JP6851529B2 - 遷移金属含有水酸化物 - Google Patents

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Description

本発明は、正極活物質の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池の正極には、リチウム含有複合酸化物が正極活物質として使用されている。前記リチウム含有複合酸化物は、Ni、Co、Mnなどの遷移金属元素とLiとを必須成分として含み、ドープ元素である他の金属元素を任意成分として含む複合酸化物が一般的に使用されている。また、前記リチウム含有複合酸化物は、結晶構造が、金属原子層とリチウム原子層と酸素原子層と有する層状構造である。
近年、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を高くすることが求められており、正極活物質として、リチウムイオン二次電池の放電および充電容量を高くできる正極活物質が求められている。このような高容量のリチウムイオン二次電池を得ることができる正極活物質として、リチウムマンガンリッチ系の正極活物質(以下、リチウムリッチ系材料という)が期待されている。リチウムリッチ系材料は、空間群がC2/mの結晶構造と空間群がR−3mの結晶構造とを有する固溶体のリチウム含有複合酸化物を含む。
特許文献1には、リチウム二次電池用正極活物質のリチウムリッチ系材料として、α−NaFeO型結晶構造を有し、組成式Li1+αMe1−α(MeはCo、Ni及びMnを含む遷移金属、α>0)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含有し、1900ppm以上8000ppm以下のNaが含まれ、粒度分布測定における50%粒子径(D50)が5μm以下であるものが記載されている。そして、特許文献1のリチウムリッチ系材料は、金属を含む水酸化物とリチウム化合物とを混合し、焼成して製造されている。
しかし、特許文献1に記載されているリチウムリッチ系材料は、リチウムイオン二次電池に使用した場合に、放電容量とエネルギー密度が十分に高いものとはいえない。
特開2014−029828号公報
上記したとおり、リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度が求められているが、従来のリチウムリッチ系材料を使用したリチウムイオン二次電池では、十分に高いエネルギー密度を実現できていなかった。そして、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度をより高くするためには、正極活物質としてリチウムイオン二次電池の放電容量をより高くできる材料が求められている。
本発明は、リチウムイオン二次電池の放電容量を高くできる正極活物質の製造方法の提供を目的とする。
本発明の正極活物質の製造方法は、遷移金属含有水酸化物とリチウム化合物とを混合し、焼成して、リチウム含有複合酸化物を得る工程を有し;遷移金属含有水酸化物は、窒素ガスをプローブとした吸着等温線から求めた相対圧力(P/P。Pは圧力(単位:Pa)であり、Pは飽和蒸気圧(単位:Pa)である。)が0.99における単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g以上であり;遷移金属含有水酸化物とリチウム化合物とは、前記遷移金属含有水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対するリチウム化合物のリチウムモル量の比(Li/Me)が1.1以上で混合され;焼成は800〜1100℃で行われることを特徴とする。
本発明の正極活物質の製造方法によれば、リチウムイオン二次電池の初期放電容量を高くできる正極活物質が得られる。
実施例の例1〜4で使用する遷移金属含有水酸化物の窒素ガスをプローブとして用いた吸着等温線を示す図。 実施例の例1〜4で使用する遷移金属含有水酸化物の、BJH法により計算した細孔分布について、横軸細孔径に対する縦軸微分細孔容積を示す図。 実施例の例5〜7で使用する遷移金属含有水酸化物の窒素ガスをプローブとして用いた吸着等温線を示す図。 実施例の例5〜7で使用する遷移金属含有水酸化物の、BJH法により計算した細孔分布について、横軸細孔径に対する縦軸微分細孔容積を示す図。
本明細書において「水酸化物」は、水酸化物、および水酸化物が一部酸化しているオキシ水酸化物を含む。すなわち、Me(OH)と記載している化合物(ただし、MeはLi以外の金属元素である)は、Me(OH)、MeOOHおよびこれらの混合物を含む。
本明細書において、「Li」との表記は、特に言及しない限り当該金属単体ではなく、Li元素であることを示す。Ni、Co、Mn等の他の元素の表記も同様である。
(正極活物質の製造方法)
本発明の正極活物質の製造方法(以下、本製造方法という)は、遷移金属含有水酸化物とリチウム化合物とを混合し、焼成して、リチウム含有複合酸化物を得る工程を有し;遷移金属含有水酸化物は、窒素ガスをプローブとした吸着等温線から求めた相対圧力(P/P。Pは圧力(単位:Pa)であり、Pは飽和蒸気圧(単位:Pa)である。)が0.99における単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g以上であり;遷移金属含有水酸化物とリチウム化合物とは、前記遷移金属含有水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対するリチウム化合物のリチウムモル量の比(Li/Me)が1.1以上で混合され;焼成は800〜1100℃で行われる。
(遷移金属含有水酸化物)
