(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る液滴吐出装置の一例について説明する。
(全体構成)
図1には、液滴の一例としてのインク滴LAを吐出して記録媒体Pに画像を記録する液滴吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置10が示されている。インクジェット記録装置10は、記録媒体Pが収容される収容部12と、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部14と、収容部12から画像記録部14へ記録媒体Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録媒体Pが排出される排出部18と、を含んで構成されている。
画像記録部14は、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kを有している。また、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kは、複数の吐出口の一例としてのノズル24(図2参照)をそれぞれ有している。そして、ノズル24が設けられた各ノズル面22Y、22M、22C、22Kは、記録媒体Pの最大幅と同程度か、又はそれ以上の記録可能領域を有している。
さらに、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kは、記録媒体Pの搬送方向の下流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色の順で並列に並べられており、その各色に対応したインク滴LAを、圧電方式によって、複数のノズル24(図2参照)から吐出し、記録媒体Pに画像を記録する構成となっている。なお、以後の説明では、インクの色を区別する必要がある場合にY、M、C、Kの英字を符号に付与する。また、インクの色を区別する必要が無い場合にY、M、C、Kの英字を省略することがある。
インクジェット記録装置10には、液体の一例としてのインクLを貯留する貯留部としてのメインタンク56が、各色ごとに設けられており、各色ごとのメインタンク56Y、56M、56C、56Kから、各インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20KへインクLが供給される。なお、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kへ供給されるインクLとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インクなど、各種インクの使用が可能である。
搬送手段16は、収容部12内の記録媒体Pを1枚ずつ取り出す取出ドラム28と、画像記録部14のインクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kへ記録媒体Pを搬送し、その記録面(表面)をインクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kに対面させる搬送体としての搬送ドラム32と、画像が記録された記録媒体Pを排出部18へ送り出す送出ドラム34と、を有している。そして、取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34は、静電的吸着手段、或いは吸引や粘着などの非静電的吸着手段によって、外周面に記録媒体Pを保持するように構成されている。
また、取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34には、それぞれ記録媒体Pの搬送方向の下流側端部を挟んで保持するグリッパー36が、周方向に間隔をあけて2組ずつ設けられている。そして、取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34は、グリッパー36によって、それぞれの外周面に記録媒体Pを2枚まで保持可能に構成されている。なお、グリッパー36は、取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34の外周面に2つずつ形成された凹部28A、32A、34A内に設けられている。
具体的には、凹部28A、32A、34A内の予め定められた位置に、取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34の回転軸38に沿った回転軸42が支持されており、この回転軸42には、その軸方向に間隔をおいて複数のグリッパー36が設けられている。したがって、回転軸42が、図示しないアクチュエーターによって正方向(例えば図示の時計回り方向)又は逆方向(例えば図示の反時計回り方向)に回転することにより、グリッパー36が取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34の周方向に沿って正方向又は逆方向に回転し、記録媒体Pの搬送方向の下流側端部を挟んで保持したり、離したりするようになっている。
つまり、グリッパー36は、その先端部が、取出ドラム28、搬送ドラム32、及び送出ドラム34の外周面から若干突出するように回転することで、取出ドラム28の外周面と搬送ドラム32の外周面とが対面する受け渡し位置44において、取出ドラム28のグリッパー36から搬送ドラム32のグリッパー36へ記録媒体Pを受け渡すようになっている。さらに、搬送ドラム32の外周面と送出ドラム34の外周面とが対面する受け渡し位置46において、搬送ドラム32のグリッパー36から送出ドラム34のグリッパー36へ記録媒体Pを受け渡すようになっている。
また、インクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kをメンテナンスするメンテナンスユニット(図示省略)を備えている。メンテナンスユニットは、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kのノズル面22Y、22M、22C、22Kを覆うキャップ、予備吐出(空吐出)されたインク滴LAを受ける受け部材、ノズル面22Y、22M、22C、22Kを清掃する清掃部材、ノズル内のインクを吸引するための吸引装置などを有している。そして、このメンテナンスユニットがインクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kに対向する対向位置に移動することで、各種のメンテナンス動作が行われる。
(画像記録動作)
次に、インクジェット記録装置10の画像記録動作について説明する。
収容部12から取出ドラム28のグリッパー36により1枚ずつ取り出され、取出ドラム28の外周面に保持された記録媒体Pは、取出ドラム28の外周面に吸着されつつ搬送される。そして、受け渡し位置44において、取出ドラム28のグリッパー36から搬送ドラム32のグリッパー36へ受け渡される。また、搬送ドラム32のグリッパー36により保持された記録媒体Pは、搬送ドラム32の外周面に吸着されつつインクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kの画像記録位置まで搬送され、インクジェットヘッド20Y、20M、20C、20Kから吐出されるインク滴LAにより記録面に画像が記録される。
