JP6310884B2 - 摺動部品 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動部品に関する。
オキシメチレン樹脂は、摺動性、耐クリープ性及び引張強度や曲げ強度等の機械的強度に優れている事から、自動車分野、電子・電気分野、建材分野などの機構部品に多く用いられている。
これらの機構部品、特に自動車部品におけるブッシュやワッシャー等の摺動部品においては、機構部品の軽量化及び省スペース化の観点から、薄肉化が重要である。しかし、摺動部品には一定の摺動面圧及び摺動線速度がかかるため、特に高温下での摺動により摩耗が進行する。これによって摺動性が低下し、更には破れ等の問題が発生することが懸念される。このため、薄肉化した場合であっても、高温下での摺動時における摺動安定性(長時間の摺動時に摩擦係数の変化が小さいこと)及び耐久性(長期間の摺動時に破れが発生しないこと)の両立が求められている。
このような課題に対し、オキシメチレン樹脂の摺動安定性を高めるために、種々の検討がなされている。例えば、オキシメチレン樹脂、脂肪酸及びリン酸塩からなる組成物により、摺動安定性が改善されることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、オキシメチレン樹脂と粉末状タルク、ウイスカー状の充填物及び高級脂肪酸とを含む組成物により、反り変形防止性、剛性及び摺動特性が改善され、精密機器組立用基板の材料として適することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、オキシメチレン樹脂、セルロース繊維等からなる組成物により、摺動安定性、剛性、熱伝導性、制振性が改善されるという報告がなされている(例えば、特許文献3参照)。
特開昭62−45662号公報 特開平5−255571号公報 特開2010−265438号公報
しかし、上記特許文献1〜3に開示されているオキシメチレン樹脂組成物を用いた場合であっても、部品を薄肉化すると、高温下で長期間使用した際に破れが発生することがあるため、十分な薄肉化を達成することはできていない。
そこで本発明は、薄肉化した部品であっても、高温環境下における耐久性を有するオキシメチレン樹脂製摺動部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、特定のオキシメチレン樹脂組成物を用いて、特定の厚みを持つ摺動部品が、省スペースかつ高温環境下における優れた耐久性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
ポリオキシメチレンホモポリマー100質量部と、全炭素数が10以上である脂肪酸エステルを0.5〜2.5質量部とを含み、厚みが0.5〜1.5mmであり、50〜110℃で使用される摺動部品。
[2]
厚みが0.5〜1.0mm未満である、[1]に記載の摺動部品。
[3]
摺動時の面圧が0.2〜5MPaで用いられる、[1]又は[2]に記載の摺動部品。
[4]
摺動線速度が1〜150mm/秒で用いられる、[1]〜[3]のいずれかに記載の摺動部品。
[5]
摺動部の接触面積が50〜3000mm2である、[1]〜[4]のいずれかに記載の摺動部品。
[6]
前記脂肪酸エステルが25℃で固体である、[1]〜[5]のいずれかに記載の摺動部品。
[7]
前記脂肪酸エステルがジエステルである、[1]〜[6]のいずれかに記載の摺動部品。
[8]
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される摺動部品であり、該オキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレートが2〜8g/10分である、[1]〜[7]のいずれかに記載の摺動部品。
[9]
自動車に用いられる、[1]〜[8]のいずれかに記載の摺動部品。
[10]
アクセルペダルモジュール中のブッシュ若しくはワッシャー、ブレーキペダルモジュール中のブッシュ若しくはワッシャー、又は、パーキングブレーキペダルモジュール中のブッシュ若しくはワッシャーから選ばれる用途に用いられる、[9]に記載の摺動部品。
[11]
射出成形で形成される、[1]〜[10]のいずれかに記載の摺動部品。
[12]
ポリオキシメチレンホモポリマー100質量部と、全炭素数が10以上である脂肪酸エステルを0.5〜2.5質量部とを含み、厚みが0.5〜1.5mmである摺動部品を、50〜110℃で使用する、摺動部品の使用方法。
[13]
前記摺動部品の厚みが0.5〜1.0mm未満である、[12]に記載の摺動部品の使用方法。
本発明の摺動部品は、薄肉化(省スペース化)と高温下での耐久性が必要な用途に好適に利用できる。
本実施形態に係る摺動部品の一例を示した図である。 本実施例で得られた摺動部品の概略図である。 本実施例で得られた摺動部品を評価する相手材の概略図である。 本実施例で得られた摺動部品を評価する装置の概略図である。 摺動部品の温度を定義する点を例示した図である。
本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、以下具体的に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[摺動部品]
本実施形態の摺動部品は、ポリオキシメチレンホモポリマー100質量部と、全炭素数が10以上である脂肪酸エステルを0.5〜2.5質量部とを含み、厚みが0.5〜1.5mmであり、50〜110℃で使用される。
[オキシメチレン樹脂組成物]
本実施形態の摺動部品は、オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される。本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、少なくともポリオキシメチレンホモポリマー(A)及び全炭素数が10以上である脂肪酸エステル(B)を含む。
<ポリオキシメチレンホモポリマー(A)>
ポリオキシメチレンホモポリマーとは、主鎖の構造が実質的に−(CH2O)−のみで構成されるポリマーをいう。ここで「実質的に」とは−(CH2O)−以外の繰り返し単位の含有量が0.1mol%以下であることをいう。
