特許文献1及び2には、ランキンサイクル装置の始動運転において、発電機を確実に始動させるために、発電機を電動機として動作させる構成が記載されている。しかし、この構成を採用すると、膨張機が液体成分を含む作動流体を吸い込む。液体の作動流体は、膨張機から潤滑オイルを吐出させ、膨張機における潤滑オイルの不足を招く。潤滑オイルの不足は、膨張機の摩耗を早めたり、膨張機における損失を大きくしたりする。また、潤滑オイルを使用しない膨張機(例えばターボ型膨張機)がランキンサイクル装置に使用されている場合、液体の作動流体は、膨張機の腐食(物理的な腐食)を招く。
本発明者らは、従来よりも液体の作動流体が膨張機に吸い込まれることを低減することにより、ランキンサイクル装置の信頼性を向上させることを検討した。
本開示の第1態様は、膨張機と、前記膨張機に連結された発電機と、作動流体を送出するポンプと、作動流体を蒸発させる蒸発器とを備えるランキンサイクル装置の前記発電機を制御するコンバータと、前記ランキンサイクル装置の始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、前記ポンプが動作中で、前記蒸発器出口の作動流体に液体成分が含まれているとき、前記膨張機が作動流体を膨張させることを禁止するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する第1の制御を実行する制御器とを備える、発電制御装置を提供する。
第1態様の発電制御装置によれば、始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、従来よりも液体の作動流体が膨張機に吸い込まれることを低減できる。
ここで、「前記ポンプが動作中で、前記蒸発器出口の作動流体に液体成分が含まれているとき」とは、前記ポンプの動作中に前記蒸発器出口の作動流体に液体成分が含まれている期間の少なくとも一部であればよい。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、前記制御器は、前記コンバータを用いて前記発電機に直流電流を流してロータを拘束して、前記膨張機が作動流体を膨張することを禁止する、発電制御装置を提供する。
本開示の第3態様は、第1態様に加え、前記膨張機は、圧縮機としても機能し、前記制御器は、前記膨張機によって前記作動流体が圧縮されるように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御して、前記膨張機が作動流体を膨張することを禁止する発電制御装置を提供する。
第2または第3態様の発電制御装置によれば、従来よりも液体の作動流体が膨張機に吸い込まれることを簡便に低減できる。
本開示の第4態様は、第1−第3態様のいずれか一つに加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転時に、前記第1の制御に続き、前記コンバータを用いて前記発電機の端子間電圧をゼロにする、又は前記発電機を流れる電流をゼロにすることによって前記膨張機が前記作動流体を膨張させることを許可する第2の制御を実行する、発電制御装置を提供する。
第4態様の発電制御装置によれば、発電機の端子間電圧をゼロにすることで、発電機に発生する制動トルクを低減できる。又、発電機を流れる電流をゼロにすることによって発電機に発生する制動トルクを0にできる。従って、スムーズに発電機の回転数を増加させることができる。
本開示の第5態様は、第4態様に加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転時に、前記第2の制御に続き、前記発電機の回転数を調整するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する第3の制御を実行する発電制御装置を提供する。
ここで、「発電機の回転数の調整」は、発電機の回転数自体の調整であってもよいし、発電機の回転数と相関するパラメータの調整であってもよい。発電機の回転数と相関するパラメータは、発電機が発電する電力、発電機に発生する制動力等が例示される。
第5態様によれば、第1の制御に続き第3の制御を実行する場合に比べ、第2の制御で発電機の回転数が増加されているので、発電機のロータの位置が把握しやすい状態で、コンバータを用いて発電機の回転数が増加するよう制御することが可能になる。
なお、前記第2の制御において、発電機の端子間電圧の値と、発電機を流れる電流の値とに基づいて、膨張機の回転数を推定し、第2の制御から第3の制御へと移行するタイミングを、膨張機の推定された回転数又は発電機の推定された回転数に基づいて決定してもよい。
これにより、適切なタイミングで発電機の回転数の調整を開始できる。
ここで、「膨張機の回転数」は、膨張機の回転数自体であってもよいし、膨張機の回転数に相関するパラメータであってもよい。膨張機の回転数に相関するパラメータは、発電機の回転数、第2の期間を開始してからの経過時間等が例示される。
本開示の第6態様は、第3態様に加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転時に、(i)前記第1の制御に続き、前記発電機の回転数を調整するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する第3の制御を実行し、前記コンバータは、(ii)前記第1の制御を実行しているときに、前記コンバータを用いて前記発電機に高周波成分を含む電流を流すことにより、前記発電機のロータの位置を推定し、(iii)前記第1の制御から前記第3の制御への移行時において、推定された前記ロータの位置を用いて前記発電機の回転数の調整を開始する発電制御装置を提供する。
ここで、上記(i)、(iii)における「発電機の回転数の調整」は、発電機の回転数自体の調整であってもよいし、発電機の回転数と相関するパラメータの調整であってもよい。発電機の回転数と相関するパラメータは、発電機が発電する電力、発電機に発生する制動力等が例示される。
本開示の第7態様は、第2態様に加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転時に(i)前記第1の制御に続き、前記発電機の回転数を調整するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する第3の制御を実行し、前記コンバータは、(ii)前記第1の制御を実行しているときに、前記発電機に直流成分に高周波成分を重畳させた(superimposed)電流を流すことにより、前記発電機のロータを拘束するとともに前記発電機のロータの位置を推定し、(iii)前記第1の制御から前記第3の制御への移行時において、推定された前記ロータの位置を用いて前記発電機の回転数の調整を開始する発電制御装置を提供する。
第6態様及び第7態様の発電制御装置によれば、発電機の回転数、発電機が発電する電力又は発電機に発生する制動力の調整を、スムーズに開始できる。
ここで、上記(i)、(iii)における「発電機の回転数の調整」は、発電機の回転数自体の調整であってもよいし、発電機の回転数と相関するパラメータの調整であってもよい。発電機の回転数と相関するパラメータは、発電機が発電する電力、発電機に発生する制動力等が例示される。
本開示の第8態様は、第1−第7態様のいずれか一つに加え、前記制御器は、前記蒸発器を通過した作動流体の温度が閾値以下であるときに、前記第1の制御を実行する、発電制御装置を提供する。
第8態様の発電制御装置によれば、始動運転において従来よりも液体の作動流体が膨張機に吸い込まれることを低減できる。
ここで、上記「作動流体の温度」は、作動流体の温度自体であってもよいし、作動流体の温度と相関するパラメータであってもよい。作動流体の温度と相関するパラメータとしては、作動流体の圧力、第1の制御が開始されてからの経過時間等が例示される。また、作動流体の温度、及び作動流体の温度と相関するパラメータは、測定であってもよいし、推定値であってもよい。
ここで、閾値は、蒸発器を通過した作動流体に液体成分が含まれない作動流体の温度よりも小さい値に設定される。
本開示の第9態様は、第1態様に加え、前記ランキンサイクル装置は、前記膨張機をバイパスしているバイパス路と、前記バイパス路を開閉する開閉装置と、を備え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、前記第1の制御を実行しているときに、前記開閉装置を開放するよう制御する、発電制御装置を提供する。
第9態様の発電制御装置によれば、始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、従来よりも液体の作動流体が膨張機に吸い込まれることを低減できる。
本開示の第10態様は、第1態様に加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の停止運転時に、前記ポンプの停止以降に前記第1の制御を終了する、発電制御装置を提供する。第10態様の発電制御装置によれば、停止運転において、従来よりも液体の作動流体が膨張機に吸い込まれることを低減できる。
本開示の第11態様は、第9態様に加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転において、前記第1の制御に続き、前記コンバータを用いて前記発電機の端子間電圧をゼロにする、又は前記発電機を流れる電流をゼロにすることによって前記膨張機が前記作動流体を膨張させることを許可する第2の制御を実行し、前記第2の制御の終了時点における前記開閉装置の開度が、前記第2の制御の開始時点における前記開閉装置の開度よりも小さくなるよう前記開閉装置を制御する、発電制御装置を提供する。
本開示の第12態様は、第9態様に加え、前記制御器は、前記第1の制御に続き、前記発電機の回転数を調整するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する第3の制御を実行し、始動運転の終了時点における前記開閉装置の開度が、前記第3の制御の開始時点における前記開閉装置の開度よりも小さくなるよう前記開閉装置を制御する発電制御装置を提供する。