続いて、記録面に画像が記録された記録媒体Pは、受け渡し位置46において、搬送ドラム32のグリッパー36から送出ドラム34のグリッパー36へ受け渡される。そして、送出ドラム34のグリッパー36により保持された記録媒体Pは、送出ドラム34の外周面に吸着されつつ搬送され、排出部18へ排出される。以上のようにして、一連の画像記録動作が行われる。
(各部の構成)
次に、インクジェット記録装置10の各部の構成について説明する。
図2には、インクLを貯留するメインタンク56からインクジェットヘッド20までの配管図が示されている。インクジェット記録装置10は、インクLを貯留するメインタンク56と、インク滴LA(図1参照)を吐出する液滴吐出部の一例としての複数のヘッドモジュール50と、インクLを循環させる循環路100と、を含んで構成されている。
循環路100は、ヘッドモジュール50に供給されるインクLが流れる(メインタンク56から各ヘッドモジュール50へインクLが流れる)供給路30と、ヘッドモジュール50から(吐出されずに)排出されたインクLが流れる排出路60と、を含んで構成されている。また、各ヘッドモジュール50には、既述のように、インク滴LA(図1参照)が吐出される複数のノズル24が形成されている。なお、循環路100において、インクLが供給路30からヘッドモジュール50を経由して排出路60へ流れる方向を順方向、インクLが排出路60からヘッドモジュール50を経由して供給路30へ流れる方向を逆方向とする。
供給路30は、後述する供給側主管98、供給管74、共通流路の一例としての供給側マニホールド58、及び供給側マニホールド58に接続された複数の個別流路の一例としての複数の供給側分岐路62を含んで構成されている。また、排出路60は、後述する共通流路の一例としての回収側マニホールド64、回収側分岐路66、回収管76、回収側主管148、及び分岐管166を含んで構成されている。
各ヘッドモジュール50には、インクLが流入する入力ポート52Aと、インクLが排出される出力ポート52Bとが設けられている。入力ポート52Aには、供給側マニホールド58から分岐した供給側分岐路62の先端が取り付けられ(接続され)、出力ポート52Bには、回収側マニホールド64から分岐した回収側分岐路66の先端が取り付けられている(接続されている)。
すなわち、供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64には、ヘッドモジュール50の設置数分の分岐管(供給側分岐路62及び回収側分岐路66)が接続されている。そして、インクジェット記録装置10は、供給側マニホールド58に供給されるインクLを予め定められた圧力(供給路30側の圧力であり、以後、供給側の圧力P1という)、かつ予め定められた流量で各ヘッドモジュール50へ供給する。さらに、インクジェット記録装置10は、ヘッドモジュール50へ供給されたインクLを予め定められた圧力(排出路60側の圧力であり、以後、回収側の圧力P2という)、且つ予め定められた流量で、各ヘッドモジュール50から回収側マニホールド64へ回収する構造となっている。
ここで、ヘッドモジュール50内では、供給側の圧力P1と回収側の圧力P2との間で差圧ΔP(=P1−P2)を発生させることにより、ノズル面22に対して、供給側の圧力P1と回収側の圧力P2との総和の平均の圧力である背圧P3(P3=(P1+P2)/2)を付与している。この背圧P3によって、ヘッドモジュール50の複数のノズル24にインクLが保持されるようになっている。そして、インク吐出の為のエネルギー発生素子(図示省略)が駆動されることにより、画像情報に応じたインク滴LAの吐出が実行されるようになっている。
供給側分岐路62には、該供給側分岐路62内のインクLの流れを遮断する遮断手段の一例としての供給側バルブ68と、ダンパー70とが設けられている。また、回収側分岐路66には、該回収側分岐路66内のインクLの流れを遮断する遮断手段の一例としての回収側バルブ72と、ダンパー70とが設けられている。供給側バルブ68及び回収側バルブ72は、ヘッドモジュール50を個別に動作させる必要があるときに開閉操作されるものであり、ダンパー70は、供給側マニホールド58から供給されるインクL、あるいは回収側マニホールド64へ回収されるインクLの流動時の圧力変動などを緩和する役目を有している。
供給側マニホールド58には、長手方向の一端(図2の右端部)に供給路30の一部を構成する供給管74の一端が取り付けられており、回収側マニホールド64には、長手方向の一端(図2の右端部)にインクL循環のための配管系の一部を構成する回収管76の一端が取り付けられている。また、供給側マニホールド58の他端と回収側マニホールド64の他端との間には、ヘッドモジュール50を迂回して供給路30と排出路60とを接続する迂回流路の一例としての第1流路78と、第2流路82とが設けられている。
第1流路78には、第1バルブ84が設けられている。また、第2流路82には、第2バルブ86が設けられている。第1流路78及び第2流路82は、供給側マニホールド58と回収側マニホールド64との間の圧力調整やインクの流量調整などに用いられる。例えば、通常のインクLの循環(供給側マニホールド58から回収側マニホールド64へのインクLの流れ)では、第1バルブ84が閉止されると共に第2バルブ86が開放され、インクLが第2流路82のみ流通可能となっている。
さらに、供給側マニホールド58の他端と回収側マニホールド64の他端には、それぞれ、供給側圧力センサ88及び回収側圧力センサ92が取り付けられており、供給側圧力センサ88及び回収側圧力センサ92によって、供給側マニホールド58内及び回収側マニホールド64内を流れるインクLの圧力が監視されている。すなわち、供給側圧力センサ88及び回収側圧力センサ92の出力に基づいて、後述するポンプ制御部212(図3参照)が、後述する供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の回転方向と回転速度をフィードバック制御し、ヘッドモジュール50の入力ポート52Aと出力ポート52Bとの間に設定差圧を保持し、インクLが循環するようになっている。
また、供給側マニホールド58に連結された供給管74の他端は、インクLに作用する圧力を低減させるダンパー部の一例としての供給側サブタンク94に連結されている。供給側サブタンク94は、弾性力を有する膜部材96によって内部が仕切られた二室構造となっており、下側がインク用サブタンク室94A、上側が空気室94Bとなっている。
インク用サブタンク室94Aには、メインタンク56に連結されたバッファタンク112からインクLを引き込むための供給側主管98の一端が連結されている。そして、供給側主管98の他端は、バッファタンク112に連結されている。空気室94Bには、開放管95が連結されており、開放管95には、供給側サブタンク94のダンパー機能を制限する制限手段の一例としての供給側エアコネクトバルブ97、供給側エアタンク99、及び供給側エアバルブ101が設けられている。
