JP5996863B2 - ポリオキシメチレン製スライド部品、及びその使用方法 - Google Patents

ポリオキシメチレン製スライド部品、及びその使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリオキシメチレン製スライド部品に関する。
オキシメチレン樹脂は、機械的強度・剛性が高く、耐油性・耐有機溶剤性に優れ、広い温度範囲でバランスがとれた樹脂であり、且つその加工性が容易であることから、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品およびその他の機構部品を中心に広範囲の用途に用いられている。また、オキシメチレン樹脂は、もともと自己潤滑性に優れるため種々のスライド部品に使用されている。
スライド部品においては、面と面、面と線、面と点など各種の摺動部の形状や、摺動面が常に一定だったり更新されたりという摺動面の接触状態や、摺動時の連続運動又は往復運動といった部品の動きや、摺動時の温度及び湿度といった使用環境などにより、部材の耐摩擦・摩耗性は変化する。特に、樹脂と樹脂との耐摩擦・摩耗性について、単純に傾向が導出されていないため、これまで多くの提案がなされている。
オキシメチレン樹脂組成物については、耐摩擦・摩耗性を高めるため、種々の構成が挙げられている。例えば、ポリアセタール樹脂、酸化亜鉛ウィスカ、フッ素樹脂からなる複合樹脂組成物が、該組成物を成形した面と鉄材からなる面との連続な接触・連続な動きにおいて耐摩擦・摩耗性に優れること(例えば、特許文献1参照。)や、ポリアセタール樹脂(POM)、炭化ケイ素および四フッ化エチレン重合樹脂(PTFE)を含有する合成樹脂摺動部材が、該組成物によるピンとステンレスとからなる不連続的な接触・不連続な動きにおいて耐摩擦・摩耗性に優れること(例えば、特許文献2参照。)が報告されている。
また、スライドするときの部材と該部材の相手材との組み合わせについて、種々の報告がなされている。例えば、ウインド昇降機構用のガイドスライダにおいて、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂からなる球状物とポリアセタール樹脂からなるガイドとを組み合わせることにより、不連続な接触・不連続な動きにおいてガタ等の発生が改善されること(例えば、特許文献3参照。)や、モジュラーリンク式コンベヤベルトのための耐摩コネクタにおいて、ポリエステルやポリアミドでコーティングされたロッドとアセタール製リンクとを組み合わせることにより、連続的な接触・不連続な動きにおいて耐摩擦・摩耗性に優れること(例えば、特許文献4参照。)などの報告がなされている。
また、オキシメチレン樹脂のスライド部品への利用について、種々の形態が挙げられている。
例えば、スライダーにおいて、浸水および耐候試験を実施した後、滑り膜を形成した板を上下で不連続な接触・不連続な動きを行なった際の摩擦係数の変化を少なくするため、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、カーボンブラックからなる組成物を滑り膜に用いることなどの提案がなされている(例えば、特許文献5参照。)。また、摺動部材ならびにそれを使用したドアチェック装置において、シューとアームとによる不連続な接触・不連続な動きを行なった際の耐摩耗性・円滑な摺動性を得るために、シューとして、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、潤滑油剤からなる組成物を用い、アームとして、ポリアミドを用いることなどの提案がなされている(例えば、特許文献6参照。)。
特開平5−255571号公報 特開平8−239682号公報 特開平10−227176号公報 特表2009−506962号公報 特開2002−188685号公報 特開2005−187591号公報
近年、軽量化や経済性の観点から、使用材料を金属から樹脂に変える動きが活発となっており、スライド部品においても樹脂と樹脂とのスライド機構が増えてきている。これら樹脂製のスライド部品に対して、従来と同様、円滑な作動性と長期の耐久性とが要求されている。
しかしながら、上記特許文献1〜6に開示されているオキシメチレン樹脂を用いた各種部材は、特定の硬度の樹脂材料とスライドする際の作動性および耐久性に関して、未だ改良の余地がある。
そこで、本発明においては、実用上充分な生産性を確保しながら、特定の硬度の樹脂材料とスライドする際に高い作動性および優れた耐久性を実現可能なポリオキシメチレン製スライド部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の硬度の樹脂材料とスライドする際に接する部材として、特定のオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材を用いることによって、高い作動性と優れた耐久性とを有するスライド部品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)が、相手材(II)と接するスライド部品であって、
前記オキシメチレン樹脂組成物が、ポリオキシメチレン(A)100質量部と、常温で固形の潤滑剤(B)1質量部以上25質量部未満とを含み、
前記部材(I)が、ロックウェル硬度(Mスケール)78〜98であり、
前記相手材(II)が、オキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いて形成され、ロックウェル硬度(Mスケール)55〜120であることを特徴とするポリオキシメチレン製スライド部品。
〔2〕
前記オキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が2〜20g/10分であることを特徴とする〔1〕に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
〔3〕
前記ポリオキシメチレン(A)が、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットを、オキシメチレンユニット100molに対して、0〜1.35mol含有していることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
〔4〕
前記潤滑剤(B)の融点が60℃以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
〔5〕
前記潤滑剤(B)の融点が200℃以上であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
〔6〕
前記オキシメチレン樹脂組成物が、ポリオキシメチレン(A)100質量部と、常温で固形の潤滑剤(B)5質量部以上10質量部未満とを含むことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
〔7〕
前記相手材(II)が、強化樹脂を用いたものであることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のポリオキシメチレン製スライド部品を用いることを特徴とするポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
〔9〕
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)と、該部材(I)に接する相手材(II)とを含むスライド部品を用いた使用方法であって、
部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動面圧を20〜150MPaとすることを特徴とする〔8〕に記載のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
〔10〕
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)と、該部材(I)に接する相手材(II)とを含むスライド部品を用いた使用方法であって、
部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動線速度を0.08〜2.3m/secとすることを特徴とする〔8〕または〔9〕に記載のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
〔11〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のポリオキシメチレン製スライド部品が、定常的に断続的に稼動することを特徴とするポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
本発明によれば、実用上充分な生産性を確保しつつ、特定の硬度の樹脂材料とスライドする際の作動性および耐久性について改良が図られたポリオキシメチレン製スライド部品が得られる。
本実施形態に係るスライド部品の一例(例1)を示した図である。 本実施形態に係るスライド部品の一例(例1)のスライド部品が摺動した場合を示した図である。 本実施形態に係るスライド部品の一例(例2)を示した図である。 本実施形態に係るスライド部品の一例(例2)を真横から示した図である。 本実施形態に係るスライド部品の一例(例3)を示した図である。 本実施形態に係るスライド部品の一例(例3)のスライド部品が転がることなく摺動した場合を示した図である。 本実施例で得られたスライド部品を評価する装置の概略図である。 本実施例で得られたスライド部品を評価する装置のガイド部正面の図である。 本実施例で得られたスライド部品を評価する装置のスライドピン正面の図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」を言う。)について説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品およびポリオキシメチレン製スライド部品の使用態様について、順次詳細に説明する。
[ポリオキシメチレン製スライド部品]
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)が、相手材(II)と接するスライド部品であって、前記オキシメチレン樹脂組成物が、ポリオキシメチレン(A)100質量部と、常温で固形の潤滑剤(B)1質量部以上25質量部未満とを含み、前記部材(I)が、ロックウェル硬度(Mスケール)78〜98であり、前記相手材(II)が、オキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いて形成され、ロックウェル硬度(Mスケール)55〜120である。
[部材(I)]
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、後述する特定のオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)を含む。
[オキシメチレン樹脂組成物]
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、主成分として下記のポリオキシメチレン(A)を含み、さらに常温で固形の潤滑剤(B)を特定量含んでいる。
