JP6076065B2 - 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP6076065B2
JP6076065B2 JP2012271704A JP2012271704A JP6076065B2 JP 6076065 B2 JP6076065 B2 JP 6076065B2 JP 2012271704 A JP2012271704 A JP 2012271704A JP 2012271704 A JP2012271704 A JP 2012271704A JP 6076065 B2 JP6076065 B2 JP 6076065B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyacetal resin
resin composition
mass
parts
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012271704A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014114424A (ja
Inventor
希 稲垣
希 稲垣
三好 貴章
貴章 三好
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2012271704A priority Critical patent/JP6076065B2/ja
Publication of JP2014114424A publication Critical patent/JP2014114424A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6076065B2 publication Critical patent/JP6076065B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Description

本発明は、導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつその加工性が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲に用いられている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂は他の樹脂と同様に電気絶縁体であるため、摺動の際に発生する静電気の除去性能や、導電性に劣り、高度な導電性を要求される用途には通常、使用されていない。
従来より、カーボンブラックやその他の導電性フィラーによって導電性を付与させた樹脂組成物についての提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
一方において、上記のような方法で導電性を付与させたポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂が本来持つ靭性や流動性が大幅に低下し、応用範囲が限定されてしまうという問題を有している。
上述した問題に対し、例えば、ポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラック及び酸化防止剤等の安定剤を添加して組成物を得、当該組成物にさらに他の熱可塑性樹脂を添加し、かつ当該組成物中における前記熱可塑性樹脂の分散状態を制御することによって、導電性、耐衝撃性、耐熱安定性、低ホルムアルデヒド臭気拡散性を併せ持つポリアセタール樹脂組成物を得る技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、ポリアセタール樹脂に特定の導電性カーボンブラック、ポリエーテルエステルアミド、酸変性オレフィン系樹脂を添加することで、導電性、衝撃性、摺動性に優れたポリアセタール樹脂組成物を得る技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、ポリオキシメチレンポリマーに、特定のカーボンブラックとポリウレタンエラストマーを添加して、衝撃強度と流動性に優れた導電性組成物を得る技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開昭63−210161号公報 特開2006−299154号公報 特許第2004−10803号公報 特許第4170397号公報
一方、近年においては、軽量化・低コスト化の目的で、自動車、あるいは電気電子機器内部の金属部品の樹脂化が急速に進んでおり、この金属部品の樹脂化の流れは歯車等の機構部品やアース部品に関しても例外ではない。これらの樹脂化の際には、寸法精度や高負荷条件での使用に十分耐え得る耐久性が要求されるが、上述した従来提案されている技術においては、未だこれらの要求を十分に満たす樹脂組成物は得られていない。
そこで本発明は、寸法精度と耐久性が要求される部品用途に好適で、かつ導電性をもつポリアセタール樹脂組成物、及び当該ポリアセタール樹脂組成物からなる成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂、特定の物理的性状をもつカーボンブラック、及び特定の衝撃改良剤を組みわせたポリアセタール樹脂組成物及びその成形体が、上記従来技術の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
衝撃改良剤(II)5〜25質量部と、
カーボンブラック(III)5〜30質量部と、
を、含み、
前記衝撃改良剤(II)が、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合
物の共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物からなる
群より選ばれる少なくとも一種であり、
前記カーボンブラック(III)のフタル酸ジブチル吸油量が150〜300mL/100gであり、窒素吸着法によるBET比表面積が40〜802/gである、ポリアセタール樹脂組成物。
〔2〕
前記衝撃改良剤(II)が、オレフィン系樹脂である、前記〔1〕に記載のポリアセタ
ール樹脂組成物。
〔3〕
前記衝撃改良剤(II)が、変性されていないオレフィン系樹脂である、前記〔1〕又
は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
前記カーボンブラック(III)の含有量が10〜30質量部である、前記〔1〕乃至
〔3〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔5〕
エポキシ化合物(IV)をさらに含む、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポ
リアセタール樹脂組成物。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む成形体。
〔7〕
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
衝撃改良剤(II)5〜25質量部と、
カーボンブラック(III)と、
を、溶融混練する工程を有し、
前記衝撃改良剤(II)としては、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物と共役ジエ
ン化合物の共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物か
らなる群より選ばれる少なくとも一種を用い、
前記カーボンブラック(III)としては、フタル酸ジブチル吸油量が150〜300mL/100gであり、窒素吸着法によるBET比表面積が40〜802/gであるカーボンブラックを用いる、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、寸法精度、耐久性に優れ、かつ導電性を有するポリアセタール樹脂組成物が得られる。
2軸押出機の概略構成図を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔ポリアセタール樹脂組成物〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
衝撃改良剤(II)5〜25質量部と、
カーボンブラック(III)5〜30質量部と、
を、含み、
前記衝撃改良剤(II)が、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
前記カーボンブラック(III)のフタル酸ジブチル吸油量が100〜300mL/100gであり、窒素吸着法によるBET比表面積が20〜100m2/gである、
ポリアセタール樹脂組成物である。
(ポリアセタール樹脂(I))
ポリアセタール樹脂(I)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。
ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを、共重合させて得られるものである。
また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルと、を、共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
また、ポリアセタール樹脂(I)は、両末端又は片末端に、水酸基等の官能基を有する化合物であってもよい。このような官能基を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーが挙げられる。
さらに、ポリアセタール樹脂(I)は、上述した両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。