供給側主管98には、バッファタンク112から供給側サブタンク94まで順番に、インクL内から脱気する脱気手段の一例としての脱気モジュール114、一方向弁116、ヘッドモジュール50へインクLを加圧して供給する供給側ポンプ118、供給側フィルタ122、及びインク温度調整器124が設けられている。
脱気モジュール114は、一例として、2層構造の筒体(図示省略)を含んで構成されており、この筒体は、気体分子のみを透過させる膜で形成されている。また、脱気モジュール114には、真空圧の変更機能を有する真空ポンプ(図示省略)が接続されており、真空ポンプが動作することにより、脱気モジュール114内で減圧が行われ、インクL内の気泡を脱気するようになっている。
供給側ポンプ118の入口側には、供給側主管98とは別に分岐管126の一端が連結されており、分岐管126の他端は、一方向弁128を通ってバッファタンク112に連結されている。
供給側ポンプ118は、一例として、ステッピングモータ(図示省略)を用いたチューブポンプ(弾性力を持つチューブをステッピングモータによる回転駆動でしごきながらチューブ内のインクLを供給する)で構成されているが、特にこのようなポンプに限定されるものではない。また、インク用サブタンク室94Aには、ドレイン管132の一端が連結されており、ドレイン管132の他端は、バッファタンク112に連結されている。そして、ドレイン管132には、供給側ドレインバルブ134が設けられている。
供給側サブタンク94は、インクLを循環することによって流路内の気泡がトラップされる構造になっているので、供給側ドレインバルブ134を開き、供給側ポンプ118の駆動力で供給側サブタンク94内の気泡がバッファタンク112へ送られることにより、大気開放されているバッファタンク112から気泡が排出されるようになっている。
次に、回収側マニホールド64に連結された回収管76の他端は、インクLに作用する圧力を低減させるダンパー部の一例としての回収側サブタンク142に連結されている。回収側サブタンク142は、弾性力を有する膜部材144によって内部が仕切られた二室構造となっており、下側がインク用サブタンク室146A、上側が空気室146Bとなっている。
インク用サブタンク室146Aには、バッファタンク112へインクLを引き込むための回収側主管148の一端が連結されている。そして、空気室146Bには、開放管152が連結されており、開放管152には、回収側サブタンク142のダンパー機能を制限する制限手段の一例としての回収側エアコネクトバルブ154、回収側エアタンク156、及び回収側エアバルブ158が設けられている。
回収側主管148には、回収側ポンプ149が設けられている。また、回収側ポンプ149の入口側と、供給側主管98における脱気モジュール114の出口側との間には、加圧パージ用配管162が設けられている。加圧パージ用配管162には、脱気モジュール114から回収側ポンプ149まで順番に、一方向弁168、回収フィルタ170が設けられている。すなわち、ヘッドモジュール50内を加圧して、一気にインクLを排出することで気泡などを減らすとき、供給側ポンプ118の駆動に加え、回収側ポンプ149の駆動方向を通常時に対して逆転させることで、バッファタンク112から回収側マニホールド64へ脱気されたインクLを供給するようにしている。
ここで、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149は、既述のように循環路100に設けられており、供給路30から排出路60に又は排出路60から供給路30にインクLを駆動する(流す)駆動手段の一例である。また、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149は、同様の構成である。
バッファタンク112は、補充ポンプ176が設けられた補充管172によって、メインタンク56とインクLが流通可能となっている。そして、バッファタンク112には、インクLを循環させるために必要なインク量が貯留されており、インクLの消費に応じて、メインタンク56からインクLが補充される構成となっている。補充管172の一端(メインタンク56内)には、フィルタ174が設けられている。なお、バッファタンク112とメインタンク56との間には、オーバーフロー管178が設けられており、インクLの過剰補充時に、インクLがメインタンク56へ戻されるようになっている。
回収側主管148における回収側ポンプ149よりも下流側には、分岐管166の一端が接続されており、分岐管166の他端は、補充管172における補充ポンプ176よりも下流側に接続されている。そして、分岐管166には、一方向弁167が設けられている。
ここで、回収側ポンプ149の駆動力により、回収側サブタンク142内のインクLをバッファタンク112へ回収するようになっている。また、インク用サブタンク室146Aには、ドレイン管147の一端が連結されており、ドレイン管147の他端は、回収側ドレインバルブ151を通ってドレイン管132と繋がっている。
回収側サブタンク142は、インクLを循環することによって流路内の気泡がトラップされる構造になっているので、回収側ドレインバルブ151を開く事により、回収側ポンプ149の逆回転による駆動力で回収側サブタンク142内の気泡がバッファタンク112へ送られ、大気開放されているバッファタンク112から気泡が排出されるようになっている。
本実施形態では、供給側マニホールド58の圧力P1と回収側マニホールド64の圧力P2がP1>P2の関係となっているが、それぞれ負圧供給となっている。すなわち、供給側ポンプ118の供給圧力が負圧であるが、回収側ポンプ149の回収圧力がさらに負圧であるため、インクLは、供給側マニホールド58から回収側マニホールド64へ流れ、かつヘッドモジュール50のノズル24の背圧P3が負圧に維持されるようになっている。なお、厳密には、背圧P3の要素として、供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64の高さ位置、インク流量や流路抵抗などが関与するので、入力側の圧力P1と出力側の圧力P2を設定する際に考慮する必要がある。また、背圧P3および差圧ΔPは、ヘッドモジュール50内のノズル24付近での圧力である。
(制御部の構成)
次に、インクジェット記録装置10の制御部200について説明する。
図3に示すように、インクジェット記録装置10は、入力される信号に基づいて各部の動作を制御すると共に、ヘッドモジュール50(図2参照)からインクLを吐出させる制御部200を有している。
制御部200は、マイクロコンピュータ202と、マイクロコンピュータ202に接続されたヘッドモジュール制御部204、圧力制御部206、ドレイン制御部208、ポンプ制御部212、及び温度制御部214と、を含んで構成されている。マイクロコンピュータ202は、CPU216、RAM218、ROM222、I/O部2い、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス226を有している。