(ポリオキシメチレン(A))
本実施形態に用いるポリオキシメチレン(A)とは、オキシメチレン基のみを主鎖に有したポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)、または、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有するポリオキシメチレンコポリマー(A−2)である。
前記ポリオキシメチレン(A)は、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットを、オキシメチレンユニット100molに対して、0〜1.35mol含有していることが好ましく、0〜1.33mol含有していることがより好ましく、0〜1.31mol含有していることがさらに好ましい。オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットの含有量が前記範囲内であると、オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部材(I)を含むスライド部品は、高い生産性を維持でき、優れた作動性および耐久性を有する傾向にある。
前記コモノマーユニットの定量については、1H−NMR法を用いて、以下の手順で求めることができる。得られたポリオキシメチレン(A)を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)により濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させ、この溶解液を用いて1H−NMR解析を行い、オキシメチレンユニットとオキシメチレンユニット以外のコモノマーユニット(例えば、オキシアルキレンユニット)との帰属ピ−クの積分値の比率から、オキシメチレンユニット100mol(a)に対するコモノマーユニット(b)のmol割合(b/a)を求めることができる。
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)およびポリオキシメチレンコポリマー(A−2)は、下記の重合工程、末端安定化工程および造粒工程により製造できる。
<ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)>
(1)重合工程
本実施形態に用いるポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)とは、オキシメチレン基を主鎖に有する重合体を表す。重合体連鎖の両末端がエステル基またはエーテル基により封鎖されていてもよい。ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造における重合形態は、公知のスラリー重合法(例えば、特公昭47−6420号公報および特公昭47−10059号公報に記載の方法)を用いて実施することができる。これにより、末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンを得ることができる。
1)モノマー
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造に使用するモノマーとしては、例えばホルムアルデヒドを用いることができる。このとき安定した分子量のポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)を継続的に得るために、精製され、かつ不純物濃度が低く安定したホルムアルデヒドガスを用いることが好ましい。ホルムアルデヒドの精製方法は公知の方法(例えば、特公平5−32374号公報および特表2001−521916号公報に記載の方法)を用いることができる。
本実施形態に用いるホルムアルデヒドガスは、水、メタノール、蟻酸などの重合反応中の重合停止および連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものが好ましい。これらの不純物を極力含まないと、予期せぬ連鎖移動反応を回避でき目的の分子量のポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)が得られ易くなる。中でも特に水については、100ppm以下であることが好ましく、さらには50ppm以下であることが好ましい。
2)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造に使用する連鎖移動剤としては、一般にはアルコール類、酸無水物が用いることができる。また、ブロックポリマーや分岐ポリマーを得るためにポリオール、ポリエーテルポリオールやポリエーテルポリオール・アルキレンオキサイドを用いてもかまわない。
また、連鎖移動剤についても不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。中でも特に水については、2000ppm以下であることが好ましく、さらには1000ppm以下であることが好ましい。これらの不純物の少ない連鎖移動剤を得る方法としては、例えば、汎用的であり水分含有量が規定量を超える連鎖移動剤を入手し、これを乾燥窒素でバブリングし、活性炭やゼオライト等の吸着剤により不純物を除去し、精製する方法などが挙げられる。ここで用いる連鎖移動剤は、一種または二種類以上併用してもかまわない。
3)重合触媒
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造における重合反応に使用する重合触媒としては、オニウム塩系重合触媒が挙げられる。重合反応に使用するオニウム塩系重合触媒は、下記一般式(1)で表されるものを用いることができる。
[R1234M]+- ・・・(1)
上記一般式(1)中、R1、R2、R3およびR4は各々独立にアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素、Xは求核性基を示す。
上記一般式(1)で表されるオニウム塩系重合触媒のなかでも、第4級アンモニウム塩系化合物や第4級ホスホニウム塩系化合物が好ましく用いられる。さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムアセタート、テトラエチルホスホニウムヨージド、トリブチルエチルホスホニウムヨージドが用いられる。
4)反応器
ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の製造における重合の反応器としては、バッチ式の攪拌機付き反応槽、および連続式のコニーダー、二軸スクリュー式連続押し出し混練機、二軸パドル型連続混合機等を用いることができる。これらの胴の外周は反応混合物を加熱または冷却できる構造を有することが好ましい。
(2)末端安定化工程
上記粗ポリオキシメチレンの末端安定化をエーテル基で封鎖する方法としては、特公昭63−452号公報に記載の方法があり、アセチル基で封鎖する方法としては、米国特許第3,459,709号明細書に記載の大量の酸無水物を用い、スラリー状態で行う方法と、米国特許第3,172,736号明細書に記載の酸無水物のガスを用いて気相で行う方法とがある。本実施形態においては、上記いずれの方法も採用でき、特に限定されるものではない。
エーテル基で封鎖するのに用いるエーテル化剤としては、オルトエステル、通常は脂肪族酸または芳香族酸と、脂肪族アルコール、脂環式族アルコールまたは芳香族アルコールとのオルトエステルが挙げられる。このようなオルトエステルの具体例としては、メチルまたはエチルオルトホルメート、メチルまたはエチルオルトアセテートおよびメチルまたはエチルオルトベンゾエート、ならびにオルトカーボネート、例えばエチルオルトカーボネートが挙げられる。
エーテル化反応は、p−トルエンスルホン酸、酢酸および臭化水素酸のような中強度有機酸、ジメチルおよびジエチルスルフェートのような中強度鉱酸等のルイス酸型の触媒をエーテル化剤1質量部に対して0.001〜0.02質量部導入して行うことが挙げられる。
エーテル化反応に用いる好ましい溶媒は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンおよびベンゼン等の低沸点脂肪族、脂環式族および芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルムおよび四塩化炭素等のハロゲン化低級脂肪族化合物等の有機溶媒が挙げられる。
一方、重合体の末端をエステル基で封鎖する場合、エステル化に用いられる有機酸無水物としては、下記一般式(2)で表される有機酸無水物が挙げられる。
5COOCOR6 ・・・(2)
上記一般式(2)中、R5およびR6は、各々独立にアルキル基を示す。R5およびR6は、同じであっても異なっていてもよい。
上記一般式(2)で表される有機酸無水物の中でも、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等が好ましく、無水酢酸が特に好ましい。有機酸無水物は1種でもよいが2種以上を用いることも可能である。
また、気相でエステル基封鎖を行う方法においては、特開平11−92542号公報記載の方法によってオニウム塩系重合触媒を除去した後に末端封鎖を行うことが特に好ましい。ポリオキシメチレン中のオニウム塩系重合触媒を除去していると、末端封鎖する際に、オニウム塩系重合触媒のポリオキシメチレンの分解反応を回避でき、安定化反応におけるポリマー収率を良好とすることができると共に、ポリオキシメチレンの着色を抑制することができる。
ポリオキシメチレンの末端はエーテル基および/またはエステル基で封鎖することにより、末端水酸基の濃度が5×10-7mol/g以下に低減されることが好ましい。末端水酸基の濃度が5×10-7mol/g以下であると熱安定性に優れ、本来のポリオキシメチレン樹脂が有する品質を維持できるため好ましい。より好ましくは末端水酸基の濃度は0.5×10-7mol/g以下である。
(3)造粒工程
末端安定化を行ったポリオキシメチレンのパウダーは乾燥を行った後、取扱い性を良くするために押出機を用いて造粒してもよい。このとき、通常のポリオキシメチレンに添加することの可能な公知の安定剤を加えながら溶融混練し、造粒を行うことが好ましい。溶融混練を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、不活性ガスによる置換、ならびに一段および多段ベントによる脱気をすることが好ましい。溶融混練の際の温度は、ポリオキシメチレンホモポリマー(A−1)の融点以上250℃以下とすることが好ましい。
<ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)>
(1)重合工程
本実施形態に用いるポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の製造における重合形態は、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットを、オキシメチレンユニット100molに対して、1.35mol以下含有していることが好ましく、1.33mol以下含有していることがより好ましく、1.31mol以下含有していることがさらに好ましい。
