図1は、本発明の第1の実施の形態に係る描画装置1の構成を示す図である。描画装置1は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板9の表面に光ビームを照射してパターンを描画する直接描画装置である。描画装置1は、ステージ21と、移動機構22と、光照射装置31と、空間光変調器32と、投影光学系33と、制御部11とを備える。ステージ21は基板9を保持し、移動機構22は、ステージ21を基板9の主面に沿って移動する。移動機構22は、基板9を、主面に垂直な軸を中心として回動してもよい。
光照射装置31は、ミラー39を介して空間光変調器32にライン状の光を照射する。光照射装置31の詳細については後述する。空間光変調器32は、例えば回折格子型かつ反射型であり、格子の深さを変更することができる回折格子である。空間光変調器32は、半導体装置製造技術を利用して製造される。本実施の形態に用いられる回折格子型の光変調器は、例えば、GLV(グレーティング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)である。空間光変調器32は一列に配列された複数の格子要素を有し、各格子要素は1次回折光が出射される状態と、0次回折光(0次光)が出射される状態との間で遷移する。このようにして、空間光変調器32から空間変調された光が出射される。
投影光学系33は、遮光板331と、レンズ332と、レンズ333と、絞り板334と、フォーカシングレンズ335とを備える。遮光板331は、ゴースト光および高次回折光の一部を遮蔽し、空間光変調器32からの光を通過させる。レンズ332,333はズーム部を構成する。絞り板334は、(±1)次回折光(および高次回折光)を遮蔽し、0次回折光を通過させる。絞り板334を通過した光は、フォーカシングレンズ335により基板9の主面上に導かれる。このようにして、空間光変調器32により空間変調された光が、投影光学系33により基板9上に導かれる。
制御部11は、光照射装置31、空間光変調器32および移動機構22に接続され、これらの構成を制御する。描画装置1では、移動機構22がステージ21を移動することにより、空間光変調器32からの光の基板9上における照射位置が移動する。また、制御部11が、移動機構22による当該照射位置の移動に同期して、空間光変調器32を制御する。これにより、基板9上の感光材料に所望のパターンが描画される。
図2および図3は、光照射装置31の構成を示す図である。図2および図3では、後述の照射光学系5の光軸J1に平行な方向をZ方向として示し、Z方向に垂直、かつ、互いに直交する方向をX方向およびY方向として示している(以下同様)。図2は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、図3は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。
光照射装置31は、光源部4と、照射光学系5とを備える。光源部4は、例えば、半導体レーザ(Laser Diode)である光源41と、コリメータレンズ(例えば、非球面コリメータレンズ)42とを備える。光源41から出射されるレーザ光は、コリメータレンズ42によりコリメートされる。照射光学系5は、光源部4によるレーザ光の照射位置に配置される。照射光学系5は、当該レーザ光を光軸J1に沿って照射面(図2および図3中にて符号320を付す破線にて示す。)である空間光変調器32の表面、すなわち、複数の格子要素の表面へと導く。既述のように、光照射装置31からの光は、ミラー39を介して空間光変調器32に照射されるため、実際には、光照射装置31はミラー39を構成要素として含むが、図2および図3では、図示の便宜上、ミラー39を省略している(以下同様)。
照射光学系5は、光路長差生成部61と、分割レンズ部62と、集光レンズ部63と、中間変倍部64と、レンズ51,52とを備える。照射光学系5では、光源部4から照射面320に向かって、レンズ51,52、光路長差生成部61、中間変倍部64、分割レンズ部62、集光レンズ部63の順にて、これらの構成が光軸J1に沿って配置される。光源部4からのコリメートされたレーザ光は、レンズ51,52を介して光路長差生成部61に光軸J1に平行に入射する。レンズ51,52は、アフォーカル光学系、具体的には、両側テレセントリック光学系を構成し、入射するレーザ光を、光軸J1に平行な平行光として光路長差生成部61に入射させる。このとき、光源部4から出射されるレーザ光の光軸J1に垂直な断面(すなわち、光軸J1に垂直な光束断面であり、以下、単に「断面」という。)が、レンズ51,52により所定の倍率にて拡大される。
図4は、光路長差生成部61および分割レンズ部62の近傍を拡大して示す図である。光路長差生成部61は、光軸J1に垂直な方向(ここでは、X方向)に一定のピッチにて密に配列された複数の透光部610を備える。各透光部610は、(理想的には)X方向、Y方向およびZ方向に垂直な面を有するブロック状である。X方向に一列に並ぶ複数の透光部610では、X方向およびY方向の長さは同じであり、Z方向、すなわち、光軸J1に沿う方向の長さは互いに相違する。このように、複数の透光部610は互いに異なる光路長を有する。図4の光路長差生成部61では、複数の透光部610のうち(+X)側に位置する透光部610ほどZ方向の長さが小さい。複数の透光部610の光軸J1方向の長さは、必ずしもX方向に沿って順次長くなる(または、短くなる)必要はなく、任意の凹凸形状であってよい。本実施の形態では、光路長差生成部61における複数の透光部610は同じ材料にて、一繋がりの部材として形成される。光路長差生成部61では、個別に形成された複数の透光部610が互いに接合されてもよい。
図2の照射光学系5では、レンズ51,52を通過したレーザ光の断面のおよそ全体が、光路長差生成部61の(−Z)側の面に含まれるように、レンズ51,52による拡大倍率が調整されている。図4に示す各透光部610の(−Z)側の面である入射面611に入射する光は、当該透光部610を透過して(+Z)側の面である出射面612から出射される。
光路長差生成部61を通過した光は、中間変倍部64のレンズ641,642を介して分割レンズ部62に入射する。中間変倍部64は、アフォーカル光学系、具体的には、両側テレセントリック光学系を構成し、光軸J1に平行な平行光として入射する光を、光軸J1に平行な平行光として分割レンズ部62に入射させる。このとき、光路長差生成部61から出射される光の光軸J1に垂直な断面が、中間変倍部64により所定の倍率にて縮小される。
