JP6835888B2 - リチウム含有複合酸化物、正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウム含有複合酸化物、正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム含有複合酸化物、正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池の正極に含まれる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物、特にLiCoOがよく知られている。しかし、近年、携帯型電子機器や車載用のリチウムイオン二次電池には、小型化、軽量化が求められ、正極活物質の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の放電容量(以下、単に放電容量とも記す。)のさらなる向上が要求されている。
リチウムイオン二次電池の放電容量をさらに大きくできる正極活物質としては、LiおよびMnの含有率が高い正極活物質、いわゆるリチウムリッチ系正極活物質が注目されている。放電容量が大きいリチウムイオン二次電池を得ることができるリチウムリッチ系正極活物質としては、下記のものが提案されている。
(1)少なくとも空間群R−3mに属する結晶系と空間群C2/mに属する結晶系とを有する化合物からなる正極活物質粒子粉末であって、当該化合物は少なくともLiとMnとホウ素とCo及び/又はNiとを含有する複合酸化物であり、正極活物質粒子粉末のCu−Kα線を使用した粉末X線回折図の2θ=20.8±1°における最大回折ピークの強度(a)と2θ=18.6±1°における最大回折ピークの強度(b)との相対強度比(a)/(b)が0.02〜0.5である正極活物質粒子粉末であって、該正極活物質粒子粉末のMn含有量はモル比でMn/(Ni+Co+Mn)が0.55以上であり、ホウ素を0.001〜3wt%含むことを特徴とする正極活物質粒子粉末(特許文献1)。
(2)少なくとも空間群R−3mに属する結晶系と空間群C2/mに属する結晶系とを有する化合物からなる正極活物質粒子粉末であって、当該化合物は少なくともLiとMnと元素A(Si、Zr又はYから選ばれる少なくとも1種の元素)とCo及び/又はNiとを含有する複合酸化物であり、正極活物質粒子粉末のCu−Kα線を使用した粉末X線回折図の2θ=20.8±1°における最大回折ピークの強度(a)と2θ=18.6±1°における最大回折ピークの強度(b)との相対強度比(a)/(b)が0.02〜0.2である正極活物質粒子粉末であり、該正極活物質粒子粉末のMn含有量はモル比(Mn/(Ni+Co+Mn))で0.55以上であって元素Aを0.03〜5wt%含有し、タップ密度が0.8〜2.4g/ccであり、圧縮密度が2.0〜3.1g/ccであることを特徴とする正極活物質粒子粉末(特許文献2)。
特開2011−096650号公報 特開2013−211239号公報
しかし、(1)、(2)のリチウムリッチ系正極活物質であっても、リチウムイオン二次電池の放電容量はいまだ不充分である。リチウムイオン二次電池のさらなる高エネルギー密度化に向けて、放電容量のさらなる向上が求められている。
また、リチウムリッチ系正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電サイクルを繰り返すことによって放電電圧が低下するという問題を有する。リチウムイオン二次電池の放電電圧の低下は、エネルギー密度の低下につながるため、充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下を抑えることが求められている。
本発明は、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができるリチウム含有複合酸化物、正極活物質およびリチウムイオン二次電池用正極;ならびに、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]下式Iで表され、かつLiの価数を1、Coの価数を3、Mnの価数を4、Naの価数を1、Mgの価数を2、Tiの価数を4、Zrの価数を4、Alの価数を3、Wの価数を6、Moの価数を6および酸素(O)の価数を−2としたときに、Niの価数が2.15〜2.45である、リチウム含有複合酸化物。
LiNiCoMn 式I
ただし、Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上であり、
a+b+c+d+e=2であり、
1.1≦a/(b+c+d+e)≦1.4 であり、
0.2≦b/(b+c+d+e)≦0.5 であり、
0 ≦c/(b+c+d+e)≦0.25であり、
0.3≦d/(b+c+d+e)≦0.6 であり、
0 ≦e/(b+c+d+e)≦0.1 である。
[2]式Iにおいて0.05≦c/(b+c+d+e)≦0.25である、[1]のリチウム含有複合酸化物。
[3]式IにおけるMが、Ti、ZrおよびAlからなる群から選ばれる1種以上である、[1]または[2]のリチウム含有複合酸化物。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかのリチウム含有複合酸化物を含む、正極活物質。
[5]前記リチウム含有複合酸化物の表面に、Zr、Ti、AlおよびFからなる群から選ばれる1種以上を含む化合物からなる被覆物を有する、[4]の正極活物質。
[6]前記正極活物質のD50が、3〜10μmである、[4]または[5]の正極活物質。