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された摺動部品にポリオキシメチレンホモポリマーが含まれていることの確認方法は、以下に示すとおり、1H−NMR法を用いる。オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された摺動部品を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)により濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させる。この溶解液を用いて1H−NMR解析を行い、オキシメチレン成分aとオキシメチレン成分a以外のコモノマー成分(例えば、オキシアルキレン成分)bとに帰属されるピ−クの積分値の比率から、オキシメチレン成分100mol%に対するコモノマー成分bの割合(b/a)を求めることができる。
(1)重合工程
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の製造は、特に限定されないが、例えば、公知のスラリー重合法(例えば特公昭47−6420公報及び特公昭47−10059公報に記載された方法)を用いて実施することができる。これにより、末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンを得ることができる。
1)モノマー
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の製造に使用するモノマーとしては、特に限定されないが、例えばホルムアルデヒドを用いることができる。所望の分子量を有するポリオキシメチレンホモポリマー(A)を安定かつ継続的に製造するためには、水、メタノール、蟻酸等の不純物を極力含まないホルムアルデヒドガスを用いることが好ましい。これらの不純物が過大に存在すると、予期せぬ連鎖移動反応により、所望の分子量を有するポリオキシメチレンホモポリマー(A)を得ることが困難になる。特にホルムアルデヒド中の水の含有量は100ppm以下であることが好ましく、さらには50ppm以下であることが好ましい。
ホルムアルデヒドの精製方法は公知の方法(例えば特公平5−32374公報及び特表2001−521916公報)を用いることができる。
2)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の製造に使用する連鎖移動剤としては、一般にはアルコール類や酸無水物を用いることができる。また、ブロックポリマーや分岐ポリマーを得るためにポリオール、ポリエーテルポリオール、又はポリエーテルポリオール・アルキレンオキサイドを用いてもかまわない。
また、連鎖移動剤についても不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。特に連鎖移動剤中の水の含有量は2000ppm以下であることが好ましく、さらには1000ppm以下であることが好ましい。これらの不純物の少ない連鎖移動剤を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、連鎖移動剤を乾燥窒素でバブリングし、必要に応じて活性炭やゼオライト等の吸着剤により不純物を除去する方法などが挙げられる。
ここで用いる連鎖移動剤は、一種又は二種類以上併用してもかまわない。
3)重合触媒
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の製造における重合反応に使用する重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、オニウム塩系重合触媒が挙げられる。重合反応に使用するオニウム塩系重合触媒は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表されるものを用いることができる。
[R1234M]+- ・・・(1)
上記一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は各々独立にアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素、Xは求核性基を示す。
上記一般式(1)で表されるオニウム塩系重合触媒のなかでも、第4級アンモニウム塩系化合物や第4級ホスホニウム塩系化合物が好ましく用いられる。さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムアセタート、テトラエチルホスホニウムヨージド、トリブチルエチルホスホニウムヨージドが用いられる。
4)反応器
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の製造における重合の反応器としては、特に限定されないが、例えば、バッチ式の攪拌機付き反応槽、及び連続式のコニーダー、二軸スクリュー式連続押し出し混練機、二軸パドル型連続混合機等を用いることができる。これらの胴の外周は反応混合物を加熱又は冷却できる構造を有することが好ましい。
(2)末端安定化工程
本実施形態に用いるポリオキシメチレンホモポリマー(A)は、重合体連鎖の両末端がエステル基又はエーテル基により安定化されていることが好ましい。
上記粗ポリオキシメチレンの末端安定化をエーテル基で安定化する方法としては、例えば、特公昭63−452号公報に記載の方法が挙げられる。またエステル基で安定化する方法としては、例えば、米国特許第3,459,709号明細書に記載の、酸無水物を用いてスラリー状態で行う方法と、米国特許第3,172,736号明細書に記載の酸無水物のガスを用いて気相で行う方法とが挙げられる。本実施形態においては、上記いずれの方法も採用でき、特に限定されるものではない。
エーテル基で安定化する際に用いるエーテル化剤としては、オルトエステルが通常用いられる。具体的には特に限定されないが、例えば、脂肪族酸又は芳香族酸と、脂肪族アルコール、脂環式族アルコール又は芳香族アルコールとのオルトエステルが挙げられる。このようなオルトエステルの具体例としては、特に限定されないが、例えば、メチル又はエチルオルトホルメート、メチル又はエチルオルトアセテート及びメチル又はエチルオルトベンゾエート、ならびにオルトトカーボネート、例えばエチルオルトカーボネートが挙げられる。
エーテル化反応は、特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、酢酸及び臭化水素酸のような中強度有機酸、ジメチル及びジエチルスルフェートのような中強度鉱酸等のルイス酸型の触媒をエーテル化剤1質量部に対して0.001〜0.02質量部導入して行う反応が挙げられる。