分割レンズ部62は、光軸J1に垂直な方向(ここでは、X方向)に一定のピッチにて密に配列された複数のレンズ620(以下、「要素レンズ620」という。)を備える。図4の例では、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数は、光路長差生成部61における透光部610の個数と同じである。要素レンズ620の配列ピッチは、透光部610の配列ピッチよりも小さい。各要素レンズ620は、Y方向に長いブロック状であり、(−Z)側(光路長差生成部61側)に位置する側面である第1レンズ面621と、(+Z)側(集光レンズ部63側)に位置する側面である第2レンズ面622とを有する。Y方向に沿って見た場合に、第1レンズ面621は、(−Z)側に突出する凸状であり、第2レンズ面622は、(+Z)側に突出する凸状である。X方向に沿って見た場合に、各要素レンズ620の形状は矩形である。このように、要素レンズ620はX方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズであり、分割レンズ部62は、いわゆるシリンドリカルレンズアレイ(または、シリンドリカルフライアイレンズ)である。
第1レンズ面621および第2レンズ面622は、光軸J1に垂直な面に対して対称形状である。第1レンズ面621は、第2レンズ面622の焦点に配置され、第2レンズ面622は、第1レンズ面621の焦点に配置される。すなわち、第1レンズ面621および第2レンズ面622の焦点距離は同じである。X方向に積層された複数の要素レンズ620は、一繋がりの部材として形成されてもよく、個別に形成された複数の要素レンズ620が互いに接合されてもよい。
既述のように、光路長差生成部61と分割レンズ部62との間には、縮小光学系を構成する中間変倍部64が設けられる。また、中間変倍部64による縮小倍率Mは、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列ピッチR1を、光路長差生成部61における透光部610の配列ピッチP1にて割った値と等しい(すなわち、(M=R1/P1))。したがって、複数の透光部610を通過した複数の光束(光線束)が、中間変倍部64を介して複数の要素レンズ620にそれぞれ入射する。このように、中間変倍部64は、各透光部610を通過する光束を、その断面積を変更しつつ対応する要素レンズ620に入射させる。中間変倍部64における倍率Mは、2つのレンズ641,642の焦点距離をそれぞれf1,f2として、(M=f2/f1)となる。なお、光路長差生成部61では、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数よりも1つだけ少ない個数の透光部610が設けられてもよい。この場合、これらの透光部610を通過した複数の光束、および、いずれの透光部610も通過しない光束が、複数の要素レンズ620にそれぞれ入射する。
図4に示すようにY方向に沿って見た場合に、分割レンズ部62へと入射する光は複数の要素レンズ620にてX方向に関して分割される。このとき、複数の要素レンズ620にはレンズ642からの平行光が入射し、分割された光(複数の光束のそれぞれ)は、主光線が光軸J1に平行となるように第2レンズ面622から出射される。各要素レンズ620から出射された光束は拡がりつつ(発散しつつ)、図2に示す集光レンズ部63へと向かう。
集光レンズ部63は、コンデンサレンズ631を有する。コンデンサレンズ631は、その焦点距離だけ複数の要素レンズ620の第2レンズ面622から光軸J1に沿って離れた位置に配置される。換言すると、各要素レンズ620の第2レンズ面622は、コンデンサレンズ631の前側焦点面上に配置される。また、光軸J1上に配置される照射面320は、コンデンサレンズ631の焦点距離だけ、コンデンサレンズ631から光軸J1に沿って離れた位置に配置される。すなわち、照射面320は、コンデンサレンズ631の後側焦点面と一致する。
複数の要素レンズ620から出射された複数の光束は、コンデンサレンズ631により平行光とされ、コンデンサレンズ631の後側焦点面において重畳される。すなわち、複数の要素レンズ620からの光(複数の光束)の照射領域50が全体的に重ねられる。図2および図3では、照射領域50を太い実線にて示しており、照射領域50は、X方向に関して一定の幅を有する。既述のように、複数の要素レンズ620から出射される複数の光束は、互いに異なる透光部610を通過しているため、光路長差生成部61と照射面320との間において複数の光束に光路長差が生じる。したがって、複数の要素レンズ620にて分割された光の干渉により、照射面320において干渉縞が生じることが抑制(または防止)される。すなわち、図5の上段に示すように、照射面320上においてX方向における光の強度分布が均一となる。
複数の透光部610のうちの2つの透光部610の各組合せでは、当該2つの透光部610を通過する光束の光路長の差が、光源部4から出射されるレーザ光の可干渉距離以上であることが好ましい。光路長差生成部61の屈折率をn、当該2つの透光部610の光軸J1方向の長さの差をdとすると、当該2つの透光部610を通過する光束の光路長の差は((n−1)d)として表される。なお、2つの透光部610の各組合せを通過する光の光路長の差が、光源部4から出射されるレーザ光の可干渉距離未満であっても、比較的長い距離(例えば、可干渉距離の1/2以上)であれば、干渉縞の影響はある程度低減される。
図3に示すようにX方向に沿って見た場合に、光路長差生成部61から中間変倍部64を介して分割レンズ部62へと入射する光は、平行光のままで複数の要素レンズ620を通過してコンデンサレンズ631へと導かれる。そして、コンデンサレンズ631から出射される光は、コンデンサレンズ631の後側焦点面(照射面320)上において集光する。したがって、照射面320において、各要素レンズ620からの光の照射領域50は、X方向に伸びるライン状となる。これにより、複数の要素レンズ620を通過した光の集合であって、照射面320上における断面がX方向に伸びるライン状となるライン照明光が得られる。図5の下段では、Y方向におけるライン照明光の強度分布を示している。
ここで、レンズ51,52および中間変倍部64を省いた比較例の照射光学系について述べる。図6は、比較例の照射光学系91の構成を示す図である。比較例の照射光学系91では、照射光学系5と同様に、レーザ光の経路において分割レンズ部93が光路長差生成部92よりも照射面側に配置されるが、光路長差生成部92の各透光部920を通過した光束がそのままの大きさで分割レンズ部93に照射される。したがって、光路長差生成部92における透光部920の配列ピッチP2を、分割レンズ部93におけるレンズ930の配列ピッチR1と等しくする必要がある(すなわち、(P2=R1))。小型の分割レンズ部はフォトリソグラフィを利用して高精度に作製することが可能であるが、光軸方向における複数の透光部の長さが互いに異なる光路長差生成部については、フォトリソグラフィを利用することが困難である。また、機械加工にて小型の光路長差生成部を高精度に作製するのも容易ではない。