[7]前記正極活物質の比表面積が、0.5〜5m/gである、[4]〜[6]のいずれかの正極活物質。
[8]前記[4]〜[7]のいずれかの正極活物質、導電材およびバインダを含む、リチウムイオン二次電池用正極。
[9]前記[8]のリチウムイオン二次電池用正極、負極および非水電解質を有する、リチウムイオン二次電池。
本発明のリチウム含有複合酸化物によれば、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
本発明の正極活物質によれば、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極によれば、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたものである。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「Niの価数」は、式I(LiNiCoMn)におけるLi、Co、MnおよびM(Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上)の各元素の価数を最も安定な酸化数に固定し、かつ酸素(O)の価数を−2に固定して、式Iの電気的中性条件を満たすように算出したNiの価数である。すなわち、Niの価数をxとし、Mの価数をyとすると、
1×a+x×b+3×c+4×d+y×e−2×2=0
x={2×2−(1×a+3×c+4×d+y×e)}/bから算出する。
「D50」は、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径である。
「粒度分布」は、レーザー散乱粒度分布測定装置(たとえば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置等)で測定した頻度分布および累積体積分布曲線から求められる。測定は、粉末を水媒体中に超音波処理等で充分に分散させて行われる。
「比表面積」は、BET(Brunauer,Emmet,Teller)法によって測定される値である。比表面積の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
「Li」との表記は、特に言及しない限り当該金属単体ではなく、Li元素であることを示す。Ni、Co、Mn等の他の元素の表記も同様である。
リチウム含有複合酸化物の組成分析は、誘導結合プラズマ分析法(以下、ICPと記す。)によって行う。また、リチウム含有複合酸化物の元素の比率は、初回充電(活性化処理ともいう。)前のリチウム含有複合酸化物における値である。
<リチウム含有複合酸化物>
本発明のリチウム含有複合酸化物は、下式Iで表される化合物(以下、複合酸化物(I)とも記す。)である。
LiNiCoMn 式I
a、b、c、dおよびeの合量(a+b+c+d+e)は、2である。
aは、複合酸化物(I)に含まれるLiのモル数である。a/(b+c+d+e)は、1.1〜1.4であり、1.13〜1.37が好ましく、1.15〜1.35がより好ましい。a/(b+c+d+e)が前記範囲内であれば、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を大きくできる。
bは、複合酸化物(I)に含まれるNiのモル数である。b/(b+c+d+e)は、0.2〜0.5であり、0.25〜0.5が好ましく、0.3〜0.47がより好ましい。b/(b+c+d+e)が前記範囲内であれば、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を大きくでき、かつ放電電圧を高くできる。
cは、複合酸化物(I)に含まれるCoのモル数である。c/(b+c+d+e)は、0〜0.25であり、0.05〜0.20が好ましい。c/(b+c+d+e)が前記範囲内であれば、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を大きくでき、かつ放電電圧を高くできる。また、c/(b+c+d+e)が0.05以上であれば、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の直流抵抗(以下、DCRとも記す。)が低くなり、レート特性が良好となる。
dは、複合酸化物(I)に含まれるMnのモル数である。d/(b+c+d+e)は、0.3〜0.6であり、0.35〜0.57が好ましく、0.4〜0.55がより好ましい。d/(b+c+d+e)が前記範囲内であれば、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を大きくでき、かつ放電電圧を高くできる。
複合酸化物(I)は、必要に応じて他の金属元素Mを含んでいてもよい。他の金属元素Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上である。複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を大きくしやすく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下を抑えやすい点から、他の金属元素Mは、Ti、ZrおよびAlからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
eは、複合酸化物(I)に含まれるMのモル数である。e/(b+c+d+e)は、0〜0.1であり、0〜0.05が好ましく、0〜0.03がより好ましい。