エーテル化反応に用いる好ましい溶媒は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼン等の低沸点脂肪族、脂環式族及び芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化低級脂肪族化合物等の有機溶媒が挙げられる。
一方、重合体の末端をエステル基で安定化する場合、エステル化に用いられる有機酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表される有機酸無水物が挙げられる。
5COOCOR6 ・・・(2)
上記一般式(2)中、R5及びR6は、各々独立にアルキル基を示す。R5及びR6は、同じであっても異なっていてもよい。
上記一般式(2)で表される有機酸無水物の中でも、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等が好ましく、無水酢酸が特に好ましい。有機酸無水物は1種でもよいが2種以上を用いることも可能である。
なお、気相でエステル基による安定化を行う方法においては、粗ポリオキシメチレン中にオニウム塩系重合触媒が残留していると、該触媒が粗ポリオキシメチレンの分解反応を促進してしまう。そのため、安定化反応におけるポリマー収率を著しく低下させるとともに、粗ポリオキシメチレンを着色させるという問題が特に顕著に現れることがある。したがって、特開平11−92542号公報記載の方法によって、オニウム塩系重合触媒を除去した後に末端の安定化を行うことが特に好ましい。
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の末端は、エーテル基又はエステル基で安定化することにより、末端水酸基の濃度が5×10-7mol/g以下に低減されることが、熱安定性の観点から好ましい。より好ましくは末端水酸基の濃度は0.5×10-7mol/g以下である。
(3)造粒工程
末端安定化を行ったポリオキシメチレンホモポリマー(A)のパウダーは、乾燥を行った後、取扱い性を向上させるために押出機を用いて造粒してもよい。このとき、通常ポリオキシメチレンホモポリマー(A)に添加することが可能な公知の安定剤を加えながら溶融混合し、造粒を行うことが好ましい。溶融混練を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、不活性ガスによる置換、ならびに一段及び多段ベントによる脱気をすることが好ましい。溶融混練の際の温度は、ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の融点以上250℃以下とすることが好ましい。
<脂肪酸エステル(B)>
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、全炭素数10以上の脂肪酸エステル(B)を含む。ここで脂肪酸エステル(B)は、脂肪族アルコールの水酸基と脂肪酸のカルボキシル基とが縮合してエステル結合を形成した化合物をいう。
ここでいう脂肪族アルコールとは、脂肪族炭化水素の水素原子を水酸基で置換した形態の化合物である。具体的には、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、2−ペンタノール、n−ペプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ビニルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、アリルカルビノール等の飽和・不飽和モノアルコール、
エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、β−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ブタンジオール、γ−ペンチレングリコール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、2−メチル−2−オキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−イソプロピル−2−オキシメチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、アドニット、アリット等の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
この中でも、全炭素数8〜18の脂肪族飽和炭化水素系のアルコールが好ましい。
ここでいう脂肪酸とは、脂肪族炭化水素の一部をカルボキシル基で置換した形態の化合物である。カルボキシル基の数によって、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等がある。
モノカルボン酸の具体例として、特に限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸の具体例として、特に限定されないが、例えば、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、リシノレン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
この中でも、全炭素数4〜18の脂肪酸が好ましい。
本実施形態においては、脂肪酸エステル(B)の分子内に含まれる全炭素数は、10以上であり、20以上であることが好ましく、28以上であることがより好ましい。全炭素数が10以上である脂肪酸エステル(B)を用いることにより、摺動時の耐久性に優れる。また脂肪酸エステル(B)の分子内に含まれる全炭素数の上限は特に制限されないが、40以下であることが好ましい。
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された摺動部品に全炭素数10以上の脂肪酸エステルが含まれることの解析方法はGC/MS及び1H−NMR法を用いる。その手順としては、オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された摺動部品5gを凍結粉砕し、クロロホルム中で、ソックスレー抽出を8時間行い、抽出液を40℃にてエバポレーターにて乾固し、クロロホルム5mLにて溶解させ、そのうち2mLを用いてGC/MS測定を行うことで、脂肪酸のエステル体の構造を特定することができる。
