JP6251286B2 - 塩素化プロペン生成のための方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塩素化プロペン生成のための方法に関する。
ハイドロフルオロカーボン(HFC)生成物は、冷蔵、空調、発泡体の発泡を含む多くの用途において、ならびに医療用エアロゾル装置を含むエアロゾル製品のための噴射剤として、広く活用される。HFCは、これが取って代わったクロロフルオロカーボンおよびハイドロクロロフルオロカーボン生成物よりも環境により配慮したものであることは証明されているものの、かなりの地球温暖化能力(GWP)を提示することも最近発見されている。
現在のフルオロカーボン生成物に対してより許容可能な代替物の追求により、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)生成物の出現に至った。以前使われていたものと比べると、HFOは、オゾン層への悪影響がより少ないか、または皆無であり、GWPもHFCと比べてはるかに低く、大気へ与える影響がより少ないと期待される。好都合なことに、HFOの提示する引火性および毒性もまた、低いものである。
環境上、したがって経済上のHFOの重要性が高まるにつれ、その生成において活用される前駆物質への需要も高まっている。多くの望ましいHFO化合物、例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンまたは1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン等は、クロロカーボンの供給材料、特に、塩素化プロペンを活用することで典型的に生成され得、塩素化プロペンはまた、ポリウレタン発泡剤、殺生物剤、およびポリマー製造のための供給材料としても使用され得る。
残念ながら、多くの塩素化プロペンは、その製造において典型的に活用される方法が複雑かつ多段階であることに少なくとも一部は起因して、商業的な利用可能性が制限されている場合、および/または非常に高値でしか手に入らない場合がある。これは、塩素化プロペン製造のための従来型の方法が、供給材料として有用であるために必要とされる大規模な製造によって経済的に生成されるには高価に過ぎる出発物質の使用を必要とする場合があるという事実に、少なくとも一部は起因するであろう。より費用効果のある出発物質は知られているものの、それらの使用は、従来型の出発物質よりも望ましくない中間体を多量に生成することに帰着し得る。それ故に、初めにもたらされる費用節減も、これらの望ましくない中間体の除去または処分に対処することで費消され得る。
したがって、冷媒および他の商業的な生成物の合成における供給材料として有用なクロロカーボン前駆物質の生成のための、改善された方法を提供することが望ましくあるだろう。とりわけ、このような方法は、出発物質がより安価であり、また、2次生成物の除去のために追加的な処理費を必要とするのではなく、むしろ同生成物の使用をもたらすならば、当分野の現在の状態に対して改善をもたらすであろう。
本発明は、塩素化プロペン生成のための効率的な方法を提供する。有利なことに、本方法は、クロロヒドリン生成における副生成物である、1,2−ジクロロプロパンを、単独で、あるいは1,2,3−トリクロロプロパンと共に、安価な出発物質として利用する。出発物質としてのジクロロプロパンの使用は、少なくともそれがもたらす費用節減の点において有利ではあるものの、所望される最終生成物へ容易には処理されない1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを大量に生成してしまうということに帰着し易い傾向にある。1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは、例えば1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成するための従来型の技術では容易には脱塩化水素化されないものの、所望される最終生成物を提供するために好適な触媒を使用することで効率的に脱塩化水素化され、PDCの出発物質としての使用をより更に経済的に実行可能にするということが、最近発見されている。
一態様において、本発明は、1,2−ジクロロプロパンを含む供給流からの塩素化プロペン生成のための方法を提供する。本方法は、PDC供給流の塩素化により生成されるペンタクロロプロパンの少なくとも一部の触媒的脱塩化水素化を含む。幾つかの実施形態において、ペンタクロロプロパンは1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを含む。脱塩化水素触媒は、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化チタン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。幾つかの実施形態において、これらの内少なくとも1つは、塩化第二鉄と共に使用され得る。望ましくは、脱塩化水素触媒は、全反応混合物の5モル%より少ない、または2モル%よりも少ない量で活用される。追加的な脱塩化水素化が実施され得、そのような実施形態において、化学塩基の存在下で、液相において実施されてもよい。少なくとも1回の触媒的脱塩化水素ステップが活用されるため、HClの副生成物としての回収が可能である。
一実施形態に従う方法の略図を示す。 別の実施形態に従う方法の略図を示す。 一実施形態に従う生成物流のNMRスペクトルを示す。 別の実施形態に従う供給物流(下)および生成物流(上)のNMRスペクトルを示す。
本明細書は、より良く本発明を定義するために、ならびに本発明の実践において当業者を指導するために、ある定義と方法とを提供する。特定の用語または言い回しに関する定義の提供、または不提供は、何らかの特定の重要性、またはその欠如を示唆することを意図していない。むしろ、特に断りの無い限り、用語は、関連業者による従来型の使用法に従い理解されるべきである。
本明細書において使用される「第1」、「第2」、および同類の用語は、順番、量、または重要性のいずれも意味せず、むしろ1要素を別のものから区別するために使用される。また、「a」および「an」という用語は、量の制限を意味せず、むしろ当該品目の内少なくとも1つの存在を意味し、「前」、「後ろ」、「下」、および/または「上」という用語は、特に断りの無い限り、記載の便宜のために使用されているに過ぎず、任意の1つの位置または空間的定位に制限されない。
