JP5841914B2 - ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつその加工性が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲にわたって用いられている。しかしながら、ポリアセタール樹脂は他の樹脂と同様に電気絶縁体であるため、摺動の際に発生する静電気の除去性能或いは導電性に劣るため、高度な導電性が要求される用途には使われないのが通常であった。
従来より、カーボンブラックやその他の導電性フィラーによって導電性を付与させた組成物を得ることが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような導電性の高い物質へ蓄積した静電気を放電させようとすると、激しいショックを伴う静電気放電が発生する。近年では、このような激しい静電気放電に対して非常に敏感な、半導体LSI、電気/電子機器装置が多く製造されるようになってきており、静電気放電の際にショックを伴わない、特定の範囲の静電気拡散(半導電)性をもつ材料が要求されるようになってきている。
しかし、樹脂に導電性フィラーを配合していくと、特にポリアセタール樹脂のような高結晶性樹脂の場合、導電性フィラーの配合量がある一定値を超えたところで組成物の体積抵抗率が急激に低下する。そのため、上記の静電気拡散領域の体積抵抗率を持つ組成物を安定的に得ることは非常に困難である。これらの課題に対し、体積抵抗率が特定の範囲である親水性ポリマーのブロック及び疎水性ポリマーのブロックからなるポリマーと、特定のアニオン性界面活性剤と、を熱可塑性樹脂に添加して静電気拡散性能を付与させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ポリアセタール樹脂以外の樹脂においても、カーボンブラック等の導電性フィラーを添加して、静電気拡散性を付与させた検討も種々行われている(例えば、特許文献3参照)。
特開昭63−210161号公報 特開2010−196050号公報 特開2008−239947号公報
しかしながら、特許文献2においては、ポリアセタール樹脂組成物に静電気拡散性能を付与できたとしても、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性の急激な低下を招くという問題がある。また、特許文献3においては、摺動性の悪い樹脂の場合、他材と摺動したときに含有されている導電性フィラーが脱落して汚染の原因となるという問題があり、特に上述の半導体LSI、電気/電子機器装置向け用途には適さない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、静電気拡散性を有し、かつ他材との摺動時に導電性フィラーの脱落が極めて少ないポリアセタール樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂と、特定の構造のブロック共重合体、カーボンブラック、及び酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、所定の体積低効率を有するポリアセタール樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は下記の通りである。
〔1〕
ポリアセタール樹脂(I)と、
下記式(1)〜(5)のいずれかで表されるブロック共重合体(II)と、
導電性カーボンブラック(III)と、
酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)とを含有し、
体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1010Ωcmである、
ポリアセタール樹脂組成物。
A−B−A ・・・式(1)
(A−B) ・・・式(2)
B−(A−B) ・・・式(3)
(A−B)−A ・・・式(4)
(A−B)−X ・・・式(5)
(式(1)〜(5)中、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、nは2〜10の整数であり、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数である。)
〔2〕
前記ブロック共重合体(II)の含有量が、1〜50質量%である、前項〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔3〕
エポキシ化合物(V)を、さらに含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
前記ポリアセタール樹脂(I)が、下記式(6)で表されるポリアセタールブロック共重合体(A)である、前項〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
H−R−O−R−O−R−H ・・・式(6)
(式(6)中、
は、下記式(7a)で表されるオキシメチレン単位と、下記式(7b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位とが互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量が95〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つのRを平均した数平均分子量が5,000〜250,000であり、
は、下記式(8a)で表されるエチレン単位と、下記式(8b)で表されるn−ブチレン単位と、下記式(8c)で表される水素添加1,2−ポリブタジエン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位とが互いにランダム又はブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量が2〜98モル%、前記n−ブチレン単位の含有量が2〜98モル%、前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位の含有量が2〜98モル%であり、数平均分子量が500〜10,000であり、ヨウ素価20g−I/100g以下の不飽和結合を有してもよい。
−(CHO)− ・・・式(7a)
−((CR −O)− ・・・式(7b)
−(CHCH)− ・・・式(8a)
−(CHCHCHCH)− ・・・式(8b)
−(CHCH(CHCH))− ・・・式(8c)
(式(7b)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアリール基を示し、jは2〜6の整数を示す。))
〔5〕
前記ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量が10,000〜500,000である、前項〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔6〕
前記ブロック共重合体(II)の数平均分子量が5,000〜500,000である、前項〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔7〕
前項〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる、成形体。
本発明によれば、静電気拡散性を有し、かつ他材との摺動時に導電性フィラーの脱落が極めて少ない、ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体を実現することができる。
