JP6331992B2 - クラッチ装置 - Google Patents
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Description
本発明の実施形態は、クラッチ装置に関する。
従来、摩擦材の摩耗による特性の変化を補償する摩擦補償手段を備えたクラッチ装置が知られている。例えば、特許文献1には、プレッシャプレートの外周端部の当接部を、クラッチカバーに設けたストッパ部に当接させて、プレッシャプレートの移動を規制することにより、アジャストウェッジとダイヤフラムスプリングとの間に隙間を発生させて調整動作を行うよう構成された摩擦補償手段が開示されている。
しかしながら、上記従来の構成では、プレッシャプレートの外周端部に当接部を設ける必要があるため、プレッシャプレートの構成が複雑化してしまうという問題がある。そこで、この種のクラッチ装置では、例えば、トルクの伝達に関わり軸方向に移動可能な部材の構成が複雑化するのを抑制することが望まれている。
実施形態のクラッチ装置は、例えば、回転中心回りに回転可能に設けられた第一の部材と、前記回転中心回りに回転可能に設けられるとともに、少なくとも、前記第一の部材との間で摩擦によってトルクが伝達される第一の位置と、当該第一の位置よりも前記第一の部材から離間してトルクが伝達されない第二の位置と、の間で前記回転中心の軸方向に移動可能に設けられた第二の部材と、前記第一の部材および前記第二の部材のうち一方が他方に向けて押される力であって前記第二の部材の前記軸方向の位置に応じて変化する力を生じる第一の弾性部材と、前記軸方向に移動可能に設けられ前記第二の部材の前記軸方向の位置を変化させる第三の部材と、前記第二の部材と前記第三の部材との間に位置され、前記軸方向の長さを変更可能な可変設定部と、前記回転中心回りに回転可能に設けられ、前記可変設定部を覆うカバーと、を備え、前記可変設定部は、前記一方の前記軸方向の一方側に位置され、前記一方と前記第一の弾性部材との間に介在する第四の部材と、前記第四の部材の前記軸方向の他方側に位置され、前記第四の部材と前記一方との間に介在し、前記第四の部材と前記軸方向に離間可能に設けられ、前記第四の部材に対して前記回転中心の周方向の一方側に移動することにより前記第四の部材に対して前記軸方向の他方側に移動するよう構成された第五の部材と、移動部と、を有し、前記カバーは、前記第五の部材を前記軸方向に支持することにより、前記第五の部材の前記軸方向の一方側への移動を制限するストッパ部を、有し、前記移動部は、前記ストッパ部によって前記第五の部材の前記軸方向の一方側への移動が制限されて前記第四の部材と前記第五の部材とが前記軸方向に離間した場合に、前記第四の部材に対して前記第五の部材を前記周方向の一方側へ移動させる。よって、実施形態のクラッチ装置によれば、例えば、ストッパ部が可変設定部の第五の部材を軸方向に支持するので、トルクの伝達に関わり軸方向に移動可能な第二の部材の構成が複雑化するのを抑制することができる。
前記クラッチ装置では、例えば、前記ストッパ部における前記第五の部材と当接する当接部と前記第五の部材における前記ストッパと当接する当接部との少なくも一方は、前記周方向の一方側に向かうにつれて前記軸方向の他方向に向かう傾斜面である。よって、例えば、可変設定部の軸方向の長さを変更した場合でも、第五の部材とストッパ部との間の軸方向の距離の変動を抑制することができる。
前記クラッチ装置では、例えば、前記第四の部材は、前記第一の弾性部材と接続され、前記第五の部材は、前記第一の弾性部材と離間し、前記第二の部材に対して前記回転中心回りに回転可能である。よって、例えば、第一の弾性部材が第四の部材によって擦られることを抑制することができる。
前記クラッチ装置は、例えば、前記第二の部材と前記第五の部材との間に介在し、前記第五の部材に作用する前記第一の弾性部材の力に抗する力であって、前記第二の部材の前記軸方向の位置に応じて変化する力を生じる第二の弾性部材を備える。よって、例えば、第二の部材を移動させる操作部の力を小さくしやすい。
以下、本発明の例示的な実施形態ならびに変形例が開示される。以下に示される実施形態ならびに変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果および結果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態ならびに変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
また、以下に開示される複数の実施形態ならびに変形例には、同様の構成要素が含まれる。以下では、同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。また、以下の説明では、特に言及しない限り、軸方向は回転中心Axの軸方向、径方向は回転中心Axの径方向、周方向は回転中心Axの周方向である。回転中心Axは、回転軸や、軸心等とも称されうる。また、便宜上、軸方向の一方側は、各図で左側、軸方向の他方側は、右側である。
<第1実施形態>
図1に示される本実施形態のクラッチ装置100は、例えば、エンジンとトランスミッションとの間に位置される。なお、クラッチ装置100は、エンジンとトランスミッションとの間には限られず、他の位置にも設けられうるし、ハイブリッド自動車等の種々の車両や、回転要素を有した機械等にも設けられうる。
図1に示される本実施形態のクラッチ装置100は、例えば、エンジンとトランスミッションとの間に位置される。なお、クラッチ装置100は、エンジンとトランスミッションとの間には限られず、他の位置にも設けられうるし、ハイブリッド自動車等の種々の車両や、回転要素を有した機械等にも設けられうる。
本実施形態では、クラッチ装置100は、一つの回転伝達部10を備えた所謂シングルクラッチである。クラッチ装置100は、ECU301に制御されたアクチュエータ303によって、部材15,16や、ベアリング31等の可動部が軸方向に沿って動かされることにより、回転伝達部10でトルクが伝達される伝達状態と、回転伝達部10でのトルクの伝達が遮断された遮断状態と、を切り替えることができる。回転伝達部10は、部材1,2とシャフト3との間で伝達されるトルクを変化させることができる。部材1は、トルクの入力部材および出力部材のうち一方であり、シャフト3は他方である。なお、回転伝達部10は、それぞれ、入力トルクに対して出力トルクが減る所謂半クラッチ状態でのトルクの伝達も可能である。
