以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図であり、図1(b)は、チップ抵抗器が回路基板に実装された状態を示す模式的な側面図である。
このチップ抵抗器1は、微小なチップ部品であり、図1(a)に示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器1の寸法に関し、長辺方向の長さLが約0.3mmであり、短辺方向の幅Wが約0.15mmであり、厚さTが約0.1mmである。
このチップ抵抗器1は、基板上に多数個のチップ抵抗器1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器1は、基板2と、外部接続電極となる第1接続電極3および第2接続電極4と、素子5とを主に備えている。
基板2は、略直方体のチップ形状である。基板2において、図1(a)における上面は、素子形成面2Aである。素子形成面2Aは、基板2の表面であり、略長方形状である。基板2の厚さ方向において素子形成面2Aとは反対側の面は、裏面2Bである。素子形成面2Aと裏面2Bとは、ほぼ同形状である。また、基板2は、素子形成面2Aおよび裏面2B以外に、これらの面に直交して延びてこれらの面の間を繋ぐ側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fを有している。
側面2Cは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける長手方向一端縁(図1(a)における左手前側の端縁)の間に架設されていて、側面2Dは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける長手方向他端縁(図1(a)における右奥側の端縁)の間に架設されている。側面2Cおよび側面2Dは、当該長手方向における基板2の両端面である。側面2Eは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける短手方向一端縁(図1(a)における左奥側の端縁)の間に架設されていて、側面2Fは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける短手方向他端縁(図1(a)における右手前側の端縁)の間に架設されている。側面2Eおよび側面2Fは、当該短手方向における基板2の両端面である。側面2Cおよび側面2Dのそれぞれは、側面2Eおよび側面2Fのそれぞれと交差(厳密には直交)している。
基板2では、素子形成面2Aの全域が絶縁膜23で覆われている。そのため、厳密には、図1(a)では、素子形成面2Aの全域は、絶縁膜23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、素子形成面2A上の絶縁膜23は、樹脂膜24で覆われている。樹脂膜24は、素子形成面2Aから、側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fのそれぞれにおける素子形成面2A側の端部(図1(a)における上端部)まではみ出ている。絶縁膜23および樹脂膜24については、以降で詳説する。
そして、直方体の基板2では、裏面2B、側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fにおいて隣り合うもの同士が交差する交差部11(当該隣り合うもの同士の境界をなすコーナー部)11が、面取りされたラウンド形状に整形されていて、丸められている。ここで、各交差部11では、ラウンド形状の曲率半径が20μm以下であることが好ましい。
このように、平面視(底面視)および側面視のそれぞれにおける基板2の輪郭において、屈曲した部分(交差部11)がいずれもラウンド形状になっている。そのため、交差部11を掴んだチップ抵抗器1のハンドリングや搬送の際、ラウンド形状の各交差部11(コーナー部)では、チッピングの発生を防止できる。これにより、チップ抵抗器1の製造において、歩留まり向上(生産性の向上)を図ることができる。
第1接続電極3および第2接続電極4は、基板2の素子形成面2A上に形成されていて、樹脂膜24から部分的に露出されている。第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で素子形成面2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極3および第2接続電極4は、素子形成面2Aの長手方向に間隔を隔てて配置されており、素子形成面2Aの短手方向において長手である。図1(a)では、素子形成面2Aにおいて、側面2C寄りの位置に第1接続電極3が設けられ、側面2D寄りの位置に第2接続電極4が設けられている。
素子5は、回路素子であって、基板2の素子形成面2Aにおける第1接続電極3と第2接続電極4との間の領域に形成されていて、絶縁膜23および樹脂膜24によって上から被覆されている。この実施形態の素子5は、TiN(窒化チタン)またはTiON(酸化窒化チタン)からなる複数の薄膜状の抵抗体(薄膜抵抗体)Rを素子形成面2A上でマトリックス状に配列した回路網によって構成された抵抗56である。素子5(抵抗体R)は、後述する配線膜22に電気的に接続されていて、配線膜22を介して第1接続電極3と第2接続電極4とに電気的に接続されている。これにより、チップ抵抗器1では、第1接続電極3と第2接続電極4との間に、素子5による抵抗回路が形成されている。
図1(b)に示すように、第1接続電極3と第2接続電極4を回路基板9に対向させて、半田13によって回路基板9の回路(図示せず)に対して電気的かつ機械的に接続することにより、チップ抵抗器1を回路基板9に実装(フリップチップ接続)することができる。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極3および第2接続電極4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
図2は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成を示す図である。
図2を参照して、抵抗回路網となっている素子5は、一例として、行方向(基板2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。それぞれの抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。つまり、抵抗体Rのまとまり(素子5、抵抗56)は、同じ抵抗値を有する複数の抵抗体Rから形成されている。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗単位体(単位抵抗)が形成されている。形成された複数種類の抵抗単位体は、接続用導体膜Cを介して所定の態様に接続されている。さらに、基板2の素子形成面2Aには、抵抗単位体を素子5に対して電気的に組み込んだり、または、素子5から電気的に分離したりするために溶断可能な複数のヒューズ膜(ヒューズ)Fが設けられている。複数のヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cは、第2接続電極3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cが直線状に配置されている。
図3Aは、図2に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図3Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図3AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図3Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図3AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図3A、図3Bおよび図3Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器1は、前述した配線膜22、絶縁膜23および樹脂膜24の他に、絶縁層20と抵抗体膜21とをさらに備えている(図3Bおよび図3C参照)。絶縁層20、抵抗体膜21、配線膜22、絶縁膜23および樹脂膜24は、基板2(素子形成面2A)上に形成されている。
絶縁層20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁層20は、基板2の素子形成面2Aの全域を覆っている。絶縁層20の厚さは、約10000Åである。絶縁層20と絶縁膜23とは異なった別物である。
抵抗体膜21は、抵抗体Rを構成する。抵抗体膜21は、TiNまたはTiONからなり、絶縁層20の表面上に積層されている。抵抗体膜21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜21は、第1接続電極3と第2接続電極4との間をライン状に延びる複数本のライン(以下「抵抗体膜ライン21A」という)を構成していて、抵抗体膜ライン21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図3A参照)。
抵抗体膜ライン21A上には、配線膜22が積層されている。配線膜22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜22の厚さは、約8000Åである。配線膜22は、抵抗体膜ライン21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されている。
この構成の抵抗体膜ライン21Aおよび配線膜22の電気的特徴を回路記号で示すと、図4の通りである。すなわち、図4(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ライン21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜22が積層された領域では、配線膜22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜22で抵抗体膜ライン21Aが短絡されている。よって、図4(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ライン21A同士は抵抗体膜21および配線膜22で接続されているから、図3Aに示す素子5の抵抗回路網は、図4(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜21および配線膜22は、素子5を構成している。
ここで、基板2上に作り込んだ同形同大の抵抗体膜21は、ほぼ同値になるという特性に基づき、基板2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ライン21A上に積層された配線膜22は、抵抗体Rを形成するとともに、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗単位体を構成するための接続用配線膜の役目も果たしている。
図5(a)は、図2に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズ膜を含む領域の部分拡大平面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図5(a)および(b)に示すように、前述したヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜21上に積層された配線膜22により形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライン21A上に積層された配線膜22と同じレイヤーに、配線膜22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cが形成されている。
つまり、抵抗体膜21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズ膜Fや、接続用導体膜Cや、さらには、素子5を第1接続電極3および第2接続電極4に接続するための配線膜が、配線膜22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズ膜Fを配線膜22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズ膜Fが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズ膜Fの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜22において、ヒューズ膜Fが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図2および図5(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第2接続電極3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズ膜Fだけでなく、接続用導体膜Cも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜22の下方に抵抗体膜21が形成されている(図5(b)参照)。そして、ヒューズ膜Fは、配線膜22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズ膜Fは、配線膜22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜21)の一部と抵抗体膜21上の配線膜22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズ膜Fは、接続用導体膜Cと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、接続用導体膜C部分は、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズ膜Fの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズ膜Fの溶断性が悪くなることはない。
図6は、この発明の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図6を参照して、素子5は、基準抵抗単位体R8と、抵抗単位体R64、2つの抵抗単位体R32、抵抗単位体R16、抵抗単位体R8、抵抗単位体R4、抵抗単位体R2、抵抗単位体R1、抵抗単位体R/2、抵抗単位体R/4、抵抗単位体R/8、抵抗単位体R/16、抵抗単位体R/32とを第1接続電極3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗単位体R8および抵抗単位体R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗単位体R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗単位体R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗単位体の末尾の数の意味については、後述する図7および図8においても同じである。
そして、基準抵抗単位体R8以外の抵抗単位体R64〜抵抗単位体R/32のそれぞれに対して、ヒューズ膜Fが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズ膜F同士は、直接または接続用導体膜C(図5(a)参照)を介して直列に接続されている。
図6に示すように全てのヒューズ膜Fが溶断されていない状態では、素子5は、第1接続電極3および第2接続電極4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗単位体R8(抵抗値8r)の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路により第1接続電極3および第2接続電極4が接続されたチップ抵抗器1が構成されている。
また、全てのヒューズ膜Fが溶断されていない状態では、基準抵抗単位体R8以外の複数種類の抵抗単位体は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗単位体R8には、12種類13個の抵抗単位体R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗単位体は、それぞれ並列に接続されたヒューズ膜Fにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗単位体は素子5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズ膜Fを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズ膜Fが溶断された抵抗単位体は、素子5に組み込まれることになる。よって、素子5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズ膜Fに対応する抵抗単位体が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗単位体は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗単位体ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗単位体を備えている。そのため、ヒューズ膜F(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子5(抵抗56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図7は、この発明の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
前述したように基準抵抗単位体R/16および抵抗単位体R64〜抵抗単位体R/32を直列接続して素子5を構成する代わりに、図7に示すように素子5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極3および第2接続電極4の間で、基準抵抗単位体R/16と、12種類の抵抗単位体R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗単位体R/16以外の12種類の抵抗単位体には、それぞれ、ヒューズ膜Fが直列に接続されている。全てのヒューズ膜Fが溶断されていない状態では、各抵抗単位体は素子5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズ膜Fを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズ膜Fに対応する抵抗単位体(ヒューズ膜Fが直列に接続された抵抗単位体)は、素子5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器1全体の抵抗値を調整することができる。
図8は、この発明のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図8に示す素子5の特徴は、複数種類の抵抗単位体の直列接続と、複数種類の抵抗単位体の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗単位体には、先の実施形態と同様、抵抗単位体毎に、並列にヒューズ膜Fが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗単位体は、全てヒューズ膜Fで短絡状態とされている。従って、ヒューズ膜Fを溶断すると、その溶断されるヒューズ膜Fで短絡されていた抵抗単位体が、素子5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗単位体には、それぞれ、直列にヒューズ膜Fが接続されている。従って、ヒューズ膜Fを溶断することにより、溶断されたヒューズ膜Fが直列に接続されている抵抗単位体を、抵抗単位体の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。
以上のように、このチップ抵抗器1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗単位体)の接続状態が変更可能である。
図9は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図9を参照して、チップ抵抗器1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図9では、前述した素子5については簡略化して示しているとともに、基板2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述した絶縁膜23および樹脂膜24について説明する。
絶縁膜23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなる膜であり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。絶縁膜23は、素子形成面2Aの全域に亘って設けられて、抵抗体膜21および抵抗体膜21上の各配線膜22(つまり、素子5)を表面(図9の上側)から被覆していて、素子5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、絶縁膜23は、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜22も覆っている(図5(b)参照)。また、絶縁膜23は、素子5(配線膜22および抵抗体膜21)に接しており、抵抗体膜21以外の領域では絶縁層20にも接している。これにより、絶縁膜23は、素子形成面2A全域を覆って素子5および絶縁層20を保護する保護膜として機能している。
また、絶縁膜23によって、抵抗体R間における配線膜22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ライン21A間における短絡)が防止されている。
なお、絶縁膜23において素子形成面2Aの端縁に位置する端部23Aの表面は、側方(素子形成面2Aに沿う方向におけるチップ抵抗器1(基板2)の外方)へ向けて膨出するように湾曲している。
図示していないが、絶縁膜23は、素子形成面2Aからはみ出して、側面2C〜2Fのそれぞれにおける素子形成面2Aとの境界部分や、絶縁層20において側面2C〜2Fに露出されている部分を被覆していてもよい。
樹脂膜24は、絶縁膜23とともにチップ抵抗器1の素子形成面2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜24の厚みは、約5μmである。樹脂膜24は、絶縁膜23の表面(絶縁膜23に被覆された抵抗体膜21および配線膜22も含む)を全域に亘って被覆しているとともに、側面2C〜2Fのそれぞれにおける素子形成面2Aとの境界部分(図9における上端部)や、絶縁層20において側面2C〜2Fに露出されている部分を被覆している。そのため、4つの側面2C〜2Fにおいて素子形成面2Aとは反対側(図9における下側)の部分は、チップ抵抗器1の外表面として外部に露出している。
このように、絶縁膜23が抵抗体膜21(薄膜抵抗体R)および配線膜22を覆うとともに、樹脂膜24が絶縁膜23の表面を覆っているから、薄膜抵抗体Rおよび配線膜22(素子形成面2A)を、絶縁膜23および樹脂膜24によって二重に保護できる。さらに、絶縁膜23および樹脂膜24によって、異物が薄膜抵抗体Rおよび配線膜22に付着することが防止されているので、薄膜抵抗体Rおよび配線膜22における短絡を防止できる。
樹脂膜24では、平面視で4つの側面2C〜2Fと一致する部分が、これらの側面よりも基板2の側方(外方)へ膨出した円弧状の膨出部24Aとなっている。つまり、樹脂膜24(膨出部24A)は、側面2C〜2Fにおいて側面2C〜2F(対応する側面)よりもはみ出している。このような樹脂膜24は、円弧状の膨出部24Aにおいて側方に向かって凸のラウンド形状の側面24Bを有している。
ここで、素子形成面2Aと側面2C〜2Fのそれぞれとの境界をなす交差部27において、素子形成面2Aと側面2C〜2Fのそれぞれとが交差しているのだが、交差部27は、前記ラウンド形状(交差部11のラウンド形状)とは異なる角張った形状である。そこで、膨出部24Aは、各交差部27を覆っている。この場合、交差部27におけるチッピングの発生を樹脂膜24によって防止できる。また、膨出部24Aが交差部27において側面2C〜2Fよりも外方(素子形成面2Aに沿う方向における基板2の外方)へ膨出しているので、チップ抵抗器1が周囲のものに接触する際、膨出部24Aが周囲のものに最初に接触して、接触による衝撃を緩和するので、衝撃が素子5等にまで及ぶことを防止できる。特に、膨出部24Aは、ラウンド形状の側面24Bを有しているから、接触による衝撃を滑らかに緩和することができる。
また、樹脂膜24は、側面2C〜2Fにおいて、交差部27側(裏面2Bから素子形成面2A側)へ離れた領域に設けられている。しかし、樹脂膜24が側面2C〜2Fをまったく被覆していない構成(側面2C〜2Fの全部を露出させた構成)もあり得る。
樹脂膜24において、平面視で離れた2つの位置に開口25が1つずつ形成されている。各開口25は、樹脂膜24および絶縁膜23を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通する貫通孔である。そのため、開口25は、樹脂膜24だけでなく絶縁膜23にも形成されている。各開口25からは、配線膜22の一部が露出されている。配線膜22において各開口25から露出された部分は、外部接続用のパッド領域22Aとなっている。
2つの開口25のうち、一方の開口25は、第1接続電極3によって埋め尽くされ、他方の開口25は、第2接続電極4によって埋め尽くされている。そして、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれの一部は、樹脂膜24の表面において開口25からはみ出している。第1接続電極3は、当該一方の開口25を介して、この開口25におけるパッド領域22Aにおいて配線膜22に対して電気的に接続されている。第2接続電極4は、当該他方の開口25を介して、この開口25におけるパッド領域22Aにおいて配線膜22に対して電気的に接続されている。これにより、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、素子5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗56)、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、開口25が形成された樹脂膜24および絶縁膜23は、開口25から第1接続電極3および第2接続電極4を露出させた状態で素子形成面2Aを覆っている。そのため、樹脂膜24の表面において開口25からはみ出した第1接続電極3および第2接続電極4を介して、チップ抵抗器1と回路基板9との間における電気的接続を達成することができる(図1(b)参照)。
図10A〜図10Gは、図9に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図10Aに示すように、基板2の元となる基板30を用意する。この場合、基板30の表面30Aは、基板2の素子形成面2Aであり、基板30の裏面30Bは、基板2の裏面2Bである。
そして、基板30の表面30Aに、SiO2等からなる絶縁層20を形成し、絶縁層20上に素子5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜22)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁層20の上にTiNまたはTiONの抵抗体膜21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜21の上にアルミニウム(Al)の配線膜22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばドライエッチングにより抵抗体膜21および配線膜22を選択的に除去し、図3Aに示すように、平面視で、抵抗体膜21が積層された一定幅の抵抗体膜ライン21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ライン21Aおよび配線膜22が切断された領域も形成されるとともに、前述したトリミング対象領域Xにおいてヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cが形成される(図2参照)。続いて、抵抗体膜ライン21Aの上に積層された配線膜22を選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ライン21A上に一定間隔Rをあけて配線膜22が積層された構成の素子5が得られる。
図10Aを参照して、素子5は、1枚の基板30に形成するチップ抵抗器1の数に応じて、基板30の表面30A上における多数の箇所に形成される。基板30において素子5(前述した抵抗56)が形成された1つの領域をチップ抵抗器領域Yというと、基板30の表面30Aには、抵抗56をそれぞれ有する複数のチップ抵抗器領域Y(つまり、素子5)が形成される。基板30の表面30Aにおいて、隣り合うチップ抵抗器領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。
次いで、図10Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜(CVD絶縁膜)45を、基板30の表面30Aの全域に亘って形成する。形成後のCVD絶縁膜45は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。CVD絶縁膜45は、絶縁層20および絶縁層20上の素子5(抵抗体膜21や配線膜22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、CVD絶縁膜45は、前述したトリミング対象領域X(図2参照)における配線膜22も覆っている。また、CVD絶縁膜45は、基板30の表面30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、CVD絶縁膜45は、表面30A(表面30A上の素子5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次いで、図10Bに示すように、CVD絶縁膜45を全て覆うように、基板30の表面30Aの全域に亘ってレジストパターン41を形成する。レジストパターン41には、開口42が形成されている。
図11は、図10Bの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図11を参照して、レジストパターン41の開口42は、多数のチップ抵抗器1(換言すれば、前述したチップ抵抗器領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器1の輪郭の間の領域(図11においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致している。そのため、開口42の全体形状は、互いに直交する直線部分42Aおよび42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターン41では、開口42において互いに直交する直線部分42Aおよび42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分42Aおよび42Bの交差部分43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図10Bを参照して、レジストパターン41をマスクとするプラズマエッチングにより、CVD絶縁膜45、絶縁層20および基板30のそれぞれを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子5(チップ抵抗器領域Y)の間の境界領域Zにおいて基板30の材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターン41の開口42と一致する位置(境界領域Z)には、CVD絶縁膜45および絶縁層20を貫通して基板30の厚さ途中まで到達する溝44が形成される。溝44は、互いに対向する側面44Aと、対向する側面44Aの下端(基板30の裏面30B側の端)とを結ぶ底面44Bとを有している。基板30の表面30Aを基準とした溝44の深さは約100μmであり、溝44の幅(対向する側面44Aの間隔)は約20μmである。
図12(a)は、図10Bの工程において溝が形成された後の基板の模式的な平面図であり、図12(b)は、図12(a)における一部の拡大図である。
図12(b)を参照して、溝44の全体形状は、平面視でレジストパターン41の開口42(図11参照)と一致する格子状になっている。そして、基板30の表面30Aでは、各素子5が形成されたチップ抵抗器領域Yのまわりを溝44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板30において素子5が形成された部分は、チップ抵抗器1の半製品50である。基板30の表面30Aでは、溝44に取り囲まれたチップ抵抗器領域Yに半製品50が1つずつ位置していて、これらの半製品50は、行列状に整列配置されている。
そして、レジストパターン41の開口42において尖った交差部分43(図11参照)に応じて、平面視おける半製品50のコーナー部60(チップ抵抗器1の交差部11に相当する)は、略直角に尖っている。
図10Bに示すように溝44が形成された後、レジストパターン41を除去し、図10Cに示すようにマスク65を用いたエッチングによって、CVD絶縁膜45を選択的に除去する。マスク65では、CVD絶縁膜45において平面視で各パッド領域22A(図9参照)に一致する部分に、開口66が形成されている。これにより、エッチングによって、CVD絶縁膜45において開口66と一致する部分が除去され、当該部分には、開口25が形成される。これにより、CVD絶縁膜45は、開口25において各パッド領域22Aを露出させるように形成されたことになる。1つの半製品50につき、開口25は2つ形成される。
図13Aは、本発明の一実施形態に係るチップ抵抗器の製造途中における模式的な断面図である。図13Bは、比較例に係るチップ抵抗器の製造途中における模式的な断面図である。
各半製品50において、図10Cに示すようにCVD絶縁膜45に2つの開口25を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブ70を各開口25のパッド領域22Aに接触させて、素子5の全体の抵抗値を検出する。そして、図13Aに示すように、CVD絶縁膜45越しにレーザ光Lを任意のヒューズ膜Fに照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜22をレーザ光Lでトリミングして、当該ヒューズ膜Fを溶断する。溶断されたヒューズ膜Fは、前述したトリミング対象領域Xの配線膜22においてトリミング(溶断)された部分である。このように必要な抵抗値となるようにヒューズ膜Fを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品50(換言すれば、チップ抵抗器1)全体の抵抗値を調整できる。
この実施形態におけるレーザ光Lのパワー(エネルギー)は、1.2μJ〜2.7μJであり、レーザ光Lのスポット径は、3μm〜5μmである。また、レーザ光LがCVD絶縁膜45を透過する際に、CVD絶縁膜45においてレーザ光Lが透過した部分は切断され、配線膜22が溶断された場所では、抵抗体膜21も溶断され、配線膜22とともに絶縁層20の一部が削られている。
前述したように、ヒューズ膜Fを構成する配線膜22の全体がCVD絶縁膜45によって覆われている。そのため、トリミング対象領域Xの配線膜22に照射されたレーザ光Lは、トリミング対象領域XのCVD絶縁膜45を透過してから配線膜22(ヒューズ膜F)に到達する。このようにすれば、レーザ光Lのエネルギーが効率よくヒューズ膜Fに集中(蓄積)し易くなるので、ヒューズ膜Fをレーザ光Lによって確実かつ迅速に溶断(レーザトリミング)できる。また、CVD絶縁膜45が配線膜22に接していることによって、配線膜22がCVD絶縁膜45によって確実に覆われることから、効率よくレーザ光のエネルギーを配線膜22に集中させることができるので、配線膜22の確実なトリミングを効果的に実現できる。
また、配線膜22がCVD絶縁膜45によって覆われているので、レーザトリミングによって破片が生じても、当該破片が異物68となって配線膜22(素子5)に接触して短絡を引き起こすことはない。つまり、トリミングに起因する短絡を防止できる。
以上により、ヒューズ膜Fの溶断(換言すれば、ヒューズ膜Fにおける配線膜22のトリミング)に関して、溶断性が向上するとともに、歩留まりが向上するので、チップ抵抗器1の生産性の向上を図ることができる。
ここで、CVD絶縁膜45は、CVD法によって成膜されることから、CVD絶縁膜45と同じ材料が配線膜22上にペーストされて成膜される場合に比べて、CVD絶縁膜45(特にトリミング対象領域Xの全域におけるCVD絶縁膜45)の膜質を安定させることができる。これにより、配線膜22をCVD絶縁膜45によって漏れなく覆うことができる。よって、トリミング対象領域Xのどの部分においても、配線膜22の確実なトリミングを実現できる。つまり、このようなCVD絶縁膜45を用いることによって、ヒューズ膜Fの溶断性の向上や歩留まりの向上を確実に図ることができる。
また、CVD絶縁膜45は、前述したように1000Å〜5000Åの厚さを有していることが望ましい。この場合、効率よくレーザ光のエネルギーを配線膜22に集中させることができるので、配線膜22の確実なトリミングを効果的に実現できる。なお、CVD絶縁膜45が1000Åよりも薄いと、レーザ光Lのエネルギーを効率よくヒューズ膜Fに集中させる効果が減ってしまう。逆に、CVD絶縁膜45が5000Åよりも厚いと、レーザ光LによってCVD絶縁膜45を切断することが困難になることによってヒューズ膜Fを溶断(トリミング)しにくくなる。
また、CVD時におけるCVD絶縁膜45のSiNの生成温度は、配線膜22のAlまたはAlCu合金の溶融温度よりも低いので、配線膜22を溶融させることなく、CVD絶縁膜45を配線膜22上に形成することができる。逆に、CVD絶縁膜45がSiO2(酸化シリコン)であると、SiO2の生成温度がAlまたはAlCu合金の溶融温度よりも高いことから、SiO2からなるCVD絶縁膜45の生成時に配線膜22が溶融してしまい、CVD絶縁膜45を配線膜22上に形成することができない。
そして、以上のような本願発明とは異なり、図13Bに示すように、配線膜22がCVD絶縁膜45によって覆われずに露出されている比較例の場合、レーザ光Lのエネルギーは、ヒューズ膜Fに集中(蓄積)できずに、ヒューズ膜Fの周りで分散してしまう。詳しくは、レーザ光Lのエネルギーは、配線膜22の表面で反射したり、配線膜22内で分散したり、抵抗体膜21や絶縁層20に吸収されてしまう。そのため、ヒューズ膜Fをレーザ光Lによって確実に溶断することが困難であるとともに溶断するのに時間がかかる。さらに、配線膜22(素子5)がむき出しになっているので、前述した異物68が素子5に付着して、素子5で短絡が発生する虞もある。
そして、前述したように半製品50全体の抵抗値を調整した後、図10Dに示すように、ポリイミドからなる感光性樹脂のシート46を、基板30に対して、CVD絶縁膜45の上から貼着する。
図14(a)および(b)は、図10Dの工程においてポリイミドのシートを基板に貼り付ける状態を示す図解的な斜視図である。
具体的には、図14(a)に示すように、基板30(厳密には基板30上のCVD絶縁膜45)に対して表面30A側からポリイミドのシート46を被せた後に、図14(b)に示すように回転するローラ47によってシート46を基板30に押し付ける。
図10Dに示すように、シート46をCVD絶縁膜45の表面全域に貼り付けたとき、シート46の一部が溝44側に僅かに入り込んでいるものの、溝44の側面44Aにおける素子5側(表面30A側)の一部を覆っているだけで、シート46は、溝44の底面44Bまで届いていない。そのため、シート46と溝44の底面44Bとの間の溝44内には、溝44とほぼ同じ大きさの空間Sが形成されている。このときのシート46の厚さは、10μm〜30μmである。また、シート46の一部は、CVD絶縁膜45の各開口25に入り込んで開口25を塞いでいる。
次いで、シート46に熱処理を施す。これにより、シート46の厚みは、約5μmまで熱収縮する。
次いで、図10Eに示すように、シート46をパターニングし、シート46において平面視で溝44および配線膜22の各パッド領域22A(開口25)と一致する部分を選択的に除去する。具体的には、平面視で溝44および各パッド領域22Aに整合(一致)するパターンの開口61が形成されたマスク62を用いて、シート46を、当該パターンで露光して現像する。これにより、溝44および各パッド領域22Aの上方でシート46が分離されるとともに、シート46において分離された縁部分が溝44側へ少し垂れつつ溝44の側面44Aに重なるので、当該縁部分に、前述した(ラウンド形状の側面24Bを有する)膨出部24Aが自然に形成される。膨出部24Aが形成されることにより、前述した交差部27がシート46で覆われたことになる。
また、このとき、シート46においてCVD絶縁膜45の各開口25に入り込んでいた部分も除去されるので、開口25が開放される。
次いで、無電解めっきによって、Ni、PdおよびAuを積層することで構成されたNi/Pd/Au積層膜を各開口25におけるパッド領域22A上に形成する。このとき、Ni/Pd/Au積層膜を開口25からシート46の表面まではみ出るようにする。これにより、各開口25内のNi/Pd/Au積層膜が、図10Fに示す第1接続電極3および第2接続電極4となる。
次いで、第1接続電極3および第2接続電極4間での通電検査が行われた後に、基板30が裏面30Bから研削される。
具体的には、溝44を形成した後に、図10Gに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状の支持基材71が、接着剤72を介して、各半製品50における第1接続電極3および第2接続電極4側(つまり、素子形成面2A)に貼着される。これにより、各半製品50が支持基材71に支持される。ここで、接着剤72が一体となった支持基材71として、たとえば、ラミネートシートを用いることができる。
各半製品50が支持基材71に支持された状態で、基板30を裏面30B側から研削する。研削によって、溝44の底面44B(図10F参照)に達するまで基板30が薄型化されると、隣り合う半製品50を連結するものがなくなるので、溝44を境界として基板30が分割され、半製品50が個別に分離する。つまり、溝44(換言すれば、境界領域Z)において基板30が切断(分断)され、これによって、個々の半製品50が切り出される。
その後、各半製品50における基板30の裏面30Bを研磨して鏡面化する。
各半製品50では、溝44の側面44Aをなしていた部分が、チップ抵抗器1における基板2の側面2C〜2Fのいずれかとなり、裏面30Bが裏面2Bとなる。つまり、前述した溝44を形成する工程(図10B参照)は、側面2C〜2Fを形成する工程に含まれる。そして、CVD絶縁膜45が絶縁膜23となる。また、分離したシート46が樹脂膜24となる。
チップ抵抗器1のチップサイズが小さくても、このように先に溝44を形成しておいてから基板30を裏面30Bから研削することによって、半製品50(チップ抵抗器1)を個片化することができる。そのため、従来のようにダイシングソーで基板30をダイシングすることでチップ抵抗器1を個片にする場合と比べて、ダイシング工程省略によって、コスト低減や時間短縮を図り、歩留まり向上を達成できる。
図15は、図10Gの工程直後におけるチップ抵抗器の半製品を示す図解的な斜視図である。
そして、半製品50を個別に分離した直後の状態では、各半製品50は、図15に示すように、引き続き支持基材71にくっついていて、支持基材71によって支持されている。このとき、各半製品50では、裏面30B(裏面2B)側が支持基材71から露出されている。図15において破線円で囲まれた部分の拡大図で示すように、半製品50では、裏面2B、側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fにおいて隣り合うもの同士の交差部11が、略直角に尖っている。
図16は、図10Gの次の工程を示す第1の模式図である。図17は、図10Gの次の工程を示す第2の模式図である。
図16を参照して、前述したように裏面30Bから研削することによって半製品50を個別に分離した後、支持基材71において半製品50が付着した側とは反対側の側面(図16における下側面)の重心位置に対して、回転軸75が連結される。回転軸75は、図示しないモータ(図示せず)からの駆動力を受けることによって、軸線周りに、時計方向CWと、反時計方向CCWとの両方向に回転可能である。半製品50を支持した状態にある支持基材71は、半製品50の裏面30Bに沿う平面内で、回転軸75と共回り(一体回転)する。
そして、支持基材71において半製品50が付着した側を臨むように、エッチングノズル76が配置される。エッチングノズル76は、たとえば支持基材71と平行に延びる管状であって、半製品50を臨む位置に供給口77が形成されている。エッチングノズル76は、薬液等が詰まったタンク(図示せず)につながっている。図17を参照して、エッチングノズル76は、支持基材71と平行な状態で、破線矢印で示すように、供給口77側とは反対側を支点Pとして揺動可能である。回転軸75およびエッチングノズル76は、スピンエッチャー80の一部を構成している。
半製品50を個別に分離して裏面30Bを研磨した後、支持基材71が、時計方向CWおよび反時計方向CCWの一方または両方に所定パターンで回転するとともに、エッチングノズル76が揺動する。この状態で、エッチングノズル76の供給口77から、支持基材71によって支持された各半製品50の裏面2B側に対して、エッチング剤(エッチング液)が満遍なく噴射される。これにより、支持基材71によって支持された各半製品50は、裏面2B側から等方的にケミカルエッチング(ウェットエッチング)される。特に、各半製品50では、裏面2B、側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fにおいて隣り合うもの同士の交差部11が、等方エッチングされる。エッチング前の交差部11が尖っていた場合には(図15参照)、エッチングに伴う結晶欠陥等によって各交差部11の角が削れやすくなるので、各交差部11は、等方エッチングによって、最終的には、ラウンド形状に整形される(図17において破線円で囲んだ拡大部分を参照)。また、等方エッチングが、支持基材71を回転させた状態で実行されることにより、各半製品50の交差部11に対してエッチング剤が満遍なく浴びせられるので、各半製品50の交差部11を、均一に、ラウンド状に整形することができる。さらに、等方エッチングが、支持基材71によって支持された複数の半製品50(チップ抵抗器1)に対して実行される。これにより、複数の半製品50において、一度に、各半製品50の交差部11をラウンド状に整形することができる。