ここで、マイクロコンピュータ202は、ヘッドモジュール50(図2参照)がノズル24の液面にかかる圧力を負圧に維持した状態でインクLを順方向に循環させながらノズル24からインク滴LA(図1参照)を吐出する通常モードと、ノズル24の液面にかかる圧力を負圧に維持した状態でヘッドモジュール50からインク滴LAを吐出させずにインクL(図2参照)を逆方向に循環させる気泡低減モードとを切り換えるモード切換手段の一例である。そして、マイクロコンピュータ202は、気泡低減モード時に供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149(図2参照)を駆動させて、排出路60(図2参照)からヘッドモジュール50を経由して供給路30(図2参照)へインクLを流す。また、マイクロコンピュータ202は、通常モード及び気泡低減モードにおいて、脱気モジュール114にインクLを流す設定となっている。さらに、マイクロコンピュータ202は、ノズル24の液面にかかる圧力を一定の範囲に維持したまま通常モードから気泡低減モードへの切り換えが可能となっている。
I/O部224には、ハードディスクドライブ(HDD)228が接続されている。また、I/O部224には、供給側圧力センサ88、回収側圧力センサ92が接続されている。さらに、I/O部224には、ヘッドモジュール50のノズル24(図2参照)からインク滴LAを吐出して画像形成する際の画像データが、外部から入力されるようになっている。なお、画像データは、インク吐出位置や吐出量が定められたデータであってもよいし、JPEGなどの圧縮されたデータであってもよい。また、CPU216では、ROM222に記憶されたインク循環系プログラムが読み出されて実行されるようになっている。
インク循環系プログラムは、既述の通常モードを行う通常プログラムと、既述の気泡低減モードを行う気泡低減プログラムとを有している。通常プログラムは、一例として、図2に示すバッファタンク112内のインクLを供給側マニホールド58から回収側マニホールド64へ流動させると共に循環させる循環制御プログラムと、画像データに応じてインク滴LA(図1参照)をノズル24から吐出させる吐出プログラムとを含んでいる。なお、インク循環系プログラムは、ROM222に限らず、HDD228或いは外部記憶媒体(図示省略)に記憶しておき、当該外部記憶媒体を装填することで情報を読み取るリーダーやLANなどのネットワーク(図示省略)から取得するようにしてもよい。
図4に示すように、CPU216は、読み出した循環制御プログラムに基づいて、I/O部224に接続されたヘッドモジュール制御部204、圧力制御部206、ドレイン制御部208、ポンプ制御部212、及び温度制御部214の動作を制御する。
ヘッドモジュール制御部204には、ヘッドモジュール50に内蔵されたノズル吐出デバイス51(例えば、圧電素子などへの通電制御による圧力室の振動でインク滴LAをノズル24(図2参照)から吐出する動作をするデバイス)、供給側バルブ68、回収側バルブ72、第1バルブ84、及び第2バルブ86が接続されている。また、圧力制御部206には、供給側エアコネクトバルブ97、供給側エアバルブ101、回収側エアコネクトバルブ154、及び回収側エアバルブ158が接続されている。
ドレイン制御部208には、供給側ドレインバルブ134、回収側ドレインバルブ151が接続されている。また、ポンプ制御部212には、供給側ポンプ118、回収側ポンプ149、及び補充ポンプ176が接続されている。さらに、温度制御部214には、インク温度調整器124が接続されている。
(ヘッドモジュールの圧力設定)
次に、ヘッドモジュール50における圧力設定について説明する。
図4(A)には、循環路100(図2参照)において、順方向へのインクLの供給を開始するときの供給側の圧力P1、回収側の圧力P2、及び背圧P3の変化が示されている。既述のように、供給側の圧力P1、回収側の圧力P2、及び背圧P3は負圧であるため、圧力が0(大気圧状態)よりも負側(図の0よりも下側)で設定されている。
図4(A)に示すように、時点T0から時点T1までは、差圧ΔP及び背圧P3がほぼ0[Pa]となっている。そして、時点T1において供給側バルブ68及び回収側バルブ72(図2参照)を開放し、時点T1から時点T2までの間で供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149(図2参照)を動作させることにより、差圧ΔPが大きくなると共に背圧P3が負側へ大きくなり、時点T2以降で循環路100におけるインクLの順方向の循環が行われる設定となっている。すなわち、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149は、供給側の圧力P1及び回収側の圧力P2を定められた変化率(時点T1から時点T2までのグラフの傾斜に相当し、この変化率をR1とする。)で変化させてインクLを駆動する(流す)設定となっている。
続いて、図4(B)に示すように、時点T3(時点T2の次の時点)までインクLの順方向の循環が行われる。ここで、気泡低減モードにおいてインクLの逆方向の循環を行う場合、時点T3から時点T5まで徐々に供給側の圧力P1を大きくし、回収側の圧力P2を小さくする。すなわち、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149は、供給側の圧力P1及び回収側の圧力P2を定められた変化率(時点T3から時点T5までのグラフの傾斜に相当し、この変化率をR2とする。)で変化させてインクLを駆動する(流す)設定となっている。なお、背圧P3は変更していない。また、時点T4(T3<T4<T5)において、差圧ΔP=0となっている。
続いて、時点T5となったとき、逆方向の目標循環圧力に到達する。そして、時点T5から時点T6まで逆方向のインクLの循環が定められた流量で継続して行われる設定となっている。なお、時点T3における供給側の圧力P1と回収側の圧力P2との差圧をΔP1、時点T5における差圧をΔP2とすると、|ΔP1|<|ΔP2|となる設定になっている。そして、差圧ΔPが大きいほど、インクLの流量(速度)は増加する。
すなわち、図2及び図3に示す第1実施形態のインクジェット記録装置10では、通常モードにおいて、供給路30から排出路60へ第1速度V1でインクLを流し、気泡低減モードにおいて、排出路60から供給路30へ第1速度V1よりも速い第2速度V2でインクLを流すように、マイクロコンピュータ202に供給側の圧力P1、回収側の圧力P2、及び背圧P3が設定されている。
続いて、図4(B)に示すように、時点T6まで逆方向の目標循環圧力が維持され、時点T6から時点T7まで徐々に供給側の圧力P1及び回収側の圧力P2を小さくする。そして、時点T7において、差圧ΔP及び背圧P3をほぼ0[Pa]とする設定となっている。なお、時点T7以後は、各ヘッドモジュール50(図2参照)の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉じ、ヘッドモジュール50を除く他の部位の気泡を排出する設定となっている。