クラッチ装置100は、回転伝達部10による回転の伝達および遮断に関わる部品としては、部材1,2,13〜16、シャフト3、ならびにベアリング31を備える。部材1,2,13〜16ならびにシャフト3は、いずれも金属材料等で構成されうる。
シャフト3は、ケース5に、軸受部(図示されず)を介して回転可能に支持されている。ケース5は、トランスミッションケースとも称される。シャフト3は、その回転中心Ax回りに回転する。シャフト3は、例えば、少なくとも部分的に円筒状に構成される。
ケース5には、突出部51が設けられている。突出部51は、シャフト3を径方向の外側から覆う。突出部51は、壁部52から軸方向の他方側、すなわち図1の右側、に向けて回転中心Axを中心とする円筒状に突出している。突出部51は、壁部52等のケース5の他の部分と一体成形されうるし、あるいは、他の部分とは別部材として構成され当該他の部分に、ねじやリベット等の結合具等を用いて一体化されうる。ケース5は、筐体の一例である。
部材1は、回転中心Ax回りに回転可能に設けられる。部材1は、壁部1a,1bを有する。壁部1aは、円板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。壁部1bは、壁部1aの径方向の外側の端部から軸方向の一方側、すなわち図1の左側、に向けて突出し、円筒状に構成されている。部材1は、エンジン等の駆動源に支持されている。部材1は、例えば、ドライブプレート、フライホイールとも称される。
カバー2は、回転中心Ax回りに回転可能に設けられる。カバー2は、壁部2a,2b,2c,2dを有する。壁部2aは、部材1の壁部1aに接続されている。壁部2aは、円環状かつ板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。壁部2bは、壁部2aの壁部1aよりも回転中心Axに近い位置から軸方向の一方側、すなわち、図1の左側、に向けて突出し、回転中心Axを中心とする円筒状に構成されている。壁部2cは、壁部2bに接続されている。壁部2cは、円板状に構成され、回転中心Axと交叉して広がっている。また、ベアリング33の一方の回転部分としての径方向の内側の回転部分は、突出部51と接続され、他方の回転部分としての径方向の外側の回転部分は、壁部2cの径方向の内側の端部と接続されている。壁部2cを含むカバー2は、ベアリング33によって、回転中心Ax回りに回転可能に支持されている。カバー2は、例えば、クラッチカバーとも称される。
周方向に間隔をあけて配置された複数(例えば、三つ)の壁部2dが、壁部2bから径方向の内側に向けて内向きに突出している。壁部2dは、回転中心Axと交叉した矩形状かつ板状に構成されている。
部材13は、壁部2aの軸方向の一方側、すなわち、図1の左側、に設けられている。部材13は、壁部13a,13b,13f、弾性部材13c、摩擦材13d、ならびにスプライン結合部13eを有する。壁部13aは、円板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。壁部13bは、円板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。具体的には、壁部13aおよび壁部13bのうち一方が、二個の他方の間に軸方向に挟まれた状態で設けられる。より具体的には、壁部13bが、二個の壁部13aの間に軸方向に挟まれた状態で設けられる。また、壁部13a,13bは、少なくとも一部の回転範囲では、角度差を有した状態、すなわち、互いに捩れた状態、で回転することができる。弾性部材13cは、壁部13aと壁部13bとの間に挟まれ、周方向に略沿って弾性的に伸縮可能に設けられている。弾性部材13cは、例えば、コイルスプリングである。弾性部材13cは、壁部13aと壁部13bとの相対的な回転角度に応じて周方向に沿って伸縮する。弾性部材13cは、弾性的に縮むことによりトルクを圧縮力として蓄え、弾性的に伸びることにより圧縮力をトルクとして放出する。すなわち、部材13は、弾性部材13cによって、トルク変動を緩和することができる。部材13は、シャフト3と一体的に回転する。また、部材13は、軸方向に移動可能に設けられている。具体的には、壁部13aおよび壁部13bのうち一方が、シャフト3に、円筒状のスプライン結合部13eを介して支持されている。より具体的には、壁部13bが、シャフト3にスプライン結合部13eを介して支持されている。また、壁部13aおよび壁部13bのうち他方が、壁部2a,14aの間に位置される領域を有している。より具体的には、壁部13aが、壁部2a,14aの間に位置される領域を有している。部材13は、例えば、クラッチディスクとも称される。
また、壁部13fは、円環状かつ板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。壁部13fは、壁部13aと壁部2a,14aのうち一方との間に位置されている。換言すれば、壁部13fは、壁部13aの軸方向の一方側または他方側に位置されている。具体的には、壁部13fは、壁部14a側に位置されている。換言すれば、壁部13fは、壁部13aの軸方向の一方側、すなわち、図1の左側、に位置されている。壁部13fは、壁部13aと一体的に回転する。そして、壁部13aと壁部13fとの間には、弾性部材19が介在している。弾性部材19は、軸方向に薄く、例えば、ダイヤフラムスプリングや、コーンスプリング、皿ばね、板ばね等として構成される。弾性部材19は、壁部13a,13fが互いに近付くにつれて弾性的に変形する。弾性部材19は、弾性変形に伴う反力を壁部13a,13fに与える。弾性部材19は、壁部13aおよび壁部13fに、それらが互いに離れる方向の力を与える。すなわち、壁部13aには、弾性部材19から壁部13fとは反対側へ向かう力が与えられ、壁部13fには、弾性部材19から壁部13aとは反対側へ向かう力が与えられる。壁部13a,13fのうち一方(図1の例では壁部13a)と壁部2aとの間、ならびに壁部13a,13fのうち他方(図1の例では壁部13f)と壁部14aとの間には、それぞれ、摩擦材13dが介在している。具体的には、壁部13aと壁部2aとの間、ならびに壁部13fと壁部14aとの間には、それぞれ、摩擦材13dが介在している。摩擦材13dは、例えば、接着や結合具等によって、壁部13a,13fに結合される。なお、摩擦材は、壁部2a,14aにも設けられうる。
