JP6209435B2 - 正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に広く用いられている。リチウムイオン二次電池用の正極活物質には、LiCoO、LiNiO、LiNi0.8Co0.2、LiMn等のリチウムと遷移金属等との複合酸化物が用いられている。
近年、携帯型電子機器や車載用のリチウムイオン二次電池として小型化・軽量化が求められている。そのため、リチウムイオン二次電池には、単位質量あたりの放電容量(以下、単に「放電容量」という。)のさらなる向上が求められている。
放電容量の高い正極活物質としては、下記の正極活物質(i)、(ii)のように、遷移金属元素に対するLi比が高い複合酸化物からなる正極活物質(以下、「Liリッチ系正極活物質」ともいう。)が注目されている。
(i)Mnスピネルの結晶構造を含み、アルカリ金属を含まないLiリッチ系正極活物質(特許文献1)。
(ii)アルカリ共沈法により共沈物を得た後に、炭酸リチウム等を混合して焼成することで得られるリチウムアルカリ遷移金属複合酸化物からなるLiリッチ系正極活物質(特許文献2)。
米国特許出願公開第2008/0083901号明細書 米国特許出願公開第2009/0155691号明細書
しかし、従来のLiリッチ系正極活物質は、初期の放電容量(以下、単に「初期放電容量」という。)が未だ充分に高くなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い初期放電容量のリチウムイオン二次電池が得られるLiリッチ系正極活物質およびリチウムイオン二次電池用正極、並びに高い初期放電容量のリチウムイオン二次電池を提供する。
本発明は下記[1]〜[7]である。
[1]LiNiCoMnMe(ただし、x+y+z=1であり、2≦c≦3である。AはLi以外のアルカリ金属元素であり、MeはLi、A、Ni、Co、Mn、O以外の元素である。)で表され、下記条件(1)〜(5)を満たす複合酸化物を有する正極活物質。
(1)0≦y/x≦1である。
(2)q=z−xで表されるqが0.15≦q≦0.60である。
(3)0.001≦b≦0.06である。
(4)p=a+b−(2z+y)で表されるpが−0.08y/x−0.015≦p≦−0.005である。
(5)0≦w≦0.1である。
[2]pが−0.04y/x−0.015≦p≦−0.04y/x−0.005である[1]に記載の複合酸化物を有する正極活物質。
[3]AがNaおよびKの一方または両方である[1]または[2]に記載の正極活物質。
[4]前記複合酸化物の表面にAlを含む化合物が存在している、[1]〜[3]のいずれかに記載の正極活物質。
[5]前記複合酸化物の表面にSO 2−、PO 3−、およびFから選ばれる少なくとも1種類の陰イオンとLiとを含む化合物が存在している、[1]〜[4]のいずれかに記載の正極活物質。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の正極活物質とバインダーとを含むリチウムイオン二次電池用正極。
[7][6]に記載の正極と負極と非水電解質とを含むリチウムイオン二次電池。
本発明の正極活物質およびリチウムイオン二次電池用正極によれば、初期放電容量の高いリチウムイオン二次電池が得られる。本発明のリチウムイオン二次電池は初期放電容量が高い。
本発明における複合酸化物の範囲を近似的に示す三角図である。 例1−1〜例1−7のpと初期放電容量との関係を示したグラフである。 例2−1〜例2−4のpと初期放電容量との関係を示したグラフである。 例3−1〜例3−4のpと初期放電容量との関係を示したグラフである。 例4−1〜例4−4のpと初期放電容量との関係を示したグラフである。 例5−1〜例5−4のpと初期放電容量との関係を示したグラフである。 y/xとpの関係を示したグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本明細書において、元素記号(例えば、「Li」)は元素を示し、特に言及の無い限り、その元素の単体の物質(例えば、金属)を示すものではない。
<正極活物質>
本発明の正極活物質(以下、本活物質という)は、下記式(α)で表され、下記条件(1)〜(5)を満たす複合酸化物(α)を有する。
複合酸化物(α)は、Liと、Li以外のアルカリ金属元素A、CoおよびNiの一方または両方とMnとを含む。以下、Ni、CoおよびMnをまとめて遷移金属元素Mということがある。
アルカリ金属元素Aは、正極活物質の合成のしやすさの点から、NaおよびKの一方または両方であることが好ましく、Naであることが特に好ましい。
下記式(α)は、初回充電により活性化処理を行う前の式である。活性化とは、酸化リチウム(LiO)、またはリチウムおよび酸化リチウムを、正極活物質から取り除くことを意味する。活性化の方法としては、例えば、4.4V(Li/Liの酸化還元電位との電位差として表される値である。)より大きな電圧で充電する電気化学的活性化法が挙げられる。
LiNiCoMnMe ・・・(α)
ただし、式(α)において、x+y+z=1であり、2≦c≦3である。
また、式(α)は、下記条件(1)〜(5)を満たす。
(1)0≦y/x≦1である。
(2)q=z−xで表されるqが0.15≦q≦0.60である。
(3)0.001≦b≦0.06である。
(4)p=a+b−(2z+y)で表されるpが−0.08y/x−0.015≦p≦−0.005である。
(5)0≦w≦0.1である。
複合酸化物(α)に含まれるLi、A、Ni、Co、MnおよびMeの含有量は、高周波誘導結合プラズマ(以下、ICPという)測定を行うことで、算出できる。また、ICPにより含有量を算出できない場合には、複合酸化物(α)の製造原料の仕込みの比から算出してもよい。製造原料から算出する場合には、Aの含有量は原子吸光法により算出できる。
条件(5)は、本発明の効果を妨げない範囲で、Li、A、Ni、Co、Mn、O以外の元素を含んでもよいとの趣旨である。
Li、A、Ni、Co、Mn、O以外の元素であるMeの比率wは0.1以下であり、0.07以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
なお、以下の説明では、wはゼロであると近似する。
本発明における複合酸化物(α)は、アルカリ金属元素Aのモル比bが極めて低いため、LiMnOで表されるリチウム過剰相と、LiMO(ただし、MはNi、CoおよびMnから選択される1種以上の遷移金属元素である。)で表される層状岩塩型結晶構造(空間群R−3m)との固溶体であると近似できる。
図1における三角形の頂点の組成がリチウム過剰相、底辺が層状岩塩型結晶構造の組成に各々該当する。層状岩塩型結晶構造は、図1に示すように、LiCoOとLiNi1/2Mn1/2との比で決まる組成である。
条件(1)におけるy/xは、複合酸化物(α)中のNiに対するCoのモル比率を示す。
y/xは、0≦y/x≦1である。y/xが前記範囲であると複合酸化物(α)の高電圧耐性が向上する。そのため、本活物質を4.5V(Li/Liの酸化還元電位との電位差として表わされる値である。)以上の高電位で充電しても劣化が少なくなる。
y/xは、0.05以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。y/xが0.05以上であると、複合酸化物(α)の結晶構造が安定になるため、スピネル構造が生じにくく、スピネル構造の生成による容量低下を抑制しやすい。
