以下、本発明に係るソレノイドバルブにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下、図1を参照した説明における「下方」、「上方」、「左方」、「右方」は、図1における下方、上方、左方、右方を意味するものとする。他の図面においても同様である。
図1は、本実施の形態に係るソレノイドバルブ10の軸線方向に沿う全体概略断面図である。このソレノイドバルブ10は、ハウジング12に収容されたソレノイド部14と、前記ソレノイド部14の電磁作用下に弁ボディ16内を変位するスプール18(弁部材)とを有する。すなわち、弁ボディ16には弁孔20が形成され、スプール18は、この弁孔20に摺動可能に収容されている。
ソレノイドバルブ10は、例えば、弁ボディ16が下方、ソレノイド部14が上方となるようにして所定の外部機器(例えば、自動車エンジンの吸排気弁の開閉タイミングを可変とする可変バルブタイミング機構等)に設けられる。すなわち、図1に示す上下方向が、一形態に係る実使用時の上下方向に対応する。
弁ボディ16の下端部には、第1スプリング受部22、スプール受部24が連なるようにして陥没形成される。一方、スプール18の下端部には、前記第1スプリング受部22に対向する位置に第2スプリング受部26が上方に向かうように陥没形成される。これら第1スプリング受部22及び第2スプリング受部26には、コイルスプリング28が配置される。すなわち、該コイルスプリング28の下端部及び上端部は、それぞれ、第1スプリング受部22の底面、第2スプリング受部26の天井面に着座する。従って、コイルスプリング28は、スプール18をソレノイド部14側に指向して常時弾発付勢する。
スプール18は、軸線方向に沿って内室30が形成された中空体である。内室30は、スプール18の下端部に形成された前記第2スプリング受部26で開口する。また、スプール18の側壁には、内室30に連通する第1通過孔32、第2通過孔34が4個ずつ形成される。図1においては、その中の3個が示されている。
スプール18の外周壁には、比較的長尺な環状溝36が直径方向内方に向かうようにして陥没形成される。一方、弁ボディ16には、弁孔20に連通する入力ポート38、第1出力ポート40、第2出力ポート42及びドレインポート44が形成される。スプール18の位置により、入力ポート38から入力された圧力流体(例えば、作動油)の出力先が第1出力ポート40又は第2出力ポート42のいずれかに切り換えられる。
少なくとも、入力ポート38、第1出力ポート40及び第2出力ポート42には、図示しないフィルタが設けられる。これらのフィルタは、切粉(金属粉)等の異物が圧力流体(例えば、作動油)に同伴されて弁孔20に進入することを防止するためものものである。
弁ボディ16の上方には、環状凹部46が形成される。この環状凹部46に収容された第1シール部材48は、ソレノイドバルブ10と、図示しない外部機器との間をシールする。
弁ボディ16の最大径部50の上端面には、環状段部52が陥没形成されている。前記弁孔20は、該環状段部52の底部で開口している。この環状段部52には、弁ボディ16とソレノイド部14との間をシールする第2シール部材54が収容される。
ソレノイド部14は、下方コア56(第1コア)、上方コア58(第2コア)及びプランジャ60を有する。この中、下方コア56及び上方コア58はハウジング12内で位置決め固定された固定コアであり、一方、プランジャ60は、ハウジング12内で上下方向に変位可能な可動コアである。なお、ハウジング12も固定コアとして機能する。ソレノイド部14は、さらに、ボビン62に電磁コイル64が巻回されてなるボビンコイル66を含む。
下方コア56は、外方コア部材68と、該外方コア部材68の内部に圧入された内方コア部材70とからなる。この中の外方コア部材68は、大径なフランジ部72と、該フランジ部72から上方に向かって延在する円筒形状部74とからなり、フランジ部72及び円筒形状部74には、軸線方向に沿って圧入孔76が貫通形成される。また、円筒形状部74の内径は略等径であるが、外径は、圧入孔76のプランジャ60に臨む開口近傍でテーパー状に縮径されている。このため、円筒形状部74の、プランジャ60に臨む側の端部の外径は、他の部位に比して小径に設定される。
外方コア部材68の形状がこのように簡素であるため、該外方コア部材68は、プレス加工によって容易に作成することができる。