範囲が開示される場合、同じ成分または特性に向けられる全ての範囲の終端点は算入され、独立して組み合わせることができる(例えば、「25重量%まで、または、より具体的には、5重量%〜20重量%、」という範囲は、終端点および「5重量%〜25重量%」の範囲のあらゆる中間値を算入する等)。本明細書において使用されるパーセント(%)転化は、反応器中の反応物質の、流入に比するモル流量または質量流量における変化を指し示すことを意図し、一方パーセント(%)選択性は、反応物質のモル流量の変化に比する反応器中の生成物のモル流量における変化を意味する。
本明細書を通して、「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、ある実施形態に関連して記載される特定の特色、構造、または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して、様々な場所における「一実施形態において」または「ある実施形態において」という言い回しの出現は、必ずしも同じ実施形態を言及するものではない。更に、特定の特色、構造または特徴は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わされてよい。
幾つかの事例において、「PDC」は、1,2−ジクロロプロパンの省略形として使用され得、「TCP」は1,2,3−トリクロロプロパンの省略形として使用され得、「TCPE」は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの省略形として使用され得る。「分解」および「脱塩化水素」という用語は、同じ反応形式、つまり、塩素化炭化水素反応剤中の隣接する炭素原子からの水素原子および塩素原子の除去に典型的による二重結合の創成を結果として生じるもの、を指すために互換的に使用される。
本発明は、PDCを含む供給流からの塩素化プロペン生成のための効率的な方法を提供する。多くのクロロヒドリン法および塩化アリル法における副生成物であるPDCの出発物質としての使用は、いくつかの従来型のクロロヒドリン法および塩化アリル法に関連してなされているであろう焼却処分よりも、経済的により魅力的である。
PDCの塩素化は、他のペンタクロロプロパン異性体に加えて、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンの大量の生成に行き着くことがある。しかしながら、他のペンタクロロプロパン異性体とは異なり、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成するために苛性剤を使用しても容易には脱塩化水素化され得ない。結果として、1,1,2,3−テトラクロロプロペンに向けてPDCを出発物質として使用する方法は、所望されるより低い収率、または経済的な実現可能性を提示する場合がある。
1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンが、ある触媒の存在下で容易に脱塩化水素化し、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供することが最近発見されている。それ故に、本方法において、本方法により生成されるペンタクロロプロパンの少なくとも一部が、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化チタン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される触媒を使用して、触媒作用によって分解される。
驚くべきことに、これらの触媒が、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを分解する能力を持つのみならず、これがなされる際、より望ましい異性体である1,1,2,3−テトラクロロプロペンをほぼ排他的に提供するということが最近発見されている。当業者は1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを分解することで、2,3,3,3−テトラクロロプロペンが主として生成されると予期していたであろうことから、これは大変に驚くべきことである。本方法を使用することで、幾らかの量の2,3,3,3−テトラクロロプロペンが生成されることが予期されるものの、活用される分解条件下で、少なくとも一部、そうでなければ実質的に全ての任意のこの量が異性化し、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供すると考えられる。1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは従来型の苛性クラッキング条件に応じて分解しないため、この結果は驚くべきものであり、塩化第二鉄、またルイス酸も1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを分解するために有効ではないことから、この結果は更に驚くべきことである。
本方法において活用される任意の他の脱塩化水素化は、気相または液相のどちらで起こってもよく、化学塩基の存在下で、または追加的な気相脱塩化水素化の場合は触媒の存在下で起こってもよい。本方法の幾つかの実施形態において、最初のPDCの気相での脱塩化水素化に加えて、1回以上の追加的な気相での触媒的脱塩化水素化が活用され、結果として、このような方法は従来型の方法と比べて苛性クラッキングステップの更なる低減を提供し得る。このような実施形態において、追加的な量の無水HClが回収され得る。無水HClは、従来型の苛性クラッキングステップが活用された場合に副生成物(複数可)として生成される塩化ナトリウムよりも、より大きな価値を持つ。したがって、本方法は、売却するか、あるいは例えばエチレンジクロリドを生成するためのエチレンのオキシ塩素化等の他の方法のための供給材料として使用し得る、副生成物の生成に帰着する。触媒の使用が所望される場合、好適な脱塩化水素触媒としては、限定されるものではないが、塩化アルミニウム(AlCl)、五塩化アンチモン(SbCl)、四塩化チタン(TiCl)、塩化第二鉄(FeCl)、またはこれらの組み合わせが挙げられる使用され得る。
