JP2019137743A - ポリオキシメチレン樹脂組成物及びポリオキシメチレン樹脂成形体 - Google Patents

ポリオキシメチレン樹脂組成物及びポリオキシメチレン樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】実用上十分な生産性を維持しつつ、成形体の寸法精度及び品位を高めることが可能なポリオキシメチレン樹脂組成物、並びに寸法精度及び品位を高めたポリオキシメチレン樹脂成形体の提供。【解決手段】無機物質と、ポリオキシメチレン樹脂と、を含有するポリオキシメチレン樹脂組成物であって、含有されている該ポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量は30000〜65000であり、熱重量分析で空気中230℃にて150分間保持して測定した重量減少率が5〜30%であり、該重量減少率に相当する重量減少量を100%としたときの重量減少量50%到達時点での重量減少速度が4.4%/分以下であるポリオキシメチレン樹脂組成物、及び前記ポリオキシメチレン樹脂組成物を含むポリオキシメチレン樹脂成形体。【選択図】なし

Description

本実施形態は、ポリオキシメチレン樹脂組成物及びポリオキシメチレン樹脂成形体に関する。
ポリオキシメチレン樹脂は、機械的強度・剛性が高く、耐油性・耐有機溶剤性や自己潤滑性に優れ、広い温度範囲でバランスがとれた樹脂であり、且つその加工が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、精密機器、家電・OA機器、自動車、工業用途および雑貨などの機構部品・摺動部品を中心に広範囲に用いられている。近年、ポリオキシメチレン樹脂の利用分野の拡大によって、ポリオキシメチレン樹脂の特性を有しつつ、外観や質感の改善、荷重撓み温度、精度や制振性の向上、あるいは熱線膨張の軽減など、さらにポリオキシメチレン樹脂に対する要求性能が高くなっているのが現状である。
これらのポリオキシメチレン樹脂の特性の改善や新たな用途を提案するために、高比重のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いる試みが成されている。例えば、熱伝導性複合材材料を得るために高比率のフィラー粒子を有するポリオキシメチレン樹脂組成物を用いる技術(例えば、特許文献1参照。)、高比重のモノフィラメントを得るために無機微粒子を含有したポリオキシメチレン樹脂組成物を用いる技術(例えば、特許文献2参照。)、バランサーを一体成形した計測器用指針を得るためにブロンズ粉等の高比重材料を含有したポリオキシメチレン樹脂組成物を用いる技術(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
一方、金属部品を得るために金属射出成形(MIM)やセラミックス部品を得るためにセラミックス射出成形(CIM)の活用が拡大してきているが、この原料として高濃度の金属やセラミックスを含んだポリオキシメチレン樹脂組成物を用いる試みが成されている。例えば、焼結可能な金属粉末とポリオキシメチレンやポリ乳酸等より構成される有機バインダとからなる金属粉末の射出成形用組成物を用いる技術(例えば、特許文献4参照。)、着色セラミック造形品を得るためにセラミック粉末、ポリオキシメチレン及び発色粒子から成るポリオキシメチレン樹脂組成物を用いる技術(例えば、特許文献5参照。)等が提案されている。
特開2011−038078号公報 特開平11−293523号公報 特開平10−281825号公報 特開2012−21172号公報 特開平08−090528号公報
しかしながら、上記特許文献1〜5に開示されているポリオキシメチレン樹脂組成物では、実用上十分な生産性を維持しながら、寸法精度及び品位を高めることが困難であるという問題を有している。
そこで本発明では、実用上十分な生産性を維持しつつ、成形体の寸法精度及び品位を高めることが可能なポリオキシメチレン樹脂組成物、並びに寸法精度及び品位を高めたポリオキシメチレン樹脂成形体を提供することを目的とする。
本実施形態者らは、上述した従来技術の問題について鋭意研究を重ねた結果、特定の熱的特性を有するポリオキシメチレン樹脂組成物が、上記従来技術の問題を解決できることを見出し、本実施形態を完成するに至った。
すなわち、本実施形態は以下の通りである。
〔1〕
無機物質と、ポリオキシメチレン樹脂と、を含有するポリオキシメチレン樹脂組成物であって、
含有されている該ポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量は30000〜65000であり、
熱重量分析で空気中において230℃にて150分間保持して測定した重量減少率が5〜30%であり、
該重量減少率に相当する重量減少量を100%としたときの重量減少量50%到達時点での重量減少速度が4.4%/分以下である
ことを特徴とする、ポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔2〕
142℃〜154℃の結晶化開始温度を有する、〔1〕記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔3〕
二種類以上のホルムアルデヒド捕捉剤を更に含む、〔1〕又は〔2〕の何れかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔4〕
前記無機物質が、金属を含む、〔1〕〜〔3〕の何れかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔5〕
前記無機物質が、セラミックスを含む、〔1〕〜〔3〕の何れかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕の何れかに記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含むことを特徴とする、ポリオキシメチレン樹脂成形体。
本実施形態によれば、実用上十分な生産性を維持しつつ、成形体の寸法精度及び品位を高めることが可能なポリオキシメチレン樹脂組成物、並びに寸法精度及び品位を高めたポリオキシメチレン樹脂成形体を得ることができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂のPMMA換算によるGPC数平均分子量測定の一形態を示す。 本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の熱重量分析による重量減少率測定の一形態を示す。 本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の熱重量分析による重量減少速度測定の一形態を示す。
以下、本実施形態を実施するための形態(以下、「本実施形態」を言う。)について、図を参照して詳細に説明する。本実施形態は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、各図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物、ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法、ポリオキシメチレン樹脂成形体について、順次詳細に説明する。
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、無機物質と、ポリオキシメチレン樹脂と、を含有する。本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂は、数平均分子量が30000〜65000である。また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、熱重量分析で空気中における230℃にて150分間維持して測定した重量減少率が樹脂組成物の全質量の5〜30%である。また、この重量減少率に相当する重量減少量を100%としたときの重量減少量50%到達時点での重量減少速度が4.4%/分以下である。
なお、本明細書中において、「(ポリオキシメチレン樹脂組成物に)含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量」は、ポリオキシメチレン樹脂組成物又はポリオキシメチレン樹脂成形体を試料として、後述するようにゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される、ポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量を指す。
これより、ポリオキシメチレン樹脂組成物、ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法について、順次詳細に説明する。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物P>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物Pは、以下に示すポリオキシメチレン樹脂(A)、無機物質(B)を含み、必要に応じて添加剤(C)を含んでもよい。
(ポリオキシメチレン樹脂(A))
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に使用可能なポリオキシメチレン樹脂(A)としては、ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)及びポリオキシメチレンコポリマー(a2)が挙げられる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂(A)として、ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)を単独で用いることもできるが、生産性の観点から、少なくとも1種のポリオキシメチレンコポリマー(a2)を含むポリオキシメチレン樹脂(A)が好ましく、特にはポリオキシメチレンコポリマー(a2)を単独で用いることが好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いるポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量Mnは、特に限定されないが、30000〜70000であることが好ましく、30000〜65000であることがより好ましく、31000〜63000であることが更に好ましく、32000〜59000であることがより更に好ましい。
なお、本明細書中において、「用い(られ)るポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量」は、原料としてのポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量を指し、以下「原料ポリオキシメチレン樹脂」とも称する。
上記好ましい数平均分子量Mnのポリオキシメチレン樹脂を用いて製造することにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量を30000〜65000とすることができ、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる。
なお、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造過程における溶融混練などを経ると、熱分解の影響を受けてポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量が有意に低減することが予測される場合には、ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂について所望する数平均分子量よりも500〜5000程度大きい数平均分子量を有するポリオキシメチレン樹脂を原料として用いてもよい。
なお、熱分解の影響を受けてポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量が有意に低減することが予測される場合としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシメチレン樹脂自体の熱安定性が低い場合や、後述の無機物質(B)として反応性を有する金属が多量に配合される場合などが挙げられる。
本実施形態に係る原料ポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
具体的手順としては、試料としてポリオキシメチレン樹脂を秤量したものを使用して試料溶液を調製する以外は、ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量について後述する測定方法と同様にして求めることができる。