実施例で用いた押出機を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔ポリアセタール樹脂組成〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、
ポリアセタール樹脂(I)と、
下記式(1)〜(5)のいずれかで表されるブロック共重合体(II)と、
導電性カーボンブラック(III)と、
酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)とを含有し、
体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1010Ωcmである。
A−B−A ・・・式(1)
(A−B) ・・・式(2)
B−(A−B) ・・・式(3)
(A−B)−A ・・・式(4)
(A−B)−X ・・・式(5)
(式(1)〜(5)中、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、nは2〜10の整数であり、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数である。)
〔ポリアセタール樹脂(I)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(I)を含む。ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量は10,000〜500,000であることが好ましく、15,000〜300,000であることがより好ましく、20,000〜150,000であることがさらに好ましい。数平均分子量が上記好ましい範囲であれば、機械的特性と成形加工性のバランスに優れたポリアセタール樹脂となる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に用いられるポリアセタール樹脂(I)は、下記式(6)で表されるポリアセタールブロック共重合体(イ)であることが好ましい。このようなポリアセタール樹脂(I)であることにより、ブロック共重合体(II)との相容性が向上し、安定した静電気拡散性能を発揮することができる。ポリアセタールブロック共重合体(イ)は、例えば、特許第4560261号に示す方法により製造することが可能である。
H−R−O−R−O−R−H ・・・式(6)
式(6)中、Rは、下記式(7a)で表されるオキシメチレン単位と下記式(7b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位とが互いにランダムに存在する基である。また、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、オキシメチレン単位の含有量は、95〜99.9モル%であり、95〜99モル%が好ましく、95〜98モル%がより好ましい。さらに、オキシ炭化水素単位の含有量は、0.1〜5モル%であり、1〜5モル%が好ましく、2〜5モル%がより好ましい。またさらに、2つのRを平均した数平均分子量は5,000〜250,000であり、10,000〜200.000が好ましく、20,000〜150,000がより好ましい。
また、Rは、下記式(8a)で表されるエチレン単位と、下記式(8b)で表されるn−ブチレン単位と、下記式(8c)で表される水素添加1,2−ポリブタジエン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位とが互いにランダム又はブロックに存在する基である。また、エチレン単位とn−ブチレン単位と水素添加1,2−ポリブタジエン単位との総量100モル%に対して、エチレン単位の含有量は、2〜98モル%であり、5〜95モル%が好ましく、10〜90モル%がより好ましい。さらに、n−ブチレン単位の含有量は、2〜98モル%であり、5〜95モル%が好ましく、10〜90モル%がより好ましい。またさらに、水素添加1,2−ポリブタジエン単位の含有量は、2〜98モル%であり、5〜95モル%が好ましく、10〜90モル%がより好ましい。さらにまた、数平均分子量は、500〜10,000であり、500〜8,000が好ましく、1000〜5,000がより好ましい。その上、ヨウ素価20g−I/100g以下の不飽和結合を有してもよく、ヨウ素価18g−I/100g以下の不飽和結合を有することが好ましく、ヨウ素価15g−I/100g以下の不飽和結合を有することがより好ましい。なお、ヨウ素価は、例えば、ウィイス法等により求めることができる。
上記式(6)中の両端の水素原子は、下記式(7a)又は(7b)における酸素原子と結合する。
−(CHO)− ・・・式(7a)
−((CR −O)− ・・・式(7b)
−(CHCH)− ・・・式(8a)
−(CHCHCHCH)− ・・・式(8b)
−(CHCH(CHCH))− ・・・式(8c)
式(7b)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアリール基を示す。アルキル基としては、特に限定されないが、具体的には、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、アリール基としては、特に限定されないが、具体的には、炭素数3〜20のアリール基が好ましい。上記置換アルキル基及び置換アリール基における置換基としては、特に限定されないが、具体的には、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基等が挙げられる。また、jは2〜6の整数を示し、2〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。
本実施形態において、ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量、2つのRを平均した数平均分子量、及びRの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるPMMA(ポリメチルメタクリレート)換算の分子量として求めることができる。
(ポリアセタールブロック共重合体(A)の製造方法)
ポリアセタールブロック共重合体(A)は、Rセグメントを連鎖移動剤として用い、例えば、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)と、1,3−ジオキソランとを、共重合させて得ることができる。
このポリアセタールブロック共重合体(A)を得る場合、上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーの配合量は、一般的には、トリオキサン100molに対して0.1〜60molであることが好ましく、0.3〜50molであることがより好ましく、0.5〜30molであることがさらに好ましい。
ポリアセタールブロック共重合体(A)の重合工程においては、所定の重合触媒を用いることが好ましい。ポリアセタールブロック共重合体(A)の重合に用いられる重合触媒としては、特に限定されないが、具体的には、ルイス酸、プロトン酸、及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
ルイス酸としては、特に限定されないが、具体的には、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられる。より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩等が挙げられる。
また、プロトン酸、そのエステル又は無水物としては、特に限定されないが、具体的には、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましい。