本開示の第13態様は、第11態様に加え、前記制御器は、前記ランキンサイクル装置の始動運転において、前記第2の制御に続き、前記発電機の回転数を調整するように、前記コンバータを用いて前記発電機を制御する第3の制御を実行し、始動運転の終了時点における前記開閉装置の開度が、前記第3の制御の開始時点における前記開閉装置の開度よりも小さくなるよう前記開閉装置を制御する、発電制御装置を提供する。
第11態様、第12態様又は第13態様の発電制御装置によれば、膨張機を流れる作動流体の流量が適切なタイミングで増加する。
ここで、上記「発電機の回転数の調整」は、発電機の回転数自体の調整であってもよいし、発電機の回転数と相関するパラメータの調整であってもよい。発電機の回転数と相関するパラメータは、発電機が発電する電力、発電機に発生する制動力等が例示される。
本開示の第14態様は、第1態様に加え、前記発電制御装置は、電力系統に接続される系統連系用電力変換器を備え、前記膨張機が前記作動流体を膨張させることを禁止するために前記コンバータに供給されるべき電力が、前記電力系統から前記系統連系用電力変換器を介して前記コンバータに供給される、発電制御装置を提供する。
第14態様の発電制御装置は、種々の用途に用いることができる。
本開示の第15態様は、第1−第14態様のいずれか一つに記載の発電制御装置と、前記発電制御装置により制御される前記ランキンサイクル装置とを備える、発電装置を提供する。
本開示の第16態様は、コンバータが、膨張機と、前記膨張機に連結された発電機と、作動流体を送出するポンプと、作動流体を蒸発させる蒸発器とを備えるランキンサイクル装置の前記発電機が発電する電力を制御する工程と、前記ランキンサイクル装置の始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、前記ポンプが動作中で、前記蒸発器出口の作動流体に液体成分が含まれているとき、前記コンバータが、前記膨張機が前記作動流体を膨張させることを禁止するように前記発電機を制御する工程を備える、ランキンサイクル装置の制御方法を提供する。
第16態様の制御方法によれば、第1態様の発電制御装置により得られる効果と同様の効果が得られる。
上述の発電制御装置に関する技術は、発電装置に適用することができる。上述の発電制御装置に関する技術は、ランキンサイクル装置の制御方法にも適用することができる。
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、発電装置100は、ランキンサイクル装置101と、発電制御装置102とを備えている。発電装置100は、外部の電力系統103に接続され得る。電力系統103は、ランキンサイクル装置101に電力を供給することができる。電力系統103には、ランキンサイクル装置101から電力が供給されることもある。電力系統103は、例えば、商用の交流電源である。
ランキンサイクル装置101は、流体回路150と、発電機108と、電動機111とを有している。流体回路150は、作動流体が流れる回路である。流体回路150は、ランキンサイクルを構成している。
流体回路150は、ポンプ107、蒸発器104、膨張機105及び凝縮器106を有している。これらは複数の配管によってこの順で環状に接続されている。流体回路150における蒸発器104の出口と膨張機105の入口との間の部分には、温度センサ110が設けられている。流体回路150は、さらに、膨張機105をバイパスしているバイパス路170を有している。バイパス路170の上流端は流体回路150における蒸発器104の出口と膨張機105の入口との間の部分に接続されている。バイパス路170の下流端は、流体回路150における膨張機105の出口と凝縮器106の入口との間の部分に接続されている。バイパス路170は、バイパス弁(開閉装置)109を有している。
温度センサ110で測定された蒸発器104を通過した作動流体の温度に基づき蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれているか否かが判断される。本実施の形態では、温度センサ110は、蒸発器104の出口から膨張機105の入口に至るまでの流体回路150に設けられているが、蒸発器104を通過した作動流体の温度を測定可能であるならいずれの箇所に設けられてもよい。ここで、蒸発器104を通過した作動流体の温度とは、蒸発器104の出口から凝縮器106の入口に至るまでの流体回路150を流れる作動流体の温度を意味する。従って、バイパス路170に設けられた温度センサでバイパス路170を流れる作動流体の温度を測定してもよい。また、バイパス路170の下流端から凝縮器106に至るまでの流体回路150に設けられた温度センサ110で、この流体回路150を流れる作動流体の温度を測定してもよい。バイパス路170を作動流体が流れているときに、これらの位置に設けられた温度センサ110の検知温度に基づき蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれているか否かが判断できる。また、膨張機105の出口から凝縮器106の入口に至るまでの流体回路150に設けられた温度センサ110でこの流体回路150を流れる作動流体の温度を測定してもよい。この位置に設けられた温度センサ110の検知温度と推定される膨張機105での作動流体の温度低下量に基づき蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれているか否かが判断できる。
発電機108は、膨張機105に連結されている。電動機111は、ポンプ107に連結されている。発電機108は、膨張機105によって駆動される。電動機111は、ポンプ107を駆動する。
ポンプ107は、電動式のポンプである。ポンプ107は、液体の作動流体を循環させることができる。具体的に、ポンプ107として、一般的な容積型又はターボ型のポンプを使用できる。容積型のポンプとして、ピストンポンプ、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ロータリポンプなどが挙げられる。ターボ型のポンプとして、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプなどが挙げられる。ポンプ107は、膨張機105とは連結されていないため、膨張機105から独立して動作できる。
蒸発器104は、ボイラー(図示省略)で生成された燃焼ガスの熱エネルギーを吸収する熱交換器である。蒸発器104は、例えばフィンチューブ熱交換器であり、ボイラーの内部に配置されている。ボイラーで生成された燃焼ガスとランキンサイクル装置101の作動流体とが蒸発器104において熱交換する。これにより、作動流体が加熱され、蒸発する。なお、本実施形態では、熱源はボイラーであるが、他の熱源を採用することもできる。例えば、工場、焼却炉などの施設から排出された廃熱エネルギーを利用した熱源を採用することもできる。
膨張機105は、作動流体を膨張させることによって作動流体の膨張エネルギーを回転動力に変換する。膨張機105の回転軸には、発電機108が接続されている。膨張機105によって発電機108が駆動される。膨張機105は、例えば、容積型又はターボ型の膨張機である。容積型の膨張機として、スクロール膨張機、ロータリ膨張機、スクリュー膨張機、往復膨張機などが挙げられる。ターボ型の膨張機は、いわゆる膨張タービンである。
凝縮器106は、膨張機105から吐出された作動流体を熱媒体回路(図示省略)の中の冷却水、冷却空気などの熱媒体等と熱交換させることによって、作動流体を冷却する。凝縮器106として、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器などの公知の熱交換器を使用できる。凝縮器106の種類は、熱媒体回路の中の熱媒体の種類に応じて適切に選択される。熱媒体回路の中の熱媒体が水などの液体のとき、プレート式熱交換器又は二重管式熱交換器を凝縮器106に使用できる。熱媒体回路の中の熱媒体が空気などの気体のとき、フィンチューブ熱交換器を凝縮器106に使用できる。
バイパス弁109は、開度を変更可能な弁である。バイパス弁109の開度を変更することによって、膨張機105をバイパスする作動媒体の流量を調節できる。ただし、バイパス弁109として電磁式の開閉弁を用いてもよい。
発電機108は、例えば、永久磁石同期発電機である。電動機111は、例えば、永久磁石同期電動機である。
ランキンサイクル装置101の作動流体として、例えば、有機作動流体を使用できる。有機作動流体として、ハロゲン化炭化水素、炭化水素、アルコールなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素として、R−123、R−245fa、R−1234zeなどが挙げられる。炭化水素として、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタンなどのアルカンが挙げられる。アルコールとして、エタノールなどが挙げられる。これらの有機作動流体は、単独で使用してもよいし、2種類以上の混合物を使用してもよい。作動流体として、水、二酸化炭素、アンモニアなどの無機作動流体を使用することもできる。
ランキンサイクル装置101の動作の概要は以下の通りである。ポンプ107は、作動流体を圧送し、循環させる。蒸発器104は、ボイラー等の熱源(図示省略)からの熱を用いて作動流体を加熱する。これにより、作動流体が過熱蒸気(気体)の状態となる。膨張機105には、過熱蒸気の作動流体が流入する。流入した作動流体は、膨張機105内で断熱膨張する。これにより、膨張機105に駆動力が生じ、膨張機105が動作する。つまり、膨張機105によって、膨張エネルギー(熱エネルギー)が機械エネルギーへと変換される。膨張機105の動作に伴い、発電機108が動作し、発電する。つまり、発電機108によって、機械エネルギーが電気エネルギーへと変換される。要するに、膨張機105及び発電機108によって、熱エネルギーが電気エネルギーへと変換される。凝縮器106は、冷却水、冷却空気等を用いて、膨張機105から吐出された作動流体を冷却する。これにより、作動流体が凝縮して液体の状態となる。液体の作動流体は、ポンプ107に吸い込まれる。温度センサ110は、蒸発器104を通過した作動流体の温度を検出する。この温度を表す検出信号等に基づいて、バイパス弁制御回路(図示省略)は、バイパス弁109の開度を制御する。これにより、バイパス路170を流れる作動流体の流量が調整される。