なお、本測定方法にてメルトフローレート(MFR)(ISO1133条件D・190℃)が30及び70の原料ポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量Mnを測定したところ、各々56000及び46000であった。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いるポリオキシメチレン樹脂(A)の配合量は、特に限定されないが、ポリオキシメチレン樹脂組成物100質量%として、5質量%以上30質量%以下の範囲で適宜設定することができ、6質量%以上28質量%以下であることが好ましく、7質量%以上26質量%以下であることがより好ましい。
なお、上述するように、熱分解の影響を受けてポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量が有意に低減することが予測される場合は、ポリオキシメチレン樹脂(A)の配合量を上記範囲よりも3質量%程度多くしてもよい。
上述するポリオキシメチレン樹脂(A)は、下記のモノマー、連鎖移動剤、及び重合触媒等を用い、下記(1)重合工程、(2)末端安定化工程、(3)造粒工程により製造することができる。
(1)重合工程
以下、ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の場合と、ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の場合とに分けて、各々の重合工程について説明する。
(1)−1:ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の重合工程
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)は、オキシメチレンユニットのみを主鎖に有するポリマーである。ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の両末端又は片末端は、エステル基又はエーテル基により封鎖されていてもよい。
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)は、公知のスラリー重合法(例えば、特公昭47−6420号公報及び特公昭47−10059号公報に記載の方法)により製造することができる。当該重合工程においては、末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンホモポリマーとして得ることができる。
1)モノマー
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の製造に使用するモノマーとしては、例えば、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。
安定した分子量のポリオキシメチレンホモポリマー(a1)を継続的に得るために、精製され、かつ不純物濃度が低く、安定したホルムアルデヒドガスを用いることが好ましい。ホルムアルデヒドの精製方法としては、公知の方法(例えば、特公平5−32374号公報及び特表2001−521916号公報に記載の方法)が挙げられる。
モノマーとして、ホルムアルデヒドガスを用いる場合、水、メタノール、蟻酸等の重合反応中の重合停止作用や連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものが好ましい。これらの不純物が少ないほど、予期せぬ連鎖移動反応を回避でき、目的の分子量のポリオキシメチレンホモポリマー(a1)を得ることができる。中でも、ポリマー末端基に水酸基を誘導する不純物の含有量は、全モノマー量に対して、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましい。
2)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の製造に使用する連鎖移動剤としては、以下に限定されるものではないが、一般にはアルコール類、酸無水物などを用いることができる。
連鎖移動剤として、水、メタノール、蟻酸、酢酸等の重合反応中の重合停止作用や連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。不純物の少ない連鎖移動剤を得る方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、汎用され、入手可能な水分含有量が規定量を超える連鎖移動剤を乾燥窒素でバブリングし、活性炭やゼオライト等の吸着剤により不純物を除去し、精製する方法等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
3)重合触媒
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の製造に使用する重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オニウム塩系重合触媒などが挙げられる。
オニウム塩系重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(1)で表される化合物などが挙げられる。
[R1234M]+- ・・・(1)
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立にアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素、Xは求核性基を示す。R1、R2、R3及びR4は、同じであっても異なっていてもよい。)
オニウム塩系重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、第4級アンモニウム塩系化合物及び第4級ホスホニウム塩系化合物などが挙げられ、中でも、テトラメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムアセタート、テトラエチルホスホニウムヨージド、トリブチルエチルホスホニウムヨージドが好ましい。
4)反応器
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の製造に使用する反応器としては、以下に限定されるものではないが、例えば、バッチ式の攪拌機付き反応槽、連続式のコニーダー、二軸スクリュー式連続押し出し混練機、二軸パドル型連続混合機などが挙げられる。
反応器の胴の外周は反応混合物を加熱又は冷却できる構造を有することが好ましい。
(1)−2:ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の重合工程
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)は、オキシメチレンユニットを主鎖に有する共重合ポリマーである。コモノマーユニットは、オキシメチレンユニットと共重合できるユニットであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットであることが好ましい。ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の両末端又は片末端は、エステル基又はエーテル基により封鎖されていてもよく、両末端が封鎖されていてもよい。
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)は、コモノマーユニットを、オキシメチレンユニット100molに対して、0.3mol以上含有することが好ましく、0.4mol以上含有することがより好ましく、0.5mol以上含有することがさらに好ましく、0.6mol以上含有することがさらにより好ましく、1.2mol以上含有することがよりさらに好ましい。また、ポリオキシメチレンコポリマー(a2)は、コモノマーユニットを、3.0mol以下含有することが好ましく、2.0mol以下含有することがより好ましく、1.5mol以下含有することがさらに好ましい。
オキシメチレンユニット100molに対するコモノマーユニットの含有割合を好ましい範囲にすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)は、以下に限定されるものではないが、公知の重合法(例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法)により製造することができる。当該重合工程においては、末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンコポリマーとして得ることができる。
1)主モノマー
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の製造に使用する主モノマーとしては、例えば、ホルムアルデヒド又はその3量体であるトリオキサン若しくは4量体であるテトラオキサンなどの環状オリゴマーなどが挙げられる。
本実施形態において「主モノマー」とは、全モノマー量に対して50質量%以上含有されているモノマーユニットをいう。
2)コモノマー
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の製造に使用するコモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテル化合物が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキオカン、及び分子に分岐若しくは架橋構造を構成しうるモノ−若しくはジ−グリシジル化合物などが挙げられる。
環状エーテル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)を重合する際、主モノマー及びコモノマーとして、水、メタノール及び蟻酸などの重合反応中の重合停止作用及び連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものが好ましい。不純物を極力含まない主モノマー及びコモノマーを用いることにより、予期せぬ連鎖移動反応を回避でき、目的の分子量のポリオキシメチレンコポリマー(a2)を得ることができる。中でも、ポリマー末端基に水酸基を誘導する不純物の含有量は、全モノマー量に対して、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、3質量ppm以下であることがさらに好ましい。
不純物量の少ない主モノマー及びコモノマーを得る方法としては、公知の方法(例えば、主モノマーについては、特開平3−123777号公報及び特開平7−33761号公報に記載の方法、コモノマーについては、特開昭49−62469号公報及び特開平5−271217号公報に記載の方法)が挙げられる。
3)連鎖移動剤
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の製造においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドのジアルキルアセタール及びそのオリゴマー;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等の低級脂肪族アルコールなどが挙げられる。ホルムアルデヒドのジアルキルアセタールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の低級脂肪族アルキル基であることが好ましい。
長鎖分岐ポリオキシメチレンコポリマー(a2)を得るためには、連鎖移動剤として、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基及びアルコキシ基からなる群より選択される1種以上の基を有する重合体を用いてもよい。
連鎖移動剤として、水、メタノール、蟻酸、酢酸などの重合反応中の重合停止作用や連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。不純物の少ない連鎖移動剤を得る方法としては、例えば、汎用され、入手可能な水分含有量が規定量を超える連鎖移動剤を乾燥窒素でバブリングし、活性炭やゼオライト等の吸着剤により不純物を除去し、精製する方法などが挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。いずれの場合においても、得られるポリオキシメチレンコポリマー(a2)は不安定末端数の少ないものが好ましい。
4)重合触媒
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の製造に使用する重合触媒としては、特に限定されないが、ルイス酸、プロトン酸、及びプロトン酸のエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物などが挙げられる。具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン及び五フッ化アンチモン、並びにそれらの錯化合物又は塩などが挙げられる。
プロトン酸及びプロトン酸のエステル又は無水物としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、及びトリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
重合触媒としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルがより好ましい。