ポリアセタールブロック共重合体(A)を製造する重合方法については、Rセグメントを連鎖移動剤として用いること以外は、特に限定されず、従来公知の方法を適用できる。例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。
上記の重合により得られたポリアセタールブロック共重合体(A)には、熱的に不安定な末端部〔−(OCH−OH基〕が存在し得るため、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましい。具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。
すなわち、下記式(9)で表される少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールブロック共重合体(A)の融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールブロック共重合体(A)を溶融させた状態で加熱処理を施すことにより、特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことができる。
[R−n ・・・式(9)
式(9)において、R、R、R及びRは、各々独立して、炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換若しくは非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。式(9)において、nは、1〜3の整数を示す。
式(9)において、Xは、水酸基、若しくは炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸、又は炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
前記ポリアセタールブロック共重合体(A)の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH−OH基〕を、分解除去処理するために用いる第4級アンモニウム化合物は、上記式(9)で表されるものであれば特に限定されないが、式(9)における、R、R、R、及びRが、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらには、R、R、R、及びRの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものがより好ましい。
第4級アンモニウム化合物としては、特に限定されないが、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、ヨウ素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物(OH)、硫酸(HSO 、SO 2−)、炭酸(HCO 、CO 2−)、ホウ酸(B(OH) )、及びカルボン酸の塩が好ましい。前記カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、不安定末端の分解除去処理において公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
前記ポリアセタールブロック共重合体(A)の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH−OH基〕を、分解除去処理するために用いる第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタールブロック共重合体(A)と第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する、下記式(10)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
第4級アンモニウム化合物の使用量(質量ppm)=P×14/Q ・・・式(10)
式(10)において、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールブロック共重合体(A)に対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
前記ポリアセタールブロック共重合体(A)の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH−OH基〕を、分解除去処理する際の、第4級アンモニウム化合物の使用量が、0.05〜50質量ppmの範囲であると、実用上充分な不安定末端部の分解除去速度が確保でき、分解除去後に得られるポリアセタールブロック共重合体(A)の色調も良好なものとなる傾向にある。
上述したように、本実施形態において用いるポリアセタールブロック共重合体(A)の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH−OH基〕は、融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールブロック共重合体(A)を溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。この分解除去処理に用いる装置としては、特に限定されないが、押出機、ニーダー等が好適である。分解によりホルムアルデヒドが発生するが、通常、減圧下で除去される。
熱的に不安定な末端部を分解除去する際に、上述した第4級アンモニウム化合物をポリアセタールブロック共重合体(A)中に存在させる方法は、特に限定されないが、具体的には、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法;重合により生成したポリアセタールブロック共重合体(A)パウダーに吹きかける方法;ポリアセタールブロック共重合体(A)が溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入する方法;押出機等を用いて、ポリアセタールブロック共重合体(A)にフィラーやピグメントを配合する場合には、ポリアセタールブロック共重合体(A)の樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添加し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行う方法等が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールブロック共重合体(A)を加熱処理する工程において、ポリアセタールブロック共重合体(A)中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。
ポリアセタールブロック共重合体(A)の熱的に不安定な末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールブロック共重合体(A)と共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。
重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールブロック共重合体(A)の融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてその共重合体を加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れた、好適なポリアセタールブロック共重合体(A)を得ることができる。