また、抽出物のクロロホルム溶液5mLの残りの3mLを風乾させ、0.1質量%となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)を溶解させた重水素化(d化)クロロホルム1mL中に溶解させて、1H−NMR測定を行い、脂肪酸のエステル体の帰属ピークの積分値から含有量を求めることが出来る。
本実施形態に用いる脂肪酸エステル(B)の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジドデシル、エチレングリコールジステアレート、ミリスチン酸セチル、アジピン酸ジイソデシル、エチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。
上記脂肪酸エステル(B)は、単独で用いても二種類以上添加してもかまわない。
本実施形態の摺動部品において、脂肪酸エステル(B)の含有量(添加量)は、ポリオキシメチレンホモポリマー(A)100質量部に対して、0.5〜2.5質量部である。0.6〜2.0質量部であることがより好ましい。脂肪酸エステル(B)の含有量をこの範囲にすることで、摺動部品の生産性、摺動安定性及び耐久性の向上を図ることができる。
また、脂肪酸エステル(B)は、25℃で固体であることが好ましい。25℃で固体である脂肪酸エステル(B)としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジドデシル、エチレングリコールジステアレート、ミリスチン酸セチルなどが挙げられる。25℃で固体である脂肪酸エステル(B)を用いると、摺動部品の生産性が向上する。
さらに、脂肪酸エステルは、ジエステルであることが好ましい。脂肪酸ジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジドデシル、エチレングリコールジステアレート、アジピン酸ジイソデシル、エチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。脂肪酸ジエステルを用いると、摺動部品の耐久性を向上させることができる。
<添加剤(C)>
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、従来公知のその他の添加剤(C)を含んでもよい。
その他の添加剤(C)として、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、ホルムアルデヒドや蟻酸の捕捉剤、耐候(光)剤、滑剤、各種無機・有機充填剤、他の熱可塑性樹脂、柔軟剤、結晶核剤、離型剤、顔料・染料といった外観改良剤等が挙げられる。
オキシメチレン樹脂組成物中の添加剤(C)の含有量は、オキシメチレン樹脂組成物中9.5質量%以下であることが好ましく、3.4質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
<オキシメチレン樹脂組成物の製造方法>
以下、ポリオキシメチレンホモポリマー(A)、脂肪酸エステル(B)、及び必要によりその他の添加剤(C)を含有するオキシメチレン樹脂組成物の製造方法を例示的に説明する。
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)、脂肪酸エステル(B)、及びその他の添加剤(C)の混合は、ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の造粒時に、脂肪酸エステル(B)及び必要により添加剤(C)を添加し、溶融混練することにより行うことができる。
また、予めポリオキシメチレンホモポリマー(A)を造粒した後、ヘンシェルミキサー、タンブラーやV字型ブレンダーを用いて脂肪酸エステル(B)及び添加剤(C)と混合した後に、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機や多軸押出機を用いて溶融混錬することにより、オキシメチレン樹脂組成物を得ることもできる。
造粒されたペレットを用いる場合は、添着剤を用いて分散性を高めてもよい。かかる添着剤として、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素、ならびにこれらの変性物及びこれらの混合物、ならびにポリオールの脂肪酸エステルが挙げられる。
また、ポリオキシメチレンホモポリマー(A)に対する脂肪酸エステル(B)及び添加剤(C)の分散性を高めるために、造粒されたペレットの一部又は全量を粉砕した後、溶融混合してもよい。
当該溶融混錬の温度は、180〜230℃であることが好ましい。さらに、品質や作業環境を保持する観点から、不活性ガスによる置換や、一段及び多段ベントで脱気することが好ましい。
(オキシメチレン樹脂組成物の物性)
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(ASTM1238、温度190℃)は、2〜8g/10分であることが好ましく、さらには3〜7g/10分であることが好ましい。オキシメチレン樹脂組成物のMFRを上記範囲内とすることにより、摺動部品の生産性、摺動安定性及び耐久性を向上することができる。
オキシメチレン樹脂組成物のMFRは、ポリオキシメチレンホモポリマー(A)の合成時に用いる連鎖移動剤、並びに脂肪酸エステル(B)及び添加剤(C)の添加量によって制御することができる。連鎖移動剤は、ホルムアルデヒド1モル当たりに換算して0.02〜0.08モル%添加することが好ましい
[摺動部品]
本実施形態の摺動部品は、上述のオキシメチレン樹脂組成物を任意の形状に成形することにより得られるものであり、後述の相手材とともに摺動することで使用されるものである。
本実施形態の摺動部品の製造方法としては、原材料となる従来のオキシメチレン樹脂組成物を用いた公知の成形方法が挙げられる。
当該成形方法としては、特に制限されないが、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、多色成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
特に、生産性の面から、押出成形・射出成形・射出圧縮成形、又は異材を組み合わせる多色成形・金型内複合成形が好ましい。特に本実施形態の摺動部品は射出成形で形成されることが好ましい。