図1においてハッチングを施した領域が、条件(1)を満たす組成を近似的に示す。
条件(2)におけるqは、複合酸化物(α)の固溶体におけるリチウム過剰相の比率を示す。
qは0.15≦q≦0.60である。qが前記下限値以上であると、複合酸化物(α)の高電圧耐性が向上するため、本活物質を4.5V(Li/Liの酸化還元電位との電位差として表わされる値である。)以上の高電位で充電しても劣化が少なくなる。複合酸化物(α)は、リチウム過剰相が多いため本活物質を有するリチウムイオン二次電池は、放電容量が高くなる。qが前記上限値以下であると本活物質を有するリチウムイオン二次電池の充放電効率やレート特性が高くなる。qは0.3≦q≦0.55がより好ましく、0.4≦q≦0.5が特に好ましい。
図1に条件(2)を満たす組成の範囲を両矢印で示す。
複合酸化物(α)中のリチウム過剰相の比率qを、q=z−xで表されるのは、以下のように説明できる。
リチウム過剰相は、LiMnOで表される。層状岩塩型結晶構造は、NiとMnの比率が等しいので、LiNix’Coy’Mnx’で表される。リチウム過剰相の比率をq、層状岩塩型結晶構造の比率を1−qとし、b≒0とすると、前記式(α)は下記式(α1)で近似できる。
q(LiMnO)+(1−q)(LiNix’Coy’Mnx’)・・・(α1)
式(α)と式(α1)から、MnとNiの比率を比較すると下記の関係となる。これから、q=z−xが導かれる。
Ni:x=(1−q)x’
Mn:z=q+(1−q)x’
条件(3)におけるbは、複合酸化物(α)中のNi、CoおよびMnの合計モル量(x+y+z)に対するアルカリ金属元素Aのモル比率である。
bは0.001≦b≦0.06である。bが前記下限値以上であるとアルカリ金属元素Aが複合酸化物(α)の結晶構造に入ることで結晶構造が安定化してスピネル構造が生じにくくなると考えられる。bが前記上限値以下であると、複合酸化物(α)中のLiの拡散、複合酸化物(α)からのLiの引き抜きおよび複合酸化物(α)へのLiの挿入等が阻害されないため、リチウムイオン二次電池の放電容量が高くなる。
bは0.005≦b≦0.05がより好ましく、0.01≦b≦0.04が特に好ましい。
条件(4)におけるpは、Li量の化学量論比からのずれを示す。また、pが負の値をとることは、Li量が化学量論比に対して少ないことを示す。本発明者らの検討によると、−0.1≦p≦0.06において、複合酸化物(α)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量はpに対して二次関数と近似でき、−0.04y/x−0.015≦p≦−0.04y/x−0.005に該放電容量の最大値を有することを見出した。該放電容量の最大値をとるpと、複合酸化物(α)中のNiに対するCoのモル比率y/xとの間に相関が見られる理由は明らかではないが、y/xが層状岩塩型結晶構造の安定性に関係しているためと考えられる。
放電容量の最大値をとるpとy/xに相関がみられる理由の一つとして、以下が考えられる。Liリッチ系正極活物質は、活性化処理によりLiMnOが電気的に活性なLiMnOとなる。複合酸化物(α)においてLi量が化学量論比に対して少ないということは、LiMnOの一部が活性化処理を行う前からLiMnOになっていると考えることができる。Liリッチ系正極活物質において、活性化処理前からLiMnOを一定量以上存在させることで放電容量が増加すると考えられる。一方で、Li量が減少し過ぎると、LiMnOではなくスピネル構造のLiMnが生成し、その結果、放電容量が低下してしまう。
複合酸化物(α)のy/xは層状岩塩型結晶構造の安定性に関係しており、y/xが大きいほどスピネル構造のLiMnが生成しにくい。そのため、放電容量が最大値を取るpは、y/xが大きくなるにつれて、負に大きくなると考えられる。また、条件(4)を満たす範囲では、LiMnOが生成してLiMnが生成しないため、Li量が化学量論比で存在する場合に比べて高い放電容量を得られるものと考えられる。
pが−0.08y/x−0.015≦p≦−0.005の複合酸化物(α)を含む本正極活物質は、Li量を化学量論比で含む複合酸化物を含む正極活物質に比べて、リチウムイオン二次電池の放電容量を高くできる。上述のとおり、リチウムイオン二次電池の放電容量の最大値を取るため、pは−0.04y/x−0.015≦p≦−0.04y/x−0.005がより好ましい。
条件(4)において、p=a+b−(2z+y)で表され、pがLi量の化学量論比からのずれを示すことは、以下のように説明できる。
b=0で、条件(2)と同様に、式(α)と式(α1)から、Liと酸素のモル比率を比較すると、下記の関係となる。これからc=1+aが導かれる。
Li:a=1+q
酸素:c=3q+2(1−q)=2+q
一般に、Ni、Co、およびMnを含む複合酸化物において、Niは+2価、Coは+3価、Mnは+4価である時に最も安定である。b=0の場合に、式(α)において、Ni、CoおよびMnが安定な価数を満たす化学量論比をとると次の関係が成り立つ。
a+2x+3y+4z=2c
ここで、x+y+z=1、c=1+aであることから、
b=0の場合、複合酸化物(α)に含まれるLi量aは、a=2z+yの時に化学量論比をとる。
本活物質に含まれる複合酸化物(α)は、b≠0なので、Liの一部を価数が同じアルカリ金属元素Aで置換されるとすると、a=2z+y−bときに化学量論比をとる。すなわち、複合酸化物(α)に含まれるLi量の化学量論比からのずれpは、p=a−(2z+y−b)=a+b−(2z+y)で表すことができる。
従来はLi量が化学量論比よりも少ない場合はスピネル構造が生成して放電容量が低下すると考えられていた。しかし本発明者らが鋭意検討した結果、複合酸化物(α)中のLi量を化学量論比よりもわずかに少なくした場合は放電容量が増加することを見出した。pが条件(4)を満たす範囲では、スピネル構造が生成しないものと考えられる。
前記pが式(4)を満たす範囲で、リチウムイオン二次電池の放電容量が高くなる複合酸化物(α)の組成として、以下が好ましい。
式(α)におけるxは、0.13≦x≦0.43が好ましく、0.15≦x≦0.40が特に好ましい。
式(α)におけるyは、0≦y≦0.25が好ましく、0.03≦y≦0.20が特に好ましい。
式(α)におけるzは、0.43≦z≦0.80が好ましく、0.50≦z≦0.75が特に好ましい。
正極活物質を形成する特に好ましい複合酸化物としては、Li1.46Na0.015Ni0.23Co0.05Mn0.722.475、Li1.39Na0.02Ni0.2Co0.15Mn0.652.41、Li1.31Na0.01Ni0.28Co0.1Mn0.622.32、Li1.26Na0.025Ni0.33Co0.04Mn0.632.285が挙げられる。
複合酸化物(α)は、一次粒子が複数集合した二次粒子である。複合酸化物(α)の形状としては、球状、針状、板状等が挙げられる。なかでも、複合酸化物(α)の形状としては、正極活物質層における正極活物質の充填性を高くできることから、球状が好ましい。
前記条件(1)〜(4)を満たす複合酸化物(α)は、それ自体を正極活物質として使用してもよい。また、表面処理をして複合酸化物(α)の表面に異種化合物を存在させて正極活物質としてもよい。