外方コア部材68の圧入孔76には、内方コア部材70の全体とガイドカラー78の一部が収容される。ここで、ガイドカラー78は、一端が開口端であり、且つ他端に底壁を有する円筒形状体をなす。圧入孔76には、ガイドカラー78の開口端近傍のみが、圧入孔76の内壁に対して若干のクリアランスが生じるように挿入されている。なお、ガイドカラー78の底壁には、円孔80(特に図4参照)が貫通形成される。
内方コア部材70には、外方コア部材68の圧入孔76と同一軸となる位置に貫通孔82が形成される。この貫通孔82には、下端面がスプール18に当接するとともに、上端面がプランジャ60に当接したシャフト84(軸部)が通される。なお、シャフト84は、プランジャ60の一部位として該プランジャ60に一体的に設けられた(すなわち、プランジャ60と同一部材として設けられた)ものであってもよい。
シャフト84が貫通孔82内で変位することが容易となるように、貫通孔82の直径は、シャフト84の直径に比して若干大きく設定される。このため、シャフト84と、貫通孔82の内壁との間には若干のクリアランスが形成される。クリアランスは、好ましくは20μm以下である。
内方コア部材70は、下方から上方に向かうにつれて外径が変化する。具体的には、図1、図2A及び図2Bにおける下端部の外径が最大であり、上端部の外径が最小である。そして、下端部と上端部の間に位置する中腹部では、その外径が、下端部よりも小さく且つ上端部よりも大きく設定されている。以下、下端部、中腹部、上端部の各々を大径端部、中径部、小径端部と表記し、参照符号を86、88、90とする。
小径端部90はガイドカラー78の内部に圧入され、中径部88及び大径端部86はガイドカラー78から露呈している。そして、この露呈した部位の中、内方コア部材70の一端部である大径端部86の外壁が圧入孔76の内壁に接触する。すなわち、大径端部86の直径は圧入孔76の内径より若干大きく、このため、大径端部86は、圧入孔76に圧入されている。この圧入により、内方コア部材70は、圧入孔76内で支持された状態にある。
以上から諒解されるように、内方コア部材70は、大径端部86が外方コア部材68のフランジ部72側に臨み、且つ小径端部90がガイドカラー78の開口端に臨むようにして、その全体が外方コア部材68の圧入孔76に収容されている。
内方コア部材70の外壁には、直径方向内方(換言すれば、貫通孔82側)に向かって陥没した第1段部92、第2段部94が形成される。第1段部92と第2段部94は、所定角度、例えば、約180°離間している。なお、第1段部92と圧入孔76の内壁との間にクリアランスが形成されることは勿論である。
第1段部92は、大径端部86の底面から、中径部88と小径端部90の境界近傍まで延在する。一方、第2段部94は、大径端部86と中径部88の境界近傍から、小径端部90の底面まで延在する。従って、第1段部92の上方側終端の位置は、第2段部94の下方側終端よりも上方に位置する。
図1に戻り、プランジャ60は、前記ガイドカラー78内に収容されている。後述するように、プランジャ60は、ソレノイド部14を構成する前記電磁コイル64に対する通電量に応じてガイドカラー78内を変位(上昇又は下降)する。なお、プランジャ60には、軸線方向に沿って呼吸孔96が貫通形成される。例えば、プランジャ60が下降する際、内方コア部材70とプランジャ60の下端面との間の流体は、呼吸孔96を介して、プランジャ60の上端面とガイドカラー78の底壁との間に移動する。
ガイドカラー78の軸線方向略中腹部から上方は、有底円筒形状体からなる前記上方コア58の内部に挿入される。この挿入により、ガイドカラー78の上端部に上方コア58が外装されている。ガイドカラー78の底壁の外面と、上方コア58の底壁の内面との間には、弾性部材としてのウェブワッシャ98が介装される。
この場合、上方コア58の底壁の厚みT1は、側壁の厚み(すなわち、上方コア58の外径から内径を差し引いた値)T2に比して小さく設定されている。要するに、T1<T2である。なお、T2は、T1の1.2〜1.4倍とすることが好ましい。
なお、上方コア58の外径は、その軸線方向(図1における上下方向)に沿って略等しい。すなわち、上方コア58には、直径方向外方に向かって突出した大径部や、直径方向内方に向かって陥没した小径部等が設けられていない。
