JP6311229B2 - 成形体の製造方法、および成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、曲げ加工の際に生じる伸縮変形を抑制させたい側の表面、あるいは伸縮変形させるのが困難な側の表面を拘束物で密着拘束する一方で、それ以外の部分では圧縮変形、伸長変形、あるいはせん断変形させて成形体を得る製造方法、および当該製造方法により得られる成形体に関するものである。例えば少なくとも片面に機能層を有する樹脂板の曲げ加工を行う方法として好適であり、該機能層の機能や外観を損なわずに成形体が得られる製造方法である。当該製造方法により得られる成形体は、例えば画像表示装置の前面側(視認側)に配置して用いられる表面保護パネル、特にタッチパネル機能を有する携帯電話や液晶ペンタブレット等のフロントカバー材として好適である。
従来、電子機器のディスプレイ用カバー材等の分野では、硬度、耐熱性、透明性、ガスバリヤ性の観点から、広くガラスが用いられてきた。
しかしながら、ガラスは衝撃により容易に割れ、またガラス自身の重量も重いことからプラスチックでの代替が検討されている。
さらに近年は、各種電子機器・装置は小型化、軽量化、高性能化とともにデザインの多様化が進み、ディスプレイ用カバー材等のプラスチック化に際しては、優れた光学機能、硬度、意匠性などの表面特性とともに、多様なデザインに対応し得る成形性などの二次加工性が求められている。
各種表面特性を備えた成形体、および成形体を得る製造方法に関しては、いくつか提案がなされている。例えば特許文献1では、その表面に保護シートを貼付した透明樹脂シートを加熱軟化させて真空成形を行った後、裏面に金属蒸着層からなる光反射層を形成させて、最後に保護シートを除去することにより鏡面性樹脂成型品を得る製造方法が提案されている。
また、特許文献2では、未硬化ハードコート層表面のうち、樹脂製の基材フィルムと面する側とは反対側に保護フィルムを設けた成型用積層ハードコートフィルムが提案されている。さらに、前記積層ハードコートフィルムを予備加熱し、成型により樹脂材料と成型同時一体化させて樹脂成型体とした後、前記積層ハードコートフィルムの未硬化ハードコート層に対し活性エネルギー線による後露光を行って、硬化ハードコート層が形成された樹脂成型品を得る製造方法も併せて提案されている。
さらに、特許文献3では、熱可塑性樹脂基材の少なくとも片面にプライマー層を介してハードコート層が形成された、耐擦傷性に優れた熱加工の可能な成形板が提案されている。
また、特許文献4では、熱成形が可能で耐擦傷性に優れた、ハードコート層を有するシート状樹脂成形品が提案されている。
特開2003−205266号公報 特開2012−210755号公報 特開2005−178035号公報 特開平10−36540号公報
上記特許文献1で開示されている鏡面性樹脂成型品のような成形体を得る製造方法では、真空成形などで熱成形した後に、金属蒸着層を形成させるため、シートなどの平面に蒸着層を形成させる場合とは異なり凹凸が存在することから、蒸着層の厚み、性能が不均一になる恐れがある。また、シートがロールtoロールで連続的に蒸着層を形成させられるのに対して、成形体では蒸着層の形成がバッチ操作に限定されるので、生産効率面ではマイナスである。また蒸着釜によって、適用し得る成形体のサイズ、形状が制限される懸念もある。
特許文献2で提案されている成型用積層ハードコートフィルム、および樹脂成型品を得る製造方法も同様で、樹脂成形体とした後、ハードコート層を硬化形成させるため、成形体形状の凹凸によって、活性エネルギー線の照射が均等に行き渡らず、ハードコート層の硬度など表面特性が不均一になる場合がある。
そこで、特許文献3では、熱可塑性樹脂基材の少なくとも片面にプライマー層を介してハードコート層が形成された、熱加工の可能な成形板が提案されており、特許文献1および2で懸念される成形体形状による表面特性の不均一性や、成形体の生産効率面の課題が解決されるものと期待される。しかしながら、本成形板の場合、熱曲げなどの熱加工を行う際にハードコート層に発生する応力を吸収するプライマー層が設けられるが、このプライマー層の柔軟性が、その上に形成されるハードコート層の表面硬度にマイナスに作用する恐れがある。即ち本来備えられるべき表面特性を相殺してしまう懸念がある。
また、特許文献4に開示されているシート状樹脂成形品では、熱成形の際に、表面にクラックが生じて外観が損なわれるものとなったり、ハードコート層の表面硬度が不十分となり、さらに改善が求められる場合があった。
そこで、本発明の目的は、優れた表面特性と外観とを備えつつ、プレス成形、真空成形、圧空成形など熱成形で曲げ加工して得られる成形体の製造方法、および当該製造方法により得られる成形体を提供することにある。当該製造方法により得られる成形体は、優れた表面特性と外観とを備え、かつ様々な曲部の丸み((曲率半径R);以降、単に(R)と称する)を有する複雑な形状にも適応しうる。
本発明者らは、樹脂板の少なくとも片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工することにより、その表面特性や外観が損なわれることがなく、かつ様々な曲部の丸み(R)を有する複雑な形状にも適用できる成形体を製造し得ることを見出した。
本発明が提案する成形体の製造方法は、曲げ加工により優れた表面特性と外観とを損なうことなく、かつ様々な曲部の丸み(R)を有する複雑な形状に成形し得る。また、得られる成形体は、優れた表面特性と外観とが維持されているので、画像表示装置の前面側(視認側)に配置して用いられる表面保護パネル、特にタッチパネル機能を有する携帯電話や液晶ペンタブレット等のフロントカバー材として好適に用いることができる。
また、本発明の成形体の製造方法によれば、フィルム、シートなどの平板状(樹脂板)に機能層を形成させた後に熱成形を行うことができるため、生産性の高い成形体の製造方法を提供することができる。
本発明にかかる成形用樹脂板ついて、一実施形態の構成を図示したものである。 本発明にかかる成形体について、一実施形態の構成を図示したものである。 本発明にかかる成形体を賦形するための成形型について、一実施形態の構成を図示したものである。
以下、本発明の実施形態の一例としての、成形体の製造方法(「本製造方法」と称する)、および本製造方法により得られる成形体(「本成形体」と称する)について説明する。但し、本発明が、本製造方法、および本成形体に限定されるものではない。
本発明にかかる成形体の製造方法は、樹脂板の少なくとも片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工することを特徴とする成形体の製造方法である。
さらに前記成形体の曲部が圧縮変形されていることを特徴とするもので、樹脂板の少なくとも片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工することにより、拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する一方で、拘束した側とは対称側の曲部を面方向に圧縮変形させて成形体を得ることを特徴とする製造方法である。
あるいは、前記成形体の曲部が伸長変形されていることを特徴とするもので、同じく樹脂板の少なくとも片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工することにより、拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する一方で、拘束した側とは対称側の曲部を面方向に伸長変形させて成形体を得ることを特徴とする製造方法である。
また、本発明にかかる成形体の製造方法は、曲げ加工後に凸面側および凹面側を形成する前記樹脂板の両表面を密着拘束したまま曲げ加工することを特徴とする成形体の製造方法である。
これは、前記成形体の曲部がせん断変形されていることを特徴とするもので、曲げ加工後に凸面側および凹面側を形成する前記樹脂板の両表面を密着拘束したまま曲げ加工することにより、拘束した両表面の曲部での伸縮変形を抑制する一方で、両表面に挟まれた部分をせん断変形させて成形体を得ることを特徴とする製造方法である。
以上より本製造方法は、曲げ加工の際に生じる伸縮変形を抑制させたい、あるいは伸縮変形させるのが困難な側の表面を拘束物で拘束する一方で、それ以外の部分を圧縮変形、伸長変形、あるいはせん断変形させて成形体を得ることを特徴とする製造方法である。
したがって、例えばコーティング法、転写法、物理蒸着法、化学蒸着法、共押法、印刷法、あるいはラミネート法などにより形成された薄膜状機能層を少なくとも片側表面に有する樹脂板をプレス成形、真空成形、圧空成形など熱成形で曲げ加工を行うのに際して、曲げ加工における該薄膜層の伸縮変形を抑制して、その外観、機能を維持したまま成形体を得る製造方法として、好適である。
本成形体における曲部の丸み(R)は、好ましくは2mm以上、200mm以下の範囲である。本成形体の曲部の丸み(R)の下限値は、2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがさらに好ましく、8mm以上であることが特に好ましい。曲部の丸み(R)が2mm以上であれば、その曲げ加工に対応し得る機能層として、コーティング法、転写法、物理蒸着層、化学蒸着法、共押法、印刷法、およびラミネート法などにより形成されるものの中から幅広く選択することができるので好ましい。例えば、機能層が硬化性樹脂組成物のコーティングにより形成される高硬度層の場合、有機系あるいは有機・無機ハイブリッド系のハードコート剤など幅広い範囲から材料を選択使用することが可能となり、本成形体に優れた表面硬度を付与できるため好ましい。一方、上限値は、200mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがさらに好ましく、50mm以下であることが特に好ましい。曲部の丸み(R)が200mm以下であれば、例えば各種電子機器・装置の多様なデザインに対応できるので好ましい。
曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下の範囲内において、曲部が圧縮変形されてなる前記成形体における、下式(1)で表される成形体の曲部の伸長率(ΔL)は、−40%以上、4%未満であることが好ましい。
ΔL(%)=(成形前の樹脂板の厚み−成形体の曲部の厚み)/成形前の樹脂板の厚み×100 …(1)
ここで、成形体の曲部の伸長率(ΔL)とは、樹脂板の面方向への伸長の度合いを示す数値で、正の数値は面方向への伸長の度合い、負の数値は面方向への圧縮の度合いを示す。
曲部が圧縮変形されてなる本成形体の場合、ΔLの下限値は−40%以上であることが好ましく、−30%以上であることがさらに好ましく、−15%以上であることがより好ましい。ΔLが−40%以上であれば、樹脂板において面方向への過剰圧縮が抑制されて、クラックなどがなく外観、表面特性の良好な成形体とすることができるので好ましい。一方、ΔLの上限値は4%未満であることが好ましい。ΔLが4%未満であれば、樹脂板において、面方向への伸長が抑制されて、クラックなどが生じることがないので好ましい。かかる観点から、ΔLは0%未満であることがさらに好ましく、−2%未満であることが特に好ましい。ΔLが0%未満、つまり負の数値を示すということは、樹脂板が面方向には伸長せず、面方向に圧縮されるという意味において好ましい。
一方、曲部が伸長変形されてなる本成形体の場合は、前記成形体の曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下の範囲において、前式(1)で表される曲部の伸長率(ΔL)は、0%以上、40%以下であることが好ましい。ΔLの下限値は、0%以上であることが好ましく、1%以上であることがさらに好ましく、3%以上であることが特に好ましい。ΔLが0%以上であれば、樹脂板において面方向への圧縮が抑制されて、クラック、白濁などがなく、外観、表面特性の良好な成形体とすることができるので好ましい。一方、ΔLの上限値は、40%未満であることが好ましい。ΔLが40%未満であれば、樹脂板において、面方向への過剰な伸長が抑制されて、クラックなどが生じることがないので好ましい。かかる観点から、ΔLは20%未満であることがさらに好ましく、10%未満であることがより好ましい。
また、曲部がせん断変形されてなる本成形体の場合は、前記成形体の曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下の範囲において、前式(1)で表される曲部の伸長率(ΔL)は、−7%以上、7%未満であることが好ましい。ΔLの下限値は−7%以上であることが好ましく、−5%以上であることがさらに好ましく、−3%以上であることが特に好ましい。ΔLが−7%以上であれば、成形体を形成する樹脂板において、面方向への圧縮が抑制されて、クラックなどがなく、表面特性や外観の良好な成形体とすることができるので好ましい。一方、ΔLの上限値は、7%未満であることが好ましい。ΔLが7%未満であれば、樹脂板において、面方向への伸長が抑制されて、クラックなどが生じることがないので好ましい。かかる観点から、ΔLは5%未満であることがさらに好ましく、3%未満であることが特に好ましい。
本製造方法においては、前記樹脂板の少なくとも片側表面を、あるいは曲げ加工後に凸面側および凹面側を形成する前記樹脂板の両表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工することを特徴とし、前記拘束物の曲げ弾性率(MPa)と拘束物の厚み(m)との積が、3.0×10−2MPa・m以上であることを特徴とする。
また、本製造方法においては、前記樹脂板の少なくとも片側表面を、あるいは曲げ加工後に凸面側および凹面側を形成する前記樹脂板の両表面を拘束物で密着拘束するという点において、前記拘束物が少なくとも1層の拘束層Dを有し、拘束層Dの貯蔵弾性率が、該樹脂板のガラス転移温度において、1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下の貯蔵弾性率であることが好ましい。前記拘束層Dの貯蔵弾性率の下限値は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、5.0×10Pa以上であることがさらに好ましく、1.0×10Pa以上であることが特に好ましい。貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であれば、曲げ加工の際に、拘束層Dの凝集破壊が起こらず、拘束物の曲げ変形を、樹脂板および/または機能層に伝えることができるので好ましい。一方、好ましい範囲の上限値は、1.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが特に好ましい。前記貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であれば、拘束層Dが硬すぎることがなく、樹脂板、および/または機能層との界面で滑りが生じることがないので、拘束物の曲げ変形を、樹脂板、および/または機能層に伝えることができるので好ましい。
また、前記拘束物において、拘束物自体が上記貯蔵弾性率を有している場合、特に拘束層Dを備えていなくても良い。ただし、その場合、上述の曲げ弾性率と厚みの関係を有する拘束物に限る。
本製造方法において、前記樹脂板は、樹脂基材のみあるいは前記機能層のみからなる単層構成でも構わないし、少なくとも機能層を片側表面に有する、機能層/樹脂基材の二層構成あるいは機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる積層構成であっても構わない。積層構成の例としては、樹脂組成物から形成されるフィルムやシートなど平板状の樹脂基材の少なくとも片面に、例えばコーティング法、転写法、物理蒸着法、化学蒸着法、共押法、印刷法、あるいはラミネート法などにより形成された薄膜状の機能層を有する樹脂板を挙げることができる。例えばコーティング法により形成される高硬度層やラミネート法により積層される薄板ガラス層は、曲げ加工により伸縮変形させるとクラックを生じる恐れがあり、また物理蒸着法により形成されるガスバリヤ層や各種光学機能層は、曲げ加工により伸縮変形を受けると各機能層の厚みが増減して必要な特性が不均一になったり、消失したりする恐れがある。
本製造方法において、樹脂板が単層構成である場合、片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工することにより、拘束側表面を変形させることなく、例えば、拘束側表面の平滑性を保ったまま成形することができる。この場合、密着拘束した側を凸面とする場合には、拘束した側とは対称側の曲部を面方向に圧縮変形させることにより、成形体を得ることができる。一方、密着拘束した側を凹面とする場合には、拘束した側とは対称側の曲部を面方向に伸長変形させることにより、成形体を得ることができる。
また、樹脂板を機能層/樹脂基材の二層構成からなる積層構成とした場合、該樹脂板のうち少なくとも機能層を有する片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、曲部で樹脂基材を圧縮変形させることにより、凸面に該機能層を有し、該機能層においてクラックなどが生じることのない成形体を得ることができる。さらに、前記二層構成の場合において、少なくとも機能層を有する片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工する際、曲部で樹脂基材を伸長変形させることにより、凹面に該機能層を有する成形体を得ることができる。
さらに、樹脂板を機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる積層構成とした場合は、曲げ加工後に該樹脂板の凸面側および凹面側を形成する両表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、両表面の前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、樹脂基材をせん断変形させることにより、凸面側および凹面側に該機能層を有し、該機能層においてクラックなどが生じることのない成形体を得ることができる。