複合酸化物(α)の表面に存在する異種化合物としては、Alを含む化合物(以下、化合物(β)という)および、SO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンとLiとを含む化合物(以下、化合物(γ)という)が挙げられる。
複合酸化物(α)の表面に化合物(β)が存在すると、リチウムイオン二次電池の正極活物質としての使用時に複合酸化物(α)と電解液との接触頻度が減少する。そのため、複合酸化物(α)の表面から電解液にMn等の遷移金属元素の溶出を抑制できる。その結果、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上できると考えられる。
化合物(β)は、複合酸化物(α)の表面全体に存在してもよく、部分的に存在してもよい。リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上しやすい点で、化合物(β)は、複合酸化物(α)の表面全体に均一に存在することがより好ましい。
化合物(β)は、Alを含む酸化物が好ましく、Alがより好ましい。化合物(β)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
化合物(β)は、結晶性であっても非晶質であってもよく、Mn等の遷移金属元素の電解液への溶出を抑制し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を高める観点から、非晶質が好ましい。非晶質とは、XRD測定において、化合物(β)に帰属されるピークが観察されないことをいう。化合物(β)が非晶質であることで前記効果が得られる理由は明確ではないが、化合物(β)が非晶質であることで、複合酸化物(α)の表面に均一に存在しやすくなることが要因と考えられる。
複合酸化物(α)の表面に化合物(β)が存在していることは、透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法分析(TEM−EDX)、X線マイクロアナライザ分析法(EPMA)やX線光電子分光法(XPS)により確認できる。
正極活物質の断面を切り出した後、EPMAやTEM−EDXによりAlの元素マッピングを行うことで、化合物(β)の分布状態を評価できる。EPMAでは、正極活物質における二次粒子の表面に近い一次粒子だけでなく、二次粒子の内部にある一次粒子の表面にも化合物(β)が存在していることを確認できる。TEM−EDXでは、Alが一次粒子の表面に存在するかどうかを確認できる。
正極活物質のXPS測定により、化合物(β)に含まれる元素の化学状態を確認できる。例えば、XPSでAl(2p)のピークが73.6eV〜74.4eVの範囲であればAlを含む酸化物であると判断することができる。
複合酸化物(α)の表面に化合物(β)を存在する場合、正極活物質に含まれるNi、CoおよびMnの合計モル量(M)に対するAlのモル比(以下、Al/M比ともいう)は、0.005〜0.06が好ましく、0.01〜0.05がより好ましく、0.015〜0.04が特に好ましい。Al/M比が前記範囲内である正極活物質は、リチウムイオン二次電池のレート特性およびサイクル特性を向上できる。
複合酸化物(α)の表面に存在する化合物(β)に含まれるAlのモル量は、正極活物質を酸に溶解し、ICP測定を行うことによって測定される。なお、ICP測定によって前記Alの量を求めることができない場合には、複合酸化物(α)の表面に化合物(β)を存在させる際に用いる後述の水溶液(1)中のAlのモル量に基づいて前記Alのモル量を算出してもよい。
本発明の正極活物質は、高い充放電効率が得られることから、複合酸化物(α)の表面にSO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンとLiとを含む化合物(化合物(γ))存在することが好ましい。
化合物(γ)の陰イオンは、複合酸化物(α)の表面の組成比に対して過剰量存在するLi(遊離Liともいう)を固定化する働きをすると考えられる。これにより、充放電に使われるLiが拡散しやすくなるため、リチウムイオン二次電池の充放電効率が高くなると考えられる。
化合物(γ)は、複合酸化物(α)の表面全体にわたって存在してもよく、部分的に存在してもよい。化合物(γ)は、複合酸化物(α)の表面に部分的に存在することがより好ましい。
化合物(γ)はSO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンとLiを含む化合物である。化合物(γ)は、LiSO、LiPO、およびLiFが好ましい。これらの中で、リチウムイオン二次電池のサイクル特性に優れることから、LiFが特に好ましい。
複合酸化物(α)の表面に存在する化合物(γ)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
複合酸化物(α)の表面に化合物(γ)が存在していることは、TEM−EDX、EPMA、XPSおよびXRD測定により確認できる。
正極活物質の断面を切り出した後、EPMAやTEM−EDXによりS、PおよびFの元素マッピングを行うことで、化合物(γ)の分布状態を確認できる。
化合物(γ)の化学状態はXPSやXRDで評価できる。例えば、正極活物質をXPSで分析し、F(1s)のピークが684.6eV〜685.4eVであればLiF、P(2p)のピークが132.4eV〜133.4eVの範囲であればLiPO、が存在すると判断することができる。XRD測定ではLiPO、またはLiSOに帰属されるピークの有無によってそれぞれの化合物の存在を判断することができる。
複合酸化物(α)の表面に化合物(γ)を存在させる場合、化合物(γ)に含まれるSO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンの量は、下式(1)で求められる陰イオンの相対量(Xa)が0.001〜0.1の範囲内であることが好ましい。相対量(Xa)が、0.001以上であると充放電効率が向上しやすく、0.1以下であると不純物生成による容量低下が起きにくい。相対量(Xa)の値は、0.003〜0.07の範囲内がより好ましく、0.005〜0.05の範囲内が特に好ましい。
相対量(Xa)は、複合酸化物(α)に含まれるアルカリ金属元素の合計モル量に対する、化合物(γ)に含まれる各陰イオンのモル量の比に、それぞれの陰イオンの価数の絶対値を乗じた値である。なお、2種以上の陰イオンが含まれる場合には、相対量(Xa)は、正極活物質に含まれるすべての陰イオンの合計値である。すなわち、下式(1)のとおり、各陰イオンについて、「陰イオン(1)の相対量」、「陰イオン(2)の相対量」…を求め、これらの合計が上記した範囲にあることが好ましい。
陰イオンの相対量(Xa)=Σ(f×v)/fa・・・(1)
:化合物(γ)に含まれる各陰イオンのモル量
:各陰イオンの価数
:複合酸化物(α)に含まれるアルカリ金属元素の合計モル量
複合酸化物(α)の表面に存在する化合物(γ)に含まれるSO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンの量(モル)は、蛍光X線分析により測定できる。なお、蛍光X線分析によって前記の陰イオンの量を求めることができない場合には、複合酸化物(α)の表面に化合物(γ)を存在させる(化合物(γ)を含む被覆層を形成する)際に用いる材料(たとえば水溶液(2))中の前記の元素の量に基づいて前記の元素の量を算出してもよい。