重合触媒としては、必要に応じて、例えば、特開平05−05017号公報に記載の末端ホルメート基の生成を低減するような触媒を併用してもよい。
5)反応器
ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の製造に使用する反応器としては、以下に限定されるものではないが、例えば、バッチ式の攪拌機付き反応槽、連続式のコニーダー、二軸スクリュー式連続押し出し混練機、二軸パドル型連続混合機などが挙げられる。
反応器の胴の外周は反応混合物を加熱又は冷却できる構造を有することが好ましい。
(2)末端安定化工程
以下、ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の場合と、ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の場合とに分けて、各々の末端安定化工程について説明する。
(2)−1:ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の末端安定化工程
上記(1)重合工程の後、粗ポリオキシメチレンホモポリマーの末端をエーテル基で封鎖して末端安定化を行う末端安定化工程を実施する。
粗ポリオキシメチレンホモポリマーの末端をエーテル基で封鎖して末端安定化する方法としては、公知の方法(例えば、特公昭63−452号公報に記載の方法)が挙げられる。
エーテル基で封鎖する場合のエーテル化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オルトエステルなどが挙げられる。
オルトエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族酸又は芳香族酸と、脂肪族アルコール、脂環式族アルコール又は芳香族アルコールとのオルトエステルなどが挙げられる。具体的には、メチル又はエチルオルトホルメート、メチル又はエチルオルトアセテート及びメチル又はエチルオルトベンゾエート、並びにエチルオルトカーボネート等のオルトカーボネートなどが挙げられる。
エーテル化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エーテル化反応は、p−トルエンスルホン酸、酢酸及び臭化水素酸のような中強度有機酸、ジメチル及びジエチルスルフェートのような中強度鉱酸等のルイス酸型の触媒をエーテル化剤1質量部に対して0.001〜0.02質量部導入して行ってもよい。
エーテル化反応は、所定の溶媒存在下で実施してもよい。当該溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼン等の低沸点脂肪族;脂環式族及び芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化低級脂肪族化合物などの有機溶媒が挙げられる。
重合工程で得られた粗ポリオキシメチレンホモポリマーの末端をエステル基で封鎖して末端安定化する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、米国特許第3,459,709号明細書に記載の大量の酸無水物を用い、スラリー状態で行う方法と、米国特許第3,172,736号明細書に記載の酸無水物のガスを用いて気相で行う方法が挙げられる。
エステル基で封鎖する場合のエステル化剤としては、特に限定されないが、例えば、有機酸無水物などが挙げられる。
有機酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(2)で表される有機酸無水物などが挙げられる。
5COOCOR6 ・・・(2)
(式(2)中、R5及びR6は、各々独立にアルキル基又はフェニル基を示す。R5及びR6は、同じであっても異なっていてもよい。)
有機酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸などが挙げられ、無水酢酸が好ましい。
エステル化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
気相でエステル基封鎖を行う方法においては、特開平11−92542号公報記載の方法によってオニウム塩系重合触媒を除去した後に末端封鎖を行うことが好ましい。ポリオキシメチレン中のオニウム塩系重合触媒を除去していると、末端封鎖する際に、オニウム塩系重合触媒由来のポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の分解反応を回避でき、末端安定化反応におけるポリマー収率を向上することができると共に、ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の着色を抑制することができる。
ポリオキシメチレンホモポリマー(a1)の末端はエーテル基及び/又はエステル基で封鎖することにより、末端水酸基の濃度が5×10-7mol/g以下に低減されることが好ましい。末端水酸基の濃度が5×10-7mol/g以下であると熱安定性に優れ、本来のポリオキシメチレンホモポリマー(a1)が有する品質を維持できるため好ましい。末端水酸基の濃度は、より好ましくは0.5×10-7mol/g以下であり、さらに好ましくは0.3×10-7mol/g以下である。
(2)−2:ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の末端安定化工程
上記(1)で得られた重合物は、触媒中和失活剤を含む水溶液又は有機溶剤溶液中に投入し、スラリー状態で一般的には数分〜数時間攪拌することにより触媒を失活させることができる。これにより粗ポリオキシメチレンコポリマーが得られる。
触媒中和失活剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、トリエチルアミン及びトリ−n−ブチルアミン等のアミン類;アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物;無機酸塩;有機酸塩などが挙げられる。
触媒中和失活剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粗ポリオキシメチレンコポリマーを得るために、上記触媒中和失活剤の使用以外に、アンモニア及びトリエチルアミン等の蒸気と重合物とを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン及び水酸化カルシウムのうち少なくとも1種と混合機で接触させることにより触媒を失活させる方法も用いることができる。
さらに、粗ポリオキシメチレンコポリマーに含まれる不安定末端部分を分解除去する末端安定化を実施する。
粗ポリオキシメチレンコポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベント付き単軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー式押出機などを用いて、公知の分解除去剤の存在下、粗ポリオキシメチレンコポリマーを溶融混練して不安定末端部分を分解除去する方法が挙げられる。
末端安定化における溶融混練を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、雰囲気を不活性ガスにより置換したり、一段及び多段ベントによる脱気をしたりすることが好ましい。溶融混練の際の樹脂温度は、ポリオキシメチレンコポリマー(a2)の融点以上230℃以下とすることが好ましく、融点以上210℃以下がより好ましく、さらには融点以上190℃以下がより好ましい。
1)分解除去剤
粗ポリオキシメチレンコポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去に用いる分解除去剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アンモニア及びアンモニウム化合物、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等の脂肪族アミン;水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;無機弱酸塩;及び有機弱酸塩などの塩基性物質が挙げられる。
分解除去剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分解除去剤は、粗ポリオキシメチレンコポリマーを溶融する前に、予め添加してもよいし、溶融させた粗ポリオキシメチレンコポリマーに添加してもよい。
また、粗ポリオキシメチレンコポリマーを得るために使用した触媒中和失活剤を、そのまま分解除去剤として用いてもよい。
(3)造粒工程
末端安定化を行ったポリオキシメチレンホモポリマー(a1)やポリオキシメチレンコポリマー(a2)は乾燥を行い、単軸押出機、二軸押出機や多軸押出機を用いて造粒を行い、ポリオキシメチレン樹脂を得る。
このとき下記(C1)のホルムアルデヒド捕捉剤及び下記(C2)の酸化防止剤を添加して溶融混練することが好ましい。
造粒を行う場合には、品質や作業環境の保持のために、雰囲気を不活性ガスにより置換したり、一段及び多段ベントによる脱気をしたりすることが好ましい。
溶融混練の際の樹脂温度は、ポリオキシメチレンポリマーの融点以上230℃以下とすることが好ましく、ポリオキシメチレンポリマーの融点以上210℃以下がより好ましく、さらにはポリオキシメチレンポリマーの融点以上195℃以下がより好ましい。ここでいう樹脂温度は、造粒工程のダイスから排出される溶融樹脂を直接温度計で測定することが好ましい。また非接触型の温度計で測定しても良い。
ポリオキシメチレン樹脂の造粒方法において、例えば、末端安定化したポリオキシメチレンポリマーの一部を粉砕した粉末と、ホルムアルデヒド捕捉剤(C1)及び酸化防止剤(C2)とを混合した後に造粒したり、一部の末端安定化工程と造粒工程のタイミングに関し造粒前の乾燥時間を、ポリオキシメチレン樹脂成形体の生産性等を踏まえて最適化したりすることが好ましい。
さらに、造粒工程で得られたポリオキシメチレン樹脂のペレットは、100℃以上150℃未満で乾燥を行うことが好ましい。通常ポリオキシメチレン樹脂は吸水をほとんどしないため、乾燥は表面に付着している水分を除去すればよい。本実施形態の場合、生産性とのバランスの中で、ペレットの品温が100℃以上に達した後も数時間乾燥を継続することが好ましい。
上記造粒方法で造粒されたポリオキシメチレン樹脂ペレットを製造に用いることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
(無機物質(B))
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、無機物質を含む。
無機物質とは、有機化合物以外の化合物であり、具体的には、単純な一部の炭素化合物、炭素以外の元素で構成される化合物、等である。無機物質(B)としては、特に限定されないが、比重2.0以上のものを用いることが好ましい。比重2.0以上の無機物質を用いて製造することにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
炭素化合物としては、特に限定されないが、例えば、グラファイトやダイヤモンドなど、炭素の同素体;一酸化炭素や二酸化炭素、二硫化炭素など、陰性元素と炭素とで構成する化合物;あるいは金属炭酸塩、金属酢酸塩、金属青酸塩、金属シアン酸塩、金属チオシアン酸塩、金属炭化物などの塩;などが挙げられる。
炭素以外の元素で構成される化合物としては、特に限定されないが、例えば、金属元素の化合物、非金属元素(ホウ素、ケイ素など)の化合物、などが挙げられる。具体的な化合物としては、特に限定されないが、例えば、水素化合物、酸化物、オキソ酸、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、金属錯体(配位化合物)などが挙げられる。
特に、無機物質としては、機能性を付与するために、金属やセラミックスが好ましい。 具体的な金属としては、アルミニウム、マグネシウム、バリウム、カルシウム、コバルト、亜鉛、銅、ニッケル、鉄、ケイ素、チタン、タングステン、並びに、これらをベースとする金属化合物及び金属合金が挙げられる。ここで、既に完成された合金のみならず、個々の合金成分の混合物を使用することもできる。
具体的なセラミックスとしては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、ジルコニアなどの酸化物;ハイドロキシアパタイトなどの水酸化物;炭化ケイ素等の炭化物;窒化ケイ素や窒化ホウ素などの窒化物;蛍石などのハロゲン化物;ステアライトなどのケイ酸塩;チタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛などのチタン酸塩;炭酸塩;リン酸塩;フェライト;高温超伝導物質;等も挙げられる。
これら無機物質は、1種単独で用いてもよく、種々の金属や金属合金、又はセラミックス等、幾つかの無機物質を組み合わせて用いることも可能である。