以下に、樹脂板、該樹脂板を構成する樹脂基材および機能層、ならびに拘束物について、順に説明する。
(樹脂板)
本発明において、樹脂板は、樹脂基材のみあるいは前記機能層のみからなる単層構成でも構わない。また、少なくとも機能層を片側表面に有する機能層/樹脂基材の二層構成、あるいは機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる積層構成とすることもできる。
(樹脂基材)
樹脂基材は前記機能層と積層されることにより、本製造方法において曲げ加工を行う際に、自らは圧縮変形、伸長変形あるいはせん断変形を受ける役割を担い、前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する役割を果たす。かかる点から、樹脂基材は加熱により可塑性を示す熱可塑樹脂組成物から形成されることが好ましい。
また、後述するが、樹脂基材は異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層が少なくとも2層積層されてなる積層構成であっても構わない。例えば、熱可塑性樹脂組成物aから形成される樹脂層Aに熱可塑性樹脂組成物cから形成される樹脂層Cが積層された、樹脂層A/樹脂層Cの二層構成からなる樹脂基材などが挙げられる。
なお、本発明における樹脂板のガラス転移温度は、樹脂板が上記熱可塑性樹脂から形成される樹脂基材を有する場合は、その樹脂基材のガラス転移温度とする。また樹脂基材が、異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層を少なくとも2層有する場合は、樹脂層のうち、いずれか高い方のガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度を樹脂板のガラス転移温度とする。
(樹脂層A)
上述のとおり、樹脂基材は、熱可塑性樹脂組成物から形成されることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物aから形成される樹脂層Aを有する。
(熱可塑性樹脂組成物a)
熱可塑性樹脂組成物aに用いることのできる熱可塑性樹脂としては、溶融押出しによってフィルム、シート、あるいはプレートを形成し得る熱可塑性樹脂であれば特に制限はないが、好ましい例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびポリ乳酸系重合体などの脂肪族ポリエステルに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂およびこれらを主たる成分とする共重合体、またはこれら樹脂の混合物等を挙げることができる。
例えば、本製造方法により得られる成形体が、画像表示装置の前面側(視認側)に配置される表面保護パネル、特にタッチパネル機能を有する携帯電話や液晶ペンタブレット等のフロントカバー材として用いられることを考慮すると、可視光線域における吸収がほとんどない、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、およびアクリル系樹脂が好ましい。なかでも、例えば優れた表面硬度を発現させる点においては、アクリル系樹脂であることが特に好ましい。
なお、樹脂層Aを構成する熱可塑性樹脂組成物aが、上述のものより選ばれる2種以上の樹脂の混合物であり、それらが互いに非相溶である場合には、最も体積分率の高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度を樹脂層Aのガラス転移温度とする。
(アクリル系樹脂)
本発明に用いることのできるアクリル系樹脂を構成する単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、単独で重合して使用してもよく、2種類以上を重合して使用してもよい。
前記アクリル系樹脂を構成する単量体と共重合可能な単量体は、単官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、多官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよい。
ここで、単官能単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルの如きアルケニルシアン化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド;等が挙げられる。また、多官能単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル;ジビニルベンゼンの如き芳香族ポリアルケニル化合物;等が挙げられる。メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと共重合可能な単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記アクリル系樹脂を構成する単量体との共重合樹脂としては、例えばアクリル系樹脂の耐環境性(吸湿による反り)を改善する観点において、メチルメタクリレート−スチレン共重合体を好ましく使用することが出来る。メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂としては、全単量体単位を基準として、通常、メチルメタクリレート単位を30〜95重量%、スチレン単位を5〜70重量%有するものが用いられ、好ましくはメチルメタクリレート単位を40〜95重量%、スチレン単位を5〜60重量%有するものが用いられ、さらに好ましくはメチルメタクリレート単位を50〜90重量%、スチレン単位を10〜50重量%有するものが用いられる。メチルメタクリレート単位の割合が小さくなると、表面層自体の破壊強度が低くなり、フィルム全体が割れ易くなると共に、表面硬度も低下する。また、メチルメタクリレート単位の割合が大きくなると、耐環境性が低下する。
本発明に用いることのできるアクリル系樹脂は、前述した単量体成分を、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の方法で重合させることにより調製することができる。その際、所望のガラス転移温度に調整するため、もしくは積層体を作製する際に好適な成形性を示す粘度を得るため、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体成分の種類やその組成などに応じて、適宜決定すればよい。
また、樹脂板に用いるアクリル系樹脂においては、耐熱性を有するアクリル樹脂(以下、耐熱性アクリル樹脂という)も熱可塑性樹脂組成物aとして好ましく使用することができる。
熱可塑性樹脂組成物aの主成分に、耐熱性アクリル樹脂を用いて樹脂層Aを形成すると、樹脂板において、耐熱性のみならず優れた熱成形性を付与しやすくなる場合があるため好ましい。
また、後述するが、樹脂板、および成形体の反りを抑制するための手段として、樹脂基材を樹脂層A/樹脂層Cからなる二層の積層構成として、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とすることが挙げられる。このため、樹脂層Cを形成する熱可塑性樹脂組成物cの主成分が、仮に高いガラス転移温度を有するものである場合、アクリル系樹脂においても同様に高いガラス転移温度を有することが好ましく、かかる観点から、耐熱性アクリル樹脂を優位に使用することができる。
(耐熱性アクリル樹脂a1)
耐熱性アクリル樹脂a1としては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位を含む共重合樹脂であることを特徴とするものが挙げられる。
一般式(1)中、R1は水素またはメチル基であり、R2は炭素数1〜16のアルキル基である。
一般式(2)中、R3は水素またはメチル基であり、R4は炭素数1〜4のアルキル置換基を有することにあるシクロヘキシル基である。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位のR2は炭素数1〜16のアルキル基であり、メチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などを挙げることができる。これらは1種類単独かあるいは2種類以上を併せて使用することができる。これらのうち好ましいのはR2がメチル基および/またはエチル基の(メタ)アクリル酸エステル構成単位であり、さらに好ましいのはR1がメチル基、R2がメチル基のメタクリル酸エステル構成単位である。
一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位としては、例えば、R3が水素またはメチル基で、R4がシクロヘキシル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するシクロヘキシル基であるものを挙げることができる。これらは1種類単独かあるいは2種類以上を併せて使用することができる。これらのうち好ましいのはR3が水素、R4がシクロヘキシル基の脂肪族ビニル構成単位である。
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位とのモル構成比は、15:85〜85:15の範囲であり、25:75〜75:25の範囲であることが好ましく、30:70〜70:30の範囲であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル構成単位と脂肪族ビニル構成単位との合計に対する(メタ)アクリル酸エステル構成単位のモル構成比が15%未満であると機械強度が低くなりすぎて脆くなるので実用的ではない。また85%を超えるであると耐熱性が不十分となる場合がある。
前記耐熱性アクリル樹脂a1としては、主として一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位とからなるものであれば、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーを共重合した後、芳香環を水素化して得られたものが好適である。なお、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸および/またはアクリル酸を示す。この際に使用される芳香族ビニルモノマーとしては、具体的にスチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、クロロスチレンなど、およびそれらの誘導体を挙げることができる。これらの中で好ましいのはスチレンである。
また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル類などを挙げることができるが、物性のバランスから、メタクリル酸アルキルを単独で用いるか、あるいはメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを併用することが好ましい。メタアクリル酸アルキルのうち、特に好ましいものはメタアクリル酸メチルまたはメタアクリル酸エチルである。
主として一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位とからなる耐熱性アクリル樹脂a1において、前記芳香族ビニルモノマーの芳香環の70%以上が水素化して得られたものであることが好ましい。即ち、耐熱性アクリル樹脂a1における芳香族ビニル構成単位の割合は耐熱性アクリル樹脂a1中30%以下であることが好ましい。30%を越える範囲であると耐熱性アクリル樹脂a1の透明性が低下する場合がある。より好ましくは20%以下の範囲であり、さらに好ましくは10%以下の範囲である。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、公知の方法を用いることができるが、例えば、塊状重合法、溶液重合法により製造することができる。溶液重合法では、モノマー、連鎖移動剤、および重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100〜180℃で連続重合する方法などにより行われる。
水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、水素圧力3〜30MPa、反応温度60〜250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことができる。温度を60℃以上とすることにより反応時間がかかり過ぎることがなく、また250℃以下とすることにより分子鎖の切断やエステル部位の水素化を起すことがない。
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウムなどの金属またはそれら金属の酸化物あるいは塩あるいは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土などの多孔性担体に担持した固体触媒が挙げられる。
耐熱性アクリル樹脂a1のガラス転移温度は110℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が110℃以上であると積層体の耐熱性が不足することがない。
(耐熱性アクリル樹脂a2)
耐熱性アクリル樹脂a2としては、アクリル系樹脂を構成する全単量体単位を基準として、メタクリル酸メチル単位60〜95重量%と、メタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換または無置換マイレミド単位、グルタル酸無水物構造単位、およびグルタルイミド構造単位から選ばれる単位5〜40重量%とを有し、ガラス転移温度を110℃以上とした重合体を挙げることができる。
ここで、メタクリル酸メチル単位は、メタクリル酸メチルの重合により形成される単位〔−CH−C(CH)(COCH)−〕であり、メタクリル酸単位は、メタクリル酸の重合により形成される単位〔−CH−C(CH)(COH)−〕であり、アクリル酸単位は、アクリル酸の重合により形成される単位〔−CH−CH(COH)−〕である。また、マレイン酸無水物単位は、一般式(3)で表されるマレイン酸無水物の重合により形成される単位であり、N−置換または無置換マレイミド単位は、一般式(4)で表されるN−置換または無置換マレイミドの重合により形成される単位である。
一般式(4)中、Rは水素原子または置換基を表し、この置換基の例としては、メチル基、エチル基のようなアルキル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、フェニル基のようなアリール基、ベンジル基のようなアラルキル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜20程度である。
また、グルタル酸無水物構造単位は、グルタル酸無水物構造を有する単位であり、グルタルイミド構造単位は、グルタルイミド構造を有する単位であり、典型的にはそれぞれ、次の一般式(5)および(6)で示される。
一般式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。一般式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または置換基を表し、この置換基の例としては、メチル基、エチル基のようなアルキル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、フェニル基のようなアリール基、ベンジル基のようなアラルキル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜20程度である。
メタクリル酸メチル単位、メタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、およびN−置換または無置換マレイミド単位は、重合原料として、それぞれ、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸無水物、およびN−置換または無置換マレイミドを用いることにより、導入することができる。
グルタル酸無水物構造単位は、メタクリル酸メチルの単独重合体、或いは、メタクリル酸メチルとメタクリル酸および/またはアクリル酸との共重合体を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートのような塩基性化合物の存在下、通常150〜350℃、好ましくは220〜320℃で熱処理して変性させることにより、導入することができる。
また、グルタルイミド構造単位は、メタクリル酸メチルの単独重合体、或いは、メタクリル酸メチルとメタクリル酸および/またはアクリル酸との共重合体を、アンモニアや一級アミンの存在下、通常150〜350℃、好ましくは220〜320℃の範囲で熱処理して変性させることにより、導入することができる。
耐熱性アクリル樹脂a2としては、アクリル樹脂の単量体単位組成は、メタクリル酸メチル単位が、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは70〜92重量%であり、メタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換または無置換マレイミド単位、グルタル酸無水物構造単位、およびグルタルイミド構造単位から選ばれる単位が、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜30重量%である。また、アクリル系重合体のガラス転移温度は、好ましくは115℃以上であり、また通常150℃以下である。
(耐熱性アクリル樹脂a3)
耐熱性アクリル樹脂a3としては、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(α)を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有するものをあげることができる。前記重合体(α)は、(メタ)アクリレート系単量体(α1)と2−(ヒドロキシアルキル)アクリレート系単量体とを少なくとも含む単量体成分を重合した共重合体であり、前記ラクトン環構造が、下記一般式(7)で表わされる構造である。