発電制御装置102は、ランキンサイクル装置101を制御する。発電制御装置102は、コンバータ120と、ポンプ用駆動回路(駆動回路)121と、系統連系用電力変換器122と、制御器128とを備えている。コンバータ120は、3相配線123を介して発電機108に接続されている。ポンプ用駆動回路121は、3相配線129を介して電動機111に接続されている。系統連系用電力変換器122は、電力系統103に接続され得る。コンバータ120と系統連系用電力変換器122とは、直流配線124によって接続されている。
制御器128は、ランキンサイクル装置101の始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、ポンプ107が動作中で、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれているとき、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止するように、コンバータ120を用いて発電機108を制御する第1の制御を実行する。制御器128は、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備える。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部としては、メモリーが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
系統連系用電力変換器122は、電力系統103から得た交流電力を直流電力へと変換する。得られた直流電力は、ポンプ用駆動回路121に供給される。得られた直流電力は、コンバータ120にも供給される。発電機108が発電しているときには、コンバータ120は、発電機108で発電された交流電力を直流電力へと変換する。得られた直流電力は、ポンプ用駆動回路121に供給される。得られた直流電力がポンプ用駆動回路121に供給するべき直流電力よりも大きい場合には、得られた直流電力の一部(余剰電力)は系統連系用電力変換器122によって交流電力へと変換される。この交流電力は、電力系統103へと供給(逆潮流)される。発電制御装置102のこのような構成により、コンバータ120は、発電機108を介して膨張機105に制動トルク又は駆動トルクを与えることができる。また、ポンプ用駆動回路121は、別途の電源回路を要さずとも、電動機111を介してポンプ107を駆動することができる。
図2に示すように、コンバータ120は、発電機108を制御する。コンバータ120は、コンバータ回路部125と、コンバータ制御部130と、電流センサ126とを備えている。なお、以降で説明する本実施形態、変形例等でのコンバータ制御部130の制御機能の一部又は全部を制御器128に組み込んでもよい。
コンバータ回路部125は、直流配線124により、系統連系用電力変換器122に結線されている。直流配線124は、プラス側配線124p及びマイナス側配線124nを有している。コンバータ回路部125は、3相配線123により、発電機108に結線されている。3相配線123は、U相配線123u、V相配線123v及びW相配線123wを有している。U相配線123uにはU相電流iuが流れる。V相配線123vにはV相電流ivが流れる。W相配線123wにはW相電流iwが流れる。コンバータ回路部125は、コンバータ制御部130から出力された制御信号127に基づいて駆動する。これにより、コンバータ回路部125において、3相交流電力が直流電力へと変換される。また、コンバータ回路部125において、直流電力が3相交流電力へと変換される。本実施形態では、制御信号127は、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)信号である。また、コンバータ回路部125は、パルス幅変調を行うためのスイッチング素子を有している。
コンバータ制御部130は、発電機108の目標回転数ω*、U相電流iu及びV相電流ivに基づいて、制御信号127を出力する。U相電流iu及びV相電流ivは、電流センサ126により検出される。
図3に示すように、コンバータ制御部130は、電流指令生成部131と、電圧指令生成部132と、座標変換部133と、PWM信号生成部134と、位置・回転数推定部135と、座標変換部136とを備えている。
コンバータ制御部130の構成要素の動作は、γδ座標系を用いて説明される。γδ座標系について、dq座標系を参照しつつ、図4を用いて説明する。
dq座標系は、回転座標系である。d軸及びq軸は、永久磁石108aが作る磁束の回転数と同じ回転数で回転する。図面の見易さを考慮して、図4ではq軸を省略している。反時計回り方向が、位相の進み方向である。永久磁石108aは、発電機108のロータにおける永久磁石を表す。d軸は、永久磁石108aが作る磁束の方向に延びる軸として設定されている。q軸は、d軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。U軸は、U相巻線に対応する。V軸は、V相巻線に対応する。W軸は、W相巻線に対応する。U軸、V軸及びW軸は、ロータが回転しても、回転しない。つまり、U軸、V軸及びW軸は、固定軸である。実ロータ位置θは、U軸からみたd軸の進み角である。回転数ωは、ロータの回転数を表す。本明細書では、特に断りが無い限り、角度は電気角を意味する。
γδ座標系は、回転座標系である。γ軸は、d軸に対応する推定軸(制御軸)として設定されている。δ軸は、γ軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。図面の見易さを考慮して、図4ではδ軸を省略している。推定位置θeは、U軸からみたγ軸の進み角である。推定回転数ωeは、γ軸(推定軸、制御軸)の回転数である。
軸誤差Δθは、γ軸から見たd軸の進み角である。軸誤差Δθは、Δθ=θ−θeで与えられる。
図3に戻って、コンバータ制御部130の各要素について説明する。以下では、説明の便宜上、コンバータ制御部130にU相電流iu及びV相電流ivが入力されてから、コンバータ制御部130から制御信号127が出力されるまでが、同一の制御周期内に行われることとする。
座標変換部136は、U相電流iu、V相電流iv及び推定位置θeに基づいて、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを算出し、出力する。U相電流iu及びV相電流ivは、電流センサ126によって検出された電流の値である。座標変換部136が用いる推定位置θeは、過去の制御周期(典型的には1制御周期前)において位置・回転数推定部135によって算出された位置である。
位置・回転数推定部135は、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *に基づいて、推定位置θe及び推定回転数ωeを算出し、出力する。位置・回転数推定部135が用いるγ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *は、過去の制御周期(典型的には1制御周期前)において電圧指令生成部132によって算出された電圧値である。
電流指令生成部131は、目標回転数ω*と推定回転数ωeとに基づいて、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を算出し、出力する。目標回転数ω*は、上位制御装置(図示省略)で生成されうる。
電圧指令生成部132は、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *に基づいて、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *を算出し、出力する。
座標変換部133は、推定位置θe、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *に基づいて、3相目標電圧vu *、vv *、vw *を算出し、出力する。3相目標電圧vu *、vv *、vw *は、U相目標電圧vu *、V相目標電圧vv *及びW相目標電圧vw *をまとめて記載したものである。
PWM信号生成部134は、3相目標電圧vu *、vv *、vw *に基づいて、制御信号127を生成し、出力する。制御信号127は、コンバータ回路部125に入力される。
[始動運転]
始動運転では、膨張機の作動を開始し、膨張機の回転数を増加させる。このとき、膨張機の出入口の状態量の差に基づき膨張機の回転数を制御せずに、膨張機を作動させる。状態量は、圧力、温度等が例示される。
始動運転は、ランキンサイクル装置101の運転を開始すべき旨の指令(信号)が外部から発電制御装置102の制御器128に入力されたときに開始される。図5及び6を用いて、ランキンサイクル装置101の始動運転の制御シーケンスを説明する。
ステップS100は、系統連系を開始するステップである。ステップS100では、まず、系統連系用電力変換器122の運転を開始する。これにより、電力系統103から系統連系用電力変換器122へと交流電力が供給される。この交流電力は、系統連系用電力変換器122によって、直流電力へと変換される。これにより、プラス側配線124pとマイナス側配線124nとの間に直流電圧がかかる。系統連系用電力変換器122は、この直流電圧の大きさが所定の大きさとなるように、電力系統103から系統連系用電力変換器122へと供給される電力の大きさを調整する。
ステップS110では、バイパス弁109を開く。ステップS110において、バイパス弁109の開度をゼロから全開にする。また、バイパス弁109を一気に開く。ただし、バイパス弁109の開度が全開にならない程度に、バイパス弁109の開度を大きくしてもよい。また、バイパス弁109を徐々に開いてもよい。要するに、ステップS110は、バイパス弁109の開度を大きくするステップである。