他の実施形態において、本方法の追加的な脱塩化水素ステップは、化学塩基または液体苛性剤の存在下で実行されてよい。多くの化学塩基がこの目的のために有用であることが当分野において公知であり、これらはいずれも使用し得る。例えば、好適な塩基としては、限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、リチウム、ルビジウム、およびセシウム、またはこれらの組合せが挙げられる。相間移動触媒、例えば第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩がまた、これらの化学塩基を用いる脱塩化水素反応の速度を改善するために添加され得る。
しかしながら、本方法において活用される任意の塩素化は、触媒の使用の有無に関わらず液相において実行され得、触媒は所望されるならば、本方法を増進させるために使用され得る。例えば、フリーラジカル開始剤は使用に関して好適であり、当業者は多くを知っている。公知のフリーラジカル触媒または開始剤が、望ましくは、本方法を増進するために使用される。このような触媒は、典型的に、1つ以上の塩素、過酸化物、またはアゾ(R−N=N−R′)基を含み得、ならびに/あるいは反応器の相移動度/活性度を提示し得る。本明細書において使用される言い回し、「反応器の相移動度/活性度」は、相当量の触媒または開始剤が、反応器の設計上の制限内で、生成物、塩素化および/またはフッ素化プロペン(複数可)の有効なターンオーバーを開始し伝播することのできる十分なエネルギーを持つフリーラジカルを生成するために、利用可能であることを意味する。
更に、フリーラジカル開始剤は、フリーラジカルの理論最大値が、本方法の温度/滞留時間の下で、所与の開始剤から生成されるような、十分な等方性解離エネルギーを有する必要がある。低濃度または反応性のために初期ラジカルのフリーラジカル塩素化が阻害されるような濃度でフリーラジカル開始剤を使用することは、特に有用である。驚くべきことに、同開始剤の活用は、本方法による不純物の生成を増加させず、少なくとも50%、または60%まで、70%まで、ならびに幾つかの実施形態において、80%まで、あるいは更にそれ以上の塩素化プロペンの選択率をもたらす。
このようなフリーラジカル開始剤は当業者に広く公知であり、例えば、“Aspects of some initiation and propagation processes,”Bamford,Clement H.Univ.Liverpool,Liverpool,UK.,Pure and Applied Chemistry,(1967),15(3−4),333−48およびSheppard,C.S.;Mageli,O.L.“Peroxides and peroxy compounds,organic,”Kirk−Othmer Encycl.Chem.Technol.,3rd Ed.(1982),17,27−90において概説されている。
上記を考慮に入れると、塩素を含む好適なフリーラジカル開始剤の例としては、限定されるものではないが、四塩化炭素、ヘキサクロロアセトン、クロロホルム、ヘキサクロロエタン、ホスゲン、塩化チオニル、塩化スルフリル、トリクロロメチルベンゼン、過塩素化アルキルアリール官能基、あるいは次亜塩素酸、次亜塩素酸t−ブチル、次亜塩素酸メチルを含む、有機および無機の次亜塩素酸塩、例えばchloroamine−T(登録商標)等の塩素化アミン(クロラミン)および塩素化アミドまたはスルホンアミド等が挙げられる。1つ以上の過酸化物基を含む好適なフリーラジカル開始剤の例としては、過酸化水素、次亜塩素酸、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化クミルを含む、脂肪族および芳香族過酸化物またはハイドロ過酸化物等が挙げられる。ジペルオキシドは、競合的方法(例えば、TCP(およびその異性体)ならびにテトラクロロプロパンへのPDCのフリーラジカル塩素化)を伝播することができるという利点をもたらす。加えて、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)等の化合物は、本発明の条件下で、トリクロロプロパンおよびテトラクロロプロパンへのPDCの塩素化に影響を与える際に有用となり得る。これらの任意の組み合わせもまた、活用され得る。
塩素化反応は、Breslow,R.により、Organic Reaction Mechanisms W.A.Benjamin Pub,New York p223−224において教示されるように、フリーラジカル触媒/開始剤の光分解を誘導するために好適な波長で、パルスレーザーまたは連続UV/可視光源に供されてよい。光源の300〜700nmの波長は、商業的に利用可能なラジカル開始剤を解離するのに十分である。このような光源としては、例えば、反応器チャンバを照射するように構成される適切な波長またはエネルギーの、Hanovia UV放電灯、太陽灯、またはパルスレーザービームまでもが挙げられる。代わりに、Bailleuxらにより、Journal of Molecular Spectroscopy,2005,vol.229,pp.140−144において教示されるように、反応器に導入されたブロモクロロメタン供給原料へのマイクロ波放電からクロロプロピルラジカルを生成し得る。
イオン性塩素化触媒はまた、本方法において行われる塩素化を触媒するために使用され得る。イオン性塩素化触媒は、隣接する炭素原子から塩素および水素を除去し、この炭素原子が二重結合を形成し、HClが放出される。塩素分子は次いで、二重結合を置換することで再付加され、より高次の塩素化アルカンをもたらす。イオン性塩素化触媒は当業者または分野に広く公知であり、任意のこれらの触媒が本方法において使用され得る。例示的なイオン性塩素化触媒としては、限定されるものではないが、塩化アルミニウム、塩化第二鉄(FeCl)および他の鉄含有化合物、ヨウ素、硫黄、五塩化アンチモン(SbCl)、三塩化ホウ素(BCl)、ハロゲン化ランタン、金属トリフラート、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
本方法において活用される触媒のいずれかまたは全てを、バルクまたは例えば活性炭、グラファイト、シリカ、アルミナ、ゼオライト、フッ素化グラファイト、およびフッ素化アルミナ等の基材に結合させて提供することができる。所望される触媒(もしあれば)、またはその構成がどのようなものであっても、当業者は、それらの適切な形式および導入方法を決定する方法を熟知している。例えば、多くの触媒は典型的に、別の供給として、あるいは他の反応物との溶液として、反応ゾーンに導入される。