これに対し、図2の光照射装置31では、レーザ光の経路において光路長差生成部61と分割レンズ部62との間に、縮小倍率M(ただし、(M<1))の中間変倍部64が配置される。これにより、光路長差生成部61における透光部610の配列ピッチP1を、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列ピッチR1の(1/M)倍とすることができ、比較例の照射光学系91における透光部920の配列ピッチP2よりも大きくすることができる。実際には、中間変倍部64の縮小倍率Mはレンズの選択により調整可能であるため、透光部610の配列ピッチP1は、要素レンズ620の配列ピッチR1の制約を受けることなく、作製条件等に合わせて任意に設定することが可能である。これにより、光照射装置31の設計の自由度を高くすることができる。以上のように、光照射装置31では、透光部610の配列方向に関して、光路長差生成部61を分割レンズ部62に比べて大きくすることができ、光路長差生成部61を容易に作製することが可能となる。
ここで、光源部4から出射されるレーザ光の断面のX方向の幅が分割レンズ部62のX方向の幅と等しい場合を想定する。この場合、光源部4から出射されるレーザ光の断面のX方向の幅W2(図6参照)を(1/M)倍に拡大して、光路長差生成部61のX方向の幅W1(図4参照)とする(すなわち、(W1=(1/M)・W2))レンズ51,52が、図2の光照射装置31のように、光源部4と光路長差生成部61との間に必要となる。次に、このようなレンズ51,52を省いた光照射装置31について述べる。
図7および図8は、光照射装置31の他の例を示す図である。図7は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、図8は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。図7および図8に示す光照射装置31では、図2および図3の光照射装置31と比較して、レンズ51,52が省かれるとともに、偏光ビームスプリッタ55、1/4波長板56および反射部65が追加される。他の構成は、図2および図3の光照射装置31と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
図7および図8の光照射装置31では、(−Z)側から(+Z)方向に向かって、反射部65、光路長差生成部61、中間変倍部64のレンズ642,641、1/4波長板56、偏光ビームスプリッタ55、分割レンズ部62、集光レンズ部63の順にて、これらの構成が並ぶ。また、光源部4は、偏光ビームスプリッタ55の(+X)側に配置される。偏光ビームスプリッタ55は、p偏光成分とs偏光成分とを分離するものであり、光源部4から出射されたレーザ光が偏光ビームスプリッタ55に入射する。偏光ビームスプリッタ55に入射する当該レーザ光のほとんどはs偏光成分であり、当該レーザ光は偏光ビームスプリッタ55にて反射して1/4波長板56に向かう。1/4波長板56では、直線偏光であるレーザ光が円偏光に変換され、中間変倍部64のレンズ641に入射する。中間変倍部64では、(+Z)側から入射する光が、その断面が拡大されて(−Z)方向に出射される。中間変倍部64では、両側テレセントリック光学系が構成されるため、レーザ光は光軸J1に平行な平行光の状態で光路長差生成部61に入射する。
各透光部610の(+Z)側の面である入射面611に入射した光束は、当該透光部610を透過して(−Z)側の面である出射面612から出射される。光束は光軸J1に沿って反射部65のミラー651へと向かう。ミラー651の反射面は光軸J1に垂直であり、当該光束は、同じ経路を戻るようにミラー651により折り返され(すなわち、進行方向が180度回転され)、同じ出射面612に入射する。各透光部610の出射面612に入射した光束は、当該透光部610を透過し、入射面611から中間変倍部64に向けて出射される。
中間変倍部64では、(−Z)側から入射する光が、その断面が縮小されて(+Z)方向に出射され、1/4波長板56に入射する。1/4波長板56では、円偏光である光が直線偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ55に入射する光のほとんどがp偏光成分となる。当該光は偏光ビームスプリッタ55を透過し、分割レンズ部62に入射する。図7の光照射装置31においても、複数の透光部610を通過した複数の光束が、縮小光学系を構成する中間変倍部64を介して複数の要素レンズ620にそれぞれ入射する。複数の要素レンズ620から出射される光は、コンデンサレンズ631に入射し、複数の要素レンズ620からの光の照射領域50が照射面320上にて重ねられる。
以上に説明したように、図7の光照射装置31では、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間の光の往復における往路において、図2のレンズ51,52の機能が中間変倍部64により実現される。これにより、上記レンズ51,52を省いて、光照射装置31のZ方向の全長を短くすることができる。また、上記光の往復における復路において、光路長差生成部61を通過した光が、中間変倍部64により、その断面が縮小されて分割レンズ部62に導かれる。これにより、透光部610の配列方向に関して、光路長差生成部61を分割レンズ部62に比べて大きくすることができ、光路長差生成部61を容易に作製することができる。さらに、光路長差生成部61において、複数の透光部610の複数の出射面612から出射される光が反射部65により折り返され、複数の出射面612にそれぞれ入射する。このように、各透光部610を通過した光束が、反射部65を介して当該透光部610に再度入射することにより、複数の透光部610を通過する複数の光束における光路長差を大きくすることができる。換言すると、光路長差生成部61の光軸J1方向の長さを短くすることができる。
なお、図7の光照射装置31では、偏光ビームスプリッタ55および1/4波長板56を用いることにより、光量の損失を比較的少なくすることが可能であるが、光照射装置31の設計によっては、ハーフミラー等他のビームスプリッタが用いられてもよい。また、1/4波長板56は、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間における任意の位置に配置可能である。偏光ビームスプリッタ55および1/4波長板56を用いる他の光照射装置において同様である。
図9は、光路長差生成部61を示す斜視図である。図9では、一の透光部610の入射面611および出射面612に平行斜線を付している。光路長差生成部61の作製における精度によっては、透光部610の入射面611および出射面612の平行度が透光部610毎にばらつくことがある。
図10は、光照射装置31を簡略化して示す図であり、X方向に沿って見た光照射装置31の一部を示す。図10では、光路長差生成部61と集光レンズ部63のコンデンサレンズ631との間に設けられる構成要素を省略している。例えば、図10中に破線にて示すように、透光部610の入射面611および出射面612が互いに平行である場合には、当該透光部610の出射面612から出射される光束は、照射面320上において符号A1を付す位置に集光する。一方、図10中に実線にて示すように、透光部610の出射面612が入射面611に対して傾いている(入射面611および出射面612が平行でない)場合には、当該透光部610の出射面612から出射される光束は、照射面320上において符号A2を付す位置に集光する。