このように、上方コア58は単純な有底円筒形状体であり、その形状は著しく簡素である。このため、該上方コア58も、プレス加工によって容易に作製することができる。
ボビンコイル66には、カプラ部100と一体成形された樹脂製のコイルモールド体102が外装され、この状態で、外方コア部材68のフランジ部72の上方に配置される。
コイルモールド体102につき説明すると、その下端面及び上端面には、第1収容溝104、第2収容溝106がそれぞれ陥没形成される。これら第1収容溝104、第2収容溝106には、第3シール部材108、第4シール部材110が収容される。第3シール部材108は、外方コア部材68のフランジ部72とコイルモールド体102との間をシールし、第4シール部材110は、コイルモールド体102とハウジング12との間をシールする。
カプラ部100内に設けられたターミナル112は、ボビン62に巻回された前記電磁コイル64に対して電気的に接続されている。電磁コイル64への通電は、ターミナル112に電気的に接続される図示しない電流供給源によってなされる。
ボビン62には、軸線方向に沿って内孔114が貫通形成される。この内孔114の下方には、外方コア部材68の円筒形状部74が挿入される。また、内孔114の上方には、上方コア58が挿入される。円筒形状部74の上端部と上方コア58の下端部は若干離間しており、このため、内孔114では、ガイドカラー78の一部が露呈する。勿論、ガイドカラー78の、外方コア部材68及び上方コア58から露呈した部位と、内孔114の内壁との間には所定のクリアランスが形成される。
上方コア58は内孔114に単に挿入されているのみであり、ハウジング12やボビン62に連結されていない。すなわち、上方コア58は、ハウジング12やボビン62に対して非拘束の状態である。このため、例えば、ハウジング12から弁本体を離脱させ、さらに、下方コア56を内孔114から引き出した後にハウジング12ないしボビン62を下方に向けると、重力の作用のみで上方コア58等をボビン62から容易に取り出すことができる。
ハウジング12は、図3A及び図3Bに示すように、略円形状の底板部116と、該底板部116に連なる一対の挟持用側板部118、120と、挟持用側板部118、120同士の間に配置されるステー用側板部122とからなる。なお、図3Aは展開図であり、図3Bは、図3Aからプレス加工によって作製されたハウジング12の全体概略斜視図である。
図3A及び図3Bから諒解されるように、ハウジング12は、挟持用側板部118、120及びステー用側板部122(複数個の側板部)が底板部116に対して折曲されるとともに、底板部116の直径方向内方に向かって弧状に湾曲されることにより、略筒形状体をなす。図1に示すように、底板部116は上方に位置して天井部となる。
ハウジング12においては、挟持用側板部118、120同士の間に大スリット124が形成され、且つ挟持用側板部118とステー用側板部122の間に小スリット126、ステー用側板部122と挟持用側板部120の間に小スリット128が形成される。ソレノイド部14は、主に挟持用側板部118、120によって挟持され、大スリット124からは、カプラ部100が露呈する(図1参照)。
ステー用側板部122は、挟持用側板部118、120に比して幅狭且つ長尺である(図3A参照)。このステー用側板部122の一部は、挿通孔130が貫通形成された端部(舌片部132)を含むようにして、ハウジング12の直径方向外方に指向して折曲される(図3B参照)。
挿通孔130は、ソレノイドバルブ10を取付対象に位置決め固定するための図示しない取付具(例えば、ネジ等)を通すための孔である。すなわち、ステー用側板部122の端部が外方に折曲されて設けられた舌片部132は、ステー部として機能する。
また、挟持用側板部118、120の内面には、各々、ハウジング12の外方に向かって膨出するように段差が設けられている。これらの段差によって、略円形状の嵌合段差134が形成される。嵌合段差134には、弁ボディ16の最大径部50、及び外方コア部材68のフランジ部72が嵌合される。
なお、ステー用側板部122の内面には、挟持用側板部118、120に形成された嵌合段差134に比して、径方向に大きな折曲段差136(図1参照)が形成される。
本実施の形態に係るソレノイドバルブ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