複合酸化物(I)は、空間群C2/mの層状岩塩型結晶構造を有するLi(Li1/3Mn2/3)O(リチウム過剰相)と空間群R−3mの層状岩塩型結晶構造を有するLiMeO(ただし、Meは、Ni、Co、MnおよびMからなる群から選ばれる1種以上の元素である。)との固溶体である。複合酸化物(I)がこれらの結晶構造を有することは、X線回折測定により確認できる。
典型的には、X線回折測定において、空間群C2/mの(020)面のピークが、2θ=20〜22degに見られる。また、X線回折測定において、空間群R−3mの(003)面のピークが、2θ=18〜20degに見られる。
複合酸化物(I)は、Niの価数が、2.15〜2.45であるため、リチウムイオン二次電池の放電容量を大きくでき、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられる。
Niの価数が前記範囲の下限値以上であれば、スピネル等の他の結晶相の生成や不均一な固溶体の形成が抑えられる。その結果、充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下を抑えることができる。また、Niの価数が前記範囲の上限値以下であれば、リチウムイオン二次電池の充放電において、Ni価数の変化量が小さくならない。そのため、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量の低下を抑えられる。
上記理由から、Niの価数は、2.15〜2.4が好ましく、2.15〜2.35がより好ましい。
(複合酸化物(I)の製造方法)
複合酸化物(I)は、NiおよびMnを必須として含み、CoおよびMを任意として含む遷移金属含有化合物と、リチウム化合物とを混合し、得られた混合物を焼成することによって得られる。
複合酸化物(I)を製造する際のLi、Ni、Co、MnおよびMの仕込み比を調整することにより、Niの価数を前記範囲内とできる。
複合酸化物(I)の製造方法の一態様としては、たとえば、下記の工程(a)〜(b)を有する方法が挙げられる。
(a)NiおよびMnを必須として含み、CoおよびMを任意として含む遷移金属含有化合物を得る工程。
(b)遷移金属含有化合物とリチウム化合物とを混合し、得られた混合物を焼成してリチウム含有複合酸化物を得る工程。
工程(a):
遷移金属含有化合物がMを含む場合、遷移金属含有化合物に含まれるNi、Co、MnおよびMの比率は、複合酸化物(I)に含まれるNi、Co、MnおよびMの比率と同じにすることが好ましい。
遷移金属含有化合物がMを含まず、工程(b)においてMを含む化合物をさらに混合する場合、複合酸化物(I)に含まれるNi、Co、MnおよびMの比率に基づいて、遷移金属含有化合物に含まれるNi、CoおよびMnの比率を決めることが好ましい。
なお、Mは、複合酸化物(I)に含まれるMと同様である。
遷移金属含有化合物としては、水酸化物、炭酸塩等が挙げられ、充放電サイクルを繰り返すことによるリチウムイオン二次電池の放電容量の低下を抑えやすい点から、水酸化物が好ましい。水酸化物は、一部酸化されているオキシ水酸化物も含む。
水酸化物は、たとえば、アルカリ共沈法によって調製できる。
アルカリ共沈法とは、NiおよびMnを必須として含み、CoおよびMを任意として含む金属塩水溶液と、強アルカリを含むpH調整液とを連続的に反応槽に供給して混合し、混合液中のpHを一定に保ちながら、NiおよびMnを必須として含み、CoおよびMを任意として含む水酸化物を析出させる方法である。
金属塩としては、各金属元素の硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、硫酸塩が挙げられ、材料コストが比較的安価であり、優れた電池特性が得られる点から、硫酸塩が好ましい。金属塩としては、Niの硫酸塩、Mnの硫酸塩、およびCoの硫酸塩がより好ましい。
Niの硫酸塩としては、たとえば、硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸ニッケル(II)・七水和物、硫酸ニッケル(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Coの硫酸塩としては、たとえば、硫酸コバルト(II)・七水和物、硫酸コバルト(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Mnの硫酸塩としては、たとえば、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸マンガン(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
金属塩水溶液におけるNi、Co、MnおよびMの比率は、最終的に得られる複合酸化物(I)に含まれるNi、Co、MnおよびMの比率と同じにする。
金属塩水溶液中の金属元素の合計濃度は、0.1〜3モル/kgが好ましく、0.5〜2.5モル/kgがより好ましい。金属元素の合計濃度が前記範囲の下限値以上であれば、生産性に優れる。金属元素の合計濃度が前記範囲の上限値以下であれば、金属塩を水に充分に溶解できる。
金属塩水溶液は、水以外の水性媒体を含んでいてもよい。
水以外の水性媒体としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。水以外の水性媒体の割合は、安全面、環境面、取扱性、コストの点から、水100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0〜10質量部がより好ましく、0〜1質量部が特に好ましい。