部材14は、壁部14aを有する。壁部14aは、円環状かつ板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。部材14は、弾性部材14および可変設定部20を介して、部材15に支持されている。部材14は、軸方向に移動可能に設けられる。また、部材14は、カバー2と一体的に回転するよう構成されている。部材14は、例えば、プレッシャプレートとも称される。
部材15は、壁部15a等を有する。部材15は、ベアリング31を介して、回転中心Ax回りに回転可能に、突出部51に支持されている。ベアリング31の径方向の外側の回転部分は、突出部51に対して相対的に回転しない状態で突出部51に軸方向に移動可能に支持されるとともに、壁部15aの径方向の内側の端部と接続されている。一方、ベアリング31の径方向の内側の回転部分は、壁部16aの径方向の内側の端部と接続されている。すなわち、部材15は、ベアリング31を介して、突出部51に、軸方向に移動可能に支持されるとともに、回転中心Ax回りに回転可能に支持されている。また、部材15は、カバー2および部材15間の周方向の引っ掛かりや、摩擦等によって、カバー2と一体的に回転する。部材15は、例えば、レリーズプレートとも称される。
カバー2の壁部2cと部材15の壁部15aとの間には弾性部材17が介在している。弾性部材17は、軸方向に薄く、例えば、ダイヤフラムスプリングや、コーンスプリング、皿ばね、板ばね等として構成される。弾性部材17は、壁部2c,15aが互いに近付くにつれて弾性的に変形する。弾性部材17は、弾性変形に伴う反力を壁部2c,15aに与える。弾性部材17は、壁部2cおよび壁部15aに、それらが互いに離れる方向の力を与える。すなわち、壁部2cには、弾性部材17から壁部15aとは反対側へ向かう力が与えられ、壁部15aには、弾性部材17から壁部2cとは反対側へ向かう力が与えられる。弾性部材17は、第一の弾性部材の一例である。
部材16は、ケース5に対してベアリング31を軸方向に移動可能に設けられている。部材16は、延部16aを有する。延部16aは、径方向に沿って延びており、板状かつ帯状あるいは棒状に構成されている。延部16aは、ベアリング31の突出部51に支持される側とは反対側の回転部分と接続されている。具体的には、延部16aは、ベアリング31の径方向の内側の回転部分と接続されている。よって、アクチュエータが部材16との接続部を軸方向に動かし、これにより、ベアリング31および部材15ひいては部材14が軸方向に動いて、回転伝達部10の伝達状態、半クラッチ状態、遮断状態が切り替わる。延部16aは、アーム部やレバー部、壁部とも称される。
図1〜3に例示されるように、部材14は、少なくとも、位置P11(図3)と位置P12(図1)との間で軸方向に移動することができる。よって、部材14は、位置P11と位置P12との間の位置P13(図2)にも位置することができる。
部材14と部材15との間には、弾性部材18および可変設定部20が介在している。弾性部材18は、部材14と可変設定部20との間に介在し、弾性部材18と部材15との間に可変設定部20が介在している。
弾性部材18は、軸方向に薄く、例えば、ダイヤフラムスプリングや、コーンスプリング、皿ばね、板ばね等として構成される。弾性部材18は、壁部14a,15aが互いに近付くにつれて弾性的に変形する。弾性部材18は、弾性変形に伴う反力を壁14a,15aに与える。弾性部材17は、壁部14a,15aに、それらが互いに離れる方向の力を与える。すなわち、壁部14aには、弾性部材18から壁部15aとは反対側へ向かう力が与えられ、壁部15aには、弾性部材18から壁部14aとは反対側へ向かう力が与えられる。弾性部材18は、第二の弾性部材の一例である。
可変設定部20は、二つの部材21,22を有している。部材21は弾性部材18を介して部材15に接続され、部材22は部材15に支持されている。可変設定部20は、カバー2によって覆われている。可変設定部20には、二つの部材21,22が互いに接触した接触状態(通常状態、図1〜図3)と、二つの部材21,22が互いに分離した離間状態(設定状態、図4)と、がある。接触状態では、部材14,15は弾性部材18を介して軸方向に当接して一体化され、離間状態では、部材14,15は軸方向に互いに離間している。部材15の位置P21〜P23のそれぞれは、部材14の位置P11〜P13に対応している。図4に示されるように、部材15は、部材16の移動に伴って、位置P22よりも位置P21とは反対側の位置P24にも位置することができる。位置P21〜P23は、部材15のクラッチ装置100の通常の使用時の可動範囲である。位置P24は、通常の可動範囲を外れた位置であって、調整時の位置である。部材15が位置P24に位置された場合に、可変設定部20は、離間状態(設定状態)となり、部材21,22が互いに離間し、部材14,15も互いに離間する。部材21は、壁部2dと軸方向に接触し、当該壁部2dと接触した位置よりも軸方向の一方側、すなわち図4の左側、へは移動することができない。壁部2dは、部材21を軸方向に支持することにより、部材21の軸方向の一方側への移動を制限する。具体的には、壁部2dは、部材21の凸部21dを軸方向に支持する。壁部2dは、ストッパ部の一例である。
部材14が位置P13と位置P11との間に位置している状態、すなわち図2の状態、図3の状態、ならびにそれらの間の状態では、弾性部材19は、壁部13aと壁部13fとによって軸方向に圧縮される。よって、この状態では、部材14は、弾性部材19から、壁部13aと壁部13fとの圧縮による弾性的な圧縮反力、すなわち軸方向の一方側への力、を受ける。また、この状態では、カバー2および部材14と部材13との間で、摩擦材13dを介してトルクが伝えられる。部材14が、位置P13の近傍に位置した状態では、摩擦材13dとカバー2および部材14との間での滑りが生じる。この状態が、回転伝達部10の半クラッチ状態である。部材14が位置P11に位置した状態では、回転伝達部10は伝達状態にある。部材13は、第一の部材の一例であり、部材14は、第二の部材の一例であり、位置P11は、第一の位置の一例である。また、部材15の軸方向の位置の変化に伴って、部材14の軸方向の位置が変化する。部材15は、第三の部材の一例である。