本製造方法で使用する遷移金属含有水酸化物(以下、水酸化物と略す。)は、窒素ガスをプローブとした吸着等温線から求めた相対圧力(P/P。Pは圧力(単位:Pa)であり、Pは飽和蒸気圧(単位:Pa)である。)が0.99における単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g以上である。このような水酸化物を使用することにより、タップ密度が高く、リチウムイオン二次電池の放電容量を高くできる正極活物質が得られる。リチウムイオン二次電池の放電容量が高くなる理由は定かではないが、焼成後の正極活物質の二次粒子内部に適切な細孔構造が形成されていることが一因であると考えられる。
前記単位質量あたりの細孔容積は、0.057cm/g以上が好ましく、0.060cm/g以上がより好ましい。前記単位質量あたりの細孔容積が大きくなるほど、焼成後の正極活物質に電解液が含浸しやすくなり、リチウムイオン二次電池の放電容量が高くなると考えられる。一方で、前記単位質量あたりの細孔容積は、0.15cm/g以下が好ましく、0.12cm/g以下がより好ましい。
前記単位質量あたりの細孔容積は、実施例に記載の方法で確認および算出する。
前記水酸化物は、窒素ガス吸着法の吸着等温線からBJH法で求めた微分細孔容積が極大値を有し、該極大値における微分細孔容積が0.8mm/(g・nm)以上であるものが好ましい。このような水酸化物を使用するとリチウムイオン二次電池の放電容量をさらに高くできる正極活物質が得られ、さらに正極活物質のタップ密度を高くできる。リチウムイオン二次電池の放電容量が高くなる理由は定かではないが、焼成後の正極活物質の二次粒子内部により適切な細孔構造が形成されることが一因であると考えられる。また、正極活物質のタップ密度が高くなると、リチウムイオン二次電池用の正極中に含まれる正極活物質の体積を大きくできる。その結果、単位体積あたりの放電容量が高くなり、単位体積あたりのエネルギー密度が向上する。
前記微分細孔容積の極大値および該極大値における微分細孔容積は、窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法により細孔分布の測定に基づいて確認および算出する。具体的には、実施例に記載の方法で確認および算出する。
水酸化物の前記微分細孔容積の極大値は、1.8mm/(g・nm)以下であることより好ましい。前記微分細孔容積の極大値が1.8mm/(g・nm)より高くなると、焼成後の正極活物質のタップ密度が低くなるおそれがある。タップ密度が低くなると、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度が低くなる。焼成後の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の放電容量およびタップ密度を高くする点で、前記細孔容積の極大値は、0.9〜1.7mm/(g・nm)がさらに好ましく、1.0〜1.6mm/(g・nm)が特に好ましい。
前記水酸化物は、細孔径が10〜100nmの範囲で前記微分細孔容積の極大値を有することが好ましい。微分細孔容積の極大値をとる細孔径が10〜100nmであれば、リチウムイオン二次電池の放電容量が高い正極活物質が得られるため好ましい。微分細孔容積の極大値は、細孔径が10〜50nmの範囲に存在することがより好ましく、10〜30nmの範囲に存在することがさらに好ましい。
前記水酸化物の組成は、下記式1で表されることが好ましい。
NiαCoβMnγδ(OH) 式1
ただし、Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、α+β+γ+δ=1であり、0.3≦α≦0.5、0≦β≦0.1、0.5≦γ≦0.7、0≦δ≦0.1である。
αは、水酸化物に含まれるNiのモル比である。αが前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量と放電電圧を高くできる正極活物質が得られる。αは同様の理由で、0.4≦α≦0.5であることが好ましい。
βは、水酸化物に含まれるCoのモル比である。βが前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量と放電電圧を高くできる正極活物質が得られる。βは同様の理由で、0≦β≦0.05であることが好ましい。
γは、水酸化物に含まれるMnのモル比である。γが前記範囲内にあり、後述するLi/X比が1.1以上とすることで、本製造方法ではリチウムリッチ系材料が得られる。γは、リチウムイオン二次電池の放電容量と放電電圧を高くできる正極活物質が得られる点で、0.5≦γ≦0.6であることが好ましい。
水酸化物には、必要に応じて他の金属元素Mを含んでいてもよい。リチウムイオン二次電池の放電容量が高い正極活物質を得る観点から、他の金属元素Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素が好ましい。
δは、水酸化物に含まれるMのモル比である。δは、0≦δ≦0.05であることが好ましい。
水酸化物の比表面積は、3〜60m/gが好ましく、5〜40m/gがより好ましい。水酸化物の比表面積が前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量が高い正極活物質が得られる。なお、水酸化物の比表面積は、実施例に記載の方法で測定される。水酸化物の比表面積は乾燥状態によって値のバラツキが大きい。そのため、本明細書においては、水酸化物の比表面積は、水酸化物を120℃で15時間乾燥した後に測定した値とする。
水酸化物の平均粒子径(D50)は、3〜15.5μmが好ましく、3.5〜12.5μmがより好ましく、4〜10.5μmがさらに好ましい。水酸化物のD50が前記範囲内であれば、焼成後の正極活物質のD50を好ましい範囲に制御しやすい。
本明細書において、水酸化物のD50は、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径である。そして、前記粒度分布は、レーザー散乱粒度分布測定装置(たとえば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置等)で測定した頻度分布および累積体積分布曲線から求められる。測定は、水酸化物を水媒体中に超音波処理等で充分に分散させた状態で行われる。