重合体連鎖の両末端がエステル基またはエーテル基により封鎖されていてもよい。ポリオキシメチレンホモポリマー(A−2)の製造における重合形態は、公知の重合法(例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、および特開平7−70267号公報に記載の方法)を用いることができる。かかる重合工程により、ポリオキシメチレンコポリマーの末端が安定化されていない粗ポリマーが得られる。
重合工程において用いる主モノマー等の材料を下記に説明する。
1)主モノマー
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の製造に用いる主モノマーとしては、ホルムアルデヒドまたはその3量体であるトリオキサンもしくは4量体であるテトラオキサン等の環状オリゴマーを用いることが好ましい。
ここで、本明細書における「主モノマー」とは、全モノマー量に対して50質量%以上含有されているモノマーユニットをいう。
2)コモノマー
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の製造に用いるコモノマーとしては、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテル化合物を用いることが好ましい。
かかる環状エーテル化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキオカン、および分子に分岐または架橋構造を構成しうるモノ−またはジ−グリシジル化合物からなる群より選ばれる1種の化合物または2種以上の混合物が、好適なものとして挙げられる。
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)を重合する際において、主モノマーおよびコモノマーには、水、メタノールおよび蟻酸等の重合反応中の重合停止作用および連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。
不純物を極力含まない主モノマーおよびコモノマーを用いることにより、想定していない連鎖移動反応を回避でき、これにより所望の分子量を有するポリマーが得られる。特に、ポリマー末端基に水酸基を誘導する不純物の含有量は、全モノマー量に対して、好ましくは30質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下であるものとする。
所望の低不純物の主モノマーおよびコモノマーを得るための方法としては、公知の方法(例えば、主モノマーについては、特開平3−123777号公報や特開平7−33761号公報に記載の方法、コモノマーについては、特開昭49−62469号公報や特開平5−271217号公報に記載の方法)を用いることができる。
3)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の重合工程においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、例えば、ホルムアルデヒドのジアルキルアセタールおよびそのオリゴマー、ならびにメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール等の低級脂肪族アルコールを用いることが好ましい。前記ジアルキルアセタールのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびブチル等の低級脂肪族アルキル基であることが好ましい。
長鎖分岐ポリオキシメチレンを得るためには、ポリエーテルポリオール、およびポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。また、連鎖移動剤としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシ基からなる群より選択される1種以上の基を有する重合体を用いてもよい。
さらに上記連鎖移動剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を使用してもよい。いずれの場合においても、不安定末端数の少ないものが好ましい。
4)重合触媒
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の重合工程に用いる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸、およびプロトン酸のエステルまたは無水物等の、カチオン活性触媒が好ましい。
ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモンのハロゲン化物が挙げられる。具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リンおよび五フッ化アンチモン、ならびにそれらの錯化合物または塩が挙げられる。
また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、特に限定されないが、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、およびトリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。必要に応じて、例えば特開平05−05017号報の記載にある末端ホルメート基の生成を低減するような触媒を併用してもよい。これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルがより好ましい。
重合触媒の使用量は、例えばトリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールを用いる場合、モノマーの合計量1molに対して、1×10-6〜1×10-3molが好ましく、5×10-6〜1×10-4molがより好ましい。
重合触媒の使用量が上記範囲内であると、重合時の反応安定性や得られる成形体の熱安定性がより向上する。
重合触媒は、重合工程後、触媒中和失活剤を含む水溶液または有機溶剤溶液中に重合物を投入し、スラリー状態で一般的には数分〜数時間攪拌することにより失活させることができる。
触媒中和失活剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、トリエチルアミンおよびトリ−n−ブチルアミン等のアミン類、ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、ならびに有機酸塩からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
また、アンモニアおよびトリエチルアミン等の蒸気とポリオキシメチレンとを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィンおよび水酸化カルシウムのうち少なくとも一種と混合機で接触させることにより触媒を失活させる方法も用いることができる。
(2)末端安定化工程および造粒工程
上述した重合工程により得られたポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の粗ポリマーに含まれる不安定末端部分を分解除去することによって、オキシメチレン樹脂組成物を構成するポリオキシメチレンコポリマー(A−2)が得られる。
粗ポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去方法としては、特に限定されないが、例えば、ベント付き単軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー式押出機等を用いて、公知の塩基性物質である後述する分解除去剤の存在下、粗ポリマーを溶融して不安定末端部分を分解除去する方法が挙げられる。
末端安定化における溶融混練を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、不活性ガスによる置換、ならびに一段および多段ベントによる脱気をすることが好ましい。
溶融混練の際の温度は、ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の融点以上260℃以下とすることが好ましい。
さらに、通常のポリオキシメチレンに添加することが可能な公知の安定剤を加えながら溶融混合し、造粒を行うことが好ましい。
1)分解除去剤
ポリオキシメチレンコポリマー(A−2)の粗ポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去に用いる分解除去剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミンおよびトリブチルアミン等の脂肪族アミン、ならびに水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機弱酸塩および有機弱酸塩等の、公知の塩基性物質が挙げられる。
上記分解除去剤の中でも、下記一般式(3)で表される、少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物が好ましい。
かかる第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理する方法が好適に利用できる。
[R78910+nn- ・・・(3)
前記式(3)中、R7、R8、R9およびR10は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基からなる群より選ばれるいずれかを表す。
上記の非置換アルキル基または置換アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
上記の非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、およびアルキルアリール基は、水素原子がハロゲンで置換されてもよい。nは1〜3の整数を表す。
Yは、水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸、炭素数1〜20の有機チオ酸からなる群より選ばれるいずれかの酸残基を表す。
上記第4級アンモニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物が挙げられる。
また、第4級アンモニウム化合物のその他の例としては、アジ化水素などのハロゲン化以外の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩も挙げられる。
これらの中でも、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4-、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、およびカルボン酸の塩が好ましい。かかるカルボン酸の中でも、蟻酸、酢酸およびプロピオン酸がより好ましい。