一方、部材14が位置P13と位置P12との間に位置している状態、すなわち図1の状態、ならびに図1の状態と図2の状態との間の状態では、摩擦材13dが壁部2a,14aの双方から離間する。よって、この状態では、部材14は、弾性部材19から、壁部13aと壁部13fとの圧縮による弾性的な圧縮反力、すなわち軸方向の一方側への力、を受けない。この状態では、回転伝達部10は遮断状態にある。位置P12は、第二の位置の一例である。
弾性部材17,18,19から部材14,15に作用する力は、部材14,15の軸方向の位置に応じて変化する。図5には、部材15の位置に対応した弾性部材17,18,19から部材15に作用する力(弾性力)の大きさの一例が示されている。部材15の軸方向の位置によって、弾性部材17,18,19の軸方向の圧縮量、ひいては軸方向の弾性的な圧縮反力が変化する。図5の横軸は、部材15の位置である。横軸の原点は、図3に示された状態での位置、すなわち、部材13の壁部13aならびに壁部13fが壁部2aと壁部14aとの間に挟まれて、壁部2aと壁部14aとが最も近接した状態での、部材15の位置P21である。図5の縦軸では、壁部14aを壁部13aへ近づける方向(軸方向の他方側、図1〜4では右方向)が正(上側)、壁部14aを壁部13aから遠ざける方向(軸方向の一方側、図1〜4では左方向)が負(下側)である。なお、図5は、横軸が部材14の位置や、部材16の位置、アクチュエータ303のストローク等であった場合にも、同様の特性となる。
弾性部材17は、部材15ならびに部材14の壁部14aに、壁部13aに近付く方向の力、すなわち壁部14aが壁部13aに向けて押される力、を与える。弾性部材17による力の大きさ(絶対値)は、部材15が位置P21(原点)に位置している状態で最大であり、部材15が位置P21から位置P22へ向けて軸方向に移動するにつれて徐々に小さくなる。
弾性部材18は、部材14,15に、壁部13aから遠ざかる方向の力、すなわち壁部14aが壁部13aに向けて押される力とは反対側の力、を与える。弾性部材18による力の大きさ(絶対値)は、部材15が位置P21(原点)に位置している状態で最大であり、部材15が位置P21から位置P22へ向けて軸方向に移動するにつれて徐々に小さくなる。ただし、弾性部材18のばね定数は、弾性部材17のばね定数より小さく、弾性部材18が部材15に与える力の大きさは、弾性部材17が部材15に与える力の大きさよりも小さい。弾性部材18は、部材15から部材14に作用する軸方向の他方側への力を減らす。
弾性部材19も、部材15ならびに部材14の壁部14aに、壁部13aから遠ざかる方向の力、すなわち壁部14aが壁部13aに向けて押される力とは反対側の力、を与える。弾性部材18による力の大きさ(絶対値)は、部材15が位置P21(図3の原点、左端)に位置している状態で最大であり、部材15が位置P21から軸方向の他方側へ移動するにつれて徐々に小さくなる。ここで、車両発進時の低トルク域においては弾性部材18の弾性力は弾性部材19の弾性力よりも大きく、以降の他のトルク域においては弾性部材18の弾性力は弾性部材19の弾性力よりも小さい。また、上述したように、弾性部材19は、部材14が位置P11と位置P13との間に位置している状態、すなわち、部材15が位置P21と位置P23との間に位置している状態(図2の状態、図3の状態、ならびにそれらの間の状態)でのみ、部材14,15に力を与え、部材14が位置P13と位置P12との間に位置している状態、すなわち、部材15が位置P23と位置P22との間に位置している状態では、部材14,15に力を与えない。
クラッチ装置100の回転伝達部10は、部材16が操作されない状態では、伝達状態であり、弾性部材17の生じた力によって、壁部13aが壁部2aと壁部14aとの間に挟まれている。そして、クラッチ装置100では、部材16に与えた力(操作力)により、弾性部材17の生じた力に対抗して部材14,15が軸方向の一方側、すなわち図1〜3の左側、に動かされることで、回転伝達部10の半クラッチ状態ならびに遮断状態が得られる。弾性部材18,19は、弾性部材17の生じた力を減殺する力を生じる。すなわち、弾性部材18,19は、クラッチ装置100の回転伝達部10を、伝達状態から半クラッチ状態あるいは遮断状態に遷移させるために部材16を操作する操作力を小さくするのに資する。すなわち、弾性部材18,19は、アシストスプリングの一例である。クラッチ装置100では、各弾性部材17,18,19は、部材14が位置P11に位置され、部材15が位置P21に位置された状態で、回転伝達部10で滑りが生じることなくトルクが伝達されるよう、設定される。さらに、弾性部材17,18,19は、弾性部材17が生じた力が弾性部材18,19が生じた力によって減殺され、部材14,15を動かす部材16を操作する力が比較的小さくなるよう、設定される。図5から、二つの弾性部材18,19が、弾性部材17が生じる荷重と逆方向の荷重を生じていることが、理解できよう。比較的簡素に構成可能な二つの弾性部材18,19の合力によって、より広い部材15,16の可動範囲で弾性部材17の力を減殺する特性が得られている。
しかしながら、弾性部材17,18,19のへたり、摩擦材13dの摩耗等の経年劣化や、各部品の個体差により、所期の特性が得られない場合がある。そこで、クラッチ装置100は、可変設定部20を備えている。可変設定部20は、軸方向に対向して互いに当接した部材21,22を備えている。部材21は、弾性部材18に接続され、部材22は、部材15の壁部15aに接続されている。部材21,22は、部材14と部材15との間に位置されている。部材21は、部材22と部材14との間に介在し、部材22は、部材21と部材15との間に介在している。部材21と部材14との間には弾性部材18が介在している。可変設定部20は、部材21,22の軸方向の距離、すなわち可変設定部20の軸方向の長さを、変更することができる。部材21,22の軸方向の距離が変化することにより、部材14の壁部14aと部材15の壁部15aとの軸方向の距離が変化する。これにより、部材14,15,16が軸方向の各位置にある状態における、弾性部材17,18,19や摩擦材13d等が存在する空間の軸方向の距離を変更することができ、ひいては、部材14,15,16の軸方向の各位置における弾性部材17,18,19の弾性力や摩擦材13dの壁部2a,14aとの接触状態等を変更することができる。例えば、弾性部材19に関しては、可変設定部20の調整によって、部材15が所定位置にある状態での弾性部材19の軸方向の両端部を支持する壁部13a,13fの軸方向の距離D(図2参照)が変更される。可変設定部20の長さが長くなるほど、部材15が所定位置(可変設定部20の調整前後の同じ位置)にある状態での弾性部材19の軸方向の両端部を支持する壁部13a,13fの軸方向の距離Dが短くなる。