一般式(7)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基には酸素原子を含んでもよい。
一般式(7)で表されるラクトン環構造を形成するためには、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(α)として、例えば、(メタ)アクリレート系単量体(α1)および下記一般式(8)で表される構造単位を有するビニル単量体(α2)を含む単量体成分を重合して得られる重合体が好ましく挙げられる。
一般式(8)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
前記(メタ)アクリレート系単量体(α1)は、前記一般式(8)で表される、例えば2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル構造単位を有するビニル単量体以外の、いわゆる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であれば特に限定されない。例えば、アルキル基等を持つ脂肪族(メタ)アクリレートでもよいし、シクロヘキシル基等を持つ脂環式(メタ)アクリレートでもよいし、ベンジル基等を持つ芳香族(メタ)アクリレートでもよい。また、これらの基の中に所望の置換基あるいは官能基が導入されていてもよい。
前記(メタ)アクリレート系単量体(α1)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、得られるアクリル系樹脂の耐候性、表面光沢、透明性の点では、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルが好ましく、得られるアクリル系樹脂の表面硬度の点でより好ましくはメタクリル酸メチルがよい。また、シクロヘキシル基を持つ(メタ)アクリレートは、アクリル系樹脂に疎水性を付与しその結果、アクリル系樹脂の吸水率を低減でき、またアクリル系樹脂に耐候性を付与できる点で好ましい。また、芳香族基を持つ(メタ)アクリレートは、芳香環により、さらに得られるアクリル系樹脂の耐熱性の向上が図れる点で好ましい。
単量体成分中、前記(メタ)アクリレート系単量体(α1)の割合は、特に制限されるものではないが、95〜10重量%が好ましく、90〜10重量%がより好ましい。さらに、良好な透明性、耐候性を保持させるためには、全単量体成分中、90〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは90〜60重量%、さらに好ましくは90〜70重量%であるのがよい。
本発明に用いられる耐熱性アクリル樹脂a3においては、前記(メタ)アクリレート系単量体(α1)として、不飽和モノカルボン酸(α1’)を併用してもよい。不飽和モノカルボン酸(α1’)を併用することにより、ラクトン環構造とともにグルタル酸無水物環構造が導入されたアクリル系樹脂を得ることができ、耐熱性や機械的強度をより向上させることができるので好ましい。不飽和モノカルボン酸(α1’)としては、例えば、(メタ)アクリル酸やクロトン酸、またはそれらの誘導体であるα−置換アクリル酸単量体等が例示できるが特に限定されない。好ましくは、(メタ)アクリル酸であり、さらに耐熱性の点ではメタクリル酸が好ましい。また、重合体(α)における前記(メタ)アクリレート系単量体(α1)由来のエステル基が加熱等の条件により、不飽和カルボン酸(α1’)と同等の構造となっていてもよい。また、不飽和カルボン酸(α1’)が持つカルボキシル基は、後述する環化縮合反応に支障がなければ、例えば、ナトリウム塩など金属塩等の塩の構造になっていてもいい。なお、単量体成分中、不飽和モノカルボン酸(α1’)の割合は、特に制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜設定すればよい。
前記一般式(8)で表される構造単位を有するビニル単量体(α2)としては、例えば、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸の誘導体が挙げられる。具体的には、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル系単量体が好ましく挙げられる。より具体的には、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル) アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸―t― ブチル等が挙げられ、この中でも特に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルと2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましい。さらに、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが、表面硬度、耐熱水性あるいは耐溶剤性の向上効果が高いことから、最も好ましい。なお、これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
単量体成分中、前記一般式(8)で表される構造単位を有するビニル単量体(α2)の割合は、特に制限されるものではないが、5〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40重量%であり、より好ましくは15〜35重量%である。ビニル単量体(α2)の割合が前記範囲より少ないと、環構造の量が少なくなるため、積層体の表面硬度が低くなったり、耐熱水性や耐溶剤性も低くなる場合がある。また、積層体の耐熱性が低くなる場合もある。一方、前記範囲より多いと、ラクトン環構造を形成する際に、架橋反応が起こってゲル化しやすくなり、流動性が低下し、溶融成形しにくくなる場合がある。また、未反応の水酸基が残りやすくなるため、得られたアクリル系樹脂を成形する時に、さらに縮合反応が進行して揮発性物質が発生し、積層体に泡や、シルバーストリーク(表面の銀条模様等)が入りやすくなる場合がある。
重合体(α)を得る際の単量体成分としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記(α1)および(α2)以外の重合性単量体を用いることも可能である。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等が挙げられる。なお、これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。重合体(α)を得る際の単量体成分として上記重合性単量体を併用する際には、これらの単量体の含有量は、単量体成分中、0〜30重量%以下が好ましく、より好ましくは0〜20重量%以下、さらに好ましくは0〜10重量%以下とするのがよい。物性等の点で、所定量以上用いると、(メタ)アクリレート系単量体由来の良好な物性である耐候性、表面光沢あるいは透明性等の物性が損なわれる場合がある。
耐熱性アクリル樹脂a3は、前記重合体(α)を環化縮合反応させて環構造を形成させることによって得られる。前記環化縮合反応とは、加熱により、前記重合体(α)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基(もしくはさらにカルボキシル基)が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、該環化縮合によってアルコールと水が副生する。このように環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与されると共に高い表面硬度、耐熱水性、耐溶剤性が付与される。
前記重合体(α)を環化縮合させてラクトン環構造を有するアクリル系樹脂を得る方法としては、例えば、1)前記重合体(α)を押出機にて減圧下、加熱して環化縮合反応させる方法(Polym.Prepr.,8,1,576(1967)、2)前記重合体(α)の環化縮合反応を溶剤存在下で行い、かつ、該環化縮合反応の際に同時に脱揮を行う方法、3)特定の有機リン化合物を触媒として用い、前記重合体(α)を環化縮合させる方法(欧州特許1008606号)等がある。勿論、これらに限定されるものではなく、上記1)〜3)の方法のうち、複数の方法を採用してもよい。特に、環化縮合反応の反応率が高く、積層体に泡やシルバーストリークが入るのを抑制することができ、脱揮中の分子量低下による機械的強度の低下を抑えられる点からは、2)および3)を用いた方法が好ましい。
本発明に用いられる耐熱性アクリル樹脂a3は、重量平均分子量が1,000〜1,000,000、さらに好ましくは5,000〜500,000、最も好ましくは50,000〜300,000であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲より低いと、表面硬度、耐熱水性あるいは耐溶剤性が低下するばかりではなく、機械的強度が低下し、脆くなりやすいという問題があり、一方、前記範囲より高いと、流動性が低下して成形しにくくなるので、好ましくない。
耐熱性アクリル樹脂a3のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは115℃以上、さらに好ましくは125℃以上、最も好ましくは130℃以上である。
以上、上記いずれかの耐熱性アクリル樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物aにより樹脂層Aを形成すると、樹脂板および成形体の反りを抑制しやすくなる場合があるので好ましい。例えば、樹脂層Cを形成する熱可塑性樹脂組成物cの主成分にポリカーボネート系樹脂を用いれば、樹脂層Aを形成する熱可塑性樹脂組成物aの主成分に上記いずれかの耐熱性アクリル樹脂をそのまま用いても、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とすることができる場合が多く好ましい。即ち、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とすることにより、樹脂板および成形体の反りを抑制することができるので好ましい。
(耐熱性アクリル樹脂a4)
耐熱性アクリル樹脂a4としては、耐熱性だけでなく、優れた硬度を併せ持つものとしてアクリル系樹脂のマトリックス中に硬質性の分散相を含有させたものを用いることもできる。より具体的には、アクリル系樹脂中に、アクリル系樹脂より耐熱性または耐擦傷性の優れた硬質分散相材料を含有・分散してなるものを用いることができる。前記のマトリックス中に硬質性の分散相を含有させたアクリル系樹脂を用いることにより、樹脂層A表面の鉛筆硬度を5H以上とすることができる。
硬質分散相を形成する材料としては、熱硬化性樹脂が挙げられ、具体的には、フェノール樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂等の重縮合または付加縮合系樹脂の他、熱硬化性アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の不飽和モノマーのラジカル重合で得られる付加重合系樹脂が挙げられる。
これらの中でも不飽和モノマーが多官能性のものであれば、重合架橋により硬い材料の特性(不溶、高いガラス転移温度)が得られるため好ましい。不飽和モノマーの例としては、ポリオールとアクリル酸および/またはメタクリル酸のポリエステル、更には、これらのポリオールのポリアリールおよびポリビニルエーテルなどの架橋性モノマーを挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
不飽和モノマーとしては、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(ジ−、トリ−)アクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートまたはエトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびこれらの混合物が挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂との親和性を考慮すると、トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)を好適に用いることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
熱硬化性樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの熱硬化性樹脂と架橋し得る不飽和結合を有する熱可塑性樹脂とを組み合わせて使用してもよい。
硬質分散相の形状は、粒子状、球状、線状、繊維状等が挙げられ、熱可塑性マトリックス樹脂であるアクリル系樹脂中に均等に分散され易い点からは球状が好ましい。ただし、これに限定されるものではない。
硬質分散相の粒径は、成形体の使用目的、用途等に応じて適宜設定されるが、好ましくは0.1〜1000μmである。アクリル系樹脂相中における硬質分散相の配合量は、成形体の使用目的、用途等に応じ適宜設定されるが、好ましくは0.1〜60重量%である。
アクリル系樹脂相中に硬質分散相を含ませる方法としては、特に限定されることはないが、例えば次の方法が挙げられる。
a)アクリル系樹脂材料に硬質分散相を構成する熱硬化性樹脂材料を添加する。
b)次に、溶融混練し、所定形状に成型した後、相分離および架橋を生じさせることにより硬質分散相を構成することができる。また、熱硬化性樹脂を予め粒子状等に成型し、アクリル系樹脂中に添加し、熱硬化性樹脂が溶解しない温度で混練および成型してもよい。
(その他の成分)
樹脂層Aを形成する前記熱可塑性樹脂組成物aは、樹脂成分のほかに、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、シリコーン系化合物などの難燃剤、フィラー、ガラス繊維、耐衝撃性改質剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
また、樹脂層Aを形成する前記熱可塑性樹脂組成物aは、本発明の効果を損なわない範囲で、弾性重合体部を有するアクリル系ゴム粒子をも含有することもできる。かかるアクリル系ゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体からなる層(弾性重合体層)を有するものであり、弾性重合体のみからなる単層の粒子であってもよいし、弾性重合体層と硬質重合体からなる層(硬質重合体層)とによって構成される多層構造の粒子であってもよいが、積層体の表面に配される樹脂層Aの表面硬度を考慮すると、多層構造の粒子であることが好ましい。なお、アクリル系ゴム粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
樹脂層Aは機能層の裏側に配置されることにより、機能層に優れた表面特性を発現させる際のアシストの役割を果たす場合がある。例えば、機能層に優れた表面硬度を発現させる際には、前記のとおり、アクリル系樹脂を主成分とした樹脂組成物aから形成された樹脂層Aとすることが好ましく、さらにその場合の樹脂層Aの厚みは、40μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。樹脂層Aの厚みが40μm以上であれば、高硬度を有する機能層の厚みを薄くしても、その表面に優れた表面硬度が発現するので好ましい。一方、樹脂層Aの厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。樹脂層Aの厚みが500μm以下であれば、樹脂層Aが脆性を有していて、熱成形性、あるいは打抜き加工などの二次加工性が不足する場合には、樹脂層Cを積層することにより補いやすくなるので好ましい。
同じく、機能層に優れた表面硬度を発現させる際には、樹脂層A表面の硬度は、鉛筆硬度で3H以上であることが好ましく、5H以上であることがさらに好ましい。樹脂層A表面の鉛筆硬度が3H以上であれば、その上に積層する機能層の厚みを薄くしてもその表面に優れた硬度が維持され、即ち優れた表面硬度を付与できるので好ましい。
また機能層の厚みを薄くできれば、樹脂板の熱成形性が向上するので好ましい。
(樹脂層C)
樹脂基材において、樹脂層Aの表面のうち、機能層が積層される側とは反対の面に樹脂層Cを設けることができる。特に樹脂層Aがアクリル系樹脂を主成分としてなる熱可塑性樹脂組成物aから形成される場合、樹脂層Cは、成形体に優れた耐衝撃性、あるいは打ち抜き性などの二次加工性を付与する役割を果たす。
(熱可塑性樹脂組成物c)
樹脂層Cは、熱可塑性樹脂組成物cより形成される。該熱可塑性樹脂組成物cに用いることのできる熱可塑性樹脂としては、溶融押出しによってフィルム、シート、あるいはプレートを形成し得る熱可塑性樹脂であれば特に制限はないが、好ましい例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびポリ乳酸系重合体などの脂肪族ポリエステルに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂およびこれらを主たる成分とする共重合体、またはこれら樹脂の混合物等を挙げることができる。
特に本発明においては、前述のとおり可視光線域における吸収がほとんどないなどの点から、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、またはアクリル系樹脂が好ましい。
なかでも、成形体に優れた耐衝撃性、あるいは打ち抜き性などの二次加工性を付与することができる点において、ポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。
なお、樹脂層Cを構成する熱可塑性樹脂組成物cが、上述のものより選ばれる2種以上の樹脂の混合物であり、それらが互いに非相溶である場合には、最も体積分率の高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度を樹脂層Cのガラス転移温度とする。
(ポリカーボネート系樹脂)