〔ブロック共重合体(II)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ブロック共重合体(II)を含む。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に用いられるブロック共重合体(II)は、下記式(1)〜(5)のいずれかで表される。なお、式(1)〜(5)で表されるブロック共重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
A−B−A ・・・式(1)
(A−B) ・・・式(2)
B−(A−B) ・・・式(3)
(A−B)−A ・・・式(4)
(A−B)−X ・・・式(5)
(式(1)〜(5)中、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、nは2〜10の整数であり、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数である。)
本実施形態において「主体とする」とは、重合体ブロック中、単量体単位を60質量%以上含有することを意味する。単量体単位を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
前記ビニル芳香族単量体としては、特に限定されないが、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記共役ジエン単量体としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されず、具体的には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
nは2から〜10の整数であり、2〜9であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。また、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数であり、2〜6であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。なお、Xとなる、m個の重合体鎖が結合している多官能性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、ポリイミン、ポリアルデヒド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリハライド等が挙げられる。
ブロック共重合体(II)の含有量は、ポリアセタール樹脂組成物全体に対して1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、1〜25質量%であることがさらに好ましい。ブロック共重合体(II)の含有量が1質量%以上であることにより、カーボンブラック(III)の組み合わせにより安定した静電気拡散性を付与できる傾向にある。また、50質量%以下であることにより、ポリアセタール樹脂が本来もつ摺動性を維持できる傾向にある。
また、ブロック共重合体(II)の数平均分子量は5,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜200,000であることがさらに好ましい。ブロック共重合体(II)の数平均分子量が5,000以上であることにより導電性カーボンブラック(III)の組み合わせにより安定した静電気拡散性を付与できる傾向にある。また、数平均分子量が500,000以下であることにより溶融混練時に良好な流動性を示すため組成物中への分散性が良好となる傾向にある。ブロック共重合体(II)の数平均分子量の測定は、一般的に用いられているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
(ブロック共重合体(II)の製造方法)
式(1)〜(5)で表されるブロック共重合体(II)の製造方法としては、特に限定されないが、具体的には、特公平5−41515公報に記載の方法を用いることができる。
〔導電性カーボンブラック(III)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、導電性カーボンブラック(III)を含む。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に用いられる導電性カーボンブラック(III)としては、特に限定されないが、具体的には、粒子径が小さいか又は表面積が大きく鎖状構造の発達したものが好ましい。より具体的には、粒子径が0.05μm以下のものがよい。なお、粒子径は、例えば、カーボンブラックの粒子を直接電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。
また、DBP吸油量(ASTM D2415−65T)は350mL/100g以上であることが好ましい。DBP吸油量が350mL/100g以上であることにより、カーボンブラックの添加量が少なくとも(すなわち、組成物の物性を低下させることなく)、良好な静電気拡散性を得ることができる傾向にある。
導電性カーボンブラック(III)としては、特に限定されないが、具体的には、ケッチェンブラックEC〔DBP:350mL/100g〕、EC−300J〔DBP:365mL/100g〕、EC−600JD〔DBP:480mL/100g〕(ライオン(株)製)、Printex XE2−B〔DBP:420mL/100g〕(エボニック デグサ ジャパン(株)製)等が挙げられる。導電性カーボンブラック(III)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
導電性カーボンブラック(III)の添加量は、導電性の付与効果を表すDBP吸油量により変化するため一概に言うことは難しいが、組成物全体に対して3〜10質量%であることが好ましい。
〔酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)を含む。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)におけるポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等のα−オレフィンの単独重合体、又は前記α−オレフィンと、該α−オレフィンと共重合可能な単量体と、の共重合体(ランダム、ブロック又はグラフト重合体)等が挙げられる。
前記α−オレフィンと共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、具体的には、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン等の共役ジエン成分;1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、5−エチリデンノルボルネン、2,5−ノルボナジエン等の非共役ジエン;メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸又はそのエステル誘導体;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。
これらのポリオレフィン樹脂の単独重合体又は共重合体を、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物で、必要により過酸化物を併用して、変性して酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)を得ることができる。酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)は、各種のオレフィン類と酸無水物を共重合したものでもよい。なお、α,β−不飽和カルボン酸としては、特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸が挙げられる。また、その酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。