上述したように、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂(I)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いることができる。
また、ポリアセタール樹脂(I)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、ポリアセタール樹脂(I)は、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、好ましくはポリアセタールコポリマーを含む。
前記ポリアセタールコポリマーをホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)を用いて得る場合、上記1,3−ジオキソラン等、すなわち上述したエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマール等のコモノマーは、一般的には、トリオキサン100mol%に対して0.1〜60mol%とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜20mol%、さらに好ましくは0.13〜10mol%とする。また、ホルムアルデヒドの4量体(テトラオキサン)を用いて得る場合のコモノマー量としては、0.13〜90mol%とすることが好ましく、より好ましくは0.13〜30mol%、さらに好ましくは0.16〜13mol%である。
本実施形態において、ポリアセタールコポリマーの融点は、寸法精度・耐久性ともに優れた成形体を得る観点から162℃〜173℃であることが好ましく、より好ましくは167℃〜173℃、さらに好ましくは167℃〜171℃である。
融点が167℃〜171℃であるポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)100mol%に対して1.3〜3.5mol%程度のコモノマーを用いることにより得られる。
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、上述した各種コモノマーとを、所定の重合触媒を用いて共重合することにより製造できる。
ポリアセタールコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
前記ルイス酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物等があげられる。具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
また、前記プロトン酸及びそのエステル又は無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
上述した重合触媒の中でも、重合反応制御の観点から、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好適な例として挙げられる。
ポリアセタールコポリマーは、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。
上述のように、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、上述した各種コモノマーとを、所定の重合触媒を用いて共重合することにより得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部が存在するため、そのままでは実用に供することは困難である。
前記熱的に不安定な末端部としては、例えば、〔−(OCH2n−OH基〕が挙げられる。
前記不安定な末端部は、分解除去処理を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。
当該特定の不安定末端部の分解処理方法としては、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下で、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度とし、ポリアセタールコポリマーを溶融状態として加熱処理を施す方法が挙げられる。
[R1234+n-n ・・・ (1)
ここで、式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示す。前記置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。
前記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、前記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
nは1〜3の整数を示す。
Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
上述したポリアセタールコポリマーの不安定な末端部の分解除去処理に用いる第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に限定されないが、本発明による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、一般式(1)におけるR1、R2、R3、及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものがより好ましい。
前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等や、これらの水酸化物;これらの塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;これらの硫酸等のチオ酸塩;これらの蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。
これらの中でも、不安定末端部の分解除去反応の効率の観点から、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4 -、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、及びカルボン酸の塩が好ましい。
カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
前記第4級アンモニウム化合物の好適な使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算することにより求められる。好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q ・・・ (2)
ここで、前記式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
第4級アンモニウム化合物の使用量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下する傾向にあり、50質量ppmを超えると不安定末端部の分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調が悪化する傾向にある。
上述したように、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。
この分解除去処理に用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部を分解除去処理する際、第4級アンモニウム化合物をポリアセタールコポリマー中に存在させる方法については、特に限定されるものではなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。
例えば、ポリアセタールコポリマーが溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリアセタールコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合、ポリアセタールコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、また、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。
重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。
重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
(衝撃改良剤(II))
衝撃改良剤(II)は、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはオレフィン系樹脂の1種又は2種以上であり、より好ましくは変性されていないオレフィン系樹脂の1種又は2種以上である。
上述した材料を衝撃改良剤(II)として用いることにより耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物及び成形体が得られる。
オレフィン系樹脂は、下記一般式(3)により表される。
Figure 0006076065
前記式(3)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を表す。
前記オレフィン系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
前記オレフィン系樹脂としては変性されたもの(変性体)も適用できるが、当該変性体としては、オレフィン樹脂を形成している重合体とは異なる他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン系化合物と酸無水物を共重合したものが挙げられる。