図1〜4に示されるように、部材21,22は、軸方向に重なり合っている。部材21,22は、いずれも回転中心Axを中心とした環状に構成されている。部材21は、壁部21b,21cと、凸部21dと、を有する。壁部21bは、円板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。壁部21cは、壁部21bの径方向の内側の端部から軸方向の一方側、すなわち図1の左側、に向けて突出し、円筒状に構成されている。凸部21dは、壁部21bの径方向の外側の端部から軸方向の一方側、すなわち図1の左側、に向けて突出している。凸部21dは、各壁部2d毎に設けられている。部材22は、円筒状に構成されている。
部材21,22は、壁部14aや、摩擦材13d、壁部13a、弾性部材18,19等と軸方向に重なっている。また、部材21,22は、弾性部材17の壁部15aとの接触点の比較的近くに配置されている。本実施形態では、部材21は、弾性部材18に接続されている。部材21は、弾性部材18および部材14と軸方向に一体的に動く。また、部材21は、例えば、弾性部材18および部材14に対して回転中心Ax回りに回転可能である。部材22は、弾性15の壁部15aに接続されている。部材22は、部材14と軸方向に一体的に動く。部材22は、例えば、部材22に対して回転中心Ax回りの回転が制限されている。部材22は、壁部15aに固定されうる。
また、図6に示されるように、部材21,22のうち一方(本実施形態では双方)は、周方向(図6の左右方向)の他方側(例えば左側)に向かうにつれて軸方向(図6の上下方向)の一方側(例えば上側)に向かう面21a,22a(傾斜面、螺旋面)を有する。面21aは、壁部21cに設けられている。部材21,22には複数の面21a,22aが例えば一定の間隔で設けられている。隣接する二つの面21a,22a間には軸方向の位置が変化する段差が設けられている。また、部材21,22のうち他方は、面21a,22aと面して接触する面22a,21aを有する。周方向に沿って一定の間隔で設けられた同一形状の複数の面21aのそれぞれと、周方向に沿って一定の間隔で設けられた同一形状の複数の面22aのそれぞれとが、互いに当接する。部材21,22のうち一方が他方に対して回転中心Ax回りに回転すると、面21a,22aが互いにスライドすることにより、部材21,22の軸方向の距離が変化する。可変設定部20では、部材21と部材22との周方向の相対的な位置が可変設定されることで、部材21,22の軸方向の距離が可変設定され、可変設定部20の軸方向の長さ(高さ、厚さ)が可変設定される。部材21,22は、軸方向に互いに離間可能に構成されている。部材21,22は、弾性部材17,18,19が生じる力によって、軸方向に互いに密着されている。部材22は、第四の部材の一例であり、部材21は、第五の部材の一例である。
また、可変設定部20は、図7に示されるように、移動部30を有する。移動部30は、壁部2dによって部材21の軸方向の一方側への移動が制限されて部材22と部材21とが軸方向に離間した場合に、部材22に対して第五の部材を周方向の一方側へ移動させる。具体的には、移動部30は、部材21に設けられた調節部23と、部材22に設けられた調節部24と、を有する。図7〜9の左右方向が周方向、上下方向が軸方向である。調節部23は、部材21に、少なくとも周方向に一体的に移動可能に結合(接続、支持、固定)されている。調節部24は、部材22に、少なくとも周方向に一体的に移動可能に結合されている。調節部23は、周方向に沿って並んだ複数の鋸歯25aを含む鋸歯列25を有する。鋸歯列25は、周方向に沿って延びるとともに、面21aと略平行に延びている。調節部24は、噛合部26と、支持部27と、弾性部28と、を有する。噛合部26は、鋸歯列25の鋸歯25aと噛み合う。噛合部26は、支持部27に、軸方向と交叉するとともに周方向と交叉する方向(軸方向と周方向との間の円筒面に沿った斜め方向、螺旋方向、以下、単に傾斜方向と称される)に沿って移動可能に支持されている。具体的には、支持部27に、傾斜方向に沿ったガイド部27aが設けられている。噛合部26の少なくとも一部がガイド部27aに移動可能に支持されている。弾性部28は、噛合部26が鋸歯25aに近接する方向に弾性的に押される力を生じている。弾性部28は、例えば、板ばねである。噛合部26は、周方向に沿って並んだ複数の鋸歯29aを含む鋸歯列29を有する。鋸歯列29は、周方向に沿って延びるとともに、面22aと略平行に延びている。鋸歯25aと鋸歯29aとは互いに噛み合う。
可変設定部20では、鋸歯25aと鋸歯29aとの噛み合いにより、部材21,22の周方向の位置が定まる。これにより、部材21,22の軸方向の距離、ひいては、部材14の壁部14aと部材15の壁部15aとの軸方向の距離が定まる。ここで、アクチュエータ(図示されず)によって、部材16,15が図1に示される状態から図4に示される状態に動く過程では、例えば、部材21は、弾性部材18の弾性力によって軸方向の一方側へ移動する。また、部材14は、図示されないストラップ等の弾性部材の弾性力によって軸方向の一方側へ移動する。すなわち、部材14,21と弾性部材18とが一体となって軸方向の一方側へ移動する。この移動の過程で、部材21の突出部21cが壁部2dに当接して部材21の軸方向の一方側への移動が止まり、部材21,22が図8に示されるように軸方向に離間すると、噛合部26の鋸歯29aが軸方向に動いて、鋸歯25aから離間する。すなわち、噛合部26は、鋸歯25aと噛み合った位置P31から、鋸歯25aから離間した位置P32へ移動する。ここで、噛合部26は、ガイド部27aによって斜め方向に案内されるとともに、弾性部28が生じた力によって調節部24側へ押されている。よって、位置P32は、位置P31よりも周方向の他方側に位置する。したがって、図8の状態からアクチュエータによって部材16,15が動き、部材21,22が図9に示されるように軸方向に近接すると、鋸歯25aは、図7の状態で噛み合っていた鋸歯29aから周方向にずれた他の鋸歯29a(鋸歯列29の他の位置)と噛み合う。