本実施形態においては、酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)における酸変性率は0.05〜15質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性率は、樹脂サンプルを熱したキシレンで溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてナトリウムメチラートで滴定して求めることができる。また、酸変性率は、使用するα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物が多いほど、高くなる傾向にあり、少ないほど低くなる傾向にある。
酸変性率が0.05質量%以上であることにより、ポリアセタール樹脂(I)と良好に結合する傾向にあり、これにより分散粒子径のコントロールが容易となり、静電気拡散性により優れる傾向にある。酸変性率が15質量%以下であることにより、残存する未反応酸基が少なくなるため組成物の熱安定性が向上する傾向にある。
酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)の重量平均分子量は5,000〜500,000の範囲が好ましく、10,000〜500,000の範囲がより好ましく、10,000〜400,000の範囲がさらに好ましい。また、酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)は1種単独で用いても、樹脂の組成、分子量及び酸変性率の異なるものを2種以上併用してもよい。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)に未変性のポリオレフィン樹脂を混合したものを用いることも可能である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物中におけるブロック共重合体(II)と酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)の質量比(II)/(IV)は1〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、5〜18がさらに好ましい。
〔エポキシ化合物(V)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は必要に応じて、エポキシ化合物(V)をさらに含むことができる。エポキシ化合物(V)をさらに用いる含むことにより、組成物の熱安定性が向上する。
エポキシ化合物(V)としては、特に限定されないが、具体的には、モノ又は多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物であることが好ましい。また、エポキシ化合物(V)の他にエポキシ化合物硬化性添加剤を添加することができる。エポキシ硬化性添加剤もエポキシ化合物(V)に含まれる。エポキシ硬化性添加剤としては、特に限定されないが、具体的には、塩基性窒素化合物及び塩基性リン化合物が通常用いられるが、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物もすべて使用できる。
エポキシ化合物(V)としては、特に限定されないが、具体的には、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等が挙げられる。
エポキシ化合物(V)の硬化性添加剤としては、特に限定されないが、具体的には、イミダゾール及び1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾール等の置換イミダゾール;及びオクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミン等の脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミン等の芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミン等の脂肪族3級アミン;トリトリルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリン等のモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素等へのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1〜20モル);トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物、エポキシ化合物硬化性添加剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は組成物全体に対し0.05〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、0.5〜3質量%がさらに好ましい。
〔その他の成分〕
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、必要に応じて、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている安定剤の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤及びこれらの組合せが好適である。
前記酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
前記ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、特に限定されないが、具体的には、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩等が挙げられる。
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、特に限定されないが、具体的には、ジシアンジアミド;メラミン;メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物;ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂;ポリ−β−アラニン;ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、特に限定されないが、具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物;上記金属の炭酸塩;リン酸塩;珪酸塩;硼酸塩;カルボン酸塩等が挙げられる。このなかでも、カルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及びステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等の脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。なお、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。さらに、これらの中では、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等の脂肪酸カルシウム塩がより好ましい。