水酸化物のタップ密度は、1〜2g/cmが好ましく、1.2〜2g/cmがより好ましく、1.2〜1.5g/cmがさらに好ましい。水酸化物のタップ密度が前記範囲内であれば、正極活物質のタップ密度を高くしやすい。
本明細書において、水酸化物のタップ密度は、例えば、タッピング装置(セイシン企業社製、KYT−4000K)に取り付け、700回タップを行って測定した値である。タップ後の試料の体積(単位:cm)に対する容器に加えた試料の質量(単位:g)の比(単位:g/cm)から算出した。
(水酸化物の製造例)
前記水酸化物の製造例を以下に示す。本発明においては、水酸化物の製造方法は下記方法に限定されない。
水酸化物は、アルカリ共沈法で製造することが好ましい。アルカリ共沈法とは、金属塩の水溶液と、強アルカリを含むpH調整液とを連続的に反応槽に供給して混合し、混合液中のpHを一定に保ちながら、水酸化物を析出させる方法である。水酸化物を共沈法で製造すれば、金属組成が均一に固溶した水酸化物が得られるため好ましい。アルカリ共沈法においては、反応条件を制御することで上記した微分細孔容積の水酸化物を得ることができる。下記で説明するとおり、反応時の温度、反応時間、混合液のpH、錯化剤として加えるNHの量が細孔容積を制御するパラメーターとなる。
金属塩としては、各遷移金属元素の硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、硫酸塩が挙げられ、材料コストが比較的安価であり、優れた電池特性が得られる点から、硫酸塩が好ましい。
本製造方法においては、水酸化物にNi、CoおよびMnを含むことが好ましい。Ni、CoおよびMnを含む硫酸塩としては、以下が挙げられる。
Niの硫酸塩としては、たとえば、硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸ニッケル(II)・七水和物、硫酸ニッケル(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Coの硫酸塩としては、たとえば、硫酸コバルト(II)・七水和物、硫酸コバルト(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Mnの硫酸塩としては、たとえば、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸マンガン(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
水酸化物の製造において、金属塩水溶液におけるNi、Co、MnおよびMの比率は、水酸化物に含まれるNi、Co、MnおよびMの比率と同じにする。
金属塩水溶液中のNi、Co、MnおよびMの合計濃度は、0.1〜3mol/kgが好ましく、0.5〜2.5mol/kgがより好ましい。Ni、Co、MnおよびMの合計濃度が前記下限値以上であれば、生産性に優れる。Ni、Co、MnおよびMの合計濃度が前記上限値以下であれば、金属塩を水に充分に溶解できる。
金属塩水溶液は、水以外の水性媒体を含んでいてもよい。
水以外の水性媒体としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。水以外の水性媒体の割合は、安全面、環境面、取扱性、コストの点から、水100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0〜10質量部がより好ましく、0〜1質量部が特に好ましい。
pH調整液としては、強アルカリを含む水溶液が好ましい。
強アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
混合液には、Ni、Co、MnおよびMの各イオンの溶解度を調整するために、錯化剤を加えてもよい。錯化剤としては、アンモニア水溶液または硫酸アンモニウム水溶液が挙げられる。
金属塩水溶液とpH調整液とは、反応槽中で撹拌しながら混合することが好ましい。
撹拌装置としては、スリーワンモータ等が挙げられる。撹拌翼としては、アンカー型、プロペラ型、パドル型等が挙げられる。
反応温度は、反応促進の点から、20〜80℃が好ましく、25〜60℃がより好ましい。
金属塩水溶液とpH調整液との混合は、水酸化物の酸化を抑制する点から、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下等の不活性雰囲気化で行うことが好ましい。製造コストの点から、窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
金属塩水溶液とpH調整液との混合中は、共沈反応を適切に進める点から、反応槽内のpHを10〜12の範囲で設定したpHに保つことが好ましい。混合液のpHを10以上で行う場合、共沈物は水酸化物とみなされる。
水酸化物を析出させる方法としては、反応槽内の混合液をろ材(ろ布等)を用いて抜き出して水酸化物を濃縮しながら析出反応を行う方法(以下、濃縮法と記す。)と、反応槽内の混合液をろ材を用いずに水酸化物とともに抜き出して水酸化物の濃度を低く保ちながら析出反応を行う方法(以下、オーバーフロー法と記す。)の2種類が挙げられる。粒度分布の広がりを狭くできる点から、濃縮法が好ましい。
得られた水酸化物は、洗浄して不純物イオンを取り除くことが好ましい。不純物イオンが残ると、焼成して得られた正極活物質の表面および結晶内に不純物が存在し、電池特性に悪影響を与えるおそれがある。
洗浄方法としては、加圧ろ過と蒸留水への分散とを繰り返し行う方法等が挙げられる。
洗浄を行う場合、水酸化物を蒸留水へ分散させたときの上澄み液またはろ液の電気伝導度が50mS/m以下になるまで繰り返すことが好ましく、20mS/m以下になるまで繰り返すことがより好ましい。
また、水酸化物の洗浄後には、必要に応じて水酸化物を乾燥させることが好ましい。
水酸化物の乾燥温度は、60〜200℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。