また、等方エッチングの際、エッチング液は、霧状となって、各半製品50の裏面2B側に向けて吐出される(スプレー噴霧)されるのが好ましい。エッチング液が液状のままだと、交差部11だけでなく、裏面2B、側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fもエッチングされてしまうが、エッチング液が霧状になった状態で半製品50に吐出される場合には、霧状のエッチング液が交差部11に付着し易くなって交差部11が優先的にエッチングされるので、裏面2B、側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2Fのエッチングを抑えつつ、各交差部11をラウンド状に整形することができる。
各交差部11がラウンド状になると、エッチング処理が終了し、チップ抵抗器1(図9参照)が完成する。その後、エッチングノズル76からリンス液(水)がチップ抵抗器1に浴びせられ、チップ抵抗器1の洗浄が行われる。このとき、支持基材71が回転していたり、エッチングノズル76が揺動したりしていてもよい。チップ抵抗器1は、洗浄後、支持基材71から剥離され、たとえば、前述した回路基板9(図1(b)参照)に実装される。
ここで、エッチング液は、酸性またはアルカリ性のいずれでもよいが、交差部11を等方エッチングする場合には、酸性のエッチング液を用いるのが好ましい。アルカリ性のエッチング液を用いる場合、交差部11は異方性エッチングされるので、酸性のエッチング液を用いる場合に比べて、各交差部11をラウンド状にするまでに時間がかかる。酸性のエッチング液の一例として、HF(フッ化水素)およびHNO3(硝酸)のベース液に対してH2SO4(硫酸)とCH3COOH(酢酸)とを混合したものが用いられる。このエッチング液では、粘度が硫酸によって調整され、エッチングレートが酢酸によって調整されている。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、基板30を個別のチップ抵抗器1に分割する際、基板30を裏面30B側から溝44の底面44Bまで研削している(図10F参照)。これに代え、基板30において平面視で溝44と一致する部分を選択的に裏面30Bからエッチングして除去することで、基板30を個別のチップ抵抗器1に分割してもよい。また、ダイシングブレード(図示せず)によって基板30をダイシングして、個別のチップ抵抗器1に分割しても構わない。
また、チップ抵抗器1(第1接続電極3、第2接続電極4および素子5等)は、半導体製造プロセスを用いて基板2上に形成されてもよく、その場合、基板2や基板30は、Si(シリコン)からなる半導体基板であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
<第1参考例に係る発明>
(1)第1参考例に係る発明の特徴
たとえば、第1参考例に係る発明の特徴は、以下のA1〜A14である。
(A1)基板の表面上に設定した複数のチップ部品領域にそれぞれ素子を形成する工程と、前記複数のチップ部品領域の境界領域に前記基板の表面から所定の深さの溝を形成する工程と、前記基板の裏面を前記溝に到達するまで研削して、前記基板を複数のチップ部品に分割する工程とを含む、チップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板に形成された複数のチップ部品領域を一斉に個々のチップ部品に分割できるので、チップ部品の生産性の向上を図ることができる。
(A2)前記溝を形成する工程が、前記境界領域に対応したレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとしたエッチングによって前記溝を形成する工程とを含む、A1に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、エッチングによって溝を高精度に形成できるので、溝によって分割された個々のチップ部品では、外形寸法精度の向上を図ることができる。また、レジストパターンに応じて、溝の間隔を微細化できるので、隣り合う溝の間に形成されるチップ部品の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、チップ部品を削り出すのではないから、チップ部品のコーナー部にチッピングが生じることを低減でき、チップ部品の外観の向上を図ることができる。
(A3)前記エッチングがプラズマエッチングである、A2に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、溝を一層高精度に形成でき、溝の間隔を一層微細化できるので、チップ部品の外形寸法精度および外観の更なる向上を図り、更なる小型化を図ることができる。
(A4)前記素子を形成する工程が、抵抗体を形成する工程を含み、前記チップ部品がチップ抵抗器である、A1〜A3のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、小型化ならびに生産性、外形寸法精度および外観の向上を図ることができるチップ抵抗器を提供できる。
(A5)前記抵抗体を形成する工程が、前記基板の表面上に抵抗体膜を形成する工程と、前記抵抗体膜に接するように配線膜を形成する工程と、前記抵抗体膜および前記配線膜をパターニングすることにより複数の前記抵抗体を形成する工程とを含み、前記素子を外部接続するための外部接続電極を前記基板上に形成する工程と、前記複数の抵抗体を前記外部接続電極に切り離し可能にそれぞれ接続する複数のヒューズを前記基板上に形成する工程とをさらに含む、A4に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ抵抗器では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(A6)前記素子を形成する工程が、キャパシタ素子を形成する工程を含み、前記チップ部品がチップコンデンサである、A1〜A3のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、小型化ならびに生産性、外形寸法精度および外観の向上を図ることができるチップコンデンサを提供できる。
(A7)前記キャパシタ素子を形成する工程が、前記基板の表面上に容量膜を形成する工程と、前記容量膜に接する電極膜を形成する工程と、前記電極膜を複数の電極膜部分に分割することにより、前記複数の電極膜部分に対応した複数のキャパシタ要素を形成する工程と、前記素子を外部接続するための外部接続電極を前記基板上に形成する工程と、前記複数のキャパシタ要素を前記外部接続電極に切り離し可能にそれぞれ接続する複数のヒューズを前記基板上に形成する工程とをさらに含む、A6に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップコンデンサでは、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(A8)各チップ部品領域の平面形状が、直交する二辺がそれぞれ0.4mm以下、0.2mm以下の矩形である、A1〜A7のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、極めて小型のチップ部品を提供できる。
(A9)前記複数のチップ部品領域の間に、幅1μm〜60μmの帯状境界領域が設けられている、A1〜A8のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、極めて小型のチップ部品を提供できる。
(A10)基板と、基板の表面上に形成された複数の素子要素と、前記基板の表面上に形成された外部接続電極と、前記基板の表面上に形成され、前記複数の素子要素を前記外部接続電極にそれぞれ切断可能に接続する複数のヒューズとを含み、前記基板の側面が、不規則パターンの粗面である、チップ部品。
この構成に関し、レジストパターンを用いたエッチングによって基板の表面から所定の深さの溝を形成することによって基板を溝において複数のチップ部品に分割すると、各チップ部品では、溝によって形成された基板の側面が、不規則パターンの粗面となる。このようにエッチングを用いる場合には、基板に形成された複数の素子要素を一斉に個々のチップ部品に分割できるので、チップ部品の生産性の向上を図ることができる。また、エッチングによって溝を高精度に形成できるので、溝によって分割された個々のチップ部品では、外形寸法精度の向上を図ることができる。また、レジストパターンに応じて、溝の間隔を微細化できるので、隣り合う溝の間に形成されるチップ部品の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、チップ部品を削り出すのではないから、チップ部品のコーナー部にチッピングが生じることを低減でき、チップ部品の外観の向上を図ることができる。
(A11)前記素子要素が、前記基板の表面上に形成された抵抗体膜と、前記抵抗体膜に接して積層された配線膜とを含む抵抗体であり、前記チップ部品がチップ抵抗器である、A10に記載のチップ部品。
この構成によれば、小型化ならびに生産性、外形寸法精度および外観の向上を図ることができるチップ抵抗器を提供できる。また、チップ抵抗器では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(A12)前記素子要素が、前記基板の表面上に形成された容量膜と、前記容量膜に接して形成された電極膜とを含むキャパシタ要素であり、前記チップ部品がチップコンデンサである、A10に記載のチップ部品。
この構成によれば、小型化ならびに生産性、外形寸法精度および外観の向上を図ることができるチップコンデンサを提供できる。また、チップコンデンサでは、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(A13)チップ部品は、チップインダクタであってもよい。
(A14)チップ部品は、チップダイオードであってもよい。
(2)第1参考例に係る発明の実施形態
以下では、第1参考例の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図18〜図40で示した符号は、これらの図面でのみ有効であり、他の実施形態に使用されていても、当該他の実施形態の符号と同じ要素を示すものではない。
図18(a)は、第1参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図であり、図18(b)は、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態を示す模式的な側面図である。
このチップ抵抗器a1は、微小なチップ部品であり、図18(a)に示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器a1の平面形状は、直交する二辺(長辺a81、短辺a82)がそれぞれ0.4mm以下、0.2mm以下の矩形である。好ましくは、チップ抵抗器a1の寸法に関し、長さL(長辺a81の長さ)が約0.3mmであり、幅W(短辺a82の長さ)が約0.15mmであり、厚さTが約0.1mmである。
このチップ抵抗器a1は、基板上に多数個のチップ抵抗器a1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器a1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器a1は、チップ抵抗器a1の本体(抵抗器本体)を構成する基板a2と、外部接続電極となる第1接続電極a3および第2接続電極a4と、第1接続電極a3および第2接続電極a4によって外部接続される素子a5とを主に備えている。
基板a2は、略直方体のチップ形状である。基板a2において、図18(a)における上面は、表面a2Aである。表面a2Aは、基板a2において素子a5が形成される面(素子形成面)であり、略長方形状である。基板a2の厚さ方向において表面a2Aとは反対側の面は、裏面a2Bである。表面a2Aと裏面a2Bとは、ほぼ同形状であり、互いに平行である。ただし、表面a2Aは、裏面a2Bよりも大きい。そのため、表面a2Aに直交する方向から見た平面視において、裏面a2Bは、表面a2Aの内側におさまる。表面a2Aにおける一対の長辺a81および短辺a82によって区画された矩形状の縁を、縁部a85ということにし、裏面a2Bにおける一対の長辺a81および短辺a82によって区画された矩形状の縁を、縁部a90ということにする。
基板a2は、表面a2Aおよび裏面a2B以外に、これらの面に交差して延びてこれらの面の間を繋ぐ側面a2C、側面a2D、側面a2Eおよび側面a2Fを有している。
側面a2Cは、表面a2Aおよび裏面a2Bにおける長手方向一方側(図18(a)における左手前側)の短辺a82間に架設されていて、側面a2Dは、表面a2Aおよび裏面a2Bにおける長手方向他方側(図18(a)における右奥側)の短辺a82間に架設されている。側面a2Cおよび側面a2Dは、当該長手方向における基板a2の両端面である。側面a2Eは、表面a2Aおよび裏面a2Bにおける短手方向一方側(図18(a)における左奥側)の長辺a81間に架設されていて、側面a2Fは、表面a2Aおよび裏面a2Bにおける短手方向他方側(図18(a)における右手前側)の長辺a81間に架設されている。側面a2Eおよび側面a2Fは、当該短手方向における基板a2の両端面である。側面a2Cおよび側面a2Dのそれぞれは、側面a2Eおよび側面a2Fのそれぞれと交差(略直交)している。前述したように表面a2Aが裏面a2Bよりも大きいので、側面a2C〜a2Fのそれぞれは、裏面a2B側の上底と表面a2A側の下底とを有する等脚台形状をなしている。つまり、チップ抵抗器a1の側面形状は、等脚台形状である。そのため、表面a2A〜側面a2Fにおいて隣り合うもの同士が鋭角または鈍角を成している。具体的には、表面a2Aと、側面a2C、側面a2D、側面a2Eおよび側面a2Fのそれぞれとは鋭角となしていて、裏面a2Bと、側面a2C、側面a2D、側面a2Eおよび側面a2Fのそれぞれとは鈍角となしている。なお、説明の便宜上、図18以降の各図では、側面a2C〜a2Fのそれぞれを実際よりも傾斜させて(誇張して)示している。
基板a2では、表面a2Aおよび側面a2C〜a2Fのそれぞれの全域が絶縁膜a23で覆われている。そのため、厳密には、図18(a)では、表面a2Aおよび側面a2C〜a2Fのそれぞれの全域は、絶縁膜a23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、チップ抵抗器a1は、樹脂膜a24を有している。樹脂膜a24は、第1樹脂膜a24Aと、第1樹脂膜a24Aとは別の第2樹脂膜a24Bとを含んでいる。第1樹脂膜a24Aは、側面a2C、側面a2D、側面a2Eおよび側面a2Fのそれぞれにおいて表面a2Aの縁部a85から裏面a2B側へ少し離れた領域に形成されている。第2樹脂膜a24Bは、表面a2A上の絶縁膜a23において表面a2Aの縁部a85に重ならない部分(縁部a85の内側領域)を覆っている。絶縁膜a23および樹脂膜a24については、以降で詳説する。
第1接続電極a3および第2接続電極a4は、基板a2の表面a2A上において縁部a85よりも内側の領域に形成されていて、表面a2A上の第2樹脂膜a24Bから部分的に露出されている。換言すれば、第2樹脂膜a24Bは、第1接続電極a3および第2接続電極a4を露出させるように表面a2A(厳密には表面a2A上の絶縁膜a23)を覆っている。第1接続電極a3および第2接続電極a4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で表面a2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極a3および第2接続電極a4は、表面a2Aの長手方向に間隔を隔てて配置されており、表面a2Aの短手方向において長手である。図18(a)では、表面a2Aにおいて、側面a2C寄りの位置に第1接続電極a3が設けられ、側面a2D寄りの位置に第2接続電極a4が設けられている。
素子a5は、回路素子であって、基板a2の表面a2Aにおける第1接続電極a3と第2接続電極a4との間の領域に形成されていて、絶縁膜a23および第2樹脂膜a24Bによって上から被覆されている。素子a5は、前述した抵抗器本体を構成している。この実施形態の素子a5は、抵抗a56である。抵抗a56は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを表面a2A上でマトリックス状に配列した回路網によって構成されている。抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子a5は、後述する配線膜a22に電気的に接続されていて、配線膜a22を介して第1接続電極a3と第2接続電極a4とに電気的に接続されている。
図18(b)に示すように、第1接続電極a3と第2接続電極a4を実装基板a9に対向させて、半田a13によって実装基板a9の回路(図示せず)に対して電気的かつ機械的に接続することにより、チップ抵抗器a1を実装基板a9に実装(フリップチップ接続)することができる。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極a3および第2接続電極a4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
図19は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図19を参照して、素子a5は、抵抗回路網となっている。具体的に、素子a5は、行方向(基板a2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板a2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子a5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板a2の表面a2Aには、抵抗回路を素子a5に対して電気的に組み込んだり、または、素子a5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズ(ヒューズ)Fが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第2接続電極a3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第2接続電極a3に対して切断可能(切り離し可能)に接続している。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、前述した抵抗器本体を構成している。
図20Aは、図19に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図20Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図20AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図20Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図20AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図20A、図20Bおよび図20Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器a1は、前述した配線膜a22、絶縁膜a23および樹脂膜a24の他に、絶縁層a20と抵抗体膜a21とをさらに備えている(図20Bおよび図20C参照)。絶縁層a20、抵抗体膜a21、配線膜a22、絶縁膜a23および樹脂膜a24は、基板a2(表面a2A)上に形成されている。
絶縁層a20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁層a20は、基板a2の表面a2Aの全域を覆っている。絶縁層a20の厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜a21は、絶縁層a20上に形成されている。抵抗体膜a21は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜a21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜a21は、第1接続電極a3と第2接続電極a4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ラインa21A」という)を構成していて、抵抗体膜ラインa21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図20A参照)。
抵抗体膜ラインa21A上には、配線膜a22が積層されている。配線膜a22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜a22の厚さは、約8000Åである。配線膜a22は、抵抗体膜ラインa21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ラインa21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ラインa21Aおよび配線膜a22の電気的特徴を回路記号で示すと、図21の通りである。すなわち、図21(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ラインa21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜a22が積層された領域では、配線膜a22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜a22で抵抗体膜ラインa21Aが短絡されている。よって、図21(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ラインa21A同士は抵抗体膜a21および配線膜a22で接続されているから、図20Aに示す素子a5の抵抗回路網は、図21(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜a21および配線膜a22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子a5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ラインa21A(抵抗体膜a21)と、抵抗体膜ラインa21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜a22とを含み、配線膜a22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ラインa21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ラインa21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板a2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ラインa21A上に積層された配線膜a22は、抵抗体Rを形成するとともに、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図19参照)。
図22(a)は、図19に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、図22(b)は、図22(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図22(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜a21上に積層された配線膜a22により形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ラインa21A上に積層された配線膜a22と同じレイヤーに、配線膜a22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜a22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜a21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子a5を第1接続電極a3および第2接続電極a4に接続するための配線膜が、配線膜a22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜a22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜a22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図19および図22(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第2接続電極a3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜a22の下方にも抵抗体膜a21が形成されている(図22(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜a22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜a22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜a21)の一部と抵抗体膜a21上の配線膜a22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図23は、第1参考例の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図23を参照して、素子a5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極a3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図24および図25においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図22(a)参照)を介して直列に接続されている。
図23に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子a5は、第1接続電極a3および第2接続電極a4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極a3および第2接続電極a4が接続されたチップ抵抗器a1が構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子a5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器a1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子a5に組み込まれることになる。よって、素子a5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子a5(抵抗a56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器a1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図24は、第1参考例の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図23に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子a5を構成する代わりに、図24に示すように素子a5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極a3および第2接続電極a4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子a5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子a5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子a5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器a1全体の抵抗値を調整することができる。
図25は、第1参考例のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図25に示す素子a5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。従って、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子a5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。従って、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり、チップ抵抗器a1では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器a1を共通の設計で実現することができる。
以上のように、このチップ抵抗器a1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図26は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図26を参照して、チップ抵抗器a1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図26では、前述した素子a5については簡略化して示しているとともに、基板a2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述した絶縁膜a23および樹脂膜a24について説明する。
絶縁膜a23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。絶縁膜a23は、表面a2Aおよび側面a2C〜a2Fのそれぞれにおける全域に亘って設けられている。表面a2A上の絶縁膜a23は、抵抗体膜a21および抵抗体膜a21上の各配線膜a22(つまり、素子a5)を表面(図26の上側)から被覆していて、素子a5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、絶縁膜a23は、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜a22も覆っている(図22(b)参照)。また、絶縁膜a23は、素子a5(配線膜a22および抵抗体膜a21)に接しており、抵抗体膜a21以外の領域では絶縁層a20にも接している。これにより、表面a2A上の絶縁膜a23は、表面a2A全域を覆って素子a5および絶縁層a20を保護する保護膜として機能している。また、表面a2Aでは、絶縁膜a23によって、抵抗体R間における配線膜a22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ラインa21A間における短絡)が防止されている。
一方、側面a2C〜a2Fのそれぞれに設けられた絶縁膜a23は、側面a2C〜a2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。側面a2C〜a2Fのそれぞれと表面a2Aとの境界は、前述した縁部a85であるが、絶縁膜a23は、当該境界(縁部a85)も覆っている。絶縁膜a23において、縁部a85を覆っている部分(縁部a85に重なっている部分)を端部a23Aということにする。
樹脂膜a24は、絶縁膜a23とともにチップ抵抗器a1の表面a2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜a24の厚みは、約5μmである。
樹脂膜a24は、前述したように、第1樹脂膜a24Aと第2樹脂膜a24Bとを有している。
第1樹脂膜a24Aは、側面a2C〜a2Fのそれぞれにおいて縁部a85(絶縁膜a23の端部a23A)から裏面a2B側へ少し離れた部分を被覆している。具体的に、第1樹脂膜a24Aは、側面a2C〜a2Fのそれぞれにおいて、表面a2Aの縁部a85から裏面a2B側に間隔Kを開けた領域に形成されている。ただし、第1樹脂膜a24Aは、裏面a2Bよりも表面a2A側へ偏って配置されている。側面a2Cおよび2Dの第1樹脂膜a24Aは、短辺a82に沿って筋状に延びており、短辺a82方向における全域にわたって形成されている(図18(a)参照)。側面a2Eおよび2Fの第1樹脂膜a24Aは、長辺a81に沿って筋状に延びており、長辺a81方向における全域にわたって形成されている(図18(a)参照)。側面a2C〜a2Fのそれぞれにおける第1樹脂膜a24Aは、表面a2Aの縁(縁部a85)よりも外方に張り出している。詳しくは、第1樹脂膜a24Aは、表面a2Aに沿う方向において縁部a85よりも外方へ円弧状に膨出している。そのため、平面視では、第1樹脂膜a24Aがチップ抵抗器a1の輪郭をなす。
第2樹脂膜a24Bは、表面a2A上の絶縁膜a23の表面(絶縁膜a23に被覆された抵抗体膜a21および配線膜a22も含む)の略全域を被覆している。具体的に、第2樹脂膜a24Bは、絶縁膜a23の端部a23A(表面a2Aの縁部a85)を覆わないように、端部a23Aから外れて形成されている。そのため、第1樹脂膜a24Aと第2樹脂膜a24Bとは、連続しておらず、端部a23A(縁部a85の全域)において途切れている。これにより、絶縁膜a23の端部a23A(縁部a85の全域)は、外部に露出されている。
第2樹脂膜a24Bにおいて、平面視で離れた2つの位置には、開口a25が1つずつ形成されている。各開口a25は、第2樹脂膜a24Bおよび絶縁膜a23を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通する貫通孔である。そのため、開口a25は、第2樹脂膜a24Bだけでなく絶縁膜a23にも形成されている。各開口a25からは、配線膜a22の一部が露出されている。配線膜a22において各開口a25から露出された部分は、外部接続用のパッド領域a22Aとなっている。
2つの開口a25のうち、一方の開口a25は、第1接続電極a3によって埋め尽くされ、他方の開口a25は、第2接続電極a4によって埋め尽くされている。そして、第1接続電極a3および第2接続電極a4のそれぞれの一部は、第2樹脂膜a24Bの表面において開口a25からはみ出している。第1接続電極a3は、当該一方の開口a25を介して、この開口a25におけるパッド領域a22Aにおいて配線膜a22に対して電気的に接続されている。第2接続電極a4は、当該他方の開口a25を介して、この開口a25におけるパッド領域a22Aにおいて配線膜a22に対して電気的に接続されている。これにより、第1接続電極a3および第2接続電極a4のそれぞれは、素子a5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜a22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗a56)、第1接続電極a3および第2接続電極a4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、開口a25が形成された第2樹脂膜a24Bおよび絶縁膜a23は、開口a25から第1接続電極a3および第2接続電極a4を露出させた状態で表面a2Aを覆っている。そのため、第2樹脂膜a24Bの表面において開口a25からはみ出した第1接続電極a3および第2接続電極a4を介して、チップ抵抗器a1と実装基板a9との間における電気的接続を達成することができる(図18(b)参照)。
ここで、第2樹脂膜a24Bにおいて第1接続電極a3と第2接続電極a4との間に位置する部分(「中央部分a24C」ということにする)は、第1接続電極a3および第2接続電極a4よりも高くなっている(表面a2Aから離れている)。つまり、中央部分a24Cは、第1接続電極a3および第2接続電極a4以上の高さの表面a24Dを有している。表面a24Dは、表面a2Aから離れる方向へ向けて凸湾曲している。
図27A〜図27Gは、図26に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図27Aに示すように、基板a2の元となる基板a30を用意する。この場合、基板a30の表面a30Aは、基板a2の表面a2Aであり、基板a30の裏面a30Bは、基板a2の裏面a2Bである。
そして、基板a30の表面a30Aを熱酸化して、表面a30AにSiO2等からなる絶縁層a20を形成し、絶縁層a20上に素子a5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜a22)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁層a20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜a21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜a21に接するように抵抗体膜a21の上にアルミニウム(Al)の配線膜a22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜a21および配線膜a22を選択的に除去してパターニングし、図20Aに示すように、平面視で、抵抗体膜a21が積層された一定幅の抵抗体膜ラインa21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ラインa21Aおよび配線膜a22が切断された領域も形成されるとともに、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図19参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ラインa21Aの上に積層された配線膜a22を選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ラインa21A上に一定間隔Rをあけて配線膜a22が積層された構成の素子a5が得られる。この際、抵抗体膜a21および配線膜a22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子a5全体の抵抗値を測定してもよい。
図27Aを参照して、素子a5は、1枚の基板a30に形成するチップ抵抗器a1の数に応じて、基板a30の表面a30A上における多数の箇所に形成される。基板a30において素子a5(前述した抵抗a56)が形成された1つの領域をチップ部品領域Y(またはチップ抵抗器領域Y)というと、基板a30の表面a30Aには、抵抗a56をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子a5)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器a1(図26参照)を平面視したものと一致する。そして、基板a30の表面a30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板a30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器a1の大量生産が可能になる。
次いで、図27Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜a45を、基板a30の表面a30Aの全域に亘って形成する。絶縁膜a45は、絶縁層a20および絶縁層a20上の素子a5(抵抗体膜a21や配線膜a22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜a45は、前述したトリミング対象領域X(図19参照)における配線膜a22も覆っている。また、絶縁膜a45は、基板a30の表面a30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面a30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜a45は、表面a30A(表面a30A上の素子a5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次いで、図27Bに示すように、絶縁膜a45を全て覆うように、基板a30の表面a30Aの全域に亘ってレジストパターンa41を形成する。レジストパターンa41には、開口a42が形成されている。
図28は、図27Bの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図28を参照して、レジストパターンa41の開口a42は、多数のチップ抵抗器a1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器a1の輪郭の間の領域(図28においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口a42の全体形状は、互いに直交する直線部分a42Aおよびa42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターンa41では、開口a42において互いに直交する直線部分a42Aおよびa42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分a42Aおよびa42Bの交差部分a43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図27Bを参照して、レジストパターンa41をマスクとするプラズマエッチングにより、絶縁膜a45、絶縁層a20および基板a30のそれぞれを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子a5(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおいて基板a30の材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターンa41の開口a42と一致する位置(境界領域Z)には、絶縁膜a45および絶縁層a20を貫通して基板a30の表面a30Aから基板a30の厚さ途中まで到達する所定深さの溝a44が形成される。溝a44は、互いに対向する1対の側壁a44Aと、当該1対の側壁a44Aの下端(基板a30の裏面a30B側の端)の間を結ぶ底壁a44Bとによって区画されている。基板a30の表面a30Aを基準とした溝a44の深さは約100μmであり、溝a44の幅(対向する側壁a44Aの間隔)は20μm前後である。ただし、溝a44の幅は、底壁a44Bに近付くに従って広がっている。そのため、各側壁a44Aにおいて溝a44を区画する側面(区画面44C)は、基板a30の表面a30Aに垂直な平面Hに対して傾斜している。
基板a30における溝a44の全体形状は、平面視でレジストパターンa41の開口a42(図28参照)と一致する格子状になっている。そして、基板a30の表面a30Aでは、各素子a5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝a44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板a30において素子a5が形成された部分は、チップ抵抗器a1の半製品a50である。基板a30の表面a30Aでは、溝a44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品a50が1つずつ位置していて、これらの半製品a50は、行列状に整列配置されている。このように溝a44を形成することによって、基板a30を複数のチップ部品領域Y毎の基板a2(前述した抵抗器本体)に分離する。
図27Bに示すように溝a44が形成された後、レジストパターンa41を除去し、図27Cに示すようにマスクa65を用いたエッチングによって、絶縁膜a45を選択的に除去する。マスクa65では、絶縁膜a45において平面視で各パッド領域a22A(図26参照)に一致する部分に、開口a66が形成されている。これにより、エッチングによって、絶縁膜a45において開口a66と一致する部分が除去され、当該部分には、開口a25が形成される。これにより、絶縁膜a45は、開口a25において各パッド領域a22Aを露出させるように形成されたことになる。1つの半製品a50につき、開口a25は2つ形成される。
各半製品a50において、絶縁膜a45に2つの開口a25を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブa70を各開口a25のパッド領域a22Aに接触させて、素子a5の全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜a45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図19参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜a22をレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品a50(換言すれば、チップ抵抗器a1)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜a45が素子a5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子a5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜a45がヒューズF(抵抗体膜a21)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。
その後、CVD法によって絶縁膜a45上にSiNを形成し、絶縁膜a45を厚くする。このとき、図27Dに示すように、溝a44の内周面(前述した側壁a44Aの区画面44Cや底壁a44Bの上面)の全域にも絶縁膜a45が形成される。最終的な絶縁膜a45(図27Dに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜a45の一部は、各開口a25に入り込んで開口a25を塞いでいる。
その後、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板a30に対して、絶縁膜a45の上からスプレー塗布して、図27Dに示すように感光性樹脂の塗布膜a46を形成する。液状の感光性樹脂は、溝a44の入口(絶縁膜a23の端部a23Aや基板a2の縁部a85に相当する部分)では留まることができずに流れてしまう。そのため、液状の感光性樹脂は、溝a44の側壁a44A(区画面44C)において基板a30の表面a30Aよりも裏面a30B側(底壁a44B側)の領域と、表面a30A上で絶縁膜a23の端部a23Aから外れた領域とに付着し、それぞれの領域において塗布膜a46(樹脂膜)となる。表面a30A上の塗布膜a46は、表面張力によって上方へ凸湾曲した形状となる。