本発明に用いることのできるポリカーボネート系樹脂としては、溶融押出しによってフィルム、シート、あるいはプレートを形成し得るものであれば特に制限はなく、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂環族ポリカーボネートの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
(芳香族ポリカーボネート)
芳香族ポリカーボネートとしては、例えば、i)二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるもの、ii)カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られるもの、iii)環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。これらの中でも、i)二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるものが、生産性の点で好ましい。
前記二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
前記二価フェノールとしては、上述したものの中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群から選ばれる二価フェノールを単独でまたは2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群れから選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
前記カルボニル化剤としては、例えば、ホスゲンの如きカルボニルハライド、ジフェニルカーボネートの如きカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメートの如きハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
(その他のポリカーボネート系樹脂)
前記芳香族ポリカーボネート以外のポリカーボネート樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート、脂環族ポリカーボネート等が挙げられる。構造の一部に下記一般式(9)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むものが好ましい。
(但し、一般式(9)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
前記ジヒドロキシ化合物としては、分子構造の一部が前記一般式(9)で表されるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物が挙げられる。
また、耐熱性の観点からは、スピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物を好ましく用いることもできる。具体的には、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
その他のポリカーボネート系樹脂としては、上記ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式ジヒドロキシ化合物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物cから形成される樹脂層Cと熱可塑性樹脂組成物aから形成される樹脂層Aとを積層してなる樹脂基材において、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とすることにより、例えば樹脂板および成形体を高温、あるいは高温高湿の環境にさらした場合でも、それらの反りを抑制することができるので好ましい。かかる観点から、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を25℃以内とするのがより好ましく、20℃以内とすることがさらに好ましい。
樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とする方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(1)熱可塑性樹脂組成物aおよび/または熱可塑性樹脂組成物cにおいて、ガラス転移温度の異なる熱可塑性樹脂をブレンドして、少なくとも2種以上の熱可塑性樹脂の混合物とすることにより、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差を30℃以内に調整する方法。ここでガラス転移温度の異なる二種類以上の熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が異なってさえいれば、熱可塑性樹脂の種類は同じものでも、異なっているものでも用いることができる。また、ここでブレンドする熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物aまたは熱可塑性樹脂組成物cと相溶性を有するものである。
(2)熱可塑性樹脂組成物aおよび/または熱可塑性樹脂組成物cについて、他成分との共重合体とすることにより、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差を30℃以内に調整する方法。
(3)熱可塑性樹脂組成物aおよび/または熱可塑性樹脂組成物cについて、可塑剤等の添加剤を混合することにより、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差を30℃以内に調整する方法。
また、例えば樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とする以外の手法で、樹脂板および成形体の反りを抑制するその他の方法として、熱可塑性樹脂組成物aおよび/または熱可塑性樹脂組成物cにおいて、互いに非相溶の熱可塑性樹脂を少なくとも2種以上含んでなる混合物とする方法を挙げることができる。
樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とする方法のうち、前記(1)の例を熱可塑性樹脂aがアクリル系樹脂を主成分としてなり、熱可塑性樹脂組成物cがポリカーボネート系樹脂とその他の熱可塑性樹脂の混合物からなる場合について詳述する。
本発明における熱可塑性樹脂組成物cは、前記のとおり二種以上の熱可塑性樹脂からなる混合物とすることができる。例えば、熱可塑性樹脂組成物aがアクリル系樹脂を主成分としてなり、熱可塑性樹脂組成物cがポリカーボネート系樹脂を主成分としてなる場合、両者のガラス転移温度の差の絶対値を30℃ 以内とするには、後者のポリカーボネート系樹脂にその他の熱可塑性樹脂を混合して、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度を低下させる方法が挙げられる。即ち、ポリカーボネート系樹脂と他の熱可塑性樹脂とを溶融ブレンド(;混合して加熱溶融すること)してポリマーアロイ化することにより、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度を低下させる方法が挙げられる。
一般的には、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は150℃付近で、アクリル系樹脂の一般的なガラス転移温度の100℃よりも50℃近く高いため、ポリカーボネート系樹脂にその他の熱可塑性樹脂を混合して、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度を低下させる。かかる観点から、その他の熱可塑性樹脂として、芳香族ポリエステルや、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂等を好ましい例として挙げることができる。
(芳香族ポリエステルd1)
その他の熱可塑性樹脂として用いることのできる芳香族ポリエステルd1として、例えば、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とが縮合重合してなる樹脂を挙げることができる。
ここで、上記の芳香族ジカルボン酸成分の代表的なものとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、テレフタル酸の一部が他のジカルボン酸成分で置換されたものであってもよい。他のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。これらは、一種でも二種以上の混合物であってもよく、また、置換される他のジカルボン酸の量も適宜選択することができる。
一方で、上記のジオール成分の代表的なものとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エチレングリコールの一部が他のジオール成分で置換されたものでもよい。他のジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、メトキシポリアルキレングリコールなどが挙げられる。これらは、一種でも二種以上の混合物であってもよく、また、置換される他のジオールの量も適宜選択することができる。
芳香族ポリエステルの具体例として、テレフタル酸とエチレングリコールとを縮合重合させたポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸或いはテレフタル酸ジメチルと1,4−ブタンジオールを縮合重合させたポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。また、テレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分および/またはエチレングリコール以外の他のジオール成分を含んだ共重合ポリエステルも好ましい芳香族ポリエステルとして挙げることができる。
中でも好ましい例として、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコールの一部、好ましくは55〜75モル%をシクロヘキサンジメタノールで置換してなる構造を有する共重合ポリエステル、または、ポリブチレンテレフタレートにおけるテレフタル酸の一部、好ましくは10〜30モル%をイソフタル酸で置換してなる構造を有する共重合ポリエステル、または、これら共重合ポリエステルの混合物を挙げることができる。
以上説明した芳香族ポリエステルの中で、ポリカーボネート系樹脂と溶融ブレンドすることによりポリマーアロイ化し、且つ、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度を十分に低下させることができるものを選択するのが好ましい。
このような観点から、ポリエチレンテレフタレートのジオール成分であるエチレングリコールの50〜75モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)で置換してなる構造を有する共重合ポリエステル(所謂「PCTG」)、或いは、ポリブチレンテレフタレートのテレフタル酸の一部、好ましくは10〜30モル%をイソフタル酸で置換してなる構造を有する共重合ポリエステル、または、これらの混合物は最も好ましい例である。これらの共重合ポリエステルは、ポリカーボネート系樹脂と溶融ブレンドすることによって、完全相溶してポリマーアロイ化することが知られており、しかも効果的にガラス転移温度を下げることができる。
(環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂d2)
その他の熱可塑性樹脂として用いることのできる環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂d2は、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中1〜60モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂である。環状アセタール骨格を有するジオール単位は下記の一般式(10)または(11)で表される化合物に由来する単位が好ましい。
、R、およびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、および炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。
一般式(10)および(11)の化合物としては3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンが特に好ましい。
また、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂d2において、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位としては特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;上記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;および上記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等が例示できる。本発明のポリエステル樹脂の機械的性能、経済性等の面からエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。例示したジオール単位は単独で使用する事もできるし、複数を併用する事もできる。
また、本発明に用いられる環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂d2のジカルボン酸単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。本発明のフィルムの機械的性能、および耐熱性の面からテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2, 6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびイソフタル酸が好ましい。中でも、経済性の面からテレフタル酸がもっとも好ましい。例示したジカルボン酸は単独で使用することもできるし、複数を併用することもできる。
なお、溶融ブレンドした混合樹脂組成物がポリマーアロイとなっているか、言い換えれば完全相溶しているか否かは、例えば示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となるかどうかで判断することができる。ここで、混合樹脂組成物のガラス転移温度が単一であるとは、混合樹脂組成物をJIS K−7121に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計を用いてガラス転移温度を測定した際に、ガラス転移温度を示すピークが1つだけ現れるという意味である。
また、前記混合樹脂組成物を、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198A法の動的粘弾性測定)により測定した際に、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するかどうかでも判断することができる。
混合樹脂組成物が完全相溶(ポリマーアロイ化)すれば、ブレンドされた成分が互いにナノメートルオーダー(分子レベル)で相溶した状態となる。
なお、ポリマーアロイ化する手段として、相溶化剤を用いたり、二次的にブロック重合やグラフト重合させたり、或いは、一方のポリマーをクラスター状に分散させたりする手段も採用可能である。
ポリカーボネート系樹脂と前述のポリエステルd1またはd2との混合比率は、混合して得られるポリカーボネート系樹脂組成物とアクリル系樹脂とのガラス転移温度の差の絶対値が30℃以内になる比率であれば制限するものではないが、透明性維持の観点から、質量比率でポリカーボネート系樹脂:ポリエステルd1またはd2=20:80〜90:10であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂:ポリエステルd1またはd2=30:70〜80:20、中でも特にポリカーボネート系樹脂:ポリエステルd1またはd2=40:60〜75:25であるのが好ましい。
次に、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値を30℃以内とする方法のうち、前記3)の例を熱可塑性樹脂組成物aがアクリル系樹脂を主成分としてなり、熱可塑性樹脂組成物cがポリカーボネート系樹脂と可塑剤の混合物である場合について詳述する。