さらに、図2に示すように、第1実施形態のインクジェット記録装置10では、気泡低減モードにおいて、閉じられた供給側バルブ68及び回収側バルブ72が複数のヘッドモジュール50へのインクLの供給を遮断し、且つ第1バルブ84が開放された状態で、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149が供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64にインクLを流すように、マイクロコンピュータ202に動作プログラムが設定されている。
詳細には、気泡低減モードにおいて、排出路60からヘッドモジュール50を介して供給路30へインクLを流した後に、供給側バルブ68及び回収側バルブ72が複数のヘッドモジュール50へのインクLの流れを遮断した状態で、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149が第1流路78にインクLを流す設定となっている。ここで、第1実施形態における気泡低減モードとは、既述のようにインクLを通常モードとは逆方向に循環させる逆方向循環モードと、既述のように逆方向循環モード後に供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64にインクLを流すマニホールド気泡抜きモードとを含んでいる。第1実施形態のインクジェット記録装置10では、気泡低減モード終了後、引き続き、再度通常モードが実施される。
(作用)
次に、第1実施形態の作用について説明する。
(通常モード)
図5(A)に示すように、通常モードでは、供給側バルブ68及び回収側バルブ72を開放するとき、ノズル24(図2参照)でインクLの漏れや空気の進入、及びインクLの流れを抑えるようにする必要がある。このため、ポンプ制御部212(図3参照)が、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149(図3参照)を動作させ、背圧P3を設定範囲内(一例として−3000[Pa]以上で+100[Pa]以下、望ましくは−500[Pa]以上で0[Pa]以下)、差圧ΔPをほぼ0[Pa]の状態に制御する。この状態で、ヘッドモジュール制御部204が供給側バルブ68及び回収側バルブ72を開放する。
なお、図5(A)、(B)では、説明に必要な部位及びインクLが流れる部位の符号を表示しており、説明で使用しない部位については符号を省略している。また、図5(A)、(B)では、インクLが循環する経路を実線で示しており、他の経路を破線で示している。
続いて、ポンプ制御部212が、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の動作を制御し、背圧を目標の背圧P3、差圧ΔPを目標の差圧ΔP1(図4(B)参照)とする。これにより、バッファタンク112、脱気モジュール114、供給側ポンプ118、インク温度調整器124、供給側主管98、供給側サブタンク94、供給管74、供給側マニホールド58、ヘッドモジュール50、回収側マニホールド64、回収管76、回収側サブタンク142、回収側主管148、回収側ポンプ149、分岐管166、バッファタンク112の順で矢印A方向(順方向)にインクLが循環(供給)される。そして、ヘッドモジュール制御部204(図3参照)がノズル吐出デバイス51(図3参照)を動作させることにより、循環路100にインクLを循環させながら、ノズル24(図2参照)から記録媒体P(図1参照)へインク滴LA(図1参照)が吐出される。
ここで、図6(A)に示すように、循環路100の途中に段差部103があった場合、インクLが順方向(矢印A方向)に流れると、例えば段差部103の角部103Aの内側には、インクLが流れにくい(インクLの流れFAに沿って移動しにくい)死水域DE(図示の網がけ部分の領域)が存在する場合がある。死水域DEでは、インクLが滞留するため、通常モードでは、滞留するインクLに含まれる気泡を減らすことは難しい。なお、死水域DEは、循環路100の他に、ヘッドモジュール50内に存在していてもよい。また、図6はあくまでも模式図であり、死水域がどの領域に発生するかは、循環路100またはヘッドモジュール50の形状、インクLの流速、インクLの流れの向きなどにより異なる。
(逆方向循環モード)
図5(A)に示す通常モードの状態から、ポンプ制御部212(図3参照)が、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149(図2参照)の動作を制御し、背圧P3を設定範囲内(一例として−3000[Pa]以上で+100[Pa]以下、望ましくは−500[Pa]以上で0[Pa]以下)で保ったまま徐々に差圧ΔPを小さくする。そして、最終的に通常モードとは逆方向となる差圧ΔP2(図4(B)参照)とする。なお、一例として、背圧は、通常モード時の背圧P3をそのまま維持している。このため、ノズル24からの不用意なインクLの吐出がより確実に抑制される。
これにより、図5(B)に示すように、バッファタンク112、脱気モジュール114、加圧パージ用配管162、回収側ポンプ149、回収側主管148、回収側サブタンク142、回収管76、回収側マニホールド64、ヘッドモジュール50、供給側マニホールド58、供給管74、供給側サブタンク94、インク温度調整器124、供給側主管98、供給側ポンプ118、分岐管126、バッファタンク112の順で矢印B方向(逆方向)にインクLが循環(供給)される。なお、矢印B方向のインクLの循環は、一例として、1秒以上300秒以下の時間で行われる。
気泡低減モードにおいて、回収側ポンプ149から送りだされるインクLは、脱気モジュール114を通過する。このため、インクジェット記録装置10では、脱気されたインクLを逆方向に循環させることになる。
ここで、例えば図6(B)に示すように、インクLが逆方向(矢印B方向)に流れると、段差部103の角部103Aの内側では、インクLの流れFBが死水域DEを通過する。これにより、死水域DEに滞留していたインクLが流れ、循環路100又はヘッドモジュール50の死水域DEから気泡が動かされる。なお、ノズル24の液面にかかる圧力を負圧に維持しているので、ノズル24からの不用意なインクLの吐出が抑制されながら、循環路100又はヘッドモジュール50の死水域DEに溜まる気泡が減る。
続いて、逆方向へのインクLの循環が終了した後、ポンプ制御部212(図3参照)が、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149(図2参照)の動作を制御し、背圧P3および差圧ΔP2を徐々に変更し、最終的に背圧P3を設定範囲内(一例として−3000[Pa]以上で+100[Pa]以下、望ましくは−500[Pa]以上で0[Pa]以下)、差圧ΔPをほぼ0[Pa]の状態とし、供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止する。これにより、気泡低減モードにおけるインクLの逆方向の循環が終了する。