なお、溝a44の側壁a44Aに形成された塗布膜a46は、溝a44の側壁a44Aにおける素子a5側(表面a30A側)の一部を覆っているだけで、塗布膜a46は、溝a44の底壁a44Bまで届いていない。そのため、溝a44は、塗布膜a46によって塞がれていない。
次いで、塗布膜a46に熱処理(キュア処理)を施す。これにより、塗布膜a46の厚みが熱収縮するとともに、塗布膜a46が硬化して膜質が安定する。
次いで、図27Eに示すように、塗布膜a46をパターニングし、表面a30A上の塗布膜a46において平面視で配線膜a22の各パッド領域a22A(開口a25)と一致する部分を選択的に除去する。具体的には、平面視で各パッド領域a22Aに整合(一致)するパターンの開口a61が形成されたマスクa62を用いて、塗布膜a46を、当該パターンで露光して現像する。これにより、各パッド領域a22Aの上方で塗布膜a46が分離される。次いで、図示しないマスクを用いたRIEによって各パッド領域a22A上の絶縁膜a45が除去されることで、各開口a25が開放されてパッド領域a22Aが露出される。
次いで、無電解めっきによって、Ni、PdおよびAuを積層することで構成されたNi/Pd/Au積層膜を各開口a25におけるパッド領域a22A上に形成する。このとき、Ni/Pd/Au積層膜を開口a25から塗布膜a46の表面まではみ出るようにする。これにより、各開口a25内のNi/Pd/Au積層膜が、図27Fに示す第1接続電極a3および第2接続電極a4となる。なお、第1接続電極a3および第2接続電極a4の上面は、表面a30A上で凸湾曲した塗布膜a46の上端以下の位置にある。
次いで、第1接続電極a3および第2接続電極a4間での通電検査が行われた後に、基板a30が裏面a30Bから研削される。
具体的には、溝a44を形成した後に、図27Gに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面a72を有する支持テープa71が、粘着面a72において、各半製品a50における第1接続電極a3および第2接続電極a4側(つまり、表面a30A)に貼着される。これにより、各半製品a50が支持テープa71に支持される。ここで、支持テープa71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品a50が支持テープa71に支持された状態で、基板a30を裏面a30B側から研削する。研削によって、溝a44の底壁a44B(図27F参照)の上面に達するまで基板a30が薄型化されると、隣り合う半製品a50を連結するものがなくなるので、溝a44を境界として基板a30が分割され、半製品a50が個別に分離してチップ抵抗器a1の完成品となる。つまり、溝a44(換言すれば、境界領域Z)において基板a30が切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器a1が切り出される。なお、基板a30を裏面a30B側から溝a44の底壁a44Bまでエッチングすることによってチップ抵抗器a1を切り出しても構わない。
完成した各チップ抵抗器a1では、溝a44の側壁a44Aの区画面44Cをなしていた部分が、基板a2の側面a2C〜a2Fのいずれかとなり、裏面a30Bが裏面a2Bとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝a44を形成する工程(図27B参照)は、側面a2C〜a2Fを形成する工程に含まれる。そして、溝a44を形成する工程において、複数のチップ部品領域Y(チップ抵抗器a1)における基板a30の側面(区画面44C)を、基板a30の表面a30Aに垂直な平面Hに対して傾斜した部分を有するように一度に整形することができる(図27B参照)。換言すれば、溝a44を形成することは、各チップ抵抗器a1の基板a2の側面a2C〜a2Fを、平面Hに対して傾斜した部分を有するように一度に整形することになる。
エッチングによって溝a44を形成することによって、完成したチップ抵抗器a1における側面a2C〜a2Fは、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。ちなみに、ダイシングソー(図示せず)で溝a44を機械的に形成した場合には、側面a2C〜a2Fは、ダイシングソーの研削跡をなす多数の筋が規則的なパターンで残っている。この筋は、側面a2C〜a2Fをエッチングしたとしても完全に消すことができない。
また、絶縁膜a45が絶縁膜a23となり、分離した塗布膜a46が樹脂膜a24となる。
以上のように、溝a44を形成してから基板a30を裏面a30B側から研削すれば、基板a30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器a1(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器a1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器a1の製造時間の短縮によってチップ抵抗器a1の生産性の向上を図ることができる。ちなみに、直径が8インチの基板a30を用いると50万個程度のチップ抵抗器a1を切り出すことができる。ダイシングソー(図示せず)だけを用いて基板a30に溝a44を形成することでチップ抵抗器a1を切り出す場合には、基板a30にたくさんの溝a44を形成するために何度もダイシングソーを移動させねばならないので、チップ抵抗器a1の製造時間が長くなるが、第1参考例のようにエッチングによって溝a44を一度に作るのであれば、このような不具合を解決できる。
つまり、チップ抵抗器a1のチップサイズが小さくても、このように先に溝a44を形成しておいてから基板a30を裏面a30Bから研削することによって、チップ抵抗器a1を一度に個片化することができる。そのため、従来のようにダイシングソーで基板a30をダイシングすることでチップ抵抗器a1を個片にする場合と比べて、ダイシング工程省略によって、コスト低減や時間短縮を図り、歩留まり向上を達成できる。
また、エッチングによって溝a44を高精度に形成できるので、溝a44によって分割された個々のチップ抵抗器a1では、外形寸法精度の向上を図ることができる。特に、プラズマエッチングを用いれば、溝a44を一層高精度に形成できる。具体的には、一般的なダイシングソーを用いて溝a44を形成する場合のチップ抵抗器a1の寸法公差が±20μmであるのに対して、第1参考例では、チップ抵抗器a1の寸法公差を±5μm程度まで小さくすることができる。また、レジストパターンa41(図28参照)に応じて、溝a44の間隔を微細化できるので、隣り合う溝a44の間に形成されるチップ抵抗器a1の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、ダイシングソーを用いる場合と異なり、チップ抵抗器a1を削り出すのではないから、チップ抵抗器a1の側面a2C〜a2Fにおいて隣り合うもの同士のコーナー部a11(図18(a)参照)にチッピングが生じることを低減でき、チップ抵抗器a1の外観の向上を図ることができる。
基板a30を裏面a30B側から研削することで個々のチップ抵抗器a1を切り出す際、チップ抵抗器a1によっては、先に切り出されたり遅れて切り出されたりすることがある。つまり、チップ抵抗器a1を切り出す際に、チップ抵抗器a1間で若干の時間差が生じることがある。この場合、先に切り出されたチップ抵抗器a1が左右に振動し、隣接するチップ抵抗器a1に接触することがある。このとき、各チップ抵抗器a1では、樹脂膜a24(第1樹脂膜a24A)がバンパーとして機能するので、個片化に先立って支持テープa71に支持された状態で隣接しているチップ抵抗器a1が互いに衝突しても、互いのチップ抵抗器a1では樹脂膜a24同士が最初に接触することから、チップ抵抗器a1の表面a2Aおよび裏面a2B側のコーナー部a12(特に表面a2A側の縁部a85)におけるチッピングを回避または抑制できる。特に、第1樹脂膜a24Aがチップ抵抗器a1の表面a2Aの縁部a85よりも外方に張り出しているから、縁部a85が周囲のものに接触することがないので、縁部a85におけるチッピングを回避または抑制できる。
なお、完成したチップ抵抗器a1における基板a2の裏面a2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面a2Bを綺麗にしてもよい。
図29A〜図29Dは、図27Gの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程を示す図解的な断面図である。
図29Aでは、個片化された複数のチップ抵抗器a1が引き続き支持テープa71にくっついている状態を示している。この状態で、図29Bに示すように、各チップ抵抗器a1の基板a2の裏面a2Bに対して、熱発泡シートa73を貼着する。熱発泡シートa73は、シート状のシート本体a74と、シート本体a74内に練り込まれた多数の発泡粒子a75とを含んでいる。
シート本体a74の粘着力は、支持テープa71の粘着面a72における粘着力よりも強い。そこで、各チップ抵抗器a1の基板a2の裏面a2Bに熱発泡シートa73を貼着した後に、図29Cに示すように、支持テープa71を各チップ抵抗器a1から引き剥がして、チップ抵抗器a1を熱発泡シートa73に転写する。このとき、支持テープa71に紫外線を照射すると(図29Bの点線矢印参照)、粘着面a72の粘着性が低下するので、支持テープa71が各チップ抵抗器a1から剥がれやすくなる。
次いで、熱発泡シートa73を加熱する。これにより、図29Dに示すように、熱発泡シートa73では、シート本体a74内の各発泡粒子a75が発泡してシート本体a74の表面から膨出する。その結果、熱発泡シートa73と各チップ抵抗器a1の基板a2の裏面a2Bとの接触面積が小さくなり、全てのチップ抵抗器a1が熱発泡シートa73から自然に剥がれる(脱落する)。このように回収されたチップ抵抗器a1は、実装基板a9(図18(b)参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープa71または熱発泡シートa73からチップ抵抗器a1を1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数のチップ抵抗器a1が支持テープa71にくっついた状態で(図29A参照)、熱発泡シートa73を用いずに、支持テープa71からチップ抵抗器a1を所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
図30A〜図30Cは、図27Gの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図30A〜図30Cに示す別の方法によって、各チップ抵抗器a1を回収することもできる。
図30Aでは、図29Aと同様に、個片化された複数のチップ抵抗器a1が引き続き支持テープa71にくっついている状態を示している。この状態で、図30Bに示すように、各チップ抵抗器a1の基板a2の裏面a2Bに転写テープa77を貼着する。転写テープa77は、支持テープa71の粘着面a72よりも強い粘着力を有する。そこで、図30Cに示すように、各チップ抵抗器a1に転写テープa77を貼着した後に、支持テープa71を各チップ抵抗器a1から引き剥がす。この際、前述したように、粘着面a72の粘着性を低下させるために支持テープa71に紫外線(図30Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
転写テープa77の両端には、回収装置(図示せず)のフレームa78が貼り付けられている。両側のフレームa78は、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープa71を各チップ抵抗器a1から引き剥がした後に、両側のフレームa78を互いが離間する方向に移動させると、転写テープa77が伸張して薄くなる。これによって、転写テープa77の粘着力が低下するので、各チップ抵抗器a1が転写テープa77から剥がれやすくなる。この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズルa76をチップ抵抗器a1の表面a2A側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、このチップ抵抗器a1が転写テープa77から引き剥がされて吸着ノズルa76に吸着される。この際、図30Cに示す突起a79によって、吸着ノズルa76とは反対側から転写テープa77越しにチップ抵抗器a1を吸着ノズルa76側へ突き上げると、チップ抵抗器a1を転写テープa77から円滑に引き剥がすことができる。このように回収されたチップ抵抗器a1は、吸着ノズルa76に吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
図31〜図36は、上記実施形態または変形例に係るチップ抵抗器の縦断面図であり、図31および図33では平面図も示している。なお、図31〜図36では、説明の便宜上、前述した絶縁膜a23等の図示を省略し、基板a2、第1接続電極a3、第2接続電極a4および樹脂膜a24のみを図示している。また、図31(c)および図33(c)では、樹脂膜a24の図示を省略している。
図31〜図36に示すように、基板a2の側面a2C〜a2Fのそれぞれは、基板a2の表面a2Aに垂直な平面Hに対して傾斜した部分を有している。
図31および図32に示すチップ抵抗器a1では、側面a2C〜a2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面Eに沿った平面である。また、基板a2の表面a2Aと基板a2の側面a2C〜a2Fのそれぞれとが鋭角を成している。そのため、基板a2の裏面a2Bの縁部a90が、基板a2の表面a2Aの縁部a85に対して基板a2の内方に後退している。詳しくは、平面視において、裏面a2Bの輪郭をなす矩形の縁部a90が、表面a2Aの輪郭をなす矩形の縁部a85の内側に位置している(図31(c)参照)。そのため、側面a2C〜a2Fのいずれに関して、平面Eは、表面a2Aの縁部a85から裏面a2Bの縁部a90へ向かって基板a2の内方に後退するように傾斜している。よって、チップ抵抗器a1における側面a2C〜a2Fのそれぞれは、裏面a2B側へ向けて細くなる台形(略等脚台形)状である。
ここで、樹脂膜a24では、前述したように、第1樹脂膜a24Aが、側面a2C〜a2Fのそれぞれにおいて、各側面と表面a2Aとの境界(縁部a85)から裏面a2B側へ離れた領域に形成されていて、第2樹脂膜a24Bが表面a2Aに形成されている。
一方、図32に示すように、側面a2C〜a2Fのそれぞれにおける第1樹脂膜a24Aが、各側面と表面a2Aとの境界(縁部a85)において、第2樹脂膜a24Bから分離していなくてもよい。この場合、樹脂膜a24は、側面a2C〜a2Fのそれぞれから表面a2Aに渡って連続して形成されている。
図33に示すチップ抵抗器a1では、側面a2C〜a2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面Gに沿った平面である。また、基板a2の表面a2Aと基板a2の側面a2C〜a2Fのそれぞれとが鈍角を成している。そのため、基板a2の裏面a2Bの縁部a90が、基板a2の表面a2Aの縁部a85に対して基板a2の外方に張り出している。詳しくは、平面視において、裏面a2Bの輪郭をなす矩形の縁部a90が、表面a2Aの輪郭をなす矩形の縁部a85の外側に位置している(図33(c)参照)。そのため、側面a2C〜a2Fのいずれに関して、平面Gは、表面a2Aの縁部a85から裏面a2Bの縁部a90へ向かって基板a2の外方に張り出すように傾斜している。よって、チップ抵抗器a1における側面a2C〜a2Fのそれぞれは、表面a2A側へ向けて細くなる台形(略等脚台形)状である。
また、側面a2C〜a2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面である必要はなく、図34〜図36に示すように基板a2の内方へ向けて凸湾曲した湾曲面であって、平面Hに傾斜した部分(前述した平面E,Gを接線とする曲面部分)を有していればよい。この場合、基板a2の表面a2Aと基板a2の側面a2C〜a2Fのそれぞれとが鋭角を成しているとともに、基板a2の裏面a2Bと基板a2の側面a2C〜a2Fのそれぞれとが鋭角を成している。
図34では、基板a2の裏面a2Bの縁部a90が、基板a2の表面a2Aの縁部a85に対して基板a2の外方および内方のいずれにもずれておらず、平面視において重なっている。図35では、基板a2の裏面a2Bの縁部a90が、基板a2の表面a2Aの縁部a85に対して基板a2の内方に後退している。図36では、基板a2の裏面a2Bの縁部a90が、基板a2の表面a2Aの縁部a85に対して基板a2の外方に張り出している。
図31〜図36に示した側面a2C〜a2Fは、エッチングによって溝a44を作る際のエッチング条件を適宜設定することによって実現できる。つまり、エッチング技術によって、基板a2における側面a2C〜a2Fの形状のコントロールが可能となる。
以上のように、チップ抵抗器a1では、基板a2における表面a2Aの縁部a85および裏面a2Bの縁部a90のうち、一方が他方よりも基板a2の外方へ張り出している(図35の場合を除く)。そのため、チップ抵抗器a1の表面a2Aおよび裏面a2Bにおけるコーナー部(角部)a12が直角にならないので、コーナー部a12(特に鈍角のコーナー部a12)におけるチッピングを低減できる。
特に、図31および図32に示すチップ抵抗器a1では、基板a2の裏面a2Bにおけるコーナー部a12(縁部a90のコーナー部a12)が鈍角になるので、当該コーナー部a12におけるチッピングを低減できる。また、図33に示すチップ抵抗器a1では、基板a2の表面a2Aにおけるコーナー部a12(縁部a85のコーナー部a12)が鈍角になるので、当該コーナー部a12におけるチッピングを低減できる。
チップ抵抗器a1を実装基板a9(図18(b)参照)に実装する場合、自動実装機の吸着ノズル(図示せず)にチップ抵抗器a1の裏面a2Bを吸着してから吸着ノズル(図示せず)を実装基板a9まで移動させることによって、チップ抵抗器a1を実装基板a9に実装する。チップ抵抗器a1を吸着ノズル(図示せず)に吸着するのに先立って、チップ抵抗器a1の輪郭を表面a2A側または裏面a2B側から画像認識してから、チップ抵抗器a1の裏面a2Bにおいて吸着ノズル(図示せず)に吸着させる位置を決める。ここで、縁部a85および縁部a90のうち、一方が他方よりも基板a2の外方へ張り出している場合、基板a2の表面a2A側または裏面a2B側から画像認識したときのチップ部品の輪郭は、基板a2における表面a2Aの縁部a85および裏面a2Bの縁部a90のどちらか一方(基板a2の外方へ張り出した縁部)だけで構成されて明瞭である。そのため、チップ抵抗器a1の輪郭を正しく認識できるので、チップ抵抗器a1の裏面a2Bにおける所望の部分(たとえば中心部分)を吸着ノズル(図示せず)に対して正確に吸着させて、チップ抵抗器a1を精度良く実装基板a9(図18(b)参照)に実装することができる。つまり、実装位置精度の向上を図ることができる。
特に、図31、図33〜図36に示すチップ抵抗器a1の場合、側面a2C〜a2Fのそれぞれにおける第2樹脂膜a24Bは、基板a2の縁部a85が露出されるように表面a2Aから間隔Kを開けた領域に形成されている。さらに、図31、図34〜図36に示すチップ抵抗器a1の場合には、基板a2の表面a2Aと側面a2C〜a2Fのそれぞれとが鋭角を成している。よって、基板a2の表面a2Aの縁部a85が際立つことからチップ抵抗器a1の輪郭(縁部a85)が一層明瞭になって認識しやすくなるので、チップ抵抗器a1をより精度良く実装基板a9に実装することができる。つまり、当該縁部a85によってチップ抵抗器a1の輪郭を容易に認識でき、これによって、正確な位置でチップ抵抗器a1を吸着ノズル(図示せず)に吸着させることができる。なお、画像認識するために縁部a85や縁部a90にピントを合わせた場合には、第1樹脂膜a24Aにはピントが合っていないことから第1樹脂膜a24Aは不鮮明なっているので、縁部a85または縁部a90と第1樹脂膜a24Aとが紛らわしくなることはない。
一方、実装位置精度の向上よりもコーナー部a12におけるチッピングの防止を優先するのであれば、図32に示すように、基板a2のコーナー部a12(ここでは表面a2A側のコーナー部a12)を樹脂膜a24で覆ってもよい。この場合、当該コーナー部a12におけるチッピングを確実に回避または抑制できる。
また、基板a2の表面a2Aは、第2樹脂膜a24Bによって保護されている。特に、第2樹脂膜a24B(中央部分a24C)の表面a24Dは、第1接続電極a3および第2接続電極a4以上の高さを有している(図31(b)、図32(b)、図33(b)、図34(b)、図35(b)および図36(b)では図示を省略)。そのため、図18(b)に示すようにチップ抵抗器a1を実装基板a9に実装する際に、基板a2が表面a2A側において実装基板a9から衝撃を受ける場合には、第2樹脂膜a24B(中央部分a24C)が最初に衝撃を受けるようになっているので、この衝撃を第2樹脂膜a24Bによって緩和することによって、基板a2の表面a2Aを確実に保護することができる。
以上、第1参考例の実施形態について説明してきたが、第1参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第1参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器a1を開示したが、第1参考例は、チップコンデンサやチップインダクタやチップダイオードといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図37は、第1参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。図38は、図37の切断面線XXXVIII−XXXVIIIから見た断面図である。図39は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサa101において、前述したチップ抵抗器a1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサa101において、チップ抵抗器a1で説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器a1で説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器a1で説明した部分と同じ作用効果を奏することができる。
図37を参照して、チップコンデンサa101は、チップ抵抗器a1と同様に、基板a2と、基板a2上(基板a2の表面a2A側)に配置された第1接続電極a3と、同じく基板a2上に配置された第2接続電極a4とを備えている。基板a2は、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板a2の長手方向両端部に第1接続電極a3および第2接続電極a4がそれぞれ配置されている。第1接続電極a3および第2接続電極a4は、この実施形態では、基板a2の短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。基板a2の表面a2Aには、第1接続電極a3および第2接続電極a4の間のキャパシタ配置領域a105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が配置されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子a5を構成する複数の素子要素(キャパシタ素子)であり、複数のヒューズユニットa107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極a4に電気的に接続されている。
図38および図39に示されているように、基板a2の表面a2Aには絶縁層a20が形成されていて、絶縁層a20の表面に下部電極膜a111が形成されている。下部電極膜a111は、キャパシタ配置領域a105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜a111は、第1接続電極a3の直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜a111は、キャパシタ配置領域a105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域a111Aと、第1接続電極a3の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域a111Bとを有している。キャパシタ電極領域a111Aがキャパシタ配置領域a105に位置していて、パッド領域a111Bが第1接続電極a3の直下に位置して第1接続電極a3に接触している。
キャパシタ配置領域a105において下部電極膜a111(キャパシタ電極領域a111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)a112が形成されている。容量膜a112は、キャパシタ電極領域a111A(キャパシタ配置領域a105)の全域にわたって形成されている。容量膜a112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域a105外の絶縁層a20を覆っている。
容量膜a112の上には、上部電極膜a113が形成されている。図37では、明瞭化のために、上部電極膜a113を着色して示してある。上部電極膜a113は、キャパシタ配置領域a105に位置するキャパシタ電極領域a113Aと、第2接続電極a4の直下に位置して第2接続電極a4に接触するパッド領域a113Bと、キャパシタ電極領域a113Aとパッド領域a113Bとの間に配置されたヒューズ領域a113Cとを有している。
キャパシタ電極領域a113Aにおいて、上部電極膜a113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)a131〜a139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分a131〜a139は、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域a113Cから第1接続電極a3に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分a131〜a139は、複数種類の対向面積で、容量膜a112を挟んで(容量膜a112に接しつつ)下部電極膜a111に対向している。より具体的には、電極膜部分a131〜a139の下部電極膜a111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分a131〜a139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分a131〜a138(またはa131〜a137,a139)を含む。これによって、各電極膜部分a131〜a139と容量膜a112を挟んで対向する下部電極膜a111とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分a131〜a139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分a131〜a135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分a135,a136,a137,a138,a139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分a135〜a139は、キャパシタ配置領域a105の第2接続電極a4側の端縁から第1接続電極a3側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分a131〜a134は、それよりも短く形成されている。
パッド領域a113Bは、第2接続電極a4とほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。図38に示すように、パッド領域a113Bにおける上部電極膜a113は、第2接続電極a4に接している。
ヒューズ領域a113Cは、パッド領域a113Bの一つの長辺(基板a2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域a113Cは、パッド領域a113Bの前記1つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニットa107を含む。
ヒューズユニットa107は、上部電極膜a113のパッド領域a113Bと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分a131〜a139は、1つまたは複数個のヒューズユニットa107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニットa107を介してパッド領域a113Bに接続され、このパッド領域a113Bを介して第2接続電極a4に電気的に接続されている。図37に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分a131〜a136は、一つのヒューズユニットa107によってパッド領域a113Bに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分a137〜139は複数個のヒューズユニットa107を介してパッド領域a113Bに接続されている。全てのヒューズユニットa107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニットa107は未使用である。
ヒューズユニットa107は、パッド領域a113Bとの接続のための第1幅広部a107Aと、電極膜部分a131〜a139との接続のための第2幅広部a107Bと、第1および第2幅広部a107A,7Bの間を接続する幅狭部a107Cとを含む。幅狭部a107Cは、レーザ光によって切断(溶断)することができるように構成されている。それによって、電極膜部分a131〜a139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニットa107の切断によって第1および第2接続電極a3,a4から電気的に切り離すことができる。
図37および図39では図示を省略したが、図38に表れている通り、上部電極膜a113の表面を含むチップコンデンサa101の表面は、前述した絶縁膜a23によって覆われている。絶縁膜a23は、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサa101の上面のみならず、基板a2の側面a2C〜a2Fまで延びて、側面a2C〜a2Fの全域をも覆うように形成されている。さらに、絶縁膜a23の上には、前述した樹脂膜a24が形成されている。樹脂膜a24では、第1樹脂膜a24Aが、側面a2C〜a2Fにおいて表面a2A側の部分を覆い、第2樹脂膜a24Bが、表面a2Aを覆っているものの、樹脂膜a24は、表面a2Aの縁部a85で途切れていて、縁部a85を露出させている。
絶縁膜a23および樹脂膜a24は、チップコンデンサa101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極a3および第2接続電極a4に対応する領域に、前述した開口a25がそれぞれ形成されている。開口a25はそれぞれ下部電極膜a111のパッド領域a111Bの一部の領域、上部電極膜a113のパッド領域a113Bの一部の領域を露出させるように絶縁膜a23および樹脂膜a24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極a3に対応した開口a25は、容量膜a112をも貫通している。
開口a25には、第1接続電極a3および第2接続電極a4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極a3は下部電極膜a111のパッド領域a111Bに接合しており、第2接続電極a4は上部電極膜a113のパッド領域a113Bに接合している。第1および第2外部電極a3,4は、樹脂膜a24の表面から突出するように形成されている。これにより、実装基板に対してチップコンデンサa101をフリップチップ接合することができる。
図40は、チップコンデンサa101の内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極a3と第2接続電極a4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極a4との間には、一つまたは複数のヒューズユニットa107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサa101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサa101の容量値が減少する。
そこで、パッド領域a111B,a113Bの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサa101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサa101を提供することができる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極a3および第2接続電極a4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサa101を共通の設計で実現することができる。
チップコンデンサa101の各部の詳細について以下に説明を加える。
図37を参照して、基板a2は、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域a105は、概ね、基板a2の短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板a2の厚さは、150μm程度であってもよい。図38を参照して、基板a2は、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板a2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
絶縁層a20は、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜a111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜a111は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜a113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜a113は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜a113のキャパシタ電極領域a113Aを電極膜部分a131〜a139に分割し、さらに、ヒューズ領域a113Cを複数のヒューズユニットa107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜a112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜a112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
絶縁膜a23は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜a24は、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成することができる。
第1および第2接続電極a3,a4は、たとえば、下部電極膜a111または上部電極膜a113に接するニッケル層と、このニッケル層上に積層したパラジウム層と、そのパラジウム層上に積層した金層とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、めっき法(より具体的には無電解めっき法)で形成することができる。ニッケル層は下部電極膜a111または上部電極膜a113に対する密着性の向上に寄与し、パラジウム層は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極a3,a4の最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサa101の製造工程は、素子a5を形成した後のチップ抵抗器a1の製造工程と同じである。
チップコンデンサa101において素子a5(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板a30(基板a2)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁層a20が形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜a111が絶縁層a20の表面全域に形成される。下部電極膜a111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜a111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図37等に示したパターンの下部電極膜a111が得られる。下部電極膜a111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜a112が、下部電極膜a111上に形成される。下部電極膜a111が形成されていない領域では、絶縁層a20の表面に容量膜a112が形成されることになる。次いで、その容量膜a112の上に、上部電極膜a113が形成される。上部電極膜a113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成することができる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次いで、上部電極膜a113の表面に上部電極膜a113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜a113が、最終形状(図37等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜a113は、キャパシタ電極領域a113Aに複数の電極膜部分a131〜139に分割された部分を有し、ヒューズ領域a113Cに複数のヒューズユニットa107を有し、それらのヒューズユニットa107に接続されたパッド領域a113Bを有するパターンに整形される。上部電極膜a113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサa101における素子a5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニットa107)が形成される。素子a5が形成された後に、プラズマCVD法によって絶縁膜a45が、素子a5(上部電極膜a113、上部電極膜a113が形成されていない領域における容量膜a112)を全て覆うように形成される(図27A参照)。その後は、溝a44が形成されてから(図27B参照)、開口a25が形成される(図27C参照)。そして、開口a25から露出された上部電極膜a113のパッド領域a113Bと下部電極膜a111のパッド領域a111Bとにプローブa70を押し当てて、複数のキャパシタ要素C0〜C9の総容量値が測定される(図27C参照)。この測定された総容量値に基づき、目的とするチップコンデンサa101の容量値に応じて、切り離すべきキャパシタ要素、すなわち切断すべきヒューズが選択される。
この状態から、ヒューズユニットa107を溶断するためのレーザトリミングが行われる。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニットa107にレーザ光を当てて、そのヒューズユニットa107の幅狭部a107C(図37参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域a113Bから切り離される。ヒューズユニットa107にレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜a45の働きによって、ヒューズユニットa107の近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニットa107が溶断する。これにより、チップコンデンサa101の容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、カバー膜(絶縁膜a45)上に窒化シリコン膜が堆積させられ、絶縁膜a23が形成される。前述のカバー膜は最終形態において、絶縁膜a23と一体化し、この絶縁膜a23の一部を構成する。ヒューズの切断後に形成された絶縁膜a23は、ヒューズ溶断の際に同時に破壊されたカバー膜の開口内に入り込み、ヒューズユニットa107の切断面を覆って保護する。したがって、絶縁膜a23は、ヒューズユニットa107の切断箇所に異物が入り込んだり水分が侵入したりすることを防ぐ。これにより、信頼性の高いチップコンデンサa101を製造することができる。絶縁膜a23は、全体で、たとえば8000Å程度の膜厚を有するように形成されてもよい。
次に、前述した塗布膜a46が形成される(図27D参照)。その後、塗布膜a46や絶縁膜a23によって塞がれていた開口a25が開放され(図27E参照)、開口a25内に、たとえば無電解めっき法によって、第1接続電極a3および第2接続電極a4が成長させられる(図27F参照)。
その後、チップ抵抗器a1の場合と同じように、基板a30を裏面a30Bから研削すると(図27G参照)、チップコンデンサa101の個片を切り出すことができる。
フォトリソグラフィ工程を利用した上部電極膜a113のパターニングでは、微小面積の電極膜部分a131〜a149を精度良く形成することができ、さらに微細なパターンのヒューズユニットa107を形成することができる。そして、上部電極膜a113のパターニングの後に、総容量値の測定を経て、切断すべきヒューズが決定される。その決定されたヒューズを切断することによって、所望の容量値に正確に合わせ込まれたチップコンデンサa101を得ることができる。
以上、第1参考例のチップ部品(チップ抵抗器a1やチップコンデンサa101)について説明してきたが、第1参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器a1の場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサa101の場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器a1やチップコンデンサa101では、基板a2の表面に絶縁層a20が形成されているが、基板a2が絶縁性の基板であれば、絶縁層a20を省くこともできる。
また、チップコンデンサa101では、上部電極膜a113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜a111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜a113および下部電極膜a111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサa101では、上部電極膜a113および下部電極膜a111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜a113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
チップコンデンサa101では、また、基板a2として導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜a112を形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
<第2参考例に係る発明>
(1)第2参考例に係る発明の特徴
たとえば、第2参考例に係る発明の特徴は、以下のB1〜B19である。
(B1)基板と、基板の表面上に形成された素子と、前記基板の表面上に設けられた外部接続電極とを含み、前記基板の側面が、前記基板の表面に垂直な平面に対して傾斜した部分を有している、チップ部品。
この構成によれば、チップ部品では、基板における表面の縁部および裏面の縁部のうち、一方が他方よりも基板の外方へ張り出している。そのため、チップ部品のコーナー部(角部)が直角にならないので、コーナー部(特に鈍角のコーナー部)におけるチッピングを低減できる。また、この場合、基板の表面側または裏面側から画像認識したときのチップ部品の輪郭は、基板における表面の縁部および裏面の縁部のどちらか一方(基板の外方へ張り出した縁部)だけで構成されて明瞭である。そのため、チップ部品の輪郭を正しく認識できるので、チップ部品を精度良く実装基板に実装することができる。つまり、実装位置精度の向上を図ることができる。
(B2)前記基板の側面が、前記基板の表面に垂直な平面に対して傾斜した平面に沿った平面である、B1に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品において、基板における表面の縁部および裏面の縁部のうち、一方を確実に他方よりも基板の外方へ張り出すようにすることができる。
(B3)前記基板の表面の縁部に対して前記基板の裏面の縁部が当該基板の内方に後退している、B1またはB2に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品では、基板の裏面におけるコーナー部が鈍角になるので、当該コーナー部におけるチッピングを低減できる。
(B4)前記基板の表面の縁部に対して前記基板の裏面の縁部が前記基板の外方に張り出している、B1またはB2に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品では、基板の表面におけるコーナー部が鈍角になるので、当該コーナー部におけるチッピングを低減できる。
(B5)前記基板の表面と前記基板の側面とが鋭角を成している、B1〜B4のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、基板の表面の縁部が際立つことからチップ部品の輪郭が一層明瞭になって認識しやすくなるので、チップ部品をより精度良く実装基板に実装することができる。
(B6)前記素子が、複数の素子要素を含み、前記基板上に設けられ、前記複数の素子要素をそれぞれ前記外部接続電極に切断可能に接続する複数のヒューズをさらに含む、B1〜B5のいずれか一項に記載のチップ部品。