無機物質の形状としては、繊維状、針状、粒(球)状、板状、層状、無定形型等ある。寸法精度として異方性が問題となる場合は、板状、粒(球)状が好ましく、特に粒(球)状が好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有される無機物質の量は、樹脂組成物又は樹脂成形体の用途、無機物質の種類等に応じて、特に限定されないが、ポリオキシメチレン樹脂組成物100質量%中、70質量%超95質量%以下の範囲で適宜設定することができ、さらには72質量%超94質量%以下であることが好ましく、74質量%超93質量%であることがより好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いる無機物質は、表面処理剤を含んでも良い。表面処理剤とは、無機物質の製造工程や製造後の製品、オキシメチレン樹脂組成物の製造工程において、粒子の分散や組成物の安定性を向上させる目的で添加されるものを指す。表面処理剤としては、公知の表面処理剤、展着剤又は錯化剤、及び凝集防止剤の少なくとも1種が添加されることが好ましい。
ここで、公知の表面処理剤、付着剤又は錯化剤、及び凝集防止剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤;カチオン系界面活性剤;両性界面活性剤;非イオン性界面活性剤;アミノシラン、エポキシシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸)や脂肪族カルボン酸;金属セッケン;パラフィン系やオレフィン系などのオイル類;脂肪族炭化水素・芳香族炭化水素やこれらの変性物;及びこれらの混合物;アルコール類;ポリオール;及びポリオールの脂肪酸エステル;等が挙げられる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、表面処理剤を含む無機物質を用いて製造することで、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いる無機物質(以下、原料無機物質とも称する)は、平均粒径が0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜80μmであることがより好ましく、0.1〜60μmであることがさらに好ましい。無機物質の平均粒径が上記範囲内であることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
なお、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造過程における溶融混練等により、大きなせん断力が加えられる場合には、ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている無機物質の平均粒径が、粉砕されて原料無機物質のものよりも小さくなり得る。そのような場合には、ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている無機物質について所望する平均粒径よりも0〜10μm程度大きな平均粒径を有する無機物質を原料とすればよい。
ここで、無機物質の平均粒径は、レーザー回折・散乱法を使用した粒度分布測定装置を用いて測定した重量累積50%の平均径D50とする。レーザー回折・散乱法を使用した粒度分布測定装置としては、例えば島津製作所製SALD−2000型を用いる。
上記平均粒径の無機物質は、市販の無機物質をそのまま用いてもよく、更に粉砕及び/又は分級を行う等により得てもよい。
(添加剤(C))
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上述したポリオキシメチレン樹脂(A)、無機物質(B)に加え、必要に応じて添加剤(C)を更に含有してもよい。
添加剤(C)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド捕捉剤、酸化防止剤、可塑剤・滑剤・摺動性付与剤・離型剤・帯電防止剤、無機及び有機の充填剤・結晶核剤、耐候(光)剤、顔料及び染料といった外観改良剤、導電剤、難燃剤等が挙げられる。
これら添加剤(C)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物では、添加剤(C)として、特に、ホルムアルデヒド捕捉剤、酸化防止剤、可塑剤・滑剤・摺動性付与剤・離型剤・帯電防止剤を含むことが好ましい。
可塑剤・滑剤等は、無機物質(B)との混練を行う際に、無機物質(B)の分散性を高め、混練時の樹脂温度を下げる効果が期待されるため、添加することが好ましい。このような可塑剤・滑剤等は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素及びこれらの変性物、アルコール類、ポリオール及びポリオールの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオキシメチレン樹脂組成物中の添加剤(C)の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。上記の好ましい範囲量の添加剤(C)を含有することにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
なお、添加剤(C)として上記の中から2種以上を組み合わせて用いる場合は、合計含有量が上記範囲であればよい。
添加剤(C)の中で、特に添加することが好ましいホルムアルデヒド捕捉剤(C1)及び酸化防止剤(C2)について、以下で更に説明する。
なお、添加剤(C)は、ホルムアルデヒド捕捉剤(C1)及び酸化防止剤(C2)について上述するように、ポリオキシメチレン樹脂(A)の造粒工程に先立って、ポリオキシメチレンポリマーに予め添加してもよい。
(C1)ホルムアルデヒド捕捉剤
ホルムアルデヒド捕捉剤としては、ポリオキシメチレン樹脂組成物やこれを用いた成形体を生産する上で、残留するホルムアルデヒドやこれが変性して生じる蟻酸等の、生産性や外観に悪影響を与える生成物を捕捉又はその影響を抑制する機能を有するものをいう。ホルムアルデヒド捕捉剤を含むことにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
ホルムアルデヒド捕捉剤としては、例えば、反応性窒素含有化合物、無機酸の金属塩、金属酸化物及び有機酸の金属塩等が挙げられる。これらのなかでも、ホルムアルデヒド捕捉剤が、不純物として酸を極力含まない及び/又は酸を発生し難い化合物であることが好ましい。
上記ホルムアルデヒド捕捉剤は、1種類のみを単独で使用してもよいが、2種類以上を併用することが好ましい。
ホルムアルデヒド捕捉剤の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、0.005質量部以上5質量部未満が好ましく、0.01質量部以上3質量部未満がより好ましく、0.02質量部以上1質量部未満がさらに好ましい。
なお、2種類以上のホルムアルデヒド捕捉剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲であればよい。
反応性窒素含有化合物としては、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂などが挙げられる。ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等の共重合体であってもよい。また、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体などが挙げられ、例えば、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られるポリ−β−アラニン共重合体であってもよい。
また反応性窒素含有化合物としては、例えば、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物などが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドなどが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジンなどが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンなどが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物などが挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素などが挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体などが挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントインなどが挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、アラントインなどが挙げられる。
ヒドラジン誘導体の例としては、ヒドラジド化合物を挙げることができる。ヒドラジド化合物の具体例としては、ジカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられ、より具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジドなどが挙げられる。
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、1‐メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールなどが挙げられる。
イミド化合物の具体例としては、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドなどが挙げられる。
またその他ホルムアルデヒド捕捉剤としては、無機酸の金属塩、金属酸化物及び有機酸の金属塩等が挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物などが挙げられる。
カルボン酸塩のカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムなどが挙げられ、好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
層状複水酸化物としては、例えば、下記式(4)で表されるハイドロタルサイト類などが挙げられる。
[(M2+1-x(M3+x(OH)2x+[(An-x/n・mH2O]x- ・・・(1)
(式(1)中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオンを示し、xは、0<x≦0.33の範囲にあり、mは正数を示す。)
式(1)において、M2+の例としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などが挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+などが挙げられ、An-の例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3-、CO3 2-、SO4 2-、Fe(CN)6 3-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオンなどが挙げられる。An-の例としては、OH-、CO3 2-が好ましい。
ハイドロタルサイト類の具体例としては、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO30.125・0.5H2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で示される合成ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
(C2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、ラジカル捕捉作用を持つフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、過酸化物分解作用を持つ硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤があげられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤を含むことにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
酸化防止剤の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部未満が好ましく、0.05質量部以上3質量部未満がより好ましく、0.1質量部以上1質量部未満がさらに好ましい。
なお、2種類以上の酸化防止剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲であればよい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物では、上記酸化防止剤のなかでも、フェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法>