ここで、X方向に沿って見た場合において、入射面611に対する出射面612の傾き角(以下、単に「平行度」という。)をθ、光路長差生成部61の屈折率をn、コンデンサレンズ631の焦点距離をfcとすると、(fc・tan((n−1)θ))だけ、照射面320上の集光位置が理想的な位置A1からY方向にずれてしまう。仮に、全ての透光部610における平行度が同じである場合には、各透光部610を通過した光束の集光位置が、同じ距離だけ理想的な位置A1からずれる。しかしながら、実際には、全ての透光部610における平行度を0または一様な値にすることは困難であり、ある程度の平行度のばらつきが生じる。したがって、透光部610毎に照射領域のY方向の位置(すなわち、ライン状の照射領域の短軸方向の位置)がずれてしまい、照射面320上におけるライン照明光のY方向の幅が太くなる。よって、複数の透光部610における平行度のばらつきが大きくなると、描画装置1におけるパターンの描画精度が低下する虞がある。次に、複数の透光部610における平行度のばらつきの影響を抑制する手法について述べる。
図11および図12は、光照射装置31の他の例を示す図である。図11は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、図12は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。図11および図12に示す光照射装置31では、図7および図8の光照射装置31におけるミラー651に代えて直角プリズム652が設けられる。他の構成は、図7および図8の光照射装置31と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
図12に示すように、直角プリズム652では、90度をなす2つの面652a,652bがY方向に並び、これらの面652a,652bは、光軸J1に対して共に45度だけ傾く。図11に示す透光部610を透過して出射面612から出射される光線は、図12に示す直角プリズム652において2つの面652a,652bの一方にて反射して他方の面に向かい、当該他方の面にてさらに反射して当該透光部610へと入射する。実際には、X方向に沿って見た場合に、各透光部610の出射面612から出射される光束の全体は、入射面611および出射面612の平行度に応じて光軸J1に対して傾斜した経路(平行度が0の場合は光軸J1に平行な経路)に沿って直角プリズム652に入射し、同じ経路を戻って当該透光部610の出射面612に入射する。したがって、中間変倍部64のレンズ642から光軸J1に平行に各透光部610の入射面611に入射する光束は、直角プリズム652を経由し、当該入射面611からレンズ642に向けて光軸J1に平行に出射される。
このように、図12に示す光照射装置31では、反射部65が、各透光部610の出射面612から出射される光を、当該光の出射方向に平行に当該出射面612に入射させる。これにより、複数の透光部610における平行度がばらつく場合であっても、複数の透光部610から中間変倍部64側へと出射される複数の光束の光軸J1に対する傾き(X方向に沿って見た場合の傾き)を、中間変倍部64から光路長差生成部61への入射時における傾き(理想的には、光軸J1に平行)に一致させることができる。その結果、複数の透光部610を通過した複数の光束の照射面320上における集光位置(X方向に沿って見た場合の集光位置)のY方向のずれを抑制し、照射面320上におけるライン照明光のY方向の幅の太りを抑制することができる。なお、反射部65では、直角プリズム652に代えて、互いになす角度が90度の2枚の平面ミラー等が用いられてよい。
ところで、図12に示す光照射装置31のように、反射部65において直角プリズム652を用いる場合、各透光部610から反射部65に向けて出射される光束が面652aにて最初に反射する光線群と、面652bにて最初に反射する光線群とに分割される。したがって、直角プリズム652において面652aと面652bとのなす角度が90度からずれている場合、これらの光線群の照射面320上における集光位置がY方向にずれてしまう。次に、各透光部610から出射される光束を分割することなく、複数の透光部610における平行度のばらつきの影響を抑制する手法について述べる。
図13および図14は、光照射装置31の他の例を示す図である。図13は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、図14は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。図13および図14に示す光照射装置31では、図7および図8の光照射装置31(並びに、図11および図12の光照射装置31)と比較して、1/4波長板56が省かれるとともに反射部65の構成が相違する。他の構成は、図7および図8の光照射装置31と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
反射部65は、偏光ビームスプリッタ653と、3個のミラー654a,654b,654cと、1/2波長板655とを備える。偏光ビームスプリッタ653は、光路長差生成部61の(−Z)側に配置され、光路長差生成部61から入射する光のs偏光成分を(−Y)方向へと反射する。一のミラー654aは偏光ビームスプリッタ653の(−Y)側に配置され、他の一のミラー654bは偏光ビームスプリッタ653の(−Y)側かつ(−Z)側に配置され、残りのミラー654cは、偏光ビームスプリッタ653の(−Z)側に配置される。3個のミラー654a〜654cの反射面の法線はX方向に垂直であり、ミラー654a,654cはミラー654bに対して90度傾く。
偏光ビームスプリッタ653から(−Y)方向へと向かう光は、ミラー654a、654bにて順に反射して、ミラー654cに入射する。ミラー654cでは、入射する光が(+Z)方向に反射し、偏光ビームスプリッタ653へと向かう。1/2波長板655は、ミラー654cと偏光ビームスプリッタ653との間に配置される。1/2波長板655では、光の偏光方向が90度回転し、偏光ビームスプリッタ55に入射する光のほとんどがp偏光成分となる。当該光は偏光ビームスプリッタ653を透過し、光路長差生成部61に入射する。実際には、反射部65では、各透光部610の出射面612から出射される光束の経路を、X方向に垂直な面(照射領域の短軸方向に平行な面)内において折り返し、当該光束を当該出射面612に入射させる。