第1実施形態のインクジェット記録装置10では、気泡低減モードにおいて、排出路60から供給路30へ、通常モードの第1速度V1よりも速い第2速度V2でインクLが流れる。このように、気泡低減モードにおいて、通常モードの第1速度V1に比べて速い第2速度V2でインクLを流しておくと、第2速度V2で移動せず残った気泡は、第2速度V2よりも遅い第1速度V1の通常モードにおいて動き難い。これにより、気泡低減モードに引き続いて実施される通常モードのときに死水域DEの気泡が移動して、その気泡を含んだインク滴LAが吐出されることが抑制される。
(マニホールド気泡抜きモード)
図3及び図7に示すように、逆方向循環後のインクジェット記録装置10において、ヘッドモジュール制御部204が供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止する。これにより、複数のヘッドモジュール50へのインクLの供給が遮断される。また、ヘッドモジュール制御部204が、第1バルブ84を開放し、ドレイン制御部208が回収側ドレインバルブ151を開放する。なお、図7では、説明に必要な部位及びインクLが流れる部位の符号を表示しており、説明で使用しない部位の符号を省略している。また、図7では、インクLが循環する経路を実線で示しており、他の経路を破線で示している。
続いて、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118を駆動して、供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64に順方向(矢印A方向)でインクLを流す。一例として、インクLを流す速度は既述の第2速度V2に近い速度(第1速度V1よりも速い速度)とする。これにより、バッファタンク112、脱気モジュール114、供給側ポンプ118、供給側主管98、インク温度調整器124、供給側サブタンク94、供給管74、供給側マニホールド58、第1流路78、第1バルブ84、回収側マニホールド64、回収管76、回収側サブタンク142、ドレイン管147、回収側ドレインバルブ151、ドレイン管132、バッファタンク112の順で矢印A方向(順方向)にインクLが循環(供給)される。
このように、第1実施形態のインクジェット記録装置10では、気泡低減モードにおいて、インクLの逆方向循環を行った後、複数のヘッドモジュール50へのインクLの供給を遮断した状態で供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64にインクLを流す。これにより、インクLの逆方向循環時に死水域DEから移動した気泡が供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64内に残留したとしても、ヘッドモジュール50を経由しないインクLの流れによって移動して低減されるので、供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64内に気泡が滞留することが抑制される。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る液滴吐出装置の一例について説明する。
第2実施形態の液滴吐出装置は、前述した第1実施形態のインクジェット記録装置10と機械的には同様の構成とされており、気泡低減モード実施後にヘッドモジュール50からインク滴LAを吐出させる構成が異なっている。このため、第2実施形態においてもインクジェット記録装置10として記載し、前述した第1実施形態のインクジェット記録装置10と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態のインクジェット記録装置10では、マイクロコンピュータ202が、既述の通常モード、逆方向循環モード、マニホールド気泡抜きモードを実行する構成となっている。さらに、マイクロコンピュータ202は、第1実施形態の気泡低減モードを行った後にヘッドモジュール50のノズル24(図2参照)からインクLを吐出させる構成となっている。ここで、第2実施形態における気泡低減モードとは、ヘッドモジュール50からインクLを強制的に吐出させるインク吐出モードである。
(作用)
次に、第2実施形態の作用について説明する。
(インク吐出モード)
図3及び図8に示すように、インクジェット記録装置10において、ヘッドモジュール制御部204が供給側バルブ68を開放し、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118を駆動することで、矢印A方向にインクLが供給される。これにより、循環路100にインクLを循環させずに、ノズル24からインクLが吐出される。つまり、ノズル24付近に残留して粘性が増加したインクL及びこのインクLに含まれる気泡が、ノズル24から排出される(取り除かれる)。なお、図8では、説明に必要な部位及びインクLが流れる部位の符号を表示しており、説明で使用しない部位については符号を省略している。また、図8では、インクLが循環する経路を実線で示しており、他の経路を破線で示している。
インクLの供給による残留インクL及び気泡の排出は、複数のヘッドモジュール50について1つずつ実施してもよいし、複数ブロックに分けて行ってもよい。さらに、複数のヘッドモジュール50全体を一括で加圧してもよい。また、インクLの吐出後は、ノズル面22(図1参照)のインクLを払拭するとよい。
第2実施形態のインクジェット記録装置10の変形例として、図9に示すように、ヘッドモジュール50のノズル面22を覆うキャップ部材182と、キャップ部材182に一端が接続され他端が廃液タンク190に接続された廃液管184と、廃液管184に設けられた吸引選択バルブ186と、廃液管184の吸引選択バルブ186よりも廃液タンク190側に設けられた吸引ポンプ188と、を用いてもよい。
変形例のインクジェット記録装置10において、キャップ部材182がノズル面22を覆っている状態で、マイクロコンピュータ202が、吸引選択バルブ186を開放すると共に吸引ポンプ188を駆動することで、キャップ部材182内が減圧される。これにより、ノズル24付近に残留して粘性が増加したインクL及びこのインクLに含まれる気泡が、ノズル24から排出される(吸引される)。
変形例のインクジェット記録装置10による残留インクL及び気泡の排出は、複数のヘッドモジュール50について1つずつ実施してもよいし、複数ブロックに分けて行ってもよい。さらに、複数のヘッドモジュール50全体に一括で実施してもよい。また、インクLの吸引後は、ノズル面22のインクLを払拭するとよい。
なお、他の変形例として、通常モードと同じシーケンスでインクLの循環を開始後、ノズル24からインクLを吐出させるようにしてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る液滴吐出装置の一例について説明する。