ポリオキシメチレン樹脂組成物は、上述のように、ポリオキシメチレン樹脂(A)と無機物質(B)、必要に応じて上記添加剤(C)を含有する。
以下においては、ポリオキシメチレン樹脂(A)、無機物質(B)及び添加剤(C)を全て含有するポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法を示す。具体的には、ポリオキシメチレン樹脂組成物は、上記(A)〜(C)の各成分を加熱下で混練後、フレーク状(粉砕)又はペレット状(造粒)にすることにより製造できる。
その方法としては、(A)〜(C)の全成分を一度に仕込み混練する方法;ポリオキシメチレン樹脂(A)の造粒時に(B)成分、(C)成分を添加し、溶融混練する方法;ポリオキシメチレン樹脂(A)に(C)成分をあらかじめ混合しておき、ついで無機物質(B)と混練する方法;(B)成分と(C)成分をあらかじめ混練した後、ポリオキシメチレン樹脂(A)と混練する方法;等が挙げられる。
また、(B)成分や(C)成分を何回かに分けて(A)成分に添加しながら混練を行ってもよい。
また(C)成分は、あらかじめポリオキシメチレン樹脂(A)と混練しておき、次に(B)成分と混練を行うときに再び(C)成分を添加してもよい。
さらにまた、(A)成分、(B)成分、(C)成分の均一分散性を高めるために、混練するポリオキシメチレン樹脂(A)のペレットや、(C)成分をあらかじめ混合したポリオキシメチレン樹脂(A)の一部又は全量を粉砕して混合した後、溶融混合してもよい。
また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形されたポリオキシメチレン樹脂成形体に粉砕や乾燥等の処理を行い、下記特性を満たすものであれば、その一部又はその全量を用いてもかまわない。
上記混練を行う装置としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ニーダー、加圧ニーダー、ロールミル、スクリュー式単軸押出機・二軸押出機等の通常の混練機を用いて行うことができる。
混練温度は165〜230℃、好ましくは170〜210℃、さらに好ましくは175〜200℃である。
例えば、好ましい製造方法として、多段サイドフィード可能なベント付押出機を用い、あらかじめヘンシェルミキサーで均一混合した(A)成分と(C)成分をトップから供給し可塑化したところに、(B)成分を多段でサイドより供給し、均一混合した後に造粒を行いペレットを採取する方法;(A)成分の融点以上に加熱した加圧ロールミルで(B)成分と(C)成分を混合し、ここに(A)成分を適時添加することにより、成分が均一に一体化された組成物を得た後、粉砕してフレークを採取する方法;等が挙げられる。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量は、30000〜65000である。また本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、230℃空気中の熱重量分析における重量減少量が全樹脂組成物の5〜30質量%である。さらに、この重量減少量を100%としたときの熱重量分析による減量分50%の重量減少速度が4.4%/分以下である。
加えて、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の結晶化温度は、142〜154℃が好ましい。
さらに、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含まれる無機物質の平均粒径は、0.01〜100μmであることが好ましい。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂は、標準PMMA(Polymer Laboratorues製)を用いた3次近似曲線によって得られるPMMA換算の数平均分子量Mnが30000〜65000であり、31000〜63000であることが好ましく、32000〜59000であることがより好ましい。上記好ましい数平均分子量とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
試料としてポリオキシメチレン樹脂組成物を秤量し、HFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)及び10mM−CF3COONaを含む溶離液を加えて濃度1〜5mg/mLとする。この溶液を、室温で一晩静置溶解させ緩やかに振り混ぜた後、0.1μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過を行ったものを、GPC測定の試料溶液として用いる。
GPCは、GPC装置(東ソー製HLC−8220GPC)、カラム(東ソー製TSKgelSuper AWM−H(6mmI.D×15cm)×2本)、検出器(示差屈折率計(RI検出器)、Polarity=(+))、上記溶離液を用いて、流速0.3mL/分、カラム温度40℃、試料溶液注入量20μLで測定を行う。
なお、本実施形態では、上述の測定で得られた測定結果から、溶媒やオリゴマー成分の影響を受けるPMMA換算分子量Miが8000以下の成分を除き、PMMA換算分子量Miが8000超の成分から、数平均分子量Mnを求める。
図1に上記ポリオキシメチレン樹脂のPMMA換算数平均分子量Mnの測定例を示す。図中の縦軸はGPCで測定した微分分散値を示し、横軸は、ポリオキシメチレン樹脂を構成するポリオキシメチレン(コ)ポリマー1分子あたりのPMMA換算分子量Miを示す。
具体的には、破線の3次近似曲線で示される面積のうち、斜線で表されるPMMA換算分子量Miが8000以下の成分を除き、残ったPMMA換算分子量Miが8000超の成分に基づき、数平均分子量Mnを求める。
ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量を上記範囲とするためには、原料ポリオキシメチレン樹脂を得るための上記(1)重合工程において、連鎖移動剤を添加して、好適な範囲の数平均分子量を有する原料ポリオキシメチレン樹脂を得る。
さらに本実施形態においては、上記(1)の重合時に添加する重合触媒は、重合収率を維持しながら少なくすることが好ましい。これは重合触媒を多くすると触媒残渣の失活に時間を要したり、残った触媒が原料ポリオキシメチレン樹脂の安定性を損ねたりすることがあるためである。また、重合触媒が少なすぎると収率が下がり生産量がばらつくだけでなく、重合されるポリオキシメチレン樹脂に対する連鎖移動剤の濃度が変化することにより、上記好適な範囲の数平均分子量の原料ポリオキシメチレン樹脂が安定して得られなくなる。その結果、該原料ポリオキシメチレン樹脂を用いて製造されたポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量が、上記範囲より低減する。
一方、無機物質を含むポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、無機物質が高い反応性を示すこと等により、ポリオキシメチレン樹脂の熱安定性が低下することがある。このため、無機物質自体の表面処理や熱安定剤等の添加により、製造されたポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている上記数平均分子量のポリオキシメチレン樹脂が安定して得られる。
すなわち、本実施形態ではポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている上記数平均分子量のポリオキシメチレン樹脂は、原料ポリオキシメチレン樹脂の製造時に重合触媒と連鎖移動剤のバランスをとったり、前記添加剤の調整を行ったりする等をすることにより得ることができる。
本実施形態では、重合触媒は重合収率を維持しながら少なくすることが好ましい。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の熱重量分析で測定した重量減少率)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、230℃空気中の熱重量分析による重量減少率がポリオキシメチレン樹脂組成物の全質量の5〜30%であり、6〜28%であることが好ましく、7〜26%であることがより好ましい。
上記範囲の重量減少率とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる。
本実施形態における熱重量分析は、例えば、NETZSCH社製熱分析装置:TG−DTA2500を用いる。
測定対象の試料がポリオキシメチレン樹脂組成物の場合は、そのまま必要な量を秤量して測定すればよい。
測定対象の試料がポリオキシメチレン樹脂成形体の場合は、ポリオキシメチレン樹脂成形体から一部を採取し、これを試料として直接用いて、熱重量分析を行う。
試料としておよそ5mgを秤量し用い、試料を空気中で常温から20℃/分で230℃まで昇温する。230℃で150分保持する中で重量が減少し、その後徐々に安定していき重量減少速度が0.005%/分以下となったときの重量減少割合を重量減少率とする。重量減少速度が安定しない場合は、150分保持したときの重量減少割合を重量減少率とする。
図2に熱重量分析による重量減少率の測定例を示す。図中、右縦軸は温度を示し、破線は温度変化を示す曲線である。左縦軸は測定対象試料の重量変化を示し、実線は重量変化を示す曲線である。横軸は昇温開始後の経過時間を示す。
重量減少速度が安定し0.005%/分以下となると、実線は水平方向に略垂直となる。水平方向に略垂直となった実線が重量変化を示す左縦軸と交差する点Xは、試料の残留重量率であり、重量減少率は下記式で求めることができる。
重量減少率(%)=100−X
重量減少速度が0.005%/分以下まで安定しない場合、重量減少率は、昇温開始後150分間経過時点における試料の残留重量率をXとして上記式で求めることができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、製造時には十分な安定性を保持しているが、空気中で230℃にて150分間保持することで、含有されているポリオキシメチレン樹脂の大部分が熱分解により昇華する。すなわち、上述の熱重量分析で測定して上記重量減少率を有する本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、無機物質の含有量と、分解温度が230℃以上の添加剤の含有量との合計量が70〜95質量%の範囲となるように適宜調整することにより得ることができる。
なお、含有されているポリオキシメチレン樹脂の含有量は、原料ポリオキシメチレン樹脂の配合量より少なくなっていてもよい。原料ポリオキシメチレン樹脂の一部が、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造過程における溶融混練等により熱分解する場合があり得るためである。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の重量減少速度)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、空気中230℃150分での熱重量分析における重量減少率に相当する重量減少量を100%としたときの重量減少量50%到達時点の重量減少速度が、4.4%/分以下である。
本実施形態における熱重量分析は、例えば、NETZSCH社製熱分析装置:TG−DTA2500を用いる。上記同様、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体より、構成するポリオキシメチレン樹脂組成物を採取し、これを試料として熱重量分析を行う。
図3に重量減少速度の測定例を示す。
試料としておよそ5mgを秤量し用い、試料を空気中で常温から20℃/分で昇温していき230℃とする。230℃で150分保持する中で、上記重量減少率に相当する重量減少量を測定できる。この重量減少量を100%として、重量減少量50%到達時点の時間(分)当たりの重量減少割合を重量減少速度(%/分)とする。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、安定性の高いポリオキシメチレン樹脂を得たり、ポリオキシメチレン樹脂の熱安定性への影響を低減できる無機物質の選択や表面処理をしたり、組成物製造時にポリオキシメチレン樹脂の熱安定性への影響を低減できる混合条件とすることで、上記にもあるように組成物や成形体の製造時に十分な安定性を保持する。すなわち、上記重量減少速度のポリオキシメチレン樹脂組成物は、前記添加剤や無機物質を調整することや、ポリオキシメチレン樹脂の末端安定化工程や造粒工程における条件及びポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法における条件を調整すること等により得ることができる。