ステップS120では、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108を制御することにより、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止する第1の制御を実行する。本実施形態では、例えば、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108に直流電流を流すことにより、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止する。膨張機105の回転軸に発電機108が接続されているので、発電機108に電流を流すと、膨張機105に制動力が働く。膨張機105の入口と出口との間に圧力差が生じても膨張機105は動かない。
ステップS130は、ポンプ107の運転を開始するステップである。ポンプ107は流体回路150内で作動流体を循環させる。また、ポンプ107の動作を開始したときは、作動流体の温度が低く作動流体に液体成分が含まれている可能性が高い。しかし、作動流体が膨張機105に流れ込むことはない。ポンプ107の運転開始前から、膨張機105が作動流体を膨張させることが禁止されているためである。従って、全ての作動流体が、ポンプ107、蒸発器104、バイパス弁109(バイパス路170)及び凝縮器106を、この順に流れる。
なお、本例では、ステップS120のあとステップS130を実行しているが、ステップS120は、ステップS130と同時であってもよい。つまり、始動運転において、ポンプ107の動作開始以前に膨張機105による作動流体が膨張されることを禁止すれば、液体成分を含む作動流体が膨張機105に流れ込む可能性が低くなる。
また、ステップS120の前にステップS130を実行してもよい。つまり、ポンプ107が動作中で、作動流体に液体成分が含まれるときに膨張機105による作動流体の膨張が禁止される期間があれば、従来よりも膨張機105への作動流体の液体成分の流入が低減されるので、ステップS120とステップS130が入れ替わっても構わない。
ステップS140は、蒸発器104が配置されたボイラーのバーナーを点火するステップである。本実施形態では、ポンプ107の回転数が閾値回転数に達した時点で、バーナーを点火する。点火後には、作動流体は、蒸発器104で加熱される。
ステップS150は、蒸発器104を通過した作動流体の温度が閾値よりも大きいか否かを判断するステップである。ステップS150において、作動流体の温度が閾値を上回ったと判断されると、ステップS160に進む。本実施形態では、蒸発器104を通過した作動流体の温度として、温度センサ110による測定値が使用される。ただし、蒸発器104を通過した作動流体の圧力を圧力センサにより検出し、検出された圧力から蒸発器104を通過した作動流体の温度を推定してもよい。このステップの閾値は、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれない作動流体の温度が設定される。
ステップS160では、膨張機105が作動流体を膨張させることを許可する第2の制御を実行する。本実施形態では、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108の端子間電圧をゼロにすることにより膨張機105が作動流体を膨張させることを許可する。ステップS160によって、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止する状態が解除される。作動流体の膨張禁止が解除されると、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差に基づいて、膨張機105が動作する。つまり、作動流体が、バイパス路170のみならず、膨張機105にも流れる。コンバータ120(コンバータ制御部130)は、発電機108のロータの位置及び回転数を推定する。つまり、発電機108の推定位置θe及び推定回転数ωeを算出する。
ステップS170は、コンバータ120(コンバータ制御部130)が、推定回転数ωeが回転数(切替回転数)BCよりも大きいか否かを判断するステップである。ステップS170において、推定回転数ωeが回転数BCよりも大きいと判断されると、ステップS180に進む。
ステップS180では、制御器128は、コンバータ120を用いた発電機108の回転数の調整により、膨張機105(発電機108)の回転数を制御する第3の制御を実行する。第3の制御では、発電機108の回転数を更に増加させる。本実施形態では、コンバータ120(コンバータ制御部130)は、発電機108の推定回転数ωeが、制御器128から指令された目標回転数になるよう、発電機108の回転数を制御する。
ステップS190は、推定回転数ωeが回転数(切替回転数)CNよりも大きいか否かを判断するステップである。ステップS190において、推定回転数ωeが回転数CNよりも大きいと判断されると、ステップS200に進む。
ステップS200では、バイパス弁109を閉じる。バイパス弁109を閉じると、膨張機105を流れる作動流体の流量が増える。ステップS200では、バイパス弁109の開度を全開からゼロにする。また、バイパス弁109を、一気に閉じる。ただし、バイパス弁109の開度がゼロにならない程度に、バイパス弁109の開度を小さくしてもよい。また、バイパス弁109を、徐々に閉じてもよい。要するに、ステップS200は、バイパス弁109の開度を小さくするステップである。
その後、通常運転へと移行する(ステップS210)ことにより、始動運転は終了する。通常運転では、公知の制御を行うことができる膨張機105の出入口の状態量の差に基づき膨張機の105の回転数が制御される。状態量としては、圧力、温度等が例示される。例えば、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差が所定の大きさとなるように、発電機108の回転数を制御すればよい。これらの圧力は、圧力センサにより検出すればよい。また例えば、蒸発器104の出口における作動流体の圧力(高圧側圧力)の推定値に基づいて、発電機108の回転数を制御すればよい。高圧側圧力の推定値は、発電機108を流れる電流と、蒸発器104の出口における作動流体の温度とから得ることができる(特開2008−106946号公報参照)。高圧側圧力の推定値を用いた制御によれば、圧力センサを省略できる。なお、図6では、バイパス弁109を閉じてから所定時間経過後に始動運転(期間C1)が終了しているが、実際の制御では、バイパス弁109を閉じた時点を始動運転の終了時点としてもよい。
図5及び6における期間A1は、第1の制御が実行される第1の期間の例示である。第1の期間は、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれる期間の少なくとも一部を含んでいればよい。期間A1において、膨張機105は作動流体を膨張させることが禁止される。期間A1は、ステップS120〜ステップS150に対応する。期間B1は、第2の制御が実行される第2の期間の例示である。第2の期間では、コンバータ120は、発電機の回転数の制御を行わず、膨張機の回転数を増加させる。期間B1において、膨張機105は作動流体を膨張させることが許可される。期間B1は、ステップS160及びステップS170に対応する。期間C1は、第3の制御が実行される上記第3の期間の例示である。第3の期間では、制御器128は、コンバータ120を用いた発電機の回転数の制御を行い、膨張機の回転数を増加させる。期間C1において、コンバータ120を用いた発電機108の制御により、発電機108(膨張機105)の回転数が調整される。期間C1は、ステップS180〜ステップS200に対応する。
期間A1において、作動流体の膨張が禁止された状態が継続される。制御器128は、ランキンサイクル装置101の始動運転に含まれた期間A1において膨張機105による作動流体の膨張が禁止されるように、コンバータ120を用いて発電機108を制御する。本実施形態の始動運転では、ポンプ107が起動する前の時点で第1の制御が開始される。これにより、始動運転において液体の作動流体が膨張機105に吸い込まれることを従来よりも低減できる。なお、ポンプ107が起動すると同時に第1の制御が開始されてもよい。つまり、第1の制御が開始される以前にポンプ107の動作が開始していれば構わない。
蒸発器104を通過した作動流体の温度が閾値を超えると、第1の制御から第2の制御へと移行する(ステップS150)。例えば、期間A1を、蒸発器104の出口と膨張機105の入口との間の部分における作動流体の温度の測定値(推定値であってもよい)が閾値以下である期間としてもよい。ここで、上記閾値は、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれない作動流体の温度に設定されるが、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれる作動流体の温度であってもよい。つまり、閾値は、期間A1に、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれる期間の少なくとも一部が含まれるなら、任意の値が設定されてよい。
期間B1において、膨張機105による作動流体の膨張が許可される。期間B1では、発電機108(膨張機105)の回転数を目標回転数ω*に追従させる制御は行われない。しかし、本実施形態の制御器128は、期間B1において、コンバータ120を用いて発電機108の端子間電圧をゼロにすることによって、膨張機105が作動流体を膨張させることを許可する。これにより、期間B1では、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差により発電機108の回転数がゼロから徐々に増加する。
期間C1において、発電機108の回転数が調整される。制御器128は、期間C1において、発電機108の回転数を調整するように、コンバータ120を用いて発電機108を制御する。