本活物質の粒子径(D50)は、3〜30μmが好ましく、4〜25μmがより好ましく、5〜20μmが特に好ましい。
なお、D50は、体積基準で求めた粒度分布の、全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定した頻度分布および累積体積分布曲線で求められる。粒子径の測定は、測定対象の粉末を所定の分散媒中に超音波処理などで充分に分散させて粒度分布を測定する(たとえば、HORIBA社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置Partica LA−950VII、などを用いる)ことで行なわれる。
本活物質の、窒素吸着BET法で測定した比表面積は1〜12m/gが好ましく、2〜10m/gがより好ましく、3〜8m/gが特に好ましい。本活物質の比表面積が前記範囲の下限値以上であると容量とレート特性が向上する。本活物質の比表面積が前記範囲の上限値以下であると、サイクル特性が向上する。
本活物質のタップ密度は、1.2〜2.5g/mLが好ましく、1.4〜2.4g/mLがより好ましく、1.6〜2.3g/mLが特に好ましい。
タップ密度は、タップ密度測定器(例えば、セイシン企業社製、装置名;タップデンサーKYT−4000K)を用い、20mLのプラスチック製タッピングセルに本活物質を充填し、20mmのストロークで700回タッピングを行った後の容積から計算した値をいう。
<複合酸化物の製造方法>
本活物質における複合酸化物(α)は、共沈法により得られる共沈物と、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムとを混合して焼成する方法で製造することが好ましい。
共沈法としては、炭酸塩共沈法とアルカリ共沈法が好ましく、比表面積の高い共沈物が得られやすい点から、炭酸塩共沈法が特に好ましい。
これらの製造方法はそれぞれ公知の手法を用いて行うことができる。
炭酸塩共沈法とは、遷移金属元素を含む金属塩水溶液と、炭酸イオン源を含む水溶液とを混合し、混合溶液中で、遷移金属元素を含む炭酸塩の共沈物を析出させる方法である。炭酸塩共沈法では、比表面積が高い共沈物が得られる。該共沈物を使用すれば、比表面積の高い複合酸化物(α)が得られ、高い放電容量を示す正極活物質が得られる。
炭酸塩共沈法の場合、式(α)におけるx、y、zの比率は、遷移金属元素を含む金属塩水溶液中に含まれる遷移金属の比率によって調整できる。
炭酸塩共沈法に用いる遷移金属元素を含む金属塩としては、遷移金属元素の硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、硫酸塩が挙げられる。材料コストが比較的安価で優れた電池特性が得られることから、遷移金属元素の硫酸塩が好ましく、Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる硫酸塩がより好ましい。
Niの硫酸塩としては、例えば、硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸ニッケル(II)・七水和物、硫酸ニッケル(II)アンモニウム・六水和物などが挙げられる。
Coの硫酸塩としては、例えば、硫酸コバルト(II)・七水和物、硫酸コバルト(II)アンモニウム・六水和物などが挙げられる。
Mnの硫酸塩としては、例えば、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸マンガン(II)アンモニウム・六水和物などが挙げられる。
炭酸塩共沈法における反応中の混合溶液のpHはp7〜9で設定した値で保持していることが好ましい。
炭酸イオン源としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
炭酸塩共沈法における混合溶液には、遷移金属元素の溶解度を調整するために、アンモニア水溶液または硫酸アンモニウム水溶液を加えてもよい。
炭酸塩共沈法を用いた場合、本発明における複合酸化物(α)中のアルカリ金属元素Aは、主として、この炭酸イオン源に由来する。また、後述のリチウム化合物中の不純物にも由来する。式(α)におけるアルカリ金属元素Aの比率bは、後述の洗浄工程によって調整できる。
アルカリ共沈法とは、遷移金属元素を含む金属塩水溶液と、強アルカリを含むpH調整液とを混合し、混合溶液中で、遷移金属元素を含む水酸化物の共沈物を析出させる方法である。アルカリ共沈法では、得られる共沈物の粉体密度が高く、正極活物質層における充填性に優れた正極活物質を得られる。
アルカリ共沈法の場合、式(α)におけるx、y、zの比率は、遷移金属元素を含む金属塩水溶液中に含まれる遷移金属の比率によって調整できる。
アルカリ共沈法に用いる遷移金属元素を含む金属塩としては、炭酸塩共沈法で説明したものと同様のものを使用できる。
アルカリ共沈法に用いるpH調整液としては、強アルカリを含む水溶液が好ましい。強アルカリとしては、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アルカリ共沈法を用いた場合、複合酸化物(α)中のアルカリ金属元素Aは、主として、この強アルカリに由来する。また、後述のリチウム化合物中の不純物にも由来する。式(α)におけるアルカリ金属元素Aの比率bは、後述の洗浄工程によって調整できる。
アルカリ共沈法における混合溶液には、遷移金属元素の溶解度を調整するために、アンモニア水溶液または硫酸アンモニウム水溶液を加えてもよい。
炭酸塩共沈法またはアルカリ共沈法により析出させた共沈物を含む反応溶液から、ろ過、沈降分離、または遠心分離によって水溶液を取り除く工程を実施することで、共沈物を分離できる。ろ過または遠心分離には、加圧ろ過機、減圧ろ過機、遠心分級機、フィルタープレス、スクリュープレス、回転型脱水機などが使用できる。
また、得られた共沈物を洗浄する工程を実施することが好ましい。洗浄により、共沈物に付着しているNaやKなどのイオンを除去でき、複合酸化物(α)に含まれるアルカリ金属の量を適切な範囲に調整できる。共沈物の洗浄方法としては、例えば、ろ過とイオン交換水への分散を繰り返す方法などが挙げられる。
得られた共沈物と、リチウム化合物とを混合して焼成することにより複合酸化物(α)が得られる。該リチウム化合物としては、例えば炭酸リチウム、水酸化リチウムまたは硝酸リチウムが好ましく、安価であることから炭酸リチウムがより好ましい。
式(α)におけるLiの比率aは、共沈物と混合するリチウム化合物に含まれるLiの量で調整できる。
焼成温度は、500〜1000℃が好ましい。焼成温度が、前記範囲内であれば、結晶性の高い複合酸化物を得やすい。焼成温度は、600〜1000℃がより好ましく、800〜950℃が特に好ましい。
焼成時間は、4〜40時間が好ましく、4〜20時間がより好ましい。
焼成は酸素含有雰囲気下で行うことが好ましく、例えば空気を供給しながら行うことが好ましい。
酸素含有雰囲気下で焼成することで、共沈物中の遷移金属元素が充分に酸化され、結晶性が高くなりやすい。
<複合酸化物(α)の表面処理>
本活物質の複合酸化物(α)の表面に化合物(β)および化合物(γ)の一方または両方を存在させる方法としては、粉体混合法、気相法、スプレーコート法、浸漬法等が挙げられる。