前記安定剤の好ましい組合せとしては、具体的には、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せが挙げられる。
それぞれの安定剤の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は所望に応じて、従来ポリアセタール樹脂で用いられる各種の添加剤、具体的には、無機充填材、結晶核剤、導電剤、熱可塑性樹脂、及び熱可塑性エラストマーを配合することができる。
無機充填剤としては、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。繊維状充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用することができる。
粉粒子状充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素等の各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。中空状充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。これらの充填剤は1種又は2種以上を併用して使用することが可能である。
これらの充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施されたものの使用のほうが好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。表面処理剤としては、特に限定されないが、具体的には、シラン系処理剤、チタネート系処理剤、アルミニウム系処理剤、ジルコニウム系処理剤等の各種カップリング処理剤が使用できる。より具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
導電剤としては、特に限定されないが、具体的には、(III)成分として挙げたもの以外のカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、繊維等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、(IV)成分として挙げたもの以外のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂等が挙げられる。また、これらの変性物も含まれる。
熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、具体的には、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。
顔料としては、特に限定されないが、具体的には、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に使用されているものが挙げられ、特に限定されないが、具体的には、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。有機系顔料としては、特に限定されないが、具体的には、縮合ウゾ系化合物、イノン系化合物、フロタシアニン系化合物、モノアゾ系化合物、ジアゾ系化合物、ポリアゾ系化合物、アンスラキノン系化合物、複素環系化合物、ペンノン系化合物、キナクリドン系化合物、チオインジコ系化合物、ベリレン系化合物、ジオキサジン系化合物、フタロシアニン系化合物等の顔料が挙げられる。顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にすることは難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いることが好ましい。
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が好ましい。溶融混練の方法としては、例えば、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させる方法;(III)成分以外の成分のブレンド物を押出機トップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、押出機のサイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)から(III)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法;成分(I)を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、上流に設けられたサイドフィーダーから(III)成分を添加して溶融混練させ、下流に設けられたサイドフィーダーから(II)成分と(IV)成分のブレンド物を添加してさらに溶融混練させる方法等を挙げることができる。このうち、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、成分(I)と必要に応じて成分(V)の混合物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、上流に設けられたサイドフィーダーから(III)成分を添加して溶融混練させ、下流に設けられたサイドフィーダーから(II)成分と(IV)成分のブレンド物を添加してさらに溶融混練させる方法が好ましい。
押出機の減圧度に関しては、0〜0.07MPaが好ましい。混練の温度は、用いるポリアセタール樹脂(I)のJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160℃から240℃ある。混練機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、30秒〜1分が好ましい。
(体積抵抗率)
このようにして得られたポリアセタール樹脂組成物は、体積抵抗率が1.0×10Ωcm以上1.0×1010Ωcm以下であり、1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下であることが好ましく、1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下であることがより好ましい。上記好ましい範囲とすることにより、より静電気拡散性に優れるものとなる。なお、体積抵抗率は実施例に記載の方法により測定することができる。また、体積抵抗率は、導電性カーボンブラックの添加量が多いと、高くなる傾向にあり、少ないと低くなる傾向にある。
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、ポリアセタール樹脂組成物からなる。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の成形品の具体的な用途としては、静電気拡散性が要求され、導電性フィラーの脱落による汚染が忌避される用途、例えば半導体LSI、電気/電子機器装置、或いはそれらの製造工程で使用するシャーシ、トレー等のデバイス用途等に特に好適に用いられる。しかしながら、本実施形態の成形体は、これらの用途に限られることはなく、一般的なポリアセタール樹脂の用途である、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器;携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品;自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、及びクリップ類の部品;シャープペンシルのペン先、及びシャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、及び商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン;散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、及び住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に限定されず、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〈体積抵抗率の測定方法〉