本実施形態では、重量減少速度は、4.1%/分以下であることが好ましく、4.0%/分以下であることがより好ましく、さらに3.9%/分以下であることがより好ましい。上記重量減少速度とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を一層高めることができる。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の結晶化開始温度Cp)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、結晶化開始温度Cpが142〜154℃であることが好ましく、142〜153℃であることがより好ましく、142〜150℃であることが更に好ましく、142〜148℃であることがより更に好ましい。上記結晶化開始温度とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の結晶化開始温度Cpは、示差走査熱量計、例えば、NETZSCH社製示差式走査熱量計:DSC350等を用いて測定することができる。
測定条件としては、表示温度50℃でサンプル(ポリオキシメチレン樹脂組成物)をセットし、320℃/分で220℃まで昇温し、220℃で1分間保持する。その後80℃/分で140℃まで降温し、140℃で5分間保持する。次いで20℃/分で210℃まで昇温し、210℃で5分間保持する。その後20℃/分で100℃まで降温し、このときの補外開始温度(オンセット)を結晶化開始温度とする。
上記好ましい結晶化開始温度のポリオキシメチレン樹脂組成物を得るためには、低融点等の添加剤を用いたり、ポリオキシメチレン樹脂にポリオキシメチレンコポリマー(a2)を用いたりする。
本実施形態においては、コポリマーの重合時に添加する重合触媒の添加量を、重合収率を維持しながら少なくすることが好ましい。これは重合触媒を多くすると触媒残渣の失活に時間を要したり、残った触媒がポリオキシメチレン樹脂の安定性を損ねたりすることがあるためである。また、重合触媒が少なすぎると収率が下がり生産量がばらつくだけでなく、重合されるポリオキシメチレン樹脂に対するコモノマーの濃度が変化することにより、上記好ましい結晶化開始温度のポリオキシメチレン樹脂組成物が安定して得られなくなる。
すなわち、上記結晶化開始温度のポリオキシメチレン樹脂組成物は、前記低融点の添加剤を用いることや、ポリオキシメチレン樹脂にコポリマーを用い重合触媒とコモノマー量のバランスをとること等により得ることができる。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている無機物質の平均粒径)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている無機物質の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜80μmであることが好ましく、0.1〜60μmであることが好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている無機物質の平均粒径が上記範囲内であることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形体の外観や質感を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている無機物質の平均粒径は、レーザー回折・散乱法を使用した粒度分布測定装置を用いて測定した重量累積50%の平均径D50とする。レーザー回折・散乱法を使用した粒度分布測定装置としては、例えば島津製作所製SALD−2000型を用いる。試料としてポリオキシメチレン樹脂組成物又は成形体の一部を秤量し、HFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)で溶解した溶液を試料溶液として用いる。より具体的には、後述の実施例記載の方法により測定することができる。
上記平均粒径の無機物質は、市販の無機物質を用い粉砕・分級を行って所望の平均粒径を有する無機物質を原料としたり、オキシメチレン樹脂組成物製造時の混練条件を調整したりする等により得ることができる。
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、一般的に樹脂に用いられる成形方法、すなわち、熱を加え溶融させ型に入れて圧力をかけ、冷却を行うことで成形体を得ることができる。また、得られた成形体はポリオキシメチレン樹脂が使用することのできる環境下で使用されることが好ましい。
<ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、種々の成形方法が用いることが可能であるが、中でも射出成形、押出成形、カレンダー成形、圧縮成形により成形体を作製することが好ましい、さらに特には射出成形や圧縮成形が好ましい。
射出成形機としては、駆動装置から油圧式成形機、電動式射出成形機、油圧電動ハイブリッド成形機等が、射出構造からプランジャ式射出成形機、プリプラ式射出成形機、スクリュ式射出成形機等が、型締装置から直圧式射出成形機、トグル式射出成形機、メカニカルロック式射出成形機等が、射出型締位置から竪型射出成形機、横型射出成形機が、特殊な射出成形機としてベント式射出成形機や多色成形用射出成形機等が挙げられる。
圧縮成形機としては、機構や構造によって、クランクプレス、ナックルプレス、スクリュープレス等の機械式プレス機、単動油圧式プレス、複動油圧式プレス等の液状プレス機、加熱した材料をプランジャにより型に圧入するトランスファ成形機等が挙げられる。
成形条件としては、材料の温度を180〜250℃、金型温度30〜150℃で成形することが好ましい。本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、バリの発生や湯ジワ等を確認しながら射出及び/又は加圧の速度及び/又は圧力を調整して得ることができる。
<ポリオキシメチレン樹脂成形体の使用態様>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、通常ポリオキシメチレン樹脂が使用することのできる環境下で使用されることが好ましく、例えば常時使用温度が−50〜140℃である。
また通常ポリオキシメチレン樹脂が使用される、駆動時や固定時等に負荷がかかる機構部位、他材料又は同材料と擦れあう摺動部位、耐薬品性を必要とする容器類等が挙げられる。
<ポリオキシメチレン樹脂成形体の用途>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、通常ポリオキシメチレン樹脂が使用される精密機器、家電・OA機器、自動車、工業用途および雑貨などの機構又は摺動用途に用いられる。
さらに上記に加えて、含まれる無機物質の量や種類の選択により、重量感・高級感の付与、静音性・低振動性の付与、低寸法変化・低線膨張性の付与、電子線や磁力線の遮蔽性の付与、熱伝導性の調整、電気伝導性の調整等が必要な用途に有効である。
例えば、エンブレム・ロゴマーク等の意匠部品、バランサーや錘等の比重調整部品、駆動機器・音響機器及びその周辺のカバーやケース類、OA機器や光学機器等の精密部品、X線や電磁波等の制御を行う容器類、放熱板や断熱板、セラミックス・陶器部品や金属部品の代替等が挙げられる。さらに本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を用いることにより、後加工をすることなく複雑な部品を得ることができるため、セラミックス・陶器や金属のような材料に比べて工数削減が期待できる。
また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、上記のようにそのまま成形体として用いるだけでなく、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にあるため、含まれる無機物質の量や種類の選択により、焼結製品用中間品としての射出成形品(グリーンパーツ)として用いることも可能である。この射出成形品から脱脂工程にて樹脂部分を除去することによりブラウンパーツを得て、これを焼結することにより焼結製品を得る。
本来、加熱脱脂や焼結時間を短縮するためには、樹脂成形体は熱分解性能が良い材料が好ましい。これに対して、本実施形態により得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、組成物の生産時及び成形時の熱分解の低下を抑制できるため、安定して均一で寸法精度の高い成形体を得ることが可能であり、加えて焼結温度での熱分解性能は従来と大きく変わることがない。このため、高い生産性で、より欠陥が少なく高精度な焼結製品を得ることができる。
以下、本実施形態を実施例と比較例を挙げて説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例におけるポリオキシメチレン樹脂組成物(P)、ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法、ポリオキシメチレン樹脂組成物及びポリオキシメチレン樹脂成形体の評価について順次説明する。
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)〕
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物(P)について、ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法、ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性について説明する。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)>
ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)を調製するための原料としては、下記のポリオキシメチレン樹脂(A)、無機物質(B)及び添加剤(C)とを用いた。
(1.ポリオキシメチレン樹脂(A1))
(重合工程)
熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径2B、径に対する長さの比(L/D)=15)を80℃に調整した。主モノマーとしてトリオキサンを3000g/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを100〜150g/hr、かつ、連鎖移動剤(メチラール)を1〜10g/hrの範囲で調整を行ない、連続混合反応機に連続的にフィードした。重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1molに対して2.0×10-5molなるように、連続混合反応機に添加して重合を行い、重合フレークを得た。連鎖移動剤とコモノマーの添加量の調整は、表1に示す分子量と結晶化開始温度の樹脂組成物が得られるように行った。
(末端安定化工程)
得られた重合フレークを粉砕した後、トリエチルアミン1質量%水溶液中に、上記粉砕物を投入して1時間撹拌し、重合触媒を失活させた。その後、この重合フレークを含むトリエチルアミン水溶液を遠心分離機でろ過し、窒素下で120℃×3hr乾燥し、乾燥ポリマーを得た。
次に、得られた乾燥ポリマーを用いて末端安定化を以下のとおり実施した。ベント付きスクリュー型二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製、BT−30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)の前段部分に、得られた乾燥ポリマーを添加し、さらに当該乾燥ポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、ポリマー末端を安定化させつつ減圧脱気を行って、安定化ポリオキシメチレン樹脂(A1)を得た。
(造粒工程)
得られた安定化ポリオキシメチレン樹脂(A1)は、窒素雰囲気下のギアオーブン(105℃設定)にて品温が100℃以上を確認して12時間乾燥を行った。
添加剤として下記(C1)、(C2)、(C3)を5:5:2でヘンシェルミキサーにて1分間混合した。得られた混合物を、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対して、0.5質量部となるように、真空ベント付きスクリュー型二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製、BT−30、L/D=44、L:二軸押出機の原料供給口から排出口までの距離、D:二軸押出機の内径)にてスクリュー回転数100rpmとし、22アンペア以下でダイスからの溶融した樹脂温度が205±2℃となるように溶融混練し、添加剤(C1)、(C2)及び(C3)を含むポリオキシメチレン樹脂(A1)のペレットを得た。
原料投入からポリオキシメチレン樹脂ペレット採取まで、酸素の混入を避けるように操作を行った。
(2.無機物質(B))
無機物質(B)として、以下の(B1)〜(B3)を用いた。
(B1):カルボニル鉄−OM(D50=6μm/BASF(株)社製)
(B2):アルミナ−LA4000(D50=3μm/太平洋ランダム(株)社製)
(B3):SUS316L−PF20(D50=10μm/エプソンアトミックス(株)社製)
(3.添加剤(C))
添加剤(C)として、以下の添加剤(C1)〜(C5)を用いた。
(C1):酸化防止剤/イルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)