(B7)前記素子要素が、前記基板上に形成された抵抗体膜と、前記抵抗体膜に接するように積層された配線膜とを有する抵抗体である、B6に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品はチップ抵抗器となり、チップ抵抗器では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(B8)前記素子要素が、前記基板上に形成された容量膜と、前記容量膜に接する電極膜とを有するキャパシタ要素である、B6に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品はチップコンデンサとなり、チップコンデンサでは、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(B9)チップ部品は、チップインダクタであってもよい。
(B10)チップ部品は、チップダイオードであってもよい。
(B11)基板の表面に素子を形成する工程と、前記基板の表面に外部接続電極を形成する工程と、前記基板の側面を、前記基板の表面に垂直な平面に対して傾斜した部分を有するように整形する工程とを含む、チップ部品の製造方法。
この方法によれば、完成したチップ部品では、基板における表面の縁部および裏面の縁部のうち、一方が他方よりも基板の外方へ張り出している。そのため、チップ部品のコーナー部(角部)が直角にならないので、コーナー部(特に鈍角のコーナー部)におけるチッピングを低減できる。また、この場合、基板の表面側または裏面側から画像認識したときのチップ部品の輪郭は、基板における表面の縁部および裏面の縁部のどちらか一方(基板の外方へ張り出した縁部)だけで構成されて明瞭である。そのため、チップ部品の輪郭を正しく認識できるので、チップ部品を精度良く実装基板に実装することができる。つまり、実装位置精度の向上を図ることができる。
(B12)基板の表面上に設定した複数のチップ部品領域にそれぞれ素子および外部接続電極を形成する工程と、前記複数のチップ部品領域の境界領域に、前記基板の表面から所定の深さを有し、かつ前記基板の表面に垂直な平面に対して傾斜した部分を有する側壁により区画された溝を形成する工程と、前記基板の裏面を前記溝に到達するまで研削して、前記基板を複数のチップ部品に分割する工程とを含む、チップ部品の製造方法。
この方法によれば、溝を形成する工程において、複数のチップ部品における基板の側面を、基板の表面に垂直な平面に対して傾斜した部分を有するように一度に整形することができる。また、基板の裏面を溝に到達するまで研削することによって、基板から複数のチップ部品の個片を一度に得ることができる。よって、複数のチップ部品の製造時間の短縮を図ることができる。
(B13)前記基板の側面を、前記基板の表面に垂直な平面に対して傾斜した平面に沿った平面となるように整形する工程を含む、B11またはB12に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品において、基板における表面の縁部および裏面の縁部のうち、一方を確実に他方よりも基板の外方へ張り出すようにすることができる。
(B14)前記基板の表面の縁部に対して前記基板の裏面の縁部を当該基板の内方に後退させる工程を含む、B11〜B13のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品では、基板の裏面におけるコーナー部が鈍角になるので、当該コーナー部におけるチッピングを低減できる。
(B15)前記基板の表面の縁部に対して前記基板の裏面の縁部を前記基板の外方に張り出させる工程を含む、B11〜B13のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品では、基板の表面におけるコーナー部が鈍角になるので、当該コーナー部におけるチッピングを低減できる。
(B16)前記基板の表面と前記基板の側面とが鋭角を成している、B11〜B15のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板の表面の縁部が際立つことからチップ部品の輪郭が一層明瞭になって認識しやすくなるので、チップ部品をより精度良く実装基板に実装すること(実装位置精度の一層の向上を図ること)ができる。
(B17)前記素子が、複数の素子要素を含み、前記基板上に、前記複数の素子要素をそれぞれ前記外部接続電極に切断可能に接続する複数のヒューズを設ける工程を含む、B11〜B16のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
(B18)前記素子要素が、前記基板上に形成された抵抗体膜と、前記抵抗体膜に接するように積層された配線膜とを有する抵抗体である、B17に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品はチップ抵抗器となり、チップ抵抗器では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(B19)前記素子要素が、前記基板上に形成された容量膜と、前記容量膜に接する電極膜とを有するキャパシタ要素である、B17に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品はチップコンデンサとなり、チップコンデンサでは、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(2)第2参考例に係る発明の実施形態
以下では、第2参考例の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図41〜図63で示した符号は、これらの図面でのみ有効であり、他の実施形態に使用されていても、当該他の実施形態の符号と同じ要素を示すものではない。
図41(a)は、第2参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図であり、図41(b)は、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態を示す模式的な側面図である。
このチップ抵抗器b1は、微小なチップ部品であり、図41(a)に示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器b1の平面形状は、直交する二辺(長辺b81、短辺b82)がそれぞれ0.4mm以下、0.2mm以下の矩形である。好ましくは、チップ抵抗器b1の寸法に関し、長さL(長辺b81の長さ)が約0.3mmであり、幅W(短辺b82の長さ)が約0.15mmであり、厚さTが約0.1mmである。
このチップ抵抗器b1は、基板上に多数個のチップ抵抗器b1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器b1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器b1は、チップ抵抗器b1の本体(抵抗器本体)を構成する基板b2と、外部接続電極となる第1接続電極b3および第2接続電極b4と、第1接続電極b3および第2接続電極b4によって外部接続される素子b5とを主に備えている。
基板b2は、略直方体のチップ形状である。基板b2において、図41(a)における上面は、表面b2Aである。表面b2Aは、基板b2において素子b5が形成される面(素子形成面)であり、略長方形状である。基板b2の厚さ方向において表面b2Aとは反対側の面は、裏面b2Bである。表面b2Aと裏面b2Bとは、ほぼ同形状であり、互いに平行である。ただし、表面b2Aは、裏面b2Bよりも大きい。そのため、表面b2Aに直交する方向から見た平面視において、裏面b2Bは、表面b2Aの内側におさまる。表面b2Aにおける一対の長辺b81および短辺b82によって区画された矩形状の縁を、縁部b85ということにし、裏面b2Bにおける一対の長辺b81および短辺b82によって区画された矩形状の縁を、縁部b90ということにする。
基板b2は、表面b2Aおよび裏面b2B以外に、これらの面に交差して延びてこれらの面の間を繋ぐ側面b2C、側面b2D、側面b2Eおよび側面b2Fを有している。
側面b2Cは、表面b2Aおよび裏面b2Bにおける長手方向一方側(図41(a)における左手前側)の短辺b82間に架設されていて、側面b2Dは、表面b2Aおよび裏面b2Bにおける長手方向他方側(図41(a)における右奥側)の短辺b82間に架設されている。側面b2Cおよび側面b2Dは、当該長手方向における基板b2の両端面である。側面b2Eは、表面b2Aおよび裏面b2Bにおける短手方向一方側(図41(a)における左奥側)の長辺b81間に架設されていて、側面b2Fは、表面b2Aおよび裏面b2Bにおける短手方向他方側(図41(a)における右手前側)の長辺b81間に架設されている。側面b2Eおよび側面b2Fは、当該短手方向における基板b2の両端面である。側面b2Cおよび側面b2Dのそれぞれは、側面b2Eおよび側面b2Fのそれぞれと交差(略直交)している。前述したように表面b2Aが裏面b2Bよりも大きいので、側面b2C〜b2Fのそれぞれは、裏面b2B側の上底と表面b2A側の下底とを有する等脚台形状をなしている。つまり、チップ抵抗器b1の側面形状は、等脚台形状である。そのため、表面b2A〜側面b2Fにおいて隣り合うもの同士が鋭角または鈍角を成している。具体的には、表面b2Aと、側面b2C、側面b2D、側面b2Eおよび側面b2Fのそれぞれとは鋭角となしていて、裏面b2Bと、側面b2C、側面b2D、側面b2Eおよび側面b2Fのそれぞれとは鈍角となしている。なお、説明の便宜上、図41以降の各図では、側面b2C〜b2Fのそれぞれを実際よりも傾斜させて(誇張して)示している。
基板b2では、表面b2Aおよび側面b2C〜b2Fのそれぞれの全域が絶縁膜b23で覆われている。そのため、厳密には、図41(a)では、表面b2Aおよび側面b2C〜b2Fのそれぞれの全域は、絶縁膜b23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、チップ抵抗器b1は、樹脂膜b24を有している。樹脂膜b24は、第1樹脂膜b24Aと、第1樹脂膜b24Aとは別の第2樹脂膜b24Bとを含んでいる。第1樹脂膜b24Aは、側面b2C、側面b2D、側面b2Eおよび側面b2Fのそれぞれにおいて表面b2Aの縁部b85から裏面b2B側へ少し離れた領域に形成されている。第2樹脂膜b24Bは、表面b2A上の絶縁膜b23において表面b2Aの縁部b85に重ならない部分(縁部b85の内側領域)を覆っている。絶縁膜b23および樹脂膜b24については、以降で詳説する。
第1接続電極b3および第2接続電極b4は、基板b2の表面b2A上において縁部b85よりも内側の領域に形成されていて、表面b2A上の第2樹脂膜b24Bから部分的に露出されている。換言すれば、第2樹脂膜b24Bは、第1接続電極b3および第2接続電極b4を露出させるように表面b2A(厳密には表面b2A上の絶縁膜b23)を覆っている。第1接続電極b3および第2接続電極b4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で表面b2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極b3および第2接続電極b4は、表面b2Aの長手方向に間隔を隔てて配置されており、表面b2Aの短手方向において長手である。図41(a)では、表面b2Aにおいて、側面b2C寄りの位置に第1接続電極b3が設けられ、側面b2D寄りの位置に第2接続電極b4が設けられている。
素子b5は、回路素子であって、基板b2の表面b2Aにおける第1接続電極b3と第2接続電極b4との間の領域に形成されていて、絶縁膜b23および第2樹脂膜b24Bによって上から被覆されている。素子b5は、前述した抵抗器本体を構成している。この実施形態の素子b5は、抵抗b56である。抵抗b56は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを表面b2A上でマトリックス状に配列した回路網によって構成されている。抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子b5は、後述する配線膜b22に電気的に接続されていて、配線膜b22を介して第1接続電極b3と第2接続電極b4とに電気的に接続されている。
図41(b)に示すように、第1接続電極b3と第2接続電極b4を実装基板b9に対向させて、半田b13によって実装基板b9の回路(図示せず)に対して電気的かつ機械的に接続することにより、チップ抵抗器b1を実装基板b9に実装(フリップチップ接続)することができる。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極b3および第2接続電極b4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
図42は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図42を参照して、素子b5は、抵抗回路網となっている。具体的に、素子b5は、行方向(基板b2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板b2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子b5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板b2の表面b2Aには、抵抗回路を素子b5に対して電気的に組み込んだり、または、素子b5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズ(ヒューズ)Fが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第2接続電極b3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第2接続電極b3に対して切断可能(切り離し可能)に接続している。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、前述した抵抗器本体を構成している。
図43Aは、図42に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図43Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図43AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図43Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図43AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図43A、図43Bおよび図43Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器b1は、前述した配線膜b22、絶縁膜b23および樹脂膜b24の他に、絶縁層b20と抵抗体膜b21とをさらに備えている(図43Bおよび図43C参照)。絶縁層b20、抵抗体膜b21、配線膜b22、絶縁膜b23および樹脂膜b24は、基板b2(表面b2A)上に形成されている。
絶縁層b20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁層b20は、基板b2の表面b2Aの全域を覆っている。絶縁層b20の厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜b21は、絶縁層b20上に形成されている。抵抗体膜b21は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜b21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜b21は、第1接続電極b3と第2接続電極b4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ラインb21A」という)を構成していて、抵抗体膜ラインb21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図43A参照)。
抵抗体膜ラインb21A上には、配線膜b22が積層されている。配線膜b22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜b22の厚さは、約8000Åである。配線膜b22は、抵抗体膜ラインb21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ラインb21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ラインb21Aおよび配線膜b22の電気的特徴を回路記号で示すと、図44の通りである。すなわち、図44(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ラインb21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜b22が積層された領域では、配線膜b22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜b22で抵抗体膜ラインb21Aが短絡されている。よって、図44(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ラインb21A同士は抵抗体膜b21および配線膜b22で接続されているから、図43Aに示す素子b5の抵抗回路網は、図44(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜b21および配線膜b22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子b5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ラインb21A(抵抗体膜b21)と、抵抗体膜ラインb21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜b22とを含み、配線膜b22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ラインb21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ラインb21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板b2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ラインb21A上に積層された配線膜b22は、抵抗体Rを形成するとともに、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図42参照)。
図45(a)は、図42に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、図45(b)は、図45(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図45(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜b21上に積層された配線膜b22により形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ラインb21A上に積層された配線膜b22と同じレイヤーに、配線膜b22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜b22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜b21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子b5を第1接続電極b3および第2接続電極b4に接続するための配線膜が、配線膜b22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜b22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜b22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図42および図45(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第2接続電極b3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜b22の下方にも抵抗体膜b21が形成されている(図45(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜b22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜b22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜b21)の一部と抵抗体膜b21上の配線膜b22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図46は、第2参考例の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図46を参照して、素子b5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極b3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図47および図48においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図45(a)参照)を介して直列に接続されている。
図46に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子b5は、第1接続電極b3および第2接続電極b4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極b3および第2接続電極b4が接続されたチップ抵抗器b1が構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子b5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器b1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子b5に組み込まれることになる。よって、素子b5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子b5(抵抗b56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器b1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図47は、第2参考例の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図46に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子b5を構成する代わりに、図47に示すように素子b5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極b3および第2接続電極b4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子b5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子b5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子b5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器b1全体の抵抗値を調整することができる。
図48は、第2参考例のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図48に示す素子b5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。従って、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子b5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。従って、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり、チップ抵抗器b1では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器b1を共通の設計で実現することができる。
以上のように、このチップ抵抗器b1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図49は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図49を参照して、チップ抵抗器b1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図49では、前述した素子b5については簡略化して示しているとともに、基板b2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述した絶縁膜b23および樹脂膜b24について説明する。
絶縁膜b23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。絶縁膜b23は、表面b2Aおよび側面b2C〜b2Fのそれぞれにおける全域に亘って設けられている。表面b2A上の絶縁膜b23は、抵抗体膜b21および抵抗体膜b21上の各配線膜b22(つまり、素子b5)を表面(図49の上側)から被覆していて、素子b5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、絶縁膜b23は、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜b22も覆っている(図45(b)参照)。また、絶縁膜b23は、素子b5(配線膜b22および抵抗体膜b21)に接しており、抵抗体膜b21以外の領域では絶縁層b20にも接している。これにより、表面b2A上の絶縁膜b23は、表面b2A全域を覆って素子b5および絶縁層b20を保護する保護膜として機能している。また、表面b2Aでは、絶縁膜b23によって、抵抗体R間における配線膜b22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ラインb21A間における短絡)が防止されている。
一方、側面b2C〜b2Fのそれぞれに設けられた絶縁膜b23は、側面b2C〜b2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。側面b2C〜b2Fのそれぞれと表面b2Aとの境界は、前述した縁部b85であるが、絶縁膜b23は、当該境界(縁部b85)も覆っている。絶縁膜b23において、縁部b85を覆っている部分(縁部b85に重なっている部分)を端部b23Aということにする。
樹脂膜b24は、絶縁膜b23とともにチップ抵抗器b1の表面b2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜b24の厚みは、約5μmである。
樹脂膜b24は、前述したように、第1樹脂膜b24Aと第2樹脂膜b24Bとを有している。
第1樹脂膜b24Aは、側面b2C〜b2Fのそれぞれにおいて縁部b85(絶縁膜b23の端部b23A)から裏面b2B側へ少し離れた部分を被覆している。具体的に、第1樹脂膜b24Aは、側面b2C〜b2Fのそれぞれにおいて、表面b2Aの縁部b85から裏面b2B側に間隔Kを開けた領域に形成されている。ただし、第1樹脂膜b24Aは、裏面b2Bよりも表面b2A側へ偏って配置されている。側面b2Cおよびb2Dの第1樹脂膜b24Aは、短辺b82に沿って筋状に延びており、短辺b82方向における全域にわたって形成されている(図41(a)参照)。側面b2Eおよびb2Fの第1樹脂膜b24Aは、長辺b81に沿って筋状に延びており、長辺b81方向における全域にわたって形成されている(図41(a)参照)。側面b2C〜b2Fのそれぞれにおける第1樹脂膜b24Aは、表面b2Aの縁(縁部b85)よりも外方に張り出している。詳しくは、第1樹脂膜b24Aは、表面b2Aに沿う方向において縁部b85よりも外方へ円弧状に膨出している。そのため、平面視では、第1樹脂膜b24Aがチップ抵抗器b1の輪郭をなす。
第2樹脂膜b24Bは、表面b2A上の絶縁膜b23の表面(絶縁膜b23に被覆された抵抗体膜b21および配線膜b22も含む)の略全域を被覆している。具体的に、第2樹脂膜b24Bは、絶縁膜b23の端部b23A(表面b2Aの縁部b85)を覆わないように、端部b23Aから外れて形成されている。そのため、第1樹脂膜b24Aと第2樹脂膜b24Bとは、連続しておらず、端部b23A(縁部b85の全域)において途切れている。これにより、絶縁膜b23の端部b23A(縁部b85の全域)は、外部に露出されている。
第2樹脂膜b24Bにおいて、平面視で離れた2つの位置には、開口b25が1つずつ形成されている。各開口b25は、第2樹脂膜b24Bおよび絶縁膜b23を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通する貫通孔である。そのため、開口b25は、第2樹脂膜b24Bだけでなく絶縁膜b23にも形成されている。各開口b25からは、配線膜b22の一部が露出されている。配線膜b22において各開口b25から露出された部分は、外部接続用のパッド領域b22Aとなっている。
2つの開口b25のうち、一方の開口b25は、第1接続電極b3によって埋め尽くされ、他方の開口b25は、第2接続電極b4によって埋め尽くされている。そして、第1接続電極b3および第2接続電極b4のそれぞれの一部は、第2樹脂膜b24Bの表面において開口b25からはみ出している。第1接続電極b3は、当該一方の開口b25を介して、この開口b25におけるパッド領域b22Aにおいて配線膜b22に対して電気的に接続されている。第2接続電極b4は、当該他方の開口b25を介して、この開口b25におけるパッド領域b22Aにおいて配線膜b22に対して電気的に接続されている。これにより、第1接続電極b3および第2接続電極b4のそれぞれは、素子b5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜b22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗b56)、第1接続電極b3および第2接続電極b4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、開口b25が形成された第2樹脂膜b24Bおよび絶縁膜b23は、開口b25から第1接続電極b3および第2接続電極b4を露出させた状態で表面b2Aを覆っている。そのため、第2樹脂膜b24Bの表面において開口b25からはみ出した第1接続電極b3および第2接続電極b4を介して、チップ抵抗器b1と実装基板b9との間における電気的接続を達成することができる(図41(b)参照)。
ここで、第2樹脂膜b24Bにおいて第1接続電極b3と第2接続電極b4との間に位置する部分(「中央部分b24C」ということにする)は、第1接続電極b3および第2接続電極b4よりも高くなっている(表面b2Aから離れている)。つまり、中央部分b24Cは、第1接続電極b3および第2接続電極b4以上の高さの表面b24Dを有している。表面b24Dは、表面b2Aから離れる方向へ向けて凸湾曲している。
図50A〜図50Gは、図49に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図50Aに示すように、基板b2の元となる基板b30を用意する。この場合、基板b30の表面b30Aは、基板b2の表面b2Aであり、基板b30の裏面b30Bは、基板b2の裏面b2Bである。
そして、基板b30の表面b30Aを熱酸化して、表面b30AにSiO2等からなる絶縁層b20を形成し、絶縁層b20上に素子b5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜b22)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁層b20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜b21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜b21に接するように抵抗体膜b21の上にアルミニウム(Al)の配線膜b22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜b21および配線膜b22を選択的に除去してパターニングし、図43Aに示すように、平面視で、抵抗体膜b21が積層された一定幅の抵抗体膜ラインb21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ラインb21Aおよび配線膜b22が切断された領域も形成されるとともに、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図42参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ラインb21Aの上に積層された配線膜b22を選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ラインb21A上に一定間隔Rをあけて配線膜b22が積層された構成の素子b5が得られる。この際、抵抗体膜b21および配線膜b22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子b5全体の抵抗値を測定してもよい。
図50Aを参照して、素子b5は、1枚の基板b30に形成するチップ抵抗器b1の数に応じて、基板b30の表面b30A上における多数の箇所に形成される。基板b30において素子b5(前述した抵抗b56)が形成された1つの領域をチップ部品領域Y(またはチップ抵抗器領域Y)というと、基板b30の表面b30Aには、抵抗b56をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子b5)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器b1(図49参照)を平面視したものと一致する。そして、基板b30の表面b30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板b30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器b1の大量生産が可能になる。
次いで、図50Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜b45を、基板b30の表面b30Aの全域に亘って形成する。絶縁膜b45は、絶縁層b20および絶縁層b20上の素子b5(抵抗体膜b21や配線膜b22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜b45は、前述したトリミング対象領域X(図42参照)における配線膜b22も覆っている。また、絶縁膜b45は、基板b30の表面b30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面b30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜b45は、表面b30A(表面b30A上の素子b5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次いで、図50Bに示すように、絶縁膜b45を全て覆うように、基板b30の表面b30Aの全域に亘ってレジストパターンb41を形成する。レジストパターンb41には、開口b42が形成されている。
図51は、図50Bの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図51を参照して、レジストパターンb41の開口b42は、多数のチップ抵抗器b1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器b1の輪郭の間の領域(図51においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口b42の全体形状は、互いに直交する直線部分b42Aおよびb42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターンb41では、開口b42において互いに直交する直線部分b42Aおよびb42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分b42Aおよびb42Bの交差部分b43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図50Bを参照して、レジストパターンb41をマスクとするプラズマエッチングにより、絶縁膜b45、絶縁層b20および基板b30のそれぞれを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子b5(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおいて基板b30の材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターンb41の開口b42と一致する位置(境界領域Z)には、絶縁膜b45および絶縁層b20を貫通して基板b30の表面b30Aから基板b30の厚さ途中まで到達する所定深さの溝b44が形成される。溝b44は、互いに対向する1対の側壁b44Aと、当該1対の側壁b44Aの下端(基板b30の裏面b30B側の端)の間を結ぶ底壁b44Bとによって区画されている。基板b30の表面b30Aを基準とした溝b44の深さは約100μmであり、溝b44の幅(対向する側壁b44Aの間隔)は20μm前後である。ただし、溝b44の幅は、底壁b44Bに近付くに従って広がっている。そのため、各側壁b44Aにおいて溝b44を区画する側面(区画面b44C)は、基板b30の表面b30Aに垂直な平面Hに対して傾斜している。
基板b30における溝b44の全体形状は、平面視でレジストパターンb41の開口b42(図51参照)と一致する格子状になっている。そして、基板b30の表面b30Aでは、各素子b5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝b44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板b30において素子b5が形成された部分は、チップ抵抗器b1の半製品b50である。基板b30の表面b30Aでは、溝b44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品b50が1つずつ位置していて、これらの半製品b50は、行列状に整列配置されている。このように溝b44を形成することによって、基板b30を複数のチップ部品領域Y毎の基板b2(前述した抵抗器本体)に分離する。
図50Bに示すように溝b44が形成された後、レジストパターンb41を除去し、図50Cに示すようにマスクb65を用いたエッチングによって、絶縁膜b45を選択的に除去する。マスクb65では、絶縁膜b45において平面視で各パッド領域b22A(図49参照)に一致する部分に、開口b66が形成されている。これにより、エッチングによって、絶縁膜b45において開口b66と一致する部分が除去され、当該部分には、開口b25が形成される。これにより、絶縁膜b45は、開口b25において各パッド領域b22Aを露出させるように形成されたことになる。1つの半製品b50につき、開口b25は2つ形成される。
各半製品b50において、絶縁膜b45に2つの開口b25を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブb70を各開口b25のパッド領域b22Aに接触させて、素子b5の全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜b45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図42参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜b22をレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品b50(換言すれば、チップ抵抗器b1)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜b45が素子b5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子b5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜b45がヒューズF(抵抗体膜b21)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。
その後、CVD法によって絶縁膜b45上にSiNを形成し、絶縁膜b45を厚くする。このとき、図50Dに示すように、溝b44の内周面(前述した側壁b44Aの区画面b44Cや底壁b44Bの上面)の全域にも絶縁膜b45が形成される。最終的な絶縁膜b45(図50Dに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜b45の一部は、各開口b25に入り込んで開口b25を塞いでいる。
その後、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板b30に対して、絶縁膜b45の上からスプレー塗布して、図50Dに示すように感光性樹脂の塗布膜b46を形成する。液状の感光性樹脂は、溝b44の入口(絶縁膜b23の端部b23Aや基板b2の縁部b85に相当する部分)では留まることができずに流れてしまう。そのため、液状の感光性樹脂は、溝b44の側壁b44A(区画面b44C)において基板b30の表面b30Aよりも裏面b30B側(底壁b44B側)の領域と、表面b30A上で絶縁膜b23の端部b23Aから外れた領域とに付着し、それぞれの領域において塗布膜b46(樹脂膜)となる。表面b30A上の塗布膜b46は、表面張力によって上方へ凸湾曲した形状となる。
なお、溝b44の側壁b44Aに形成された塗布膜b46は、溝b44の側壁b44Aにおける素子b5側(表面b30A側)の一部を覆っているだけで、塗布膜b46は、溝b44の底壁b44Bまで届いていない。そのため、溝b44は、塗布膜b46によって塞がれていない。
次いで、塗布膜b46に熱処理(キュア処理)を施す。これにより、塗布膜b46の厚みが熱収縮するとともに、塗布膜b46が硬化して膜質が安定する。
次いで、図50Eに示すように、塗布膜b46をパターニングし、表面b30A上の塗布膜b46において平面視で配線膜b22の各パッド領域b22A(開口b25)と一致する部分を選択的に除去する。具体的には、平面視で各パッド領域b22Aに整合(一致)するパターンの開口b61が形成されたマスクb62を用いて、塗布膜b46を、当該パターンで露光して現像する。これにより、各パッド領域b22Aの上方で塗布膜b46が分離される。次いで、図示しないマスクを用いたRIEによって各パッド領域b22A上の絶縁膜b45が除去されることで、各開口b25が開放されてパッド領域b22Aが露出される。
次いで、無電解めっきによって、Ni、PdおよびAuを積層することで構成されたNi/Pd/Au積層膜を各開口b25におけるパッド領域b22A上に形成する。このとき、Ni/Pd/Au積層膜を開口b25から塗布膜b46の表面まではみ出るようにする。これにより、各開口b25内のNi/Pd/Au積層膜が、図50Fに示す第1接続電極b3および第2接続電極b4となる。なお、第1接続電極b3および第2接続電極b4の上面は、表面b30A上で凸湾曲した塗布膜b46の上端以下の位置にある。
次いで、第1接続電極b3および第2接続電極b4間での通電検査が行われた後に、基板b30が裏面b30Bから研削される。
具体的には、溝b44を形成した後に、図50Gに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面b72を有する支持テープb71が、粘着面b72において、各半製品b50における第1接続電極b3および第2接続電極b4側(つまり、表面b30A)に貼着される。これにより、各半製品b50が支持テープb71に支持される。ここで、支持テープb71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品b50が支持テープb71に支持された状態で、基板b30を裏面b30B側から研削する。研削によって、溝b44の底壁b44B(図50F参照)の上面に達するまで基板b30が薄型化されると、隣り合う半製品b50を連結するものがなくなるので、溝b44を境界として基板b30が分割され、半製品b50が個別に分離してチップ抵抗器b1の完成品となる。つまり、溝b44(換言すれば、境界領域Z)において基板b30が切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器b1が切り出される。なお、基板b30を裏面b30B側から溝b44の底壁b44Bまでエッチングすることによってチップ抵抗器b1を切り出しても構わない。
完成した各チップ抵抗器b1では、溝b44の側壁b44Aの区画面b44Cをなしていた部分が、基板b2の側面b2C〜b2Fのいずれかとなり、裏面b30Bが裏面b2Bとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝b44を形成する工程(図50B参照)は、側面b2C〜b2Fを形成する工程に含まれる。そして、溝b44を形成する工程において、複数のチップ部品領域Y(チップ抵抗器b1)における基板b30の側面(区画面b44C)を、基板b30の表面b30Aに垂直な平面Hに対して傾斜した部分を有するように一度に整形することができる(図50B参照)。換言すれば、溝b44を形成することは、各チップ抵抗器b1の基板b2の側面b2C〜b2Fを、平面Hに対して傾斜した部分を有するように一度に整形することになる。
エッチングによって溝b44を形成することによって、完成したチップ抵抗器b1における側面b2C〜b2Fは、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。ちなみに、ダイシングソー(図示せず)で溝b44を機械的に形成した場合には、側面b2C〜b2Fは、ダイシングソーの研削跡をなす多数の筋が規則的なパターンで残っている。この筋は、側面b2C〜b2Fをエッチングしたとしても完全に消すことができない。