活用される任意のフリーラジカル塩素化および/または脱塩化水素触媒の量は、他の反応条件と同様、選択される特定の触媒に依存する。一般的に、触媒の活用が所望される本発明の実施形態において、反応方法条件(例えば、必要とされる温度の低下など)または実現される生成物に幾らかの改善をもたらすために十分な触媒/開始剤が活用されるべきであるが、経済的実用性の理由だけでも、如何なる追加的な利益ももたらされない。
単に例示目的に示すものであるが、フリーラジカル開始剤またはイオン性塩素化触媒の有用な濃度は、1ppm〜20重量%、または10ppm〜10%、または0.01%〜5重量%の範囲であろうことが予期される。脱塩化水素触媒が1つ以上の脱塩化水素ステップに関して活用される場合、有用な濃度は、70℃〜200℃の温度で、0.01重量%〜5重量%、または0.05重量%〜2重量%の範囲であってよい。化学塩基が1回以上の脱塩化水素化に関して活用される場合、これらの有用な濃度は、0.01〜20グラムモル/L、または0.1グラムモル/L〜15グラムモル/L、または1グラムモル/L〜10グラムモル/Lの範囲であり、それらの間の全ての部分範囲を算入するであろう。各触媒/塩基の相対濃度は、例えば、1,2−ジクロロプロパン単独で、または1,2,3−トリクロロプロパンと共になされる供給に応じて所与される。
本方法の塩素化ステップは、任意の塩素化剤を使用して実施され得、これらの内幾つかは当分野において公知である。例えば、好適な塩素化剤としては、限定されるものではないが、塩素、および/または塩化スルフリル(SOCl)が挙げられる。塩素化剤の組み合わせもまた使用され得る。前述のイオン性塩素化触媒の使用によって促進されるような場合は、Clおよび塩化スルフリルのいずれかまたは両方が、特に有効であり得る。
本方法は、所望される塩素化プロペンを生成するために、1つ以上の塩素化アルカンを利用し得る。望ましくは、1つ以上の塩素化アルカンは、多くのクロロヒドリン法および塩化アリル法における副生成物としてのその生成により安価で手に入り得る、1,2−ジクロロプロパンを含む。本方法の供給材料はまた、所望されるならば、トリクロロプロパン、または他の塩素化アルカンを含んでもよい。そして、1つ以上の塩素化アルカンは、所望されるならば、例えば、クロロヒドリン法における副生成物として、あるいは当業者に公知の任意の他の方法によって、本方法中またはその前段において生成されてよい。
任意の塩素化プロペンが本方法を使用して生成され得るが、3〜4個の塩素原子を持つものがより商業的に希求され、したがって、幾つかの実施形態において同塩素化プロペンの生成が好まれ得る。幾つかの実施形態において、本方法は、冷蔵、ポリマー、殺生物剤等のための供給材料として高く希求される、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの生成において使用され得る。
追加的な実施形態において、本方法の1つ以上の反応条件は、更なる利点、つまり反応副生成物の選択率、転化率、または生成における改善をもたらすように、最適化され得る。ある実施形態において、複数の反応条件が最適化され、生成される反応副生成物の選択率、転化率、および生成における更なる改善すら確認し得る。
最適化され得る本方法の反応条件は、例えば、製造フットプリントにおいて既存の装置および/または材料の活用によって調節し得る、または低リソースコストで獲得しうる等、適宜調節される任意の反応条件を含む。このような条件の例は、限定されるものではないが、温度、圧力、流量、反応物のモル比、機械攪拌等の調節を含み得る。
しかしながら、本明細書に記載される各ステップで採用される特定の条件は重要ではなく、当業者によって容易に決定される。重要なことは、PDCが出発物質として活用されることと、本方法により生成されるペンタクロロプロパンの少なくとも一部が、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化チタン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される脱塩化水素触媒を使用して、触媒作用によって脱塩化水素化されることと、である。当業者は、各ステップのための好適な装置と、塩素化、脱塩化水素、分離、乾燥、および異性化ステップを実行し得る特定の条件と、を容易に決定することができるであろう。
例示的な一実施形態において、PDCは、例えば、内部冷却コイルを備えるバッチまたは連続攪拌槽オートクレーブ反応器等の液相反応器に供給される。気液解放タンクまたは容器が付随する、シェルおよび多管交換器もまた使用し得る。好適な反応条件としては、例えば、周囲温度(例えば、20℃)〜200℃、または30℃〜150℃、または40℃〜120℃、または50℃〜100℃の温度が挙げられる。周囲圧力、または100kPa〜1000kPa、または100kPa〜500kPa、または100kPa〜300kPaの圧力が使用され得る。このような条件で、1つ以上のイオン性塩素化触媒を使用することにより、PDCは、三、四、および五塩素化プロパンへ、60%超、または70%超、または80%超、または85%超、または90%超、または95%超の転化率で塩素化され、更には100%まで確認することができる。
本方法は、水無しで、つまり溶媒の非存在下で実施してもよく、あるいは1つ以上の溶媒が、塩素化反応器に提供されてもよく、供給材料として提供されてもよく、または塩素化反応器からの流れを受けるように動作可能に配置された、1つ以上の分離カラムから再循環されてもよい。例えば、モノクロロプロペン中間体は、1つの分離カラムから塩素化反応器に再循環されてもよく、トリおよびテトラクロロプロパン中間体は、別の分離カラムから再循環されてもよく、ならびに/あるいは塩素化反応器は、例えば、四塩化炭素、塩化スルフリル、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3,3−ヘキサクロロプロパン、他のヘキサクロロプロパン異性体、または他の水もしくはアルコール系溶媒、あるいはこれらの組み合わせ等の、塩素化反応のための任意の適切な溶媒の供給材料を提供され得る。