乾燥温度が前記下限値以上であれば、乾燥時間を短縮できる。乾燥温度が前記上限値以下であれば、水酸化物の酸化の進行を抑えることができる。
乾燥時間は、水酸化物の量により適切に設定すればよく、1〜300時間が好ましく、5〜120時間がより好ましい。
(混合および焼成)
本製造方法では、水酸化物とリチウム化合物とは、水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対するリチウム化合物のリチウムモル量の比(Li/Me)が1.1以上で混合する。
Li/Me比が前記した範囲で混合して、焼成すれば、リチウムリッチ系材料が得られる。Li/Me比は、1.1〜1.5が好ましく、1.1〜1.3がより好ましく、1.15〜1.25がさらに好ましい。Li/Me比は、正極活物質の組成を決定する要素である。すなわち、目的とする正極活物質の組成に応じて、Li/Me比は上記した範囲の中で適宜設定される。
前記リチウム化合物は、炭酸リチウム、水酸化リチウムおよび硝酸リチウムからなる群から選ばれる1種が好ましい。製造工程での取扱いの容易性の点から、炭酸リチウムがより好ましい。
水酸化物とリチウム化合物とを混合する方法は特に限定されず、例えば、ロッキングミキサ、ナウタミキサ、スパイラルミキサ、カッターミル、Vミキサ等を使用することができる。
本製造方法では、前記した水酸化物とリチウム化合物とを混合する際に、水酸化物に含まれていない他の金属元素を含む化合物を混合してよい。他の金属元素は、式1における金属元素Mと同様の金属元素を使用できる。Mを含む化合物としては、Mを含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびフッ化物からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。これら1種以上の化合物を使用すれば、焼成工程において、不純物が揮発し、純度の高い正極活物質が得られる。
本製造方法では、上記した混合により得られた混合物を800〜1100℃で焼成して、リチウム含有複合酸化物を得る。
混合物を焼成する温度(以下、焼成温度という。)は、800〜1100℃である。焼成温度は、850℃以上が好ましく、900℃以上がより好ましい。焼成温度が850℃以上であれば、空間群C2/mの結晶構造のドメインが成長しやすい。また、焼成温度は、1070℃以下がより好ましく、1050℃以下がさらに好ましい。焼成温度が1100℃以下であれば、焼成過程においてLiの揮発を抑制でき、混合時のLi/Me比に近いリチウム含有複合酸化物が得られる。
焼成装置としては、電気炉、連続焼成炉、ロータリーキルン等が挙げられる。
焼成時には、水酸化物を酸化する必要があることから、大気下で焼成を行うことが好ましく、空気を供給しながら行うことが特に好ましい。
空気の供給速度は、焼成装置の炉内容積1Lあたり、10〜200mL/分が好ましく、40〜150mL/分がより好ましい。焼成時に空気を供給することによって、水酸化物に含まれる金属元素が充分に酸化される。その結果、結晶性が高く、かつ空間群C2/mの結晶構造および空間群R−3mの結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物が得られる。
焼成時間は、4〜40時間が好ましく、4〜20時間がより好ましい。
焼成は、1段焼成であってもよく、800〜1100℃の本焼成を行う前に仮焼成を行う2段焼成であってもよい。Liがリチウム含有複合酸化物中に均一に拡散しやすい点から、2段焼成が好ましい。2段焼成を行う場合、本焼成の温度を上記した焼成温度の範囲で行う。そして、仮焼成の温度は、400〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましい。
(リチウム含有複合酸化物)
本製造方法で得られるリチウム含有複合酸化物は、下記式2で表される化合物(以下、複合酸化物(2)と記す。)が好ましい。
LiNiCoMn 式2
式2において、Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、a+b+c+d+e=2であり、1.05≦a≦1.20であり、0.25≦b≦0.45であり、0≦c≦0.1であり、0.45≦d≦0.65であり、0≦e≦0.1である。
aは、複合酸化物(2)に含まれるLiのモル数である。aは、1.05≦a≦1.20を満たし、1.05≦a≦1.15を満たすことが好ましく、1.07≦a≦1.11を満たすことがさらに好ましい。aが前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量を高くできる正極活物質が得られる。
bは、複合酸化物(2)に含まれるNiのモル数である。bは、0.25≦b≦0.45を満たし、0.35≦b≦0.45を満たすことが好ましい。bが前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量と放電電圧を高くできる正極活物質が得られる。
cは、複合酸化物(2)に含まれるCoのモル数である。cは、0≦c≦0.10を満たし、0≦c≦0.05を満たすことが好ましい。cが前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量と放電電圧を高くできる正極活物質が得られる。
dは、複合酸化物(2)に含まれるMnのモル数である。dは、0.45≦d≦0.65を満たし、0.45≦d≦0.55を満たすことが好ましい。dが前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量と放電電圧を高くできる正極活物質が得られる。
複合酸化物(2)は、必要に応じて他の金属元素Mを含んでいてもよい。他の金属元素Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素である。複合酸化物(2)を含む正極活物質を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を高くしやすく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下を抑えやすい点から、他の金属元素Mは、Ti、ZrおよびAlからなる群から選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。