図15は、反射部65の近傍を拡大して示す図であり、X方向に沿って見た反射部65を示す。透光部610の入射面611および出射面612が平行である、すなわち、平行度が0である場合には、当該透光部610の出射面612から出射される光束は、図15中に破線にて示す経路K1を通過する。この場合、中間変倍部64((+Z)側)から経路K1に沿って当該透光部610の入射面611に入射する光束は、反射部65を経由し、当該入射面611から入射時と同じ経路K1に沿って(+Z)方向に出射される。
一方、透光部610の平行度が0でない場合には、当該透光部610の出射面612から出射される光束は、図15中に実線にて示す経路K2を通過する。具体的には、中間変倍部64((+Z)側)から経路K1に沿って当該透光部610の入射面611に入射する光束は、当該透光部610の出射面612から経路K1に対して傾斜する出射方向(経路K2の方向)に沿って偏光ビームスプリッタ653に向かって出射される。当該光束は、偏光ビームスプリッタ653、並びに、3個のミラー654a〜654cにて4回反射して、当該出射面612からの出射時の出射方向に平行に当該出射面612に入射する。したがって、透光部610を透過した光束は、入射時の経路K1に平行に入射面611から(+Z)方向に出射される。
図14の光照射装置31では、中間変倍部64から光路長差生成部61に入射する光は光軸J1に平行な平行光であり、上述のように、複数の透光部610の平行度がばらついている場合であっても、反射部65を経由して複数の透光部610の入射面611から(+Z)方向に出射される光束は光軸J1に平行な平行光となる。したがって、複数の透光部610を通過した複数の光束の照射面320上における集光位置を、Y方向に一致させることが可能となる。
以上のように、図14に示す光照射装置31では、反射部65において、各透光部610の出射面612から出射される光束を分割することなく、当該光束の出射方向に平行に当該出射面612に入射させることが可能となる。これにより、複数の透光部610における平行度がばらつく場合であっても、複数の透光部610を通過した複数の光束の照射面320上における集光位置のY方向のずれを抑制(低減)することができる。なお、反射部65は、入射する光が偶数回反射して折り返される構成であればよく、反射部65にて、光が6以上の偶数回反射して光路長差生成部61に折り返されてもよい。また、偶数回反射させて光を折り返す反射部65は、プリズム等、様々な光学素子を用いて実現されてよい。
図16および図17は、光照射装置31の他の例を示す図である。図16は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、図17は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。図16および図17に示す光照射装置31では、図7および図8の光照射装置31と比較して、光路長差生成部61とミラー651との間にシリンドリカルレンズ656が追加される点で相違する。他の構成は、図7および図8の光照射装置31と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
シリンドリカルレンズ656は、Y方向のみにパワーを有し、ミラー651の反射面は、シリンドリカルレンズ656の焦点距離だけ、シリンドリカルレンズ656から光軸J1に沿って離れた位置に配置される。したがって、X方向に沿って見た場合に、光軸J1に平行な平行光の状態にて光路長差生成部61に入射した光は、光路長差生成部61を透過し、シリンドリカルレンズ656によりミラー651の反射面上にて集光する。当該光はミラー651にて反射し、シリンドリカルレンズ656により平行光とされて光路長差生成部61に入射する。
図18は、反射部65の近傍を拡大して示す図であり、X方向に沿って見た反射部65を示す。透光部610の平行度が0でない場合に、光軸J1に平行な平行光として当該透光部610の入射面611に入射する光束は、図18中に破線にて示すように、当該透光部610の出射面612から光軸J1に対して傾斜した出射方向に平行光として出射される。当該光束はシリンドリカルレンズ656の作用によりミラー651上の光軸J1からずれた位置に集光する。ミラー651にて反射した光束は、図18中に実線にて示すように、シリンドリカルレンズ656により上記出射方向に平行な平行光とされて当該透光部610の出射面612に入射する。したがって、透光部610を透過した光束は、(+Z)側から当該透光部610への入射時の経路に平行に入射面611から(+Z)方向に出射される。
以上のように、図17に示す光照射装置31においても、各透光部610の出射面612から出射される光を分割することなく、反射部65により、当該光の出射方向に平行に当該出射面612に入射させることが可能となる。これにより、複数の透光部610における平行度がばらつく場合であっても、複数の透光部610を通過した光の照射面320上における集光位置のY方向のずれを抑制することができる。
図19および図20は、本発明の第2の実施の形態に係る光照射装置31aの構成を示す図である。図19は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、図20は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。
図19および図20に示す光照射装置31aは、光源ユニット40と、照射光学系5aとを備える。光源ユニット40は、複数の光源部4を有し、各光源部4は、1つの光源41と、1つのコリメータレンズ42とを有する。複数の光源部4の光源41は、ZX平面に平行な面(以下、「光源配列面」という。)上において、およそX方向に配列される。各光源41から出射されるレーザ光は、コリメータレンズ42によりコリメートされて照射光学系5aに入射する。光源ユニット40では、光源部4から出射されるレーザ光の出射方向を調整する機構(図示省略)が設けられる。当該機構を調整することにより、複数の光源部4からのレーザ光が照射される照射光学系5a上の位置を一致させることが可能となる。このように、光源ユニット40では、光源配列面上に配列された複数の光源部4により、光源配列面に沿う互いに異なる方向から照射光学系5a上の同じ位置(後述の分割レンズ部62)に向けてレーザ光が出射される。
照射光学系5aは、光路長差生成部61と、分割レンズ部62と、集光レンズ部63と、中間変倍部64aとを備える。照射光学系5aでは、光源ユニット40から照射面320に向かって、分割レンズ部62、中間変倍部64a、光路長差生成部61、集光レンズ部63の順に、これらの構成が光軸J1に沿って配置される。複数の光源部4からのコリメートされたレーザ光は、分割レンズ部62に入射する。図21に示すように、分割レンズ部62では、複数の要素レンズ620が、照射光学系5aの光軸J1に垂直、かつ、光源配列面に沿うX方向に配列される。