従来技術に係るソレノイドバルブでは、上方コア58として機能する固定コアが天井面に一体的に連なるハウジングを鍛造加工によって成形する必要がある。しかも、固定コアに対し、所定の突出長とするための切削加工を行うことも必要である。すなわち、ハウジングを得るまでに多工程が必要であり、このためにコスト高であるとともに煩雑である。
一方、本実施の形態に係るソレノイドバルブ10では、ハウジング12と上方コア58が別個の部材であり、しかも、上方コア58の形状(有底円筒形状)は簡素である。従って、ワークに対してプレス加工(例えば、深絞りプレス加工)を行うことにより、上方コア58を容易に作製することができる。
なお、プレス加工は、上方コア58の底壁の厚みT1が側壁の厚みT2に比して小さくなるように実施される。T2がT1の1.2〜1.4倍の範囲内であれば、上方コア58の側壁を形成するプレス加工が困難となることはない。
また、図3Bに示すハウジング12は、板材から図3Aに示すワークを切り出し、このワークに、例えば、底板部116に対して挟持用側板部118、120及びステー用側板部122を相対的に折曲するとともに、側板部118、120、122同士を互いに近接する方向(直径方向内方)に弧状に湾曲させるプレス加工を施すことで作製される。挟持用側板部118、120同士が離間しており、且つ挟持用側板部118とステー用側板部122、ステー用側板部122と挟持用側板部120も離間しているので、プレス加工中、底板部116に対する側板部118、120、122の折曲が容易に進行する。従って、ハウジング12も容易に作製することができる。
底板部116に対して挟持用側板部118、120及びステー用側板部122が相対的に折曲されることに伴い、小スリット126、128及び大スリット124が形成される。併せて、上記のプレス加工と同時に、ステー用側板部122の端部が外方に向かうように折曲されて舌片部132(ステー部)が形成される。
すなわち、本実施の形態においては、ステー部を、ハウジング12の本体と別部材とする必要がない。このため、部品点数が低減する。また、ステー部をハウジング12に接合するための作業(例えば、溶接)が不要となる。すなわち、工程数が低減する上に作業が簡素となる。加えて、上方コア58に対して切削加工や穿孔加工を行う必要もない。以上のことから、ハウジング12及び上方コア58を得るまでの工程数が低減する。
さらに、上記のように単なる曲げプレス加工を行う場合には、深絞りプレス加工に比して、比較的厚肉の素材から成形品を得ることが可能である。このため、小スリット126、128及び大スリット124が形成されたハウジング12を厚肉のものとして得ることができるので、後述する通電時に磁路面積を確保することができる。
また、小スリット126、128及び大スリット124が形成されているため、肉厚の大きなハウジング12を作製した場合であっても、重量が過度に増加することが回避される。
しかも、プレス加工装置は、鍛造加工装置に比して設備投資が低廉である。このことと、上記のように工程数が低減することとが相俟って、コストの低廉化を図ることができる。
以上の工程・作業とは別に、図4に示すように、下方コア56、ガイドカラー78及びプランジャ60からなるコア組立体を作製する。
すなわち、先ず、内方コア部材70、外方コア部材68を個別に作製する。内方コア部材70、外方コア部材68の形状が双方とも簡素であるので、両コア部材68、70のいずれもプレス加工によって作製することができる。このため、上記と同様の理由から、コストの低廉化を図ることができる。
次に、ガイドカラー78の開口端から、該ガイドカラー78の内部に内方コア部材70を圧入する。勿論、ガイドカラー78内にはプランジャ60を予め挿入しておく。圧入は、内方コア部材70の小径端部90側から行う。
小径端部90の所定量がガイドカラー78の内部に進入した時点で、圧入を停止する。従って、ガイドカラー78からは、ガイドカラー78の中径部88、及び大径端部86が露呈する。そして、次に、圧入孔76の開口から、内方コア部材70を圧入済のガイドカラー78を挿入する。この際には、円筒形状部74のフランジ部72側から、ガイドカラー78の閉塞端部側を先ず挿入する。
挿入が進行するに従い、ガイドカラー78の閉塞端部が圧入孔76から露呈し、さらに、大径端部86が圧入孔76に到達する。大径端部86の直径が圧入孔76の内径より若干大きいので、大径端部86は、圧入孔76に圧入される。