塩素化反応器からの上部蒸気は、冷却され、凝縮され、第1の分離カラムに供給される。このカラムは、無水HClをその上部ラインに提供し、下部再循環ラインを通じて塩素を提供するために有効な条件で運転される。
より具体的には、このようなカラムの頂部温度は、典型的に0℃以下に設定され得、またはより好ましくは−70℃〜−10℃の温度に設定され得る。このカラムの下部温度は、望ましくは、下部の混合組成物にある程度依存する正確な温度によって、10℃〜150℃、または30℃〜100℃に設定される。このカラムの圧力は、望ましくは、200kPa超に、または好ましくは500kPA〜2000kPaに、またはより好ましくは500kPa〜1000kPaに設定される。このような条件で運転されるカラムの下部流は、過剰な塩素、未反応のPDC、およびモノクロロプロペン中間体を含有することが予想される一方、上部流は、無水HClを含むことが予想される。
塩素化反応器からの液体生成物流は、三および四塩素化プロパンを五塩素化プロパンから分離するために有効な条件下で運転される、第2分離カラムに供給され得る。この分離カラムからの、三および四塩素化プロパンを含む上部流は、更なる転化/塩素化のために、塩素化反応器へと再循環されてもよく、一方でペンタクロロプロパン、および例えばヘキサクロロプロパンの異性体等の重質副生成物を含むと見込まれる下部流は、更なる分離カラムへと提供されてよい。
この第3の分離カラムは、望ましいペンタクロロプロパン、すなわち1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、および1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを、下部流としてパージされる望ましくない1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパンおよび重質成分から分離する。
1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、および1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを含む上部流は次いで、触媒的脱塩化水素反応器に提供され、ここでこの上部流は、2,3,3,3−テトラクロロプロペンおよび1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成するために、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化チタン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される触媒の存在下で、触媒作用によって脱塩化水素化される。幾つかの実施形態において、触媒的脱塩化水素触媒は、塩化第二鉄を更に含み得る。
この触媒的脱塩化水素反応器は、典型的に、バッチまたは連続攪拌槽型反応器であり得る。混合は、例えば、機械式攪拌器、静的混合器、または供給流のジェット混合によりなされ得る。反応器は、反応温度を60℃〜120℃に、または好ましくは70℃〜100℃に、またはより好ましくは80℃〜90℃に維持するために、内部または外部熱交換器を備える。反応器は上部に、無水HClを除去し、有機反応物および生成物を戻すために50℃未満で運転される冷却器を備え得る。反応器は、HCl副生成物を効率的に除去するために、周囲圧力以上で運転され得る。
この触媒的脱塩化水素反応器からの液体生成物流は、1,1,2,3−テトラクロロプロパン、および未反応のペンタクロロプロパン異性体、つまり触媒的脱塩化水素反応条件により実質的に影響を受けなかったものを含むことが予期される。より具体的には、この流れは1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、少量の未転化の1,1,1,2,2−および1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、ならびに溶解したHClを含むであろうことが予期される。この生成物流は次いで、更なる脱塩化水素装置、すなわち望ましくは生成物TCPEをまず除去すること無しに液体塩基または苛性剤で実行されるもの、へと供給され得る。有利なことに、ルイス酸触媒が蒸留ステップ間に存在すると、再沸器内での塩素化有機物の分解に帰着し得るため、ここでの苛性クラッキングステップの使用はまた、ルイス酸触媒の反応を停止するために役立つ。
苛性脱塩化水素反応器からの反応流は、任意に乾燥カラムへ提供されてもよく、そこからの乾燥流は、上部流内のTCPE生成物およびその異性体、ならびに下部流内の未反応のクロロプロパン中間体を回収するために、更なる蒸留装置へと提供される。下部流は次いで、分離装置へ再循環され、ここでペンタクロロプロパン中間体が回収され、触媒的脱塩化水素反応器へと再循環される。
分離されたTCPEおよびその異性体は次いで、適切な条件下で2,3,3,3−テトラクロロプロペンを1,1,2,3−テトラクロロプロペンに異性化するために、反応器に供給される。例えば、触媒が異性化を助長するために活用されてよく、その場合、好適な触媒としては、限定されるものではないが、(i)カオリナイト、ベントナイト、およびアタパルジャイトを含む極性表面を有する珪質顆粒、(ii)サポナイトまたは石英等の、シリカの他のミネラル塩、あるいは(iii)シリカゲル、ヒュームドシリカ、およびガラス等の珪質非ミネラル物質、または任意のこれらの組み合わせが挙げられる。このような反応流のための乾燥カラムに関する好適な条件もまた、米国特許第3,926,758号により明示されるように、当業者に公知である。
このような方法の略図が図1に示される。図1に示されるように、方法100は、塩素化反応器102、120、分離装置104、106、108、112、および114、脱塩化水素反応器116および118、ならびに乾燥装置110を利用する。
運転において、塩素化反応器102への供給は、新鮮なPDC、および再循環されたトリクロロプロパン、1つ以上の塩素化剤、ならびに任意に1つ以上の開始剤または触媒を含む。塩素化反応器102は、無水HCl、ならびに未反応の塩素およびPDCを含む上部流と、未反応のPDC、および3〜6個の塩素原子を含む塩素化プロパン生成物を含む下部流と、を提供する条件下で運転される。上部流は分離カラム104へ、無水HClの分離および回収のために提供される。分離カラム104は、未反応のPDCおよび塩素を含む下部流を提供し、この下部流は塩素化反応器102へ再循環され得る。