eは、複合酸化物(2)に含まれるMのモル数である。eは、0≦e≦0.1を満たし、0≦e≦0.05を満たすことが好ましく、0≦e≦0.03を満たすことがより好ましい。
複合酸化物(2)は、空間群C2/mの層状岩塩型結晶構造を有するLi(Li1/3Mn2/3)O(リチウム過剰相)と空間群R−3mの層状岩塩型結晶構造を有するLiM’O(ただし、M’は、Ni、Co、MnおよびMからなる群から選ばれる1種以上の元素を必須として含み、他の金属元素Mを任意に含むものである。)との固溶体である。複合酸化物(2)がこれらの結晶構造を有することは、X線回折測定により確認できる。
典型的には、X線回折測定において、空間群C2/mの(020)面のピークが、2θ=20〜22degに見られる。また、X線回折測定において、空間群R−3mの(003)面のピークが、2θ=18〜20degに見られる。
リチウム含有複合酸化物の比表面積は、比表面積は、0.5〜10m/gが好ましく、0.7〜5m/gがより好ましい。リチウム含有複合酸化物の比表面積が前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量を高くできる。なお、リチウム含有複合酸化物の比表面積は、実施例に記載の方法で測定される。
リチウム含有複合酸化物の平均粒子径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜12μmがより好ましく、4〜10μmがさらに好ましい。リチウム含有複合酸化物のD50が前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量を高くできる。
本明細書において、リチウム含有複合酸化物のD50は、水酸化物のD50の測定方法と同様の方法で行われる。
リチウム含有複合酸化物のタップ密度は、1.2〜2.2g/cmが好ましく、1.3〜2.2g/cmがより好ましく、1.5〜2.2g/cmがさらに好ましい。リチウム含有複合酸化物のタップ密度が前記範囲内であれば、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を高くできる。
本明細書において、リチウム含有複合酸化物のタップ密度は、例えば、タッピング装置(セイシン企業社製、KYT−4000K)に取り付け、700回タップを行って測定した値である。タップ後の試料の体積(単位:cm)に対する容器に加えた試料の質量(単位:g)の比(単位:g/cm)から算出した。
(被覆工程)
本発明の正極活物質の製造方法は、前記リチウム含有複合酸化物の表面に、被覆層を形成する工程を有してもよい。ここで、被覆とは、前記二次粒子の表面の一部または全部に、化学的または物理的にリチウム含有複合酸化物とは異なる組成の物質が付着または吸着している状態をいう。
被覆層を形成する工程は、例えば、前記リチウム含有複合酸化物に所定量のリチウム含有複合酸化物とは異なる組成の物質を含む液(コート液)を噴霧し、コート液の溶媒を焼成により除去する、または、コート液中にリチウム含有複合酸化物を浸漬し、ろ過による固液分離、焼成による溶媒除去を行う、ことによって実施できる。
リチウム含有複合酸化物の二次粒子の表面に被覆層を有すると、リチウム含有複合酸化物の金属成分が電解液に溶出しにくくなる。その結果、リチウムイオン二次電池のサイクル特性に優れた正極活物質が得られる。
前記リチウム含有複合酸化物とは異なる組成の物質としては、金属を含む化合物が挙げられる。前記化合物としては、周期表における3族〜13族の金属を含む化合物または、リチウム化合物が好ましい。
周期表における3族〜13族の金属を含む化合物の金属としては、Al、Y、Ga、In、La、Pr、Nd、Gd、Dy、ErおよびYbから成る群から選ばれる1種以上の金属が好ましい。化合物としては、酸化物、ハロゲン化物、リン酸化物、硫酸化物等が挙げられる。電気化学的に安定な被覆層を形成できる点で、Al、Y、Gd、ErO、AlF、Al(PO、またはAl(SOが好ましい。
前記リチウム化合物としては、LiとS、BおよびFから成る群から選ばれる1種以上とを含む化合物が挙げられる。具体的には、LiSO、LiBO、Li、LiFまたはこれらの水和物が挙げられる。
被覆層の質量は、リチウム含有複合酸化物の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
二次粒子の表面の被覆層は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)のような電子顕微鏡により存在を確認できる。また、電子顕微鏡に付属するEDX(エネルギー分散型X線分光法)により被覆層を構成する原子を確認できる。被覆量は正極活物質を酸で溶解させた後、ICP(誘導結合プラズマ)測定することで定量することができる。
(リチウムイオン二次電池用正極)
リチウムイオン二次電池用正極は、本製造方法で得られた正極活物質を含むものである。具体的には、本製造方法で得られた正極活物質、導電材およびバインダを含む正極活物質層が、正極集電体上に形成されたものである。
導電材としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、黒鉛、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
バインダとしては、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、不飽和結合を有する重合体または共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等)、アクリル酸系重合体または共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等)等が挙げられる。