前記のとおり、一般的には、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は150℃付近で、アクリル系樹脂の一般的なガラス転移温度の100℃よりも50℃近く高いため、両者のガラス転移温度の差の絶対値を30℃ 以内とするには、後者のポリカーボネート系樹脂に可塑剤を混合して、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度を低下させる方法が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂に用いることのできる可塑剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートの如きリン酸エステル系化合物;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシルフタレート)、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレートの如きフタル酸エステル系化合物;トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートの如きトリメリット酸エステル系化合物;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネートの如き脂肪族二塩基酸エステル系化合物;メチルアセチルリシノレートの如きリシノール酸エステル系化合物;トリアセチン、オクチルアセテートの如き酢酸エステル系化合物;N−ブチルベンゼンスルホンアミドの如きスルホンアミド系化合物;等が挙げられる。特に、樹脂成分がポリカーボネート樹脂である場合には、上述した可塑剤の中でも、ポリカーボネート樹脂との相溶性が良いこと、相溶後の樹脂の透明性が良いことから、リン酸エステル系化合物が好ましく、とりわけ、クレジルジフェニルホスフェートやトリクレジルホスフェートがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物cをポリカーボネート系樹脂と可塑剤との混合物とする場合、両者の割合は質量比率で、ポリカーボネート系樹脂:可塑剤=70:30〜99:1であることが好ましく、ポリカーボネート系樹脂:可塑剤=90:10〜98:2であることがより好ましい。可塑剤の量が前述した割合よりも少ないと、可塑化によるガラス転移温度の低下効果が不十分となり、樹脂層Aと樹脂層Cとのガラス転移温度の差の絶対値が30℃以内の範囲にならず、その結果、得られる樹脂板および成形体の反りを抑制することが難しくなるおそれがある。一方、可塑剤の量が前述した割合よりも多いと、ポリカーボネート樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物cの流動性が著しく大きくなり、例えば熱可塑性樹脂組成物aと共押出成形する方法で積層基材とする場合に、その外観が損なわれるおそれがある。
(その他の成分)
樹脂層Cを形成する熱可塑性樹脂組成物cは、樹脂成分のほかに、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、シリコーン系化合物などの難燃剤、フィラー、ガラス繊維、耐衝撃性改質剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
前述のとおり、樹脂層Cは、樹脂層Aおよび機能層と積層することにより、樹脂板および成形体に優れた耐衝撃性、あるいは打ち抜き性などの二次加工性を付与する役割を果たす。かかる観点から、樹脂層Cの厚みは、樹脂層Aおよび機能層の合計厚みとの比をもとに設定されることが重要であり、該厚み比を樹脂層C厚/(樹脂層A厚+機能層厚)で表せば、2以上であることが好ましく、4以上であることがさらに好ましい。厚み比が2以上であれば、樹脂板および成形体に優れた耐衝撃性、あるいは打ち抜き性などの二次加工性を付与できるので好ましい。
(機能層)
本発明における機能層は、樹脂板および成形体に優れた表面特性を付与する役割を果たす層である。本発明において、機能層は特に制限されるものではなく、例えばコーティング法、転写法、物理蒸着法、化学蒸着法、共押法、印刷法、あるいはラミネート法などにより形成された薄膜状のものを挙げることができる。その機能層が備える特性・機能にも特に制限はないが、例えばコーティングあるいは転写により付与される高硬度性、耐指紋性、撥水性、耐薬品性、光触媒活性、帯電防止性、導電性や、金属や無機酸化物の物理蒸着により付与されるガスバリヤ性、高反射性、反射防止性、増反射性、拡散性、集光性、偏光性、さらに精密印刷などにより付与される意匠性、また薄肉ガラスの積層により付与される超高硬度性などを挙げることができる。なお、本発明における機能層は、樹脂基材の少なくとも片面に、上記から選ばれる特性・機能を備える機能層が少なくとも2層積層されていたり、また樹脂基材の片面ごとに異なる特性・機能を備える機能層が積層されていたり、樹脂基材の両面に同一の特性・機能を備える機能層が積層されていてもよい。また機能層のみから樹脂板が構成されてもよい。
例えばガスバリヤ性を備えた機能層は、アルミナなどの無機酸化物の物理蒸着層により形成させることができる。また、増反射機能を備えた機能層は、シリカなどの低屈折率の無機酸化物からなる物理蒸着層と、チタニアなどの高屈折率の無機酸化物からなる物理蒸着層とを所定の厚み比率で積層することにより形成させることができる。
これら機能層を備えたフィルム、シートなどの樹脂板を、曲げ加工して成形体を得る場合に、該機能層が伸縮変形を受けてその厚みが増減すると、例えばガスバリヤ性や増反射機能は、成形体の場所によって機能が不均一なものになったり、さらに過剰な伸縮変形を受けた場合は、該機能層が破断して機能とともに、外観も損なわれる恐れがある。精密印刷層についても同様の懸念がある。
なかでも、高硬度層は、硬化性樹脂組成物を紫外線や電子線の照射、あるいは加熱により硬化形成されてなり、伸長変形させるのが困難で、曲げ加工する際に伸縮変形を受けても、高硬度層はそれを吸収したり、追随したりことができないため、クラック等の外観不良を起こす恐れがある。
本発明において、樹脂板は、樹脂基材のみあるいは前記機能層のみからなる単層構成でも構わないが、上記の懸念を解消するためには、少なくとも樹脂基材の片側表面に機能層を有する、機能層/樹脂基材の二層構成あるいは機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる樹脂板に、本製造方法を適用することが好ましい。
本製造方法において、樹脂板を機能層/樹脂基材の二層構成からなる積層構成とした場合、該樹脂板のうち少なくとも機能層を有する片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、曲部で樹脂基材を圧縮変形させることにより、凸面に該機能層を有する成形体を得ることができるので好ましい。逆に、該樹脂板のうち少なくとも機能層を有する片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、曲部で樹脂基材を伸長変形させることにより、凹面に該機能層を有する成形体を得ることができるので好ましい。
さらに、樹脂板を機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる樹脂構成とした場合、凸面側および凹面側を形成する該樹脂板の両表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、両表面の前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、樹脂基材をせん断変形させることにより、凸面側および凹面側に該機能層を有する成形体を得ることができるので好ましい。
本発明における機能層が、樹脂層Bからなる高硬度層である場合を例に挙げて説明する。
(樹脂層B)
樹脂層Bとしては、硬化性樹脂組成物bから形成されるものが挙げられる。また、樹脂層Bは、樹脂基材の少なくとも片側表面に、あるいは樹脂基材の両面に積層することができる。即ち硬化性樹脂組成物b−1から形成される樹脂層B−1と、硬化性樹脂組成物b−2から形成される樹脂層B−2とを用いて、樹脂層B−1/樹脂基材の二層構成、樹脂層B−1/樹脂基材/樹脂層B−2あるいは樹脂層B−1/樹脂基材/樹脂層B−1の三層構成とすることができる。
(硬化性樹脂組成物b−1)
本発明における樹脂層B−1は、樹脂板および成形体に優れた表面硬度を付与する層である。高硬度層は硬化性樹脂組成物から形成されるものであり、本発明に用いることのできる硬化性樹脂組成物b−1は、例えば、電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を照射することにより硬化するか、あるいは加熱により硬化するものであれば、特に制限はないが、成形時間および生産性の観点から紫外線硬化性樹脂からなることが好ましい。
硬化性樹脂組成物b−1を構成する硬化性樹脂の好ましい例として、アクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、共重合系アクリレート、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられ、これらの硬化性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。なかでも、優れた表面硬度を付与する硬化性樹脂としては、例えば、多官能アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレート化合物、多官能エポキシアクリレート化合物など、ラジカル重合系の硬化性化合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなど、熱重合系の硬化性化合物を挙げることができる。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物b−1は、前記硬化性樹脂に無機成分を含有させてなる有機・無機複合系硬化性樹脂組成物とすることもできる。
樹脂層B−1に特に優れた表面硬度を付与する硬化性樹脂組成物b−1として、有機・無機ハイブリッド系硬化性樹脂組成物を挙げることができる。有機・無機ハイブリッド系硬化性樹脂組成物としては、前記硬化性樹脂に反応性官能基を有する無機成分を含有させた硬化性樹脂組成物から構成されるものを挙げることができる。
このような反応性官能基を有する無機成分を利用して、例えば、この無機成分が、ラジカル重合性モノマーと共重合および架橋することで、単に有機バインダーに無機成分を含有させてなる有機・無機複合系硬化性樹脂組成物に比べて、硬化収縮が生じにくく、かつ高い表面硬度を発現することができるので好ましい。さらに、硬化収縮の低減の観点からは、反応性官能基を有する無機成分として紫外線反応性のコロイダルシリカを含む、有機・無機ハイブリッド系硬化性樹脂組成物を、より好ましい例に挙げることができる。
本発明における樹脂層B−1は、前述の通り、樹脂板および成形体に優れた表面硬度を付与する層である。樹脂層B−1に特に優れた表面硬度を付与する手段としては、樹脂層B−1に含有される無機成分および/または反応性官能基を有する無機成分の濃度で調整する方法が挙げられる。樹脂層B−1に含有される無機成分および/または反応性官能基を有する無機成分の好ましい濃度の範囲は、10質量%以上、65質量%以下である。好ましい濃度の下限値は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。濃度が、10質量%以上であれば、樹脂層B−1に優れた表面硬度を付与する効果が得られるので好ましい。一方、好ましい濃度の上限値は、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることが特に好ましい。濃度が、65質量%以下であれば、樹脂層B−1中において、無機成分および/または反応性官能基を有する無機成分を最密に充填することが可能になり、優れた表面硬度を効果的に付与することができるので好ましい。
樹脂層B−1を樹脂基材に積層する方法としては、例えば、硬化性樹脂組成物b−1を有機溶剤に溶解、あるいは分散させた塗料として樹脂基材の表面に塗工した後、硬化膜とすることにより、樹脂基材の表面に形成・積層する方法があるが、この方法に限定されるものではない。
樹脂基材との積層方法としては、公知の方法が使用される。例えば、カバーフィルムを使用するラミネート方式、ディップコート法、ナチュラルコート法、リバースコート法、カンマコーター法、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバー法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法、グラビアコート法等が挙げられる。その他、例えば、離型層に樹脂層B−1が形成されてなる転写シートを用いて、当該樹脂層B−1を樹脂基材に積層する方法を採用してもよい。
樹脂層B−1を形成する硬化性樹脂組成物b−1は、成形時間および生産性の観点から紫外線硬化性樹脂からなるもの、即ち紫外線を照射することにより硬化するものからなることが好ましい。ここで紫外線を発する光源としては、無電極高圧水銀灯、有電極高圧水銀灯、無電極メタルハライドランプ、有電極メタルハライドランプ、キセノンランプ、超高圧水銀灯または水銀キセノンランプ等を用いることができる。中でも無電極高圧水銀灯は、高照度の紫外線を得られやすく、紫外線硬化性樹脂の硬化には有利となり好ましい。
また、紫外線硬化性樹脂は、添加される光重合開始剤が紫外線を吸収して、励起、活性化されることで重合反応を起こし、紫外線硬化性樹脂の硬化反応が起こる。したがって、紫外線硬化性樹脂に添加されている光重合開始剤に応じた、即ち光重合開始剤の励起波長に応じた光源を選択すると、紫外線硬化性樹脂の硬化に有利となり好ましい。
(光重合開始剤)
硬化性樹脂組成物b−1が紫外線硬化性樹脂からなり、紫外線を照射することにより硬化させる場合、硬化剤として光重合開始剤を使用する。光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類などが挙げられる。中でも、α−ヒドロキシアルキルフェノン類は硬化時に黄変を起こしにくく、透明な硬化物が得られるので好ましい。また、アミノアルキルフェノン類は、非常に高い反応性を備え、優れた硬度の硬化物が得られるので好ましい。なお、光重合開始剤の添加量は、硬化性樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲が一般的である。
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いることができるほか、多くは2種以上混合して用いることもできる。また、これらの各種光重合開始剤は市販されているので、そのような市販品を用いることができる。市販の光重合開始剤として、例えば、“IRGACURE651”、“IRGACURE184”、“IRGACURE500”、“IRGACURE1000”、“IRGACURE2959”、“DAROCUR1173”、“IRGACURE127”、“IRGACURE907”、“IRGACURE369”、“IRGACURE379”、“IRGACURE1700”、“IRGACURE1800”、“IRGACURE819”、“IRGACURE784”〔以上のIRGACURE(イルガキュア)シリーズおよびDAROCUR(ダロキュア)シリーズは、BASF・ジャパン社で販売〕、“KAYACUREITX”、“KAYACUREDETX−S”、“KAYACUREBP−100”、“KAYACUREBMS”、“KAYACURE2−EAQ”〔以上のKAYACURE(カヤキュア)シリーズは、日本化薬社で販売〕などを挙げることができる。このうち、上記、α−ヒドロキシアルキルフェノン類に属するものとしては、例えば“IRGACURE184”を挙げることができ、一方、アミノアルキルフェノン類に属するものとして、例えば“IRGACURE907”、“IRGACURE369”、“IRGACURE379”を挙げることができる。
(表面調整成分)
樹脂層B−1を形成する硬化性樹脂組成物b−1は、表面調整成分としてレベリング剤を含むことができる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤などを挙げることができ、特に、末端に反応性の官能基を有するものが好ましく、2官能以上の反応性の官能基を有するものがより好ましい。
具体的には、両末端に2重結合を有する、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「BYK−UV 3500」、「BYK−UV 3530」)や、2重結合を末端に2個ずつ計4個有する、アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製の「BYK−UV 3570」)などが挙げられる。
これらの中でも、ヘイズの値が安定し、かつ耐擦傷性の向上に寄与する、アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
(その他の成分)
樹脂層B−1を形成する硬化性樹脂組成物b−1は、硬化性樹脂成分のほかに、例えば、ケイ素系化合物、フッ素系化合物、またはこれらの混合化合物などの滑剤や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シリコーン系化合物などの難燃剤、フィラー、ガラス繊維、耐衝撃性改質剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
硬化性樹脂組成物b−1が紫外線硬化性樹脂からなり、紫外線を照射することにより硬化させる場合、紫外線に対して透明度が高いため樹脂組成物の内部の硬化は速やかに進行する反面、酸素による硬化阻害作用(酸素障害と称する)のため、樹脂組成物の表面では硬化が滞る場合がある。この酸素障害に対しては、窒素ガスの供給により樹脂組成物周囲を窒素ガス雰囲気下とした上で紫外線を照射すると、樹脂組成物の内部とともに表面の硬化を速やかに進行させることができるので好ましい。
樹脂層B−1の表面の鉛筆硬度は、5H以上であることが好ましく、7H以上であることがより好ましい。鉛筆硬度が5H以上であれば、優れた表面硬度を有する樹脂板および成形体とすることができる。
また、樹脂層B−1の表面硬度は、ユニバーサル硬度で200MPa以上、900MPa以下であることが好ましい。樹脂層B−1のユニバーサル硬度の下限値は、200MPa以上であることが好ましく、400MPa以上であることがより好ましく、600MPa以上であることが特に好ましい。ユニバーサル硬度が200MPa以上であれば、優れた硬度を有する樹脂板および成形体を提供することができる。一方、樹脂層B−1のユニバーサル硬度の上限値は、900MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましく、700MPa以下であることが特に好ましい。ユニバーサル硬度が900MPa以下であれば、曲げ成形時において、樹脂層B−1にクラックが生じることがないので好ましい。
樹脂層B−1の厚みは、5μm以上、40μm以下の範囲であることが好ましく、7μm以上、30μm以下の範囲であることがさらに好ましく、7μm以上、20μm以下の範囲であることが特に好ましい。厚みが5μm以上であれば、樹脂層B−1表面に十分な硬度を付与することができるので好ましい。一方、厚みが40μm以下であれば、樹脂板を熱成形する際に樹脂層B−1に白化やクラックを生じさせることなく成形体を得られるので好ましい。