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体、及び、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
A−B−A、(A−B)n、(B−A)n、B−(A−B)n、A−(B−A)n
(A−B)n−A、(B−A)n−B、(B−A)m−X、(A−B)m−X
(E−D)k 、E−(D−E)k、D−(E−D)k 、[(E−D)kj − Y、
[(D−E)k−D]j−Y、[(E−D)k−D]j − Y 、
E−(D−C)k 、E−(C−D)k 、E−(C−D−C)k、E−(D−C−D)k
C−E−(D−C)k、C−E−(C−D)k、C−E−(D−C)k −D、
[(C−D−E)kj−Y、[C−(D−E)kj−Y 、
[(C−D)k−E]j−Y、[(C−D−C)k−E]j−Y、
[(D−C−D)k−E]j−Y、[(E−D−C)kj−Y、
[E−(D−C)kj−Y、[E−(C−D−C)kj−Y、
[E−(D−C−D)kj−Y、(C−D)k+1、C−(D−C)k
D−(C−D)k+1、[(C−D)kj−Y、[(D−C)k−D]j−Y、
[(C−D)k−C]j−Y
上式中、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位、またはその水素添加物を主体とする重合体ブロックであり、Cはビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックであり、Dは共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量単位とからなる非水素添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体ブロックであり、Eは共役ジエン単量体単位からなるビニル結合量が30%未満である非水添重合体ブロックを水添して得られる水添重合体ブロックを表す。
各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別されていなくてもよい。
非水添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体ブロックB中のビニル芳香族単量体単位は、均一に分布していてもよいし、テーパー状に分布していてもよい。
また水添共重合体ブロックBには、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。
また水添共重合体ブロックDには、ビニル芳香族単量体単位含有量が異なるセグメントが複数個存在していてもよい。
nは2〜10の整数であり、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数であり、Yはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基であり、kは1〜5の整数であり、jは2〜11の整数である。
また、Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を表す。
前記カップリング剤としては、後述の2官能以上のカップリング剤を用いることができる。
前記多官能開始剤としては、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等を用いることができる。
なお、前記「主体とする」とは、重合体ブロック中、単量体単位を60質量%以上含有することを意味する。単量体単位を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
前記ビニル芳香族単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記共役ジエン単量体としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記のように、上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体、及び、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物を表す各式中、nは2〜10の整数であり、2〜9であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。
また、前記のように、上記各式中、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数であり、2〜6であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
なお、Xとなる、m個の重合体鎖が結合している多官能性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、ポリイミン、ポリアルデヒド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリハライド等が挙げられる。
また、Yはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基であり、kは1〜5の整数であり、1〜4あることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。jは2〜11の整数であり、2〜10であることが好ましく、2〜9であることがより好ましい。
衝撃改良剤(II)の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物を得る観点から、5〜25質量部であるものとする。好ましくは5〜20質量部であり、より好ましくは7〜15質量部である。
また、本実施形態においては、衝撃改良剤(II)は、耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物を得る観点から、オレフィン系樹脂であることが好ましく、上記に加え、高導電性発現の観点から、酸変性されていないオレフィン系樹脂であるとさらに好ましい。
ここで「酸変性されていない」とは、衝撃改良剤(B)が、α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸)及び/又はその酸無水物等で(必要により過酸化物を併用して)変性されておらず、またオレフィン系樹脂が、各種のオレフィン類と酸無水物を共重合したものでもないことを指す。
(カーボンブラック(III))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、カーボンブラックを含有する。
本実施形態において用いるカーボンブラック(III)は、従来一般的に樹脂組成物に用いられる超導電性カーボンブラックではなく、フタル酸ジブチル(DBP)吸油量が低く、かつ窒素吸着法によるBET比表面積が低いことが特徴である。
具体的には、耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、DBP吸油量が100〜300mL/100gであり、窒素吸着法によるBET比表面積が20〜100m2/gのカーボンブラックであるものとする。
DBP吸油量の好ましい範囲は120〜250mL/100gであり、さらに好ましい範囲は150〜200mL/100gである。
窒素吸着法によるBET比表面積の好ましい範囲は30〜90m2/gであり、さらに好ましい範囲は40〜80m2/gである。
なお、窒素吸着法によるBET比表面積およびフタル酸ジブチル吸油量は、カーボンブラックのメーカー各社が開示している情報であり、それを基に適宜選択することができる。
また、カーボンブラック(III)の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して5〜30質量部である。
カーボンブラック(III)の添加量を5質量部以上とすることにより高い導電性が得られ、30質量部以下とすることにより耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物が得られる。
カーボンブラック(III)の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して10〜30質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましい。
(エポキシ化合物(IV))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、エポキシ化合物(IV)をさらに含んでいてもよい。
エポキシ化合物としては、モノ又は多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物を用いることができる。
また、エポキシ化合物(IV)としては、エポキシ化合物硬化性添加剤も用いることができる。
前記エポキシ硬化性添加剤としては、塩基性窒素化合物及び塩基性リン化合物が通常用いられるが、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物も用いることができる。
前記モノ又は多官能グリシジル誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
また、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等が挙げられる。
また、不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4‐(2−メチルオキシラニル)−1−メチルシクロヘキサン、リモネンオキサイド等が挙げられる。