粉体混合法では、複合酸化物(α)と化合物(β)および化合物(γ)の一方または両方とを混合した後に、300〜600℃の温度で加熱する方法が好ましい。
気相法とは、SO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンを含む化合物およびAlを含む化合物の一方または両方を気化し、該化合物を複合酸化物(α)の表面に接触させ、反応させることで、複合酸化物(α)の表面に化合物(β)および化合物(γ)の一方または両方を得る方法である。気相法では、必要に応じ接触後に、100〜600℃の温度で加熱してもよい。接触時の気圧は大気圧でもよく、加圧されていてもよく、減圧されていてもよい。
スプレーコート法は、複合酸化物(α)に、Alの陽イオンを含む溶液(以下、溶液(1)という)およびSO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンを含む溶液(以下、溶液(2)という)の一方または両方を噴霧した後、加熱する方法である。
浸漬法とは、溶液(1)および溶液(2)の一方または両方の溶液中に複合酸化物(α)を浸漬し、乾燥またはろ過した後に加熱する方法である。
上記した表面処理方法のなかでも、接触後にろ過または蒸発により溶媒を除去する工程が不要でありプロセスが簡便な点、複合酸化物(α)の表面に化合物(β)および化合物(γ)の一方または両方を均一に形成しやすい点から、スプレーコート法または浸漬法がより好ましく、スプレーコート法が特に好ましい。
本製造方法において、スプレーコート法または浸漬法による表面処理工程は、溶液(1)および溶液(2)の一方または両方と複合酸化物(α)とを接触させる態様として、溶液(1)と溶液(2)とを別々に接触させる態様と、溶液(1)と溶液(2)とを同時に接触させる態様とが挙げられる。
溶液(1)と溶液(2)とを別々に接触させる態様としては、以下3つの態様が挙げられる。複合酸化物(α)に溶液(1)を接触させた後に溶液(2)を接触させる態様。複合酸化物(α)に溶液(2)を接触させた後に溶液(1)を接触させる態様。複合酸化物(α)に一方の溶液と他方の溶液を交互に複数回ずつ接触させる態様。
同時に接触させる態様としては、複合酸化物(α)に溶液(1)および溶液(2)を同時に接触させる態様、溶液(1)および溶液(2)を予め混合して混合液とした後、混合液と複合酸化物(α)とを接触させる態様等が挙げられる。
Alの陽イオンと、SO 2−、PO 3−、およびFからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンとは反応が進みやすいと考えられる。そのため、複合酸化物(α)と溶液(1)および溶液(2)の両方と接触させる場合、複合酸化物(α)に溶液(1)を接触させた後に、溶液(2)を接触させる順番とすることが特に好ましい。
スプレーコート法または浸漬法による表面処理工程は、複合酸化物(α)と溶液(1)および溶液(2)の一方または両方と接触させた後に加熱する工程を有する。
複合酸化物(α)と溶液(1)および溶液(2)とを別々に接触させる場合、加熱する工程は、接触させる工程が総て終了してから行っても、溶液(1)または溶液(2)と接触させる各々の工程が終わる都度行ってもよい。生産性の点から、加熱する工程は、接触させる工程が総て終了してから行うことが好ましい。
溶液(1)は、水溶液中でAlの陽イオンを生じさせる水溶性化合物(1)を溶媒に溶解させたものであることが好ましい。本明細書において、25℃の蒸留水への溶解度(飽和溶液100gに溶けている溶質の質量[g])が2超であることを水溶性という。
溶液(1)に含まれる化合物(1)の例としては、Alの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の無機塩、酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩等の有機塩または有機錯体、アンミン錯体等が挙げられる。なかでも、熱により分解しやすく、水への溶解性が高いことから、硝酸塩、有機酸塩、有機錯体、アンミン錯体が特に好ましい。
溶液(1)には、化合物(1)の溶解性を損なわない範囲で、水溶性アルコールおよびポリオールの一方または両方を含有してもよい。化合物(1)の溶解性を損なわない範囲とは、溶液(1)の溶媒の全質量に対する、水溶性アルコールとポリオールの合計の質量が0〜20%が好ましい。
水溶性アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが挙げられる。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリンが挙げられる。
溶液(1)には、化合物(1)の溶解度を調整するために、pH調整剤を含有させてもよい。pH調整剤としては、後の工程で加熱された時に揮発または分解するものが好ましい。例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、ギ酸、マレイン酸、シュウ酸などの有機酸、またはアンモニアが好ましい。このように、揮発または分解するpH調整剤を用いると、不純物が残留しにくいため、良好な電池特性が得られやすい。
化合物(1)の含有量は、溶液(1)の全質量に対して、Al換算で0.5〜30%が好ましく、2〜20%が特に好ましい。
化合物(1)の含有量が0.5%以上であれば、後の工程で加熱により溶媒を除去しやすいため、好ましい。また、化合物(1)の含有量が30%以下であれば、溶液(1)の粘度が適切な範囲になり、複合酸化物と溶液とを均一に接触させやすい点で好ましい。
溶液(1)を複合酸化物(α)に接触させる際、溶液(1)中のAlは、複合酸化物(α)中のNi、CoおよびMnの合計モル量に対するモル比(接触比)で、0.005〜0.06が好ましい。接触比比が、この範囲にあれば、Al/M比を所望の範囲にできる。接触比は、0.01〜0.05の範囲内がより好ましく、0.015〜0.04の範囲内が特に好ましい。
溶液(2)は、水溶液中で解離して陰イオンを生成させる水溶性化合物(2)を溶解させたものであることが好ましい。
化合物(2)としては、たとえば、HSO、HPO、HF等の酸、またはこれらのアンモニウム塩、アミン塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性や安全性の点で、酸よりも塩を用いることが好ましい。また、加熱する際に分解して除去される点で、アンモニウム塩が特に好ましい。具体的には(NHSO、(NH)HSO、(NHPO、(NHHPO、(NH)HPO、NHF等が好ましい。
溶液(2)には、溶液(1)と同様に水溶性アルコールおよびポリオールの一方または両方や、pH調整剤を含有させてもよい。また、これらの含有量も溶液(1)の場合と同様である。
水溶液化合物(2)の含有量は、上記式(1)で求められる相対量(Xa)が0.001〜0.1の範囲内となるように調整することが好ましい。これにより、得られる正極活物質は、リチウムイオン二次電池の充放電効率を向上できる。陰イオンの相対量(Xa)の値は、0.003〜0.07の範囲内がより好ましく、0.005〜0.05の範囲内が特に好ましい。
スプレーコート法または浸漬法において、溶液(1)および溶液(2)の少なくとも一方と接触させた後の複合酸化物(α)を加熱する。この加熱により、溶液(1)および溶液(2)の少なくとも一方に含まれる水および有機成分等の揮発性の不純物が除去され、複合酸化物(α)の表面の一部または全部に化合物(β)および化合物(γ)の一方または両方が存在する正極活物質が得られる。