pH調整液としては、強アルカリを含む水溶液が好ましい。
強アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
混合液には、金属元素の溶解度を調整するために、錯化剤(アンモニア水溶液または硫酸アンモニウム水溶液)を加えてもよい。
金属塩水溶液とpH調整液とは、反応槽中で撹拌しながら混合することが好ましい。
撹拌装置としては、スリーワンモータ等が挙げられる。撹拌翼としては、アンカー型、プロペラ型、パドル型等が挙げられる。
反応温度は、反応促進の点から、20〜80℃が好ましく、25〜60℃がより好ましい。
金属塩水溶液とpH調整液との混合は、水酸化物の酸化を抑制する点から、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下で行うことが好ましく、コストの点から、窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
金属塩水溶液とpH調整液との混合中は、共沈反応を適切に進める点から、反応槽内のpHを10〜12の範囲で設定したpHに保つことが好ましい。混合液のpHを10以上で行う場合、共沈物は水酸化物とみなされる。
水酸化物を析出させる方法としては、反応槽内の混合液をろ材(ろ布等)を用いて抜き出して水酸化物を濃縮しながら析出反応を行う方法(濃縮法)と、反応槽内の混合液をろ材を用いずに水酸化物とともに抜き出して水酸化物の濃度を低く保ちながら析出反応を行う方法(オーバーフロー法)の2種類が挙げられる。粒度分布の広がりを狭くできる点から、濃縮法が好ましい。
水酸化物は、不純物イオンを取り除くために、洗浄されることが好ましい。洗浄方法としては、加圧ろ過と蒸留水への分散とを繰り返し行う方法等が挙げられる。洗浄を行う場合、水酸化物を蒸留水へ分散させたときの上澄み液またはろ液の電気伝導度が50mS/m以下になるまで繰り返すことが好ましく、20mS/m以下になるまで繰り返すことがより好ましい。
洗浄後、必要に応じて水酸化物を乾燥させてもよい。
乾燥温度は、60〜200℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。乾燥温度が前記範囲の下限値以上であれば、乾燥時間を短縮できる。乾燥温度が前記範囲の上限値以下であれば、水酸化物の酸化の進行を抑えることができる。
乾燥時間は、水酸化物の量により適切に設定すればよく、1〜300時間が好ましく、5〜120時間がより好ましい。
水酸化物の比表面積は、3〜60m/gが好ましく、5〜50m/gがより好ましい。水酸化物の比表面積が前記範囲内であれば、正極活物質の比表面積を好ましい範囲に制御しやすい。なお、水酸化物の比表面積は、水酸化物を120℃で15時間乾燥した後に測定した値である。
水酸化物のD50は、3〜18μmが好ましく、3〜15μmがより好ましく、3〜10μmがさらに好ましい。水酸化物のD50が前記範囲内であれば、正極活物質のD50を好ましい範囲に制御しやすい。
工程(b):
遷移金属含有化合物とリチウム化合物とを混合し、得られた混合物を焼成することによって、リチウム含有複合酸化物が形成される。混合物には、Mを含む化合物をさらに混合してもよい。
リチウム化合物としては、炭酸リチウム、水酸化リチウムおよび硝酸リチウムからなる群から選ばれる1種が好ましい。製造工程での取扱いの容易性の点から、炭酸リチウムがより好ましい。
水酸化物とリチウム化合物との混合比は、水酸化物に含まれるNi、Co、MnおよびMの合計モル量に対するリチウム化合物に含まれるLiのモル量の比が1.1〜1.4となる混合比が好ましい。
遷移金属含有化合物がMを含む場合、混合物に含まれるNi、Co、MnおよびMの比は、複合酸化物(I)に含まれるNi、Co、MnおよびMの比と同じにすることが好ましい。
遷移金属含有化合物がMを含まず、混合物にMを含む化合物をさらに混合する場合、Mを含む化合物を混合した後の混合物に含まれるNi、Co、MnおよびMの比は、複合酸化物(I)に含まれるNi、Co、MnおよびMの比と同じにすることが好ましい。
Mを含む化合物としては、Mの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物およびフッ化物からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。これらの化合物であれば、工程(b)において、不純物が揮発して、不純物が複合酸化物(I)に残留しにくい。
遷移金属含有化合物とリチウム化合物とを混合する方法としては、たとえば、ロッキングミキサ、ナウタミキサ、スパイラルミキサ、カッターミル、Vミキサ等を使用する方法等が挙げられる。
焼成装置としては、電気炉、連続焼成炉、ロータリーキルン等が挙げられる。
焼成時に遷移金属含有化合物が酸化されることから、焼成は大気下で行うことが好ましく、空気を供給しながら行うことが特に好ましい。
空気の供給速度は、炉の内容積1Lあたり、10〜200mL/分が好ましく、40〜150mL/分がより好ましい。
焼成時に空気を供給することによって、遷移金属含有化合物に含まれる金属元素が充分に酸化される。その結果、結晶性が高く、かつ空間群C2/mの結晶構造および空間群R−3mの結晶構造を有する複合酸化物(I)が得られる。