塩素化反応器102からの下部流は、塩素化反応器102へ再循環され得る、PDC、ならびにトリクロロプロパンおよびテトラクロロプロパン中間体を含む上部流と、分離装置108へ提供される、1,1,2,3−テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、および重質2次生成物を含む下部流と、を提供するために有効な条件下で運転される分離装置106へ提供される。
分離装置108は、適切に処分され得る、望ましくないペンタクロロプロパン異性体、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン、およびヘキサクロロプロパンから、1,1,2,3−テトラクロロプロパンおよび望ましいペンタクロロプロパンを分離する。望ましいペンタクロロプロパンは、触媒的脱塩化水素反応器116へ上部に提供され、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(TCPE)を提供するために脱塩化水素化される。
より具体的には、分離装置108からの上部流は、望ましくは、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、ならびに1,1,2,2,3−、1,1,1,2,3−、および1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを含み得る。特に1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成するように、通常の苛性クラッキング条件下で分解することは無いが、この異性体は、塩化アルミニウム、塩化アンチモン、塩化チタン、これらの組み合わせ、または任意のこれらの組み合わせと塩化第二鉄とを使用することで、TCPEを提供するように、触媒作用によって分解するであろう。そうするために、脱塩化水素反応器116は、望ましくは、80℃〜100℃の温度、大気圧以上の圧力、2重量%以上の触媒濃度で運転される。
有利なことに、触媒的脱塩化水素反応器116はHClの流れを生成し、この流れは無水HClの更なる量の回収のために分離装置104へ提供され得る。1,1,2,3−テトラクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、および1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを含むと見込まれる、触媒的脱塩化水素反応器116からの生成物流は、望ましくは苛性脱塩化水素反応器であってよい脱塩化水素反応器118へ直接提供され、ここで1,1,2,3−テトラクロロプロパン、および1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンは苛性分解され、TCPEおよびトリクロロプロペンを含む生成物流を生成する。任意に、反応器116からの生成物流は、脱塩化水素反応器118へ供給される前に、AlCl3を除去するために、反応停止装置(図示せず)へ提供されてよい。脱塩化水素反応器118からの生成物流は、水、ならびに例えば水酸化アルミニウムおよび塩化ナトリウム等の水溶性2次生成物を除去するために、乾燥装置110へ供給される。この流れは次いで、分離装置112へ供給され、この分離装置は、上部流としてトリクロロプロペンと、下部流としてTCPE、ならびに未反応の1,1,2,3−テトラクロロプロパンおよびペンタクロロプロパンと、を提供する。
トリクロロプロペンを含む112の上部流は、液相塩素化反応器120へ供給され、ここでこれらのトリクロロプロペンは、ペンタクロロプロパン中間体および未反応の塩素を含む生成物流へと転化される。生成物流は次いで、ペンタクロロプロパン中間体、および塩素化反応器102へと再循環される塩素を回収するため、分離装置106へ再循環される。
TCPE、ならびに未反応の1123−テトラクロロプロパンおよびペンタクロロプロパンを含む、分離装置112の下部流は次いで、上部流としてTCPEを回収する分離装置114へと供給される。未反応のペンタクロロプロパンおよび1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含む114の下部流は、分離装置108へ再循環される。
追加的な例示的方法が図2に示される。図2に示されるように、方法200は、脱塩化水素反応器202および216、乾燥装置220、分離装置206および208、塩素化反応器210、異性化反応器240を利用する。方法100が塩素化ステップで始まるのに対して、方法200は脱塩化水素ステップで始まる。
運転において、脱塩化水素反応器202への供給は、新鮮なPDCと、再循環されたPDC、トリ、テトラ、およびペンタクロロプロパン、ならびにジ、トリ、およびテトラクロロプロペンとを、50重量%の苛性ソーダ溶液と共に含有する。脱塩化水素反応器202は、望ましくは、対応するモノ、ジ、トリ、およびテトラクロロプロペンを生成するために十分な条件下で運転される。
粗生成物は、任意の未転化のPDCおよび再循環されたクロロプロパンと共に、下部流中の、水、ならびに例えば水酸化アルミニウムおよび塩化ナトリウム等の水溶性2次生成物を除去するために、乾燥装置220へ送られる。乾燥装置220からの有機生成物は、分離装置206に提供される。幾つかの実施形態において、乾燥装置220は複数のカラム(図示せず)を含んでもよく、例えば、異種共沸蒸留は、乾燥カラムおよび除水カラムを使用することによって実施され得る。このような実施形態において、両方のカラムの上部流は、デカンタ(図示せず)内にまとめられ、水相は水カラム(図示せず)へ供給され、有機相は乾燥カラム(図示せず)へ供給される。
分離装置206は、その上部流がTCPEより軽い有機物、例えばモノクロロプロペン、ジクロロプロペン、およびトリクロロプロペン、ならびに未反応のクロロプロパンを含むように、大気圧より下、ならびにTCPEの沸点(167℃)より低い再沸器温度で運転される。この上部流は次いで、モノ、ジ、およびトリクロロプロペンを、トリ、テトラ、およびペンタクロロプロパンへそれぞれ転化させるために、液相塩素化反応器210へ供給される。塩素化反応器210のこの生成物流は、触媒的脱塩化水素反応器216へ提供される。触媒的脱塩化水素反応器216からの生成物流は、有利なことに、触媒的脱塩化水素反応器216からの生成物流中に存在する任意の触媒を分解するように作動もする、苛性脱塩化水素反応器202へ提供される。