(樹脂層B−2)
本発明における樹脂層B−2は、樹脂基材の表面のうち樹脂層B−1が積層される側とは反対側の表面に形成されて、工程内で樹脂板に摩擦傷が入るのを防ぐための傷付防止層としての役割を主に果たす層である。
(硬化性樹脂組成物b−2)
本樹脂板の樹脂層B−2は硬化性樹脂組成物b−2から形成されるものであり、本発明に用いることのできる硬化性樹脂組成物b−2は、前記の硬化性樹脂組成物b−1と同様のものを使用することができる。
本樹脂板を圧縮変形または伸長変形させる場合には、樹脂板のガラス転移温度における樹脂層B−2の貯蔵弾性率が、50MPa以上、1000MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率が、50MPa以上であれば、樹脂層B−2に傷付防止層としての役割を付与できるので好ましい。かかる観点から、樹脂層B−2の好ましい貯蔵弾性率の下限値は80MPa以上であることがさらに好ましく、100MPa以上であることが特に好ましい。一方、貯蔵弾性率が、1000MPa以下であれば、本製造方法の曲げ加工において生じる伸縮変形に、樹脂層B−2が吸収対応できるので、樹脂層B−2からなる機能層を拘束物で密着拘束しなくても、その表面特性や外観を損なうことなく、成形することができる。かかる観点から、好ましい貯蔵弾性率の上限値は、800MPa以下であることがより好ましく、500MPa以下であることが特に好ましい。
樹脂層B−2の厚みは、5μm以上、50μm以下の範囲であることが好ましく、10μm以上、40μm以下の範囲であることがさらに好ましく、15μm以上、30μm以下の範囲であることが特に好ましい。厚みが5μm以上であれば、傷付防止層としての役割を果たすのに十分な硬度を確保することができるので好ましい。一方、厚みが50μm以下であれば、樹脂板および成形体の二次加工性を確保できるので好ましい。
樹脂層B−2に適用し得る形成方法、光重合開始剤、表面調整成分、およびその他の成分は、前記の樹脂層B−1のケースと同様である。
(拘束物)
本製造方法において、樹脂板の少なくとも片側表面が、さらには樹脂板の少なくとも片側表面に積層されてなる機能層が拘束物で密着拘束されたまま曲げ加工される。前記拘束物は、曲げ加工において密着拘束した表面層が伸縮変形を起こすのを抑制する役割を果たす。
また、本製造方法における拘束物は、曲げ加工において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制するものであり、樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する補強作用と同時に曲げ加工変形にも追従し得るバランスのとれた機械特性が必要である。本製造方法においては、拘束物に求められる好ましい機械特性の範囲を、拘束物の曲げ弾性率(MPa)と拘束物の厚み(m)との積により定めることができる。
拘束物の曲げ弾性率と厚みとの積の好ましい範囲は、3.0×10−2MPa・m以上であることが好ましく、4.0×10−2MPa・m以上であることがさらに好ましく、5.0×10−2MPa・m以上であることが特に好ましい。拘束物の曲げ弾性率と厚みとの積が3.0×10−2MPa・m以上であれば、曲げ加工において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する補強作用を果たすので好ましい。一方、好ましい範囲の上限値は、拘束物が後述する拘束層Dを有する成形型、または拘束層Dを有する金属製ベルトのいずれかからなる場合は特に制限されるものではない。拘束物が、保護フィルム、金属箔テープ、またはガラスクロステープのいずれかからなる場合は、50MPa・m以下であることが好ましく、10MPa・m以下であることがより好ましく、5.0MPa・m以下であることが特に好ましい。拘束物が、保護フィルム、金属箔テープ、ガラスクロステープのいずれかからなる場合は、拘束物の曲げ弾性率と厚みとの積が、50MPa・m以下であれば、拘束物自身が曲げ加工変形にも追従し得るので好ましい。
拘束物の曲げ弾性率は、拘束物の曲げ弾性率と厚みとの積が前記範囲内にある場合において、特に制限されるものではないが、好ましい範囲は、1.5×10MPa以上、3.0×10MPa以下である。拘束物の曲げ弾性率が1.5×10MPa以上であれば、曲げ加工において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する補強作用を得やすくなるので好ましい。かかる観点から、2.0×10MPa以上であることがさらに好ましく、3.0×10MPa以上であることが特に好ましい。一方、、拘束物の曲げ弾性率が、3.0×10MPa以下であれば、拘束物自身が曲げ加工変形にも追従しやすくなるので好ましい。かかる観点から、1.0×10MPa以下であることがより好ましく、1.0×10MPa以下であることが特に好ましい。
拘束物の厚みは、拘束物が拘束層Dを有する成形型、または拘束層Dを有する金属製ベルトのいずれかからなる場合は特に制限されるものではない。拘束物が、保護フィルム、金属箔テープ、ガラスクロステープのいずれかからなる場合は、前述のとおり、拘束物の曲げ弾性率(MPa)と拘束物の厚み(m)との積が3.0×10−2MPa・m以上であれば、特に制限されるものではないが、好ましい厚みの下限値は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、25μm以上であることが特に好ましい。拘束物の厚みが10μm以上であれば、曲げ加工において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する補強作用を得やすくなるので好ましい。一方、好ましい範囲の上限値は、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが特に好ましい。拘束物の厚みが300μm以下であれば、樹脂板を密着拘束する操作として、樹脂板との貼合作業を行うためのハンドリング性が確保できるので好ましい。
また、前記拘束物は少なくとも1層の拘束層Dを有することが好ましい。拘束物のうち、樹脂板、および/または機能層と密着させる側には、その界面で、ずれ・滑りを起こすことなく、拘束物の曲げ変形を伝える作用を有することが必要である。即ち、拘束物は少なくとも1層の拘束層Dを有し、該拘束層Dは、拘束物の曲げ変形を樹脂板、および/または機能層に伝え得る凝集力を有することが好ましい。その凝集力は例えば拘束層Dの貯蔵弾性率で表すことができる。
(拘束層D)
拘束物は、曲げ加工において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する補強作用と共に曲げ加工変形にも追従し得るバランスのとれた機械特性を備えることと、拘束物と樹脂板、および/または機能層との界面で、ずれ・滑りが生じることなく変形を伝えるのに適した凝集力を備えることの2点が必要で、かかる観点から、拘束物は少なくとも1層の拘束層Dを有することができる。
拘束層Dの貯蔵弾性率の好ましい範囲は、樹脂板のガラス転移温度において、1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下である。貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であれば、拘束層Dの凝集破壊が起こらず、拘束物の曲げ変形を、樹脂板、および/または機能層に伝えることができるので好ましい。かかる観点から、5.0×10Pa以上であることがさらに好ましく、1.0×10Pa以上であることが特に好ましい。一方、前記貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であれば、拘束する側が硬すぎることがなく、樹脂板、および/または機能層との界面で滑りが生じることがないので、拘束物の曲げ変形を、樹脂板、および/または機能層に伝えることができるので好ましい。かかる観点から、1.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが特に好ましい。
上記少なくとも1層の拘束層Dを有する拘束物の好ましい例として、保護フィルム、アルミ箔などの金属箔テープ、ガラスクロステープ、拘束層Dを表面に設けた成形型および拘束層Dを表面に設けた金属製ベルトを挙げることができるが、なかでも保護フィルムが多様な形状の成形体に適用できるので好ましい。
(保護フィルム)
以下、拘束物が保護フィルムである場合を例に挙げて説明する。
本製造方法における、保護フィルムは少なくとも基材層と拘束層Dとを備えてなり、この場合拘束層Dとは粘着剤層のことをいう。基材層は前記のとおり、拘束物として曲げ加工において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制する補強作用と共に曲げ加工変形にも追従し得る役割を果たす。
(基材層)
基材層を形成する材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、不織布などが挙げられ、好ましくは、プラスチックである。基材層は、一種の材料から形成されていても良いし、二種以上の材料から形成されていても良い。例えば、二種以上のプラスチックから形成されていても良い。
上記プラスチックとしては、拘束物の曲げ弾性率と厚みとの積が、前記範囲内にある場合においては、特に制限されることはないが、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。
基材層は熱成形温度において、樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制するのに十分な補強作用を有する必要があり、例えば樹脂板のガラス転移温度における貯蔵弾性率が、100MPa以上、5000MPa以下であることが好ましい。かかる点から、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂を好ましいものとして挙げることができ、中でもポリエステル系樹脂が性能とコスト面のバランスが良く好ましい。
基材層の貯蔵弾性率の下限値は、樹脂板のガラス転移温度において100MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であることがさらに好ましく、500MPa以上であることが特に好ましい。貯蔵弾性率が、100MPa以上であれば、熱成形時において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制できるので好ましい。
一方、樹脂板のガラス転移温度における基材層の貯蔵弾性率の上限値は、5000MPa以下であることが好ましく、3000MPa以下であることがさらに好ましく、1000MPa以下であることが特に好ましい。基材層の貯蔵弾性率が、5000MPa以下であれば、基材層が曲げ変形に追従して、成形体を所望の形状に賦形するのを妨げることがないので好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレートなどが挙げられる。
基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、可塑剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材層に含有され得る添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、基材層を形成する材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤のいくつかを含有することが好ましい。耐候性向上等の観点から、添加剤として特に好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤が挙げられる。
基材層の厚みとしては、拘束物の曲げ弾性率と厚みとの積が、前記範囲内にある場合においては、特に制限されることはなく、用途に応じて採用することができるが、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは20〜150μmであり、さらに好ましくは25〜100μmである。
基材層の厚みが10μm以上であれば、熱成形時において樹脂板、および/または機能層の拘束した面の曲部での伸縮変形を抑制できるので好ましい。一方、基材層の厚みが200μm以下であれば、保護フィルムのハンドリング性が確保されて樹脂板との貼合作業性が良くなるので好ましい。なかでも、基材層の厚みが25μm以上、100μm以下であれば、保護フィルムを樹脂板および/または機能層の表面に積層したときにガスの噛み込みを防ぐことができて、成形体としたときに平滑性を確保できるので好ましい。
基材層は、単層でも良いし、二層以上の積層体であっても良い。また基材層は、延伸されたものであっても良い。
(粘着剤層)
粘着剤層は、前記のとおり拘束層Dとして樹脂板、および/または機能層との界面で、ずれ・滑りを生じることなく基材層の変形を伝える役割を担う層であり、その役割に適した凝集力を有する層である。粘着剤層は粘着剤により構成される。粘着剤は一種のみであっても良いし、二種以上であっても良い。
粘着剤層が備える凝集力としての好ましい貯蔵弾性率の範囲は、前記拘束層Dと同様である。
粘着剤は、好ましくは、高分子系化合物を主成分とする。ここで、高分子系化合物は、架橋された高分子系化合物であっても良い。また未架橋の高分子系化合物、例えば電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を照射することにより硬化する高分子系化合物を用いても良い。後者の場合、本発明の成形体から保護フィルムを剥がす直前に、電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を照射して硬化させれば、素早く、かつ樹脂板、および/または機能層の表面に粘着剤を残すことなく保護フィルムを剥がすことができる。
粘着剤中の高分子系化合物の含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な粘着剤を採用し得る。このような粘着剤としては、例えば、オレフィン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。本発明において、上記粘着剤は、特に限定されるものではないが、熱成形加工に耐えうるものとして、アクリル系粘着剤、またはシリコーン系粘着剤を好ましく用いることができる。
粘着剤層を構成する粘着剤中には、任意の適切な添加剤を含有し得る。このような添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、滑剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料、溶剤などが挙げられる。しかしながら、本発明において、粘着剤層を構成する粘着剤中には、好ましくは、可塑剤を含まない。可塑剤が添加された粘着剤層を用いると、濡れ性は向上するものの、該可塑剤によって被着体が汚染されるおそれがある。
粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な方法によって製造し得る。粘着剤層を構成する粘着剤は、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、紫外線(UV)による重合など、ポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法を用いるとともに、任意の適切な架橋方法を採用し、必要に応じて任意の適切な添加剤を用いることによって製造し得る。
粘着剤層を構成する粘着剤は、ゾル成分における低分子量成分の含有割合が少ない方が好ましい。低分子量成分の含有割合が少ないと、被着体への汚染が少なく安定したリワーク性が得られると推測できる。
保護フィルムにおける粘着剤層の厚みは、好ましくは0.5〜100μmであり、より好ましくは3〜50μmであり、さらに好ましくは5〜30μmである。粘着剤層の厚みが0.5μm以上であれば、粘着剤層の厚みを均一に調整することが容易になり安定した粘着力を確保できるので好ましい。また、粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、粘着力が過剰に増大することがなく、熱成形後にスムーズに剥離することができるので好ましい。
本製造方法に用いる保護フィルムは、予め成膜した基材層の片面に溶融混練した粘着剤層となる材料を積層する方法、あるいは、Tダイ法やインフレーション法等の共押出の成形で基材層と粘着剤層を同時に積層する方法等により得ることができる。
なお、保護フィルムと樹脂板を積層する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、保護フィルムの粘着剤層面と樹脂板表面とを合わせて、ラミネーションさせる方法、あるいは熱プレス、熱金属ロール、熱ゴムロールなどを用いて熱圧着させる方法を挙げることができる。
(拘束物と樹脂板との積層構成)
本製造方法における、樹脂板を拘束物で拘束する際の構成としては、拘束物/樹脂板、または拘束物/樹脂板/拘束物の構成を挙げることができる。前者のより具体な構成としては、例えば、拘束物/機能層、拘束物/樹脂基材、拘束物/機能層/樹脂基材、拘束物/機能層1/機能層2/樹脂基材、および拘束物/機能層/樹脂基材/機能層の構成が挙げられる。また、後者のより具体な構成としては、例えば、拘束物/機能層/拘束物、拘束物/機能層/樹脂基材/機能層/拘束物、拘束物/機能層1/機能層2/樹脂基材/機能層3/拘束物の構成が挙げられる。
前述のとおり樹脂基材は、単一の樹脂層からなる単層構成であっても、また異なる樹脂層が少なくとも2層積層されてなる積層構成であっても構わない。
(厚み)
樹脂板の厚みは、特に制限されるものではなく、例えば0.1mm〜1.5mmであるのが好ましく、特に、実用面における取り扱い性を考慮すると0.2mm〜1.0mm以下程度であるのが好ましい。
例えば、画像表示装置の前面側に配置して用いられる表面保護パネルとしては、厚みが0.2mm〜1.2mmであるのが好ましく、タッチパネル機能を有する携帯電話や液晶ペンタブレット等のフロントカバー材としては、厚みが0.3mm〜1.0mmであるのが好ましい。
