールで絞ることによる塗布)して、乾燥(焼き付け)してクリア皮膜を形成することにより製造できる。2層以上のクリア皮膜を有するクリアコート鋼板を製造する場合は、通常の方法通り、1層ずつ塗布、乾燥(焼き付け)をしてクリア皮膜を形成すればよい。
下記に示す樹脂、架橋剤、コロイダルシリカ、多孔質シリカ、ワックス、バナジウム化合物を表1記載の比率(表1中、部は質量部を意味する)でブレンドし、下層および上層のクリア皮膜形成用の処理液(以下、それぞれ「下層用処理液」、「上層用処理液」という。)を作製した。
・アクリル樹脂:A620K5(日本合成化学工業)、Tg:30℃;
・ウレタン樹脂1:水系ウレタン樹脂スーパーフレックス(登録商標)420(第一工業製薬(株))、Tg:−10℃;
・ウレタン樹脂2:水系ウレタン樹脂スーパーフレックス(登録商標)470(第一工業製薬(株))、Tg:−31℃
・ポリエステル樹脂:水分散型ポリエステル樹脂バイロナール(登録商標)MD−1480(東洋紡績(株))、Tg:20℃。
・多孔質シリカ:カルシウムイオン交換多孔質シリカ、サイロマスク(登録商標)02番(富士シリシア化学(株))、平均粒径0.2〜0.3μm。
・炭酸ジルコニウムアンモニウム(一般試薬);
・シランカップリング剤:サイラエース(登録商標)S510(チッソ(株))。
・コロイダルシリカ:スノーテックス(登録商標)N(日産化学工業(株))、平均粒径10〜20nm。
・ポリプロピレンワックス(軟化点142℃、平均粒径1.5μm)。
成分(F)の詳細は次のとおりである:
・バナジン酸アンモニウム(一般試薬)
2.クリアコート鋼板の作製
0.6mm厚の溶融55%Al−Znめっき鋼板(めっき付着量:片面あたり75g/m2)を150mm×300mmの大きさに切り出し、アルカリ脱脂液(日本パーカライジング社製FCL4480)でスプレー脱脂し、その後水洗、乾燥したものを基板として用いた。
下層のクリア皮膜は、基板に下層用処理液をバーコート法により塗布したのち、炉温250℃の熱風オーブンで7秒間焼き付けた。このときの鋼板の最高到達温度は約80℃であった。
こうして作成されたクリアコート鋼板について、焼付け後に室温まで放冷してから、以下の方法で性能を評価した。その結果を表2に併記する。
イオン交換水に下記の試験片を浸漬し、浸漬開始240時間後における鋼板端面・液の赤錆発生状態で評価した。
試験溶液:イオン交換水(20ml)、
試験温度:40℃。
◎:赤錆なし、
○:軽微な赤錆あるが、液の濁りはほとんどなし、
△:液に軽微な濁りあり、
×:液に濁りあり。
特開2003−136151号公報に記載のピンオンディスク試験法(ディスク上に載置した被試験材をディスクと共に回転させながら、当該被試験材の表面にピン状の金属体を押し付けて一方向に摺動させる試験法)に従って、防錆油を塗布したクリアコート鋼板の摩擦係数を以下の条件で測定し、摩擦係数が0.2を超えるまでの周回数で評価した。
押し付け荷重:3kgf
試験具先端形状:球
試験具先端形状曲率:2.5mmR
試験具先端材質:SKD鋼
摺動速度:6300mm/min(100rpm)
摩擦係数:0.1秒毎に6回計測した摩擦係数の平均値6個のうちの最大値
評価基準は次のとおりであり、「○」および「△」と判定された場合を合格、「×」と判定された場合を不合格とした。
△:100周以上、299周以下、
×:99周以下。
図1に示すようなスイングパネル試験を実施し、96時間後における赤錆面積率で評価した。評価の詳細は次のとおりである:
試験溶液:5%食塩水、
試験温度:40℃、
スイング間隔:2時間毎、
銅:リード線にて接続。
◎:赤錆なし、
○:軽微な赤錆、
△:赤錆20%超50%以下、
×:50%超。
下記に示す樹脂、架橋剤、コロイダルシリカ、多孔質シリカ、ワックスを表3記載の比率(表中、部は質量部の意味)でブレンドし、下層および上層クリア皮膜形成用の処理液(以下、それぞれ「下層用処理液」、「上層用処理液」という。)を作製した。なお、多孔質シリカをブレンドする際は、処理液100mlに対して、ガラスビーズを20g添加した状態で、ハイブリッドミキサーで攪拌し、均一分散させた。
・アクリル樹脂…LA620K5(日本合成化学工業)、Tg:30℃。
成分(B)の詳細は次のとおりである:
・多孔質シリカ:カルシウムイオン交換多孔質シリカ、サイロマスク(登録商標)02番(富士シリシア化学(株))、平均粒径0.2〜0.3μm。
・炭酸ジルコニウムアンモニウム(一般試薬)。
成分(D)の詳細は次のとおりである。
成分(E)の詳細は次のとおりである。
2.クリアコート鋼板の作製
0.6mm厚の溶融55%Al−Znめっき鋼板(めっき付着量:片面あたり75g/m2)を150mm×300mmの大きさに切り出し、アルカリ脱脂液(日本パーカライジング社製FCL4480)でスプレー脱脂し、その後水洗、乾燥したものを基板として用いた。
下層のクリア皮膜は、基板に下層用処理液をバーコート法により塗布したのち、炉温250℃の熱風オーブンで7秒間焼き付けた。このときの鋼板の最高到達温度は約80℃であった。
こうして作成されたクリアコート鋼板について、耐ブロッキング性については焼付けのあと速やかに、その他の性能については、焼付け後に室温まで放冷してから、以下の方法で性能を評価した。その結果を表4に併記する。