これに伴って、ガイド部27aと噛合部26とのガイドにより、調節部23,24が、図7〜9の左右方向に互いに離間し、部材21,22が、図6の左右方向、すなわち周方向に相対的にスライドする。具体的には、部材15は部材22に対する周方向の移動が制限された状態で部材22に接続されているので、部材21が部材22に対して周方向にスライドする。面21a,22aが互いにスライドすることにより、部材21,22が軸方向に互いに離間する。このように、可変設定部20では、部材21,22が軸方向への一旦離間した後再び近接することによって、壁部14a(部材14)と壁部15a(部材15)との軸方向の距離が長くなる。壁部14aと壁部15aとの軸方向の距離が長くなるほど、弾性部材19によって得られる軸方向の力(弾性変形による反発力、弾性力)が大きくなる。可変設定部20は、例えば、弾性部材19によって得られる軸方向の力が所期の値よりも小さい場合に、これを所期の値に近づけることができる。具体的には、例えば、弾性部材19が組み付けられた当初の状態で各部の寸法誤差の累積等で所期の力が得られない場合や、弾性部材19が経年劣化して所期の力が得られなくなった場合等に、有効である。また、摩擦材13dがすり減った場合には、弾性部材17の軸方向の両端部間の距離が伸びて、弾性部材17による力が小さくなる。この場合も、弾性部材17によって得られる軸方向の力をより大きくすることができる。なお、ここに例示された以外の部品や例示された以外の事象についても、可変設定部20によって所期の特性に近づけられる場合がある。
可変設定部20を調整することにより、図10の破線(調整前)から実線(調整後)に、弾性部材19の特性を変更することができる。図10の表記は、図5と同様である。調整後では、調整前に比べて、壁部15aの各変位において弾性部材19が壁部14aによって押し込まれる量(長さ)が増大する。したがって、調整後に壁部15aの各変位において弾性部材19が生じる力は、調整前よりも大きくなる。また、図3の状態から、部材16が動いて壁部15aが壁部14aから離間するにつれて弾性部材19の生じる力が小さくなり、弾性部材19が壁部14a,13aに挟まれていない略自由状態となった時点(図2の状態、図10中P22mでの状態)で、弾性部材19の生じる力が0(ゼロ)となる。図10から、可変設定部20の調整によって部材21,22間の軸方向の距離が長くなるほど、回転伝達部10の伝達状態から弾性部材19が略自由状態となるまでの部材15の変位量St、すなわち、弾性部材19が有効に機能する部材15の可動範囲(ストローク)が長くなることがわかる。図10の破線から実線への特性の変更は、アクチュエータが生じる力に対応したパラメータと所定値(閾値)との比較に基づいて実行することができる。
次に、可変設定部20の部材21と、カバー2の壁部2dとについて図11〜13を参照して詳細に説明する。図11〜13には、部材21および部材21の周囲が示されている。図11〜13の左右方向が周方向、上下方向が軸方向である。図11に示されるように、壁部2dは、当接部2d1を有する。当接部2d1は、壁部2dの軸方向の他方側の面である。一方、凸部21dは、当接部21d1を有する。当接部21d1は、凸部21dの軸方向の一方側の面である。当接部2d1と当接部21d1とは、互いに軸方向に当接する。当接部2d1の周方向の長さは、当接部21d1の周方向の長さよりも長い。当接部2d1と当接部21d1とは、周方向の一方側、すなわち図11の右側、に向かうにつれて、軸方向の他方向、すなわち図11の下側に向かう傾斜面である。当接部2d1と当接部21d1とは、互いに略平行である。
図12と図13には、可変設定部20による調整の様子が示されている。図12(a)に示されるように、調整前は、凸部21dは、壁部2dと、軸方向、すなわち図12の上下方向に離間している。そして、図12(b)に示されるように、調整過程で、部材14,21および弾性部材18が一体的に軸方向の一方側に移動することにより、凸部21dが壁部2dに当接する。このとき、部材14は、軸方向に移動して摩擦材13dから離間する。これにより、部材14と摩擦材13dとの間に隙間Sが生じる。そして、当該調整によって、部材21は、周方向の一方側、すなわち図12の右側に移動し、その後、軸方向の他方側、すなわち図12の下側に移動する。これにより、凸部21dが壁部2dから離間する。
図13には、図12の後に再度可変設定部20による調整が行われる場合の様子が示されている。説明の便宜上、図12の調整を前回の調整、図13の調整を今回の調整と称する。図13の摩擦材13dは、図12の摩擦材に対して摩耗している。図13の摩擦材13dの軸方向の厚さ、すなわち図13の上下方向の厚さは、図12の摩擦材の軸方向厚さよりも薄い。今回の調整の時点では、凸部21dの周方向の位置は、図13(a)の一点鎖線で示された凸部21dの位置から図13(a)の実線で示された凸部21dの位置に変更されている。ここで、当接部2d1は、周方向の一方側、すなわち図12の右側、に向かうにつれて、軸方向の他方向、すなわち図12の下側に向かう傾斜面である。よって、図12(a)および図13(a)から分かるように、図13(a)に示された凸部21dと壁部2dとの軸方向の今回の距離L1と、図12(a)に示された凸部21dと壁部2dとの軸方向の前回の距離L1とを、略同じにすることができる。よって、図13(a)の状態から、図13(b)に示される凸部21dが壁部2dに当接するまでの間の部材14の軸方向の移動量Lを、図12の前回の移動量Lと略同じにすることができる。これにより、部材15,22等を軸方向の一方側に移動させるアクチュエータの駆動量を、各調整回で略同じにしやすい。
ここで、図13(a)に示されるように、凸部21dのストッパとして機能する壁部102dが、軸方向に傾斜していない場合には、可変設定部20による調整を行うことにより、凸部21dと壁部102dとの軸方向の距離が大きくなってしまう。これに対して本実施形態では、当接部2d1が、周方向の一方側に向かうにつれて軸方向の他方向に向かう傾斜面であるので、調整によって凸部21dと壁部21dとの間に距離L1が変動するのを、抑制することができる。