前記エポキシ硬化性添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール;1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾール等の置換イミダゾール;オクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミン等の脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミン等の芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミン等の脂肪族3級アミン;トリトリルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリン等のモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素等へのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1〜20モル)、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物、エポキシ化合物硬化性添加剤は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、その添加量は、耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物が得る観点から、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し0.05〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
(安定剤)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を使用することができる。
前記安定剤としては、例えば、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<酸化防止剤>
前記酸化防止剤としては、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
<ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤>
前記ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。
前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが挙げられ、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、具体的にはカルシウム塩が好ましく、当該カルシウム塩としては、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
上述した各種安定剤の好ましい組み合せは、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特にポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、特に脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組み合わせである。
上述したそれぞれの安定剤の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、例えばホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
(添加剤)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、かつ所望の特性に応じて、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種添加剤を使用することができる。添加剤としては、例えば、下記の無機充填剤、結晶核剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び顔料が挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<無機充填剤>
無機充填剤は、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。
繊維状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用することができる。
粉粒子状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナの如き金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイカ、フレーク状ガラス、各種金属箔が挙げられる。
中空状の充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
これらの充填剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、成形体の表面の平滑性、機械的特性の観点から、表面処理の施されたものが好ましい場合がある。
表面処理剤としては従来公知のものが使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が挙げられる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
<結晶核剤>
結晶核剤としては、例えば、窒化ホウ素等が挙げられる。
<導電剤>
導電剤としては、上記(III)成分として挙げたもの以外のカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末又は金属繊維が挙げられる。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、上記(II)成分として挙げたもの以外のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂等が挙げられる。また、これらの変性物も含まれる。
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーとしては、 ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
<顔料>
顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
有機系顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料が挙げられる。
顔料の添加割合は所望の色調に応じて選択できるが、一般的には、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲が好ましい。
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述したポリアセタール樹脂(I)100質量部と、衝撃改良剤(II)5〜25質量部と、カーボンブラック(III)とを、溶融混練することにより製造することができる。カーボンブラックの量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、5〜30質量部が好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。以下に限定されるものではないが、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が最も好ましい。
溶融混練の方法としては、例えば、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させる方法、(III)成分以外の成分のブレンド物を押出機トップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、押出機のサイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)から(III)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法、(II)成分と(III)成分以外のブレンド物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、単一のサイドフィーダーから(II)成分と(III)成分のブレンド物を添加してさらに溶融混練させる方法、(II)成分と(III)成分以外のブレンド物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、複数のサイドフィーダーから(II)成分と(III)成分をそれぞれ逐次添加してさらに溶融混練させる方法等が挙げられる。これらのうち、安定した性能発現の観点から、(III)成分以外のブレンド物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、サイドフィーダーから(III)成分を添加してさらに溶融混練させる方法が好ましい。
押出機の減圧度に関しては、0〜0.07MPaが好ましい。
溶融混練の温度は、用いるポリアセタール樹脂のJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160℃〜240℃ある。
混練機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、30秒〜1分が好ましい。
〔成形体〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより所望の成形体が得られる。
ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
〔成形体の用途〕
ポリアセタール樹脂組成物の成形体の用途としては、寸法精度と高い耐久性が要求される用途が好適である。
以下に限定されるものではないが、例えば、導電性歯車、導電性フランジ、導電性ドラムギア、導電性軸受用途等に特に好適に用いられる。
また、一般的なポリアセタール樹脂の用途である、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;さらにシャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例のポリアセタール樹脂組成物及び成形体に対する評価項目を以下に示す。
(体積抵抗率の測定方法)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件でISOダンベルを得た。このISOダンベルから30mm×20mm×4mmの平板を切り出し体積抵抗率測定用のサンプルとした。
体積抵抗率のレベルにより、以下の2種類の測定方法を使い分けた。
<体積抵抗率が1.0×104Ωcm未満のサンプルの場合>
四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194準拠)をこの平板に押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより測定電圧90Vで体積抵抗率を測定した。
<体積抵抗率が1.0×104Ωcm以上のサンプルの場合>
URS型リングプローブ(JIS K6911準拠)をこの平板に押し当て、三菱化学製ハイレスターUPにより測定電圧1,000Vで体積抵抗率を測定した。
(引張伸度の測定方法)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件でISOダンベルを得た。このISOダンベルを用いて、ISO 527に準拠した引張試験を行い、引張伸度を評価した。
(歯車精度の測定方法)
住友重機工業(株)製の射出成形機(商品名「SH−75」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件にて、右ねじれ方向、ピッチ円直径80mm、モジュール1、ねじれ角20度、歯幅12mm、ウエッブの厚さ2mm、リブの数12本のはすばギアを製造した。このようにして得られたはすば歯車について、大阪精密機械機械(株)製の歯車精度測定器を用い、JIS B 1702−1に準拠して、90度の間隔の4歯における歯形誤差、及び歯筋誤差を測定した。
その歯形誤差と歯筋誤差の数値が小さいほど、はすば歯車の精度が優れていると判断した。
(歯車耐久性の測定方法)
ファナック(株)製の射出成形機(商品名「ROBOSHOT α‐50iA」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件にて、ピッチ円直径60mm、モジュール1、歯数60、ねじれ角0度、歯幅5mm、ウエッブの厚さ2mmの歯車を製造した。この歯車を23℃50RHの環境下で24時間放置した後、東芝製の歯車耐久試験機の従動側にセット、テナックC−45201製の同形状のギアを駆動側にセットした。そして、ピッチ円上の回転速度を0.5m/s、トルクを4.5kgf・cmに設定して運転させ、23℃、50RH%の条件下で168時間連続運転を行った。
そのときの従動側及び駆動側のギアの両方の重量減の合計(mg)をギアの耐久性として評価した。
この値が低いほど、ギアの耐久性に優れていると判断した。
なお、前記試験条件において、168時間の経過前にギアの歯折れが発生し、試験が続行できない場合は「歯折れあり」とした。
実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の原料成分を以下に説明する。
〔原料成分〕
(ポリアセタール樹脂(I))
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.25×10-3molを連続的に添加した。
さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molで連続的に添加し重合を行った。
重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。
失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。
水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。
乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行った。
不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
このようにしてポリアセタール樹脂(I)を得た。また、ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量は60,000であった。
(衝撃改良剤(II))
<II−i>
STAT RITE C2300ポリウレタン(BFGoodrich製)
<II−ii>
窒素ガス雰囲気下において、シクロヘキサン中でn−ブチルリチウムを全モノマー100g当り1.6ミリモルを用い、スチレン20質量部を60℃で3時間重合し、完全に重合させた後、更に1,3−ブタジエンを60質量部加え、70℃で6時間重合させた。
更にスチレン20質量部を加え、60℃で3時間重合した後、1質量部のフェニル−β−ナフチルアミンを加え、スチレンとブタジエンの共重合体を得た。この共重合体を乾燥して取り出し、A−B−A型ブロック共重合体<II−ii>を得た。
<II−iii>
n−ブチルリチウムを重合開始剤とし、シクロヘキサン溶媒中で、テトラヒドロフランを1,2結合量調節剤として、スチレンとブタジエンをアニオンブロック共重合することにより、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を重合した。
次に得られたスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとn−ブチルリチウムを水素添加触媒として、水素圧5kg/cm2、温度50℃で水素添加を行った。
この結果、C−D−C型の、スチレン含有量14質量%、水素添加率99%、Dブロック部分の1,2結合量77%のブロック共重合体<II−iii>を得た。
<II−iv>
1−ブテン含有率90質量%、エチレン含有率10質量%のオレフィン共重合体
(カーボンブラック(III))
<III−i>
DBP吸油量320mL/100g、BET比表面積720m2/gのカーボンブラック
<III−ii>
DBP吸油量180mL/100g、BET比表面積51m2/gのカーボンブラック
<III−iii>
DBP吸油量76mL/100g、BET比表面積85m2/gのカーボンブラック
<III−iv>
DBP吸油量131mL/100g、BET比表面積140m2/gのカーボンブラック
(エポキシ化合物(IV))
クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(エポキシ当量=350、軟化点=80℃)を用いた。
また、エポキシ硬化性添加剤として、トリフェニルホスフィン(北興化学工業製)を用いた。
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造〕
2軸押出機を用いてポリアセタール樹脂組成物を製造した。
本実施例では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L/D=48、ベント付き)を用いた。
図1に2軸押出機の概略構成図を示す。
2軸押出機は、個々に独立している押出機のバレルゾーン1〜14を具備し、当該バレルゾーンの終端部はダイヘッド15に連結されている。
バレルゾーンの始端部は押出機モーター16に連結されており、モーターの駆動により原料がバレルゾーン1〜14を移動するようになされている。
バレルゾーン1にはトップ部の定量フィーダー17、バレルゾーン8にはサイド部の定量フィーダー18が設けられている。
バレルゾーン13には脱気ベント19が設けられている。
シリンダー温度を200℃に設定し、(III)成分以外の成分のブレンド物を定量フィーダー17より、(III)成分を定量フィーダー18より、それぞれ供給して、押出量15kg/h、スクリュー回転数150rpmの条件で押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
〔実施例1〜16〕
各成分を表1に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
得られたペレットを用いて、上述の方法により体積抵抗率、引張伸度、歯車精度、歯車耐久性の試験を行った。測定及び評価結果を表1に示す。
〔比較例1〜17〕
各成分を表2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
得られたペレットを用いて、上述の方法により体積抵抗率、引張伸度、歯車精度、歯車耐久性の試験を行った。測定及び評価結果を表2に示す。
Figure 0006076065
Figure 0006076065
表1、表2に示すように、実施例1〜16においては、寸法精度、耐久性に優れ、かつ導電性を有するポリアセタール樹脂組成物が得られた。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、歯車、複写機ドラムギア、ドラムフランジの材料として、産業上の利用可能性を有している。
1〜14 押出機のバレルゾーン
15 ダイヘッド
16 押出機モーター
17 定量フィーダー(トップ)
18 定量フィーター(サイド)
19 脱気ベント