当該成形条件としては、通常ポリオキシメチレンを成形する条件を用いる。例えば、樹脂温度180〜230℃、金型温度60〜90℃で成形を行うことが好ましい。
本実施形態の摺動部品とともに用いる相手材は、オキシメチレン樹脂を用いて形成される相手材でもよいが、オキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いて形成される相手材が好ましい。オキシメチレン樹脂以外の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。また、充填剤を含む樹脂であってもよい。
この中でも、耐久性の観点からポリアミド系樹脂であることがさらに好ましい。ポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド612、アラミドなどが挙げられる。
本実施形態の摺動部品の厚みは、0.5mm〜1.5mmであり、0.5mm以上1.0mm未満であることが好ましく、0.7mm以上1.0mm未満であることがより好ましい。本実施形態の摺動部品は、厚みが0.5〜1.5mmの範囲であることにより、軽量化及び省スペース化に寄与する。
従来の摺動部品では、厚みが0.5mm〜1.5mmであるような薄肉の摺動部品とした場合、後述のように摺動を受ける部品の温度が50〜110℃と高い場合に、耐久性が劣るという課題がある。本実施形態の摺動部品は、このような高温下の摺動においても摺動部品の薄肉化が可能であり、よって軽量化及び省スペース化に寄与するという効果が得られることを見出したものである。
ここで「厚み」とは、摺動を受ける面に対して垂直な方向の寸法の最小値である。すなわち、摺動を受ける面に対して垂直な方向の寸法が一定である場合はその値が「厚み」であり、寸法が一定でない場合は、その寸法のうち最も小さい値が「厚み」である。厚みが0.5mm〜1.5mmである箇所が部分的にでも存在すれば、本実施形態の摺動部品に含まれる。
従来、上記寸法が小さい箇所が部分的に存在すると、そこを起点に破れなどが発生するという問題がある。本実施形態の摺動部品は、部分的に上記寸法が0.5mm〜1.5mmと小さい箇所が存在しても、破れなどが発生せず、高い耐久性を有する。
本実施形態においては、前記相手材の厚みには特に制限はないが、軽量化や省スペース化の観点から0.5mm〜1.5mmであることが好ましく、0.5〜1.0mm未満であることがより好ましい。
本実施形態の摺動部品は、摺動部品と相手材との接触が面と面との接触であることが好ましい。また、摺動面どうしが回転する摺動形態に用いられることが好ましい。さらに、摺動部品又は相手材の動きは、断続的又は間欠的な動きをすることが好ましい。これにより摺動安定性及び耐久性の向上を図ることができる。
本実施形態の摺動部品は、摺動部の接触面積が50〜3000mm2であることが好ましく、より好ましくは150〜2500mm2であり、さらに好ましくは800〜2200mm2であり、特に好ましくは1500〜2000mm2である。摺動部の接触面積が50mm2以上であることにより、実用上十分な荷重を与えることが出来る。また摺動部の接触面積が3000mm2以下であることにより、摺動部に摩擦熱が蓄熱されて、耐久性が低下することを防ぐことができる。
[摺動部品の使用態様]
本実施形態の摺動部品は、摺動を受ける部品の温度が50〜110℃で使用され、60〜80℃で使用されることが好ましい。本実施形態の摺動部品は、特にこのような過酷な使用環境下において、優れた摺動安定性及び耐久性を有することが特徴である。
本実施形態において部品の温度とは、摺動を受ける面に対する裏面において、摺動を受ける面と垂直な方向の寸法の最小値を示す点における温度である。当該点が1点に定まらない場合は、その中で摺動を受ける面の端部からの距離が最も長い点(例えば摺動面が円形である場合はその中心点)における温度である。具体的には、図3においてXで示した点を例示することができる。なお、図3に記載の摺動部品は実施例において評価に用いた摺動部品(図2(c))とは異なるものである。
摺動部品を種々の用途に使用するためには、ある一定の摺動面圧及び摺動線速度での使用に耐えうることが好ましい。本実施形態の摺動部品は、相手材との摺動時の面圧(摺動面圧)が0.2〜5MPaで使用する摺動部品であることが好ましく、0.3〜4MPaで使用する摺動部品であることがより好ましく、摺動面圧が0.5〜3.5MPaで使用する摺動部品であることがさらに好ましく、摺動面圧が1〜3MPaで使用する摺動部品であることが特に好ましい。
本実施形態の摺動部材によれば、高温下での使用条件において、従来に比べて高い摺動面圧での使用が可能となるため、実用上有用である。本実施形態の摺動部材は、摺動面圧が好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、さらに好ましくは0.5MPa以上、特に好ましくは1MPa以上の摺動面圧であっても高い摺動安定性と耐久性を有する。
また、本実施形態の摺動部品は、相手材との摺動線速度が1〜150mm/秒で使用する摺動部品であることが好ましく、さらには摺動線速度が5〜120mm/秒で使用する摺動部品であることが好ましい。本実施形態の摺動部品は、上述の摺動面圧及び摺動線速度で使用する際において、優れた摺動安定性及び耐久性を発揮する。
なお、ここでいう摺動線速度とは、摺動面のうち最も高い速度で摺動を受ける点の速度をいう。例えば、円形の摺動部品がその中心に対して回転運動する場合には、外周部の速度が摺動線速度である。
本実施形態の摺動部品は、作業性や機能の改善を目的として、異材とのインサート部や接合部を有していてもよい。本実施形態の摺動部品は、上述のオキシメチレン樹脂組成物が優れた生産性を有し、さらには加工性にも優れていることから、複雑な形状に成形したり、後加工したりすることが容易であり、摺動安定性及び耐久性を一層優れたものとすることができる。
本実施形態の摺動部品とは、摺動部を含む装置の全てであってもよく、また装置の一部であってもよい。
本実施形態の摺動部品の具体的な形態の例を、図1に示す。