以上のように、本実施形態のクラッチ装置100は、軸方向の長さを変更可能な可変設定部20を備えている。よって、本実施形態によれば、例えば、可変設定部20の軸方向の長さの調整により、部材14,15,16の位置に応じた弾性部材(例えば、弾性部材17,19等)の弾性変形量を調整することができるため、より所期の特性が得られやすくなる。製造誤差の累積や、弾性部材17,18,19や摩擦材13dの経年劣化等により、所期の特性からのずれが大きい場合に、可変設定部20の軸方向の長さを変更することによって、所期の特性により近い特性が得られる。
また、本実施形態では、凸部21dが可変設定部20の部材21に設けられ、ストッパ部が凸部21dを軸方向に支持する。よって、例えば、部材14の構成が複雑化するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、壁部2dにおける凸部21dと当接する当接部2d1と凸部21dにおける壁部2dと当接する当接部21d1とは、周方向の一方側に向かうにつれて軸方向の他方向に向かう傾斜面である。よって、例えば、可変設定部20の軸方向の長さを変更した場合でも、凸部21dと壁部2dとの間の軸方向の距離L1の変動を抑制することができる。よって、可変設定部20を動作させるアクチュエータの大型化を抑制することができる。
また、本実施形態では、弾性部材18は、部材14と部材21との間に介在し、部材21に作用する弾性部材17の力に抗する力であって、部材14の軸方向の位置に応じて変化する力を生じる。よって、例えば、部材14を移動させる操作部の力を小さくしやすい。また、弾性部材18は、部材14と部材21との間に介在するので、可変設定部20をコンパクトなアクチュエータによって精度よく制御することが可能となる。
なお、実施形態では、当接部2d1と当接部21d1との両方が、周方向の一方側に向かうにつれて軸方向の他方向に向かう傾斜面である例を説明したが、これに限らない。例えば、当接部2d1だけを傾斜面にしてもよい。また、例えば、当接部21d1の周方向の長さを当接部2d1の周方向の長さよりも長くして、当接部21d1だけを傾斜面にしてもよい。
<第1変形例>
本変形例では、可変設定部20Aが、上記第1実施形態の可変設定部20とは異なる。可変設定部20Aは、可変設定部20に替えて設けられうる。
本変形例では、可変設定部20Aが、上記第1実施形態の可変設定部20とは異なる。可変設定部20Aは、可変設定部20に替えて設けられうる。
図14,15に例示される可変設定部20Aは、可変設定部20と同様の部材21,22や、調節部23、鋸歯列25等を有する。ただし、可変設定部20Aは、調節部24Aおよび噛合部26Aが、上記第1実施形態とは異なる。移動部30Aは、調節部23、鋸歯列25、調節部24Aおよび噛合部26Aを有する。調節部24Aは、板ばね状の噛合部26Aを有する。噛合部26Aは、調節部24Aの調節部23(鋸歯列25)側の端部で弾性的に屈曲されている。噛合部26Aは、外力が作用しない状態では、当該噛合部26Aの弾性力によって、調節部23側に突出した状態となる。部材21,22が近接した状態では、噛合部26Aは、調節部24A側に弾性的に曲げられる。そして、弾性的な反発力(弾性力)によって、噛合部26Aの先端部26aと鋸歯25aとが噛み合う。アクチュエータ303の動作等により、部材21,22が互いに軸方向に離間すると、噛合部26Aは、鋸歯25aから軸方向に抜け出す。鋸歯25aから離れた状態では、弾性力によってより突出する方向に曲がり、噛合部26Aの先端部26aは、離間する前に噛み合っていた鋸歯25aとは周方向にずれた鋸歯25aの軸方向側に位置する。すなわち、本変形例でも、噛合部26Aは、鋸歯25aと離間した場合に周方向の他方側に移動するよう、調節部24A(部材22、第五の部材)に支持されている。したがって、部材21,22が再び軸方向に近接すると、噛合部26Aは、離間する前に噛み合っていた鋸歯25aとは周方向にずれた鋸歯25aと噛み合う。これにより、部材21,22同士が周方向にスライドし、部材21,22の軸方向の距離が変化する。本変形例によれば、新規な構成の可変設定部20Aを得ることができる。また、本変形例によれば、可変設定部20Aをより簡素に構成できる場合がある。
<第2変形例>
本変形例では、可変設定部20Bが、上記第1実施形態の可変設定部20とは異なる。可変設定部20Bは、可変設定部20に替えて設けられうる。
本変形例では、可変設定部20Bが、上記第1実施形態の可変設定部20とは異なる。可変設定部20Bは、可変設定部20に替えて設けられうる。
図16に例示される可変設定部20Bは、可変設定部20と同様の部材21,22を有する。ただし、可変設定部20Bの移動部30Bは、調節部23,24を有さない。移動部30Bは、部材21および部材22のうち少なくとも一方に周方向の力(圧縮反力)を与える弾性部28Bを有する。弾性部28Bは、例えば、コイルスプリングである。弾性部28Bの弾性力によって部材21の面21aと部材22の面22aとのスライドした場合、部材21,22の軸方向の距離が変化する。ただし、部材21,22が互いに当接した通常状態では、面21aと面22aとの摩擦によって、部材21,22のスライドが抑制されている。したがって、本実施形態では、アクチュエータ303を用いて部材15を位置P24側へ動かして、部材21と部材22とが軸方向に離間する方向に力を与える。これにより、部材21と部材22との摩擦力が小さくなり、すなわち部材21と部材22との間で軸方向に作用する力が弱まって、部材21と部材22とが周方向にスライドし、軸方向の距離が変化する。本変形例によれば、例えば、可変設定部20Bがより簡素に構成されやすい。可変設定部20Bの軸方向の長さ(調整量)は、アクチュエータ303の移動量(ストローク)によって調整することができる。よって、本変形例によれば、可変設定部20Bの軸方向の長さがより容易にあるいはより精度良く変更されやすい。
<第2実施形態>
図17に示される本実施形態のクラッチ装置100Cは、第1実施形態のクラッチ装置100と同様に、部材1,13,14、カバー2、弾性部材17、および可変設定部20等を有する。ただし、本実施形態では、弾性部材18,19が設けられていない。
図17に示される本実施形態のクラッチ装置100Cは、第1実施形態のクラッチ装置100と同様に、部材1,13,14、カバー2、弾性部材17、および可変設定部20等を有する。ただし、本実施形態では、弾性部材18,19が設けられていない。
また、壁部13aと壁部1aとの間、および壁部13aと壁部14aとの間に、摩擦材13dが介在している。