Claims (7)

  1. ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
    衝撃改良剤(II)5〜25質量部と、
    カーボンブラック(III)5〜30質量部と、
    を、含み、
    前記衝撃改良剤(II)が、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合
    物の共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物からなる
    群より選ばれる少なくとも一種であり、
    前記カーボンブラック(III)のフタル酸ジブチル吸油量が150〜300mL/100gであり、窒素吸着法によるBET比表面積が40〜802/gである、ポリアセタール樹脂組成物。
  2. 前記衝撃改良剤(II)が、オレフィン系樹脂である、請求項1に記載のポリアセター
    ル樹脂組成物。
  3. 前記衝撃改良剤(II)が、変性されていないオレフィン系樹脂である、請求項1又は
    2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  4. 前記カーボンブラック(III)の含有量が10〜30質量部である、請求項1乃至3
    のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  5. エポキシ化合物(IV)をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリア
    セタール樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む成形体。
  7. ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
    衝撃改良剤(II)5〜25質量部と、
    カーボンブラック(III)と、
    を、溶融混練する工程を有し、
    前記衝撃改良剤(II)としては、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル化合物と共役ジエ
    ン化合物の共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物か
    らなる群より選ばれる少なくとも一種を用い、
    前記カーボンブラック(III)としては、フタル酸ジブチル吸油量が150〜300mL/100gであり、窒素吸着法によるBET比表面積が40〜802/gであるカーボンブラックを用いる、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
JP2012271704A 2012-12-12 2012-12-12 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 Active JP6076065B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012271704A JP6076065B2 (ja) 2012-12-12 2012-12-12 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012271704A JP6076065B2 (ja) 2012-12-12 2012-12-12 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014114424A JP2014114424A (ja) 2014-06-26
JP6076065B2 true JP6076065B2 (ja) 2017-02-08