期間A1においては、発電機108は発電しない。本実施形態の制御器128は、期間B1においても、発電機108からポンプ用駆動回路121へと電力を供給しない。第1の制御及び第2の制御においては、電力系統103から系統連系用電力変換器122に交流電力が供給される。系統連系用電力変換器122は、供給された交流電力を、直流電力へと変換する。これにより、プラス側配線124pとマイナス側配線124nとの間に直流電圧が生じる。この直流電圧が、コンバータ120に印加される。つまり、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止するためにコンバータ120に供給されるべき電力が、電力系統103から系統連系用電力変換器122を介してコンバータ120に供給される。また、直流配線124における直流電圧は、ポンプ用駆動回路121にも印加される。つまり、ポンプ107を駆動するためにポンプ用駆動回路121に供給されるべき電力も、電力系統103から系統連系用電力変換器122を介して供給される。
期間C1及び通常運転においては、発電機108は発電する。コンバータ120は、発電された交流電力を、直流電力へと変換する。これにより、プラス側配線124pとマイナス側配線124nとの間に直流電圧が生じる。この直流電圧が、ポンプ用駆動回路121に印加される。つまり、発電機108で発電された電力は、コンバータ120を介してポンプ用駆動回路121に供給される。コンバータ120から出力される電力がポンプ用駆動回路121に供給されるべき電力よりも小さい場合には、電力の不足分は、電力系統103から系統連系用電力変換器122を介してポンプ用駆動回路121に供給される。コンバータ120から出力された電力がポンプ用駆動回路121に供給されるべき電力よりも大きい場合には、電力の余剰分は、系統連系用電力変換器122を介して電力系統103に供給される。つまり、発電機108で発電された電力が、コンバータ120及び系統連系用電力変換器122を介して電力系統103にも供給される。
本実施形態では、発電装置100は、第3の制御を終了してからバイパス弁109の開度を小さくしているが、これに限定されるものではない。発電装置100は、第3の制御を開始してから始動運転を終了するまでの間において、バイパス弁109の開度を小さくするよう制御されるならいずれの形態であっても構わない。換言すれば、発電装置100は、始動運転の終了時点におけるバイパス弁109の開度が、第3の制御の開始時点におけるバイパス弁109の開度よりも小さくなるよう制御されるならいずれの形態であっても構わない。発電装置100は、例えば、第3の制御を実行しているときに、バイパス弁109の開度を小さくするよう制御しても構わない。ただし、発電装置100は、第3の制御におけるバイパス弁109の開度調整に加え、または代えて、第2の制御を実行しているときに、バイパス弁109の開度調整を行ってもよい。具体的には、第2の制御の終了時点におけるバイパス弁109の開度が第2の制御の開始時点におけるバイパス弁109の開度よりも小さいこととなるように、第2の制御においてバイパス弁109の開度を小さくするよう構成されていてもよい。
(第1の制御、第2の制御及び第3の制御のそれぞれにおける、コンバータ制御部130の動作)
図3に示したコンバータ制御部130は、第1の制御、第2の制御及び第3の制御のそれぞれにおいて、下記の計算式を用いて動作する。
式(1−A)、(1−B)、(1−C)、(2)及び(3)は、軸誤差Δθ、推定回転数ωe及び推定位置θeを算出する際に位置・回転数推定部135が使用する計算式である。式(1−A)は、第1の制御において用いられる計算式である。式(1−B)は、第2の制御において用いられる計算式である。式(1−C)は、第3の制御において用いられる計算式である。式(2)及び(3)は、第1の制御〜第3の制御において用いられる計算式である。sは、ラプラス演算子である。Rは、発電機108の電機子抵抗である。Ldは、d軸インダクタンスである。Lqは、q軸インダクタンスである。Kpll_pは、比例ゲインである。Kpll_iは積分ゲインである。Kpll_p及びKpll_iは、PLL(Phase Locked Loop)制御用に設定されている。θ0は初期推定位置を表す。これらの計算式の意味等については、公知の文献を参照されたい(例えば、モータのロータの位置及び回転数の推定技術を開示する特許4480696号参照)。
式(4−A)、(4−B)、(4−C)、(5−A)、(5−B)及び(5−C)は、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *を算出する際に電圧指令生成部132が使用する計算式である。式(4−A)及び(5−A)は、第1の制御において用いられる計算式である。式(4−B)及び(5−B)は、期間B1において用いられる計算式である。式(4−C)及び(5−C)は、期間C1において用いられる計算式である。Kpiは、比例ゲインである。Kiiは、積分ゲインである。Kpi及びKiiは、電流のPI(比例積分)制御用に設定されている。Iδ0 *は、所定値の目標電流である。電圧指令生成部132は、PI制御器を有している。
式(6)及び(7)は、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を算出する際に電流指令生成部131が使用する計算式である。式(6)及び(7)は、期間C1において用いられる計算式である。Kpsは、比例ゲインである。Kisは、積分ゲインである。Kps及びKisは、発電機108の回転数のPI制御用に設定されている。電流指令生成部131は、PI制御器を有している。
第1の制御において、電圧指令生成部132は、式(4−A)及び(5−A)を用いて動作する。これにより、γ軸電流iγはゼロとなる。また、δ軸電流iδは目標電流Iδ0 *となる。第1の制御では、位置・回転数推定部135が、式(1−A)、(2)及び(3)を用いて動作する。これにより、軸誤差Δθがゼロであると推定される。推定回転数ωeはゼロとなる。また、推定位置θeは、初期推定位置θ0に固定される。第1の制御においては、電流指令生成部131において算出されたγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *は、利用されない。
上述の説明から明らかであるように、第1の制御においては、γδ座標は回転しない。コンバータ制御部130から、発電機108に直流電流を流すための制御信号127が出力される。直流電流は、発電機108のロータを拘束する。つまり、発電機108のロータは回転しない。これにより、膨張機105による作動流体の膨張が禁止される。要するに、本実施形態の制御器128は、第1の制御において、コンバータ120を用いて、発電機108に直流電流を流し、発電機108のロータを拘束する。本実施形態では、この直流電流は、大きさが一定の定電流である。
期間B1では、電圧指令生成部132は、式(4−B)及び(5−B)を用いて動作する。これにより、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *はゼロとなる。U相目標電圧vu *、V相目標電圧vv *及びW相目標電圧vw *もゼロとなる。発電機108の各端子電圧がゼロとなる。端子間電圧もゼロとなる。このため、第2の制御への移行直後には、発電機108に電流が流れない。これにより、発電機108のロータの拘束が解除される。期間B1においても、電流指令生成部131において算出されたγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *は、利用されない。
期間B1の開始時点から、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差により、膨張機105及び発電機108の回転数がゼロから徐々に増加する。発電機108の動作に伴い、発電機108の内部で誘起電圧が発生し、この誘起電圧が徐々に大きくなる。発電機108の内部と端子との間で、端子電圧(ゼロ電圧)と誘起電圧との差に基づく電流が流れ始め、この電流が徐々に大きくなる。つまり、発電機108に制動トルク(制動力)が発生し、制動トルクが徐々に大きくなる。制動トルクは、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差に基づく駆動トルクに徐々に近づく。
期間B1では、位置・回転数推定部135は、式(1−B)、(2)及び(3)を用いて軸誤差Δθ、推定回転数ωe及び推定位置θeを算出する。推定回転数ωeが切替回転数BCに達した時点で、第2の制御から第3の制御へと移行する。以上のように、本実施形態では、コンバータ制御部130は、期間B1において、発電機108の端子間電圧の値と、検出した発電機108を流れる電流の値とに基づいて、発電機108の回転数(膨張機105の回転数)を推定する。また、コンバータ制御部130は、第2の制御から第3の制御へと移行するタイミングを、発電機108の推定回転数ωeに基づいて決定する。本実施形態では、切替回転数BCは、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差により発生する発電機108の駆動トルクと、発電機108の動作に伴い発電機108に流れる電流により発生する発電機108の制動トルクとが釣り合う前に、第2の制御から第3の制御へと移行することとなるように設定されている。なお、コンバータ制御部130は、第2の制御の開始時点から所定時間(例えば、0.1〜10秒、特に、0.5〜2秒程度が望ましい)経過後に第3の制御へと移行するように構成されていてもよい。
式(1−B)、(2)及び(3)から理解されるように、期間B1では、軸誤差Δθがゼロに収束するとともに、推定回転数ωeと(実際の)回転数ωとの誤差がゼロに収束していく。期間B1を設定することにより、発電機108の回転数を調整する期間C1が開始される前に、軸誤差Δθを実質的にゼロにするとともに、回転数ωeと回転数ωとの誤差を実質的にゼロにすることができる。すなわち、期間B1を設定することは、スムーズに回転数制御(期間C1の制御)を開始することを可能とし、期間C1におけるコンバータ120による位置センサレス制御を安定化させる。