(成形体の製造方法)
本発明は、樹脂板のうち曲げ加工における伸縮変形を抑制させたい側の表面、あるいは伸縮変形させるのが困難な側の表面を拘束物で密着拘束する一方で、それ以外の部分では圧縮変形、伸長変形、あるいはせん断変形させて成形体を得る製造方法である。
本製造方法における樹脂板の面方向への伸長の度合い、あるいは圧縮の度合いは、前述のとおり成形体の曲部の伸長率(ΔL)で表すことができる。さらに、樹脂板が少なくとも機能層を片側表面に有する機能層/樹脂基材の二層構成、あるいは機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる積層構成をとる場合は、樹脂基材自らは圧縮変形、伸長変形あるいはせん断変形を受ける役割を担い、機能層の曲部の伸縮変形を抑制する役割を果たすのも本製造方法の特徴である。この場合の樹脂基材が面方向にそれぞれの変形を受ける度合いは、後述のとおり伸長率(ΔLx)で表すことができる。その好ましい範囲を、圧縮変形、伸長変形あるいはせん断変形の場合について、それぞれの製造方法と併せて順に記載する。
(圧縮変形)
本成形体において、樹脂板を圧縮変形することにより曲げ加工する場合、樹脂板のうち圧縮変形を受け持つ部分、即ち拘束物で密着拘束される側とは対称側に配置される部分を十分に可塑化しておくことが好ましい。したがって、本製造方法においては、樹脂板を、そのガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下の温度で加熱すれば、樹脂板を圧縮変形させるのに十分に可塑化することができるので好ましい。前述のとおり樹脂板が、異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層を少なくとも2層有してなる場合には、最も高いガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下で加熱すれば、いずれの樹脂層も圧縮変形させるのに十分に可塑化することができるので好ましい。
この場合、樹脂基材が面方向に圧縮変形を受ける度合いは、下式(2)で求められる伸長率(ΔLx)で表すことができる。正の数値は面方向への伸長変形の度合い、負の数値は面方向への圧縮変形の度合いを意味する。
ΔLx(%)=(成形前の樹脂基材の厚み−成形体曲部の樹脂基材の厚み)/成形前の樹脂基材の厚み×100 …(2)
ただし樹脂基材が、異なる樹脂層を少なくとも2層積層してなる場合は、拘束物で拘束される側の機能層とは対称側の最外層に配置される樹脂層の厚みを、上式(2)における樹脂基材の厚みとする。即ち樹脂板の構成が、機能層/樹脂層A/樹脂層Cの場合は、樹脂層Cの厚みを樹脂基材の厚みとして、伸長率(ΔLx)を求める。
伸長率(ΔLx)、即ち樹脂基材が面方向に圧縮変形を受ける度合いは、成形体における曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下の範囲においては、好ましくは−50%以上、0%未満である。
ΔLxが−50%以上であれば、樹脂基材に生じる歪みが、所望の形状に曲げ加工するのを妨げることがないので好ましい。かかる観点から、−30%以上であることがより好ましく、−20%以上であることがさらに好ましい。一方、ΔLxが0%未満であれば、曲げ加工時の機能層における面方向への伸縮が抑制されて、機能層にクラックや性能低下が生じることがないので好ましい。かかる観点から、ΔLxの上限値は、−3%未満であることがさらに好ましい。
上述のように、拘束物で密着拘束された部分以外の部分を圧縮変形することにより曲げ加工する場合、少なくとも成形体の凸面となる側を拘束物で密着拘束することにより、ΔLxを上記範囲に調整することができる。また、樹脂板を機能層/樹脂基材の二層構成からなる積層構成とした場合、該樹脂板のうち少なくとも機能層を有する片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、曲部で樹脂基材を圧縮変形させることにより、凸面に該機能層を有する成形体を得ることができるので好ましい。
(伸長変形)
本成形体において、樹脂板を伸長変形することにより曲げ加工する場合、上記圧縮変形の場合と同様に、樹脂板のうち伸長変形を受け持つ部分、即ち拘束物で密着拘束される側とは対称側に配置される部分を十分に可塑化しておくことが好ましい。したがって、本製造方法においては、樹脂板を、そのガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下の温度で加熱すれば、樹脂板を伸長変形させるのに十分に可塑化することができるので好ましい。前述のとおり樹脂板が、異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層を少なくとも2層有してなる場合には、最も高いガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下で加熱すれば、いずれの樹脂層も伸長変形させるのに十分に可塑化することができるので好ましい。
この場合、樹脂基材が面方向に伸長変形を受ける度合いは、下式(2)で求められる伸長率(ΔLx)で表すことができる。正の数値は面方向への伸長変形の度合い、負の数値は面方向への圧縮変形の度合いを意味する。
ΔLx(%)=(成形前の樹脂基材の厚み−成形体曲部の樹脂基材の厚み)/成形前の樹脂基材の厚み×100 …(2)
ただし樹脂基材が、異なる樹脂層を少なくとも2層積層してなる場合は、拘束物で拘束される側の機能層とは対称側の最外層の内側に配置される樹脂層の厚みを、上式(2)における樹脂基材の厚みとする。即ち樹脂板の構成が、機能層/樹脂層A/樹脂層Cの場合は、樹脂層Aの厚みを樹脂基材の厚みとして、伸長率(ΔLx)を求める。
伸長率(ΔLx)、即ち樹脂基材が面方向に伸長変形される度合いは、成形体における曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下の範囲においては、好ましくは1%以上、45%未満である。
ΔLxが1%以上であれば、樹脂基材に生じる歪みが、所望の形状に曲げ加工するのを妨げることがないので好ましい。かかる観点から、3%以上であることがさらに好ましく、5%以上であることが特に好ましい。一方、伸長率が45%未満であれば、曲げ加工時の機能層における面方向への伸縮が抑制されて、機能層にクラックや性能低下が生じることがないので好ましい。かかる観点から、ΔLxの上限値は、25%未満であることがより好ましく、15%未満であることがさらに好ましい。
上述のように、拘束物で密着拘束された部分以外の部分を伸長変形することにより曲げ加工する場合、少なくとも成形体の凹面となる側を拘束物で密着拘束することにより、ΔLxを上記範囲に調整することができる。また、樹脂板を機能層/樹脂基材の二層構成からなる積層構成とした場合、該樹脂板のうち少なくとも機能層を有する片側表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、前記機能層の曲部の伸縮変形を抑制する一方で、曲部で樹脂基材を伸長変形させることにより、凹面に該機能層を有する成形体を得ることができるので好ましい。
(せん断変形)
本成形体において、樹脂板をせん断変形することにより曲げ加工する場合、両面を拘束物で密着拘束された樹脂板を、そのガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下の温度で加熱すれば、樹脂板をせん断変形させるのに十分に可塑化することができるので好ましい。前述のとおり樹脂板が、異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層を少なくとも2層有してなる場合には、最も高いガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下で加熱すれば、いずれの樹脂層もせん断変形させるのに十分に可塑化することができるので好ましい。
せん断変形が起こる場合、樹脂基材が面方向に伸縮変形される度合いは、下式(2)で求められる伸長率(ΔLx)で表すことができる。正の数値は面方向への伸長変形の度合い、負の数値は面方向への圧縮変形の度合いを意味する。
ΔLx(%)=(成形前の樹脂基材の厚み−成形体曲部の樹脂基材の厚み)/成形前の樹脂基材の厚み×100 …(2)
ここで、樹脂基材が、異なる樹脂層を少なくとも2層積層してなる場合は、それらの厚みの合計を樹脂基材の厚みとする。即ち樹脂板の構成が、機能層/樹脂層A/樹脂層C/機能層の場合は、樹脂層Aと樹脂層Cの厚みの合計を樹脂基材の厚みとして、伸長率(ΔLx)を求める。
樹脂基材の伸長率(ΔLx)、即ち樹脂基材が面方向に伸縮変形される度合いは、成形体における曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下の範囲においては、好ましくは−10%以上、10%未満である。
ΔLxが−10%以上であれば、樹脂基材に生じる歪みが、所望の形状に曲げ加工するのを妨げることがないので好ましい。かかる観点から、−7%以上であることがさらに好ましく、−5%以上であることが特に好ましい。一方、伸長率が10%未満であれば、曲げ加工時の機能層における面方向への伸縮が抑制されて、機能層にクラックや性能低下が生じることがないので好ましい。かかる観点から、7%未満であることがさらに好ましく、5%未満であることが特に好ましい。
上述のように、樹脂板をせん断変形することにより曲げ加工する場合、成形体の凸面側および凹面側となる両表面を拘束物で密着拘束したまま曲げ加工して、樹脂板のみを面方向にせん断変性することにより、ΔLxを上記範囲に調整することができる。また、樹脂板を機能層/樹脂基材/機能層の三層構成からなる積層構成とした場合、凸面側および凹面側となる両表面を拘束物で密着拘束する一方で、曲部で樹脂基材をせん断変形させることにより、凸面および凹面の両方に該機能層を有する成形体を得ることができるので好ましい。
上記、圧縮変形、伸長変形、せん断変形いずれの場合も、成形方法としては、プレス成形機などの成形装置を用いて成形する手法が好ましい例として挙げられる。プレス成形機による成形手法は、樹脂板の端部を保持せずとも賦形することが可能であるため、例えば樹脂板が異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層を少なくとも2層有してなる場合は、最も高いガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度−20℃以上、ガラス転移温度+50℃以下の温度で樹脂板を加熱すれば、いずれの樹脂層も可塑化させて成形することができる。即ち、上記手法によれば、機能層の端部も保持されることがないので、伸縮させたくない、あるいは伸縮させることが困難な機能層の伸縮を抑制しつつ、可塑化させた樹脂基材または樹脂層を曲げて樹脂板を賦形することが可能となり、その結果、機能層にクラックを生じさせることなく、機能が維持された成形体を得ることができるので好ましい。
また、プレス成形機などの成形装置を用いて、樹脂板を雄型と雌型の間に挟んで型締めすることにより曲げ加工する場合は、雄型の高さが成形体の高さよりも大きく設定された成形型を用いることが好ましい条件として挙げることができる。雄型の高さが成形体の高さよりも大きく設定されていれば、樹脂板の端部が固定されることがなく、機能層が面方向に伸長されるのを抑制できるので好ましい。ここで、成形型の材質は、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されず、例えば金属製の金型を用いることができる。
成形後に保護フィルムを取り除く方法は、機能層の表面に粘着剤が残ることがなければ、特に制限されない。例えば、前述のように、粘着剤が電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を照射することにより硬化する高分子系化合物を主成分とする場合には、成形体から保護フィルムを取り除く直前に、電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を照射して硬化させれば、素早く、かつ機能層の表面に粘着剤を残すことなく保護フィルムを剥がすことができる。
図1は、樹脂板および拘束物からなる成形用樹脂板の一実施形態の構成を図示したものであり、図1の(a)では、樹脂層A(13)および樹脂層B−1(14)の二層からなる樹脂板の樹脂層B−1(14)側表面を拘束物(15)で密着拘束した成形用樹脂板(11)を例示している。
図1の(b)では、樹脂層C(12)、樹脂層A(13)、および樹脂層B−1(14)の三層からなる樹脂板の樹脂層B−1(14)側表面を拘束物(15)で密着拘束した成形用樹脂板(16)を例示している。
図1の(c)では、樹脂層B−2(18)、樹脂層C(12)、樹脂層A(13)、および樹脂層B−1(14)の四層からなる樹脂板の樹脂層B−1(14)側表面を拘束物(15)で密着拘束した成形用樹脂板(17)を例示している。
図1の(d)では、樹脂層B−2(18)、樹脂層C(12)、樹脂層A(13)、および樹脂層B−1(14)の四層からなる樹脂板の両面を拘束物(15)で密着拘束した成形用樹脂板(19)を例示している。
図2の(a)は、本成形体の一実施形態であるトンネル形状に曲げ加工して凸面側に機能層を有する成形体(正面図)を図示したものであり、機能層(21)と樹脂基材(22)とからなるトンネル形状成形体の平坦部(23)、成形体の曲部の丸み(R)(24)、および、成形体の曲部の中央部分(25)を例示している。
図2の(b)は、本成形体の一実施形態であるトンネル形状に曲げ加工して凹面側に機能層を有する成形体(正面図)を図示したものであり、機能層(21)と樹脂基材(22)からなるトンネル形状成形体を例示している。
図3は、本発明にかかる成形体を賦形するための成形型について、一実施形態の構成を図示したものであり、図3の(a)では、成形用金型(31)の雄型(32)と雌型(33)において、型締め時に生じる平坦部のクリアランス(34)と曲部のクリアランス(35)をそれぞれ例示している。
さらに図3の(b)では、上述の成形用金型(31)を用いて、樹脂板を型締めすることにより賦形される成形体(37)において、成形用金型(31)の雄型の高さ(36)が、成形体高さ(38)よりも大きく設定される構成について例示している。
このことにより、樹脂板の端部が固定されることなく、樹脂基材表面もしくは樹脂基材上に設けた機能層が面方向に伸長されるのを抑制することができる。
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K−6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
<測定および評価方法>
実施例・比較例で得られた樹脂層、樹脂板、および成形体の各種物性値の測定方法および評価方法について説明する。
(樹脂層のガラス転移温度(Tg)、貯蔵弾性率)
実施例および比較例で得られた樹脂層について、下記の装置を用いてJIS K−7198A法にしたがって動的粘弾性測定を行った。樹脂層Aおよび樹脂層Cについては、損失正接(tanδ)のピーク温度を読み取り、各樹脂層のガラス転移温度(Tg)とした。また、樹脂層B−2については、樹脂層Aおよび樹脂層Cのうち、いずれか高い方のガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度における貯蔵弾性率を読み取った。
装置:動的粘弾性測定装置 DVA−200(アイティ計測制御社製)
チャック間距離:25mm
歪み:0.1%
温度範囲:−50℃〜250℃
昇温速度:3℃/min
周波数:10Hz
なお、樹脂層Aおよび樹脂層Cについては、樹脂組成物a、あるいはcを、それぞれ単層用Tダイを取り付けた押出機に供給し、各押出機において240℃および260℃で溶融混練した後、厚み200μmの単層構成のシート状サンプルを作製し、測定用サンプルに用いた。
また、樹脂層B−2については、12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に厚み30μmの樹脂層B−2を形成させたサンプルを作製し、これを測定用サンプルに用いた。なお、樹脂層B−2を形成させる際の乾燥条件、硬化条件は、それぞれの実施例および比較例と同様にした。
(樹脂層の鉛筆硬度)
実施例および比較例で得られた樹脂層について、表面の鉛筆硬度の測定をJIS K−5600−5−4に準拠して行った。試験時の負荷荷重は750gfとした。
(樹脂層B−1表面のユニバーサル硬度)
実施例および比較例で得られた樹脂層B−1表面について、次の装置、条件により、押込み深さを測定して、下式(3)に代入してユニバーサル硬度を計算した。
装置:ダイナミック超微小硬度計「DUH−W201」(島津製作所社製)
圧子:三角錐圧子 稜間角115度
試験力:20mN
負荷速度:0.142mN/秒
保持時間:5秒
ユニバーサル硬度(MPa)=37.838×試験力(mN)/(押込み深さ(μm))…(3)
(拘束層Dの貯蔵弾性率)
実施例および比較例の保護フィルムの拘束層D(この場合、粘着剤層)について、下記の装置、測定条件を用いて動的粘弾性測定を行い、樹脂層Aおよび樹脂層Cのうち、いずれか高い方のガラス転移温度を有する樹脂層のガラス転移温度における該粘着剤の貯蔵弾性率を読み取った。なお、各保護フィルムの粘着剤を1〜2mm厚みになるよう積層した上で、直径20mmの円状に打ち抜いて粘着治具に挟んだものを測定に用いた。
装置:レオメータ MARS(英弘精機社製)
粘着治具:φ20パラレルプレート
歪み:0.5%
温度範囲:−50℃〜200℃
昇温速度:3℃/min
周波数:1Hz
(成形体外観)
実施例および比較例で得られた拘束物を貼合した樹脂板を、樹脂層B−1側を上にして雄型に載せた状態で、雄型ごと加熱用オーブン内で加熱を行う。その後、同じ条件で加熱を行った雌型を、樹脂板の上に載せて下記の成形装置にセットしてプレス成形、冷却を行い、拘束物を取り除くことにより、樹脂層B−1が凸面側に配置されてなるトンネル形状の本成形体を得た。成形型には下記の装置、成形金型を用いた。また、加熱時の設定温度、時間と、プレス成形時のプレス板温度、圧力および時間を表1に示す。