加熱は、酸素含有雰囲気下で行うことが好ましい。加熱温度は、250〜700℃が好ましく、350〜600℃がより好ましい。加熱温度が250℃以上であると、複合酸化物(α)の表面に化合物(β)および化合物(γ)が得られる。また残留水分等の揮発性の不純物が少なくなることからリチウムイオン二次電池のサイクル維持率の低下が抑制できる。
また、化合物(β)を非晶質とする場合、加熱温度は250℃〜550℃が好ましく、350〜500℃がより好ましい。加熱温度が550℃以下であると、化合物(β)が結晶化しにくくなる。
加熱時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜18時間がより好ましく、1〜12時間が特に好ましい。加熱時間が上記範囲であると、被覆層が良好に形成されやすい。
加熱時の圧力は特に限定されず、常圧または加圧が好ましく、常圧が特に好ましい。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極(以下、本正極という。)は、本活物質と、バインダーとを含む。
本正極の構成としては、本活物質を用いる以外は従来の正極と同様であってよい。たとえば、本活物質、導電材およびバインダーを含む正極活物質層が、正極集電体上(正極表面)に形成されてなるものが挙げられる。
本正極は、たとえば、本活物質、導電材およびバインダーを含む正極活物質層を正極集電体上に形成することにより製造できる。
正極活物質層を形成する工程は公知の手法を用いて行うことができる。たとえば、まず本活物質、導電材およびバインダーを、媒体に溶解もしくは分散させてスラリーを得る、または本活物質、導電材およびバインダーを、媒体と混練して混練物を得る。次いで、前記スラリーを正極集電体上(正極表面)に塗工する、または前記混練物を正極集電体上(正極表面)に圧延する。これにより正極活物質層を形成できる。
導電材としては、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック等が挙げられる。導電材は、1種でもよく2種以上を使用してもよい。
バインダーとしては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、不飽和結合を有する重合体、アクリル酸系重合体等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。不飽和結合を有する重合体としては、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。
正極集電体としては、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔が挙げられる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池(以下、本電池という)は、本正極と、負極と、非水電解質とを含む。
本電池の構成としては、本正極を用いる以外は従来のリチウムイオン二次電池と同様であってよい。
リチウムイオン二次電池は、典型的には、セパレータをさらに含む。
負極は、負極集電体上に、負極活物質を含有する負極活物質層が形成されてなる。
負極は、たとえば、負極活物質と有機溶媒とを混練することによってスラリーを調製し、調製したスラリーを負極集電体に塗布、乾燥、プレスすることによって製造できる。
負極集電体としては、たとえばニッケル箔、銅箔等の金属箔を用いることができる。
負極活物質としては、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であればよく、たとえば、リチウム金属、リチウム合金、炭素材料、周期表14または15族の金属を主体とする酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等を用いることができる。
負極活物質に使用する炭素材料としては、たとえば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類などが挙げられる。前記コークス類としては、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどが挙げられる。有機高分子化合物焼成体としては、フェノール樹脂、フラン樹脂などを適当な温度で焼成し炭素化したものが挙げられる。
周期表14族の金属としては、例えば、Si、Sn等が挙げられる。なかでも、周期表14族の金属としては、Siが好ましい。
その他に負極活物質として用いることができる材料としては酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物やLi2.6Co0.4N等の窒化物が挙げられる。
非水電解質としては、たとえば、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液、無機固体電解質、電解質塩を混合または溶解させた固体状もしくはゲル状の高分子電解質等が挙げられる。
電解質塩は、リチウムイオン二次電池に使用されている公知のものが使用でき、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、CFSOLi、LiCl、LiBr等が挙げられる。
有機溶媒としては、非水電解液用の有機溶媒として公知のものを採用できる。たとえば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。なかでも、電圧安定性の点からは、有機溶媒としては、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類が好ましい。有機溶媒は、1種でもよく、2種以上で使用してもよい。
無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウムなどが挙げられる。
電解質塩を混合又は溶解させた固体状の高分子電解質に用いられる高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、およびこれらの誘導体、混合物、並びに複合体等が挙げられる。
電解質塩を混合又は溶解させたゲル状の高分子電解質に用いられる高分子化合物としては、フッ素系高分子化合物、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルの共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドの共重合体などが挙げられる。フッ素系高分子化合物としては、ポリ(ビニリデンフルオロライド)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)などが挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、酸化還元反応に対する安定性の観点から、フッ素系高分子化合物が好ましい。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンを代表とする微多孔性ポリオレフィンフイルム、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなるフィルムが挙げられる。
リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等の形状を、用途に応じて適宜選択できる。
本電池は、本正極、負極、非水電解質、セパレータ等を用いてリチウムイオン二次電池を構成することにより製造できる。リチウムイオン二次電池を構成する工程は公知の手法を用いて行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。以下の例1−1〜5−4において、例1−2〜1−5、例2−2、例3−1〜3−3、例4−2および例5−3は本発明の実施例であり、それ以外は比較例である。
<共沈化合物の合成>
[合成例1]共沈化合物Aの合成
硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物、硫酸マンガン(II)・五水和物を、Ni:Co:Mn=20:15:65(モル比)となるように、かつNi、CoおよびMnの合計濃度が1.5モル/Lとなるように蒸留水に溶解して原料溶液を得た。硫酸アンモニウムを濃度が0.75モル/Lとなるように蒸留水に溶解して硫酸アンモニウム水溶液を得た。炭酸ナトリウムを濃度が1.5モル/Lとなるように蒸留水に溶解して炭酸塩水溶液を得た。
次いで、2Lのバッフル付きガラス製反応槽に蒸留水を入れてマントルヒータで30℃に加熱し、反応槽内の溶液を2段傾斜パドル型の撹拌翼で撹拌しながら、前記原料溶液を5.0g/分、硫酸アンモニウム水溶液を0.5g/分の速度で24時間かけて添加し、Ni、CoおよびMnを含む共沈化合物(複合炭酸塩)を析出させた。なお、原料溶液の添加中は、反応槽内のpHを8.0に保つように炭酸塩水溶液を添加した。また、反応槽内の液量が2Lを超えないように連続的に液の抜き出しを行った。
得られた共沈化合物に対して、加圧ろ過と蒸留水への分散を繰り返して洗浄を行い、不純物イオンを取り除いた後に120℃で15時間乾燥させて共沈化合物Aを得た。
共沈化合物AのNi、Co、Mnの含有量をICPで、共沈化合物のNaの含有量を原子吸光法で測定したところ、それぞれ9.6質量%、7.5質量%、30.7質量%、0.40質量%であった。(モル比でNi:Co:Mn:Na=0.193:0.150:0.657:0.020)。
合成例1の原料溶液におけるNi、Co、Mnの比率を、「原料の比率(モル比)」として、表1に示す。また、合成例1で得られた共沈化合物AにおけるNi、Co、Mn、Na、Kの比率を、「共沈化合物の比率(モル比)」として表1に示す。
[合成例2〜4]共沈化合物B〜Dの合成
原料溶液のNi:Co:Mnの比率を表1のように変更した以外は合成例1と同様にして、共沈化合物B〜Dを得た。
得られた各共沈化合物のNi、Co、Mnの含有量をICPで、各共沈化合物のNaの含有量を原子吸光法で測定した。結果を表1に示す。
[合成例5]共沈化合物Eの合成
炭酸塩水溶液として炭酸ナトリウムではなく炭酸カリウムを用いた以外は合成例3と同様に行い、共沈化合物を得た。
得られた共沈化合物EのNi、Co、Mnの含有量をICPで、共沈化合物のKの含有量を原子吸光法で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006209435
<例1−1〜1−7>
[複合酸化物の合成]
共沈化合物Aと炭酸リチウム(Li含有量99.2質量%、Na含有量0.06質量%、遷移金属含有量合計0.01質量%未満)とを、Ni、CoおよびMnの合計モル量(M)に対するLiのモル量の比aを変えて混合した。大気雰囲気下580℃で4時間焼成し、さらに大気雰囲気下850℃で12時間焼成して、例1−1〜1−7の複合酸化物を得た。
共沈化合物Bを使用し、共沈化合物Bと炭酸リチウムの混合比aを表2に記載のとおり変えて混合すること以外は、例1−1〜例1〜7の場合と同様にして、例2−1〜2−4の複合酸化物を得た。
共沈化合物Cを使用し、共沈化合物Cと炭酸リチウムの混合比aを表2に記載のとおり変えて混合すること以外は、例1−1〜例1〜7の場合と同様にして、例3−1〜3−4の複合酸化物を得た。
共沈化合物Dを使用し、共沈化合物Bと炭酸リチウムの混合比aを表2に記載のとおり変えて混合すること以外は、例1−1〜例1〜7の場合と同様にして、例4−1〜4−4の複合酸化物を得た。
共沈化合物Eを使用し、共沈化合物Bと炭酸リチウムの混合比aを表2に記載のとおり変えて混合すること以外は、例1−1〜例1〜7の場合と同様にして、例5−1〜5−4の複合酸化物を得た。
例1−1〜5−4の複合酸化物のa、b、x、y、z、y/x、qは、原料の共沈化合物および炭酸リチウムの仕込み量から計算して求めた。結果を表2にまとめる。
Figure 0006209435
[リチウム二次電池の製造]
例1−1〜例5−4の各複合酸化物を各々正極活物質とし、ポリフッ化ビニリデン(バインダー)を12.0質量%含む溶液(溶媒N−メチルピロリドン)、各例の正極活物質およびアセチレンブラック(導電材)を混合し、さらに、N−メチルピロリドンを添加してスラリーを調製した。このとき、正極活物質とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとは、質量比で80:10:10とした。
次いで、このスラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)に、ドクターブレードを用いて片面塗工した。ドクターブレードのギャップは圧延後のシート厚みが30μmとなるように調整した。これを120℃で乾燥した後、ロールプレス圧延を2回行い、各例の正極体シートを作製した。
前記で得られた各例の正極体シートを正極に用い、ステンレス鋼製簡易密閉セル型のリチウム二次電池をアルゴングローブボックス内で組み立てた。
なお、負極には、厚さ500μmの金属リチウム箔を用い、負極集電体には厚さ1mmのステンレス板を使用し、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用いた。さらに、電解液には、濃度1mol/dmのLiPF溶液を用いた。電解液の溶媒には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比で1:1の混合溶媒を用いた。
[初期特性の評価]
例1−1〜例5−4のリチウム二次電池について、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で4.6Vまで充電し、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で2.0Vまで放電した評価は25℃で行った。このときの放電容量を初期放電容量とした。また、例1−1〜5−4についてp=a+b−(2z+y)の値を計算した。結果を表3にまとめる。
また、例1−1〜1−7、例2−1〜2−4、例3−1〜3−4、例4−1〜4−4、例5−1〜5−4について、それぞれpに対して初期放電容量をプロットした。得られたグラフを図2〜図6に示す。図2〜図6において、破線は最小二乗法で求めた二次方程式の近似曲線である。また、図2〜図6の各図に、本発明の条件(4)におけるpの下限値であるp=−0.08y/x−0.015と、上限値であるp=−0.005を実線で示した。
図2〜図6より、−0.08y/x−0.015≦p≦−0.005の範囲で、p=0の場合よりも高い初期放電容量が得られることが分かる。