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度をポリアセタール樹脂組成物の場合は205℃で、ABS樹脂の場合組成物は250℃で、ポリカーボネート樹脂組成物の場合は280℃でそれぞれ設定し、金型温度は90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で1A型ISOダンベルを得た。このISOダンベルから30×20×4mmの平板を切り出し体積抵抗率測定用のサンプルとした。組成物の体積抵抗率のレベルにより、以下の2種類の測定方法を使い分けた。
・体積抵抗率が1.0×10Ωcm未満のサンプルの場合
四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194準拠)をこの平板に押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより測定電圧90Vで体積抵抗率を測定した。
・体積抵抗率が1.0×10Ωcm以上のサンプルの場合
URS型リングプローブ(JIS K6911準拠)をこの平板に押し当て、三菱化学製ハイレスタ−UPにより測定電圧1,000Vで体積抵抗率を測定した。
〈静電気拡散性の評価方法〉
東芝機械(株)製IS−100GN成形機を用いて、シリンダー温度をポリアセタール樹脂組成物の場合は205℃で、ABS樹脂組成物の場合は250℃で、ポリカーボネート樹脂組成物の場合は280℃でそれぞれ設定し、金型は温度80℃に設定し、射出時間60秒、冷却時間15秒の条件で130×110×3mmの平板を成形した。この平板から50×50×3mmサイズの平板を切り出し、測定サンプルとした。
この測定サンプルをシシド静電気(株)製スタティックオネストメーターS−5109(JIS L1094準拠)にセットし、プローブ−サンプル平板間の距離を12mm、ターンテーブル回転数1,300rpmの条件において、10,000Vの電圧を1分間印加させた後に印加電圧を遮断した。サンプルに帯電している帯電圧を経時的に測定し、電圧遮断後、帯電圧が最大時の1/2になるまでの時間(半減期)を測定した。この時間が短いほど、静電気拡散性能に優れる。静電気拡散性が高すぎる(体積抵抗率が低い)材料の場合には、本評価で帯電現象が見られない。そのような材料はショックを伴う静電気放電が起こるため静電気拡散用途にはふさわしくない材料である。
〈導電性フィラー脱落性の評価方法〉
上述の方法により成形したISOダンベルを試験片とし、この試験片に先端が円柱状の金属製のピンの先端に医療用ガーゼを巻き、これを試験片に接触させた。試験片を固定したまま、医療用ガーゼを巻いた金属製のピンを線速度30mm/s、復距離20mm、試験環境23℃、50RH%の条件で200回の往復試験を行った。試験後にガーゼを金属製のピンから取り外して観察し、カーボンブラックを含む樹脂がガーゼに付着する最小の接触面圧(臨界接触面圧)を求めた。この接触面圧が大きいほど、組成物の導電性フィラー脱落性に優れる。
(押出機(図1)の説明)
本実施例では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L/D=48、ベント付き)を用いて樹脂組成物を製造した。本押出機の概略図を図1に示す。
実施例、比較例には下記成分を用いた。
〈ポリアセタール樹脂I−i〉
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.25×10−3molを連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10−5molで連続的に添加し重合を行なった。
重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。
不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーに酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。このようにしてポリアセタール樹脂(I−i)を得た。また、ポリアセタール樹脂(I−i)の数平均分子量は60,000であった。
〈ポリアセタール樹脂I−ii〉
ポリアセタール樹脂(I−i)を合成したものと同じ重合機を同じく80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートを、トリオキサン1モルに対し5×10−5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(11)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(数平均分子量Mn=2330)をトリオキサン1モルに対し1×10−3モルになる量で、前記重合機に連続的に供給し重合を行った。重合後の触媒失活、不安定末端の処理操作、脱揮、及びペレタイズ化はポリアセタール樹脂(I−i)の合成と同様の操作を行い、ポリアセタール樹脂(I−ii)として下記平均組成式(12)で表されるポリアセタールブロック共重合体を得た。また、ポリアセタール樹脂(I−ii)の数平均分子量は60,000であった。
なお、本実施例において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてPMMA(ポリメチルメタクリレート)換算により算出した。
・・・式(11)
・・・式(12)
(その他の樹脂成分)
ABS樹脂:ポリブタジエンゴム30質量%、アクリロニトリル14質量%、スチレン56質量%からなるABS樹脂
ポリカーボネート樹脂(PC):ユーピロンS3000(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
(ブロック共重合体(II))
(II−i)
窒素ガス雰囲気下において、シクロヘキサン中でn−ブチルリチウムを全モノマー100g当り1.6ミリモルを用い、スチレン20質量部を60℃で3時間重合し、完全に重合させた後、更に1,3−ブタジエンを60質量部を加え、70℃で6時間重合させた。更にスチレン20質量部を加え、60℃で3時間重合した後、1質量部のフエニル−β−ナフチルアミンを加え、この共重合体を乾燥して取り出した。得られたA−B−A型ブロック共重合体(II−i)(式(1)に相当)は数平均分子量60,000であった。
(II−ii)
窒素ガス雰囲気下において、トルエン中でn−ブチルリチウムを全モノマー100g当り1.6ミリモルを用い、1,3−ブタジエンとスチレンとの質量比60:40の単量体混合物40質量部を60℃で重合し、単量体が完全に共重合した後、更に同単量体混合物30質量部を加え完全に重合させる操作を2度繰り返した。重合完了後1質量部のフエニル−β−ナフチルアミンを加え、乾燥後取り出した。得られた(A−B)型ブロック共重合体(II−ii)(式(2)に相当)は数平均分子量60,000であった。
(II−iii)