焼成温度は、800〜1100℃が好ましく、850〜1050℃が好ましく、890〜1000℃がより好ましい。焼成温度が前記範囲の下限以上であれば、複合酸化物(I)を有するリチウムイオン二次電池の放電容量を大きくしやすく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下を抑えやすい。
焼成時間は、4〜40時間が好ましく、4〜20時間がより好ましい。
焼成は、1段焼成であってもよく、仮焼成を行った後に本焼成を行う2段焼成であってもよい。2段焼成を行う場合、本焼成の温度を上記した焼成温度の範囲で行う。そして、仮焼成の温度は、500〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましい。
(作用機序)
以上説明した複合酸化物(I)にあっては、式Iで表されるリチウム含有複合酸化物、いわゆるリチウムリッチ系正極活物質であり、かつNiの価数が2.15〜2.45であるため、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
<正極活物質>
本発明の正極活物質(以下、本正極活物質と記す。)は、複合酸化物(I)そのものであってもよく、複合酸化物(I)の表面にZr、Ti、AlおよびFからなる群から選ばれる1種以上を含む化合物からなる被覆物を有するものであってもよい。
複合酸化物(I)の表面に被覆物を有する本正極活物質は、リチウムイオン二次電池の放電容量を大きくしやすく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下を抑えやすい。
被覆物としては、Zr、Ti、AlおよびFからなる群から選ばれる1種以上を含む化合物が挙げられる。Zr、TiおよびAlからなる群から選ばれる1種以上を含む化合物としては、酸化物、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられる。Fを含む化合物としては、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられる。
被覆物は、複合酸化物(I)の表面に存在すればよく、複合酸化物(I)の全面に存在してもよく、複合酸化物(I)の一部に存在してもよい。
被覆物中のZr、Ti、AlおよびFの合計の含有量は、複合酸化物(I)(100モル%)に対して0.1〜5モル%が好ましく、0.3〜3モル%がより好ましい。
被覆物の形成は、たとえば、Zr、Ti、AlおよびFからなる群から選ばれる1種以上を含むコート液を複合酸化物(I)に噴霧し、コート液の溶媒を焼成により除去する、または、コート液中に複合酸化物(I)を浸漬し、ろ過による固液分離、焼成による溶媒除去を行う、ことによって実施できる。
本正極活物質は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であることが好ましい。
本正極活物質の二次粒子のD50は、3〜18μmが好ましく、3〜15μmがより好ましく、4〜10μmがさらに好ましい。D50が前記範囲内であれば、リチウムイオン電池の放電容量を大きくしやすい。
本正極活物質の比表面積は、0.5〜5m/gが好ましく、0.5〜3m/gがより好ましく、1〜2.5m/gがさらに好ましい。比表面積が前記範囲の下限値以上であれば、リチウムイオン二次電池の放電容量を大きくしやすい。比表面積が前記範囲の上限値以下であれば、充放電サイクルを繰り返すことによるリチウムイオン二次電池の放電電圧の低下を抑えやすい。
本正極活物質のタップ密度は、1〜3g/cmが好ましく、1.3〜2.5g/cmがより好ましく、1.5〜2g/cmがさらに好ましい。タップ密度が前記範囲内であれば、電極中の正極活物質の密度を高くでき、正極のエネルギー密度を高くできる。
(作用機序)
以上説明した本正極活物質にあっては、複合酸化物(I)を含むため、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極(以下、本正極と記す。)は、本正極活物質を含むものである。具体的には、本正極活物質、導電材およびバインダを含む正極活物質層が、正極集電体上に形成されたものである。
導電材としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、黒鉛、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
バインダとしては、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、不飽和結合を有する重合体または共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等)、アクリル酸系重合体または共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等)等が挙げられる。
正極集電体としては、アルミニウム箔、ステンレススチール箔等が挙げられる。
本正極は、たとえば、下記の方法によって製造できる。
本正極活物質、導電材およびバインダを、媒体に溶解または分散させてスラリーを得る。得られたスラリーを正極集電体に塗工し、乾燥等により、媒体を除去することによって、正極活物質層を形成する。必要に応じて、正極活物質層を形成した後に、ロールプレス等で圧延してもよい。これにより、本正極を得る。
または本正極活物質、導電材およびバインダを、媒体と混練することによって、混練物を得る。得られた混練物を正極集電体に圧延することにより本正極を得る。
(作用機序)