大径端部86の底面と、フランジ部72の端面とが略面一となった時点で、大径端部86の圧入孔76への圧入を停止する。内方コア部材70の高さ方向寸法が、圧入孔76の高さ方向寸法に比して小さいことから、内方コア部材70は、全体が圧入孔76内に収容される。以上により、プランジャ60が収容されたガイドカラー78が下方コア56に支持されたコア組立体が得られる。
この際の圧入距離は、内方コア部材70の大径端部86が圧入孔76に圧入される程度であることから、比較的短い。従って、圧入作業が容易である。また、圧入孔76の内周壁や内方コア部材70の外壁に、傷やかじり等が発生することを回避することが容易である。
以上のようにして組み立てられたコア組立体では、プランジャ60と外方コア部材68の軸心同士に位置ズレが生じることが回避される。すなわち、プランジャ60と外方コア部材68の同軸度の精度が向上する。上記したように、プランジャ60を内部に収容し且つ内方コア部材70の小径端部90が圧入されたガイドカラー78が圧入孔76に挿入されるとともに、内方コア部材70の大径端部86が圧入孔76に圧入されるからである。
次に、例えば、ガイドカラー78の円孔80が形成された底壁を含む端部に対し、ウェブワッシャ98を介して上方コア58を装着する。これによりガイドカラー78と上方コア58の軸心同士が略合致するので、ガイドカラー78と上方コア58の同軸度の精度も向上する。結局、外方コア部材68、プランジャ60、上方コア58の同軸度を確保することが容易となる。
次に、シャフト84を貫通孔82に通した後、コア組立体を構成する外方コア部材68のフランジ部72と、スプール18及びコイルスプリング28が予め組み付けられた弁ボディ16の最大径部50とを当接させ、さらに、外方コア部材68の円筒形状部74と上方コア58を、コイルモールド体102が外装されたボビンコイル66の内孔114に通す。なお、これとは逆に、外方コア部材68の円筒形状部74と上方コア58を、コイルモールド体102が外装されたボビンコイル66の内孔114に通した後、外方コア部材68のフランジ部72と、弁ボディ16の最大径部50とを当接させるようにしてもよい。
このように、本実施の形態では、プランジャ60を収容したガイドカラー78、及び下方コア56の双方を、コア組立体としてボビンコイル66の内孔114に挿入すればよいので、ソレノイド部14を容易に組み立てることができる。
次に、コイルモールド体102をハウジング12で覆う。この際、大スリット124とカプラ部100の位相を合わせる。
ハウジング12の内面下端には、嵌合段差134が設けられている。この嵌合段差134の内方に、外方コア部材68のフランジ部72と、弁ボディ16の最大径部50とが配置された後、いわゆるカシメが行われる。このカシメに伴い、フランジ部72及び最大径部50が嵌合段差134に嵌合される。この嵌合により、弁ボディ16及びソレノイド部14がハウジング12に保持されてソレノイドバルブ10が構成される。
このソレノイドバルブ10では、上方コア58をガイドカラー78に装着しているので、上方コア58をハウジング12に位置決め固定するための支持部材等が不要である。すなわち、本実施の形態では、ハウジング12に対して上方コア58を圧入することも、連結する(拘束状態とする)こともしていない。従って、組立作業が簡便となり、その分、作業時間が短縮される。結局、ソレノイドバルブ10を効率よく組み立てることができる。そして、部品点数が増加することが回避される。
また、この構成では、ウェブワッシャ98によって上方コア58がハウジング12側に弾発付勢される。このため、ハウジング12の底板部116の内面に対する上方コア58の当接状態が良好となる。従って、ハウジング12と上方コア58との間で磁路が遮断されることが回避される。
その後、ソレノイドバルブ10は、例えば、可変バルブタイミング機構等の外部機器に組み込まれるとともに、ターミナル112が図示しない電流供給源に対して電気的に接続される。この際、第1シール部材48がソレノイドバルブ10と外部機器との間のシールをなす。
外部機器とソレノイドバルブ10は、ハウジング12を構成するステー用側板部122の挿通孔130に通された取付具(例えば、ネジ等)を介して連結される。
このソレノイドバルブ10は、次のように動作する。