また、カバー2は、壁部2a,2b,2cと、支持部2mと、を有する。壁部2aは、部材1の壁部1aの軸方向の一方側、すなわち図14の左側に位置され、壁部1aに重ねられている。壁部2aは、壁部1aに接続されている。壁部2aは、円環状かつ板状に構成され、回転中心Axと略直交して広がっている。壁部2bは、壁部2aの径方向の内側の端部から軸方向の一方側に向けて突出し、回転中心Axを中心とする円筒状に構成されている。壁部2cは、壁部2bの軸方向の一方側の端部から径方向の内側に向けて突出している。壁部2cは、円板状に構成され、回転中心Axと交叉して広がっている。また、支持部2mは、壁部2cの径方向の内側の端部から軸方向の他方側、すなわち図14の右側に延びている。カバー2は、部材1と一体的に回転する。支持部2mには、支持部材61が取り付けられている。
弾性部材17は、例えばダイヤフラムスプリングとして構成される。弾性部材17は、放射状に配置された複数の板部材を有している。弾性部材17は、支持部材61によって支持されている。弾性部材17は、支持部材61を支点として揺動可能となっている。弾性部材17は、ベアリング31(図17では図示されず)と部材14との間に介在している。弾性部材17と部材14との間には、可変設定部20が介在している。なお、可変設定部20に替えて可変設定部20A,20Bが設けられてもよい。弾性部材17は、径方向の内側の端部がベアリング31(図1参照)に接続され、径方向の内側の端部が可変設定部20の部材22に接続されている。弾性部材17は、可変設定部20および部材14とベアリング31とが互いに離間する方向の弾性力を生じる。
また、可変設定部の部材22は、弾性部材17と接続され、部材21は、弾性部材17と離間している。部材22は、弾性部材17に固定されうる。また、部材21は、部材14の壁部14aの軸方向の一方側、すなわち図14の左側で壁部14aに重ねられて、壁部14aと接触している。部材21は、部材14に対して回転中心Ax回りに回転可能である。
また、本実施形態では、部材21は、壁部2cと軸方向に接触し、当該壁部2cと接触した位置よりも軸方向の一方側、すなわち図14の左側、へは移動することができない。すなわち、壁部2cは、部材21を軸方向に支持することにより、部材21の軸方向の一方側への移動を制限する。具体的には、壁部2cは、部材21の凸部21dを軸方向に支持する。壁部2cは、ストッパ部の一例である。なお、本実施形態では、壁部2dは設けられていない。
以上説明した構成によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、部材22は、弾性部材17と接続され、部材21は、弾性部材17と離間し、部材21は、部材14に対して回転中心Ax回りに回転可能である。よって、例えば、弾性部材17が部材22によって擦られることを抑制することができる。
以上、本発明の実施形態や変形例を例示したが、上記実施形態や変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、クラッチ装置の各部の配置や構成等は上記実施形態や上記変形例には限定されない。また、クラッチ装置は、種々の装置の種々の位置に設けられうる。
2…カバー、2c,2d…壁部(ストッパ部)、13…部材(第一の部材)、14…部材(第二の部材)、15…部材(第三の部材)、17…弾性部材(第一の弾性部材)、18…弾性部材(第二の弾性部材)、20,20A,20B…可変設定部、21…部材(第五の部材)、22…部材(第四の部材)、30,30A,30B…移動部、100,100C…クラッチ装置、Ax…回転中心、P11…位置(第一の位置)、P12…位置(第二の位置)。
Claims (4)
- 回転中心回りに回転可能に設けられた第一の部材と、
前記回転中心回りに回転可能に設けられるとともに、少なくとも、前記第一の部材との間で摩擦によってトルクが伝達される第一の位置と、当該第一の位置よりも前記第一の部材から離間してトルクが伝達されない第二の位置と、の間で前記回転中心の軸方向に移動可能に設けられた第二の部材と、
前記第一の部材および前記第二の部材のうち一方が他方に向けて押される力であって前記第二の部材の前記軸方向の位置に応じて変化する力を生じる第一の弾性部材と、
前記軸方向に移動可能に設けられ前記第二の部材の前記軸方向の位置を変化させる第三の部材と、
前記第二の部材と前記第三の部材との間に位置され、前記軸方向の長さを変更可能な可変設定部と、
前記回転中心回りに回転可能に設けられ、前記可変設定部を覆うカバーと、
を備え、
前記可変設定部は、
前記一方の前記軸方向の一方側に位置され、前記一方と前記第一の弾性部材との間に介在する第四の部材と、
前記第四の部材の前記軸方向の他方側に位置され、前記第四の部材と前記一方との間に介在し、前記第四の部材と前記軸方向に離間可能に設けられ、前記第四の部材に対して前記回転中心の周方向の一方側に移動することにより前記第四の部材に対して前記軸方向の他方側に移動するよう構成された第五の部材と、
移動部と、
を有し、
前記カバーは、前記第五の部材を前記軸方向に支持することにより、前記第五の部材の前記軸方向の一方側への移動を制限するストッパ部を、有し、
前記移動部は、前記ストッパ部によって前記第五の部材の前記軸方向の一方側への移動が制限されて前記第四の部材と前記第五の部材とが前記軸方向に離間した場合に、前記第四の部材に対して前記第五の部材を前記周方向の一方側へ移動させる、クラッチ装置。 - 前記ストッパ部における前記第五の部材と当接する当接部と前記第五の部材における前記ストッパと当接する当接部との少なくも一方は、前記周方向の一方側に向かうにつれて前記軸方向の他方向に向かう傾斜面である、請求項1に記載のクラッチ装置。
- 前記第四の部材は、前記第一の弾性部材と接続され、
前記第五の部材は、前記第一の弾性部材と離間し、前記第二の部材に対して前記回転中心回りに回転可能である、請求項1または2に記載のクラッチ装置。 - 前記第二の部材と前記第五の部材との間に介在し、前記第五の部材に作用する前記第一の弾性部材の力に抗する力であって、前記第二の部材の前記軸方向の位置に応じて変化する力を生じる第二の弾性部材を備えた、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のクラッチ装置。
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