Y方向に沿って見た場合に、分割レンズ部62へと入射する光は複数の要素レンズ620にてX方向に関して分割される。このとき、各要素レンズ620の第1レンズ面621には各光源部4からの平行光が入射し、第2レンズ面622の近傍に複数の光源41の像が形成される。これらの像は、要素レンズ620の配列方向に並ぶ。なお、図21では、1つの要素レンズ620に入射する光線のみを図示している。
複数の要素レンズ620にて分割された光(複数の光束)は、主光線が光軸J1に平行となるように第2レンズ面622から出射される。各要素レンズ620から出射された光束は拡がりつつ、図19に示す中間変倍部64aのレンズ643に入射し、レンズ643,644を介して光路長差生成部61に入射する。光路長差生成部61では、複数の透光部610が、照射光学系5aの光軸J1に垂直、かつ、光源配列面に沿うX方向に配列される。透光部610の配列ピッチは、要素レンズ620の配列ピッチよりも大きい。
中間変倍部64aは、アフォーカル光学系、具体的には、両側テレセントリック光学系を構成し、主光線が光軸J1に平行な状態で入射する光を、主光線が光軸J1に平行な状態で光路長差生成部61に入射させる。このとき、中間変倍部64aは、複数の要素レンズ620の出射面である第2レンズ面622の像(詳細には、第2レンズ面622における複数の光源41の像)を、光路長差生成部61の内部または近傍に拡大して形成する。
詳細には、中間変倍部64aによる拡大倍率は、光路長差生成部61における透光部610の配列ピッチを、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列ピッチにて割った値と等しい。したがって、複数の要素レンズ620を通過した光(複数の光束)が、拡大光学系を構成する中間変倍部64aを介して複数の透光部610にそれぞれ入射する。このとき、複数の要素レンズ620の第2レンズ面622の像が、複数の透光部610の内部または近傍にそれぞれ形成される。また、各要素レンズ620から出射される光束の透光部610における拡がり角が、当該要素レンズ620の第2レンズ面622近傍における拡がり角よりも、拡大倍率に従って小さくなる。その結果、光束が当該透光部610のエッジ(すなわち、X方向の端であり、主として入射面611および出射面612におけるエッジである。)に掛かりにくくなる。各透光部610を通過した光束は、集光レンズ部63へと向かう。複数の透光部610から出射された複数の光束は、集光レンズ部63のコンデンサレンズ631により平行光とされ、照射面320において重畳される。すなわち、複数の透光部610からの光(複数の光束)の照射領域50が全体的に重ねられる。
図20に示すようにX方向に沿って見た場合に、光源ユニット40から分割レンズ部62および中間変倍部64aを介して光路長差生成部61へと入射する光は、平行光のままで複数の透光部610を通過してコンデンサレンズ631へと導かれる。そして、コンデンサレンズ631から出射される光は照射面320上において集光する。したがって、照射面320において、各要素レンズ620(透光部610)からの光の照射領域50は、配列方向に伸びるライン状となる。すなわち、光照射装置31aにより照射面320上に照射される光の断面は、X方向に伸びるライン状となり、ライン照明光が得られる。
光照射装置31aでは、コンデンサレンズ631は球面レンズであるが、例えば、Y方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズを集光レンズ部63に追加することにより、照射面320においてY方向に所望の幅となるライン照明光が得られてもよい。なお、光源41がハイパワーの半導体レーザである場合に、光源41から出射されるレーザ光が一方向にマルチモードとなるときには、シングルモードとなる方向を、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列方向に垂直な方向(Y方向)に合わせることが好ましい。これにより、照射面320においてライン照明光のY方向の幅が広がることが防止される。
以上に説明したように、図19の光照射装置31aでは、レーザ光の経路において光路長差生成部61が分割レンズ部62よりも照射面320側に配置され、分割レンズ部62と光路長差生成部61との間に、拡大光学系を構成する中間変倍部64aが配置される。これにより、透光部610の配列方向(図19では、X方向)に関して、光路長差生成部61を分割レンズ部62に比べて大きくすることができ、光路長差生成部61を容易に作製することができる。
光照射装置31aでは、複数の光源部4から分割レンズ部62に向けてレーザ光が出射される。これにより、1つの光源部4のみが用いられる光照射装置に比べて、高強度のライン照明光を得ることができる。また、複数の光源部4からのレーザ光の位相は互いに相違するため、複数の透光部610により、複数の要素レンズ620を通過する複数の光束に光路長差を付与することと相俟って、照射面320におけるライン照明光の強度分布の均一性をさらに向上することができる。
ところで、分割レンズ部の各要素レンズを通過した光が光路長差生成部における透光部のエッジ(透光部間の境界等)に掛かると、当該光が散乱して照射面上における光の強度分布の均一性が低下する。分割レンズ部62と光路長差生成部61との間における中間変倍部64aを省いた比較例の光照射装置を想定した場合、透光部の配列ピッチを大きくすることにより、要素レンズを通過した光が透光部のエッジに掛かることを防止することが考えられる。しかしながら、比較例の光照射装置において透光部の配列ピッチを大きくするには、分割レンズ部の要素レンズの配列ピッチも大きくする必要があり、フォトリソグラフィを利用する分割レンズ部の作製が困難となる。
これに対し、光照射装置31aでは、既述のように、分割レンズ部62と光路長差生成部61との間に、拡大光学系を構成する中間変倍部64aが設けられることにより、光路長差生成部61における透光部610の配列ピッチを分割レンズ部62における要素レンズ620の配列ピッチよりも大きくすることができる。また、中間変倍部64aにより、複数の透光部610の内部または近傍に複数の要素レンズ620の出射面の像が形成されるとともに、当該像の拡大に伴って、各要素レンズ620から出射される光束の透光部610における拡がり角が、当該要素レンズ620における拡がり角よりも小さくなる。その結果、当該光束が透光部610のエッジに掛かることを容易に抑制することができ、光照射装置31aにより照射面320上に照射される光の強度分布の均一性を、より確実に確保することができる。
図22および図23は、光照射装置31aの他の例を示す図である。図22は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、図23は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。図22および図23に示す光照射装置31aでは、図19および図20の光照射装置31aと比較して、光路長差生成部61と集光レンズ部63との間にレンズ53,54が追加される点で相違する。他の構成は、図19および図20の光照射装置31aと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