期間C1では、電流指令生成部131は、式(6)及び(7)を用いて動作する。これにより、推定回転数ωeが目標回転数ω*に一致するように、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *が算出される。本実施形態の期間C1では、γ軸目標電流iγ *はゼロとされる。期間C1では、電圧指令生成部132が、式(4−C)及び(5−C)を用いて動作する。これにより、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδが、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *に追従する。期間C1では、位置・回転数推定部135は、式(1−C)、(2)及び(3)を用いて軸誤差Δθ、推定回転数ωe及び推定位置θeを算出する。
本実施形態の期間C1では、コンバータ制御部130は、発電機108の回転数(膨張機105の回転数)と発電機108のロータの位置とを推定する。さらに、コンバータ制御部130は、膨張機105の推定された回転数に基づいて(推定回転数ωeが目標回転数ω*に追従するように)、発電機108の回転数を調整する。本実施形態の期間C1では、目標回転数ω*を徐々に増加させる。推定回転数ωeが切替回転数CNに達した時点で、バイパス弁109を閉じる。なお、CNは、発電機108のロータの位置が推定可能なロータの回転数が設定される。これは、発電機108のロータの回転数が低いと、ロータの位置の確認が困難であるためである。なお、目標回転数ω*と切替回転数CNとはほぼ同時に切替回転数CNに達するため、目標回転数ω*が切替回転数CNに達する時点でバイパス弁109を閉じるとも言える。その後、第3の制御から通常運転へと移行する。通常運転における発電制御装置102の動作は、第3の制御における発電制御装置102の動作と同様である。なお、本実施形態では、目標回転数ω*は、バイパス弁制御回路(図示省略)に与えられる。
[停止運転]
停止運転では、膨張機105の回転数を低下させ、膨張機105の作動が停止される。停止運転は、ランキンサイクル装置101の運転を停止すべき旨の指令(信号)が外部から発電制御装置102の制御器128に入力されたときに開始される。図7及び8を用いて、ランキンサイクル装置101の停止運転の制御シーケンスを説明する。
ステップS500では、バイパス弁109を開く。バイパス弁109を開くと、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差の低下が始まる。ステップS500では、バイパス弁109の開度をゼロから全開にする。また、バイパス弁109を一気に開く。ただし、バイパス弁109の開度が全開にならない程度に、バイパス弁109の開度を大きくしてもよい。また、バイパス弁109の開度を徐々に大きくしてもよい。要するに、ステップS500は、バイパス弁109の開度を大きくするステップである。
ステップS510は、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差(出入口差圧)が(切替)圧力NCよりも小さいか否かを判断するステップである。ステップS510において、出入口差圧が圧力NCよりも小さいと判断されると、ステップS520に進む。本実施形態では、ステップS520へと移行するまでは、コンバータ120を用いた発電機108の回転数の制御により、膨張機105の回転数を維持する。ここで、NCは、例えば、ステップS560で膨張機105による作動流体の膨張を禁止する際に、発電機108のロータを拘束可能な出入口差圧が設定される。これは、出入口差圧が大きいと、膨張機105の駆動トルクが大きく、発電機108のステップS560で発電機108のロータを拘束できないからである。
ステップS520では、制御器128は、コンバータ120を用いた発電機108の回転数の調整により、膨張機105(発電機108)を減速させる第4の制御を実行する。
ステップS530は、推定回転数ωeが回転数(切替回転数)CBよりも小さいか否かを判断するステップである。ステップS530において、推定回転数ωeが回転数CBよりも小さいと判断されると、ステップS540に進む。
ステップS540では、膨張機105の停止制御である第5の制御を開始する。具体的には、第5の制御では、発電機108の端子間電圧をゼロにして制動トルクを発生させて減速させる。第5の制御により、膨張機105の回転数を減少させる。CBは、膨張機105の停止制御へ切替えたとき、コンバータ120に故障を引き起こすような過電流が流れない発電機108の回転数が設定される。これは、発電機108の回転数が高いときに、膨張機105の停止制御を開始すると、コンバータ120に過電流が流れ故障する可能性があるからである。
ステップS550は、推定回転数ωeが回転数(切替回転数)BAよりも小さいか否かを判断するステップである。ステップS550において、推定回転数ωeが回転数BAよりも小さいと判断されると、ステップS560に進む。
ステップS560では、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108を制御することにより、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止する第1の制御を実行する。本実施形態では、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108に直流電流を流すことにより、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止する。本実施形態では、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止するための制御が開始されてから所定時間経過後に、ステップS570に進む。回転数BAは、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108を制御することにより、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止することが可能な発電機108の回転数が設定される。これは、発電機108の回転数が高いときに、制御器128がコンバータ120を用いて発電機108を制御することにより、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止することが困難であるからである。
なお、ステップS560に進むとき、蒸発器104の出口の作動流体に液体成分が含まれていなければ、その後、作動流体の温度低下により作動流体に液体成分が含まれても、膨張機105に液体成分が流入することがなく望ましい。しかしながら、ポンプ107が動作中で、蒸発器104の出口の作動流体に液体成分が含まれるときに膨張機105による作動流体の膨張が禁止される期間があれば、従来よりも膨張機105への作動流体の液体成分の流入が低減されるので、ステップS560に進むとき、蒸発器104の出口の作動流体に液体成分が含まれていてもよい。
ステップS570は、蒸発器104に配置されたボイラーのバーナーの火を消すステップである。バーナーの火が消された後においても、ポンプ107によって圧送された作動流体は、蒸発器104において加熱され、凝縮器106において冷却される。ただし、バーナーの火が消されているため、作動流体の温度は徐々に下がる。
ステップS580は、蒸発器104を通過した作動流体の温度が閾値よりも小さいか否かを判断するステップである。ステップS580において、作動流体の温度が閾値を下回ったと判断されると、ステップS590に進む。
ここで、上記閾値は、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれる作動流体の温度が設定される。
ステップS590は、ポンプ107を停止するステップである。ポンプ107の停止後に、ステップS600に進む。
ステップS600は、コンバータ120から発電機108への通電を終了するステップである。ステップS600で、停止運転は終了する。
図7及び8における期間C2は、第4の制御が実行される第6の期間の例示である。第6の期間では、制御器128は、コンバータ120を用いた発電機の回転数の制御を行い、膨張機の回転数を減少させる。期間C2において、コンバータ120を用いた発電機108の制御により、発電機108(膨張機105)の回転数が調整される。期間C2は、ステップS500〜ステップS530に対応する。期間B2は、第5の制御が実行される第5の期間の例示である。第5の期間では、コンバータ120が、発電機の回転数の制御を行わず、膨張機の回転数を減少させる。期間B2において、膨張機105の停止制御が行われる。期間B2は、ステップS540及びステップS550に対応する。期間A2は、第1の制御が実行される第4の期間の例示である。第4の期間は、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれる期間の少なくとも一部であればよい。期間A2において、膨張機105が作動流体を膨張させることが禁止される。期間A2は、ステップS560〜ステップS600に対応する。
期間C2において、コンバータ120により発電機108の回転数が調整される。期間C2では、コンバータ120を用いた制御により、発電機108の回転数が低下する。期間B2においても、期間C2と同様、膨張機105が作動流体を膨張させることは許可されている。期間B2では、停止制御により、発電機108の回転数が低下する。期間A2において、作動流体の膨張が禁止される。
本実施形態の停止運転では、ポンプ107が動作しているときであり、蒸発器104に配置されたボイラーのバーナーを消火して作動流体の加熱を止める前であり、バイパス弁109が開いているときに期間A2が開始される。このような構成によれば、停止運転時において液体の作動流体が膨張機105に吸い込まれることを従来よりも低減できる。
さらに、本実施形態の停止運転では、ポンプ107が停止した後に第1の制御が終了する。このような構成によれば、停止運転の後期において、液体の作動流体が膨張機105に吸い込まれることを従来よりも低減できる。なお、ポンプ107が停止すると同時に第1の制御が停止されてもよい。つまり、ポンプ107の動作の停止以降に第1の制御が終了していれば構わない。