以上説明した本正極にあっては、本正極活物質を含むため、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池(以下、本電池と記す。)は、本正極を有するものである。具体的には、本正極、負極、および非水電解質を有するものである。
(負極)
負極は、負極活物質を含むものである。具体的には、負極活物質、必要に応じて導電材およびバインダを含む負極活物質層が、負極集電体上に形成されたものである。
負極活物質は、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であればよい。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、周期表14族の金属を主体とする酸化物、周期表15族の金属を主体とする酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。
負極活物質の炭素材料としては、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられる。
負極活物質に使用する周期表14族の金属としては、Si、Snが挙げられ、Siが好ましい。
他の負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、その他の窒化物等が挙げられる。
負極の導電材、バインダとしては、正極と同様のものを用いることができる。
負極集電体としては、ニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極は、たとえば、下記の方法によって製造できる。
負極活物質、導電材およびバインダを、媒体に溶解または分散させてスラリーを得る。
得られたスラリーを負極集電体に塗布、乾燥、プレスすること等によって媒体を除去し、負極を得る。
(非水電解質)
非水電解質としては、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液;無機固体電解質;電解質塩を混合または溶解させた固体状またはゲル状の高分子電解質等が挙げられる。
有機溶媒としては、非水電解液用の有機溶媒として公知のものが挙げられる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。電圧安定性の点からは、環状カーボネート類(プロピレンカーボネート等)、鎖状カーボネート類(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)が好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する材料であればよい。
無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
固体状高分子電解質に用いられる高分子としては、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、その架橋体等)、ポリメタクリレートエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物等が挙げられる。該高分子化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
ゲル状高分子電解質に用いられる高分子としては、フッ素系高分子化合物(ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、その架橋体等)等が挙げられる。共重合体に共重合させるモノマーとしては、ポリプロピレンオキサイド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
該高分子化合物としては、酸化還元反応に対する安定性の点から、フッ素系高分子化合物が好ましい。
電解質塩は、リチウムイオン二次電池に用いられるものであればよい。電解質塩としては、LiClO、LiPF、LiBF、CHSOLi等が挙げられる。
正極と負極の間には、短絡を防止するためにセパレータを介在させてもよい。セパレータとしては、多孔膜が挙げられる。非水電解液は該多孔膜に含浸させて用いる。また、多孔膜に非水電解液を含浸させてゲル化させたものをゲル状電解質として用いてもよい。
電池外装体の材料としては、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウムまたはその合金、ニッケル、チタン、樹脂材料、フィルム材料等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池の形状としては、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
(作用機序)
以上説明した本電池にあっては、本正極を有するため、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたものとなる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1〜15は実施例であり、例16〜21は比較例である。例1〜2、4〜6、9〜15は参考例とする。
(組成分析)
リチウム含有複合酸化物(LiNiCoMn)の組成は、仕込みのLi/Xモル比(Xは、Ni、Co、MnおよびMの合量である。)をv、水酸化物のNi量をw(モル%)、Co量をx(モル%)、Mn量をy(モル%)、Mを含む化合物のM量をz(モル%)とし、以下の関係式から算出した。ただし、w+x+y+z=100、a+b+c+d+e=2である。