上記第4級アンモニウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第4級アンモニウム化合物の添加量は、粗ポリマーに対して、下記式(α)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50質量ppmであることが好ましい。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(α)
上記式(α)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。
第4級アンモニウム化合物等の分解除去剤は、粗ポリマーを溶融する前に、予め添加してもよいし、溶融させた粗ポリマーに添加してもよい。
なお、分解除去剤は、公知の分解除去剤であるアンモニア、トリエチルアミンおよびホウ酸化合物と第4級アンモニウム化合物とを併用してもよい。
<潤滑剤(B)>
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品を形成するために用いるオキシメチレン樹脂組成物は、添加剤として、常温で固形の潤滑剤(B)を特定量含んでいる。また、その他の添加剤(C)を含んでいてもよい。なお、本実施形態において、「常温」とは、25℃を意味する。
オキシメチレン樹脂組成物において、潤滑剤(B)の含有量は、(A)100質量部に対し、1質量部以上25質量部未満であり、3質量部以上20質量部未満であることが好ましく、5質量部以上10質量部未満であることがより好ましい。潤滑剤(B)の含有量をこの範囲にすることで、スライド部品の生産性、作動性および耐久性の向上を図ることができる。
また、潤滑剤(B)の融点は、60℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。潤滑剤(B)の融点をこの範囲にすることで、スライド部品の生産性、作動性および耐久性の向上を図ることができる。一般に融点とは、固体が融解し液体化する温度のことをいうが、本実施形態における融点とは、これに加えて非晶性物質の場合は軟化点、熱硬化性樹脂の場合は分解点とする。また、本実施形態において、融点は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
オキシメチレン樹脂組成物において、潤滑剤(B)の分散状態は均一であることが好ましい。潤滑剤(B)の平均分散粒子径D50は50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。これにより物性の安定したスライド部品を得ることができる。本実施形態において、潤滑剤(B)の平均分散粒子径D50とは、例えば、オキシメチレン樹脂組成物から形成された部材(I)の切断面から走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、必要に応じて染色を施し検査する潤滑剤の粒子像を倍率1千倍から5万倍で撮影し、無作為に選んだ最低50個の潤滑剤(B)の分散粒子の最大直径を計測した相加平均の値を示す。
具体的な潤滑剤(B)としては、炭化水素系潤滑剤(パラフィンワックス、オレフィンワックスなど)、高級脂肪酸系潤滑剤(ステアリン酸やパルミチン酸など)またはこれら高級脂肪酸の塩、高級アルコール系潤滑剤(ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)、脂肪酸アマイド系(ラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなど)、脂肪酸エステル系(エチレングリコールジステアレート、ミリスチン酸セチルなど)、合成樹脂系潤滑剤、窒化ほう素、黒鉛や二硫化モリブデンなどが挙げられる。
本実施形態に用いる潤滑剤(B)としては、特には合成樹脂系潤滑剤が好ましい。合成樹脂系潤滑剤には、オレフィン樹脂系潤滑剤、ケイ素樹脂系潤滑剤、フッ素樹脂系潤滑剤などが挙げられる。
本実施形態に用いるオレフィン樹脂系潤滑剤としては、ポリエチレンやポリプロピレンなど単純なアルケンをモノマーとして合成したホモポリマー、幾つかのユニットを骨格に含むコポリマー、無水マレイン酸やグリシジル基などの改質部分を有する変性オレフィンなどが挙げられる。
また、本実施形態に用いるケイ素樹脂系潤滑剤としては、主骨格にシロキサン結合 (Si−O−Si)を有する構造の樹脂をいう。例えば、シリコーンレジン、Si上にメチル基やフェニル基さらにはグリシジル基などを有する変性シリコーンレジンなどが挙げられる。
さらにまた、本実施形態に用いるフッ素樹脂系潤滑剤としては、完全フッ素化樹脂、部分フッ素化樹脂、フッ素化樹脂共重合体など、フッ素を含むポリオレフィンをいう。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などが挙げられる。
上記潤滑剤(B)は、二種類以上併用してもかまわない。
(その他の添加剤(C))
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、従来公知のその他の添加剤(C)を含んでもよい。
その他の添加剤(C)として、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、ホルムアルデヒドや蟻酸の捕捉剤、耐候(光)剤、滑剤、各種無機・有機充填剤、結晶核剤、離型剤、顔料・染料といった外観改良剤等が挙げられる。
オキシメチレン樹脂組成物中の添加剤(C)の含有量は、ポリオキシメチレン(A)100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
(オキシメチレン樹脂組成物の製造方法)
オキシメチレン樹脂組成物は、本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品を構成する成分であり、上述のように、ポリオキシメチレン(A)、潤滑剤(B)を含有し、さらに必要に応じて上記その他の添加剤(C)を含有するものである。以下においては、ポリオキシメチレン(A)、潤滑剤(B)、およびその他の添加剤(C)を全て含有するオキシメチレン樹脂組成物の製造方法を例示的に説明する。
上記のポリオキシメチレン(A)、潤滑剤(B)、およびその他の添加剤(C)の混合は、ポリオキシメチレン(A)の造粒時に、(B)成分および(C)成分を添加し、溶融混練することにより行ってもよい。
また、(A)成分の造粒後、新たに、ヘンシェルミキサー、タンブラーやV字型ブレンダーを用いて(A)成分〜(C)成分を混合した後、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機や多軸押出機を用いて溶融混錬することにより、オキシメチレン樹脂組成物を得ることもできる。
また、ポリオキシメチレン(A)に対する(B)成分および(C)成分の分散性を高めるために、混合するポリオキシメチレン(A)のペレットの一部または全量を粉砕して予め混合した後、溶融混合してもよい。この場合、展着剤を用いてさらに分散性を高めてもよい。かかる展着剤として、例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素、ならびにこれらの変性物およびこれらの混合物、ならびにポリオールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
当該溶融混合の温度は、180〜230℃であることが好ましい。さらに、品質や作業環境を保持する観点から、不活性ガスによる置換や、一段および多段ベントで脱気することが好ましい。
(オキシメチレン樹脂組成物の物性)
本実施形態に用いるオキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(ASTM1238、温度190℃)は、2〜20g/10分であることが好ましく、3〜15g/10分であることがより好ましい。潤滑剤(B)、およびその他添加剤(C)の添加がオキシメチレン樹脂組成物のMFRに与える影響に応じて、上述した連鎖移動剤を、ホルムアルデヒド1mol当たりに換算して0.02〜0.08mol%添加してポリオキシメチレン(A)を重合することが好ましい。オキシメチレン樹脂組成物のMFRを上記範囲内とすることにより、ポリオキシメチレン製スライド部品の生産性を維持し、作動性および耐久性を向上することができる傾向にある。
〔部材(I)の製造方法〕
本実施形態に用いる部材(I)は、例えば、上述したオキシメチレン樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
本実施形態に用いる部材(I)の製造方法としては、原材料となる従来のオキシメチレン樹脂組成物を用いた多様な公知の成形方法が挙げられる。
当該成形方法としては、特に制限されないが、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、多色成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
特に、生産性の面から、押出成形・射出成形・射出圧縮成形、または異材を組み合わせる多色成形・金型内複合成形が好ましい。
当該成形条件としては、通常ポリオキシメチレンが成形される推奨条件を用いる。例えば、樹脂温度180〜230℃、金型温度60〜120℃で成形を行なうことが好ましい。
〔部材(I)のロックウェル硬度〕
本実施形態に用いる部材(I)は、前記オキシメチレン樹脂組成物により形成される。この部材(I)のロックウェル硬度(Mスケール)は、78〜98であり、80〜95であることが好ましい。このようなロックウェル硬度を有する部材(I)を含むスライド部品は、作動性および耐久性に優れる。
なお、本実施形態において、ロックウェル硬度(Mスケール)は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
〔相手材(II)〕
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、上述した部材(I)に接する相手材(II)を含む。
本実施形態に用いる相手材(II)とは、スライドするときに部材(I)に対向する材料をいう。
本実施形態に用いる相手材(II)のロックウェル硬度(Mスケール)は、55〜120であり、60〜115であることが好ましい。このようなロックウェル硬度を有する相手材(II)を含むスライド部品は、作動性および耐久性に優れる。
なお、本実施形態において、ロックウェル硬度(Mスケール)は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
また、本実施形態に用いる相手材(II)は、ポリオキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いて形成される。ポリオキシメチレン樹脂以外の樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などが挙げられる。本実施形態に用いる相手材(II)を形成する樹脂としては、規定したロックウェル硬度の範囲内の相手材(II)を形成し得る樹脂であって、上記樹脂に充填剤・柔軟材などを付与したものも含む。