正極集電体としては、アルミニウム箔、ステンレススチール箔等が挙げられる。
本正極は、たとえば、下記の方法によって製造できる。
本製造方法で得られた正極活物質、導電材およびバインダを、媒体に溶解または分散させてスラリーを得る。得られたスラリーを正極集電体に塗工し、乾燥等により、媒体を除去することによって、正極活物質層を形成する。必要に応じて、正極活物質層を形成した後に、ロールプレス等で圧延してもよい。これにより、本正極を得る。
本正極の他の製造方法は、本製造方法で得られた正極活物質、導電材およびバインダを、媒体と混練して混練物を得る。次いで、得られた混練物を正極集電体に圧延することにより本正極を製造する。
本正極は、本製造方法で得られた正極活物質を含む。そのため、本正極をリチウムイオン二次電池に用いれば、放電容量を高くできる。
(リチウムイオン二次電池)
本発明のリチウムイオン二次電池(以下、本電池と記す。)は、本正極を有するものである。具体的には、本正極、負極、セパレータおよび非水電解質を含むものである。
(負極)
負極は、負極活物質を含むものである。具体的には、負極活物質、必要に応じて導電材およびバインダを含む負極活物質層が、負極集電体上に形成されたものである。
負極活物質は、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であればよい。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、周期表14族の金属を主体とする酸化物、周期表15族の金属を主体とする酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。
負極活物質の炭素材料としては、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられる。
負極活物質に使用する周期表14族の金属としては、Si、Snが挙げられ、Siが好ましい。
他の負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、その他の窒化物等が挙げられる。
負極の導電材、バインダとしては、正極と同様のものを用いることができる。
負極集電体としては、ニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極は、たとえば、下記の方法によって製造できる。
負極活物質、導電材およびバインダを、媒体に溶解または分散させてスラリーを得る。
得られたスラリーを負極集電体に塗布、乾燥、プレスすること等によって媒体を除去し、負極を得る。
(非水電解質)
非水電解質としては、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液、無機固体電解質、電解質塩を混合または溶解させた固体状またはゲル状の高分子電解質等が挙げられる。
有機溶媒としては、非水電解液用の有機溶媒として公知のものが挙げられる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。電圧安定性の点からは、環状カーボネート類(プロピレンカーボネート等)、鎖状カーボネート類(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)が好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する材料であればよい。無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
固体状高分子電解質に用いられる高分子としては、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、その架橋体等)、ポリメタクリレートエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物等が挙げられる。該高分子化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
ゲル状高分子電解質に用いられる高分子としては、フッ素系高分子化合物(ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、その架橋体等)等が挙げられる。共重合体に共重合させるモノマとしては、ポリプロピレンオキサイド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。ゲル状高分子電解質に用いられる高分子としては、酸化還元反応に対する安定性の点から、フッ素系高分子化合物が好ましい。
電解質塩は、リチウムイオン二次電池に用いられるものであればよい。電解質塩としては、LiClO、LiPF、LiBF、CHSOLi等が挙げられる。
(セパレータ)
正極と負極の間には、短絡を防止するためにセパレータを介在させる。セパレータとしては、多孔膜が挙げられる。非水電解液は該多孔膜に含浸させて用いる。また、多孔膜に非水電解液を含浸させてゲル化させたものをゲル状電解質として用いてもよい。
電池外装体の材料としては、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウムまたはその合金、ニッケル、チタン、樹脂材料、フィルム材料等が挙げられる。
本電池の形状としては、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
本電池は、本正極を有するため、放電容量とエネルギー密度が高い。
本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。以下の例において、例1〜4は実施例であり、例5〜7は参考例である。例1は参考例とする。
[単位質量あたりの細孔容積および細孔容積分布の測定]
水酸化物について、次の条件及び手順に沿って単位質量あたりの細孔容積と細孔容積分布を測定した。細孔容積と細孔容積分布の測定には、日本ベル社製のBELSORP−max及び付属の解析ソフト(BEL解析ソフトウェア)を用いた。