レンズ53,54は、縮小光学系(例えば、両側テレセントリック光学系)を構成し、光路長差生成部61の内部または近傍における複数の要素レンズ620(図21参照)の第2レンズ面622の像(詳細には、第2レンズ面622における複数の光源41の像)を縮小リレーする。レンズ54から出射される光は、集光レンズ部63のコンデンサレンズ631に入射し、照射面320上にライン状の照射領域50が形成される。
既述のように、各要素レンズ620から出射される光束の透光部610における拡がり角が比較的小さいことにより、光照射装置31aでは、光束が透光部610のエッジに掛かることが容易に抑制される。この場合に、照射面320上においてX方向にある程度の長さとなるライン照明光を得るには、図19の光照射装置31aでは、焦点距離が長いコンデンサレンズ631を設ける必要があり、Z方向における照射光学系5aの全長が長くなる。これに対し、図22の光照射装置31aでは、光路長差生成部61と集光レンズ部63との間に、縮小光学系を構成するレンズ53,54が設けられることにより、照射光学系5aの全長を比較的短くすることができ、光照射装置31aの小型化を図ることができる。
図24および図25は、光照射装置31aの他の例を示す図である。図24は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、図25は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。図24および図25に示す光照射装置31aでは、図19および図20の光照射装置31aと比較して、偏光ビームスプリッタ55、1/4波長板56および反射部65が追加される点で相違する。他の構成は、図19および図20の光照射装置31aと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
図24の光照射装置31aでは、(−Z)側から(+Z)方向に向かって、反射部65、光路長差生成部61、1/4波長板56、中間変倍部64aのレンズ644,643、偏光ビームスプリッタ55、集光レンズ部63の順にて、これらの構成が並ぶ。また、光源ユニット40は、偏光ビームスプリッタ55の(+X)側に配置され、光源ユニット40と偏光ビームスプリッタ55との間に分割レンズ部62が配置される。光源ユニット40において、およそZ方向に並ぶ複数の光源部4から、光源配列面に平行かつ互いに異なる方向に沿って分割レンズ部62に向けてレーザ光が出射される。
分割レンズ部62では、光源ユニット40と偏光ビームスプリッタ55との間における光軸に垂直、かつ、光源配列面に沿うZ方向に複数の要素レンズ620(図21参照)が配列され、分割レンズ部62に入射する光がZ方向に分割される。分割レンズ部62を通過した光は、その主光線がX方向に平行な状態で偏光ビームスプリッタ55に入射する。偏光ビームスプリッタ55は、p偏光成分とs偏光成分とを分離するものである。光源ユニット40から分割レンズ部62を介して偏光ビームスプリッタ55に入射する光のほとんどはs偏光成分であり、当該光は偏光ビームスプリッタ55にて反射して中間変倍部64aのレンズ643へと向かう。このとき、複数の要素レンズ620から出射される複数の光束の配列方向が、X方向に変換される。換言すると、偏光ビームスプリッタ55から中間変倍部64aへと向かう光の主光線はZ方向と平行となる。
中間変倍部64aでは、両側テレセントリック光学系が構成されており、主光線が光軸J1(Z方向)に平行な状態で入射する光を、主光線が光軸J1に平行な状態で光路長差生成部61に入射させる。実際には、複数の要素レンズ620を通過した光(複数の光束)が、偏光ビームスプリッタ55、中間変倍部64aおよび1/4波長板56を介して、X方向に並ぶ複数の透光部610にそれぞれ入射し、複数の要素レンズ620の第2レンズ面622の像(光源41の像)が、光路長差生成部61における複数の透光部610の内部または近傍にそれぞれ拡大して形成される。このように、分割レンズ部62の要素レンズ620の配列方向と、光路長差生成部61の透光部610の配列方向とが、偏光ビームスプリッタ55を介して対応する。
反射部65は、光路長差生成部61の(−Z)側の面にコーティングにより形成された反射膜651aを有する。各透光部610の(+Z)側の面である入射面611(図4参照)に入射した光束は、(−Z)側の面である出射面612上の反射膜651aにて反射して、当該入射面611から出射される。すなわち、各透光部610の入射面611に入射した光束は、透光部610の内部をZ方向に往復して当該入射面611から(+Z)方向に出射される。出射面612上の反射膜651aは、実質的に、複数の透光部610の複数の出射面612から出射される光を折り返して当該複数の出射面612にそれぞれ入射させるものである。なお、要素レンズ620の第2レンズ面622の像は透光部610の出射面612近傍(反射膜651a近傍)に形成されることが好ましい。
光路長差生成部61から(+Z)方向に出射される光は、1/4波長板56を介して中間変倍部64aに入射する。中間変倍部64aでは、光路長差生成部61の内部または近傍における複数の要素レンズ620の出射面の像が縮小リレーされる。レンズ643から出射される光は、偏光ビームスプリッタ55に入射する。中間変倍部64aから偏光ビームスプリッタ55に入射する光は、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間の往復にて1/4波長板56を2回通過することによりp偏光成分となっており、当該光は偏光ビームスプリッタ55を透過し、コンデンサレンズ631に入射する。そして、コンデンサレンズ631により、複数の要素レンズ620からの光の照射領域50が照射面320上にて重ねられる。
以上に説明したように、図24の光照射装置31aでは、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間の光の往復における往路において、複数の要素レンズ620の出射面を拡大した像が、中間変倍部64aにより複数の透光部610の内部または近傍に形成される。これにより、透光部610の配列方向に関して、光路長差生成部61を分割レンズ部62に比べて大きくすることができ、光路長差生成部61を容易に作製することができる。また、図22におけるレンズ53,54の機能が、上記光の往復における復路において中間変倍部64aにより実現されることにより、上記レンズ53,54を省いて、光照射装置31aのZ方向の全長を短くすることができる。さらに、各透光部610を通過する光束が当該透光部610を往復することにより、光路長差生成部61の光軸J1方向の長さを短くする(例えば、図19や図22の光路長差生成部61の長さの半分にする)ことができる。なお、図24の光照射装置31aにおいて、反射膜651aに代えて図7に示すミラー651が設けられてよい。同様に、図7の光照射装置31において、ミラー651に代えて反射膜651aが設けられてよい。