この中でも、耐久性の面からポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂が好ましい。ポリアミド系樹脂とは、アミド結合(−CO−NR−)によりモノマーを結合する重合体であり、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド612、アラミドなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合体であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。
本実施形態に用いる相手材(II)は、強化樹脂を用いたものであることが好ましい。本実施形態において、強化樹脂とは、上記樹脂に充填剤を含ませた樹脂のことをいう。本実施形態に用いる相手材(II)は、特にポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂に充填剤を含ませた強化樹脂を用いたものであることが好ましい。この充填剤は、無機系充填剤又は有機系充填剤又はその両方を組み合わせて含んでいてもよい。
無機系充填剤の具体例としては、金属粉(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銀など)、酸化物(酸化ケイ素、酸化鉄、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛など)、水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、珪酸塩(タルク、マイカ、クレイ、ベントナイトなど)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなど)、カーボン系物質(カーボンブラック、黒鉛、カーボンファイバーなど)、硫酸塩、窒化ホウ素、窒化珪素等が挙げられる。
有機系充填剤の具体例としては、天然物系(リンター、木材、籾殻、絹、皮革など)や合成系(アラミド、テフロン(登録商標)、ビスコースなど)が挙げられる。
その中でも従来のそれぞれの樹脂に安定性維持のために添加可能な充填剤の中から選択すること、すなわち樹脂に添加し商品として実績のある充填剤の中から選ばれることが好ましい。充填剤の形状は、粉末状、鱗片状、板状、針状、球状、繊維状、テトラポッド状等、いずれでもよく、特に限定されるものではない。
充填剤は、樹脂との親和性を向上させるために、公知の表面処理剤を用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、さらには脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸及び樹脂酸や金属石鹸、樹脂類などが挙げられる。
充填剤の添加量は、相手材(II)を形成する樹脂に対し、5〜45質量%が好ましく、さらには15〜35質量%が好ましい。
充填剤は、1種類で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
〔相手材(II)の製造方法〕
本実施形態に用いる部材(II)の製造方法としては、原材料となる上述したポリオキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いた多様な公知の成形方法が挙げられる。
当該成形方法としては、特に制限されないが、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、多色成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
特に、生産性の面から、押出成形、射出成形、射出圧縮成形、または異材を組み合わせる多色成形・金型内複合成形が好ましい。
当該成形条件としては、通常上述した相手材(II)を形成する樹脂が成形される推奨条件を用いる。例えば、熱可塑性樹脂の場合、樹脂温度が融点または軟化点より10℃以上、分解温度より10℃以下の範囲で、熱硬化性樹脂の場合、硬化剤に合わせた硬化温度および硬化時間で成形を行なう。
〔ポリオキシメチレン製スライド部品の使用態様〕
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品とは、装置のスライド部分全てであってもよく、またスライド面を含む一部であってもよい。
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、作業性や機能性の改善を目的として、異材のインサート部および/または異材との接合部を有していてもよい。本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、上述のオキシメチレン樹脂組成物が優れた生産性を有し、さらには加工性にも優れていることから、複雑な形状に成形したり、後加工したりすることが容易であり、作動性や耐久性を一層優れたものとすることができる。また、本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品の表面状態は、平滑なものでも、各種シボ加工を施したものであってもよい。
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、上述の部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動面圧が20〜150MPaで使用するスライド部品であることが好ましく、さらには40〜120MPaで使用するスライド部品であることが好ましい。摺動時、部品(I)と相手材(II)の面圧は、一定であっても、バネ荷重をかけた状態での摺動のように変動してもかまわない。また、本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、上述の部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動線速度が0.08〜2.3m/secで使用するスライド部品であることが好ましく、さらには0.1〜2.0m/secで使用するスライド部品であることが好ましい。本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、上述の好ましい摺動面圧および/または摺動線速度で使用することにより、作動性および耐久性の向上を図ることができる。本実施形態において、摺動面圧とは、部材(I)が定常的に対向する相手材(II)に圧接したときの単位面積あたりの最大荷重をいう。摺動面圧および摺動線速度は、定常的な動きをする場合、好ましい範囲内で変動してもかまわない。
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、部材(I)と相手材(II)との接触面が、線あるいは面である場合の接触形態に用いられることが好ましい。接触面とは、巨視的にみたときの部材(I)と相手材(II)とが接触する或いは離れるときの形状をいう。例えば、レコード針とレコードとが摺動する場合、接触面は点となる。本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、接触形態が点で面圧が大きくなると、引掻くような摺動となって摩耗が激しくなり適さない場合がある。
また、スライド部品の部材(I)または相手材(II)の定常的な摺動時の動きは、断続的または間欠的な動きをすることが好ましい。動きとは部材(I)からみて、相手材(II)がどのように動いているかである。例えば、上記の場合、レコード針からみるとレコードは連続的な動きとなる。本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、連続的な動きで面圧や速度が大きくなると、摺動面の温度が上がって摩耗が激しくなり適さない場合がある。
加えて、スライド部品の接触面の摺動形態は、連続・不連続、不連続・連続、連続・連続に接触する場合に用いられることが好ましい。摺動形態とは、接触面が連続して摺動するか、不連続で摺動するかの形態をいう。例えば、上記の場合、レコード針側は連続で摺動しているが、レコード側は不連続で摺動しているので、連続・不連続となる。本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、不連続・不連続の摺動形態において速度や面圧が小さくなると、効果が得られ難くなる場合がある。
上記使用方法において、本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、優れた作動性および耐久性の向上を図ることができる。
また、本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品は、スライドする圧力が変動したり、スライド面の形状を変えたりすることで、スライドする速度を調整したり、部材(I)または相手材(II)の位置を決めたりすることができる。特に、部材(I)と対抗する相手材(II)とが、圧力方向に対しスライド方向が垂直となる単純な平面でなく、1mm以上の突起や窪み、凸凹を有したり、又は3度以上の傾斜を有したりするとき、より顕著な効果がみられる。
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品の具体的な形態の例を、図1−1〜図3−2に示す。なお、部材(I)は、図1−1〜図3−2中(x)、(y)のいずれかどちらでもよい。すなわち、部材(I)と部材(II)とは組み合わせであり、上記においてそれぞれが入れ替わっていてもかまわない。
具体的なポリオキシメチレン製スライド部品の用途としては、電気機器、自動車部品やその他の種々の機構部品において使用される、ワッシャ、スペーサ、ブッシュ、ロータ、バッド、スイベル、コロおよびそれらの一部などが挙げられる。
〔ポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法〕
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法は、上述のポリオキシメチレン製スライド部品を用いる。
本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法は、上述のオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)と、該部材(I)に接する相手材(II)とを含むスライド部品を用いた使用方法であって、部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動面圧を20〜150MPaとすることが好ましく、さらには40〜120MPaとすることがより好ましい。