水酸化物1〜3gを測定用のサンプル管に入れ、105℃で1h真空乾燥する。次に、液体窒素温度(77K)で窒素ガスを用いて、相対圧力(P/P。P=約100kPa)が0から1の範囲内で吸着側および脱離側の吸着等温線を測定した。吸着側の相対圧力P/Pが0.99のときの窒素吸着量V(単位:mL(STP)/g)から吸着窒素分子が液体状態で細孔を満たしていると仮定して、以下の計算式から単位質量あたりの細孔容積V(単位:cm/g)を算出した。
=(V×M)/(22414×ρ)
ここで、Mは吸着質の分子量(単位:g/mol)、ρ(単位:g/cm)は吸着質の液体状態での密度を表す。係数22414の単位は、mL(STP)/molである。
窒素吸着においては、M=28.01348、ρ=0.807g/cmを用いた。
吸着側の等温線を用いてBJH法により計算して細孔分布を算出した。横軸に細孔径dp(単位:nm)、縦軸に微分細孔容積ΔVp/Δdp(単位:mm/(g・nm))をプロットした時の、微分細孔容積の極大値の有無およびその極大値の大きさを評価した。
[平均粒子径(D50)]
水酸化物およびリチウム含有複合酸化物の平均粒子径(D50)は、次のように求めた。水中に超音波処理により各試料を充分に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、MT−3300EX)により測定を行い、頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得た。得られた累積体積分布曲線から各試料の平均粒子径(D50)を求めた。
[比表面積]
水酸化物またはリチウム含有複合酸化物の比表面積は、比表面積測定装置(マウンテック社製、HM model−1208)を用い、窒素吸着BET法により算出した。脱気は、200℃、20分の条件で行った。
[タップ密度]
水酸化物またはリチウム含有複合酸化物のタップ密度は、タッピング装置(セイシン企業社製、KYT−4000K)に取り付け、700回タップを行って測定した。タップ後の試料の体積に対する容器に加えた試料の質量(単位:g)の比から算出した。
[組成分析]
リチウム含有複合酸化物の化学組成は、プラズマ発光分析装置(SIIナノテクノロジー社製、SPS3100H)により分析した。組成分析から求めたLi、Ni、Co、Mnのモル量の比から、LiNiCoMnにおけるa、b、c、dおよびeを算出した。
(例1)
水酸化物の製造:
硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸マンガン(II)・水和物および硫酸アンモニウムを、NiおよびMnのモル比が0.42:0.58で、金属の合計濃度が1.5mol/kgとなり、かつ硫酸アンモニウムの濃度が0.075mol/kgとなるように秤量し、蒸留水に溶解して金属塩の水溶液を調製した。また、水酸化ナトリウムを水に溶解させ、3mol/kgの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
容量が2Lである反応槽に蒸留水を入れて50℃に加熱した。反応槽内の初期溶液を撹拌動力1.66kw/mで撹拌しながら、前記金属塩の水溶液を添加速度5g/minで、14時間かけて添加した。
金属塩の水溶液の添加中は、反応槽内のpHを10.5に保つように水酸化ナトリウム水溶液を添加し、共沈法によりNiおよびMnを含む水酸化物を析出させた。析出中は、反応槽内に窒素ガスを流した。析出中は、反応槽のオーバーフロー出口から、ろ布を介して、上澄み液のみを取り出して、共沈物を反応槽に残留させた。成長時間を14時間とし、反応液に共沈物が懸濁しているスラリーを得た。得られたスラリーをろ過後純水で洗浄したのち、120℃で15時間かけて乾燥し、水酸化物を得た。水酸化物の上記評価結果を表1に示す。図1に吸着等温線を示し、図2に横軸細孔径に対する縦軸微分細孔容積の図を示す。
正極活物質の製造:
前記水酸化物と、炭酸リチウム(SQM社製、MICグレード)とを、水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対する炭酸リチウムのLiモル量の比(Li/Me比)が1.25になるように秤量し、混合した。得られた混合物を電気炉内にて、空気を供給しながら、大気雰囲気下970℃で8時間焼成してリチウム含有複合酸化物を得た。このリチウム含有複合酸化物を正極活物質とした。
正極活物質の上記評価結果を表2に示す。
(例2〜7)
水酸化物として表1に示す水酸化物を使用し、Li/Me比を1.20にしたこと以外は、例1と同様にして例2〜7の正極活物質を得た。正極活物質の上記評価結果を表2に示す。また、例1〜7の各水酸化物について、図1、図3に吸着等温線を示し、図2、図4に横軸細孔径に対する縦軸微分細孔容積の図を示す。
Figure 0006851529
Figure 0006851529
(電池評価)
例1〜7の正極活物質を用いて、それぞれの正極活物質からリチウム二次電池1〜7を以下のようにして製造し、評価した。
(正極シートの製造)
正極活物質と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック(登録商標))と、ポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、KFL#1120)を12.1質量%含むポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒:N−メチルピロリドン)とを混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加してスラリーを調製した。正極活物質とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとは、90:5:5の質量比とした。
スラリーを、平均厚さ20μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、E−FOIL)に、ドクタブレードを用いて片面塗工した。120℃で乾燥した後、ロールプレス圧延(0.3t/cm)を2回行い、正極を作製した。