具体的な本実施形態の摺動部品の用途としては、電気機器、自動車部品やその他の種々の機構部品において使用される、ワッシャー、スペーサ、ブッシュ、ロータ、スイベル及びそれらの一部などが挙げられる。これらの中でも特に省スペース化が求められ、かつ定常的に高温に曝される用途、例えば、自動車に用いられる摺動部品、具体的には、例えば、アクセルペダルモジュール中のブッシュ又はワッシャー、ブレーキペダルモジュール中のブッシュ又はワッシャー、パーキングブレーキペダルモジュール中のブッシュ又はワッシャー等の自動車用途摺動部品として好適に使用することが出来る。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
<生産性の評価>
オキシメチレン樹脂組成物の生産性を、以下の方法により評価した。
押出機のトルクを25アンペアで一定となるように調整して造粒したときの、オキシメチレン樹脂組成物の単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、及びペレットの外観及び臭気により、総合的に評価した。評価基準は、脂肪酸エステルを含まないオキシメチレン樹脂組成物P1を押出し機に通したときの生産性と比較して、以下のように規定した。
○:オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の増加が10%以上であった。
◇:オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の増加が10%未満、又は低下が20%未満であった。
△:オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の低下が20%〜40%であった。得られたストランドにはフクレや切れがなく安定して巻き取りが可能であった。得られたペレットには多少の切子があった。また臭気があったものの、作業性を低下させるほどではなかった。
×:オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の低下が40%より大きくなった。又は、食い込み不良やストランドに切れ等が発生して巻き取りが不安定になる場合があった。又は、ペレットの外観(色や形状)に変動が生じたり、ペレットの臭気が強かったりして作業性に影響を与えた。
<品質(外観)の評価>
成形品の外観(シルバー、フローマーク及び着色等)を目視で評価した。評価の基準としては以下の通りとした。
○:金型転写性が良く平滑性・光沢性など外観が良好だった。
◇:脂肪酸エステルを含まない比較例1と同等であった。
△:シルバーやフローマークなど若干の不良が確認された。
×:摺動面に明らかに不良が確認された。
<摺動安定性の評価>
図2(c)に示す摺動部品評価装置を用いた。摺動部品の上部より荷重をかけ、荷重と直角方向に回転運動させた。回転方向は1回転毎に逆転させた。
摺動部品と相手材との摺動面圧は3MPaとし、摺動部品と相手材との摺動線速度は、60mm/秒とした。環境温度は80℃とし、部品の温度が80℃になった後に測定を開始した。
摺動安定性は、摺動試験開始から1万回の回転摺動を行った後に摩擦係数を測定した。摺動開始直後と比べた摩擦係数の増加率から、以下の基準で評価した。
〇:摩擦係数の増加率が50%以下であった。
△:摩擦係数の増加率が50%超であった。
×:破れてしまい、測定不能であった。
摺動部品の耐久性(破れ)の評価は、以下の基準で評価した。
○:5万回を超えて摺動させても破れが発生しなかった
◇:破れが発生するまでの回数が3万回を超えて5万回以下であった。
△:破れが発生するまでの回数が1万回を超えて3万回以下であった。
×:破れが発生するまでの回数が1万回以下であった。
<オキシメチレン樹脂組成物(P)>
摺動部品を形成するオキシメチレン樹脂組成物(P)の原料として、以下に示すポリオキシメチレン及び脂肪酸エステル(B)を用いた。
(ポリオキシメチレン)
ポリオキシメチレンとしては、次の手順により得たポリオキシメチレンホモポリマー(A)、ポリオキシメチレンコポリマー(A’)を用いた。
(ポリオキシメチレンホモポリマー(A))
ポリオキシメチレンホモポリマー(A)は、以下のようにして調製した。
撹拌機を付帯したジャケット付き5Lタンク重合器1にn−ヘキサンを2L満たし循環ライン(内径:6mm、長さ:2.5m)を設けた。前記n−ヘキサンをポンプにより20L/時間で循環させた。この循環ラインに脱水したホルムアルデヒドガス200g/時間を直接供給した。また、触媒(ジメチルジステアリルアンモニウムアセテート)を反応器直前の循環ラインに供給した。さらに、連鎖移動剤(無水酢酸)を、次工程に送られる重合スラリーの減少分を補うために供給するヘキサンに添加し、0.13〜0.52g/時間の範囲で調整を行い、連続的にフィードしながら、58℃で重合を行い、粗ポリマーを含む重合スラリーを得た。なお、重合触媒及び連鎖移動剤の量は、オキシメチレン樹脂組成物(P)のメルトフローレートが表1の値となるように調整した。
得られた重合スラリーをヘキサンと無水酢酸との1対1混合物中で140℃×2時間反応させ、分子末端をアセチル化することにより安定化を行った。反応後のポリマーを濾取、2mmHg以下に減圧し、80℃に設定した減圧乾燥機で3時間かけて乾燥を行い、ポリオキシメチレンホモポリマーのパウダーを得た。
さらにこのパウダー100質量部と、安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)0.2質量部と、H−3(旭化成ファインケム(株)社製)0.2質量部とをヘンシェルミキサーにて1分間混合した。その後、得られた混合物を、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)社製 BT−30、L/D=44)にてスクリュー回転数100とし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレンホモポリマーのペレットを得た。原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。
(ポリオキシメチレンコポリマー(A’))
ポリオキシメチレンコポリマー(A’)は、以下のようにして調製した。
まず、下記のようにして重合工程を実施した。
熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径3インチ、径に対する長さの比(L/D)=10)を80℃に調整した。主モノマーとしてトリオキサンを3750g/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを25〜150g/時間、かつ、連鎖移動剤としてメチラール(何れも不純物低減処理済のものを用いた。)を2.0〜8.0g/時間の範囲で調整を行い、前記連続混合反応機に連続的にフィードした。