また、本実施形態のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法は、上述のオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)と、該部材(I)に接する相手材(II)とを含むスライド部品を用いた使用方法であって、部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動線速度を0.08〜2.3m/secとすることが好ましく、さらには0.1〜2.0m/secとすることがより好ましい。
ポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法は、上述のポリオキシメチレン製スライド部品が、定常的に断続的に稼動することが好ましい。例えば、手動で上下や左右に動かしたり、動力源より伝達時にカムやクラッチ、電気的な正転・反転などを用いたりして、往復運動、可逆回転などをさせる場合に用いられるスライド部品において、作動と停止とを繰り返し行ない使用する方法が挙げられる。
以下、具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、実施例および比較例におけるスライド部品に含まれる部材(I)を形成するオキシメチレン樹脂組成物(P)および相手材(II)等について説明する。
〔部材(I)を形成するオキシメチレン樹脂組成物(P)〕
オキシメチレン樹脂組成物(P)を調製する原材料としては、以下に示すポリオキシメチレン(A)および潤滑剤(B)を用いた。
(原材料)
<ポリオキシメチレン(A)>
ポリオキシメチレン(A)としては、次の手順により得たポリオキシメチレンホモポリマーおよびポリオキシメチレンコポリマーを用いた。
・(A−1)ポリオキシメチレンホモポリマー
ポリオキシメチレンホモポリマーは、以下のようにして調製した。
撹拌機を付帯したジャケット付き5Lタンク重合器1にn−ヘキサンを2L満たし循環ライン(内径:6mm、長さ:2.5m)を設けた。前記n−ヘキサンをポンプにより20L/hrで循環させた。この循環ラインに脱水したホルムアルデヒドガス200g/hrを直接供給した。また、触媒(ジメチルジステアリルアンモニウムアセテート)を反応器直前の循環ラインに供給した。さらに、連鎖移動剤(無水酢酸)を、次工程に送られる重合スラリーの減少分を補うために供給するヘキサンに添加し、0.13〜0.52g/hrの範囲で調整を行ない、連続的にフィードしながら、58℃で重合を行い、粗ポリマーを含む重合スラリーを得た。使用する重合触媒および連鎖移動剤の量は、最終製品である組成物に応じて調整した。
得られた重合スラリーをヘキサンと無水酢酸との1対1混合物中で140℃×2時間反応させ、分子末端をアセチル化することにより安定化を行った。反応後のポリマーを濾取、2mmHg以下に減圧し、80℃に設定した減圧乾燥機で3時間かけて乾燥を行い、ポリオキシメチレンホモポリマーのパウダーを得た。
さらにこのパウダー100質量部と、安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)0.2質量部と、H−3(旭化成ファインケム(株)社製)0.2質量部とをヘンシェルミキサーにて1分間混合した。その後、得られた混合物を、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)社製 BT−30、L/D=44)にてスクリュー回転数100rpmとし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレンホモポリマーのペレットを得た。原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。
・(A−2)ポリオキシメチレンコポリマー
ポリオキシメチレンコポリマーは、以下のようにして調製した。
まず、下記のようにして重合工程を実施した。
熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径3インチ、径に対する長さの比(L/D)=10)を80℃に調整した。主モノマーとしてトリオキサンを3750g/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを25〜150g/hr、かつ、連鎖移動剤としてメチラール(何れも不純物低減処理済のものを用いた。)を2.0〜8.0g/hrの範囲で調整を行ない、前記連続混合反応機に連続的にフィードした。
また、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1molに対して2.0×10-5molになるように、前記連続混合反応機に添加して重合を行い、重合フレークを得た。なお、使用した重合触媒、連鎖移動剤およびコモノマーの量は、最終製品である組成物毎に調整した。
得られた重合フレークを粉砕した後、トリエチルアミン1質量%水溶液中に、前記粉砕物を投入して撹拌し、重合触媒を失活させた。その後、重合フレークを含むトリエチルアミン1質量%水溶液を、濾過、洗浄および乾燥を順次行い、粗ポリマーを得た。
得られた粗ポリマー1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物としてトリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を、下記数式(α)を用いて窒素の量に換算した場合に20ppmとなる量相当を添加し、均一に混合した後120℃で3時間乾燥し、乾燥ポリマーを得た。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(α)
(式(α)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
次に、得られた乾燥ポリマーを用いて末端安定化および造粒工程を以下のとおり実施した。ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業社製、BT−30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)の前段部分に、得られた乾燥ポリマーを添加し、さらに当該乾燥ポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加した。平均滞留時間を1分として、ポリマー末端を安定化させつつ減圧脱気を行った。
次に、上記乾燥ポリマー100質量部に対し、安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)0.2質量部と、H−3(旭化成ファインケム(株)社製)0.2質量部とを予めヘンシェルミキサーにて1分間混合した。得られた混合物を、上記二軸押出機の後段部分にあるサイドフィーダーから添加し、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)社製 BT−30、L/D=44)にてスクリュー回転数100rpmとし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレンコポリマーのペレットを得た。原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。
上記コモノマーの調整により得られた3種のオキシメチレンコポリマーにおけるオキシメチレンユニットa(100mol)に対するオキシアルキレンユニットb(mol)の割合(以下「b/a」とも記す。)を下記表1に示す。ここで(b/a)は、以下のようにして求めた。得られたポリオキシメチレンコポリマーを、溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)−d2(D化率97%、和光純薬98%assay)中に、24時間かけて溶解させることにより、ポリオキシメチレンコポリマーの1.5質量%溶液を調製した。
上記のポリオキシメチレンコポリマーの1.5質量%溶液を検体として、JEOL−400核磁気共鳴分光計(1H:400MHz)を用い、55℃および積算回数500回の条件下、オキシメチレンユニットaと、当該ユニットaを除くオキシアルキレンユニットbとの帰属ピークを積分した。このようにして得られた積分値から、オキシメチレンユニットa(100mol)に対するオキシアルキレンユニットb(mol)の割合を求めた。
<潤滑剤(B)>
潤滑剤(B)として、下記(B−1)〜(B−5)を用いた。
(B−1):フッ素樹脂系(ルブロンL−5、ダイキン工業(株)社製、融点>200℃)
(B−2):フッ素樹脂系(ルブロンL−2、ダイキン工業(株)社製、融点>200℃)
(B−3):シリコン樹脂系(KMP590、信越化学工業(株)社製、硬化性樹脂、融点(分解温度)>200℃)
(B−4):オレフィン樹脂系(タフマーA70090、(株)三井化学社製、160℃>融点>60℃)
(B−5):エステル系(ミリスチン酸セチル、日本油脂(株)社製、常温で固形、融点<60℃)
(B−6):エステル系(アジピン酸ジイソデシル、大八化学工業(株)社製、常温で液状)
なお、潤滑剤(B)の融点は、示差走査熱量測定装置(DSC測定装置:STA6000パーキンエルマー社製)により測定した。常温で固形の潤滑剤を常温から200℃まで2.5℃/minで昇温し、横軸に温度、縦軸に熱流をとったときの発熱ピークを融点とした。
(オキシメチレン樹脂組成物(P)の調製)
上記の原材料(A)および(B)等を、下記表1に示す組成に従って配合し、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物を、ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業社製、BT−30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)を用いて、溶融混合し、造粒を行ない、オキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P19)のペレットを得た。
オキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P19)のメルトフローレート(MFR)を下記表1に示す。オキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P19)におけるMFRの調整は、上記原材料(A)を調製する際の連鎖移動剤や潤滑剤(B)の添加量を制御することにより行った。ここでMFRは、以下のようにして求めた。
得られたオキシメチレン樹脂組成物(P1)〜(P19)のペレットについて、メルトインデクサ(東洋精機(株)社製、F−W01)を用いてメルトフローレート(ASTM1238、温度190℃)を測定した。
オキシメチレン樹脂組成物のペレットの生産性を、下記に示す方法により評価した。評価結果を表2〜4に示す。
<オキシメチレン樹脂組成物の生産性評価>
オキシメチレン樹脂組成物の生産性評価は、押出機のトルクを25アンペアで一定となるように調整して造粒したときの、オキシメチレン樹脂組成物の単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、ならびにペレットの外観および臭気により、総合的に行った。
評価基準としては、潤滑剤を含まないオキシメチレン樹脂組成物P1を押出し機に通したときの生産性の評価と比較して、以下のように規定した。