矛盾のない限り、始動運転の項目で説明した技術は、停止運転に適用され得る。また、矛盾のない限り、停止運転の項目で説明した技術は、始動運転に適用され得る。
(変形例1)
始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、膨張機105による作動流体の膨張を禁止する方法は、発電機108に直流電流を流す方法に限定されない。変形例1では、コンバータ120を用いて発電機108に逆回転用の交流電流を流す。これにより、発電機108のロータをゆっくりと逆回転させる。つまり、膨張機105に作動流体を圧縮させる。このようにしても、膨張機105による作動流体の膨張を禁止できる。要するに、変形例1では、膨張機105は、圧縮機としても機能する。制御器128は、始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、膨張機105が作動流体を圧縮するように、コンバータ120を用いて発電機108を制御して、膨張機105による作動流体の膨張を禁止する。
変形例1では、直流電流ではなく、交流電流を発電機108に流す。従って、発電機108の特定の相に電流が集中して流れることがない。このことは、発電機108の局所的な発熱を避ける観点から有利である。
変形例1では、位置・回転数推定部135は、始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、第1の制御を実行するときに、式(2)の代わりに式(8)を用いて動作する。εは、発電機108のロータを逆回転させるための(作動流体を圧縮させるための)回転数指令(一定値)を表す。先に説明した実施形態と同様、始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、第1の制御を実行するときは、電圧指令生成部132は、式(4−A)及び(5−A)を用いて動作する。また、電流指令生成部131において算出されたγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *は、利用されない。
変形例1では、位置・回転数推定部135は、式(8)で定められたωe(=ε)と式(3)とを用いてθeを算出する。θeは一定の速度で変化する。座標変換部133はそのθeを用いて3相目標電圧vu *、vv *、vw *を算出し、PWM信号生成部134は3相目標電圧vu *、vv *、vw *を用いて制御信号127を生成する。結果として、ε(膨張機105を圧縮動作させるための値)が制御信号127に反映される。
(変形例2−1)
期間A1は、蒸発器104を通過した作動流体の温度の測定値又は推定値が閾値以下である期間に限定されない。変形例2−1では、期間A1は、蒸発器104を通過した作動流体の圧力の測定値又は推定値が閾値以下の期間である。ここで、閾値は、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれない作動流体の圧力が設定されるが、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれる作動流体の圧力であってもよい。つまり、閾値は、期間A1に、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれる期間の少なくとも一部が含まれるなら、任意の値が設定されてよい。このように期間A1を設定することもまた、適切なタイミングで第1の制御から第2の制御へと移行することを可能とする。ここで、期間A1は、第1の制御が実行される第1の期間の例示である。この圧力の測定値は、圧力センサを用いて測定できる。この圧力の推定値は、蒸発器104を通過した作動流体の温度と、発電機108のトルクとから得ることができる。発電機108のトルクは、発電機108を流れる電流から算出することができる。
(変形例2−2)
変形例2−2では、期間A1を、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止し始めてから所定時間経過するまでの期間とする。ここで、期間A1は、第1の制御が実行される第1の期間の例示である。この所定時間は、ボイラー点火後の経過時間と作動流体の温度との相関関係を事前に測定することにより設定されている。具体的に、この所定時間は、蒸発器104で作動流体を加熱することを開始した時点から、蒸発器104を通過した作動流体の温度の測定値又は推定値が閾値を超えるまでの時間と、膨張機105による作動流体の膨張を禁止を開始するタイミングと蒸発器104で作動流体を加熱することを開始するタイミングとの時間差とに基づき設定される。図6に示す例では、所定時間は、蒸発器104で作動流体を加熱することを開始した時点から、蒸発器104を通過した作動流体の温度の測定値又は推定値が閾値を超えるまでの時間と、上記時間差との和になる。ここで、上記閾値は、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれない作動流体の温度が設定されるが、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれる作動流体の温度であってもよい。つまり、閾値は、期間A1に、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれる期間の少なくとも一部が含まれるなら、任意の値が設定されてよい。
変形例2−1、本変形例のように、期間A1は、蒸発器104を通過した作動流体の温度と相関のあるパラメータ(圧力、時間等)が作動流体の温度が閾値以下である場合と同等の条件を満たす期間であってもよい。そのような期間が期間A1として設定されていると、適切なタイミングで第1の制御から第2の制御へと移行することが可能になる。
なお、変形例2−1及び2−2に倣って、停止運転が実行される期間における期間A2の終了時を設定することもできる。つまり、蒸発器104を通過した作動流体の圧力の測定値又は推定値または膨張機105により作動流体の膨張を禁止してからの経過時間が閾値となったときに、期間A2を終了させることもできる。ここで、期間A2は、第1の制御が実行される第4の期間の例示である。蒸発器104を通過した作動流体の温度が閾値以下となるまで作動流体の膨張を禁止することで、液体の作動流体が膨張機105に吸い込まれることを従来よりも低減する。ここで、上記閾値は、蒸発器104を通過した作動流体に液体成分が含まれる作動流体の温度が設定される。この技術を採用する場合には、停止運転における期間A2においてこの作動流体の温度又は圧力の測定値又は推定値が閾値に達したときに、コンバータ120への通電を終了することにより、膨張機105による作動流体の膨張禁止を解除すればよい。ポンプ107は、通電終了の前に停止すればよい。
(変形例3)
第2の制御において膨張機105が作動流体を膨張させることを許可する方法は、発電機108の端子間電圧をゼロとする方法に限定されない。変形例3では、制御器128は、第2の制御において、コンバータ120を用いて発電機108に流れる電流をゼロとすることによって、膨張機105が作動流体を膨張させることを許可する。変形例3では、始動運転において第2の制御を実行しているときに、発電機108に電流が流れないため、発電機108の制動トルクが非常に小さい(実質的にゼロとなる)。従って、第2の制御において、発電機108の回転数が切替回転数へと短時間で上昇する。
変形例3では、電圧指令生成部は、式(4−B)及び(5−B)の代わりに、式(9−B)及び(10−B)を用いて動作する。
(変形例4−1)
始動運転の第3の制御及び停止運転の第4の制御の少なくとも一方において、電流指令生成部がγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を算出する方法は、目標回転数ω*を用いた方法に限定されない。変形例4−1では、始動運転の第3の制御及び停止運転の第4の制御の少なくとも一方において、電流指令生成部131は、発電機108が出力するべき目標電力を用いて、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を算出する。つまり、変形例4−1では、制御器128は、始動運転の第3の制御及び停止運転の第4の制御の少なくとも一方において、発電機108が発電する電力を調整するように、コンバータ120を用いて発電機108を制御する。制御器128は、目標電力をコンバータに指令し、コンバータ120は、発電機108の推定される発電電力が目標電力に一致するよう発電機108を制御する。
(変形例4−2)
変形例4−2では、始動運転の第3の制御及び停止運転の第4の制御の少なくとも一方において、電流指令生成部131は、発電機108の目標制動力を用いて、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *を算出する。つまり、変形例4−2では、制御器128は、始動運転の第3の制御及び停止運転の第4の制御の少なくとも一方において、発電機108に発生する制動力を調整するように、コンバータ120を用いて発電機108を制御する。制御器128は、目標制動力をコンバータに指令し、コンバータ120は、発電機108の推定される制動力が目標制動力に一致するよう発電機108を制御する。制動力の推定は、コンバータ制御部130が実行する。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の発電装置について、図9〜11を参照しながら説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略する。
図9に示すように、第2実施形態の発電装置100aは、発電制御装置102aを備えている。発電制御装置102aは、コンバータ120aと、制御器128aとを有している。図10に示すように、コンバータ120aは、コンバータ制御部130aを有している。図11に示すように、コンバータ制御部130aは、電圧指令生成部132a及び位置・回転数推定部135aを有している。