図26および図27は、光照射装置31aの他の例を示す図である。図26は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、図27は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。図26および図27に示す光照射装置31aでは、図24および図25の光照射装置31aにおける反射膜651aに代えてレンズ657および直角プリズム658が設けられる。他の構成は、図24および図25の光照射装置31aと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
反射部65のレンズ657は、光路長差生成部61において要素レンズ620(図21参照)の出射面の像が形成される位置から、レンズ657の焦点距離だけ(−Z)側に離れた位置に配置される。したがって、各透光部610の(−Z)側の面である出射面612からレンズ657に向けて出射される光束は、レンズ657により平行光として(−Z)側に出射される。直角プリズム658は、レンズ657からレンズ657の焦点距離だけ(−Z)側に離れた位置に配置される。図26に示すようにY方向に沿って見た場合に、直角プリズム658に入射する各光線は、90度をなす2つの面658a,658bの一方にて反射して他方の面に向かい、当該他方の面にてさらに反射して、直角プリズム658への入射時の経路と平行にレンズ657へと向かう。(−Z)側からレンズ657に入射する光は、収束しつつ光路長差生成部61に入射する。実際には、各透光部610の(−Z)側の出射面612から出射される光束は、反射部65にて折り返され、同じ経路を戻って当該出射面612に入射する。また、当該透光部610の内部または近傍に当該光束の集光点が形成される。
光路長差生成部61から(+Z)方向に出射される光は、1/4波長板56および中間変倍部64aを介して偏光ビームスプリッタ55に入射する。当該光は偏光ビームスプリッタ55を透過し、コンデンサレンズ631に入射する。そして、コンデンサレンズ631により、複数の要素レンズ620からの光の照射領域50が照射面320上にて重ねられる。
ここで、図27に示すようにX方向に沿って見た場合における、透光部610の入射面611および出射面612の平行度が透光部610毎にばらついているものとする。この場合、各透光部610の(+Z)側の入射面611に、光軸J1に平行な平行光として入射する光束は、当該透光部610の出射面612から光軸J1に対して傾斜した出射方向に平行光として出射される。当該光束はレンズ657の作用により直角プリズム658上の光軸J1からずれた位置に集光する。直角プリズム658にて反射した光束は、レンズ657により上記出射方向に平行な平行光とされて当該透光部610の出射面612に入射する。したがって、透光部610を透過した光束は、透光部610の平行度に依存することなく、(+Z)側から当該透光部610への入射時の経路に平行に入射面611から(+Z)方向に出射される。そして、複数の透光部610からの光の照射領域50が照射面320上においてY方向の(ほぼ)同じ位置に形成される。
以上のように、図26および図27に示す光照射装置31aでは、反射部65が、各透光部610の出射面612から出射される光を、当該光の出射方向に平行に当該出射面612に入射させる。これにより、複数の透光部610における平行度(ウエッジ成分)がばらつく場合であっても、複数の透光部610から(+Z)方向に出射される複数の光束の光軸J1に対する傾き(X方向に沿って見た場合の傾き)を、(+Z)側から光路長差生成部61への入射時における傾き(理想的には、光軸J1に平行)に一致させることができる。その結果、複数の透光部610を通過した複数の光束の照射面320上における集光位置(X方向に沿って見た場合の集光位置)のY方向のずれを抑制し、照射面320上におけるライン照明光のY方向の幅の太りを抑制することができる。なお、反射部65では、直角プリズム658に代えて、互いになす角度が90度の2枚の平面ミラー等が用いられてよい。
上記描画装置1および光照射装置31,31aでは様々な変形が可能である。
分割レンズ部62では、必ずしも複数の要素レンズ620が配列方向に一定のピッチにて配列される必要はなく、例えば、複数の要素レンズ620の配列方向の幅が互いに異なっていてもよい。この場合、配列方向に関して、光路長差生成部61における各透光部610の幅と、当該透光部610に対応する分割レンズ部62の要素レンズ620の幅との比が、全ての透光部610において一定となるように、複数の透光部610の配列方向の幅も変更される。
光照射装置31,31aの設計によっては、要素レンズ620の配列方向のみならず、当該配列方向に垂直な方向にもパワーを有する要素レンズ620が、分割レンズ部62において用いられてよい。
例えば、図2の光照射装置31において、中間変倍部64のレンズ642から出射される光が、その主光線が光軸J1に対して傾斜した状態で、分割レンズ部62に入射してもよい。すなわち、中間変倍部64,64aは、必ずしも両側テレセントリック光学系である必要はない。レーザ光の経路において分割レンズ部62が光路長差生成部61よりも照射面320側に配置される照射光学系5では、中間変倍部64は、複数の透光部610を通過した光が複数の要素レンズ620にそれぞれ入射する縮小光学系を構成すればよい。また、レーザ光の経路において光路長差生成部61が分割レンズ部62よりも照射面320側に配置される照射光学系5aでは、中間変倍部64aは、複数の要素レンズ620を通過した光が複数の透光部610にそれぞれ入射する拡大光学系を構成すればよい。
上記光照射装置31,31aにおけるレーザ光の経路において、分割レンズ部62および光路長差生成部61よりも照射面320側に配置される集光レンズ部63は、照射面320上にて複数の要素レンズ620からの光の照射領域50を重ねることが可能であるならば、様々な構成にて実現されてよい。
描画装置1において、光照射装置31,31aの照射面320に配置される空間光変調器32は、回折格子型の光変調器以外であってよく、例えば、微小なミラーの集合を用いた空間光変調器が用いられてよい。この場合に、Y方向の幅が比較的広い照射領域が、光照射装置31,31aにより照射面320上に形成されてもよい。
基板9上の光の照射位置を移動する移動機構は、ステージ21を移動する移動機構22以外であってもよく、例えば、光照射装置31,31a、空間光変調器32および投影光学系33を含むヘッドを基板9に対して移動する移動機構であってよい。
描画装置1にて描画が行われる対象物は、半導体基板やガラス基板以外の基板であってよく、また、基板以外であってもよい。光照射装置31,31aは、描画装置1以外に用いられてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。