潤滑剤を含まないオキシメチレン樹脂組成物P1の生産性評価に比して、良好の場合を○、同等のレベルであった場合を◇、若干低下した場合を△、明らかに低下した場合を×として、各オキシメチレン樹脂組成物の生産性評価を行った。
なお、上記「良好」とは、オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の増加が10%以上であった状態を言う。
上記「若干低下」とは、オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の低下が20%〜40%以内であり、得られたストランドにフクレや切れがなく安定して巻き取りが可能であり、得られたペレットは、外観が多少の切子があり、臭気があったものの作業性を低下させなかった状態を言う。
上記「明らかに低下」とは、オキシメチレン樹脂組成物P1と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の低下が40%より大きく、または、食い込み不良やストランドに切れなどが発生して巻き取りが不安定になったことがある場合、または、ペレットの外観(色や形状)が悪かったり、もしくはペレットの臭気が強かったりして作業性に影響を与えた場合である。
〔相手材(II)を形成する樹脂〕
相手材(II)を形成する樹脂としては、次の樹脂を使用した。
(b−1):ポリアミド系/GF30%(レオナ14G33、旭化成ケミカルズ(株)社製)
(b−2):ポリエステル系/GF30%(ノバデュラン5010G30、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製)
(b−3):エポキシ樹脂(EP4100、アデカ(株)社製/硬化剤EH101)
(b−4):ポリオキシメチレン樹脂(テナックC4520、旭化成ケミカルズ(株)社製)
(b−5):ポリエチレン(サンテックM7620、旭化成ケミカルズ(株)社製)
(b−6):フェノール樹脂(AVライト811、旭有機材(株)社製/硬化剤パラホルム)
〔相手材(II)の形成〕
相手材(II)として、上記樹脂(b−1)〜(b−6)を用いて、以下のとおり相手材(II−1)〜(II−6)を形成した。
・相手材(II−1)の形成
上記樹脂(b−1)を用いて、以下のとおり加熱プレスにより相手材(II−1)を形成した。当該加熱プレスは、加熱プレス機(三庄インダストリー(株)社製、2段式ヒータープレス)を用いて、プレス温度280℃、プレス圧力20MPa、プレス時間15秒で実施した。当該加熱プレス後、80℃で45秒冷却し、得られた平板(厚さ3mm)を相手材(II−1)とした。相手材(II−1)のロックウェル硬度(Mスケール)は、110であった。
なお、本実施例において、ロックウェル硬度(Mスケール)は、上記加熱プレスにより得られた平板を二枚重ねて、硬度計((株)明石製作所製、ATK−F3000)を用いて測定した。
・相手材(II−2)の形成
上記樹脂(b−2)を用いて、プレス温度255℃、プレス後の冷却温度を90℃とした以外は、相手材(II−1)の形成と同様にして相手材(II−2)を得た。相手材(II−2)のロックウェル硬度(Mスケール)は、105であった。
・相手材(II−3)の形成
上記樹脂(b−3)を用いて、硬化剤と加温しプレミキシングをした後、プレス温度120℃、プレス時間10時間とした以外は、相手材(II−1)の形成と同様にして相手材(II−3)を得た。相手材(II−3)のロックウェル硬度(Mスケール)は、110であった。
・相手材(II−4)の形成
上記樹脂(b−4)を用いて、プレス温度200℃、プレス後の冷却温度を70℃とした以外は、相手材(II−1)の形成と同様にして相手材(II−4)を得た。相手材(II−4)のロックウェル硬度(Mスケール)は、81であった。
・相手材(II−5)の形成
上記樹脂(b−5)を用いて、プレス温度200℃、プレス後の冷却温度を40℃とした以外は、相手材(II−1)の形成と同様にして相手材(II−5)を得た。相手材(II−5)のロックウェル硬度(Mスケール)は、40であった。
・相手材(II−6)の形成
上記樹脂(b−6)を用いて、硬化剤と加温しプレミキシングをした後、プレス温度210℃、プレス時間10時間とした以外は、相手材(II−1)の形成と同様にして相手材(II−6)を得た。相手材(II−6)のロックウェル硬度(Mスケール)は、125であった。
〔部材(I)のロックウェル硬度〕
表1に示したオキシメチレン樹脂組成物のペレットを用いて、相手材(II−4)と同様に平板を成形し、ロックウェル硬度を測定した。該測定結果を表1に示す。なお、オキシメチレン樹脂組成物(P5)および(P6)は生産性が優れなかったため、ロックウェル硬度の測定は実施しなかった。
[実施例1]
オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)として、スライドピン(Ia)を以下の通り作製し、該部材(I)に接する相手材(II)として、下記ガイド部(IIb)を以下のとおり作製した。
(スライドピン(Ia)の作製)
上記調製したオキシメチレン樹脂組成物(P2)を用いて、以下のとおり射出成形することによりスライドピン(Ia)を作製した。
当該射出成形は、射出成形機(東洋機械金属社製、TI−30G)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃を目安として実施した。
スライドピン(Ia)の寸法は、図4−3に示すように先端半円柱の直径5mm、幅5mm、スライドピン長さ15mmとした。
(スライドピン(Ia)の品質評価)
オキシメチレン樹脂組成物を用いて作製した上記スライドピン(Ia)の品質評価は、成形品の外観(シルバーやフローマークなど)や着色などを目視で確認し、総合的に行なった。
評価の基準としては、金型転写性が良く平滑性・光沢性など外観が良好だった場合を○、潤滑剤を含まない比較例1と同等の場合を◇、シルバーやフローマークなど若干の不良が確認された場合を△、摺動面に明らかに不良が確認された場合を×として評価を行った。評価は作製したスライドピン(Ia)の5つの平均をとった。評価結果を表2に示す。
(ガイド部(IIb)の作製)
上記形成した相手材(II−1)から、25mm×30mmの短冊を切り出し、該短冊を後述するスライド部品評価装置のSUS製治具に固定しガイド部(IIb)とした。
(スライド部品の作製)
上記作製したスライドピン(Ia)およびガイド部(IIb)を用いて、図4−1に示すような構成のスライド部品を作製した。当該スライド部品について以下のとおり評価した。
(スライド部品の生産性の評価)
スライド部品の生産性の評価を、上述したオキシメチレン樹脂組成物の生産性および上述したスライドピン(Ia)の品質評価により行った。評価結果を表2に示す。
(スライド部品の作動性および耐久性の評価)
スライド部品の作動性および耐久性の評価は、後述するスライド部品評価装置を用いて行なった。当該評価を行う際のスライドピン(Ia)とガイド部(IIb)との摺動面圧は、80MPaとし、スライドピン(Ia)とガイド部(IIb)との摺動線速度は、1.0m/秒とした。なお、本実施例において、摺動面圧は、スライド部品の評価開始前に、既存の感圧紙(富士フイルム(株)社製、プレスケール)により測定した。摺動線速度は、タコメータ((株)小野測機(株)社製、HT5500)により測定した。
〔スライド部品評価装置〕
図4−1〜図4−3に、スライド部品の作動性および耐久性の評価に用いたスライド部品評価装置を示す。
図4−1は、スライド部品評価装置の概略図である。図4−1に示すとおり、このスライド部品評価装置は、スライドピン(Ia)とガイド部(IIb)とを具備させた。また、スライドピン(Ia)の上部より荷重をかけ、ガイド部(IIb)を長手方向に往復稼動させた。図4−2はガイド部(IIb)の正面図と寸法を示し、図4−3はスライドピン(a)の正面図と寸法を示す。
スライド部品の評価には往復動試験機(東測精密社製AFT−15MS型)を改良し、本実施例の各条件での評価が可能となるようにモータ能力・耐荷重を高めたものを用いた。測定条件は、往復距離20mm、環境温度23℃、湿度50%とした。荷重のバランスは、ガイド部(IIb)の中央の位置で行なった。
(作動性および耐久性の評価基準)
スライド部品の作動性の評価は、スライド試験を開始したときの作動状態(音の発生およびスライドピンの動き)を観察することにより行なった。
また、スライド部品の耐久性の評価は、長期スライド試験を実施したときの、スライドピンとガイド部との変化(形状変化および外観)を観察することにより行った。具体的には、スライド部品の作動性および耐久性の評価を以下のとおり行った。
<作動性>
音の発生およびスライドピンの動きについては、往復動試験開始から1〜10回往復するときを観察した。各試験を3回実施し、平均することで評価を行なった。
音の発生については、スライド部品評価装置の摺動部から30cmの距離から聞いて、音の有無を確認することにより以下のとおり評価した。音が発生しなかった場合を◎、音の発生が5回以内であった場合を○、常に短い音が確認された場合を◇、常に大きい連続音が確認された場合を×とした。評価結果を表2に示す。
スライドピンの動きに関する評価基準としては、1回目から円滑な稼動をした場合を◎、5回以内に円滑な稼動をした場合を○、スティックスリップが確認された場合を◇、常にスティックスリップが確認される場合を×とした。評価結果を表2に示す。
<耐久性>
また、スライド部品の耐久性の評価は、10万回往復動試験を実施したときの、スライドピンの形状変化、ならびにスライドピンおよびガイド部の外観を観察することにより行った。
形状変化の観察については、マイクロスコープ(キーエンス(株)社製、VHX−1000)を用いて行なった。スライドピンの摩耗量が、20μm以下の場合を◎、20μmを超えて35μm以下の場合を○、35μmを超えて50μm以下の場合を◇、50μmより大きい場合を×とした。評価結果を表2に示す。
外観の観察については、極めて良好であった場合を◎、大変良好であった場合を○、良好であった場合を◇、不良であった場合を×として、評価を行なった。評価結果を表2に示す。
なお、上記「極めて良好」とは、スライドピンおよびガイド部に剥離などがほとんど見られなかった状態を言う。上記「大変良好」とは、スライドピンおよび/またはガイド部に剥離が見られるものの、粉の発生がほとんどなかった状態を言う。上記「良好」とは、スライドピンおよび/またはガイド部に剥離が見られるものの、粉の発生が少なかった状態を言う。上記「不良」とは、スライドピンおよび/またはガイド部に剥離が見られ、さらに粉の発生が多かった状態を言う。
[実施例2、3および比較例1、2]
表2に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。評価結果を表2に示す。なお、比較例2では、スライドピン(Ia)において、摺動面の外観に明らかに不均一部分が確認されたので、以降の評価を行わなかった。