1,1,2,3−TCPEおよびその異性体、2,3,3,3−テトラクロロプロペンを含む、分離装置206の下部流は、2,3,3,3−テトラクロロプロペンを1,1,2,3−TCPEへ転化するために、異性化反応器240へ提供され得る。異性化反応器240の生成物は、上部生成物としてTCPEを回収するために、分離装置208へ供給される。分離装置208の下部流は、未反応のテトラおよびペンタクロロプロパンと、重質副生成物とを含む。この流れは、重質がシステム内に蓄積することを防ぐために、パージされ得、あるいはテトラクロロプロパンおよびペンタクロロプロパンが、脱塩化水素反応器216へ再循環される前に、追加的な分離カラム(図示せず)の使用により、この流れから分離され得る。任意に、216の上部流中の無水HClは、他の方法における使用のために、除去され、精製され得る。
方法200に関して、例えばPDC、TCP、テトラクロロプロパン、およびペンタクロロプロパン等の、全ての脱塩化水素反応は、2つの液相脱塩化水素反応器において実施される。有利なことに、触媒的脱塩化水素装置からの生成物流は、化学塩基および/または苛性溶液が、触媒的脱塩化水素反応器からの生成物流中の任意の触媒の少なくとも一部を反応停止させるように作動し得る、苛性脱塩化水素装置へ提供される。これは、下流設備における不要な反応を触媒するような触媒に関する可能性を、低減、または排除すらする。結果として、触媒的脱塩化水素装置216と次の方法ステップとの間における反応停止装置の使用は回避され得、資本費節減がもたらされる。
本方法によって生成される塩素化および/またはフッ素化プロペンは、典型的に、ハイドロフルオロオレフィンを含む更なる下流生成物、例えば、1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234ze)等を提供するために加工処理され得る。本発明は塩素化プロペンの生成のための改善された方法を提供するので、提供される改善がこれらの下流方法および/または生成物へ改善を提供するために繰り越されるであろうことが予期される。したがって、例えば2,3,3,3、−テトラフルオロプロプ−1−エン(HFO−1234yf)等のハイドロフルオロオレフィンの生成のための改善された方法もまた、本明細書において提供される。
ハイドロフルオロオレフィンを提供するための塩素化および/またはフッ素化プロペンの転化は、式C(X)CCl(Y)(C)(X)で表される化合物の、式CFCF=CHZで表される少なくとも1つの化合物へのフッ素化を含む、単一の反応または2つ以上の反応を概して含み得、ここで、各X、Y、およびZは、独立してH、F、Cl、I、またはBrであり、各mは独立して1、2、または3であり、nは0または1である。より具体的な例は、塩素化および/またはフッ素化プロペンの供給材料が、例えば1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)等の化合物を形成するために、触媒気相反応においてフッ素化される、多段階方法を含み得る。1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)は、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパンを提供するために水素フッ素化され、これは次いで触媒気相反応により、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンへと脱塩化水素化される。
以下の実施例において、個々のクロロプロパン異性体は、塩素原子の位置の参照により、つまり112は、1,1,2−トリクロロプロパンを指し示し、1123は、1,1,2,3−テトラクロロプロパンを指し示し、11223は、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを指し示すこと等で識別される。塩素化プロペンに関して、接尾辞として付け加えられる「e」によって、例えば112eは、1,1,2−トリクロロプロペンを指し示し、1123eは、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを指し示し、11223eは、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロペンを指し示す等、類似の命名法が使用される。
実施例1
1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンおよび1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンの未希釈の混合物を、5N NaOHおよび触媒量の相間移動触媒テトラブチルアンモニウムクロリドを50℃で使用することで苛性分解する。混合物をこの温度で1時間激しく攪拌し、採取する。攪拌を同条件で夜通し続ける。
1時間後、全ての1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンは1,1,2,3−テトラクロロプロペンへと転化されるが、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは、本質的に全く消費されなかった。図3においてNMRスペクトルにより示されるように、夜通しの攪拌の後も、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンの多くが未消費のまま残される。
実施例2
四塩化炭素中の1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンの溶液が、AlClを触媒として使用することで脱塩化水素化される。80℃で、図4で提供される生成物(上)NMRスペクトルにおいて示されるように、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンはTCPEになる。出発物質スペクトルは、図4内の下のスペクトルである。この反応の予測される生成物は2,3,3,3−TCPEであるが、これらの条件下で2,3,3,3−TCPEが再配列し、1,1,2,3−TCPEを主な生成物として提供すると考えられる。まとめると、実施例1および2は、1,1,1,2,2は苛性クラッキング条件に応じて脱塩化水素化しないものの、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは、ルイス酸触媒塩化アルミニウムと接触した際に、分解するだけでなく、驚くべきことに、所望されるTCPE異性体である1,1,2,3をほぼ排他的に提供することを示す。