実施例1に記載と同様の方法及び評価基準で評価した。「◎」、「○」および「△」と判定された場合を合格とし、「×」と判定された場合を不合格とした。
実施例1に記載と同様の方法及び評価基準で評価した。「○」および「△」と判定された場合を合格とし、「×」と判定された場合を不合格とした。
(3)銅食に対する耐食性
実施例1に記載と同様の方法及び評価基準で評価した。「◎」、「○」および「△」と判定された場合を合格とし、「×」と判定された場合を不合格とした。
2枚のクリアコート鋼板の評価面同士を重ね合わせたものに2kgf/mm2の荷重をかけ、圧力をかける金型の温度を60℃に設定して24時間保持した。その後、鋼板同士の融着状態を以下の基準で評価した。「○」および「△」と判定された場合を合格とし、「×」と判定された場合を不合格とした。
△:融着し、分離後の評価面に剥離痕が認められる、
×:融着し、鋼板同士を簡単に分離することができない。
調合した上層クリア皮膜形成用の処理液を密閉容器に入れ、40℃環境下で静置し、ゲル化の状況を観察し、ゲル化までの時間で評価した。評価の結果、「○」および「△」と判定された場合を合格とし、「×」と判定された場合を不合格とした。
△:1〜2日、
×:数時間。
1.塗装鋼板の作製
1.0mm厚の溶融55%Al−Znめっき鋼板(AZ)(めっき付着量:片面あたり75g/m2)及び1.0mm厚の溶融Znめっき鋼板(GI)(めっき付着量:片面あたり45g/m2)を150mm×300mmの大きさに切り出し、アルカリ脱脂液(日本パーカライジング社製FCL4480)でスプレー脱脂し、その後水洗、乾燥したものを基板として用いた。
反対面である「うら面」には、次の化成処理用薬液及び塗料を用いて塗膜を形成した:
・化成処理用薬液:EC2330(日本ペイント製)
・下塗り用塗料1:IP505クリアタイプ(日本ファインコーティングス社製)
・下塗り用塗料2:IP505(日本ファインコーティングス社製)
塗料中顔料:トリポリリン酸アルミニム35%、チタニア15%
・上塗り用塗料:SRF05(アイボリー)(日本ファインコーティングス社製)。
こうして作成された塗装鋼板について、これまでの手法と同様に、以下の方法で性能を評価した。なお、摺動性ならびに、銅食に対する耐食性については、おもて面を評価面として実施した。その結果を表5に記載する。
Claims (4)
- 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の少なくとも片面に1層以上のクリア皮膜を備えるクロムフリークリアコート鋼板であって、
前記1層以上のクリア皮膜のうち最外層のクリア皮膜は、
(A)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が−10℃以上である樹脂、
(B)平均粒径0.1μm以上かつ吸油量が50mL/100g以上の多孔質シリカ、ならびに
(C)ジルコニウム化合物および/またはシランカップリング剤
を含有し、それぞれ成分(A)、(B)及び(C)の全皮膜固形分に対する含有量(単位:質量%)であるA、BおよびCが以下の関係式を満足することを特徴とする、クリアコート鋼板。
B :1質量%以上、20質量%以下、
C/A:0.05以上、0.35未満、
ここで、C/Aは成分(C)の合計質量の成分(A)の樹脂の固形分質量に対する比率であるが、成分(C)のジルコニウム化合物の含有量CはZrO2換算の量である。 - 前記最外層のクリア皮膜が、
(D)平均粒径0.1μm未満のコロイダルシリカまたは気相シリカ
(E)固体潤滑剤、および
(F)バナジウム化合物
からなる群から選ばれる1種または2種以上をさらに含有し、それぞれ成分(D)、(E)及び(F)の全皮膜固形分に対する含有量(単位:質量%)であるD,EおよびFが以下の関係式を満足する、請求項1記載のクロムフリークリアコート鋼板。
D/(A+B+C):0.08以上、0.25以下、
E/(A+B+C):0.03以上、0.22以下、
F/(A+B+C):0.005以上、0.1以下、
ここで、(A+B+C)は前記成分(A)から(C)の含有量の総和であり、Fは成分(F)のバナジウム化合物のV2O5換算含有量である。 - 前記1層以上のクリア皮膜が2層以上のクリア皮膜からなり、前記最外層のクリア皮膜以外のクリア皮膜の少なくとも1層は、
(G)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が0℃以上である樹脂
を含有し、平均粒径0.1μm以上の粒子からなる成分を含有しない、請求項1または2に記載のクロムフリークリアコート鋼板。 - 前記1層以上のクリア皮膜が2層以上のクリア皮膜からなり、前記最外層のクリア皮膜以外のクリア皮膜の少なくとも1層は、
(G)アクリル系、ポリエステル系およびウレタン系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、ガラス転移温度が−10℃以上である樹脂
を含有し、平均粒径0.1μm以上の粒子からなる成分を含有しないことを特徴とする、請求項1または2に記載のクロムフリークリアコート鋼板。
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