a=2v/(1+v)
b=w/{50(1+v)}
c=x/{50(1+v)}
d=y/{50(1+v)}
e=z/{50(1+v)}
(粒子径)
正極活物質を水中に超音波処理によって充分に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、MT−3300EX)により測定を行い、頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得た。得られた累積体積分布曲線からD50を求めた。
(タップ密度)
正極活物質のタップ密度(単位:g/cm)は、下式から算出した。下式のVは、タップ後の試料の体積(単位:cm)であり、目盛付きの樹脂製容器(容量:20cm)に試料(正極活物質)を量りとり、容器をタッピング装置(セイシン企業社製、KYT−4000K)に取り付け、700回タップを行い、容器内の試料の体積を容器の目盛で読み取った値である。下式のmは、試料の質量(単位:g)であり、樹脂性容器に加えた試料の質量である。
ρt=m/V
(比表面積)
正極活物質の比表面積は、比表面積測定装置(マウンテック社製、HM model−1208)を用い、窒素吸着BET法により算出した。脱気は、200℃、20分の条件で行った。
(正極体シートの製造)
正極活物質と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック(登録商標))と、ポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、KFL#1120)を12.1質量%含むポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒:N−メチルピロリドン)とを混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加してスラリーを調製した。正極活物質とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとは、90:5:5の質量比とした。
スラリーを、平均厚さ20μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、E−FOIL)に、ドクタブレードを用いて片面塗工した。120℃で乾燥した後、ロールプレス圧延(0.3t/cm)を2回行い、正極を作製した。
(リチウム二次電池の製造)
厚さ1mmのステンレス鋼板と厚さ500μmの金属リチウム箔(本荘ケミカル社製、リチウムフォイル)とを積層して負極を作製した。
セパレータとして、厚さ25μmの多孔質ポリプロピレン(ポリポア社製、セルガード(登録商標)♯2500)を用意した。
非水電解液として、1モル/dmのLiPF溶液を用意した。非水電解液の溶媒としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比が、1:1の混合液を用いた。
正極、負極、セパレータ、非水電解液を用い、ステンレス鋼製簡易密閉セル型のリチウム二次電池をアルゴングローブボックス内で組み立てた。
(初期放電容量)
リチウム二次電池について、定電流・定電圧モードにおいて、正極活物質の1gにつき20mAの負荷電流で4.5Vまで充電した。次に、定電流モードにおいて、正極活物質の1gにつき200mAの負荷電流で2.5Vまで放電させた。放電の負荷電流を正極活物質の1gにつき40mAに変えた以外は初回充放電と同じ条件で二回目の充放電を行った。この二回目の放電容量を初期放電容量とした。
(初期DCR)
リチウム二次電池について、初回充放電後に4.5Vの定電流・定電圧充電を行い、満充電状態とした。この満充電状態において、1gの正極活物質につき20mA、100mA、200mA、400mA、または800mAの負荷電流(I)で放電した時の10秒後の電圧降下値(V)を測定した。各IにおけるVをプロットし、プロットを最小二乗法で直線近似した直線の傾きを直流抵抗(初期DCR)とした。
(電圧降下)
定電流・定電圧モードにおいて、正極活物質の1gにつき200mAの負荷電流で4.5Vまで充電した後、定電流モードにおいて、正極活物質の1gにつき200mAの負荷電流で2.5Vまで放電させる充放電サイクルを50サイクル行った。1サイクル目の放電電圧と50サイクル目の放電電圧との差を電圧降下とした。
(例1)
共沈法で得られた表1に示す組成の水酸化物と、炭酸リチウム(SQM社製、MICグレード)とを、LiとX(Xは、Ni、CoおよびMnである。)とのモル比(Li/X)が表1に示す値となるように秤量し、混合した。
得られた混合物を電気炉内にて、空気を供給しながら、大気雰囲気下890℃で8時間焼成してリチウム含有複合酸化物を得て、これを正極活物質とした。結果を表1および表2に示す。
(例2〜8)
例1の水酸化物およびLi/Xを表1に示す水酸化物およびLi/Xに変更した以外は、例1と同様にしてリチウム含有複合酸化物を得て、これらを正極活物質とした。結果を表1および表2に示す。
(例9)
共沈法で得られた表1に示す組成の水酸化物と、炭酸リチウム(SQM社製、MICグレード)とを、Li/Xが表1に示す値となるように秤量し、さらに酸化ジルコニウム粉末(新日本電工社製、商品名:PCS)を、リチウム複合酸化物中の金属含有量(Liを除く)の0.5モル%となる量となるように秤量して、混合した。
得られた混合物を電気炉内にて、空気を供給しながら、大気雰囲気下890℃で8時間焼成してリチウム含有複合酸化物を得て、これを正極活物質とした。結果を表1および表2に示す。