また、絶縁膜b45が絶縁膜b23となり、分離した塗布膜b46が樹脂膜b24となる。
以上のように、溝b44を形成してから基板b30を裏面b30B側から研削すれば、基板b30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器b1(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器b1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器b1の製造時間の短縮によってチップ抵抗器b1の生産性の向上を図ることができる。ちなみに、直径が8インチの基板b30を用いると50万個程度のチップ抵抗器b1を切り出すことができる。ダイシングソー(図示せず)だけを用いて基板b30に溝b44を形成することでチップ抵抗器b1を切り出す場合には、基板b30にたくさんの溝b44を形成するために何度もダイシングソーを移動させねばならないので、チップ抵抗器b1の製造時間が長くなるが、第2参考例のようにエッチングによって溝b44を一度に作るのであれば、このような不具合を解決できる。
つまり、チップ抵抗器b1のチップサイズが小さくても、このように先に溝b44を形成しておいてから基板b30を裏面b30Bから研削することによって、チップ抵抗器b1を一度に個片化することができる。そのため、従来のようにダイシングソーで基板b30をダイシングすることでチップ抵抗器b1を個片にする場合と比べて、ダイシング工程省略によって、コスト低減や時間短縮を図り、歩留まり向上を達成できる。
また、エッチングによって溝b44を高精度に形成できるので、溝b44によって分割された個々のチップ抵抗器b1では、外形寸法精度の向上を図ることができる。特に、プラズマエッチングを用いれば、溝b44を一層高精度に形成できる。具体的には、一般的なダイシングソーを用いて溝b44を形成する場合のチップ抵抗器b1の寸法公差が±20μmであるのに対して、第2参考例では、チップ抵抗器b1の寸法公差を±5μm程度まで小さくすることができる。また、レジストパターンb41(図51参照)に応じて、溝b44の間隔を微細化できるので、隣り合う溝b44の間に形成されるチップ抵抗器b1の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、ダイシングソーを用いる場合と異なり、チップ抵抗器b1を削り出すのではないから、チップ抵抗器b1の側面b2C〜b2Fにおいて隣り合うもの同士のコーナー部b11(図41(a)参照)にチッピングが生じることを低減でき、チップ抵抗器b1の外観の向上を図ることができる。
基板b30を裏面b30B側から研削することで個々のチップ抵抗器b1を切り出す際、チップ抵抗器b1によっては、先に切り出されたり遅れて切り出されたりすることがある。つまり、チップ抵抗器b1を切り出す際に、チップ抵抗器b1間で若干の時間差が生じることがある。この場合、先に切り出されたチップ抵抗器b1が左右に振動し、隣接するチップ抵抗器b1に接触することがある。このとき、各チップ抵抗器b1では、樹脂膜b24(第1樹脂膜b24A)がバンパーとして機能するので、個片化に先立って支持テープb71に支持された状態で隣接しているチップ抵抗器b1が互いに衝突しても、互いのチップ抵抗器b1では樹脂膜b24同士が最初に接触することから、チップ抵抗器b1の表面b2Aおよび裏面b2B側のコーナー部b12(特に表面b2A側の縁部b85)におけるチッピングを回避または抑制できる。特に、第1樹脂膜b24Aがチップ抵抗器b1の表面b2Aの縁部b85よりも外方に張り出しているから、縁部b85が周囲のものに接触することがないので、縁部b85におけるチッピングを回避または抑制できる。
なお、完成したチップ抵抗器b1における基板b2の裏面b2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面b2Bを綺麗にしてもよい。
図52A〜図52Dは、図50Gの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程を示す図解的な断面図である。
図52Aでは、個片化された複数のチップ抵抗器b1が引き続き支持テープb71にくっついている状態を示している。この状態で、図52Bに示すように、各チップ抵抗器b1の基板b2の裏面b2Bに対して、熱発泡シートb73を貼着する。熱発泡シートb73は、シート状のシート本体b74と、シート本体b74内に練り込まれた多数の発泡粒子b75とを含んでいる。
シート本体b74の粘着力は、支持テープb71の粘着面b72における粘着力よりも強い。そこで、各チップ抵抗器b1の基板b2の裏面b2Bに熱発泡シートb73を貼着した後に、図52Cに示すように、支持テープb71を各チップ抵抗器b1から引き剥がして、チップ抵抗器b1を熱発泡シートb73に転写する。このとき、支持テープb71に紫外線を照射すると(図52Bの点線矢印参照)、粘着面b72の粘着性が低下するので、支持テープb71が各チップ抵抗器b1から剥がれやすくなる。
次いで、熱発泡シートb73を加熱する。これにより、図52Dに示すように、熱発泡シートb73では、シート本体b74内の各発泡粒子b75が発泡してシート本体b74の表面から膨出する。その結果、熱発泡シートb73と各チップ抵抗器b1の基板b2の裏面b2Bとの接触面積が小さくなり、全てのチップ抵抗器b1が熱発泡シートb73から自然に剥がれる(脱落する)。このように回収されたチップ抵抗器b1は、実装基板b9(図41(b)参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープb71または熱発泡シートb73からチップ抵抗器b1を1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数のチップ抵抗器b1が支持テープb71にくっついた状態で(図52A参照)、熱発泡シートb73を用いずに、支持テープb71からチップ抵抗器b1を所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
図53A〜図53Cは、図50Gの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図53A〜図53Cに示す別の方法によって、各チップ抵抗器b1を回収することもできる。
図53Aでは、図52Aと同様に、個片化された複数のチップ抵抗器b1が引き続き支持テープb71にくっついている状態を示している。この状態で、図53Bに示すように、各チップ抵抗器b1の基板b2の裏面b2Bに転写テープb77を貼着する。転写テープb77は、支持テープb71の粘着面b72よりも強い粘着力を有する。そこで、図53Cに示すように、各チップ抵抗器b1に転写テープb77を貼着した後に、支持テープb71を各チップ抵抗器b1から引き剥がす。この際、前述したように、粘着面b72の粘着性を低下させるために支持テープb71に紫外線(図53Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
転写テープb77の両端には、回収装置(図示せず)のフレームb78が貼り付けられている。両側のフレームb78は、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープb71を各チップ抵抗器b1から引き剥がした後に、両側のフレームb78を互いが離間する方向に移動させると、転写テープb77が伸張して薄くなる。これによって、転写テープb77の粘着力が低下するので、各チップ抵抗器b1が転写テープb77から剥がれやすくなる。この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズルb76をチップ抵抗器b1の表面b2A側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、このチップ抵抗器b1が転写テープb77から引き剥がされて吸着ノズルb76に吸着される。この際、図53Cに示す突起b79によって、吸着ノズルb76とは反対側から転写テープb77越しにチップ抵抗器b1を吸着ノズルb76側へ突き上げると、チップ抵抗器b1を転写テープb77から円滑に引き剥がすことができる。このように回収されたチップ抵抗器b1は、吸着ノズルb76に吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
図54〜図59は、上記実施形態または変形例に係るチップ抵抗器の縦断面図であり、図54および図56では平面図も示している。なお、図54〜図59では、説明の便宜上、前述した絶縁膜b23等の図示を省略し、基板b2、第1接続電極b3、第2接続電極b4および樹脂膜b24のみを図示している。また、図54(c)および図56(c)では、樹脂膜b24の図示を省略している。
図54〜図59に示すように、基板b2の側面b2C〜b2Fのそれぞれは、基板b2の表面b2Aに垂直な平面Hに対して傾斜した部分を有している。
図54および図55に示すチップ抵抗器b1では、側面b2C〜b2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面Eに沿った平面である。また、基板b2の表面b2Aと基板b2の側面b2C〜b2Fのそれぞれとが鋭角を成している。そのため、基板b2の裏面b2Bの縁部b90が、基板b2の表面b2Aの縁部b85に対して基板b2の内方に後退している。詳しくは、平面視において、裏面b2Bの輪郭をなす矩形の縁部b90が、表面b2Aの輪郭をなす矩形の縁部b85の内側に位置している(図54(c)参照)。そのため、側面b2C〜b2Fのいずれに関して、平面Eは、表面b2Aの縁部b85から裏面b2Bの縁部b90へ向かって基板b2の内方に後退するように傾斜している。よって、チップ抵抗器b1における側面b2C〜b2Fのそれぞれは、裏面b2B側へ向けて細くなる台形(略等脚台形)状である。
ここで、樹脂膜b24では、前述したように、第1樹脂膜b24Aが、側面b2C〜b2Fのそれぞれにおいて、各側面と表面b2Aとの境界(縁部b85)から裏面b2B側へ離れた領域に形成されていて、第2樹脂膜b24Bが表面b2Aに形成されている。
一方、図55に示すように、側面b2C〜b2Fのそれぞれにおける第1樹脂膜b24Aが、各側面と表面b2Aとの境界(縁部b85)において、第2樹脂膜b24Bから分離していなくてもよい。この場合、樹脂膜b24は、側面b2C〜b2Fのそれぞれから表面b2Aに渡って連続して形成されている。
図56に示すチップ抵抗器b1では、側面b2C〜b2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面Gに沿った平面である。また、基板b2の表面b2Aと基板b2の側面b2C〜b2Fのそれぞれとが鈍角を成している。そのため、基板b2の裏面b2Bの縁部b90が、基板b2の表面b2Aの縁部b85に対して基板b2の外方に張り出している。詳しくは、平面視において、裏面b2Bの輪郭をなす矩形の縁部b90が、表面b2Aの輪郭をなす矩形の縁部b85の外側に位置している(図56(c)参照)。そのため、側面b2C〜b2Fのいずれに関して、平面Gは、表面b2Aの縁部b85から裏面b2Bの縁部b90へ向かって基板b2の外方に張り出すように傾斜している。よって、チップ抵抗器b1における側面b2C〜b2Fのそれぞれは、表面b2A側へ向けて細くなる台形(略等脚台形)状である。
また、側面b2C〜b2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面である必要はなく、図57〜図59に示すように基板b2の内方へ向けて凸湾曲した湾曲面であって、平面Hに傾斜した部分(前述した平面E,Gを接線とする曲面部分)を有していればよい。この場合、基板b2の表面b2Aと基板b2の側面b2C〜b2Fのそれぞれとが鋭角を成しているとともに、基板b2の裏面b2Bと基板b2の側面b2C〜b2Fのそれぞれとが鋭角を成している。
図57では、基板b2の裏面b2Bの縁部b90が、基板b2の表面b2Aの縁部b85に対して基板b2の外方および内方のいずれにもずれておらず、平面視において重なっている。図58では、基板b2の裏面b2Bの縁部b90が、基板b2の表面b2Aの縁部b85に対して基板b2の内方に後退している。図59では、基板b2の裏面b2Bの縁部b90が、基板b2の表面b2Aの縁部b85に対して基板b2の外方に張り出している。
図54〜図59に示した側面b2C〜b2Fは、エッチングによって溝b44を作る際のエッチング条件を適宜設定することによって実現できる。つまり、エッチング技術によって、基板b2における側面b2C〜b2Fの形状のコントロールが可能となる。
以上のように、チップ抵抗器b1では、基板b2における表面b2Aの縁部b85および裏面b2Bの縁部b90のうち、一方が他方よりも基板b2の外方へ張り出している(図58の場合を除く)。そのため、チップ抵抗器b1の表面b2Aおよび裏面b2Bにおけるコーナー部(角部)b12が直角にならないので、コーナー部b12(特に鈍角のコーナー部b12)におけるチッピングを低減できる。
特に、図54および図55に示すチップ抵抗器b1では、基板b2の裏面b2Bにおけるコーナー部b12(縁部b90のコーナー部b12)が鈍角になるので、当該コーナー部b12におけるチッピングを低減できる。また、図56に示すチップ抵抗器b1では、基板b2の表面b2Aにおけるコーナー部b12(縁部b85のコーナー部b12)が鈍角になるので、当該コーナー部b12におけるチッピングを低減できる。
チップ抵抗器b1を実装基板b9(図41(b)参照)に実装する場合、自動実装機の吸着ノズル(図示せず)にチップ抵抗器b1の裏面b2Bを吸着してから吸着ノズル(図示せず)を実装基板b9まで移動させることによって、チップ抵抗器b1を実装基板b9に実装する。チップ抵抗器b1を吸着ノズル(図示せず)に吸着するのに先立って、チップ抵抗器b1の輪郭を表面b2A側または裏面b2B側から画像認識してから、チップ抵抗器b1の裏面b2Bにおいて吸着ノズル(図示せず)に吸着させる位置を決める。ここで、縁部b85および縁部b90のうち、一方が他方よりも基板b2の外方へ張り出している場合、基板b2の表面b2A側または裏面b2B側から画像認識したときのチップ部品の輪郭は、基板b2における表面b2Aの縁部b85および裏面b2Bの縁部b90のどちらか一方(基板b2の外方へ張り出した縁部)だけで構成されて明瞭である。そのため、チップ抵抗器b1の輪郭を正しく認識できるので、チップ抵抗器b1の裏面b2Bにおける所望の部分(たとえば中心部分)を吸着ノズル(図示せず)に対して正確に吸着させて、チップ抵抗器b1を精度良く実装基板b9(図41(b)参照)に実装することができる。つまり、実装位置精度の向上を図ることができる。
特に、図54、図56〜図59に示すチップ抵抗器b1の場合、側面b2C〜b2Fのそれぞれにおける第2樹脂膜b24Bは、基板b2の縁部b85が露出されるように表面b2Aから間隔Kを開けた領域に形成されている。さらに、図54、図57〜図59に示すチップ抵抗器b1の場合には、基板b2の表面b2Aと側面b2C〜b2Fのそれぞれとが鋭角を成している。よって、基板b2の表面b2Aの縁部b85が際立つことからチップ抵抗器b1の輪郭(縁部b85)が一層明瞭になって認識しやすくなるので、チップ抵抗器b1をより精度良く実装基板b9に実装することができる。つまり、当該縁部b85によってチップ抵抗器b1の輪郭を容易に認識でき、これによって、正確な位置でチップ抵抗器b1を吸着ノズル(図示せず)に吸着させることができる。なお、画像認識するために縁部b85や縁部b90にピントを合わせた場合には、第1樹脂膜b24Aにはピントが合っていないことから第1樹脂膜b24Aは不鮮明なっているので、縁部b85または縁部b90と第1樹脂膜b24Aとが紛らわしくなることはない。
一方、実装位置精度の向上よりもコーナー部b12におけるチッピングの防止を優先するのであれば、図55に示すように、基板b2のコーナー部b12(ここでは表面b2A側のコーナー部b12)を樹脂膜b24で覆ってもよい。この場合、当該コーナー部b12におけるチッピングを確実に回避または抑制できる。
また、基板b2の表面b2Aは、第2樹脂膜b24Bによって保護されている。特に、第2樹脂膜b24B(中央部分b24C)の表面b24Dは、第1接続電極b3および第2接続電極b4以上の高さを有している(図54(b)、図55(b)、図56(b)、図57(b)、図58(b)および図59(b)では図示を省略)。そのため、図41(b)に示すようにチップ抵抗器b1を実装基板b9に実装する際に、基板b2が表面b2A側において実装基板b9から衝撃を受ける場合には、第2樹脂膜b24B(中央部分b24C)が最初に衝撃を受けるようになっているので、この衝撃を第2樹脂膜b24Bによって緩和することによって、基板b2の表面b2Aを確実に保護することができる。
以上、第2参考例の実施形態について説明してきたが、第2参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第2参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器b1を開示したが、第2参考例は、チップコンデンサやチップインダクタやチップダイオードといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図60は、第2参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。図61は、図60の切断面線LXI−LXIから見た断面図である。図62は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサb101において、前述したチップ抵抗器b1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサb101において、チップ抵抗器b1で説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器b1で説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器b1で説明した部分と同じ作用効果を奏することができる。
図60を参照して、チップコンデンサb101は、チップ抵抗器b1と同様に、基板b2と、基板b2上(基板b2の表面b2A側)に配置された第1接続電極b3と、同じく基板b2上に配置された第2接続電極b4とを備えている。基板b2は、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板b2の長手方向両端部に第1接続電極b3および第2接続電極b4がそれぞれ配置されている。第1接続電極b3および第2接続電極b4は、この実施形態では、基板b2の短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。基板b2の表面b2Aには、第1接続電極b3および第2接続電極b4の間のキャパシタ配置領域b105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が配置されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子b5を構成する複数の素子要素(キャパシタ素子)であり、複数のヒューズユニットb107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極b4に電気的に接続されている。
図61および図62に示されているように、基板b2の表面b2Aには絶縁層b20が形成されていて、絶縁層b20の表面に下部電極膜b111が形成されている。下部電極膜b111は、キャパシタ配置領域b105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜b111は、第1接続電極b3の直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜b111は、キャパシタ配置領域b105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域b111Aと、第1接続電極b3の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域b111Bとを有している。キャパシタ電極領域b111Aがキャパシタ配置領域b105に位置していて、パッド領域b111Bが第1接続電極b3の直下に位置して第1接続電極b3に接触している。
キャパシタ配置領域b105において下部電極膜b111(キャパシタ電極領域b111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)b112が形成されている。容量膜b112は、キャパシタ電極領域b111A(キャパシタ配置領域b105)の全域にわたって形成されている。容量膜b112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域b105外の絶縁層b20を覆っている。
容量膜b112の上には、上部電極膜b113が形成されている。図60では、明瞭化のために、上部電極膜b113を着色して示してある。上部電極膜b113は、キャパシタ配置領域b105に位置するキャパシタ電極領域b113Aと、第2接続電極b4の直下に位置して第2接続電極b4に接触するパッド領域b113Bと、キャパシタ電極領域b113Aとパッド領域b113Bとの間に配置されたヒューズ領域b113Cとを有している。
キャパシタ電極領域b113Aにおいて、上部電極膜b113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)b131〜b139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分b131〜b139は、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域b113Cから第1接続電極b3に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分b131〜b139は、複数種類の対向面積で、容量膜b112を挟んで(容量膜b112に接しつつ)下部電極膜b111に対向している。より具体的には、電極膜部分b131〜b139の下部電極膜b111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分b131〜b139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分b131〜b138(またはb131〜b137,b139)を含む。これによって、各電極膜部分b131〜b139と容量膜b112を挟んで対向する下部電極膜b111とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分b131〜b139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分b131〜b135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分b135,b136,b137,b138,b139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分b135〜b139は、キャパシタ配置領域b105の第2接続電極b4側の端縁から第1接続電極b3側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分b131〜b134は、それよりも短く形成されている。
パッド領域b113Bは、第2接続電極b4とほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。図61に示すように、パッド領域b113Bにおける上部電極膜b113は、第2接続電極b4に接している。
ヒューズ領域b113Cは、パッド領域b113Bの一つの長辺(基板b2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域b113Cは、パッド領域b113Bの前記1つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニットb107を含む。
ヒューズユニットb107は、上部電極膜b113のパッド領域b113Bと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分b131〜b139は、1つまたは複数個のヒューズユニットb107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニットb107を介してパッド領域b113Bに接続され、このパッド領域b113Bを介して第2接続電極b4に電気的に接続されている。図60に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分b131〜b136は、一つのヒューズユニットb107によってパッド領域b113Bに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分b137〜b139は複数個のヒューズユニットb107を介してパッド領域b113Bに接続されている。全てのヒューズユニットb107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニットb107は未使用である。
ヒューズユニットb107は、パッド領域b113Bとの接続のための第1幅広部b107Aと、電極膜部分b131〜b139との接続のための第2幅広部b107Bと、第1および第2幅広部b107A,7Bの間を接続する幅狭部b107Cとを含む。幅狭部b107Cは、レーザ光によって切断(溶断)することができるように構成されている。それによって、電極膜部分b131〜b139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニットb107の切断によって第1および第2接続電極b3,4から電気的に切り離すことができる。
図60および図62では図示を省略したが、図61に表れている通り、上部電極膜b113の表面を含むチップコンデンサb101の表面は、前述した絶縁膜b23によって覆われている。絶縁膜b23は、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサb101の上面のみならず、基板b2の側面b2C〜b2Fまで延びて、側面b2C〜b2Fの全域をも覆うように形成されている。さらに、絶縁膜b23の上には、前述した樹脂膜b24が形成されている。樹脂膜b24では、第1樹脂膜b24Aが、側面b2C〜b2Fにおいて表面b2A側の部分を覆い、第2樹脂膜b24Bが、表面b2Aを覆っているものの、樹脂膜b24は、表面b2Aの縁部b85で途切れていて、縁部b85を露出させている。
絶縁膜b23および樹脂膜b24は、チップコンデンサb101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極b3および第2接続電極b4に対応する領域に、前述した開口b25がそれぞれ形成されている。開口b25はそれぞれ下部電極膜b111のパッド領域b111Bの一部の領域、上部電極膜b113のパッド領域b113Bの一部の領域を露出させるように絶縁膜b23および樹脂膜b24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極b3に対応した開口b25は、容量膜b112をも貫通している。
開口b25には、第1接続電極b3および第2接続電極b4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極b3は下部電極膜b111のパッド領域b111Bに接合しており、第2接続電極b4は上部電極膜b113のパッド領域b113Bに接合している。第1および第2外部電極b3,b4は、樹脂膜b24の表面から突出するように形成されている。これにより、実装基板に対してチップコンデンサb101をフリップチップ接合することができる。
図63は、チップコンデンサb101の内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極b3と第2接続電極b4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極b4との間には、一つまたは複数のヒューズユニットb107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサb101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサb101の容量値が減少する。
そこで、パッド領域b111B,b113Bの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサb101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサb101を提供することができる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極b3および第2接続電極b4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサb101を共通の設計で実現することができる。
チップコンデンサb101の各部の詳細について以下に説明を加える。
図60を参照して、基板b2は、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域b105は、概ね、基板b2の短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板b2の厚さは、150μm程度であってもよい。図61を参照して、基板b2は、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板b2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
絶縁層b20は、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜b111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜b111は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜b113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜b113は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜b113のキャパシタ電極領域b113Aを電極膜部分b131〜b139に分割し、さらに、ヒューズ領域b113Cを複数のヒューズユニットb107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜b112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜b112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
絶縁膜b23は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜b24は、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成することができる。
第1および第2接続電極b3,b4は、たとえば、下部電極膜b111または上部電極膜b113に接するニッケル層と、このニッケル層上に積層したパラジウム層と、そのパラジウム層上に積層した金層とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、めっき法(より具体的には無電解めっき法)で形成することができる。ニッケル層は下部電極膜b111または上部電極膜b113に対する密着性の向上に寄与し、パラジウム層は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極b3,b4の最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサb101の製造工程は、素子b5を形成した後のチップ抵抗器b1の製造工程と同じである。
チップコンデンサb101において素子b5(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板b30(基板b2)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁層b20が形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜b111が絶縁層b20の表面全域に形成される。下部電極膜b111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜b111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図60等に示したパターンの下部電極膜b111が得られる。下部電極膜b111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜b112が、下部電極膜b111上に形成される。下部電極膜b111が形成されていない領域では、絶縁層b20の表面に容量膜b112が形成されることになる。次いで、その容量膜b112の上に、上部電極膜b113が形成される。上部電極膜b113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成することができる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次いで、上部電極膜b113の表面に上部電極膜b113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜b113が、最終形状(図60等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜b113は、キャパシタ電極領域b113Aに複数の電極膜部分b131〜b139に分割された部分を有し、ヒューズ領域b113Cに複数のヒューズユニットb107を有し、それらのヒューズユニットb107に接続されたパッド領域b113Bを有するパターンに整形される。上部電極膜b113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサb101における素子b5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニットb107)が形成される。素子b5が形成された後に、プラズマCVD法によって絶縁膜b45が、素子b5(上部電極膜b113、上部電極膜b113が形成されていない領域における容量膜b112)を全て覆うように形成される(図50A参照)。その後は、溝b44が形成されてから(図50B参照)、開口b25が形成される(図50C参照)。そして、開口b25から露出された上部電極膜b113のパッド領域b113Bと下部電極膜b111のパッド領域b111Bとにプローブb70を押し当てて、複数のキャパシタ要素C0〜C9の総容量値が測定される(図50C参照)。この測定された総容量値に基づき、目的とするチップコンデンサb101の容量値に応じて、切り離すべきキャパシタ要素、すなわち切断すべきヒューズが選択される。
この状態から、ヒューズユニットb107を溶断するためのレーザトリミングが行われる。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニットb107にレーザ光を当てて、そのヒューズユニットb107の幅狭部b107C(図60参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域b113Bから切り離される。ヒューズユニットb107にレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜b45の働きによって、ヒューズユニットb107の近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニットb107が溶断する。これにより、チップコンデンサb101の容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、カバー膜(絶縁膜b45)上に窒化シリコン膜が堆積させられ、絶縁膜b23が形成される。前述のカバー膜は最終形態において、絶縁膜b23と一体化し、この絶縁膜b23の一部を構成する。ヒューズの切断後に形成された絶縁膜b23は、ヒューズ溶断の際に同時に破壊されたカバー膜の開口内に入り込み、ヒューズユニットb107の切断面を覆って保護する。したがって、絶縁膜b23は、ヒューズユニットb107の切断箇所に異物が入り込んだり水分が侵入したりすることを防ぐ。これにより、信頼性の高いチップコンデンサb101を製造することができる。絶縁膜b23は、全体で、たとえば8000Å程度の膜厚を有するように形成されてもよい。
次に、前述した塗布膜b46が形成される(図50D参照)。その後、塗布膜b46や絶縁膜b23によって塞がれていた開口b25が開放され(図50E参照)、開口b25内に、たとえば無電解めっき法によって、第1接続電極b3および第2接続電極b4が成長させられる(図50F参照)。
その後、チップ抵抗器b1の場合と同じように、基板b30を裏面b30Bから研削すると(図50G参照)、チップコンデンサb101の個片を切り出すことができる。
フォトリソグラフィ工程を利用した上部電極膜b113のパターニングでは、微小面積の電極膜部分b131〜b149を精度良く形成することができ、さらに微細なパターンのヒューズユニットb107を形成することができる。そして、上部電極膜b113のパターニングの後に、総容量値の測定を経て、切断すべきヒューズが決定される。その決定されたヒューズを切断することによって、所望の容量値に正確に合わせ込まれたチップコンデンサb101を得ることができる。
以上、第2参考例のチップ部品(チップ抵抗器b1やチップコンデンサb101)について説明してきたが、第2参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器b1の場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサb101の場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器b1やチップコンデンサb101では、基板b2の表面に絶縁層b20が形成されているが、基板b2が絶縁性の基板であれば、絶縁層b20を省くこともできる。
また、チップコンデンサb101では、上部電極膜b113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜b111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜b113および下部電極膜b111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサb101では、上部電極膜b113および下部電極膜b111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜b113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
チップコンデンサb101では、また、基板b2として導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜b112を形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
<第3参考例に係る発明>
(1)第3参考例に係る発明の特徴
たとえば、第3参考例に係る発明の特徴は、以下のC1〜C23である。
(C1)本体と、前記本体の表面に設けられた電極と、前記本体の側面に形成された樹脂膜とを含む、チップ部品。
この構成によれば、チップ部品では、樹脂膜がバンパーとして機能するので、個片化に先立って支持テープ等に支持された状態で隣接しているチップ部品が互いに衝突しても、互いのチップ部品では樹脂膜同士が最初に接触することから、チップ部品のコーナー部におけるチッピングを回避または抑制できる。
(C2)前記樹脂膜が、前記本体の表面の縁よりも外方に張り出している、C1に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品の表面のコーナー部が周囲のものに接触することがないので、当該コーナー部におけるチッピングを回避または抑制できる。
(C3)前記樹脂膜が、前記本体の表面の縁を露出させるように形成されている、C1またはC2に記載のチップ部品。
実装基板にチップ部品を実装するために、一般的に、チップ部品を自動実装機の吸着ノズルに吸着して移動させる。チップ部品を吸着ノズルに吸着するのに先立って、チップ部品の輪郭を表面側または裏面側から画像認識してから、チップ部品において吸着ノズルに吸着させる位置を決めるのだが、本発明の構成によれば、本体の表面の縁が露出されているので、当該縁によってチップ部品の輪郭を容易に認識でき、これによって、正確な位置でチップ部品を吸着ノズルに吸着させることができる。
(C4)前記樹脂膜が、前記本体の側面において前記本体の表面から間隔を開けた領域に形成されている、C1〜C3のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、本体の表面の縁を確実に露出させることができる。
(C5)前記樹脂膜が、前記本体の側面から表面に渡って連続して形成されている、C1またはC2に記載のチップ部品。
この構成によれば、本体の表面のコーナー部が樹脂膜に覆われるので、当該コーナー部におけるチッピングを確実に回避または抑制できる。
(C6)前記本体の表面と側面とが鋭角または鈍角を成している、C1〜C5のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、本体のコーナー部が直角でないので、コーナー部(特に鈍角のコーナー部)におけるチッピングを回避または抑制できる。
(C7)前記電極を露出させるように前記本体の表面を覆っている別の樹脂膜をさらに含む、C1〜C6のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、本体の表面を当該別の樹脂膜によって保護することができる。
(C8)前記別の樹脂膜が、前記電極以上の高さの表面を有している、C7に記載のチップ部品。
この構成によれば、本体が表面側において衝撃を受ける場合には、当該別の樹脂膜が最初に衝撃を受けるようになっているので、この衝撃を当該別の樹脂膜によって緩和することによって、本体の表面を確実に保護することができる。
(C9)前記本体が、基板と、基板上に形成された複数の抵抗体とを含み、各抵抗体が、前記基板の表面に形成された抵抗体膜と、抵抗体膜に接するように積層された配線膜とを含み、前記配線膜に前記電極が電気的に接続されている、C1〜C8のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ部品は、チップ抵抗器となり、複数の抵抗体を組み合わせることによって、複数種類の抵抗値に対応することができる。
(C10)前記本体が、前記基板上に形成され、前記複数の抵抗体を前記電極に対してそれぞれ切断可能に接続する複数のヒューズをさらに含む、C9に記載のチップ部品。
この構成によれば、チップ抵抗器であるチップ部品では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(C11)チップ部品は、チップインダクタであってもよい。
(C12)チップ部品は、チップダイオードであってもよい。
(C13)チップ部品は、チップコンデンサであってもよい。
(C14)複数のチップ部品領域を含む基板の各チップ部品領域に電極を形成する工程と、前記複数のチップ部品領域の境界領域に前記基板の表面から所定深さの溝を形成して、前記複数のチップ部品領域毎の本体に分離する工程と、前記溝の側面に樹脂膜を形成することにより、各本体の側面に当該樹脂膜を形成する工程と、前記基板の裏面を前記溝に到達するまで研削して、前記基板を複数のチップ部品に分割する工程とを含む、チップ部品の製造方法。
この方法によれば、完成したチップ部品は、バンパーとして機能する樹脂膜を側面に有するので、個片化に先立って支持テープ等に支持された状態で隣接しているチップ部品が互いに衝突しても、互いのチップ部品では樹脂膜同士が最初に接触することから、チップ部品のコーナー部におけるチッピングを回避または抑制できる。
(C15)前記溝の形成が、エッチングによって行われる、C14に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板における全てのチップ部品領域の境界領域に一度に溝を形成することができるので、チップ部品の製造にかかる時間の短縮を図ることができる。
(C16)前記樹脂膜が、前記本体の表面の縁よりも外方に張り出すように形成される、C14またはC15に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品の表面のコーナー部が周囲のものに接触することがないので、当該コーナー部におけるチッピングを回避または抑制できる。
(C17)前記樹脂膜が、前記本体の表面の縁を露出させるように形成される、C14〜C16のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
実装基板にチップ部品を実装するために、一般的に、チップ部品を自動実装機の吸着ノズルに吸着して移動させる。チップ部品を吸着ノズルに吸着するのに先立って、チップ部品の輪郭を表面側または裏面側から画像認識してから、チップ部品において吸着ノズルに吸着させる位置を決めるのだが、本発明の構成によれば、本体の表面の縁が露出されているので、当該縁によってチップ部品の輪郭を容易に認識でき、これによって、正確な位置でチップ部品を吸着ノズルに吸着させることができる。
(C18)前記樹脂膜が、前記本体の側面において前記本体の表面から間隔を開けた領域に形成される、C14〜C17のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、本体の表面の縁を確実に露出させることができる。
(C19)前記樹脂膜が、前記本体の側面から表面に渡って連続して形成される、C14〜C16のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、本体の表面のコーナー部が樹脂膜に覆われるので、当該コーナー部におけるチッピングを確実に回避または抑制できる。
(C20)前記本体の表面と側面とが鋭角または鈍角を成している、C14〜C19のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、本体のコーナー部が直角でないので、コーナー部(特に鈍角のコーナー部)におけるチッピングを回避または抑制できる。