窒素ガス雰囲気下において、シクロヘキサン中でn−ブチルリチウムを全モノマー100g当り5.0ミリモルを用い、スチレン30質量部を60℃で5時間重合し、完全に重合させた後、更に1,3−ブタジエンを70質量部を加え、70℃で6時間重合させた。更に活性ポリマー末端に対し0.33モル比のクロロホルムを添加後2時間攪拌し、1質量部のフエニル−β−ナフチルアミンを加え、この共重合体を乾燥して取り出した。得られた(A−B)−X型ブロック共重合体(II−iii)(式(5)に相当)は数平均分子量60,000であった。
(II−iv) タフテックH1221(スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、旭化成ケミカルズ(株)製)
(II−v)SOE S1611 (水素添加スチレン/ブタジエン共重合体、旭化成ケミカルズ(株)製)
(導電性カーボンブラック(III))
(III−i) ケッチェンブラックEC−300J〔DBP:365mL/100g〕(ライオン(株)製)
(III−ii)ケッチェンブラックEC−600JD〔DBP:495mL/100g〕(ライオン(株)製)
(酸変性ポリオレフィン樹脂(IV))
タフマーMA8510(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体、三井化学(株)製)
(エポキシ化合物、エポキシ硬化促進剤(V))
クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(エポキシ当量=350、軟化点=80℃)、エポキシ硬化性添加剤としてはトリフェニルホスフィン(北興化学工業製)を用いた。
(樹脂組成物の製造方法)
図1に示すTEM−26SS押出機を用いて、シリンダー温度設定をポリアセタール樹脂の場合は200℃、ABS樹脂の場合は250℃、ポリカーボネート樹脂の場合は280℃に設定し、(I)成分(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂を含む)と必要に応じて(V)成分の混合物を定量フィーダー15より、(III)成分を定量フィーダー16より、(II)成分と(IV)成分の混合物を定量フィーダー17より供給して、押出量15kg/h、スクリュー回転数150rpmの条件で押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
[実施例1〜20]
各成分を表1に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて上述の方法により体積抵抗率、静電気拡散性、導電性フィラー脱落性の試験を行い、結果を表1に示した。
[比較例1〜10]
各成分を表2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて上述の方法により体積抵抗率、静電気拡散性、導電性フィラー脱落性の試験を行い、結果を表2に示した。表2においては、ポリアセタール樹脂をPOM、ABS樹脂をABS、ポリカーボネート樹脂をPCと示した。
本発明によると、静電気拡散性を有し、かつ他材との摺動時に導電性フィラーの脱落が極めて少ないポリアセタール樹脂組成物を得ることができるので、半導体LSI、電気/電子機器装置、或いはそれらの製造工程で使用するデバイス用途等に好適に使用できる。
1〜12:押出機のバレルゾーン
13:ダイヘッド
14:押出機モーター
15:定量フィーダー(トップ)
16:定量フィーター(サイド1)
17:定量フィーター(サイド2)
18:脱気ベント

Claims (7)

  1. ポリアセタール樹脂(I)と、
    下記式(1)〜(5)のいずれかで表されるブロック共重合体(II)と、
    導電性カーボンブラック(III)と、
    酸変性ポリオレフィン樹脂(IV)とを含有し、
    体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1010Ωcmである、
    ポリアセタール樹脂組成物。
    A−B−A ・・・式(1)
    (A−B) ・・・式(2)
    B−(A−B) ・・・式(3)
    (A−B)−A ・・・式(4)
    (A−B)−X ・・・式(5)
    (式(1)〜(5)中、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、nは2〜10の整数であり、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数である。)
  2. 前記ブロック共重合体(II)の含有量が、1〜50質量%である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  3. エポキシ化合物(V)を、さらに含む、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  4. 前記ポリアセタール樹脂(I)が、下記式(6)で表されるポリアセタールブロック共重合体(A)である、請求項1〜3いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
    H−R−O−R−O−R−H ・・・式(6)
    (式(6)中、
    は、下記式(7a)で表されるオキシメチレン単位と、下記式(7b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位とが互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量が95〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つのRを平均した数平均分子量が5,000〜250,000であり、
    は、下記式(8a)で表されるエチレン単位と、下記式(8b)で表されるn−ブチレン単位と、下記式(8c)で表される水素添加1,2−ポリブタジエン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位とが互いにランダム又はブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量が2〜98モル%、前記n−ブチレン単位の含有量が2〜98モル%、前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位の含有量が2〜98モル%であり、数平均分子量が500〜10,000であり、ヨウ素価20g−I/100g以下の不飽和結合を有してもよい。
    −(CHO)− ・・・式(7a)
    −((CR −O)− ・・・式(7b)
    −(CHCH)− ・・・式(8a)
    −(CHCHCHCH)− ・・・式(8b)
    −(CHCH(CHCH))− ・・・式(8c)
    (式(7b)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアリール基を示し、jは2〜6の整数を示す。))
  5. 前記ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量が10,000〜500,000である、請求項1〜4いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  6. 前記ブロック共重合体(II)の数平均分子量が5,000〜500,000である、請求項1〜5いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる、成形体。
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