(C2):ホルムアルデヒド捕捉剤/H−3(旭化成ファインケム(株)社製)
(C3):ホルムアルデヒド捕捉剤/NA100(旭化成(株)社製)
(C4):ホルムアルデヒド捕捉剤/セバシン酸ジヒドラジド(日本ファインケム(株)社製)
(C5):ホルムアルデヒド捕捉剤/ベンゾグアナミン((株)日本触媒社製)
<ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)の製造>
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物(P)の製造工程について説明する。
(樹脂組成物(P1)〜(P5)の調製)
上記添加剤(C1)、(C2)及び(C3)を含むポリオキシメチレン樹脂(A1)のペレットと、無機物質(B1)とを、窒素雰囲気下のギアオーブン(105℃設定)にて品温が100℃以上を確認して4時間乾燥を行った後、加圧ニーダー(トーシン製、TD0.3−3M型)を用い、表1に示す所定の割合で仕込み、190℃に設定し40分間混練を行った。次いで、得られた混練物を冷却しながら破砕して、5mm程度の成形用ポリオキシメチレン樹脂組成物P1〜P4のフレークを得た。得られたフレークを表1に示す。
なお、ポリオキシメチレン樹脂組成物P5は、上記同様ポリオキシメチレン樹脂(A1)と無機物質(B1)を2:98の割合で混合したが、均一に一体化したフレークが得られなかったため解析及び評価を実施しなかった。
(樹脂組成物P6〜P9の調製)
ポリオキシメチレン樹脂組成物P6〜P9は、下記以外、ポリオキシメチレン樹脂組成物P3と同様にして調製して、重量減少量50%到達時点での重量減少速度を表1に示すように制御した。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P6は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A2)を用いた。(A2)は、上記(A1)の(造粒工程)にて、添加剤(C1)〜(C3)添加前の12時間乾燥を24時間乾燥とし、ダイスから排出される溶融樹脂の樹脂温度205±2℃を190±2℃とした。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P7は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A3)を用いた。(A3)は、(A1)の(造粒工程)にて、12時間乾燥を24時間乾燥とした。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P8は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A4)を用いた。(A4)は、(A1)の(造粒工程)にて、樹脂温度205±2℃を215±2℃とした。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P9は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A5)を用いた。(A5)は、(A1)の(造粒工程)にて、12時間乾燥を2時間乾燥とした。
(樹脂組成物P10〜P13の調製)
ポリオキシメチレン樹脂組成物P10〜P13は、(重合工程)において連鎖移動剤の使用量及び重合触媒の使用量を変化させて得たポリオキシメチレン樹脂(A6)〜(A9)を用いた以外、ポリオキシメチレン樹脂組成物P3と同様にして調製して、含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量を下記のように制御した。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P10は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A6)を用いた。P10中のA6の数平均分子量は、P3中のA1の数平均分子量50000に対して28000であった。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P11は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A7)を用いた。P11中のA7の数平均分子量は、P3中のA1の数平均分子量50000に対して35000であった。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P12は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A8)を用いた。P12中のA8の数平均分子量は、P3中のA1の数平均分子量50000に対して60000であった。
ポリオキシメチレン樹脂組成物P13は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A9)を用いた。P13中のA9の数平均分子量は、P3中のA1の数平均分子量50000に対して75000であった。
(樹脂組成物P14〜P17の調製)
ポリオキシメチレン樹脂組成物P14〜P17は、(重合工程)においてコモノマー使用量及び重合触媒の使用量を変化させて得たポリオキシメチレン樹脂(A10)〜(A13)を用いた以外、ポリオキシメチレン樹脂組成物P3と同様に調製して、ポリオキシメチレン樹脂組成物の結晶化開始温度を下記のように制御した。
樹脂組成物P14は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A10)を用いた。P14の結晶化開始温度は、P3の結晶化開始温度146℃に対して、155℃であった。
樹脂組成物P15は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A11)を用いた。P15の結晶化開始温度は、P3の結晶化開始温度146℃に対して、151℃であった。
樹脂組成物P16は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A12)を用いた。P16の結晶化開始温度は、P3の結晶化開始温度146℃に対して、143℃であった。
樹脂組成物P17は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A13)を用いた。P17の結晶化開始温度は、P3の結晶化開始温度146℃に対して、141℃であった。
(樹脂組成物P18〜P20の調製)
ポリオキシメチレン樹脂組成物P18〜P20は、添加剤(C)の種類・配合比を変えたポリオキシメチレン樹脂(A14)〜(A16)を用いた以外、ポリオキシメチレン樹脂組成物P3と同様に調製して、重量減少量50%到達時点での重量減少速度を表1に示すように制御した。
樹脂組成物P18は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A14)を用い、P3の(造粒工程)で添加剤として(C1)、(C2)、(C3)を5:5:2の配合比で用いたのに代えて、添加剤(C1)、(C2)を5:7の配合比で用いた。
樹脂組成物P19は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A15)を用い、P3の(造粒工程)で添加剤として(C1)、(C2)、(C3)を5:5:2の配合比で用いたのに代えて、添加剤(C1)、(C2)、(C4)を5:5:2の配合比で用いた。
樹脂組成物P20は、ポリオキシメチレン樹脂(A1)の代わりに(A16)を用い、P3の(造粒工程)で添加剤として(C1)、(C2)、(C3)を5:5:2の配合比で用いたのに代えて、添加剤(C1)、(C2)、(C5)を5:5:2の配合比で用いた。
(樹脂組成物P21〜P22の調製)
ポリオキシメチレン樹脂組成物P21及びP22は、無機物質(B)の種類・配合量を変えた以外、ポリオキシメチレン樹脂組成物P3と同様に調製して、230℃空気中の熱重量分析による重量減少率及び重量減少量50%到達時点での重量減少速度を表1に示すように制御した。
樹脂組成物P21は、無機物質(B1)の代わりに(B2)を用いた。
樹脂組成物P22は、無機物質(B1)の代わりに(B3)を用いた。
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造〕
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂成形体の製造工程について説明する。上記ポリオキシメチレン樹脂組成物は射出成形機(日精樹脂工業製、PS40E5ASE型)を用い、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃とし、射出圧力を調整しながらバリがでないように充填を行い、平板状(長さ50mm、幅50mm、厚さ3mm)の成形体を得た。
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性、評価及びポリオキシメチレン樹脂成形体の評価〕
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物の特性、評価及びポリオキシメチレン樹脂成形体の評価について説明する。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性>
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物及びポリオキシメチレン樹脂組成物に含まれるポリオキシメチレン樹脂の特性に関して、数平均分子量、重量減少速度、減少分、結晶化開始温度、及び無機物質の粒径について、解析を行った。各々についての測定方法を下記に示し、解析結果を表1に示す。
(1.樹脂の数平均分子量)
ポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量の測定には、上記得られたポリオキシメチレン樹脂成形体より、構成するポリオキシメチレン樹脂組成物を採取し、これを試料とした。
試料を秤量し、HFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール/セントラル硝子製)及び10mM−CF3COONa(和光純薬工業製1級)を含む溶離液を加えて濃度4mg/mLとした。この溶液を、室温で一晩静置溶解させ緩やかに振り混ぜた後、0.1μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過を行ったものを試料溶液として用いた。
数平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー法によりGPC装置(東ソー製HLC−8220GPC)、カラム(東ソー製TSKgelSuper AWM−H(6mmI.D×15cm)×2本)、検出器(示差屈折率計(RI検出器)、Polarity=(+))を用いて、流速0.3mL/分、カラム温度40℃、試料溶液の注入量20μLで測定を行った。
得られた結果は、標準PMMA(Polymer Laboratorues製)を用いた3次近似曲線によるPMMA換算分子量とし、この結果を表1に示す。また得られた測定結果より、溶媒やオリゴマー成分の影響を受けるPMMA換算分子量8000以下の部分を除いた部分より、数平均分子量を求めた。
(2.熱重量分析による重量減少率)
重量減少率の測定には、上記同様得られたポリオキシメチレン樹脂成形体より、構成するポリオキシメチレン樹脂組成物を採取し、これを試料とし熱重量分析を行った。
熱重量分析には、NETZSCH社製熱分析装置TG−DTA2500を用い、試料としておよそ5mgを秤量し用いた。試料を空気中で常温から20℃/分で昇温していき230℃ホールドし、昇温後150分放置する中で重量減少速度が0.005重量%/分以下となり重量が安定したときの残留重量を測定した。熱重量分析開始時の秤量した重量から前記残留重量を差し引いた値を全減少重量とした。熱重量分析開始時の重量に対する全減少重量の割合を求めて、重量減少率とした。この結果を表1に示す。
(3.重量減少速度)
上記2.の測定の過程で求められる全減少重量を100%としたときの減少重量50%到達時点の時間(分)当たりの重量減量率(%)を重量減少速度(%/分)とした。この結果を表1に示す。
(4.結晶化開始温度/Cp)
ポリオキシメチレン樹脂組成物の結晶化開始温度Cpの測定には、上記同様得られたポリオキシメチレン樹脂成形体より、構成するポリオキシメチレン樹脂組成物を採取し、これを試料としNETZSCH社製示差式走査熱量計:DSC350を用いて測定した。測定条件としては、表示温度50℃でサンプルセット、20℃/分で210℃まで昇温し、210℃で5分間ホールドした後、20℃/分で100℃まで降温し、このときの補外開始温度(オンセット)を結晶化開始温度とした。この結果を表1に示す。
(5.無機物質の平均粒径)