(C21)前記電極を露出させるように前記本体の表面を覆う別の樹脂膜を形成する工程を含む、C14〜C20のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、本体の表面を当該別の樹脂膜によって保護することができる。
(C22)前記別の樹脂膜が、前記電極以上の高さの表面を有している、C21に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、本体が表面側において衝撃を受ける場合には、当該別の樹脂膜が最初に衝撃を受けるようになっているので、この衝撃を当該別の樹脂膜によって緩和することによって、本体の表面を確実に保護することができる。
(C23)前記本体が、基板と、基板上に形成された複数の抵抗体とを含み、各抵抗体が、前記基板の表面に形成された抵抗体膜と、抵抗体膜に接するように積層された配線膜とを含み、前記配線膜に前記電極が電気的に接続されている、C14〜C22のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品は、チップ抵抗器となり、複数の抵抗体を組み合わせることによって、複数種類の抵抗値に対応することができる。
(2)第3参考例に係る発明の実施形態
以下では、第3参考例の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図64〜図86で示した符号は、これらの図面でのみ有効であり、他の実施形態に使用されていても、当該他の実施形態の符号と同じ要素を示すものではない。
図64(a)は、第3参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図であり、図64(b)は、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態を示す模式的な側面図である。
このチップ抵抗器c1は、微小なチップ部品であり、図64(a)に示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器c1の平面形状は、直交する二辺(長辺c81、短辺c82)がそれぞれ0.4mm以下、0.2mm以下の矩形である。好ましくは、チップ抵抗器c1の寸法に関し、長さL(長辺c81の長さ)が約0.3mmであり、幅W(短辺c82の長さ)が約0.15mmであり、厚さTが約0.1mmである。
このチップ抵抗器c1は、基板上に多数個のチップ抵抗器c1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器c1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器c1は、チップ抵抗器c1の本体(抵抗器本体)を構成する基板c2と、外部接続電極となる第1接続電極c3および第2接続電極c4と、第1接続電極c3および第2接続電極c4によって外部接続される素子c5とを主に備えている。
基板c2は、略直方体のチップ形状である。基板c2において、図64(a)における上面は、表面c2Aである。表面c2Aは、基板c2において素子c5が形成される面(素子形成面)であり、略長方形状である。基板c2の厚さ方向において表面c2Aとは反対側の面は、裏面c2Bである。表面c2Aと裏面c2Bとは、ほぼ同形状であり、互いに平行である。ただし、表面c2Aは、裏面c2Bよりも大きい。そのため、表面c2Aに直交する方向から見た平面視において、裏面c2Bは、表面c2Aの内側におさまる。表面c2Aにおける一対の長辺c81および短辺c82によって区画された矩形状の縁を、縁部c85ということにし、裏面c2Bにおける一対の長辺c81および短辺c82によって区画された矩形状の縁を、縁部c90ということにする。
基板c2は、表面c2Aおよび裏面c2B以外に、これらの面に交差して延びてこれらの面の間を繋ぐ側面c2C、側面c2D、側面c2Eおよび側面c2Fを有している。
側面c2Cは、表面c2Aおよび裏面c2Bにおける長手方向一方側(図64(a)における左手前側)の短辺c82間に架設されていて、側面c2Dは、表面c2Aおよび裏面c2Bにおける長手方向他方側(図64(a)における右奥側)の短辺c82間に架設されている。側面c2Cおよび側面c2Dは、当該長手方向における基板c2の両端面である。側面c2Eは、表面c2Aおよび裏面c2Bにおける短手方向一方側(図64(a)における左奥側)の長辺c81間に架設されていて、側面c2Fは、表面c2Aおよび裏面c2Bにおける短手方向他方側(図64(a)における右手前側)の長辺c81間に架設されている。側面c2Eおよび側面c2Fは、当該短手方向における基板c2の両端面である。側面c2Cおよび側面c2Dのそれぞれは、側面c2Eおよび側面c2Fのそれぞれと交差(略直交)している。前述したように表面c2Aが裏面c2Bよりも大きいので、側面c2C〜c2Fのそれぞれは、裏面c2B側の上底と表面c2A側の下底とを有する等脚台形状をなしている。つまり、チップ抵抗器c1の側面形状は、等脚台形状である。そのため、表面c2A〜側面c2Fにおいて隣り合うもの同士が鋭角または鈍角を成している。具体的には、表面c2Aと、側面c2C、側面c2D、側面c2Eおよび側面c2Fのそれぞれとは鋭角となしていて、裏面c2Bと、側面c2C、側面c2D、側面c2Eおよび側面c2Fのそれぞれとは鈍角となしている。なお、説明の便宜上、図64以降の各図では、側面c2C〜c2Fのそれぞれを実際よりも傾斜させて(誇張して)示している。
基板c2では、表面c2Aおよび側面c2C〜c2Fのそれぞれの全域が絶縁膜c23で覆われている。そのため、厳密には、図64(a)では、表面c2Aおよび側面c2C〜c2Fのそれぞれの全域は、絶縁膜c23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、チップ抵抗器c1は、樹脂膜c24を有している。樹脂膜c24は、第1樹脂膜c24Aと、第1樹脂膜c24Aとは別の第2樹脂膜c24Bとを含んでいる。第1樹脂膜c24Aは、側面c2C、側面c2D、側面c2Eおよび側面c2Fのそれぞれにおいて表面c2Aの縁部c85から裏面c2B側へ少し離れた領域に形成されている。第2樹脂膜c24Bは、表面c2A上の絶縁膜c23において表面c2Aの縁部c85に重ならない部分(縁部c85の内側領域)を覆っている。絶縁膜c23および樹脂膜c24については、以降で詳説する。
第1接続電極c3および第2接続電極c4は、基板c2の表面c2A上において縁部c85よりも内側の領域に形成されていて、表面c2A上の第2樹脂膜c24Bから部分的に露出されている。換言すれば、第2樹脂膜c24Bは、第1接続電極c3および第2接続電極c4を露出させるように表面c2A(厳密には表面c2A上の絶縁膜c23)を覆っている。第1接続電極c3および第2接続電極c4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で表面c2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極c3および第2接続電極c4は、表面c2Aの長手方向に間隔を隔てて配置されており、表面c2Aの短手方向において長手である。図64(a)では、表面c2Aにおいて、側面c2C寄りの位置に第1接続電極c3が設けられ、側面c2D寄りの位置に第2接続電極c4が設けられている。
素子c5は、回路素子であって、基板c2の表面c2Aにおける第1接続電極c3と第2接続電極c4との間の領域に形成されていて、絶縁膜c23および第2樹脂膜c24Bによって上から被覆されている。素子c5は、前述した抵抗器本体を構成している。この実施形態の素子c5は、抵抗c56である。抵抗c56は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを表面c2A上でマトリックス状に配列した回路網によって構成されている。抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子c5は、後述する配線膜c22に電気的に接続されていて、配線膜c22を介して第1接続電極c3と第2接続電極c4とに電気的に接続されている。
図64(b)に示すように、第1接続電極c3と第2接続電極c4を実装基板c9に対向させて、半田c13によって実装基板c9の回路(図示せず)に対して電気的かつ機械的に接続することにより、チップ抵抗器c1を実装基板c9に実装(フリップチップ接続)することができる。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極c3および第2接続電極c4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
図65は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図65を参照して、素子c5は、抵抗回路網となっている。具体的に、素子c5は、行方向(基板c2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板c2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子c5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板c2の表面c2Aには、抵抗回路を素子c5に対して電気的に組み込んだり、または、素子c5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズ(ヒューズ)Fが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第2接続電極c3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第2接続電極c3に対して切断可能(切り離し可能)に接続している。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、前述した抵抗器本体を構成している。
図66Aは、図65に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図66Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図66AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図66Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図66AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図66A、図66Bおよび図66Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器c1は、前述した配線膜c22、絶縁膜c23および樹脂膜c24の他に、絶縁層c20と抵抗体膜c21とをさらに備えている(図66Bおよび図66C参照)。絶縁層c20、抵抗体膜c21、配線膜c22、絶縁膜c23および樹脂膜c24は、基板c2(表面c2A)上に形成されている。
絶縁層c20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁層c20は、基板c2の表面c2Aの全域を覆っている。絶縁層c20の厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜c21は、絶縁層c20上に形成されている。抵抗体膜c21は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜c21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜c21は、第1接続電極c3と第2接続電極c4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ラインc21A」という)を構成していて、抵抗体膜ラインc21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図66A参照)。
抵抗体膜ラインc21A上には、配線膜c22が積層されている。配線膜c22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜c22の厚さは、約8000Åである。配線膜c22は、抵抗体膜ラインc21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ラインc21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ラインc21Aおよび配線膜c22の電気的特徴を回路記号で示すと、図67の通りである。すなわち、図67(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ラインc21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜c22が積層された領域では、配線膜c22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜c22で抵抗体膜ラインc21Aが短絡されている。よって、図67(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ラインc21A同士は抵抗体膜c21および配線膜c22で接続されているから、図66Aに示す素子c5の抵抗回路網は、図67(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜c21および配線膜c22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子c5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ラインc21A(抵抗体膜c21)と、抵抗体膜ラインc21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜c22とを含み、配線膜c22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ラインc21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ラインc21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板c2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ラインc21A上に積層された配線膜c22は、抵抗体Rを形成するとともに、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図65参照)。
図68(a)は、図65に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、図68(b)は、図68(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図68(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜c21上に積層された配線膜c22により形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ラインc21A上に積層された配線膜c22と同じレイヤーに、配線膜c22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜c22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜c21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子c5を第1接続電極c3および第2接続電極c4に接続するための配線膜が、配線膜c22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜c22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜c22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図65および図68(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第2接続電極c3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜c22の下方にも抵抗体膜c21が形成されている(図68(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜c22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜c22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜c21)の一部と抵抗体膜c21上の配線膜c22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図69は、第3参考例の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図69を参照して、素子c5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極c3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図70および図71においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図68(a)参照)を介して直列に接続されている。
図69に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子c5は、第1接続電極c3および第2接続電極c4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極c3および第2接続電極c4が接続されたチップ抵抗器c1が構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子c5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器c1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子c5に組み込まれることになる。よって、素子c5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子c5(抵抗c56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器c1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図70は、第3参考例の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図69に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子c5を構成する代わりに、図70に示すように素子c5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極c3および第2接続電極c4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子c5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子c5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子c5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器c1全体の抵抗値を調整することができる。
図71は、第3参考例のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図71に示す素子c5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。従って、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子c5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。従って、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり、チップ抵抗器c1では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器c1を共通の設計で実現することができる。
以上のように、このチップ抵抗器c1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図72は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図72を参照して、チップ抵抗器c1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図72では、前述した素子c5については簡略化して示しているとともに、基板c2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述した絶縁膜c23および樹脂膜c24について説明する。
絶縁膜c23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。絶縁膜c23は、表面c2Aおよび側面c2C〜c2Fのそれぞれにおける全域に亘って設けられている。表面c2A上の絶縁膜c23は、抵抗体膜c21および抵抗体膜c21上の各配線膜c22(つまり、素子c5)を表面(図72の上側)から被覆していて、素子c5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、絶縁膜c23は、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜c22も覆っている(図68(b)参照)。また、絶縁膜c23は、素子c5(配線膜c22および抵抗体膜c21)に接しており、抵抗体膜c21以外の領域では絶縁層c20にも接している。これにより、表面c2A上の絶縁膜c23は、表面c2A全域を覆って素子c5および絶縁層c20を保護する保護膜として機能している。また、表面c2Aでは、絶縁膜c23によって、抵抗体R間における配線膜c22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ラインc21A間における短絡)が防止されている。
一方、側面c2C〜c2Fのそれぞれに設けられた絶縁膜c23は、側面c2C〜c2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。側面c2C〜c2Fのそれぞれと表面c2Aとの境界は、前述した縁部c85であるが、絶縁膜c23は、当該境界(縁部c85)も覆っている。絶縁膜c23において、縁部c85を覆っている部分(縁部c85に重なっている部分)を端部c23Aということにする。
樹脂膜c24は、絶縁膜c23とともにチップ抵抗器c1の表面c2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜c24の厚みは、約5μmである。
樹脂膜c24は、前述したように、第1樹脂膜c24Aと第2樹脂膜c24Bとを有している。
第1樹脂膜c24Aは、側面c2C〜c2Fのそれぞれにおいて縁部c85(絶縁膜c23の端部c23A)から裏面c2B側へ少し離れた部分を被覆している。具体的に、第1樹脂膜c24Aは、側面c2C〜c2Fのそれぞれにおいて、表面c2Aの縁部c85から裏面c2B側に間隔Kを開けた領域に形成されている。ただし、第1樹脂膜c24Aは、裏面c2Bよりも表面c2A側へ偏って配置されている。側面c2Cおよび2Dの第1樹脂膜c24Aは、短辺c82に沿って筋状に延びており、短辺c82方向における全域にわたって形成されている(図64(a)参照)。側面c2Eおよび2Fの第1樹脂膜c24Aは、長辺c81に沿って筋状に延びており、長辺c81方向における全域にわたって形成されている(図64(a)参照)。側面c2C〜c2Fのそれぞれにおける第1樹脂膜c24Aは、表面c2Aの縁(縁部c85)よりも外方に張り出している。詳しくは、第1樹脂膜c24Aは、表面c2Aに沿う方向において縁部c85よりも外方へ円弧状に膨出している。そのため、平面視では、第1樹脂膜c24Aがチップ抵抗器c1の輪郭をなす。
第2樹脂膜c24Bは、表面c2A上の絶縁膜c23の表面(絶縁膜c23に被覆された抵抗体膜c21および配線膜c22も含む)の略全域を被覆している。具体的に、第2樹脂膜c24Bは、絶縁膜c23の端部c23A(表面c2Aの縁部c85)を覆わないように、端部c23Aから外れて形成されている。そのため、第1樹脂膜c24Aと第2樹脂膜c24Bとは、連続しておらず、端部c23A(縁部c85の全域)において途切れている。これにより、絶縁膜c23の端部c23A(縁部c85の全域)は、外部に露出されている。
第2樹脂膜c24Bにおいて、平面視で離れた2つの位置には、開口c25が1つずつ形成されている。各開口c25は、第2樹脂膜c24Bおよび絶縁膜c23を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通する貫通孔である。そのため、開口c25は、第2樹脂膜c24Bだけでなく絶縁膜c23にも形成されている。各開口c25からは、配線膜c22の一部が露出されている。配線膜c22において各開口c25から露出された部分は、外部接続用のパッド領域c22Aとなっている。
2つの開口c25のうち、一方の開口c25は、第1接続電極c3によって埋め尽くされ、他方の開口c25は、第2接続電極c4によって埋め尽くされている。そして、第1接続電極c3および第2接続電極c4のそれぞれの一部は、第2樹脂膜c24Bの表面において開口c25からはみ出している。第1接続電極c3は、当該一方の開口c25を介して、この開口c25におけるパッド領域c22Aにおいて配線膜c22に対して電気的に接続されている。第2接続電極c4は、当該他方の開口c25を介して、この開口c25におけるパッド領域c22Aにおいて配線膜c22に対して電気的に接続されている。これにより、第1接続電極c3および第2接続電極c4のそれぞれは、素子c5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜c22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗c56)、第1接続電極c3および第2接続電極c4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、開口c25が形成された第2樹脂膜c24Bおよび絶縁膜c23は、開口c25から第1接続電極c3および第2接続電極c4を露出させた状態で表面c2Aを覆っている。そのため、第2樹脂膜c24Bの表面において開口c25からはみ出した第1接続電極c3および第2接続電極c4を介して、チップ抵抗器c1と実装基板c9との間における電気的接続を達成することができる(図64(b)参照)。
ここで、第2樹脂膜c24Bにおいて第1接続電極c3と第2接続電極c4との間に位置する部分(「中央部分c24C」ということにする)は、第1接続電極c3および第2接続電極c4よりも高くなっている(表面c2Aから離れている)。つまり、中央部分c24Cは、第1接続電極c3および第2接続電極c4以上の高さの表面c24Dを有している。表面c24Dは、表面c2Aから離れる方向へ向けて凸湾曲している。
図73A〜図73Gは、図72に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図73Aに示すように、基板c2の元となる基板c30を用意する。この場合、基板c30の表面c30Aは、基板c2の表面c2Aであり、基板c30の裏面c30Bは、基板c2の裏面c2Bである。
そして、基板c30の表面c30Aを熱酸化して、表面c30AにSiO2等からなる絶縁層c20を形成し、絶縁層c20上に素子c5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜c22)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁層c20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜c21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜c21に接するように抵抗体膜c21の上にアルミニウム(Al)の配線膜c22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜c21および配線膜c22を選択的に除去してパターニングし、図66Aに示すように、平面視で、抵抗体膜c21が積層された一定幅の抵抗体膜ラインc21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ラインc21Aおよび配線膜c22が切断された領域も形成されるとともに、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図65参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ラインc21Aの上に積層された配線膜c22を選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ラインc21A上に一定間隔Rをあけて配線膜c22が積層された構成の素子c5が得られる。この際、抵抗体膜c21および配線膜c22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子c5全体の抵抗値を測定してもよい。
図73Aを参照して、素子c5は、1枚の基板c30に形成するチップ抵抗器c1の数に応じて、基板c30の表面c30A上における多数の箇所に形成される。基板c30において素子c5(前述した抵抗c56)が形成された1つの領域をチップ部品領域Y(またはチップ抵抗器領域Y)というと、基板c30の表面c30Aには、抵抗c56をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子c5)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器c1(図72参照)を平面視したものと一致する。そして、基板c30の表面c30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板c30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器c1の大量生産が可能になる。
次いで、図73Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜c45を、基板c30の表面c30Aの全域に亘って形成する。絶縁膜c45は、絶縁層c20および絶縁層c20上の素子c5(抵抗体膜c21や配線膜c22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜c45は、前述したトリミング対象領域X(図65参照)における配線膜c22も覆っている。また、絶縁膜c45は、基板c30の表面c30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面c30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜c45は、表面c30A(表面c30A上の素子c5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次いで、図73Bに示すように、絶縁膜c45を全て覆うように、基板c30の表面c30Aの全域に亘ってレジストパターンc41を形成する。レジストパターンc41には、開口c42が形成されている。
図74は、図73Bの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図74を参照して、レジストパターンc41の開口c42は、多数のチップ抵抗器c1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器c1の輪郭の間の領域(図74においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口c42の全体形状は、互いに直交する直線部分c42Aおよびc42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターンc41では、開口c42において互いに直交する直線部分c42Aおよびc42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分c42Aおよびc42Bの交差部分c43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図73Bを参照して、レジストパターンc41をマスクとするプラズマエッチングにより、絶縁膜c45、絶縁層c20および基板c30のそれぞれを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子c5(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおいて基板c30の材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターンc41の開口c42と一致する位置(境界領域Z)には、絶縁膜c45および絶縁層c20を貫通して基板c30の表面c30Aから基板c30の厚さ途中まで到達する所定深さの溝c44が形成される。溝c44は、互いに対向する1対の側壁c44Aと、当該1対の側壁c44Aの下端(基板c30の裏面c30B側の端)の間を結ぶ底壁c44Bとによって区画されている。基板c30の表面c30Aを基準とした溝c44の深さは約100μmであり、溝c44の幅(対向する側壁c44Aの間隔)は20μm前後である。ただし、溝c44の幅は、底壁c44Bに近付くに従って広がっている。そのため、各側壁c44Aにおいて溝c44を区画する側面(区画面c44C)は、基板c30の表面c30Aに垂直な平面Hに対して傾斜している。
基板c30における溝c44の全体形状は、平面視でレジストパターンc41の開口c42(図74参照)と一致する格子状になっている。そして、基板c30の表面c30Aでは、各素子c5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝c44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板c30において素子c5が形成された部分は、チップ抵抗器c1の半製品c50である。基板c30の表面c30Aでは、溝c44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品c50が1つずつ位置していて、これらの半製品c50は、行列状に整列配置されている。このように溝c44を形成することによって、基板c30を複数のチップ部品領域Y毎の基板c2(前述した抵抗器本体)に分離する。
図73Bに示すように溝c44が形成された後、レジストパターンc41を除去し、図73Cに示すようにマスクc65を用いたエッチングによって、絶縁膜c45を選択的に除去する。マスクc65では、絶縁膜c45において平面視で各パッド領域c22A(図72参照)に一致する部分に、開口c66が形成されている。これにより、エッチングによって、絶縁膜c45において開口c66と一致する部分が除去され、当該部分には、開口c25が形成される。これにより、絶縁膜c45は、開口c25において各パッド領域c22Aを露出させるように形成されたことになる。1つの半製品c50につき、開口c25は2つ形成される。
各半製品c50において、絶縁膜c45に2つの開口c25を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブc70を各開口c25のパッド領域c22Aに接触させて、素子c5の全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜c45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図65参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜c22をレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品c50(換言すれば、チップ抵抗器c1)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜c45が素子c5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子c5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜c45がヒューズF(抵抗体膜c21)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。
その後、CVD法によって絶縁膜c45上にSiNを形成し、絶縁膜c45を厚くする。このとき、図73Dに示すように、溝c44の内周面(前述した側壁c44Aの区画面c44Cや底壁c44Bの上面)の全域にも絶縁膜c45が形成される。最終的な絶縁膜c45(図73Dに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜c45の一部は、各開口c25に入り込んで開口c25を塞いでいる。
その後、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板c30に対して、絶縁膜c45の上からスプレー塗布して、図73Dに示すように感光性樹脂の塗布膜c46を形成する。液状の感光性樹脂は、溝c44の入口(絶縁膜c23の端部c23Aや基板c2の縁部c85に相当する部分)では留まることができずに流れてしまう。そのため、液状の感光性樹脂は、溝c44の側壁c44A(区画面c44C)において基板c30の表面c30Aよりも裏面c30B側(底壁c44B側)の領域と、表面c30A上で絶縁膜c23の端部c23Aから外れた領域とに付着し、それぞれの領域において塗布膜c46(樹脂膜)となる。表面c30A上の塗布膜c46は、表面張力によって上方へ凸湾曲した形状となる。
なお、溝c44の側壁c44Aに形成された塗布膜c46は、溝c44の側壁c44Aにおける素子c5側(表面c30A側)の一部を覆っているだけで、塗布膜c46は、溝c44の底壁c44Bまで届いていない。そのため、溝c44は、塗布膜c46によって塞がれていない。
次いで、塗布膜c46に熱処理(キュア処理)を施す。これにより、塗布膜c46の厚みが熱収縮するとともに、塗布膜c46が硬化して膜質が安定する。
次いで、図73Eに示すように、塗布膜c46をパターニングし、表面c30A上の塗布膜c46において平面視で配線膜c22の各パッド領域c22A(開口c25)と一致する部分を選択的に除去する。具体的には、平面視で各パッド領域c22Aに整合(一致)するパターンの開口c61が形成されたマスクc62を用いて、塗布膜c46を、当該パターンで露光して現像する。これにより、各パッド領域c22Aの上方で塗布膜c46が分離される。次いで、図示しないマスクを用いたRIEによって各パッド領域c22A上の絶縁膜c45が除去されることで、各開口c25が開放されてパッド領域c22Aが露出される。
次いで、無電解めっきによって、Ni、PdおよびAuを積層することで構成されたNi/Pd/Au積層膜を各開口c25におけるパッド領域c22A上に形成する。このとき、Ni/Pd/Au積層膜を開口c25から塗布膜c46の表面まではみ出るようにする。これにより、各開口c25内のNi/Pd/Au積層膜が、図73Fに示す第1接続電極c3および第2接続電極c4となる。なお、第1接続電極c3および第2接続電極c4の上面は、表面c30A上で凸湾曲した塗布膜c46の上端以下の位置にある。
次いで、第1接続電極c3および第2接続電極c4間での通電検査が行われた後に、基板c30が裏面c30Bから研削される。
具体的には、溝c44を形成した後に、図73Gに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面c72を有する支持テープc71が、粘着面c72において、各半製品c50における第1接続電極c3および第2接続電極c4側(つまり、表面c30A)に貼着される。これにより、各半製品c50が支持テープc71に支持される。ここで、支持テープc71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品c50が支持テープc71に支持された状態で、基板c30を裏面c30B側から研削する。研削によって、溝c44の底壁c44B(図73F参照)の上面に達するまで基板c30が薄型化されると、隣り合う半製品c50を連結するものがなくなるので、溝c44を境界として基板c30が分割され、半製品c50が個別に分離してチップ抵抗器c1の完成品となる。つまり、溝c44(換言すれば、境界領域Z)において基板c30が切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器c1が切り出される。なお、基板c30を裏面c30B側から溝c44の底壁c44Bまでエッチングすることによってチップ抵抗器c1を切り出しても構わない。
完成した各チップ抵抗器c1では、溝c44の側壁c44Aの区画面c44Cをなしていた部分が、基板c2の側面c2C〜c2Fのいずれかとなり、裏面c30Bが裏面c2Bとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝c44を形成する工程(図73B参照)は、側面c2C〜c2Fを形成する工程に含まれる。そして、溝c44を形成する工程において、複数のチップ部品領域Y(チップ抵抗器c1)における基板c30の側面(区画面c44C)を、基板c30の表面c30Aに垂直な平面Hに対して傾斜した部分を有するように一度に整形することができる(図73B参照)。換言すれば、溝c44を形成することは、各チップ抵抗器c1の基板c2の側面c2C〜c2Fを、平面Hに対して傾斜した部分を有するように一度に整形することになる。
エッチングによって溝c44を形成することによって、完成したチップ抵抗器c1における側面c2C〜c2Fは、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。ちなみに、ダイシングソー(図示せず)で溝c44を機械的に形成した場合には、側面c2C〜c2Fは、ダイシングソーの研削跡をなす多数の筋が規則的なパターンで残っている。この筋は、側面c2C〜c2Fをエッチングしたとしても完全に消すことができない。
また、絶縁膜c45が絶縁膜c23となり、分離した塗布膜c46が樹脂膜c24となる。
以上のように、溝c44を形成してから基板c30を裏面c30B側から研削すれば、基板c30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器c1(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器c1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器c1の製造時間の短縮によってチップ抵抗器c1の生産性の向上を図ることができる。ちなみに、直径が8インチの基板c30を用いると50万個程度のチップ抵抗器c1を切り出すことができる。ダイシングソー(図示せず)だけを用いて基板c30に溝c44を形成することでチップ抵抗器c1を切り出す場合には、基板c30にたくさんの溝c44を形成するために何度もダイシングソーを移動させねばならないので、チップ抵抗器c1の製造時間が長くなるが、第3参考例のようにエッチングによって溝c44を一度に作るのであれば、このような不具合を解決できる。
つまり、チップ抵抗器c1のチップサイズが小さくても、このように先に溝c44を形成しておいてから基板c30を裏面c30Bから研削することによって、チップ抵抗器c1を一度に個片化することができる。そのため、従来のようにダイシングソーで基板c30をダイシングすることでチップ抵抗器c1を個片にする場合と比べて、ダイシング工程省略によって、コスト低減や時間短縮を図り、歩留まり向上を達成できる。
また、エッチングによって溝c44を高精度に形成できるので、溝c44によって分割された個々のチップ抵抗器c1では、外形寸法精度の向上を図ることができる。特に、プラズマエッチングを用いれば、溝c44を一層高精度に形成できる。具体的には、一般的なダイシングソーを用いて溝c44を形成する場合のチップ抵抗器c1の寸法公差が±20μmであるのに対して、第3参考例では、チップ抵抗器c1の寸法公差を±5μm程度まで小さくすることができる。また、レジストパターンc41(図74参照)に応じて、溝c44の間隔を微細化できるので、隣り合う溝c44の間に形成されるチップ抵抗器c1の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、ダイシングソーを用いる場合と異なり、チップ抵抗器c1を削り出すのではないから、チップ抵抗器c1の側面c2C〜c2Fにおいて隣り合うもの同士のコーナー部c11(図64(a)参照)にチッピングが生じることを低減でき、チップ抵抗器c1の外観の向上を図ることができる。
基板c30を裏面c30B側から研削することで個々のチップ抵抗器c1を切り出す際、チップ抵抗器c1によっては、先に切り出されたり遅れて切り出されたりすることがある。つまり、チップ抵抗器c1を切り出す際に、チップ抵抗器c1間で若干の時間差が生じることがある。この場合、先に切り出されたチップ抵抗器c1が左右に振動し、隣接するチップ抵抗器c1に接触することがある。このとき、各チップ抵抗器c1では、樹脂膜c24(第1樹脂膜c24A)がバンパーとして機能するので、個片化に先立って支持テープc71に支持された状態で隣接しているチップ抵抗器c1が互いに衝突しても、互いのチップ抵抗器c1では樹脂膜c24同士が最初に接触することから、チップ抵抗器c1の表面c2Aおよび裏面c2B側のコーナー部c12(特に表面c2A側の縁部c85)におけるチッピングを回避または抑制できる。特に、第1樹脂膜c24Aがチップ抵抗器c1の表面c2Aの縁部c85よりも外方に張り出しているから、縁部c85が周囲のものに接触することがないので、縁部c85におけるチッピングを回避または抑制できる。
なお、完成したチップ抵抗器c1における基板c2の裏面c2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面c2Bを綺麗にしてもよい。
図75A〜図75Dは、図73Gの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程を示す図解的な断面図である。
図75Aでは、個片化された複数のチップ抵抗器c1が引き続き支持テープc71にくっついている状態を示している。この状態で、図75Bに示すように、各チップ抵抗器c1の基板c2の裏面c2Bに対して、熱発泡シートc73を貼着する。熱発泡シートc73は、シート状のシート本体c74と、シート本体c74内に練り込まれた多数の発泡粒子c75とを含んでいる。