上記表2に示すように、実施例1〜3および比較例1、2の評価結果から、本実施形態で規定した潤滑剤を含むオキシメチレン樹脂組成物を用いたポリオキシメチレン製スライド部品は、高い生産性を維持でき、優れた作動性および耐久性を有することがわかった。本実施形態で規定の潤滑剤を含まないオキシメチレン樹脂組成物を用いたスライド部品は、作動性および耐久性に劣ることがわかった。
また潤滑剤の含有量が本実施形態で規定より多いオキシメチレン樹脂組成物を用いた場合、押出機でのサージングやストランド切れが発生し、さらにポリオキシメチレン製スライド部品は、色ムラが確認され品質が劣り、生産性が低下することがわかった。
[比較例3]
表2に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価の実施を試みた。しかしながら、比較例3では、オキシメチレン樹脂組成物のペレット(P6)の製造において、食い込み不良やストランドに切れなどが発生して巻き取りが不安定になったため、スライドピン(Ia)の作製や以降の評価を行わなかった。
上記表2に示すように、実施例2と比較例3との評価結果から、本実施形態の常温で固形の潤滑剤を含むオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部材を含むスライド部品は、高い生産性を維持できることがわかった。常温で液状の潤滑剤を本実施形態の潤滑剤と同量フィードしても、サージングを生じ食い込み不良により、著しく生産性が低下することがわかった。
[実施例4、5および比較例4〜6]
ガイド部(IIb)を、表2に示すとおりの相手材(II−2)〜(II−6)から作製した以外は、実施例2と同様にして、スライドピン(Ia)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。実施例4、5および比較例4〜6の評価結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例2、4、5と比較例4〜6との評価結果から、ポリオキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いて形成され、ロックウェル硬度(Mスケール)が55〜120の相手材を用いたスライド部品は、優れた作動性および耐久性を有することがわかった。
ポリオキシメチレン樹脂(POM)から形成された相手材を用いたスライド部品は、作動性評価において、音およびスティックスリップがともに確認された。また、規定のロックウェル硬度より柔らかい相手材を用いたスライド部品は、スライド試験完了後のガイド部に剥離が見られ、さらにガイド部の窪みや粉の発生が大きいなど外観に変化を生じていた。また規定のロックウェル硬度より固い相手材を用いたスライド部品は、スライドピンの形状変化が大きく、さらにスライドピンの一部に剥離が見られた。
本実施形態で規定する相手材の中では、作動性および耐久性のバランスから、特に強化樹脂から形成される相手材が好ましいことがわかった。
[比較例7、8]
比較例7は、オキシメチレン樹脂組成物(P2)にその他の添加剤として、エラストマー(ペルプレンP30B:東洋紡績社製)を3質量部添加したオキシメチレン樹脂組成物(P16)を用いた。比較例8は、オキシメチレン樹脂組成物(P2)にその他の添加剤として、ガラスファイバー(ECS03T−851:日本電気硝子社製)を25質量部添加したオキシメチレン樹脂組成物(P17)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。比較例7、8の評価結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1、2と比較例7、8との評価結果から、ポリオキシメチレン樹脂組成物のロックウェル硬度(Mスケール)が78〜98の部材(I)を用いたスライド部品は、優れた生産性および耐久性を有することがわかった。これより、部材(I)と相手材(II)との硬さのバランスが重要であることが示唆された。
[実施例
表3に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。実施例の評価結果を表3に示す。
上記表3に示すように、実施例2および実施例の評価結果から、本実施形態の好ましいMFRのオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部材を含むスライド部品は、生産性を維持でき、優れた作動性および耐久性を有することがわかった。オキシメチレン樹脂組成物のMFRが低くなると、生産性が低下する傾向を示し、高くなるとガイド部の一部に剥離が生じる傾向を示した。

[実施例10〜12]
表3に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。実施例10〜12の評価結果を表3に示す。
上記表3に示すように、実施例2および実施例10〜12の評価結果から、本実施形態の好ましいコモノマー量が挿入されているポリオキシメチレン含有組成物を用いて形成された部材を含むスライド部品は、高い生産性を維持でき、優れた作動性および耐久性を有することがわかった。挿入されるコモノマー量が多いと、スライドピンの形状変化が大きくなる傾向を示した。
[実施例13〜16]
表3に示す種類のオキシメチレン樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。実施例13〜16の評価結果を表3に示す。
上記表3に示すように、実施例2および実施例13〜16の評価結果から、本実施形態の好ましい潤滑剤を含むオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部材を含むスライド部品は、高い生産性を維持でき、優れた作動性および耐久性を有することがわかった。融点が低い潤滑剤を用いると、スライド部品の作動性は改善されたが、スライド部品の耐久性は改善が小さくなる傾向を示した。また、一部で押出機でのサージングやストランド切れや、スライドピンにおいてシルバーなどが確認され、生産性が低下する傾向を示した。
[実施例17〜20]
作動性および耐久性の評価を行う際のスライドピン(Ia)とガイド部(IIb)との摺動面圧を、表4に示すとおり変更した以外は、実施例2と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。実施例17〜20の評価結果を表4に示す。
上記表4に示すように、実施例2および実施例17〜20の評価結果から、本実施形態の好ましい摺動面圧の範囲でポリオキシメチレン製スライド部品を使用することで、優れた作動性および耐久性を発揮することがわかった。当該摺動面圧が低くなるとスライドピンの動きが円滑でなくなる傾向を示し、当該摺動面圧が高くなると音が生じる傾向を示した。
[実施例21〜24]
作動性および耐久性の評価を行う際のスライドピン(Ia)とガイド部(IIb)との摺動線速度を、表4に示すとおり変更した以外は、実施例2と同様にして、スライドピン(Ia)、ガイド部(IIb)およびスライド部品を作製し、各評価を実施した。実施例21〜24の評価結果を表4に示す。
上記表4に示すように、実施例2および実施例21〜24の評価結果から、本実施形態において、好ましい摺動線速度の範囲でポリオキシメチレン製スライド部品を使用することで、優れた作動性および耐久性を発揮することがわかった。当該摺動線速度が小さくなるとスライドピンの動きが円滑でなくなる傾向を示し、当該摺動線速度が大きくなると音が生じる傾向を示した。
本発明は、電気機器、自動車部品やその他の種々の機構部品において、ワッシャ、スペーサ、ブッシュ、ロータ、バッド、スイベル、コロなどからなる群より選択される1種以上のスライド部品およびそれらの一部として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)が、相手材(II)と接するスライド部品であって、
    前記オキシメチレン樹脂組成物が、ポリオキシメチレン(A)100質量部と、常温で固形の潤滑剤(B)1質量部以上25質量部未満とを含み、
    前記部材(I)が、ロックウェル硬度(Mスケール)78〜98であり、
    前記相手材(II)が、オキシメチレン樹脂以外の樹脂を用いて形成され、ロックウェル硬度(Mスケール)55〜120であり、
    前記オキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が2〜20g/10分であることを特徴とするポリオキシメチレン製スライド部品。
  2. 前記ポリオキシメチレン(A)が、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットを、オキシメチレンユニット100molに対して、0〜1.35mol含有していることを特徴とする請求項1に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
  3. 前記潤滑剤(B)の融点が60℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
  4. 前記潤滑剤(B)の融点が200℃以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
  5. 前記オキシメチレン樹脂組成物が、ポリオキシメチレン(A)100質量部と、常温で固形の潤滑剤(B)5質量部以上10質量部未満とを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
  6. 前記相手材(II)が、強化樹脂を用いたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン製スライド部品。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン製スライド部品を用いることを特徴とするポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
  8. オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)と、該部材(I)に接する相手材(II)とを含むスライド部品を用いた使用方法であって、
    部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動面圧を20〜150MPaとすることを特徴とする請求項に記載のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
  9. オキシメチレン樹脂組成物を用いて形成される部材(I)と、該部材(I)に接する相手材(II)とを含むスライド部品を用いた使用方法であって、
    部材(I)と相手材(II)との定常的な摺動線速度を0.08〜2.3m/secとすることを特徴とする請求項またはに記載のポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン製スライド部品が、定常的に断続的に稼動することを特徴とするポリオキシメチレン製スライド部品の使用方法。
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