第3実施形態の液滴吐出装置は、前述した第1実施形態のインクジェット記録装置10と機械的には同様の構成とされており、複数のヘッドモジュール50のうちの一部にインクLを流す構成が異なっている。このため、第3実施形態においてもインクジェット記録装置10として記載し、前述した第1実施形態のインクジェット記録装置10と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図3に示すように、第3実施形態のインクジェット記録装置10では、マイクロコンピュータ202が、既述の通常モード、逆方向循環モード、マニホールド気泡抜きモードを実行する構成となっている。さらに、マイクロコンピュータ202は、既述の気泡低減モードにおいて、複数のヘッドモジュール50の一部にインクLを流すように制御を行う構成となっている。すなわち、第3実施形態における気泡低減モードとは、複数のヘッドモジュール50の一部にインクLを流す部分循環モードである。
(作用)
次に、第3実施形態の作用について説明する。
(部分循環モード)
気泡低減モードにおけるインクLの逆方向循環時の差圧ΔP2の絶対値が、通常モードの差圧ΔP1の絶対値よりも大きい場合、全てのヘッドモジュール50について一括でインクLの逆方向循環を実施すると、インクLの流量が大きくなるため、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の送液能力が不足する虞がある。このため、第3実施形態のインクジェット記録装置10では、複数のヘッドモジュール50を複数のブロックに分けて、このブロック毎に(複数のヘッドモジュール50の一部に)気泡低減モード(インクLの逆方向循環)を実施する。なお、本実施形態では、一例として、2つのヘッドモジュール50を1ブロックとして説明する。
図3及び図10に示すように、通常モードの状態から、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の動作を制御し、背圧P3および差圧ΔPを徐々に変更して、最終的に背圧P3を0[Pa]、差圧ΔPを0[Pa]とする。そして、ヘッドモジュール制御部204が、1つめのブロックに相当するヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を開放し、残りのブロックのヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止する。
続いて、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の動作を制御し、背圧P3が正圧にならない設定範囲(一例として、−4000[Pa]以上で0[Pa]以下)を保ったまま、徐々に差圧ΔPを小さくして(絶対値|ΔP|を大きくして)、最終的に−3400[Pa]以下とする。そして、最終設定差圧に到達した後、設定時間(範囲は1秒以上300秒以下であり、一例として60秒)だけ、インクLを逆方向に循環させる。
インクLは、バッファタンク112、脱気モジュール114、加圧パージ用配管162、回収側ポンプ149、回収側主管148、回収側サブタンク142、回収管76、回収側マニホールド64、ヘッドモジュール50、供給側マニホールド58、供給管74、供給側サブタンク94、インク温度調整器124、供給側主管98、供給側ポンプ118、分岐管126、バッファタンク112の順で矢印B方向(逆方向)に循環(供給)される。なお、図10では、説明に必要な部位及びインクLが流れる部位の符号を表示しており、説明で使用しない部位については符号を省略している。また、図10では、インクLが循環する経路を実線で示しており、他の経路を破線で示している。
続いて、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の動作を制御し、背圧P3及び差圧ΔPを徐々に変更して、最終的に背圧P3を0[Pa]、差圧ΔPを0[Pa]とする。そして、ヘッドモジュール制御部204が、1つめのブロックのヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止する。これらの手順を、2つめのブロックのヘッドモジュール50から、最後のブロックのヘッドモジュール50まで繰り返す。
図11には、供給側の圧力P1、回収側の圧力P2、及び背圧P3の変化がタイミングチャートとして示されている。時点t0のときに通常モードでインクLが循環しており、時点t0から時点t1まで徐々に背圧P3及び差圧ΔPを0[Pa]に近づける。そして、時点t1となったとき、背圧P3及び差圧ΔPがほぼ0[Pa]となる。この時点で1番目のヘッドモジュール50(図10参照)を除く他のヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72(図10参照)を閉止する。
続いて、時点t2から時点t3まで徐々に設定圧力を変更する。ここで、時点t2から時点t3においては、供給側の圧力P1の負側への変化率を、回収側の圧力P2の正側への変化率よりも大きくして、背圧P3を正圧にならない設定範囲(一例として、−4000[Pa]以上で0[Pa]以下)に保つようにする。時点t3で逆方向循環の差圧ΔP2に到達した後、時点t4まで逆方向循環を継続する。そして、時点t4から時点t5まで徐々に設定圧力を変更し、時点t5となったときに、差圧ΔPがほぼ0[Pa]となる。ここで、1番目のブロックのヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止し、2番目のブロックのヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を開放する。
その後は、時点t2、t3、t4、t5と同様に時点t6、t7、t8、t9において各設定圧力を変更し、順次、ブロックを変えながら、最後のブロック(時点t10、t11で示す)まで逆循環シーケンスを繰り返す。そして、最後に、徐々に設定圧力を変更して差圧ΔPと背圧P3をほぼ0[Pa]とする。その後、各ヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止し、ヘッドモジュール50以外の部分の気泡を排出する。
図11に示すタイミングチャートでは、背圧P3を大気圧(0[Pa])に向けて変化させてから、各ヘッドモジュール50の供給側バルブ68及び回収側バルブ72(図10参照)を開放又は閉止する。これにより、インクジェット記録装置10において、通常モード時の背圧P3のまま各バルブを開放又は閉止する場合に比べて、ノズル24(図2参照)からのインクLの漏れや気泡混入が抑制される。なお、本実施形態では、各ヘッドモジュール50において最終設定差圧ΔP2で逆方向循環を実施している際の背圧P3は、通常モード時の背圧P3と同じ値としている。
図12には、図11に示すタイミングチャートの変形例として、最終ブロックのヘッドモジュール50まで、供給側バルブ68及び回収側バルブ72が開放又は閉止されるタイミングも含めて、背圧P3が通常モード時と同じ圧力で維持された場合のタイミングチャートが示されている。このように背圧P3を維持した場合は、ノズル24における圧力の変動が少ないので、循環路100内に気泡が入りにくくなる。