ボビンコイル66を構成する電磁コイル64に通電がなされていないときには、図1に示すように、コイルスプリング28が伸張してスプール18を弾発付勢する。従って、スプール18が上死点に位置する。この状態では、入力ポート38と弁孔20が連通するとともに、スプール18の環状溝36を介して弁孔20と第1出力ポート40とが連通する。さらに、第2出力ポート42は、弁孔20、第1通過孔32及び内室30を介してドレインポート44に連通する。
従って、入力ポート38から弁孔20内に導入された圧力流体(例えば、作動油)は、弁孔20を経由して第1出力ポート40から導出され、例えば、可変バルブタイミング機構の遅角室に送られる。
圧力流体は、遅角室から導出された後、第2出力ポート42から弁孔20に戻される。圧力流体は、さらに、スプール18の側壁に形成された第1通過孔32を介してスプール18の内室30に進入し、その後、第2スプリング受部26に形成された開口を経て、ドレインポート44からソレノイドバルブ10の外方に排出される。
この状態から前記電流供給源を介してターミナル112に電流が供給されることにより、電磁コイル64に通電がなされる。これに伴って、下方コア56(固定コア)、プランジャ60(可動コア)、上方コア58(固定コア)及びハウジング12との間に磁界が生じる。すなわち、プランジャ60を下方コア56、特に、外方コア部材68の円筒形状部74におけるテーパー状に縮径した先端に引き寄せる電磁力がソレノイド部14に発生する。その結果、プランジャ60がガイドカラー78内で下方に指向して変位する。この際、内方コア部材70とプランジャ60との間の流体は、プランジャ60に形成された呼吸孔96を介して、プランジャ60の上端面と、ガイドカラー78の底壁の内面との間に移動する。
ここで、ガイドカラー78の底壁には、円孔80が形成されている。このため、プランジャ60の上端面と、ガイドカラー78の底壁の内面との接触面積が小さい。従って、プランジャ60の上端面とガイドカラー78の底壁との間に移動した流体に起因してプランジャ60がガイドカラー78に貼り付くことが防止される。すなわち、前記流体によってプランジャ60が変位することが阻害されることはない。
また、上方コア58の底壁がハウジング12の底板部116の内面に当接しているので、ハウジング12と上方コア58の間で磁路が遮断されることはない。また、上方コア58においては、底壁の厚みT1が側壁の厚みT2に比して小さく設定されている。このため、上方コア58の底壁の内面が、ハウジング12の底板部116の内面に近接する。その結果として磁束密度が高まるので、磁気特性(磁路効率)が向上する。従って、プランジャ60の吸引力が向上する。
プランジャ60が下方に変位すると、該プランジャ60の下端面に当接したシャフト84がプランジャ60から押圧され、下方に変位する。シャフト84と、内方コア部材70の貫通孔82との間に20μm以下のクリアランスが形成されているので、シャフト84は容易に変位することができる。また、クリアランスがこの程度であれば、シャフト84が傾斜することが回避される。このため、シャフト84の摺動抵抗が大きくなることや、かじりが生じることが回避される。
さらに、例えば、圧力流体に切粉等の異物が混入し、該異物が前記フィルタを通過して弁孔20から環状段部52に流入してきた場合であっても、シャフト84と貫通孔82の内壁との間のクリアランスが最大で20μm程度であるので、異物が貫通孔82に進入することが防止される。
なお、圧入孔76の内壁と、内方コア部材70の外壁との間に流体が進入した際、該流体に異物が同伴されて進入することも考えられる。
ここで、内方コア部材70には、上記したように第1段部92、第2段部94が所定角度(本実施の形態では約180°)で離間して設けられている。従って、圧入孔76に進入した流体は、第1段部92に沿って上昇した後、中径部88の外壁に沿って周回し、さらに、第2段部94に沿って上昇することになる。すなわち、内方コア部材70において、圧力流体が流通可能な流路は、図2Bの矢印に示すように、第1段部92、中径部88及び第2段部94によって形成されるクランク流路である。
クランク流路では、始点から終点に至るまでの総距離を長く設定することができる。しかも、クランク流路には屈曲点が設けられるので、流体の流通方向も屈曲することになる。すなわち、クランク流路はラビリンス構造をなす。長尺であり且つこのような形状のクランク流路(ラビリンス構造)を、異物が流通することは困難である。従って、流体に同伴された異物がクランク流路を通過してガイドカラー78内、換言すれば、プランジャ60側に到達することは困難である。