シート本体c74の粘着力は、支持テープc71の粘着面c72における粘着力よりも強い。そこで、各チップ抵抗器c1の基板c2の裏面c2Bに熱発泡シートc73を貼着した後に、図75Cに示すように、支持テープc71を各チップ抵抗器c1から引き剥がして、チップ抵抗器c1を熱発泡シートc73に転写する。このとき、支持テープc71に紫外線を照射すると(図75Bの点線矢印参照)、粘着面c72の粘着性が低下するので、支持テープc71が各チップ抵抗器c1から剥がれやすくなる。
次いで、熱発泡シートc73を加熱する。これにより、図75Dに示すように、熱発泡シートc73では、シート本体c74内の各発泡粒子c75が発泡してシート本体c74の表面から膨出する。その結果、熱発泡シートc73と各チップ抵抗器c1の基板c2の裏面c2Bとの接触面積が小さくなり、全てのチップ抵抗器c1が熱発泡シートc73から自然に剥がれる(脱落する)。このように回収されたチップ抵抗器c1は、実装基板c9(図64(b)参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープc71または熱発泡シートc73からチップ抵抗器c1を1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数のチップ抵抗器c1が支持テープc71にくっついた状態で(図75A参照)、熱発泡シートc73を用いずに、支持テープc71からチップ抵抗器c1を所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
図76A〜図76Cは、図73Gの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図76A〜図76Cに示す別の方法によって、各チップ抵抗器c1を回収することもできる。
図76Aでは、図75Aと同様に、個片化された複数のチップ抵抗器c1が引き続き支持テープc71にくっついている状態を示している。この状態で、図76Bに示すように、各チップ抵抗器c1の基板c2の裏面c2Bに転写テープc77を貼着する。転写テープc77は、支持テープc71の粘着面c72よりも強い粘着力を有する。そこで、図76Cに示すように、各チップ抵抗器c1に転写テープc77を貼着した後に、支持テープc71を各チップ抵抗器c1から引き剥がす。この際、前述したように、粘着面c72の粘着性を低下させるために支持テープc71に紫外線(図76Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
転写テープc77の両端には、回収装置(図示せず)のフレームc78が貼り付けられている。両側のフレームc78は、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープc71を各チップ抵抗器c1から引き剥がした後に、両側のフレームc78を互いが離間する方向に移動させると、転写テープc77が伸張して薄くなる。これによって、転写テープc77の粘着力が低下するので、各チップ抵抗器c1が転写テープc77から剥がれやすくなる。この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズルc76をチップ抵抗器c1の表面c2A側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、このチップ抵抗器c1が転写テープc77から引き剥がされて吸着ノズルc76に吸着される。この際、図76Cに示す突起c79によって、吸着ノズルc76とは反対側から転写テープc77越しにチップ抵抗器c1を吸着ノズルc76側へ突き上げると、チップ抵抗器c1を転写テープc77から円滑に引き剥がすことができる。このように回収されたチップ抵抗器c1は、吸着ノズルc76に吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
図77〜図82は、上記実施形態または変形例に係るチップ抵抗器の縦断面図であり、図77および図79では平面図も示している。なお、図77〜図82では、説明の便宜上、前述した絶縁膜c23等の図示を省略し、基板c2、第1接続電極c3、第2接続電極c4および樹脂膜c24のみを図示している。また、図77(c)および図79(c)では、樹脂膜c24の図示を省略している。
図77〜図82に示すように、基板c2の側面c2C〜c2Fのそれぞれは、基板c2の表面c2Aに垂直な平面Hに対して傾斜した部分を有している。
図77および図78に示すチップ抵抗器c1では、側面c2C〜c2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面Eに沿った平面である。また、基板c2の表面c2Aと基板c2の側面c2C〜c2Fのそれぞれとが鋭角を成している。そのため、基板c2の裏面c2Bの縁部c90が、基板c2の表面c2Aの縁部c85に対して基板c2の内方に後退している。詳しくは、平面視において、裏面c2Bの輪郭をなす矩形の縁部c90が、表面c2Aの輪郭をなす矩形の縁部c85の内側に位置している(図77(c)参照)。そのため、側面c2C〜c2Fのいずれに関して、平面Eは、表面c2Aの縁部c85から裏面c2Bの縁部c90へ向かって基板c2の内方に後退するように傾斜している。よって、チップ抵抗器c1における側面c2C〜c2Fのそれぞれは、裏面c2B側へ向けて細くなる台形(略等脚台形)状である。
ここで、樹脂膜c24では、前述したように、第1樹脂膜c24Aが、側面c2C〜c2Fのそれぞれにおいて、各側面と表面c2Aとの境界(縁部c85)から裏面c2B側へ離れた領域に形成されていて、第2樹脂膜c24Bが表面c2Aに形成されている。
一方、図78に示すように、側面c2C〜c2Fのそれぞれにおける第1樹脂膜c24Aが、各側面と表面c2Aとの境界(縁部c85)において、第2樹脂膜c24Bから分離していなくてもよい。この場合、樹脂膜c24は、側面c2C〜c2Fのそれぞれから表面c2Aに渡って連続して形成されている。
図79に示すチップ抵抗器c1では、側面c2C〜c2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面Gに沿った平面である。また、基板c2の表面c2Aと基板c2の側面c2C〜c2Fのそれぞれとが鈍角を成している。そのため、基板c2の裏面c2Bの縁部c90が、基板c2の表面c2Aの縁部c85に対して基板c2の外方に張り出している。詳しくは、平面視において、裏面c2Bの輪郭をなす矩形の縁部c90が、表面c2Aの輪郭をなす矩形の縁部c85の外側に位置している(図79(c)参照)。そのため、側面c2C〜c2Fのいずれに関して、平面Gは、表面c2Aの縁部c85から裏面c2Bの縁部c90へ向かって基板c2の外方に張り出すように傾斜している。よって、チップ抵抗器c1における側面c2C〜c2Fのそれぞれは、表面c2A側へ向けて細くなる台形(略等脚台形)状である。
また、側面c2C〜c2Fのそれぞれは、前述した平面Hに対して傾斜した平面である必要はなく、図80〜図82に示すように基板c2の内方へ向けて凸湾曲した湾曲面であって、平面Hに傾斜した部分(前述した平面E,Gを接線とする曲面部分)を有していればよい。この場合、基板c2の表面c2Aと基板c2の側面c2C〜c2Fのそれぞれとが鋭角を成しているとともに、基板c2の裏面c2Bと基板c2の側面c2C〜c2Fのそれぞれとが鋭角を成している。
図80では、基板c2の裏面c2Bの縁部c90が、基板c2の表面c2Aの縁部c85に対して基板c2の外方および内方のいずれにもずれておらず、平面視において重なっている。図81では、基板c2の裏面c2Bの縁部c90が、基板c2の表面c2Aの縁部c85に対して基板c2の内方に後退している。図82では、基板c2の裏面c2Bの縁部c90が、基板c2の表面c2Aの縁部c85に対して基板c2の外方に張り出している。
図77〜図82に示した側面c2C〜c2Fは、エッチングによって溝c44を作る際のエッチング条件を適宜設定することによって実現できる。つまり、エッチング技術によって、基板c2における側面c2C〜c2Fの形状のコントロールが可能となる。
以上のように、チップ抵抗器c1では、基板c2における表面c2Aの縁部c85および裏面c2Bの縁部c90のうち、一方が他方よりも基板c2の外方へ張り出している(図81の場合を除く)。そのため、チップ抵抗器c1の表面c2Aおよび裏面c2Bにおけるコーナー部(角部)12が直角にならないので、コーナー部c12(特に鈍角のコーナー部c12)におけるチッピングを低減できる。
特に、図77および図78に示すチップ抵抗器c1では、基板c2の裏面c2Bにおけるコーナー部c12(縁部c90のコーナー部c12)が鈍角になるので、当該コーナー部c12におけるチッピングを低減できる。また、図79に示すチップ抵抗器c1では、基板c2の表面c2Aにおけるコーナー部c12(縁部c85のコーナー部c12)が鈍角になるので、当該コーナー部c12におけるチッピングを低減できる。
チップ抵抗器c1を実装基板c9(図64(b)参照)に実装する場合、自動実装機の吸着ノズル(図示せず)にチップ抵抗器c1の裏面c2Bを吸着してから吸着ノズル(図示せず)を実装基板c9まで移動させることによって、チップ抵抗器c1を実装基板c9に実装する。チップ抵抗器c1を吸着ノズル(図示せず)に吸着するのに先立って、チップ抵抗器c1の輪郭を表面c2A側または裏面c2B側から画像認識してから、チップ抵抗器c1の裏面c2Bにおいて吸着ノズル(図示せず)に吸着させる位置を決める。ここで、縁部c85および縁部c90のうち、一方が他方よりも基板c2の外方へ張り出している場合、基板c2の表面c2A側または裏面c2B側から画像認識したときのチップ部品の輪郭は、基板c2における表面c2Aの縁部c85および裏面c2Bの縁部c90のどちらか一方(基板c2の外方へ張り出した縁部)だけで構成されて明瞭である。そのため、チップ抵抗器c1の輪郭を正しく認識できるので、チップ抵抗器c1の裏面c2Bにおける所望の部分(たとえば中心部分)を吸着ノズル(図示せず)に対して正確に吸着させて、チップ抵抗器c1を精度良く実装基板c9(図64(b)参照)に実装することができる。つまり、実装位置精度の向上を図ることができる。
特に、図77、図79〜図82に示すチップ抵抗器c1の場合、側面c2C〜c2Fのそれぞれにおける第2樹脂膜c24Bは、基板c2の縁部c85が露出されるように表面c2Aから間隔Kを開けた領域に形成されている。さらに、図77、図80〜図82に示すチップ抵抗器c1の場合には、基板c2の表面c2Aと側面c2C〜c2Fのそれぞれとが鋭角を成している。よって、基板c2の表面c2Aの縁部c85が際立つことからチップ抵抗器c1の輪郭(縁部c85)が一層明瞭になって認識しやすくなるので、チップ抵抗器c1をより精度良く実装基板c9に実装することができる。つまり、当該縁部c85によってチップ抵抗器c1の輪郭を容易に認識でき、これによって、正確な位置でチップ抵抗器c1を吸着ノズル(図示せず)に吸着させることができる。なお、画像認識するために縁部c85や縁部c90にピントを合わせた場合には、第1樹脂膜c24Aにはピントが合っていないことから第1樹脂膜c24Aは不鮮明なっているので、縁部c85または縁部c90と第1樹脂膜c24Aとが紛らわしくなることはない。
一方、実装位置精度の向上よりもコーナー部c12におけるチッピングの防止を優先するのであれば、図78に示すように、基板c2のコーナー部c12(ここでは表面c2A側のコーナー部c12)を樹脂膜c24で覆ってもよい。この場合、当該コーナー部c12におけるチッピングを確実に回避または抑制できる。
また、基板c2の表面c2Aは、第2樹脂膜c24Bによって保護されている。特に、第2樹脂膜c24B(中央部分c24C)の表面c24Dは、第1接続電極c3および第2接続電極c4以上の高さを有している(図77(b)、図78(b)、図79(b)、図80(b)、図81(b)および図82(b)では図示を省略)。そのため、図64(b)に示すようにチップ抵抗器c1を実装基板c9に実装する際に、基板c2が表面c2A側において実装基板c9から衝撃を受ける場合には、第2樹脂膜c24B(中央部分c24C)が最初に衝撃を受けるようになっているので、この衝撃を第2樹脂膜c24Bによって緩和することによって、基板c2の表面c2Aを確実に保護することができる。
以上、第3参考例の実施形態について説明してきたが、第3参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第3参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器c1を開示したが、第3参考例は、チップコンデンサやチップインダクタやチップダイオードといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図83は、第3参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。図84は、図83の切断面線LXXXIV−LXXXIVから見た断面図である。図85は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサc101において、前述したチップ抵抗器c1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサc101において、チップ抵抗器c1で説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器c1で説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器c1で説明した部分と同じ作用効果を奏することができる。
図83を参照して、チップコンデンサc101は、チップ抵抗器c1と同様に、基板c2と、基板c2上(基板c2の表面c2A側)に配置された第1接続電極c3と、同じく基板c2上に配置された第2接続電極c4とを備えている。基板c2は、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板c2の長手方向両端部に第1接続電極c3および第2接続電極c4がそれぞれ配置されている。第1接続電極c3および第2接続電極c4は、この実施形態では、基板c2の短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。基板c2の表面c2Aには、第1接続電極c3および第2接続電極c4の間のキャパシタ配置領域c105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が配置されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子c5を構成する複数の素子要素(キャパシタ素子)であり、複数のヒューズユニットc107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極c4に電気的に接続されている。
図84および図85に示されているように、基板c2の表面c2Aには絶縁層c20が形成されていて、絶縁層c20の表面に下部電極膜c111が形成されている。下部電極膜c111は、キャパシタ配置領域c105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜c111は、第1接続電極c3の直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜c111は、キャパシタ配置領域c105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域c111Aと、第1接続電極c3の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域c111Bとを有している。キャパシタ電極領域c111Aがキャパシタ配置領域c105に位置していて、パッド領域c111Bが第1接続電極c3の直下に位置して第1接続電極c3に接触している。
キャパシタ配置領域c105において下部電極膜c111(キャパシタ電極領域c111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)c112が形成されている。容量膜c112は、キャパシタ電極領域c111A(キャパシタ配置領域c105)の全域にわたって形成されている。容量膜c112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域c105外の絶縁層c20を覆っている。
容量膜c112の上には、上部電極膜c113が形成されている。図83では、明瞭化のために、上部電極膜c113を着色して示してある。上部電極膜c113は、キャパシタ配置領域c105に位置するキャパシタ電極領域c113Aと、第2接続電極c4の直下に位置して第2接続電極c4に接触するパッド領域c113Bと、キャパシタ電極領域c113Aとパッド領域c113Bとの間に配置されたヒューズ領域c113Cとを有している。
キャパシタ電極領域c113Aにおいて、上部電極膜c113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)c131〜c139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分c131〜c139は、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域c113Cから第1接続電極c3に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分c131〜c139は、複数種類の対向面積で、容量膜c112を挟んで(容量膜c112に接しつつ)下部電極膜c111に対向している。より具体的には、電極膜部分c131〜c139の下部電極膜c111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分c131〜c139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分c131〜c138(またはc131〜c137,c139)を含む。これによって、各電極膜部分c131〜c139と容量膜c112を挟んで対向する下部電極膜c111とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分c131〜c139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分c131〜c135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分c135,c136,c137,c138,c139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分c135〜c139は、キャパシタ配置領域c105の第2接続電極c4側の端縁から第1接続電極c3側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分c131〜c134は、それよりも短く形成されている。
パッド領域c113Bは、第2接続電極c4とほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。図84に示すように、パッド領域c113Bにおける上部電極膜c113は、第2接続電極c4に接している。
ヒューズ領域c113Cは、パッド領域c113Bの一つの長辺(基板c2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域c113Cは、パッド領域c113Bの前記1つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニットc107を含む。
ヒューズユニットc107は、上部電極膜c113のパッド領域c113Bと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分c131〜c139は、1つまたは複数個のヒューズユニットc107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニットc107を介してパッド領域c113Bに接続され、このパッド領域c113Bを介して第2接続電極c4に電気的に接続されている。図83に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分c131〜c136は、一つのヒューズユニットc107によってパッド領域c113Bに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分c137〜c139は複数個のヒューズユニットc107を介してパッド領域c113Bに接続されている。全てのヒューズユニットc107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニットc107は未使用である。
ヒューズユニットc107は、パッド領域c113Bとの接続のための第1幅広部c107Aと、電極膜部分c131〜c139との接続のための第2幅広部c107Bと、第1および第2幅広部c107A,7Bの間を接続する幅狭部c107Cとを含む。幅狭部c107Cは、レーザ光によって切断(溶断)することができるように構成されている。それによって、電極膜部分c131〜c139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニットc107の切断によって第1および第2接続電極c3,c4から電気的に切り離すことができる。
図83および図85では図示を省略したが、図84に表れている通り、上部電極膜c113の表面を含むチップコンデンサc101の表面は、前述した絶縁膜c23によって覆われている。絶縁膜c23は、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサc101の上面のみならず、基板c2の側面c2C〜c2Fまで延びて、側面c2C〜c2Fの全域をも覆うように形成されている。さらに、絶縁膜c23の上には、前述した樹脂膜c24が形成されている。樹脂膜c24では、第1樹脂膜c24Aが、側面c2C〜c2Fにおいて表面c2A側の部分を覆い、第2樹脂膜c24Bが、表面c2Aを覆っているものの、樹脂膜c24は、表面c2Aの縁部c85で途切れていて、縁部c85を露出させている。
絶縁膜c23および樹脂膜c24は、チップコンデンサc101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極c3および第2接続電極c4に対応する領域に、前述した開口c25がそれぞれ形成されている。開口c25はそれぞれ下部電極膜c111のパッド領域c111Bの一部の領域、上部電極膜c113のパッド領域c113Bの一部の領域を露出させるように絶縁膜c23および樹脂膜c24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極c3に対応した開口c25は、容量膜c112をも貫通している。
開口c25には、第1接続電極c3および第2接続電極c4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極c3は下部電極膜c111のパッド領域c111Bに接合しており、第2接続電極c4は上部電極膜c113のパッド領域c113Bに接合している。第1および第2外部電極c3,4は、樹脂膜c24の表面から突出するように形成されている。これにより、実装基板に対してチップコンデンサc101をフリップチップ接合することができる。
図86は、チップコンデンサc101の内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極c3と第2接続電極c4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極c4との間には、一つまたは複数のヒューズユニットc107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサc101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサc101の容量値が減少する。
そこで、パッド領域c111B,c113Bの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサc101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサc101を提供することができる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極c3および第2接続電極c4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサc101を共通の設計で実現することができる。
チップコンデンサc101の各部の詳細について以下に説明を加える。
図83を参照して、基板c2は、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域c105は、概ね、基板c2の短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板c2の厚さは、150μm程度であってもよい。図84を参照して、基板c2は、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板c2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
絶縁層c20は、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜c111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜c111は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜c113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜c113は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜c113のキャパシタ電極領域c113Aを電極膜部分c131〜c139に分割し、さらに、ヒューズ領域c113Cを複数のヒューズユニットc107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜c112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜c112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
絶縁膜c23は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜c24は、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成することができる。
第1および第2接続電極c3,4は、たとえば、下部電極膜c111または上部電極膜c113に接するニッケル層と、このニッケル層上に積層したパラジウム層と、そのパラジウム層上に積層した金層とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、めっき法(より具体的には無電解めっき法)で形成することができる。ニッケル層は下部電極膜c111または上部電極膜c113に対する密着性の向上に寄与し、パラジウム層は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極c3,c4の最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサc101の製造工程は、素子c5を形成した後のチップ抵抗器c1の製造工程と同じである。
チップコンデンサc101において素子c5(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板c30(基板c2)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁層c20が形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜c111が絶縁層c20の表面全域に形成される。下部電極膜c111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜c111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図83等に示したパターンの下部電極膜c111が得られる。下部電極膜c111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜c112が、下部電極膜c111上に形成される。下部電極膜c111が形成されていない領域では、絶縁層c20の表面に容量膜c112が形成されることになる。次いで、その容量膜c112の上に、上部電極膜c113が形成される。上部電極膜c113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成することができる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次いで、上部電極膜c113の表面に上部電極膜c113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜c113が、最終形状(図83等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜c113は、キャパシタ電極領域c113Aに複数の電極膜部分c131〜c139に分割された部分を有し、ヒューズ領域c113Cに複数のヒューズユニットc107を有し、それらのヒューズユニットc107に接続されたパッド領域c113Bを有するパターンに整形される。上部電極膜c113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサc101における素子c5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニットc107)が形成される。素子c5が形成された後に、プラズマCVD法によって絶縁膜c45が、素子c5(上部電極膜c113、上部電極膜c113が形成されていない領域における容量膜c112)を全て覆うように形成される(図73A参照)。その後は、溝c44が形成されてから(図73B参照)、開口c25が形成される(図73C参照)。そして、開口c25から露出された上部電極膜c113のパッド領域c113Bと下部電極膜c111のパッド領域c111Bとにプローブc70を押し当てて、複数のキャパシタ要素C0〜C9の総容量値が測定される(図73C参照)。この測定された総容量値に基づき、目的とするチップコンデンサc101の容量値に応じて、切り離すべきキャパシタ要素、すなわち切断すべきヒューズが選択される。
この状態から、ヒューズユニットc107を溶断するためのレーザトリミングが行われる。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニットc107にレーザ光を当てて、そのヒューズユニットc107の幅狭部c107C(図83参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域c113Bから切り離される。ヒューズユニットc107にレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜c45の働きによって、ヒューズユニットc107の近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニットc107が溶断する。これにより、チップコンデンサc101の容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、カバー膜(絶縁膜c45)上に窒化シリコン膜が堆積させられ、絶縁膜c23が形成される。前述のカバー膜は最終形態において、絶縁膜c23と一体化し、この絶縁膜c23の一部を構成する。ヒューズの切断後に形成された絶縁膜c23は、ヒューズ溶断の際に同時に破壊されたカバー膜の開口内に入り込み、ヒューズユニットc107の切断面を覆って保護する。したがって、絶縁膜c23は、ヒューズユニットc107の切断箇所に異物が入り込んだり水分が侵入したりすることを防ぐ。これにより、信頼性の高いチップコンデンサc101を製造することができる。絶縁膜c23は、全体で、たとえば8000Å程度の膜厚を有するように形成されてもよい。
次に、前述した塗布膜c46が形成される(図73D参照)。その後、塗布膜c46や絶縁膜c23によって塞がれていた開口c25が開放され(図73E参照)、開口c25内に、たとえば無電解めっき法によって、第1接続電極c3および第2接続電極c4が成長させられる(図73F参照)。
その後、チップ抵抗器c1の場合と同じように、基板c30を裏面c30Bから研削すると(図73G参照)、チップコンデンサc101の個片を切り出すことができる。
フォトリソグラフィ工程を利用した上部電極膜c113のパターニングでは、微小面積の電極膜部分c131〜149を精度良く形成することができ、さらに微細なパターンのヒューズユニットc107を形成することができる。そして、上部電極膜c113のパターニングの後に、総容量値の測定を経て、切断すべきヒューズが決定される。その決定されたヒューズを切断することによって、所望の容量値に正確に合わせ込まれたチップコンデンサc101を得ることができる。
以上、第3参考例のチップ部品(チップ抵抗器c1やチップコンデンサc101)について説明してきたが、第3参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器c1の場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサc101の場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器c1やチップコンデンサc101では、基板c2の表面に絶縁層c20が形成されているが、基板c2が絶縁性の基板であれば、絶縁層c20を省くこともできる。
また、チップコンデンサc101では、上部電極膜c113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜c111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜c113および下部電極膜c111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサc101では、上部電極膜c113および下部電極膜c111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜c113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
チップコンデンサc101では、また、基板c2として導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜c112を形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
<第4参考例に係る発明>
(1)第4参考例に係る発明の特徴
たとえば、第4参考例に係る発明の特徴は、以下のD1〜D15である。
(D1)基板と、前記基板上に形成された複数の素子要素を含む素子回路網と、前記基板上に設けられ、前記素子回路網を外部接続するための電極と、前記複数の素子要素を切り離し可能に前記電極にそれぞれ接続するための複数のヒューズと、前記電極を露出させた状態で前記複数の素子要素および前記複数のヒューズを覆い、前記基板の端縁よりも当該基板の内方に後退した縁を有する保護樹脂膜とを含む、チップ部品。
この構成によれば、保護樹脂膜は、樹脂製であることから、衝撃によりクラックが生じるおそれが少ない。そのため、保護樹脂膜が、基板表面(特に、素子回路網およびヒューズ)を衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ部品を提供することができる。また、このチップ部品では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、素子回路網における複数の素子要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、素子回路網の電気的特性が様々なチップ部品を共通の設計で実現することができる。
(D2)基板と、前記基板上に形成された複数の素子要素を含む素子回路網と、前記基板上に設けられ、前記素子回路網を外部接続するための電極と、前記複数の素子要素を切り離し可能に前記電極にそれぞれ接続するための複数のヒューズと、前記基板の表面を覆う表面被覆部および前記基板の側面を覆う側面被覆部を有するパッシベーション膜と、前記電極を露出させた状態で前記パッシベーション膜上に形成され、平面視において前記パッシベーション膜の側面被覆部と整合する縁を有する保護樹脂膜とを含む、チップ部品。
この構成によれば、保護樹脂膜は、樹脂製であることから、衝撃によりクラックが生じるおそれが少ない。そのため、保護樹脂膜が、基板表面(特に、素子回路網およびヒューズ)と、基板表面の縁とを衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ部品を提供することができる。また、このチップ部品では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、素子回路網における複数の素子要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、素子回路網の電気的特性が様々なチップ部品を共通の設計で実現することができる。
(D3)基板と、前記基板上に形成された複数の素子要素を含む素子回路網と、前記基板上に設けられ、前記素子回路網を外部接続するための電極と、前記複数の素子要素を切り離し可能に前記電極にそれぞれ接続するための複数のヒューズと、前記基板の表面を覆う表面被覆部および前記基板の側面を覆う側面被覆部を有するパッシベーション膜と、前記電極を露出させた状態で前記パッシベーション膜上に形成され、前記パッシベーション膜の表面被覆部および側面被覆部の両方を覆う保護樹脂膜とを含む、チップ部品。
この構成によれば、保護樹脂膜は、樹脂製であることから、衝撃によりクラックが生じるおそれが少ない。そのため、保護樹脂膜が、基板表面(特に、素子回路網およびヒューズ)と、基板の側面とを衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ部品を提供することができる。また、このチップ部品では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、素子回路網における複数の素子要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、素子回路網の電気的特性が様々なチップ部品を共通の設計で実現することができる。
(D4)前記素子回路網が、前記基板上に形成された複数の抵抗体を含む抵抗回路網を含み、前記チップ部品がチップ抵抗器である、D1〜D3のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップ抵抗器)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(D5)前記抵抗体が、前記基板上に形成された抵抗体膜および前記抵抗体膜に積層された配線膜を含む、D4に記載のチップ部品。
この構成によれば、抵抗体膜において隣り合う配線膜の間の部分が抵抗体となるので、抵抗体膜に配線膜を積層するだけで抵抗体を簡易に構成することができる。
(D6)前記素子回路網が、前記基板上に形成された複数のキャパシタ要素を含むキャパシタ回路網を含み、前記チップ部品がチップコンデンサである、D1〜D3のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップコンデンサ)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(D7)前記キャパシタ要素が、前記基板上に形成された容量膜と、前記容量膜を挟んで対向する下部電極膜および上部電極膜とを含み、前記下部電極膜および前記上部電極膜が、分離された複数の電極膜部分を含み、前記複数の電極膜部分が前記複数のヒューズにそれぞれ接続されている、D6に記載のチップ部品。
この構成によれば、電極膜部分の数に応じた複数のキャパシタ要素を形成することができる。
(D8)前記素子回路網が、前記基板上に形成された複数のインダクタ要素を含むインダクタ回路網を含み、前記チップ部品がチップインダクタである、D1〜D3のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップインダクタ)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、インダクタ回路網における複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、インダクタ回路網の電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現することができる。
(D9)前記素子回路網が、前記基板上に形成された複数のダイオード要素を含むダイオード回路網を含み、前記チップ部品がチップダイオードである、D1〜D3のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップダイオード)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、ダイオード回路網における複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、ダイオード回路網の電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現することができる。
(D10)前記保護樹脂膜は、ポリイミドからなることが好ましい。
(D11)前記保護樹脂膜には、前記保護樹脂膜を厚さ方向に貫通し、前記電極が配置される開口が形成されている、D1〜D10のいずれか一項に記載のチップ部品。
この場合、保護樹脂膜では、開口から、電極を露出させることができる。
(D12)前記開口は、前記保護樹脂膜の表面に向かうのに従って広がっていてもよい。
(D13)前記電極の表面では、端部が基板の表面側へ湾曲している。
(D14)前記電極は、Ni層と、Au層とを含み、前記Au層が最表面に露出している、D1〜D13のいずれか一項に記載のチップ部品。
この場合、電極では、Ni層の表面がAu層によって覆われているので、Ni層が酸化することを防止できる。
(D15)前記電極が、前記Ni層と前記Au層との間に介装されたPd層をさらに含む、D14に記載のチップ部品。
この場合、電極では、Au層を薄くすることによってAu層に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層とAu層との間に介装されたPd層が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層が外部に露出されて酸化することを防止できる。
(2)第4参考例に係る発明の実施形態
以下では、第4参考例の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図87〜図110で示した符号は、これらの図面でのみ有効であり、他の実施形態に使用されていても、当該他の実施形態の符号と同じ要素を示すものではない。
図87(a)は、第4参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図であり、図87(b)は、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態を示す模式的な断面図である。
このチップ抵抗器d1は、微小なチップ部品であり、図87(a)に示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器d1の平面形状は、矩形である。チップ抵抗器d1の寸法に関し、たとえば、長さL(長辺d81の長さ)が約0.6mmであり、幅W(短辺d82の長さ)が約0.3mmであり、厚さTが約0.2mmである。
このチップ抵抗器d1は、基板上に多数個のチップ抵抗器d1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器d1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器d1は、チップ抵抗器d1の本体を構成する基板d2と、一対の外部接続電極となる第1接続電極d3および第2接続電極d4と、第1接続電極d3および第2接続電極d4によって外部接続される素子d5とを主に備えている。
基板d2は、略直方体のチップ形状である。基板d2において、図87(a)における上面は、表面d2Aである。表面d2Aは、基板d2において素子d5が形成される面(素子形成面)であり、略長方形状である。基板d2の厚さ方向において表面d2Aとは反対側の面は、裏面d2Bである。表面d2Aと裏面d2Bとは、ほぼ同形状であり、互いに平行である。ただし、裏面d2Bは、表面d2Aよりも大きい。そのため、表面d2Aに直交する方向から見た平面視において、表面d2Aは、裏面d2Bの内側におさまる。表面d2Aにおける一対の長辺d81および短辺d82によって区画された矩形状の端縁を、縁部d85ということにし、裏面d2Bにおける一対の長辺d81および短辺d82によって区画された矩形状の端縁を、縁部d90ということにする。
基板d2は、表面d2Aおよび裏面d2B以外に、複数の側面(側面d2C、側面d2D、側面d2Eおよび側面d2F)を有している。当該複数の側面は、表面d2Aおよび裏面d2Bのそれぞれに交差(詳しくは、直交)して延びて、表面d2Aおよび裏面d2Bの間を繋いでいる。
側面d2Cは、表面d2Aおよび裏面d2Bにおける長手方向一方側(図87(a)における左手前側)の短辺d82間に架設されていて、側面d2Dは、表面d2Aおよび裏面d2Bにおける長手方向他方側(図87(a)における右奥側)の短辺d82間に架設されている。側面d2Cおよび側面d2Dは、当該長手方向における基板d2の両端面である。側面d2Eは、表面d2Aおよび裏面d2Bにおける短手方向一方側(図87(a)における左奥側)の長辺d81間に架設されていて、側面d2Fは、表面d2Aおよび裏面d2Bにおける短手方向他方側(図87(a)における右手前側)の長辺d81間に架設されている。側面d2Eおよび側面d2Fは、当該短手方向における基板d2の両端面である。側面d2Cおよび側面d2Dのそれぞれは、側面d2Eおよび側面d2Fのそれぞれと交差(詳しくは、直交)している。
以上により、表面d2A〜側面d2Fにおいて隣り合うもの同士は、略直角を成している。
