JP5048020B2 - 導電性ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
導電性を付与したポリアセタール樹脂の用途の代表的なものに、自動車用燃料タンク周りの部品が挙げられる。ポリアセタール樹脂を使用することで金属と比較して部品の軽量化が可能となる他、部品の形状を複雑な形状にすることが可能となる。具体的な用途としてはフューエルポンプ、プレッシャーレギュレーター、センターゲージ、これらを一体化させたフューエルポンプモジュールなどが挙げられる。これらの部品は、ガソリン、軽油、バイオディーゼルなどの自動車燃料に直接接触して使用されるために、樹脂には耐燃料性も必要とされる。
そこで本発明は、酸化劣化した自動車燃料に長時間さらされた後も、引張特性等の物性や導電性を高いレベルで保持できるポリアセタール樹脂組成物を提供する事を目的とする。
〈1〉ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、フタル酸ジブチル吸油量が200mL/100g以上の導電性カーボンブラック(B)3〜10質量部、下記一般式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤(C)0.1〜3質量部、エポキシ化合物(D)を含有するポリアセタール樹脂組成物であって、エポキシ化合物(D)とヒンダードアミン系光安定剤(C)の質量比(D)/(C)が60/40〜85/15であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
〈3〉ポリアセタール樹脂(A)が、融点164℃以上、173℃以下のポリアセタールコポリマーであることを特徴とする前記〈1〉または〈2〉に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〈4〉前記〈1〉〜〈3〉いずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる自動車の燃料周り部品。
本発明で用いるポリアセタール樹脂(A)としては、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマーを代表例としてあげることができる。また、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。
ポリアセタールコポリマーの重合における重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
上記の重合で得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2)n−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することはできない。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが必要であり、次に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行なうことが好適である。
特定の不安定末端部の分解除去処理とは、下記一般式(2)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理するものである。
以上の特定の不安定末端部分解除去処理により、不安定末端部が殆ど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
また、本発明で用いるポリアセタール樹脂(A)のメルトフローレート(MFR,JIS−K7210の条件で測定)は、0.5〜100g/10minが好ましく、より好ましくは1.0〜80g/10minである。
導電性カーボンブラック(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して3〜10質量部であり、好ましくは5〜9質量部である。3〜10質量部の範囲であることにより、導電性、機械物性ともに優れた組成物を得ることが可能となる。
本発明で用いるヒンダードアミン系光安定剤(C)とは、下記一般式(1)で表されるものである。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、更にポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、(E)酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、離型剤、潤滑剤の少なくとも1種を各々0.01〜3質量部含有することができる。
これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む重合体又化合物は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
更に本発明のポリアセタール樹脂組成物は、目的に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂で用いられる各種の添加剤、無機充填材、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂、および熱可塑性エラストマーを配合することができる。
無機充填剤としては、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維があげられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用することができる。
板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔があげられる。中空状充填剤としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等があげられる。これらの充填剤は1種又は2種以上を併用して使用することが可能である。これらの充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施されたものの使用のほうが好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が使用できる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂が挙げられる。また、これらの変性物も含まれる。
熱可塑性エラストマーとしては、 ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を言う。有機系顔料とは縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料である等の顔料である。顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にすることは難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂と100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
溶融混練の方法は、全成分を同時に溶融混練する方法、あらかじめ予備混合したブレンド物を用いて溶融混練する方法、更に押出機の途中から逐次、サイドフィーダーを使用することによって各成分を供給し、溶融混練する方法などをあげることができる。
具体的には、ポリアセタール樹脂(A)、導電性カーボンブラック(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)、およびエポキシ化合物(D)の全てを予め混合し、押出機トップから供給し溶融混練する方法、予め導電性カーボンブラック(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)、およびエポキシ化合物(D)を混合したものをポリアセタール樹脂(A)と溶融混練する方法、または上記成分の一部を予め混合または溶融混練した後、全ての成分を溶融混練する方法などが挙げられる。
また、溶融混練時には押出機ベント口から減圧装置によって減圧することが好ましい。
減圧度に関しては、0.07MPa以下が好ましい。また、溶融混練温度は、用いるポリアセタール樹脂のJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160℃から240℃ある。押出機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましい。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の具体的な用途としては、フューエルポンプ、プレッシャーレギュレーター、センターゲージ、これらを一体化させたフューエルポンプモジュールなどの自動車燃料周りの部品等、耐燃料性に加え、耐酸性、導電性が必要とされる用途に好適に使用される。
(A)ポリアセタール樹脂
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールを、得られるポリアセタール樹脂のメルトフローレートが10g/10minとなるように調整して連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10−5molで連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。
ケッチェンブラックEC300J〔DBP吸油量:360ml/100g〕(ライオン(株)製)
(C)ヒンダードアミン系光安定剤
(c−1)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート(三共ライフテック(株)製、商品名:サノールLS770)
(c−2)ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、商品名:チヌビン770)
(c−3)ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、商品名:キマソーブ119)
(c−4)ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]](サイテックテクノロジー(株)製、商品名:シアソーブ UV−3346)
(D)エポキシ化合物、エポキシ硬化促進剤
クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(エポキシ当量=350、軟化点=80℃)、エポキシ硬化性添加剤としてはトリフェニルホスフィンを用いた。
東芝機械(株)製IS−100GN成形機を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度90℃に設定し、射出圧力113MPa、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件でISOダンベルを得た。このダンベルを用いISO 527に準じて引張特性を測定した。
引張特性測定用のISOダンベルから30×20×4mmの平板を切り出し、四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194対応)をこの平板に押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより測定電圧90Vで体積抵抗率を測定した。
JIS2号ディーゼル燃料に、菜種メチルエステル10vol%、ギ酸320ppm、酢酸250ppm、水100ppmを添加して混合燃料とした。この混合燃料に、引張特性測定に用いたISOダンベルを浸漬し、80℃に加熱、1000時間放置した。1000時間経過後にISOダンベルを取り出し、上述の方法により引張特性、体積抵抗率の評価を行った。
図1において、導電性カーボンブラック(B)以外の成分をブレンダーで混合した後、この混合物は定量フィーダー15(クボタ(株)製 CE−W−1)を用いてトップから供給し、導電性カーボンブラック(B)は定量フィーター16(クボタ(株)製、CE−W−0)を用いてサイドより供給した。
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。
シリンダー温度が200℃に設定された図1に示す構造を有するTEM−26SS2軸押出機を用い、上述のフィード方法によって表1に記載の割合で押出機に原料を供給して、17の脱気ベントより真空ポンプで脱気し、バレルゾーン5はガス抜きとして大気中に開放してスクリュー回転数150rpm、押出量10kg/hrで溶融混練を行った。尚、組成物には(E)離型剤としてベヘニルアルコール2.5質量部を成分(A)、(C)および(D)成分と混合することにより押出機トップより添加した。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。このペレットを用いて上述の方法により燃料浸漬試験前後の引張特性、体積抵抗率の評価を行った。
各成分を表2に記載の割合で配合し、その他は実施例と同様にしてポリアセタール樹脂組成物ペレットを製造した。得られたペレットは実施例と同様の方法により燃料浸漬試験前後の引張特性、体積抵抗率の評価を行った。
13:ダイヘッド
14:押出機モーター
15:定量フィーダー(トップ)
16:定量フィーダー(サイド)
17:脱気ベント
Claims (4)
- ヒンダードアミン系光安定剤(C)を表す一般式(1)中において、R1が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂(A)が、融点164℃以上、173℃以下のポリアセタールコポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる自動車の燃料周り部品。
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