実施例3
1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンの脱塩化水素化を、FeCl3を触媒として使用することで試み、他の全ての条件は実施例2のものと同様であり、つまり、四塩化炭素が溶媒として活用され、反応は80℃で実施される。1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンは、これらの条件で反応性を持たず、2,3,3,3−TCPEまたは1,1,2,3−TCPEのどちらにも本質的に全く(<5%転化)転化しない。実施例2と併せてまとめると、この実施例は、塩化第二鉄は触媒作用による1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンの分解において完全に効力が無いが、塩化アルミニウムは単に有効であるだけでなく、驚くべきことに、それが使用され得る条件が、1,1,2,3−TCPEの提供にほぼ排他的に帰着することを示す。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態を例示する。
[実施形態1]
1,2−ジクロロプロパンを含む供給流からの塩素化プロペン生成のための方法であって、前記方法により生成されるペンタクロロプロパンの少なくとも一部が、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化チタン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの脱塩化水素触媒を使用して、触媒作用によって脱塩化水素化される、方法。
[実施形態2]
前記脱塩化水素触媒の全濃度が全反応混合物の5モル%より少ない、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記ペンタクロロプロパンが1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態4]
化学塩基の存在下において実行される少なくとも1回の追加的な液相脱塩化水素化を更に含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態5]
前記触媒的脱塩化水素化からの前記供給流が、前記液相脱塩化水素化へ提供される、実施形態4に記載の方法。
[実施形態6]
前記触媒的脱塩化水素化が、1,1,2,3−テトラクロロプロパンおよび未反応のペンタクロロプロパンを含む流れを生成する、実施形態1、3、または5に記載の方法。
[実施形態7]
前記触媒が、前記化学塩基脱塩化水素化の生成物により反応を停止し、前記生成物流から除去される、実施形態6に記載の方法。
[実施形態8]
前記供給流が1,2,3−トリクロロプロパンを更に含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態9]
HClが副生成物(複数可)として生成される、実施形態1または3に記載の方法。
[実施形態10]
HClが無水HClとして回収される、実施形態9に記載の方法。
[実施形態11]
前記化学塩基が、苛性剤、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態4、5、または7に記載の方法。
[実施形態12]
前記生成物流が、前記脱塩化水素触媒を低減するために反応停止される、実施形態1または2に記載の方法。
[実施形態13]
前記反応停止された触媒が前記生成物流から除去される、実施形態12に記載の方法。

Claims (10)

  1. 1,2−ジクロロプロパンを含む供給流からの1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成のための方法であって、前記1,2−ジクロロプロパンが塩素化されて1種以上のペンタクロロプロパンを生成し、前記塩素化により生成されるペンタクロロプロパンの少なくとも一部が、塩化アルミニウムを使用して、触媒作用によって脱塩化水素化され、前記ペンタクロロプロパンが1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンを含み、前記触媒的脱塩化水素化が1,1,2,3−テトラクロロプロペンおよび未反応のペンタクロロプロパンを含む流れを生成する、方法。
  2. 前記脱塩化水素触媒の全濃度が全反応混合物の5モル%より少ない、請求項1に記載の方法。
  3. 化学塩基の存在下において実行される少なくとも1つの追加的な液相脱塩化水素化を更に含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記触媒的脱塩化水素化からの前記供給流が、前記液相脱塩化水素化へ提供される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記触媒が、前記化学塩基脱塩化水素化の生成物により反応を停止し、前記生成物流から除去される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記供給流が1,2,3−トリクロロプロパンを更に含む、請求項1に記載の方法。
  7. HClが副生成物として生成される、請求項1に記載の方法。
  8. HClが無水HClとして回収される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記化学塩基が、苛性剤、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の方法。
  10. 前記生成物流が、前記脱塩化水素触媒を低減するために反応を停止され、前記反応停止した触媒が前記生成物流から任意に除去される、請求項1または2に記載の方法。
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