(例10)
例9の酸化ジルコニウム粉末を酸化チタン粉末(テイカ社製、商品名:AMT−100)に変更した以外は、例9と同様にしてリチウム含有複合酸化物を得て、これを正極活物質とした。結果を表1および表2に示す。
(例11)
例9の酸化ジルコニウム粉末を水酸化アルミニウム粉末(住友化学工業社製、商品名:C−301)に変更した以外は、例9と同様にしてリチウム含有複合酸化物を得て、これを正極活物質とした。結果を表1および表2に示す。
(例12)
例10において焼成温度を910℃に変更した以外は同様にしてリチウム含有複合酸化物を得た。リチウム含有複合酸化物に対する質量比が5質量%となるZr含有水溶液(日本軽金属社製、商品名:ベイコート20)を、リチウム含有複合酸化物を被覆するZr量がリチウム含有複合酸化物(100モル%)に対して0.5モル%となる量だけ、リチウム含有複合酸化物に吹き付けて混合した。得られた混合物を電気炉内にて、空気を供給しながら、大気雰囲気下、500℃で8時間焼成して正極活物質を得た。結果を表1および表2に示す。
(例13)
例12のZr含有水溶液をTi含有水溶液(マツモトファインケミカル社製、商品名:オルガチックスTC−315)に変更した以外は、例12と同様にして正極活物質を得た。結果を表1および表2に示す。
(例14)
例12のZr含有水溶液をAl含有水溶液(多木化学社製、商品名:タキセラムK−ML16)に変更した以外は、例12と同様にして正極活物質を得た。結果を表1および表2に示す。
(例15)
例12のZr含有水溶液をフッ化アンモニウム水溶液に変更した以外は、例12と同様にして正極活物質を得た。結果を表1および表2に示す。
(例16〜21)
例1の水酸化物およびLi/Xを表1に示す水酸化物およびLi/Xに変更した以外は、例1と同様にしてリチウム含有複合酸化物を得て、これらを正極活物質とした。結果を表1および表2に示す。
Figure 0006835888
Figure 0006835888
例1〜15は、式Iで表され、かつNiの価数が2.15〜2.45であるため、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられた。
特に、リチウム含有複合酸化物が他の金属元素Mを含む例9〜11、さらにリチウム含有複合酸化物の表面に被覆物を有する例12〜15は、充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が充分に抑えられた。なお、リチウム含有複合酸化物がCoを含まない例7、8は、DCRが高くなった。
例16〜例18は、Niの価数が2.15未満であるため、放電容量が小さく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が大きかった。
例19は、Niの価数が2.45を超えているため、放電容量が小さかった。
例20、21は、c/(b+c+d+e)が0.25を超えているため、放電容量が小さかった。
本発明のリチウム含有複合酸化物によれば、放電容量が大きく、かつ充放電サイクルを繰り返すことによる放電電圧の低下が抑えられたリチウムイオン二次電池を得ることができる。

Claims (8)

  1. 下式Iで表され、かつLiの価数を1、Coの価数を3、Mnの価数を4、Naの価数を1、Mgの価数を2、Tiの価数を4、Zrの価数を4、Alの価数を3、Wの価数を6、Moの価数を6および酸素(O)の価数を−2としたときに、Niの価数が2.15〜2.35である、リチウム含有複合酸化物を含み、タップ密度が1〜3g/cmである正極活物質。
    LiNiCoMn 式I
    ただし、Mは、Na、Mg、Ti、Zr、Al、WおよびMoからなる群から選ばれる1種以上であり、
    a+b+c+d+e=2であり、
    1.13≦a/(b+c+d+e)≦1.4 であり、
    0.4≦b/(b+c+d+e)≦0.5 であり、
    0 ≦c/(b+c+d+e)≦0.1 であり、
    0.4≦d/(b+c+d+e)≦0.6 であり、
    0 ≦e/(b+c+d+e)≦0.1 である。
  2. 式Iにおいて0.05≦c/(b+c+d+e)≦0.1である、請求項1に記載の正極活物質。
  3. 式IにおけるMが、Ti、ZrおよびAlからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の正極活物質。
  4. 前記リチウム含有複合酸化物の表面に、Zr、Ti、AlおよびFからなる群から選ばれる1種以上を含む化合物からなる被覆物を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の正極活物質。
  5. 前記正極活物質のD50が、3〜10μmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の正極活物質。
  6. 前記正極活物質の比表面積が、0.5〜5m/gである、請求項1〜のいずれか一項に記載の正極活物質。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の正極活物質、導電材およびバインダを含む、リチウムイオン二次電池用正極。
  8. 請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極、負極および非水電解質を有する、リチウムイオン二次電池。
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