無機物質の平均粒径の測定は、上記同様得られたポリオキシメチレン樹脂成形体より、構成するポリオキシメチレン樹脂組成物を採取し、これを試料とした。この試料にHFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール/セントラル硝子製)を加えて、室温で一晩静置溶解させ緩やかに振り混ぜた後、0.1μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過を行った。フィルター上にろ別された無機物質を洗浄分離し、レーザー回折・散乱法を使用した島津製作所製SALD−2000型粒度分布測定装置を用いて、重量累積50%の平均径D50を測定した。この結果を表1に示す。
Figure 2019137743
<ポリオキシメチレン樹脂組成物の評価>
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物に関して、ポリオキシメチレン樹脂組成物に含まれるポリオキシメチレン樹脂の生産性及びポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性についての評価を行った。評価結果を表2に示す。
(1.ポリオキシメチレン樹脂の生産性評価)
ポリオキシメチレン樹脂の生産性評価は、(造粒工程)におけるポリオキシメチレン樹脂の単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、並びにペレットの外観品位及び臭気により、総合的に行った。評価の目安としては、参考例として市販されているポリアセタール樹脂テナック4520(旭化成(株)製/一般コポリマーMFR=9、上記同様の方法で数平均分子量の測定を行ったところ、Mnは75000であった。)を上記安定化ポリオキシメチレン樹脂(A)の代わりに(造粒工程)を行ったときの生産性と比較した。評価結果を表2に示す。
((評価基準))
○:参考例の生産性に比して、良好の場合
◇:参考例の生産性と比して、同等のレベルであった場合
△:参考例の生産性に比して、若干低下した場合
×:参考例の生産性に比して、低下した場合
なお、上記「良好」とは、参考例と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の増加が20質量%以上であった状態を言う。
上記「同等のレベル」とは、参考例と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の増加が−20質量%超過20質量%未満であった状態を言う。
上記「若干低下」とは、参考例と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の低下が20質量%以下50質量%未満である、又は、得られたストランドにフクレや切れ等がなく安定して巻き取りが可能であり作業性を低下させなかったものの、得られたペレットに多少の切子があったり、臭気があったりした状態をいう。
上記「低下」とは、参考例と比較した場合、単位時間当たりの平均造粒量の低下が50%以上である、又は、得られたストランドにフクレや切れ等があり安定した巻き取りが不可能であったもの、さらに得られたペレットに多くの切子があったり、強い臭気があったりした状態を言う。
(2.ポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性評価)
ポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性評価は、組成物の製造工程で得られた成形用ポリオキシメチレン樹脂組成物のフレークの状態及び臭気により総合的に行った。評価結果を表2に示す。
((評価基準))
○:無機物質とポリオキシメチレン樹脂が一体化していて、臭気も気にならない場合
◇:若干の分離した無機物質粉がみられたり、若干の臭気が感じられたりする場合
△:分離した無機物質粉がみられたり、強い臭気が感じられたりする場合
×:無機物質とポリオキシメチレン樹脂が均一に一体化しない場合
<ポリオキシメチレン樹脂成形体の評価>
実施例と比較例に用いたポリオキシメチレン樹脂成形体に関して、その生産性、品位、寸法安定性についての評価を行った。評価結果を表2に示す。
(1.成形体の生産性)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の生産性の評価は、成形体の製造工程で金型へのモールドデポジット(MD)の生成状態により行った。
○:200ショット後の金型へのMDがほとんど見られなかった場合
◇:200ショット後の金型へのMDがガス抜け部にみられた場合
△:200ショット後の金型へのMDがキャビティー内に確認されたが、水などにて容易に除去が可能な場合
×:200ショット後の金型へのMDがキャビティー内に確認され、容易に除去が不可能な場合
(2.成形体の品位)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の品位の評価は、得られた平板状の成形体の観察により行った。評価は成形50ショット目よりN=5をサンプリングし実施した。評価結果を表2に示す。
○:成形体表面にフクレやシルバー、色ムラ等がなく、十分な質感が得られている場合
◇:成形体表面に若干のフクレやシルバー、色ムラ等が確認された場合
△:成形体表面に明らかなフクレやシルバー、色ムラ等が確認される、又は若干質感が損なわれている場合
×:成形体の形態が安定しない、又は質感が損なわれている場合
(3.成形体の寸法安定性)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の寸法安定性の評価は、得られた板状の成形体の寸法変化により行った。具体的には成形後80℃のオーブンに24時間放置後の製品寸法を測定し、長さ方向の金型寸法50mmに対する変化の割合を求めた。評価は成形50ショット目よりN=5をサンプリングし実施した。評価結果を表2に示す。
○:寸法変化率が、金型寸法に対し1.2%未満の場合
◇:寸法変化率が、金型寸法に対し1.2%以上1.4%未満の場合
△:寸法変化率が、金型寸法に対し1.4%以上1.6%未満の場合
×:寸法変化率が、金型寸法に対し1.6%以上の場合
Figure 2019137743
[実施例1〜3、比較例1、2]
実施例1〜3、比較例1、2に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物を表1にその評価結果を表2に記した。
重量減少率が異なる樹脂組成物P1〜P5を用いたこれらの結果より、樹脂組成物を本実施形態で規定する重量減少率とすることにより、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、品位や外観を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にあることが分かる。
一方、樹脂組成物の重量減少率が本実施形態の規定より小さいと、成形品の質感などが低下し、多いと組成物が得られなかったり、成形体の形態を維持することが難しくなったりする傾向を示すことが分かる。
[実施例2、4〜6、比較例3]
実施例2、4〜6、比較例3に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物を表1に、その評価結果を表2に記した。
重量減少速度が異なる樹脂組成物P3、P6〜P9を用いたこれらの結果より、樹脂組成物を本実施形態で規定する重量減少速度とすることにより、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、品位や外観を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にある。
一方、樹脂組成物の重量減少速度が規定より大きいと成形品の品位や外観を維持することが難しくなる傾向を示すことが分かる。
[実施例2、7、8、比較例4、5]
実施例2、7、8、比較例4、5に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物を表1に、その評価結果を表2に記した。
含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量が異なる樹脂組成物P3、P10〜P13を用いたこれらの結果より、該ポリオキシメチレン樹脂を本実施形態が規定する数平均分子量とすることにより、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、品位や外観を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にあることが分かる。
一方、樹脂組成物に含有されているポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量が規定より大きくなると成形品の品位や外観を維持することが難しくなり、小さくなるとポリオキシメチレン樹脂の生産性が低下する傾向を示すことが分かる。
[実施例2、9〜12]
実施例2、9〜12に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物を表1に、その評価結果を表2に記した。
結晶化開始温度が異なる樹脂組成物P3、P14〜P17を用いたこれらの結果より、樹脂組成物を本実施形態が規定する好ましい結晶化開始温度とすることにより、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、品位や外観を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にあることが分かる。
一方、樹脂組成物の結晶化開始温度が規定より外れると生産性を維持することが困難となる傾向を示すことが分かる。
[実施例2、13〜15]
実施例2、13〜15に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物を表1に、その評価結果を表2に記した。
添加剤の種類及び配合比が異なる樹脂組成物P3、P18〜P20を用いたこれらの結果より、樹脂組成物が、本実施形態で規定する二種類以上のホルムアルデヒド捕捉剤を含むことにより、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、品位や外観を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にあることが分かる。
[実施例2、16、17]
実施例2、16、17に用いたポリオキシメチレン樹脂組成物を表1に、その評価結果を表2に記した。
無機物質の種類が異なる樹脂組成物P3、P21、P22を用いたこれらの結果より、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いることで、得られたポリオキシメチレン樹脂成形体は、品位や外観を改善しつつ、実用上十分な生産性を維持し、成形品の寸法精度及び品位を高めることができる傾向にあることが分かる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、精密機器、家電・OA機器、自動車、工業用途および雑貨など分野における機構部品又は摺動部品;エンブレム・ロゴマーク等の意匠部品;バランサーや錘等の比重調整部品;駆動機器・音響機器及びその周辺のカバーやケース類;OA機器や光学機器等の精密部品;X線や電磁波等の制御を行う容器類;放熱板や断熱板;セラミックス・陶器部品や金属部品の代替品;等に好適に用いることができる。
また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、金属部品やセラミックス部品等の焼結製品(ホワイトパーツ)を製造するための焼結製品用中間品としての射出成形品(グリーンパーツ)としても好適に用いることができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上記用途に好適に用いることができる本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を製造するために用いることができる。

Claims (6)

  1. 無機物質と、ポリオキシメチレン樹脂と、を含有する、ポリオキシメチレン樹脂組成物であって、
    含有されている該ポリオキシメチレン樹脂の数平均分子量は30000〜65000であり、
    熱重量分析で空気中230℃にて150分間保持して測定した重量減少率が5〜30%であり、
    該重量減少率に相当する重量減少量を100%としたときの重量減少量50%到達時点での重量減少速度が4.4%/分以下である
    ことを特徴とする、ポリオキシメチレン樹脂組成物。
  2. 142℃〜154℃の結晶化温度を有する、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  3. 二種類以上のホルムアルデヒド捕捉剤を更に含む、請求項1又は2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  4. 前記無機物質が、金属を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  5. 前記無機物質が、セラミックスを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含むことを特徴とする、ポリオキシメチレン樹脂成形体。
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