また、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1モルに対して2.0×10-5モルになるように、前記連続混合反応機に添加して重合を行い、重合フレークを得た。なお、重合触媒及び連鎖移動剤の量は、オキシメチレン樹脂組成物(P)のメルトフローレートが表1の値となるように調整した。
得られた重合フレークを粉砕した後、トリエチルアミン1%水溶液中に、前記粉砕物を投入して撹拌し、重合触媒を失活させた。その後、重合フレークを含むトリエチルアミン1%水溶液を、濾過、洗浄及び乾燥を順次行い、粗ポリマーを得た。
得られた粗ポリマー1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物としてトリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を、下記数式(i)を用いて窒素の量に換算した場合に20ppmとなる量相当を添加し、均一に混合した後120℃で3時間乾燥し、乾燥ポリマーを得た。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(i)
(式(i)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
次に、得られた乾燥ポリマーを用いて末端安定化及び造粒工程を実施した。
ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)製、BT−30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)の前段部分に、得られた乾燥ポリマーを添加し、さらに当該乾燥ポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加した。平均滞留時間を1分として、減圧脱気を行いながらポリマー末端安定化を行った。
次に、上記乾燥ポリマー100質量部に対し、安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.2質量部と、H−3(旭化成ファインケム(株)製)0.2質量部とを予めヘンシェルミキサーにて1分間混合した。得られた混合物を、上記二軸押出機の後段部分にあるサイドフィーダーから添加し、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)製 BT−30、L/D=44)にてスクリュー回転数100rpmとし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレンコポリマー(A’)のペレットを得た。原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。
(脂肪酸エステル(B))
脂肪酸エステル(B)として、下記(B−1)〜(B−5)を用いた。
(B−1):アジピン酸ジドデシル(北広ケミカル(株)製、25℃で固体、全炭素数38)
(B−2):エチレングリコールジステアレート(北広ケミカル(株)製、25℃で固体、全炭素数38)
(B−3):ミリスチン酸セチル(日本油脂(株)製、25℃で固体、全炭素数30)
(B−4):アジピン酸ジイソデシル(大八化学工業(株)製、25℃で液状、全炭素数26)
(B−5):エチレングリコールジアセテート((株)ワコーケミカル製、25℃で液状、全炭素数6)
(オキシメチレン樹脂組成物(P)の調製)
上記の原材料(A)及び(B)を、下記表1に示す組成に従って配合し、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物を、ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業社製、BT−30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)を用いて、溶融混合し、造粒を行い、オキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P14)のペレットを得た。
なお、オキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P14)におけるMFRの調整は、ポリオキシメチレンを合成する際の連鎖移動剤、及び脂肪酸エステル(B)の添加量を制御することにより行った。
MFRは、メルトインデクサ(東洋精機(株)社製、F−W01)を用いて、ASTM1238に準拠した方法で、温度190℃にて測定した。
オキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P14)のメルトフローレート(MFR)を下記表1に示す。
Figure 0006310884
[実施例1]
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される摺動部品を以下のとおり作製した。また摺動部品に接する相手材を以下のとおり作製した。
(摺動部品の作製)
上記オキシメチレン樹脂組成物(P2)を用いて、射出成形機(ファナック(株)製、S−2000i 50β)を用いて射出成形することにより、摺動部品を作製した。シリンダー温度は200℃、金型温度は80℃とした。
摺動部品の寸法は、図2(a)に示すように円筒部外径25.6mm、円筒部内径20.0mm、円筒部高さ15mm、円盤部外径50.0mm、円盤部厚さ1mmとした。
(相手材の作製)
ポリアミドの繊維強化グレードであるレオナ(登録商標)1300G(旭化成ケミカルズ(株)製)を用いて射出成形することにより、平板状の相手材を作製した。シリンダー温度は280℃、金型温度は80℃とした。
相手材の寸法は、図2(b)に示すように幅60mm、奥行き60mm、厚さ3mmとした。
上記方法に従って、摺動部品の生産性、摺動安定性及び耐久性を評価した。
[実施例2、3及び比較例1、2]
表2に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、摺動部品を作製し、各評価を実施した。評価結果を表2に示す。なお、比較例2では、摺動部品の摺動面に不良が確認されたので、以降の評価を行わなかった。