(リチウム二次電池)
厚さ1mmのステンレス鋼板と厚さ500μmの金属リチウム箔(本荘ケミカル社製、リチウムフォイル)とを積層して負極を作製した。
セパレータとして、厚さ25μmの多孔質ポリプロピレン(ポリポア社製、セルガード(登録商標)♯2500)を用意した。
非水電解液として、1モル/dmのLiPF溶液を用意した。非水電解液の溶媒としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比が、1:1の混合液を用いた。
正極、負極、セパレータ、非水電解液を用い、ステンレス鋼製簡易密閉セル型のリチウム二次電池をアルゴングローブボックス内で組み立てた。
(活性化処理)
リチウム二次電池1〜7について、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で4.6Vまで定電流・定電圧充電した後、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で2Vまで低電流放電し、活性化処理とした。
(1Cの放電容量)
活性化処理されたリチウム二次電池1〜7について、正極活物質1gにつき200mAの負荷電流で4.45Vまで定電流・定電圧充電した後、正極活物質1gにつき200mAの負荷電流で2Vまで低電流放電することで1Cの放電容量を測定した。
リチウム二次電池1〜7の1Cの放電容量を表3に示す。
Figure 0006851529
(考察)
表1〜3で示すように、単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g以上である水酸化物とリチウム化合物とを、水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対するリチウム化合物のリチウムモル量の比(Li/Me比)が1.1以上の割合で混合し、800〜1100℃で焼成して得られた正極活物質を有する電池は、1C容量、すなわち放電容量が高かった。
さらに、微分細孔容積の極大値が0.8mm/g・nm以上である水酸化物を使用して得られた正極活物質を有するリチウム二次電池1〜4は、放電容量が高かった。特に例2〜4は微分細孔容積の極大値が1.8mm/g・nm以下であり、正極活物質のタップ密度が高い。そのため、よりエネルギー密度の高いリチウム二次電池が得られている。
例5〜7のように、単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g未満である水酸化物を使用して、例1〜4と同様の方法で製造した正極活物質を有するリチウム二次電池5〜7は放電容量が低かった。さらに、例5は水酸化物が微分細孔容積の極大値を有しているが極大値が0.8mm/g・nm未満であり、例6および7は、水酸化物が微分細孔容積の極大値を有していない。そのため、例5〜7の水酸化物を使用して得られた正極活物質を有するリチウム二次電池5〜7は、放電容量が低かった。
本発明の正極活物質の製造方法では、窒素ガスをプローブとして用いた吸着等温線から求めた相対圧力(P/P。Pは圧力(Pa)であり、Pは飽和蒸気圧(Pa)である。)が0.99における単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g以上である水酸化物と、リチウム化合物とを、水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対するリチウム化合物のリチウムモル量の比(Li/Me比)が1.1以上の割合で混合し、800〜1100℃で焼成する工程を有する。この方法で得られた正極活物質は、放電容量が高くリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適に使用できる。そして、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池が得られる。

Claims (6)

  1. 窒素ガスをプローブとした吸着等温線から求めた相対圧力(P/PO。Pは圧力(単位:Pa)であり、POは飽和蒸気圧(単位:Pa)である。)が0.99における単位質量あたりの細孔容積が0.055cm/g以上である遷移金属含有水酸化物であって、前記吸着等温線からBJH法で求めた微分細孔容積が極大値を有し、該極大値における微分細孔容積が0.8mm/(g・nm)以上であり、前記微分細孔容積の極大値が1.8mm/(g・nm)以下であり、
    遷移金属としてNi及びMnを含む遷移金属含有水酸化物又は遷移金属としてNi、Co及びMnを含む遷移金属含有水酸化物であることを特徴とする遷移金属含有水酸化物。
  2. 細孔径が10nm〜100nmの範囲において、前記微分細孔容積の極大値を有する請求項1に記載の遷移金属含有水酸化物。
  3. 下記式1で表される請求項1又は2に記載の遷移金属含有水酸化物。
    NiαCoβMnγδ(OH) 式1
    ただし、Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、α+β+γ+δ=1であり、0.3≦α≦0.5であり、0≦β≦0.1であり、0.5≦γ≦0.7であり、δ=0である。
  4. 120℃で15時間乾燥した後に測定した比表面積が3m/g〜60m/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の遷移金属含有水酸化物。
  5. 平均粒子径(D50)が3μm〜15.5μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の遷移金属含有水酸化物。
  6. タップ密度が1g/cm〜2g/cmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の遷移金属含有水酸化物。
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