逆方向循環時には、通常モードから、供給側ポンプ、回収側ポンプの圧力を逆方向循環時の目標圧力に変更する必要がある。しかし、以上説明したように、第3実施形態のインクジェット記録装置10では、インクLの逆方向循環時には供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149では一部のヘッドモジュール50を対象に圧力を付与すればよいので、供給側ポンプ118、回収側ポンプ149の能力の範囲内で所望の目標圧力が得られやすくなる。よって、各ヘッドモジュール50へのインクLの供給が不十分となることが抑制され、ヘッドモジュール50内に気泡が滞留することが抑制される。なお、第2バルブ86が閉じていてもよい。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る液滴吐出装置の一例について説明する。
第4実施形態の液滴吐出装置は、前述した第1実施形態のインクジェット記録装置10と機械的には同様の構成とされており、供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142のダンパー機能を制限する構成が異なっている。このため、第4実施形態においてもインクジェット記録装置10として記載し、前述した第1実施形態のインクジェット記録装置10と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図3に示すように、第4実施形態のインクジェット記録装置10では、マイクロコンピュータ202が、既述の通常モード、逆方向循環モード、マニホールド気泡抜きモードを実行する構成となっている。さらに、マイクロコンピュータ202は、図2に示すインクジェット記録装置10において、既述の気泡低減モードで供給側エアコネクトバルブ97及び回収側エアコネクトバルブ154を動作させ、供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142のダンパー機能を制限する構成となっている。すなわち、第4実施形態における気泡低減モードとは、供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142のダンパー機能を制限するダンパー機能制限モードである。なお、供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142は同様の構成であるため、ここでは回収側サブタンク142について説明し、供給側サブタンク94についての説明を省略する。
(作用)
次に、第4実施形態の作用について説明する。
図2に示すインクジェット記録装置10において、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149は、既述のようにチューブポンプで構成されている。チューブポンプは、チューブをローラでしごくことでインクLを搬送するが、構造上、図13(B)に示すように、圧力の変動が発生する。
ここで、図2に示すインクジェット記録装置10では、循環路100に供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142を設けることで、これらのダンパー機能により、図13(C)に示すように、圧力変動の抑制を行っている。なお、図13(B)は、供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149の出口直後における圧力の変動を示しており、図13(C)は、供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64における圧力の変動を示している。
図13(A)には、回収側サブタンク142及びその周辺部が模式図で示されている。通常モードでは、膜部材144が回収側サブタンク142内の中央に位置しており、負圧の維持と、ダンパー機能による圧力変動の抑制を行っている。なお、通常モードにおいて、回収側エアコネクトバルブ154は開放されており、回収側エアバルブ158は閉止されている。
(ダンパー機能制限モード)
図3及び図14(A)に示すように、気泡低減モード(逆方向循環)を実施する前に、一旦、ヘッドモジュール制御部204が供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止し、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149を動作させて、循環路100(図2参照)内を加圧する。この加圧により、膜部材144が空気室146B側に撓み、最終的に回収側サブタンク142内の上部の壁面にはりつく。
この状態で、図3及び図14(B)に示すように、圧力制御部206が、回収側エアコネクトバルブ154を閉止する。これにより、膜部材144が可動できなくなり、回収側エアタンク156への経路も遮断されるので、回収側サブタンク142のダンパー機能がほとんど機能しなくなる(低下する)。
続いて、回収側サブタンク142のダンパー機能を制限した状態で、ポンプ制御部212が供給側ポンプ118及び回収側ポンプ149を動作させて、インクLを逆方向に循環させる。
ここで、第4実施形態のインクジェット記録装置10では、回収側サブタンク142のダンパー機能が制限されているため、気泡低減モード中は、回収側ポンプ149の脈動による圧力変動が、通常循環時と比較して減衰されずに循環路100中に伝搬する。そして、この圧力変動により、循環路100内で滞留していた気泡が移動するので、循環路100内の気泡が移動し易くなる。
通常モードに戻す場合は、一旦、供給側バルブ68及び回収側バルブ72を閉止し、回収側エアコネクトバルブ154を開放し、インク用サブタンク室146Aの圧力を制御してから、供給側バルブ68及び回収側バルブ72を開放すればよい。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
第1、第2、第3、第4実施形態の2つ以上をまとめて、気泡低減モード後にインク滴LAを吐出させあるいは吸引したり、気泡低減モード時に複数のヘッドモジュール50の一部にインクLを循環させたり、供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142のダンパー機能を制限してもよい。
また、第1実施形態における気泡低減モードは、既述のようにインクLを通常モードとは逆方向に循環させる逆方向循環モードと、既述のように逆方向循環モード後に供給側マニホールド58及び回収側マニホールド64にインクLを流すマニホールド気泡抜きモードとを含んでいたが、マニホールド気泡抜きモードを省略してもよい。また、マニホールド気泡抜きモードを省略したうえで、第1実施形態に第2〜第4実施形態を組み合わせてもよい。
複数のヘッドモジュール50の一部にインクLを循環させる場合、一例として、ヘッドモジュール50が30個あるときに、1ブロックを5個として6ブロックに分け、1ブロック毎にインクLの循環を行ってもよい。1ブロックのヘッドモジュールの数については、1個でも複数個でもよい。
供給側サブタンク94及び回収側サブタンク142が両方ともダンパー部を備えている必要は無く、少なくとも一方にダンパー部が設けられていればよい。