図2〜図6の各近似曲線のピークの位置におけるpを求めた。結果を表3に示す。
Figure 0006209435
また、y/xとpの関係を図7に示す。図7において、2本の実線で挟まれた範囲は、−0.08y/x−0.015≦p≦−0.005の範囲(本発明の条件(4)を満たす範囲)を示す。また、2本の破線で挟まれた範囲は、−0.04y/x−0.015≦p≦−0.04y/x−0.005の範囲(pの好ましい範囲)を示す。
また、各例のpと、図2〜図6の各近似曲線のピークの位置におけるpをプロットした。○が実施例のp、●がピークの位置におけるp、×が比較例のpである。
図7に示すように、−0.04y/x−0.015≦p≦−0.04y/x−0.005の範囲で、各近似曲線のピークが見られることが分かる。
<複合酸化物の表面処理>
[例6]
水溶液に対するAl含有量が、Al換算の質量比で8.8%の塩基性乳酸アルミニウム水溶液を乳酸アルミニウム水溶液とした。
例1−4で得られた複合酸化物10gを撹拌しながら、前記乳酸アルミニウム水溶液1.41gをスプレーコート法により噴霧して、複合酸化物と乳酸アルミニウム水溶液とを接触させた。これにより、複合酸化物と乳酸アルミニウム水溶液との混合物を得た。
得られた混合物を、大気雰囲気下にて80℃で4時間乾燥し、次いで大気雰囲気下にて450℃で5時間加熱した。これにより、複合酸化物粒子の表面の一部にAlを含む化合物(β)を有する粒子を得た。得られた粒子を例6の正極活物質とした。
正極活物質に含まれる化合物(β)中のAlの含有量を仕込み量から計算すると、複合酸化物に含まれるNi、Co、Mnの合計モル量(M)に対して、モル比で(Al/M)=0.020であった。
正極活物質の粉末の断面を樹脂で包埋した後に薄辺化し、TEM−EDX分析を行ったところ、Alが正極活物質の内部ではなく表面に存在することが確認できた。正極活物質の粉末のXPS測定を行ったところ、Al(2p)のピーク位置は73.8eVであり、Alのピークと同じであった。正極活物質の粉末のXRD測定を行ったところ、LiSO・HOに基づくピークは見られなかった。
[例7]
水溶液に対するAl含有量が、Al換算の質量比で8.8%の塩基性乳酸アルミニウム水溶液10gに、硫酸アンモニウム(NHSOを0.57gを加えて混合し、アルミニウム硫酸塩含有水溶液を調製した。
例1−4で得られた複合酸化物10gを撹拌しながら、前記アルミニウム硫酸塩含有水溶液1.49gをスプレーコート法により噴霧して、複合酸化物とアルミニウム硫酸塩含有水溶液とを接触させた。これにより、複合酸化物とアルミニウム硫酸塩含有水溶液との混合物を得た。
得られた混合物を、大気雰囲気下にて80℃で4時間乾燥し、次いで大気雰囲気下にて450℃で5時間加熱した。これにより、複合酸化物粒子の表面の一部にAlを含む化合物(β)およびSO 2−を含む化合物(γ)を有する粒子を得た。得られた粒子を例7の正極活物質とした。
正極活物質に含まれる化合物(β)中のAlの含有量を仕込み量から計算すると、複合酸化物に含まれるNi、Co、Mnの合計モル量に対して、モル比で(Al/M)=0.025であった。正極活物質に含まれる化合物(γ)中のSO 2−の相対量(Xa)を仕込み量から計算すると、0.00625であった。
正極活物質の粉末の断面を樹脂で包埋した後に薄辺化し、TEM−EDX分析を行ったところ、Alが正極活物質の内部ではなく表面に存在することが確認できた。正極活物質の粉末のXPS測定を行ったところ、Al(2p)のピーク位置は73.8eVであり、Alのピークと同じであった。正極活物質の粉末のXRD測定を行ったところ、2θ=22〜34度の範囲でLiSO・HOに帰属される複数のピークが見られたことから、SO 2−はLiSOの水和物として存在していると考えられる。
[リチウム二次電池の製造]
例6、例7で得られた正極活物質を用いた他は、例1−1〜例5−4と同様にして、例6、例7のリチウム二次電池を製造した。
[初期特性の評価]
例1−4、例6、例7のリチウム二次電池について、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で4.6Vまで充電し、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で2.0Vまで放電した。評価は25℃で行った。このときの放電容量(mAh/g)および充放電効率(%)をそれぞれ初期放電容量および初期効率とした。
[サイクル特性]
例1−4、例6、例7のリチウム二次電池について、上記初期特性評価に次いでサイクル特性の評価を行った。すなわち、正極活物質1gにつき200mAの負荷電流で4.6Vまで充電し、正極活物質1gにつき200mAの負荷電流で2.0Vまで高レート放電する充放電サイクルを50回繰り返した。評価は25℃で行った。このとき、50サイクル目の放電容量を2サイクル目の放電容量で割った値を算出し、この値をサイクル維持率とした。結果を表4に示す。
Figure 0006209435
表4の例1−4と例6、例7の結果より、複合酸化物の表面にAlを含む化合物存在させるとサイクル維持率が大幅に向上することが分かる。また、表4の例6と例7を比べると、複合酸化物の表面にSO 2−とLiを含む化合物を存在させている例の場合に、特に高い初期効率が得られている。

Claims (6)

  1. LiNiCoMnMe(ただし、x+y+z=1であり、2≦c≦3である。AはLi以外のアルカリ金属元素であり、MeはLi、A、Ni、Co、Mn、O以外の元素である。)で表され、下記条件(1)〜(5)を満たす複合酸化物(α)を有し、
    前記複合酸化物の表面にAlを含む化合物(β)が存在しており、
    前記複合酸化物の表面にSO 2− 、PO 3− 、およびF から選ばれる少なくとも1種類の陰イオンとLi とを含む化合物(γ)が存在している正極活物質。
    (1)0≦y/x≦1である。
    (2)q=z−xで表されるqが0.15≦q≦0.60である。
    (3)0.001≦b≦0.06である。
    (4)p=a+b−(2z+y)で表されるpが−0.08y/x−0.015≦p≦−0.005である。
    (5)0≦w≦0.1である。
  2. pが−0.04y/x−0.015≦p≦−0.04y/x−0.005である請求項1に記載の正極活物質。
  3. AがNaおよびKの一方または両方である請求項1または2に記載の正極活物質。
  4. 前記化合物(γ)に含まれる前記陰イオンの量は、下式(1)で求められる陰イオンの相対量(Xa)が0.001〜0.1の範囲内である請求項1から3のいずれか1項に記載の正極活物質。
    陰イオンの相対量(Xa)=Σ(f ×v )/fa・・・(1)
    :化合物(γ)に含まれる各陰イオンのモル量
    :各陰イオンの価数
    :複合酸化物(α)に含まれるアルカリ金属元素の合計モル量
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の正極活物質とバインダーとを含むリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 請求項に記載の正極と負極と非水電解質とを含むリチウムイオン二次電池。
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