Figure 0006310884
表2に示すように、実施例1〜3及び比較例1、2の評価結果から、脂肪酸エステルを含むオキシメチレン樹脂組成物を用いた摺動部品は、生産性が高く、優れた摺動安定性、耐久性を有することがわかった。一方、脂肪酸エステルを含まないオキシメチレン樹脂組成物を用いた摺動部品は、摺動安定性及び、耐久性に劣ることがわかった。
また脂肪酸エステルの含有量が2.5質量部より多いオキシメチレン樹脂組成物を用いた場合、押出機でのサージングやストランド切れが発生し、さらに摺動部品は着色が確認され品質が劣り、生産性が低下することがわかった。
[実施例4、5及び比較例3]
表2に示すとおりの円盤部の厚みで摺動部品を作成した以外は、実施例2と同様にして、各評価を実施した。実施例4、5及び比較例3の評価結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例2、4、5、比較例3の評価結果から、本実施形態において、好ましい円盤部の厚みである摺動部品は、優れた摺動安定性及び耐久性を有することがわかった。厚みが増すと省スペース化に対して不利であるし、厚みが減ると耐久性及び摺動安定性が悪くなった。
[実施例6〜8及び比較例4、5]
表3に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして摺動部品を作製し、各評価を実施した。実施例6〜8、比較例4及び5の評価結果を表3に示す。
Figure 0006310884
表3に示すように、実施例6〜8の評価結果から、全炭素数が10以上である脂肪酸エステルを含むホモポリマーから成るオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された摺動部品は、高い生産性を維持でき、摺動安定性、耐久性を有することがわかった。特にジエステルを用いると摺動安定性、耐久性が優れる傾向を示した。また、脂肪酸エステルとして25℃で液体であるエステルを用いると、一部で押出機でのサージングやストランド切れや、摺動部品においてシルバーなどが確認され、生産性がやや低下する傾向を示した。
また比較例4の結果から、全炭素数が10より少ないエステルを用いると、耐久性に劣ることがわかった。さらに比較例5の結果から、ポリオキシメチレンとしてコポリマーを用いると、摺動安定性、耐久性に劣ることがわかった。
[実施例9〜12]
表4に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして摺動部品を作製し、各評価を実施した。実施例9〜12の評価結果を表4に示す。
Figure 0006310884
表4に示すように、これらオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された摺動部品は、高い生産性を有し、優れた摺動安定性及び耐久性を有することがわかった。特に、MFRが2〜8g/10分である場合に、これら特性に優れる傾向があった。
[実施例13〜17、19〜26、参考例1、比較例6]
評価を行う際の摺動部品と相手材との摺動荷重を、表5に示すとおり変更した以外は、実施例2と同様にして、摺動部品を作製し、各評価を実施した。実施例13〜17、19〜26、参考例1、比較例6の評価結果を表5に示す。
Figure 0006310884
上記表5に示すように、実施例13〜17、19〜26、参考例1及び比較例6の評価結果から、50〜110℃の範囲という高温環境下での使用であっても、本実施形態の摺動部品は優れた摺動安定性、耐久性を発揮することが分かった。
摺動面圧が高いと、摺動安定性及び耐久性がやや低下する傾向を示した。また、摺動線速度が速いと、摺動安定性及び耐久性がやや低下する傾向を示した。
また、摺動部品の温度が110℃より高いと、摺動安定性及び耐久性に劣るものとなった。
なお、本実施例では相手材としてポリアミドの繊維強化グレードを用いたが、本発明の効果はこの材料に限定するものでない。
本発明は、電気機器、自動車部品やその他の種々の機構部品において、実用上十分な生産性を確保しながら、静音性を有し、外観に優れ、省スペース化と耐久性とが必要な部品に好適に利用できる。

Claims (12)

  1. ポリオキシメチレンホモポリマー100質量部と、全炭素数が10以上である脂肪酸エステルを0.5〜2.5質量部とを含み、厚みが0.5〜1.5mmであり、50〜110℃で使用され、摺動時の面圧が0.2〜5MPaで用いられる、摺動部品。
  2. 厚みが0.5〜1.0mm未満である、請求項1に記載の摺動部品。
  3. 摺動線速度が1〜150mm/秒で用いられる、請求項1又は2に記載の摺動部品。
  4. 摺動部の接触面積が50〜3000mm2である、請求項1〜のいずれか一項に記載の摺動部品。
  5. 前記脂肪酸エステルが25℃で固体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の摺動部品。
  6. 前記脂肪酸エステルがジエステルである、請求項1〜のいずれか一項に記載の摺動部品。
  7. オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される摺動部品であり、該オキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレートが2〜8g/10分である、請求項1〜のいずれか一項に記載の摺動部品。
  8. 自動車に用いられる、請求項1〜のいずれか一項に記載の摺動部品。
  9. アクセルペダルモジュール中のブッシュ若しくはワッシャー、ブレーキペダルモジュール中のブッシュ若しくはワッシャー、又は、パーキングブレーキペダルモジュール中のブッシュ若しくはワッシャーから選ばれる用途に用いられる、請求項に記載の摺動部品。
  10. 射出成形で形成される、請求項1〜のいずれか一項に記載の摺動部品。
  11. ポリオキシメチレンホモポリマー100質量部と、全炭素数が10以上である脂肪酸エステルを0.5〜2.5質量部とを含み、厚みが0.5〜1.5mmである摺動部品を、50〜110℃、摺動時の面圧が0.2〜5MPaで使用する、摺動部品の使用方法。
  12. 前記摺動部品の厚みが0.5〜1.0mm未満である、請求項11に記載の摺動部品の使用方法。
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