しかも、流体は、下方から上方に指向してクランク流路を流通することになる。このために流体に重力が作用するので、異物にも重力が作用する。従って、流体ないし異物が、クランク流路の下方の壁(特に、大径端部86と中径部88との段差)に捕捉され易くなる。このことによっても、異物がクランク流路を通過することが阻害される。
すなわち、クランク流路に異物が混入した場合、該異物は、このクランク流路を流通する過程で捕捉される。以上のような理由から、圧入孔76に進入した異物がガイドカラー78(プランジャ60側)まで到達することを回避することができる。
このため、ボビンコイル66、下方コア56、上方コア58及びプランジャ60等を含んで構成されるソレノイド部14の磁気特性に、異物に起因する影響が及ぶことが回避される。また、異物が、プランジャ60と、該プランジャ60を囲繞するガイドカラー78との間に噛み込まれることが防止されるので、プランジャ60の変位が妨げられることも防止される。
従って、このソレノイドバルブ10では、ソレノイド部14の磁気特性が良好に維持されるとともに、プランジャ60の吸引力が良好に保たれる。
シャフト84の下端面がスプール18の上端面に当接しているため、シャフト84が変位することに追従し、スプール18も下方に変位する。この際、コイルスプリング28が収縮する。
プランジャ60、ひいてはスプール18の変位量は、電磁コイル64に通電される電流に基づいて制御される。すなわち、変位量は、電流値が小さいときには小さく、大きいときには大きくなる。
例えば、スプール18の変位量が小さいときには、スプール18の側壁によって第1出力ポート40及び第2出力ポート42の双方が閉塞される。すなわち、弁孔20と、第1出力ポート40及び第2出力ポート42との連通が遮断される。このため、圧力流体がソレノイドバルブ10から導出されることはない。
一方、スプール18の変位量が最大となるとき、換言すれば、下死点に位置するときには、スプール18の下端面がスプール受部24に着座する。この場合、入力ポート38は、弁孔20及び環状溝36を介して第2出力ポート42に連通する。また、第1出力ポート40は、弁孔20、第2通過孔34及び内室30を介してドレインポート44に連通する。
従って、入力ポート38から弁孔20内に導入された圧力流体は、弁孔20及び環状溝36を経由して第2出力ポート42から導出され、例えば、可変バルブタイミング機構の進角室に送られる。
圧力流体は、進角室から導出された後、第1出力ポート40から弁孔20に戻され、さらに、第2通過孔34を介してスプール18の内室30に進入し、その後、上記と同様に開口を経て、ドレインポート44からソレノイドバルブ10の外方に排出される。
適切な量の圧力流体が流通した後、前記電流供給源からターミナル112への電流供給が停止され、結局、電磁コイル64への通電が停止される。これに伴って、プランジャ60を引き寄せていた前記電磁力が消失する。従って、コイルスプリング28が伸張してスプール18を弾発付勢する。
このため、スプール18、シャフト84及びプランジャ60が上方に変位し、最終的に上死点に位置する。この際、プランジャ60の上端面と、ガイドカラー78の底壁の内面との間の流体が、呼吸孔96を介してプランジャ60の下端面と内方コア部材70との間に移動する。
電磁コイル64に対する通電・通電停止が繰り返されることに伴い、上記したように電磁力が形成又は消滅する。ここで、内方コア部材70がガイドカラー78及び外方コア部材68の各々に圧入され、且つガイドカラー78に上方コア58が装着されているので、上方コア58、プランジャ60、外方コア部材68及び内方コア部材70の軸心同士が略合致する。すなわち、同軸度の精度が向上する。従って、ヒステリシス特性が良好となる。
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、ソレノイドバルブ10は、横臥姿勢や、図1とは天地が逆になった姿勢で外部機器に取り付けられたとしても使用することが可能である。
また、弁部材としてスプール18を採用する必要は特にない。すなわち、ソレノイドバルブは、通電停止時に閉状態となるいわゆるノーマルクローズドタイプや、通電停止時に開状態となるいわゆるノーマルオープンタイプであってもよい。