Family

ID=51170763

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012271704A Active JP6076065B2 (ja) 2012-12-12 2012-12-12 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6076065B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6484434B2 (ja) * 2014-11-17 2019-03-13 旭化成株式会社 ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4337606B2 (ja) * 2003-07-25 2009-09-30 三菱化学株式会社 画像形成装置用ベルト及び画像形成装置
JP2006348265A (ja) * 2005-05-18 2006-12-28 Asahi Kasei Chemicals Corp ポリアセタール樹脂組成物
JP2007145023A (ja) * 2006-12-18 2007-06-14 Ntn Corp 導電性樹脂成形体およびその製造方法
JP2012236905A (ja) * 2011-05-11 2012-12-06 Asahi Kasei Chemicals Corp 導電性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014114424A (ja) 2014-06-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6777487B2 (en) Polyacetal block copolymer
JP6054988B2 (ja) ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
KR100773583B1 (ko) 폴리옥시메틸렌 수지 조성물 및 그 성형체
JP5890848B2 (ja) 導電性ポリアセタール樹脂組成物及び成形体
JP6310760B2 (ja) ポリアセタール樹脂製導電性icチップトレイ
JP6076065B2 (ja) 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
JP6484434B2 (ja) ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
JP6054811B2 (ja) 導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
JP7229800B2 (ja) ポリアセタール樹脂組成物
JP5841914B2 (ja) ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
JP2012236905A (ja) 導電性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法
JP5730624B2 (ja) ポリオキシメチレン樹脂組成物及びその製造方法
JP7212534B2 (ja) 樹脂組成物及びその成形体
JP2003001761A (ja) ポリアセタール樹脂/熱可塑性エラストマー複合成形体及びその成形方法
JP5545991B2 (ja) ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体
JP7241562B2 (ja) 樹脂成形体
JP7240889B2 (ja) ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
JP5800459B2 (ja) ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体
JP7177690B2 (ja) 樹脂組成物及びその成形体
JP5530841B2 (ja) ポリオキシメチレン樹脂組成物および成形体
JP2020105494A (ja) 樹脂組成物及びその成形体
JP2012021096A (ja) ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151014

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20160401

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160523

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160707

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160712

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161013

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161129

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161216

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170110

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6076065

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350