また、制御器128aは、ランキンサイクル装置101の始動運転及び停止運転の少なくとも一方において、ポンプ107が動作中で、蒸発器104出口の作動流体に液体成分が含まれているとき、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止するように、コンバータ120を用いて発電機108を制御する第1の制御を実行する。制御器128は、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備える。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部としては、メモリーが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
また、以降で説明する本実施形態でのコンバータ制御部130aの制御機能の一部又は全部を制御器128aに組み込んでもよい。
位置・回転数推定部135aは、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *に基づいて、推定位置θe及び推定回転数ωeを算出し、出力する。
電圧指令生成部132aは、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *に基づいて、γ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *を算出し、出力する。
図12を用いて、第2実施形態の始動運転の制御シーケンスを説明する。
図12の制御シーケンスには、図5のステップS160及びステップS170に対応するステップは存在しない。従って、図12のステップS150において、作動流体の温度が閾値を上回ったと判断されると、ステップS180に進む。これらの点を除くと、図12の制御シーケンスは、図5の制御シーケンスと同じである。
図12における期間A1は、膨張機105が作動流体を膨張させることが禁止される期間である。期間A1は、第1の制御が実行される第1の期間の例示である。期間A1は、ステップS120〜ステップS150に対応する。期間C1は、コンバータ120を用いた発電機108の制御により、発電機108(膨張機105)の回転数が調整される期間である。期間C1は、第3の制御が実行される第3の期間の例示である。期間C1は、ステップS180〜ステップS200に対応する。本実施形態では、膨張機105の入口における作動流体の圧力と膨張機105の出口における作動流体の圧力との差により発電機108の回転数がゼロから増加する期間B1は設定されない。期間B1は、第2の制御が実行される第2の期間の例示である。
(期間A1及び期間C1のそれぞれにおける、コンバータ制御部130aの動作)
制御器128aは、第1の制御に続き、発電機108の回転数を調整するように、コンバータ120aを用いて発電機108を制御する第3の制御を開始する。コンバータ制御部130aは、期間A1において、コンバータ回路部125を用いて発電機108に高周波成分を含む電流を流すことにより、発電機108のロータの位置を推定する。コンバータ制御部130aは、第1の制御から第3の制御への移行時において、推定されたロータの位置を用いて発電機108の回転数の調整を開始する。本実施形態では、制御器128aは、期間A1において、コンバータ120aを用いて発電機108に直流成分に高周波成分を重畳させた電流を流す。これにより、コンバータ120aは、発電機108のロータを拘束するとともに発電機108のロータの位置を推定する。
なお、変形例1に対して上記制御を適用してもよい。この場合、コンバータ120aは高周波成分を含む逆回転用の交流電流を発電機108に流すことにより、膨張機105に作動流体を圧縮させるとともに、発電機108のロータの位置を推定する。
また、高周波成分を含む電流によってロータの位置及び速度を推定する技術は公知であるため、その技術の詳細な説明は割愛する(例えば、高周波成分を含む電圧をモータに印加し、モータに流れる電流の高周波成分に基づいてロータの位置及び回転数を推定する技術を開示する特許第4425193号参照)。
本明細書では、「高周波」とは、周波数が発電機108の駆動電圧の周波数よりも十分に大きい波を指す。上述の高周波成分によって、発電機108が動作することはない。
コンバータ制御部130aは、式(20−A)、(20−C)、(21−A)、(21−C)、(22)、(23)、(24)、(6)及び(7)を用いて動作する。
式(20−A)、(20−C)、(21−A)及び(21−C)は、電圧指令生成部132aがγ軸目標電圧vγ *及びδ軸目標電圧vδ *を算出する際に使用する計算式である。式(20−A)及び(21−A)は、期間A1において用いられる計算式である。式(20−C)及び(21−C)は、期間C1において用いられる計算式である。vhγ及びvhδは、目標電圧に含まれる高周波成分におけるγ軸成分及びδ軸成分である。式(20−A)、(20−C)、(21−A)及び(21−C)に基づいた動作により、電圧指令生成部132aは、高周波成分を含む目標電圧を算出し、出力する。式(20−C)及び(21−C)におけるγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *は、第1実施形態と同様、電流指令生成部131が式(6)及び(7)を用いて算出する。
式(22)、(23)及び(24)は、位置・回転数推定部135aが軸誤差Δθ、推定回転数ωe及び推定位置θeを算出する際に使用する計算式である。式(22)、(23)及び(24)は、第1の制御及び第3の制御において用いられる式である。ihDは、以下のようにして得られる値である。まず、発電機108を流れる電流の高周波成分におけるγ軸成分ihγとδ軸成分ihδとを抽出する。次に、これらの積ihγ×ihδを算出する。最後に、得られた積の直流成分を抽出する。発電機108を流れる電流の高周波成分におけるγ軸成分ihγ及びδ軸成分ihδは、座標変換部136から出力されたγ軸電流iγ及びδ軸電流iδを、バンドパスフィルタに通すことによりそれぞれ抽出することができる。積ihγ×ihδは、掛算器を用いてγ軸成分ihγ及びδ軸成分ihδを乗じることにより算出することができる。積ihγ×ihδの直流成分(すなわちihD)は、積ihγ×ihδをローパスフィルタに通すことにより抽出することができる。ihDを特定する方法の詳細については、特許第4425193号に開示されているため説明を省略する。
第1の制御において、電圧指令生成部132aは、式(20−A)及び(21−A)を用いて動作する。これにより、コンバータ制御部130aから、直流成分に高周波成分が重畳された電流を発電機108に流すための制御信号127が出力される。直流成分は、発電機108のロータを拘束する。これにより、膨張機105が作動流体を膨張させることが禁止される。高周波成分から、上述のようにihDが特定される。第1の制御において、位置・回転数推定部135aは、式(22)、(23)及び(24)を用いて動作する。これにより、軸誤差Δθ、推定回転数ωe及び推定位置θeが算出される。期間A1においては、電流指令生成部131において算出されたγ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *は、利用されない。
第3の制御では、電流指令生成部131は、式(6)及び(7)を用いて動作する。これにより、推定回転数ωeが目標回転数ω*に一致するように、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *が算出される。第3の制御において、電圧指令生成部132aは、式(20−C)及び(21−C)を用いて動作する。これにより、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδに、γ軸目標電流iγ *及びδ軸目標電流iδ *に追従する成分と、高周波成分とが現れる。追従する成分は、発電機108の回転数の制御に寄与する。本実施形態の第3の制御では、発電機108の回転数がゼロから増加する。高周波成分から、上述のようにihDが特定される。第3の制御において、位置・回転数推定部135aは、式(22)、(23)及び(24)を用いて動作する。これにより、軸誤差Δθ、推定回転数ωe及び推定位置θeが算出される。通常運転の際にも、同様の制御がなされる。
コンバータ制御部130aによれば、膨張機105及び発電機108が静止している第1の制御においても、発電機108のロータの位置と回転数を推定できる。このことは、膨張機105が作動流体を膨張させることを禁止する状態を解除(拘束を解除)した直後に、発電機108の回転数を調整する第3の制御を開始できることを意味する。すなわち、第1実施形態の期間B1が不要となる。これにより、起動運転に要する時間を短縮できる。
ただし、第1の制御と第3の制御との間に第2の制御を介在させてもよい。また、第2実施形態における第1の制御と、第1実施形態における第3の制御とを組み合わせてもよい。このようにすれば、第3の制御において、発電機108の回転数を調整しているときに発電機108に流れる電流に高周波成分が含まれない。このことは、高周波成分による損失及び損失を抑制する観点から有利である。
また、高周波成分を含む電流を利用して発電機108のロータの位置と回転数を推定する技術は、停止運転にも適用できる。発電機108の回転数を調整する第4の制御から発電機108のロータを拘束する第1の制御へと直接移行する、つまり、第5の制御を省略することも可能である。高周波成分を含む電流を利用する技術によれば、発電機108の回転数が低いときにも、ロータの位置及び回転数を高い精度で推定することができる。従って、第1の制御へと直接移行する前に第4の制御において回転数を低下させても、第4の制御において制御精度が低下することがない。ただし、第1実施形態の停止運転においても、第5の制御を省略してもよい。
その他、矛盾のない限り、第1実施形態で説明した技術は、第2実施形態の発電制御装置に適用され得る。また、矛盾のない限り、第2実施形態で説明した技術は、第1実施形態の発電制御装置に適用され得る。