成形装置:プレス装置 KVHC(北川精機社製)
成形金型:トンネル形状
雄型サイズ;平坦部縦120mm×平坦部横50mm×高さ8mm
雌型曲部の丸み R:4、6、8あるいは20mm
曲部のクリアランス:0.340mm
平坦部のクリアランス:0.340mm
成形体高さ:5mm
ここで、クリアランスは成形金型を型締めした時の雄型と雌型との間隙をさす。
得られた成形体について、外観のチェックを目視で行い、下記評価基準に基づいて成形体外観の評価を行った。
○:成形体にクラックや割れがない
×:成形体にクラックもしくは割れがある
(成形体の曲部の伸長率(ΔL))
実施例および比較例で得られた成形体において、下記の装置を用いて断面観察を行い、成形体の曲部の中央部分の成形体の厚みを読み取り、成形体の曲部の厚みとした。また、成形に用いる樹脂板についても断面観察を行い、その厚みを読み取り、成形前の樹脂板の厚みとした。得られた数値を、下式(1)に代入して、成形体の曲部の伸長率(ΔL)を求めた。
断面観察装置:マイクロスコープ VHX−600型(キーエンス社製)
観察倍率:250倍
ΔL(%)=(成形前の樹脂板の厚み−成形体の曲部の厚み)/成形前の樹脂板の厚み×100…(1)
(成形体の曲部における樹脂基材の伸長率(ΔLx))
実施例および比較例で得られた成形体において、前記と同様にして断面観察を行い、成形体の曲部の中央部分の樹脂基材について厚みを読み取り、成形体の曲部の樹脂基材の厚みとした。また、成形に用いる樹脂板の断面観察を行い、その樹脂基材について厚みを読み取り、成形前の樹脂基材の厚みとした。得られた数値を、下式(2)に代入して、成形体の曲部における樹脂基材の伸長率(ΔLx)を求めた。
ΔLx(%)=(成形前の樹脂基材の厚み−成形体曲部の樹脂基材の厚み)/成形前の樹脂基材の厚み×100…(2)
ここで実施例および比較例で行った加工の種類、即ち圧縮変形、伸長変形およびせん断変形に応じて、対象となる樹脂層の厚みを測定し樹脂基材の厚みとして、伸長率(ΔLx)を求める。
<実施例1>
(樹脂組成物aの作製)
アクリル系樹脂A(三菱レイヨン社製、商品名「アクリペット VH001」)のペレットをそのまま樹脂組成物aとした。
(樹脂基材の作製)
上記樹脂組成物aを押出機Aに供給し、押出機において240℃で溶融混練した後、250℃に加熱された単層用Tダイを用いて、樹脂層Aの単層構成のシート状に押出し、冷却固化して、厚み310μmの樹脂基材を得た。得られた樹脂基材即ち樹脂層Aの表面について鉛筆硬度の評価を行った。その結果を表2に示す。
(樹脂板の作製)
得られた樹脂基材の片側表面に有機・無機ハイブリッド系紫外線硬化性樹脂組成物b−1(MOMENTIVE社製、商品名「UVHC7800G」、反応性官能基を有する無機シリカ含有量:30〜40質量%)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥後、500mJ/cmの露光量で露光し、厚み10μmの樹脂層B−1を備えた樹脂板を得た。得られた樹脂板の樹脂層B−1の表面について鉛筆硬度とユニバーサル硬度の評価を行った。その結果を表2に示す。
(拘束物と樹脂板の密着貼合操作)
樹脂板の樹脂層B−1の表面に、拘束物として保護フィルムd−1(基材層;ポリエチレンテレフタレート系樹脂;厚み50μm、曲げ弾性率3050MPa、粘着剤層;アクリル系粘着剤;厚み5μm)の粘着剤層面を合わせた後、厚さ8mmのポリカーボネート樹脂プレート上に載せて、そのままラミネート装置に通してラミネーションを行い、成形用樹脂板を得た。下記に、ラミネート条件を示す。
ロール構成:上・下とも金属ロール
ロール間クリアランス:8mm
ラミネート圧力:0.3MPa
通紙速度:1.0m/分
(成形体の作製)
得られた成形用樹脂板を用いて、成形条件1により熱成形を行い、樹脂層B−1が凸面側に配置されてなるトンネル形状の保護フィルム付成形体を得た。該保護フィルム付成形体から保護フィルムを取り除くことにより得られた成形体について、成形体外観、成形体の曲部の伸長率、および樹脂基材の曲部の伸長率の評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例2>
実施例1の成形体の作製において、成形条件2により熱成形を行った点を除いて、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、樹脂板の樹脂層B−1の表面の拘束物として保護フィルムd−2(基材層;ポリエチレンテレフタレート系樹脂;厚み25μm、曲げ弾性率3030MPa、粘着剤層;アクリル系粘着剤;厚み3μm)を用いた。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例3>
(樹脂組成物aの作製)
アクリル系樹脂A(Arkema社製、商品名「Altuglas HT121」、硬質分散相含有)のペレットをそのまま樹脂組成物aとした。
(樹脂組成物cの作製)
ポリカーボネート系樹脂(住化スタイロン社製;商品名「CALIBRE301−4」)のペレットと、ポリカーボネート系樹脂(住化スタイロン社製;商品名「SDポリカ SP3030」)のペレットと、ポリエステル系樹脂(SKケミカル社製;商品名「SKYGREEN J2003」)のペレットとを55:25:20の質量割合で混合した後、260℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物cを作製した。
(樹脂基材の作製)
上記樹脂組成物a、cをそれぞれ、押出機AおよびBに供給し、各押出機において、240℃および260℃で溶融混練した後、250℃に加熱された2種2層用のTダイに合流させ、樹脂層A/樹脂層Cの2層構成になるようにシート状に押出し、冷却固化して、厚み600μm(樹脂層A:80μm、樹脂層C:520μm)の樹脂基材を得た。得られた樹脂基材の樹脂層Aの表面について鉛筆硬度の評価を行った。その結果を表2に示す。
(樹脂板の作製)
得られた樹脂基材の樹脂層A側の表面に有機・無機ハイブリッド系紫外線硬化性樹脂組成物b−1(MOMENTIVE社製、商品名「UVHC7800G」、反応性官能基を有する無機シリカ含有量:30〜40質量%)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥後、500mJ/cmの露光量で露光し、厚み9μmの樹脂層B−1を備えた樹脂板を得た。得られた樹脂板の樹脂層B−1の表面について鉛筆硬度とユニバーサル硬度の評価を行った。その結果を表2に示す。
(拘束物と樹脂板の密着貼合操作)
実施例1と同様にして、樹脂板の樹脂層B−1の表面に拘束物を貼合した成形用樹脂板を作製した。なお、拘束物として保護フィルムd−3(基材層;ポリエチレンテレフタレート系樹脂;厚み50μm、曲げ弾性率3050MPa、粘着剤層;アクリル系粘着剤;厚み3μm)を用いた。
(成形体の作製)
実施例1の成形体の作製において、金型曲部および平坦部のクリアランスをそれぞれ0.660mmとした点と、成形条件3により熱成形を行った点を除いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例4>
実施例3において、成形条件4により熱成形を行って成形体を得た点を除いて、実施例3と同様にして成形体を得た。なお、樹脂板の樹脂層B−1の表面の拘束物として保護フィルムd−4(基材層;ポリエチレンテレフタレート系樹脂;厚み25μm、曲げ弾性率3030MPa、粘着剤層;アクリル系粘着剤;厚み5μm)を用いた。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例5>
実施例4において、成形条件5により熱成形を行って成形体を得た点を除いて、実施例4と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例6>
実施例3において、樹脂層B−1の厚みを25μmとして樹脂板を製作した点と、成形体の作製において、成形条件6により熱成形を行った点を除いて、実施例3と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例7>
実施例3の成形体の作製において、樹脂層B−1側を下にして雄型に載せた状態で、雄型ごと加熱用オーブン内で加熱して、その後、同じ条件で加熱を行った雌型を、樹脂板の上に載せた点と、成形条件6により熱成形を行った点を除いて、実施例3と同様して、樹脂層B−1が凹面側に配置されてなるトンネル形状の成形体を得た。なお、拘束物として保護フィルムd−4を用いた。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例8>
実施例3において、樹脂層Cの表面のうち、樹脂層Aが積層された側とは反対の面にウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂組成物b−2(大成ファインケミカル社製、商品名「8BR−500」)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥後、500mJ/cmの露光量で露光し、厚み8μmの樹脂層B−2を備えた樹脂板を製作した点と、成形条件6により熱成形を行って成形体を得た点を除いて、実施例3と同様にして成形体を得た。なお、拘束物として、樹脂層B−1側のみ保護フィルムd−4を用いた。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<実施例9>
(樹脂板の作製)
実施例3において、樹脂層Cの表面のうち、樹脂層Aが積層された側とは反対の面にウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂組成物b−2(亜細亜工業社製、商品名「RUA−071」)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥後、500mJ/cmの露光量で露光し、厚み8μmの樹脂層B−2を備えた樹脂板を得た。
(拘束物と樹脂板の密着貼合操作)
実施例3において、樹脂板の樹脂層B−2の表面にも拘束物を貼合して成形用樹脂板とした。なお、樹脂層B−1および樹脂層B−2の拘束物として、保護フィルムd−4を用いた。
(成形体の作製)
成形条件6により熱成形を行って成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<比較例1>
実施例3において、保護フィルムを樹脂層B−1表面に密着貼合しなかった点を除いて、実施例3と同様にして成形体を得ようとしたが、特に樹脂層B−1の曲部にクラックが生じて、外観の良好な成形体を得ることができなかった。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。ただし、樹脂層B−1にクラック、破断が生じているので、伸長率ΔLの測定は困難であった。
<比較例2>
実施例9において、保護フィルムを樹脂層B−2表面に密着貼合しなかった点を除いて、実施例9と同様にして成形体を得ようとしたが、特に樹脂層B−2の曲部にクラックが生じて、外観の良好な成形体を得ることができなかった。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。ただし、樹脂層B−2にクラック、破断が生じているので、伸長率ΔLの測定は困難であった。
<比較例3>
実施例3の拘束物と樹脂板の密着貼合操作において、樹脂板の樹脂層B−1の表面に、拘束物としてPETフィルム(基材層;ポリエチレンテレフタレート系樹脂;厚み50μm、曲げ弾性率3000MPa、粘着剤層;無)を合わせて、成形用樹脂板とした点を除いて、実施例3と同様にして成形体を得ようとしたが、樹脂層B−1に、また一部は樹脂層Cまでにわたるクラックが生じて、外観の良好な成形体を得ることができなかった。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。ただし、樹脂層B−1、および樹脂層Cにまでクラック、破断が生じているので、伸長率ΔLおよびΔLxの測定は困難であった。
<比較例4>
実施例7において、保護フィルムを樹脂層B−1表面に密着貼合しなかった点を除いて、実施例7と同様にして成形体を得ようとしたが、特に樹脂層B−1の曲部にクラックが生じて、外観の良好な成形体を得ることができなかった。得られた成形体について、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。ただし、樹脂層B−1にクラック、破断が生じているので、伸長率ΔLの測定は困難であった。
表2から明らかなように、実施例1〜9の本発明の成形体は、樹脂層B−1表面の硬度が5H以上で優れた硬度を備え、かつその外観は熱成形時に白化やクラック、発泡などが起こることなく良好な成形体を得られることが判った。一方、比較例1〜4の積層体は、樹脂層B−1表面の鉛筆硬度が5H以上で優れた硬度は備えるものの、熱成形時に樹脂層B−1、樹脂層Cあるいは樹脂層B−2にクラック、破断が生じ、優れた外観を備える成形体を得ることができなかった。
本発明が提案する成形体の製造方法は、曲げ加工により優れた表面特性と外観とを損なうことなく、かつ様々な曲部の丸み(R)を有する複雑な形状に成形し得る。したがって本製造方法により得られる成形体は、画像表示装置の前面側(視認側)に配置して用いられる表面保護パネル、特にタッチパネル機能を有する携帯電話や液晶ペンタブレット等のフロントカバー材に好適に用いられる。
11、16、17、19:成形用樹脂板
12 :樹脂層C
13 :樹脂層A
14 :樹脂層B−1
15 :拘束物
18 :樹脂層B−2
21 :機能層
22 :樹脂基材
23 :平坦部
24 :成形体の曲部の丸み(R)
25 :成形体の曲部の中央部分
31 :成形用金型
32 :雄型
33 :雌型
34 :平坦部のクリアランス
35 :曲部のクリアランス
36 :雄型の高さ
37 :成形体
38 :成形体高さ

Claims (15)

  1. 樹脂基材と、該樹脂基材の少なくとも片側表面に積層された機能層と、からなる樹脂板の前記機能層表面を保護フィルムで密着拘束したまま曲げ加工することを特徴とする成形体の製造方法であって、
    該機能層が、樹脂層Bからなる高硬度層であり、
    前記保護フィルムは少なくとも基材層と拘束層Dとを備えてなり、
    前記拘束層Dは粘着剤層であって、
    前記樹脂層Bは硬化性樹脂組成物から形成され、
    前記樹脂基材は熱可塑性樹脂組成物から形成され、
    前記高硬度層の表面硬度がユニバーサル硬度で200MPa以上である、
    ことを特徴とする成形体の製造方法。
  2. 前記曲げ加工後に凸面側および凹面側を形成する前記樹脂板の両表面を密着拘束したまま曲げ加工することを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
  3. 前記成形体の曲部が圧縮変形されていることを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
  4. 前記成形体の曲部が伸長変形されていることを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
  5. 前記成形体の曲部がせん断変形されていることを特徴とする請求項2に記載の成形体の製造方法。
  6. 前記成形体において曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下であり、下式(1)で表される曲部の伸長率(ΔL)が、−40%以上、4%未満であることを特徴とする請求項3に記載の成形体の製造方法。
    ΔL(%)=(成形前の樹脂板の厚み−成形体の曲部の厚み)/成形前の樹脂板の厚み×100…(1)
  7. 前記成形体において曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下であり、下式(1)で表される曲部の伸長率(ΔL)が、0%以上、40%未満である請求項4に記載の成形体の製造方法。
    ΔL(%)=(成形前の樹脂板の厚み−成形体の曲部の厚み)/成形前の樹脂板の厚み×100…(1)
  8. 前記成形体において曲部の丸み(R)が2mm以上、200mm以下であり、下式(1)で表される曲部の伸長率(ΔL)が、−7%以上、7%未満である請求項5に記載の成形体の製造方法。
    ΔL(%)=(成形前の樹脂板の厚み−成形体の曲部の厚み)/成形前の樹脂板の厚み×100…(1)
  9. 前記保護フィルムにおいて、該保護フィルムの曲げ弾性率(MPa)と該保護フィルムの厚み(m)との積が、3.0×10−2MPa・m以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  10. 前記樹脂層Bの表面の鉛筆硬度が5H以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  11. 前記硬化性樹脂組成物が有機・無機ハイブリッド系硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  12. 前記樹脂基材は、異なる熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂層を少なくとも2層有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  13. 前記樹脂基材の前記樹脂層Bが積層されている側表面の鉛筆硬度が、3H以上5H以下であることを特徴とする、請求項1〜1のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  14. 前記基材層が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂のいずれかからなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  15. 前記粘着剤層の貯蔵弾性率が、前記樹脂板のガラス転移温度において、1.0×10 Pa以上、1.0×10 Pa以下である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
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