側面d2C、側面d2D、側面d2Eおよび側面d2Fのそれぞれ(以下では、「各側面」ということにする)は、表面d2A側の粗面領域Sと、裏面d2B側の筋状パターン領域Pとを有している。各側面は、粗面領域Sでは、図87(a)の細かいドットで示したように、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。各側面は、筋状パターン領域Pでは、後述するダイシングソーの研削跡をなす多数の筋(ソーマーク)Vが規則的なパターンで残っている。このように、各側面に粗面領域Sおよび筋状パターン領域Pが存在するのは、チップ抵抗器d1の製造工程によるからであり、詳しくは、追って説明する。
各側面において、粗面領域Sは、表面d2A側の略半分を占めていて、筋状パターン領域Pは、裏面d2B側の略半分を占めている。各側面において、筋状パターン領域Pが粗面領域Sよりも基板d2の外方(平面視における基板d2の外側)にはみ出ており、これにより、粗面領域Sと筋状パターン領域Pとの間に、段差Nが形成されている。段差Nは、粗面領域Sの下端縁と筋状パターン領域Pの上端縁との間をつないで表面d2Aおよび裏面d2Bと平行に延びている。各側面の段差Nはつながっていて、全体として、平面視で表面d2Aの縁部d85と裏面d2Bの縁部d90との間に位置する矩形枠体状をなしている。
このように各側面に段差Nが設けられているので、前述したように、裏面d2Bは、表面d2Aよりも大きい。
基板d2では、表面d2Aおよび側面d2C〜d2Fのそれぞれの全域(各側面では粗面領域Sおよび筋状パターン領域Pの両方)がパッシベーション膜d23で覆われている。そのため、厳密には、図87(a)では、表面d2Aおよび側面d2C〜d2Fのそれぞれの全域は、パッシベーション膜d23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。ここで、パッシベーション膜d23において、表面d2Aを覆う部分を表面被覆部d23Aといい、側面d2C〜d2Fのそれぞれを覆う部分を側面被覆部d23Bということにする。
さらに、チップ抵抗器d1は、樹脂膜d24を有している。樹脂膜d24は、パッシベーション膜d23上に形成されており、表面d2Aの全域を少なくとも覆う保護膜(保護樹脂膜)である。
パッシベーション膜d23および樹脂膜d24については、以降で詳説する。
第1接続電極d3および第2接続電極d4は、基板d2の表面d2A上において縁部d85よりも内側の領域に形成されていて、表面d2A上の樹脂膜d24から部分的に露出されている。換言すれば、樹脂膜d24は、第1接続電極d3および第2接続電極d4を露出させるように表面d2A(厳密には表面d2A上のパッシベーション膜d23)を覆っている。第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で表面d2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極d3および第2接続電極d4は、表面d2Aの長手方向に間隔を隔てて配置されており、表面d2Aの短手方向において長手である。図87(a)では、表面d2Aにおいて、側面d2C寄りの位置に第1接続電極d3が設けられ、側面d2D寄りの位置に第2接続電極d4が設けられている。
素子d5は、素子回路網であって、基板d2上(表面d2A上)、詳しくは、基板d2の表面d2Aにおける第1接続電極d3と第2接続電極d4との間の領域に形成されていて、パッシベーション膜d23(表面被覆部d23A)および樹脂膜d24によって上から被覆されている。この実施形態の素子d5は、抵抗d56である。抵抗d56は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを表面d2A上でマトリックス状に配列した抵抗回路網によって構成されている。各抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子d5は、後述する配線膜d22に電気的に接続されていて、配線膜d22を介して第1接続電極d3と第2接続電極d4とに電気的に接続されている。
図87(b)に示すように、第1接続電極d3および第2接続電極d4を実装基板d9に対向させて、半田d13によって、実装基板d9における1対の接続端子d88に対して電気的かつ機械的に接続する。これによって、チップ抵抗器d1を実装基板d9に実装(フリップチップ接続)することができる。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極d3および第2接続電極d4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
図88は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図88を参照して、抵抗回路網である素子d5は、行方向(基板d2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板d2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子d5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板d2の表面d2Aには、抵抗回路を素子d5に対して電気的に組み込んだり、または、素子d5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズ(ヒューズ)Fが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第2接続電極d3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)のそれぞれを第2接続電極d3に対して切断可能(切り離し可能)に接続している。
図89Aは、図88に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図89Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図89AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図89Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図89AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図89A、図89Bおよび図89Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器d1は、前述した配線膜d22、パッシベーション膜d23および樹脂膜d24の他に、絶縁層d20と抵抗体膜d21とをさらに備えている(図89Bおよび図89C参照)。絶縁層d20、抵抗体膜d21、配線膜d22、パッシベーション膜d23および樹脂膜d24は、基板d2(表面d2A)上に形成されている。
絶縁層d20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁層d20は、基板d2の表面d2Aの全域を覆っている。絶縁層d20の厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜d21は、絶縁層d20上に形成されている。抵抗体膜d21は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜d21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜d21は、第1接続電極d3と第2接続電極d4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ラインd21A」という)を構成していて、抵抗体膜ラインd21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図89A参照)。
抵抗体膜ラインd21A上には、配線膜d22が積層されている。配線膜d22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜d22の厚さは、約8000Åである。配線膜d22は、抵抗体膜ラインd21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ラインd21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ラインd21Aおよび配線膜d22の電気的特徴を回路記号で示すと、図90の通りである。すなわち、図90(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ラインd21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜d22が積層された領域では、配線膜d22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜d22で抵抗体膜ラインd21Aが短絡されている。よって、図90(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ラインd21A同士は抵抗体膜d21および配線膜d22で接続されているから、図89Aに示す素子d5の抵抗回路網は、図90(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜d21および配線膜d22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子d5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ラインd21A(抵抗体膜d21)と、抵抗体膜ラインd21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜d22とを含み、配線膜d22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ラインd21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ラインd21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板d2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ラインd21A上に積層された配線膜d22は、抵抗体Rを形成するとともに、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図88参照)。
図91(a)は、図88に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、図91(b)は、図91(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図91(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜d21上に積層された配線膜d22により形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ラインd21A上に積層された配線膜d22と同じレイヤーに、配線膜d22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜d22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜d21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子d5を第1接続電極d3および第2接続電極d4に接続するための配線膜が、配線膜d22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜d22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜d22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図88および図91(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第2接続電極d3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜d22の下方にも抵抗体膜d21が形成されている(図91(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜d22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜d22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜d21)の一部と抵抗体膜d21上の配線膜d22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図92は、第4参考例の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図92を参照して、素子d5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極d3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図93および図94においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図91(a)参照)を介して直列に接続されている。
図92に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子d5は、第1接続電極d3および第2接続電極d4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極d3および第2接続電極d4が接続されたチップ抵抗器d1が構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子d5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器d1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子d5に組み込まれることになる。よって、素子d5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子d5(抵抗d56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器d1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図93は、第4参考例の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図92に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子d5を構成する代わりに、図93に示すように素子d5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極d3および第2接続電極d4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子d5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子d5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子d5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器d1全体の抵抗値を調整することができる。
図94は、第4参考例のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図94に示す素子d5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。従って、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子d5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。従って、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり、チップ抵抗器d1では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器d1を共通の設計で実現することができる。
以上のように、このチップ抵抗器d1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図95は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図95を参照して、チップ抵抗器d1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図95では、前述した素子d5については簡略化して示しているとともに、基板d2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述したパッシベーション膜d23および樹脂膜d24について説明する。
パッシベーション膜d23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。パッシベーション膜d23は、前述したように、表面d2Aの全域に亘って設けられた表面被覆部d23Aと、側面d2C〜d2Fのそれぞれにおける全域に亘って設けられた側面被覆部d23Bとを含む。表面被覆部d23Aは、抵抗体膜d21および抵抗体膜d21上の各配線膜d22(つまり、素子d5)を表面(図95の上側)から被覆していて、素子d5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、表面被覆部d23Aは、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜d22も覆っている(図91(b)参照)。また、表面被覆部d23Aは、素子d5(配線膜d22および抵抗体膜d21)に接しており、抵抗体膜d21以外の領域では絶縁層d20にも接している。これにより、表面被覆部d23Aは、表面d2A全域を覆って素子d5および絶縁層d20を保護する保護膜として機能している。また、表面d2Aでは、表面被覆部d23Aによって、抵抗体R間における配線膜d22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ラインd21A間における短絡)が防止されている。
一方、側面d2C〜d2Fのそれぞれに設けられた側面被覆部d23Bは、側面d2C〜d2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。側面被覆部d23Bは、側面d2C〜d2Fのそれぞれにおいて、粗面領域Sおよび筋状パターン領域Pを全て覆っており、粗面領域Sと筋状パターン領域Pとの間の段差Nも漏れなく覆っている。
また、側面d2C〜d2Fのそれぞれと表面d2Aとの境界は、前述した縁部d85であるが、パッシベーション膜d23は、当該境界(縁部d85)も覆っている。パッシベーション膜d23において、縁部d85を覆っている部分(縁部d85に重なっている部分)を端部d23Cということにする。
樹脂膜d24は、パッシベーション膜d23とともにチップ抵抗器d1の表面d2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜d24は、平面視における表面d2Aにおいて第1接続電極d3および第2接続電極d4以外の領域を全て覆うように、パッシベーション膜d23の表面被覆部d23A(前述した端部d23Cも含む)上に形成されている。そのため、樹脂膜d24は、表面d2A上の表面被覆部d23Aの表面(表面被覆部d23Aに被覆された素子d5やヒューズFも含む)の全域を被覆している。一方で、樹脂膜d24は、側面d2C〜d2Fを覆っていない。そのため、樹脂膜d24の外周における縁24Aは、平面視において側面被覆部d23Bと整合しており、縁24Aにおける樹脂膜d24の側端面d24Bは、側面被覆部d23B(厳密には、各側面の粗面領域Sにおける側面被覆部d23B)と面一となって、基板d2の厚さ方向に延びている。樹脂膜d24の表面d24Cは、基板d2の表面d2Aと平行となるように平坦に延びている。チップ抵抗器d1における基板d2の表面d2A側に応力がかかった場合に、樹脂膜d24の表面d24C(特に、第1接続電極d3と第2接続電極d4との間の領域の表面d24C)が、応力分散面として機能して、当該応力を分散する。
また、樹脂膜d24において、平面視で離れた2つの位置には、開口d25が1つずつ形成されている。各開口d25は、樹脂膜d24およびパッシベーション膜d23(表面被覆部d23A)を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通する貫通孔である。そのため、開口d25は、樹脂膜d24だけでなくパッシベーション膜d23にも形成されている。各開口d25からは、配線膜d22の一部が露出されている。配線膜d22において各開口d25から露出された部分は、外部接続用のパッド領域d22A(パッド)となっている。各開口d25は、表面被覆部d23Aでは、表面被覆部d23Aの厚さ方向(基板d2の厚さ方向と同じ)に沿って延びていて、樹脂膜d24では、表面被覆部d23A側から樹脂膜d24の表面d24Cに向かうのに従って基板d2の長手方向(図95における左右方向)に徐々に広がっている。そのため、樹脂膜d24において開口d25を区画する区画面d24Dは、基板d2の厚さ方向に対して交差する傾斜面になっている。なお、樹脂膜d24において各開口d25を縁取る部分には、開口d25を前記長手方向から区画する1対の区画面d24Dが存在するが、これらの区画面d24Dの間隔は、表面被覆部d23A側から樹脂膜d24の表面d24Cに向かうのに従って次第に広がっている。また、樹脂膜d24において各開口d25を縁取る部分には、開口d25を基板d2の短手方向から区画する別の1対の区画面d24Dが存在するが(図95にはあらわれていない)、これらの区画面d24Dの間隔も、表面被覆部d23A側から樹脂膜d24の表面d24Cに向かうのに従って次第に広がっていてもよい。
2つの開口d25のうち、一方の開口d25は、第1接続電極d3によって埋め尽くされ、他方の開口d25は、第2接続電極d4によって埋め尽くされている。第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれは、樹脂膜d24の表面d24Cに向かって広がる開口d25に応じて、樹脂膜d24の表面d24Cに向かって広がっている。そのため、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの縦断面(基板d2の長手方向および厚さ方向に沿う平面で切断したときの切断面)は、基板d2の表面d2A側に上底を有して樹脂膜d24の表面d24C側に下底を有する台形状をなしている。また、当該下底が第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれにおける表面d3A,4Aとなるのだが、表面d3A,d4Aのそれぞれでは、開口d25側の端部が基板d2の表面d2A側へ湾曲している。なお、開口d25が樹脂膜d24の表面d24Cに向かって広がっていない場合(開口d25を区画する区画面d24Dが基板d2の厚さ方向に延びている)には、表面d3A,d4Aのそれぞれは、開口d25側の端部を含む全ての領域において、基板d2の表面d2Aに沿った平坦面になる。
また、前述したように、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれは、Ni、PdおよびAuをこの順番で表面d2A上に積層することによって構成されているので、Ni層d33、Pd層d34およびAu層d35を表面d2A側からこの順で有している。そのため、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれにおいて、Ni層d33とAu層d35との間にPd層d34が介装されている。第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれにおいて、Ni層d33は各接続電極の大部分を占めており、Pd層d34およびAu層d35は、Ni層d33に比べて格段に薄く形成されている。Ni層d33は、チップ抵抗器d1が実装基板d9に実装された際に(図87(b)参照)、各開口d25のパッド領域d22Aにおける配線膜d22のAlと、前述した半田d13とを中継する役割を有している。
第1接続電極d3および第2接続電極d4では、Ni層d33の表面が、Pd層d34を介してAu層d35によって覆われているので、Ni層d33が酸化することを防止できる。また、Au層d35を薄くすることによってAu層d35に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層d33とAu層d35との間に介装されたPd層d34が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層d33が外部に露出されて酸化することを防止できる。
そして、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれでは、Au層d35が、表面d3A,d4Aとして、最表面に露出しており、樹脂膜d24の表面d24Aにおいて開口d25から外部を臨んでいる。第1接続電極d3は、一方の開口d25を介して、この開口d25におけるパッド領域d22Aにおいて配線膜d22に対して電気的に接続されている。第2接続電極d4は、他方の開口d25を介して、この開口d25におけるパッド領域d22Aにおいて配線膜d22に対して電気的に接続されている。第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれでは、Ni層d33がパッド領域d22Aに対して接続されている。これにより、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれは、素子d5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜d22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗d56)、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、開口d25が形成された樹脂膜d24およびパッシベーション膜d23は、開口d25から第1接続電極d3および第2接続電極d4を露出させた状態で表面d2Aを覆っている。そのため、樹脂膜d24の表面d24Cにおいて開口d25に露出された第1接続電極d3および第2接続電極d4を介して、チップ抵抗器d1と実装基板d9との間における電気的接続を達成することができる(図87(b)参照)。
ここで、樹脂膜d24の厚み、つまり、基板d2の表面d2Aからの樹脂膜d24の表面d24Cまでの高さHは、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの(表面d2Aからの)高さJ以上である。図95では、第1の実施形態として、高さHと高さJとは同じになっていて、樹脂膜d24の表面d24Cと、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの表面d3A,d4Aとが面一になっている。
図96A〜図96Hは、図95に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図96Aに示すように、基板d2の元となる基板d30を用意する。この場合、基板d30の表面d30Aは、基板d2の表面d2Aであり、基板d30の裏面d30Bは、基板d2の裏面d2Bである。
そして、基板d30の表面d30Aを熱酸化して、表面d30AにSiO2等からなる絶縁層d20を形成し、絶縁層d20上に素子d5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜d22)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁層d20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜d21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜d21に接するように抵抗体膜d21の上にアルミニウム(Al)の配線膜d22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜d21および配線膜d22を選択的に除去してパターニングし、図89Aに示すように、平面視で、抵抗体膜d21が積層された一定幅の抵抗体膜ラインd21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ラインd21Aおよび配線膜d22が切断された領域も形成されるとともに、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図88参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ラインd21Aの上に積層された配線膜d22を選択的に除去してパターニングする。この結果、抵抗体膜ラインd21A上に一定間隔Rをあけて配線膜d22が積層された構成の素子d5(換言すれば複数の抵抗体R)が得られる。このように、抵抗体膜d21に配線膜d22を積層して抵抗体膜d21および配線膜d22をパターニングするだけで、複数の抵抗体RとともにヒューズFも一括して簡易に形成することができる。なお、抵抗体膜d21および配線膜d22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子d5全体の抵抗値を測定してもよい。
図96Aを参照して、素子d5は、1枚の基板d30に形成するチップ抵抗器d1の数に応じて、基板d30の表面d30A上における多数の箇所に形成される。基板d30において(1つの)素子d5(前述した抵抗d56)が形成された1つの領域をチップ部品領域Yというと、基板d30の表面d30A上には、抵抗d56をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子d5)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器d1(図95参照)を平面視したものと一致する。そして、基板d30の表面d30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板d30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器d1の大量生産が可能になる。
次いで、図96Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜d45を、基板d30の表面d30Aの全域に亘って形成する。絶縁膜d45は、絶縁層d20および絶縁層d20上の素子d5(抵抗体膜d21や配線膜d22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜d45は、前述したトリミング対象領域X(図88参照)における配線膜d22も覆っている。また、絶縁膜d45は、基板d30の表面d30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面d30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜d45は、表面d30A(表面d30A上の素子d5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次いで、図96Bに示すように、絶縁膜d45を全て覆うように、基板d30の表面d30Aの全域に亘ってレジストパターンd41を形成する。レジストパターンd41には、開口d42が形成されている。
図97は、図96Bの工程において第1溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図97を参照して、レジストパターンd41の開口d42は、多数のチップ抵抗器d1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器d1の輪郭の間の領域(図97においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口d42の全体形状は、互いに直交する直線部分d42Aおよびd42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターンd41では、開口d42において互いに直交する直線部分d42Aおよびd42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分d42Aおよびd42Bの交差部分d43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図96Bを参照して、レジストパターンd41をマスクとするプラズマエッチングにより、絶縁膜d45、絶縁層d20および基板d30のそれぞれを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子d5(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおいて基板d30の材料がエッチング(除去)される。その結果、平面視においてレジストパターンd41の開口d42と一致する位置(境界領域Z)には、絶縁膜d45および絶縁層d20を貫通して基板d30の表面d30Aから基板d30の厚さ途中まで到達する所定深さの第1溝d44が形成される。第1溝d44は、互いに対向する1対の側面d44Aと、当該1対の側面d44Aの下端(基板d30の裏面d30B側の端)の間を結ぶ底面d44Bとによって区画されている。基板d30の表面d30Aを基準とした第1溝d44の深さは、完成したチップ抵抗器d1の厚さT(図87(a)参照)の半分程度であり、第1溝d44の幅(対向する側面d44Aの間隔)Mは、20μm前後であって、深さ方向全域に亘って一定になっている。エッチングの中でも、特にプラズマエッチングを用いることによって、第1溝d44を高精度に形成することができる。
基板d30における第1溝d44の全体形状は、平面視でレジストパターンd41の開口d42(図97参照)と一致する格子状になっている。そして、基板d30の表面d30Aでは、各素子d5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを第1溝d44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板d30において素子d5が形成された部分は、チップ抵抗器d1の半製品d50である。基板d30の表面d30Aでは、第1溝d44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品d50が1つずつ位置していて、これらの半製品d50は、行列状に整列配置されている。
図96Bに示すように第1溝d44が形成された後、レジストパターンd41が除去され、図96Cに示すように、ダイシングソーd47を有するダイシングマシン(図示せず)が稼動される。ダイシングソーd47は、円板形状の砥石であって、その周端面に切断歯部が形成されている。ダイシングソーd47の幅Q(厚み)は、第1溝d44の幅Mよりも小さい。ここで、第1溝d44の中央位置(互いに対向する1対の側面d44Aから等距離にある位置)に、ダイシングラインUが設定される。ダイシングソーd47は、その厚さ方向における中央位置47Aが平面視でダイシングラインUに一致した状態で、第1溝d44内をダイシングラインUに沿って移動し、その際、第1溝d44の底面d44Bから基板d30を削る。ダイシングソーd47の移動が完了すると、基板d30には、第1溝d44の底面d44Bから掘り下がった所定深さの第2溝d48が形成される。
第2溝d48は、第1溝d44の底面d44Bから連続して、所定深さで基板d30の裏面d30B側へ窪んでいる。第2溝d48は、互いに対向する1対の側面d48Aと、当該1対の側面d48Aの下端(基板d30の裏面d30B側の端)の間を結ぶ底面d48Bとによって区画されている。第1溝d44の底面d44Bを基準とした第2溝d48の深さは、完成したチップ抵抗器d1の厚さTの半分程度であり、第2溝d48の幅(対向する側面d48Aの間隔)は、ダイシングソーd47の幅Qと同じであって、深さ方向全域に亘って一定になっている。第1溝d44および第2溝d48において、基板d30の厚さ方向に隣り合う側面d44Aと側面d48Aとの間には、当該厚さ方向に直交する方向(基板d30の表面d30Aに沿う方向)に延びる段差d49が形成されている。そのため、連続している第1溝d44および第2溝d48のまとまりは、裏面d30B側へ向けて細くなる凸状になっている。側面d44Aが、完成したチップ抵抗器d1における各側面(側面d2C〜d2Fのそれぞれ)の粗面領域Sとなり、側面d48Aが、チップ抵抗器d1における各側面の筋状パターン領域Pとなり、段差d49が、チップ抵抗器d1における各側面の段差Nとなる。
ここで、エッチングによって第1溝d44を形成することによって、各側面d44Aおよび底面d44Bは、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。一方、ダイシングソーd47によって第2溝d48を形成することによって、各側面d48Aには、ダイシングソーd47の研削跡をなす多数の筋が規則的なパターンで残っている。この筋は、側面d48Aをエッチングしたとしても完全に消すことができず、完成したチップ抵抗器d1では、前述した筋Vとなる(図87(a)参照)。
次いで、図96Dに示すようにマスクd65を用いたエッチングによって、絶縁膜d45を選択的に除去する。マスクd65では、絶縁膜d45において平面視で各パッド領域d22A(図95参照)に一致する部分に、開口d66が形成されている。これにより、エッチングによって、絶縁膜d45において開口d66と一致する部分が除去され、当該部分には、開口d25が形成される。これにより、絶縁膜d45は、開口d25において各パッド領域d22Aを露出させるように形成されたことになる。1つの半製品d50につき、開口d25は2つ形成される。
各半製品d50において、絶縁膜d45に2つの開口d25を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブd70を各開口d25のパッド領域d22Aに接触させて、素子d5の全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜d45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図88参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜d22をレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品d50(換言すれば、チップ抵抗器d1)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜d45が素子d5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子d5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜d45がヒューズF(抵抗体膜d21)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。
その後、CVD法によって絶縁膜d45上にSiNを形成し、絶縁膜d45を厚くする。このとき、図96Eに示すように、第1溝d44および第2溝d48の内周面(前述した側面d44A、底面d44B、側面d48Aおよび底面d48B)の全域にも絶縁膜d45が形成される。そのため、絶縁膜d45は、前述した段差d49上にも形成されている。第1溝d44および第2溝d48のそれぞれの内周面における絶縁膜d45(図96Eに示された状態の絶縁膜d45)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜d45の一部は、各開口d25に入り込んで開口d25を塞いでいる。
その後、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板d30に対して、絶縁膜d45の上からスプレー塗布して、図96Eに示すように感光性樹脂の樹脂膜d46を形成する。この際、当該液体が第1溝d44および第2溝d48内に入り込まないように、平面視で第1溝d44および第2溝d48だけを覆うパターンを有するマスク(図示せず)越しに、当該液体が基板d30に対して塗布される。その結果、当該液状の感光性樹脂は、基板d30上だけに形成され、基板d30上において、樹脂膜d46(樹脂膜)となる。表面d30A上の樹脂膜d46の表面d46Aは、表面d30Aに沿って平坦になっている。
なお、当該液体が第1溝d44および第2溝d48内に入り込んでいないので、第1溝d44および第2溝d48内には、樹脂膜d46が形成されていない。また、感光性樹脂の液体をスプレー塗布する以外に、当該液体をスピン塗布したり、感光性樹脂からなるシートを基板d30の表面d30Aに貼り付けたりすることによって、樹脂膜d46を形成してもよい。
次いで、樹脂膜d46に熱処理(キュア処理)を施す。これにより、樹脂膜d46の厚みが熱収縮するとともに、樹脂膜d46が硬化して膜質が安定する。
次いで、図96Fに示すように、樹脂膜d46をパターニングし、表面d30A上の樹脂膜d46において平面視で配線膜d22の各パッド領域d22A(開口d25)と一致する部分を選択的に除去する。具体的には、平面視で各パッド領域d22Aに整合(一致)するパターンの開口d61が形成されたマスクd62を用いて、樹脂膜d46を、当該パターンで露光して現像する。これにより、各パッド領域d22Aの上方で樹脂膜d46が分離されて開口d25が形成される。この際、樹脂膜d46において開口d25を縁取っている部分が熱収縮し、当該部分において開口d25を区画する区画面d46Bは、基板d30の厚さ方向に対して交差する傾斜面になる。これによって、開口d25は、前述したように、樹脂膜d46の表面d46A(樹脂膜d24の表面d24Cになる)に向かうのに従って広がった状態になる。
次いで、図示しないマスクを用いたRIEによって各パッド領域d22A上の絶縁膜d45が除去されることで、各開口d25が開放されてパッド領域d22Aが露出される。
次いで、無電解めっきによって、Ni、PdおよびAuを積層することで構成されたNi/Pd/Au積層膜を各開口d25におけるパッド領域d22A上に形成することによって、図96Gに示すように、パッド領域d22A上に第1接続電極d3および第2接続電極d4を形成する。
図98は、第1接続電極および第2接続電極の製造工程を説明するための図である。
詳しくは、図98を参照して、まず、パッド領域d22Aの表面が浄化されることで、当該表面の有機物(炭素のしみ等のスマットや油脂性の汚れも含む)が除去(脱脂)される(ステップS1)。次いで、当該表面の酸化膜が除去される(ステップS2)。次いで、当該表面においてジンケート処理が実施されて、当該表面における(配線膜d22の)AlがZnに置換される(ステップS3)。次いで、当該表面上のZnが硝酸等で剥離されて、パッド領域d22Aでは、新しいAlが露出される(ステップS4)。
次いで、パッド領域d22Aをめっき液に浸けることによって、パッド領域d22Aにおける新しいAlの表面にNiめっきが施される。これにより、めっき液中のNiが化学的に還元析出されて、当該表面にNi層d33が形成される(ステップS5)。
次いで、Ni層d33を別のめっき液に浸けることによって、当該Ni層d33の表面にPdめっきが施される。これにより、めっき液中のPdが化学的に還元析出されて、当該Ni層d33の表面にPd層d34が形成される(ステップS6)。
次いで、Pd層d34をさらに別のめっき液に浸けることによって、当該Pd層d34の表面にAuめっきが施される。これにより、めっき液中のAuが化学的に還元析出されて、当該Pd層d34の表面にAu層d35が形成される(ステップS7)。これによって、第1接続電極d3および第2接続電極d4が形成され、形成後の第1接続電極d3および第2接続電極d4を乾燥させると(ステップS8)、第1接続電極d3および第2接続電極d4の製造工程が完了する。なお、前後するステップの間には、半製品d50を水で洗浄する工程が適宜実施される。また、ジンケート処理は複数回実施されてもよい。
図96Gでは、各半製品d50において第1接続電極d3および第2接続電極d4が形成された後の状態を示している。第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれでは、表面d3A,d4Aが、樹脂膜d46の表面d46Aと面一になっている。また、樹脂膜d46において開口d25を区画する区画面d46Bが前述したように傾斜しているのに応じて、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれでは、表面d3A,d4Aにおいて開口d25の縁側の端部が、基板d30の裏面d30B側へ湾曲している。そのため、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれでは、Ni層d33、Pd層d34およびAu層d35のそれぞれにおける開口d25の縁側の端部が、基板d30の裏面d30B側へ湾曲している。
以上のように、第1接続電極d3および第2接続電極d4を無電解めっきによって形成するので、第1接続電極d3および第2接続電極d4を電解めっきによって形成する場合に比べて、第1接続電極d3および第2接続電極d4についての形成工程の工程数(たとえば、電解めっきで必要となるリソグラフィ工程やレジストマスクの剥離工程等)を削減してチップ抵抗器d1の生産性を向上できる。さらに、無電解めっきの場合には、電解めっきで必要とされるレジストマスクが不要であることから、レジストマスクの位置ずれによる第1接続電極d3および第2接続電極d4についての形成位置にずれが生じないので、第1接続電極d3および第2接続電極d4の形成位置精度を向上して歩留まりを向上できる。また、樹脂膜d24から露出されたパッド領域d22Aを無電解めっきすることによって、当該パッド領域d22A上だけに第1接続電極d3および第2接続電極d4を形成することができる。
また、電解めっきの場合には、めっき液にNiやSnが含有されている場合が一般的である。そのため、第1接続電極d3および第2接続電極d4の表面d3A,d4Aに残ったSnが酸化されることによって、第1接続電極d3および第2接続電極d4と実装基板d9の接続端子d88(図87(b)参照)との接続不良が生じ得るが、無電解めっきを用いる第4参考例では、そのような問題はない。
このように第1接続電極d3および第2接続電極d4が形成されてから、第1接続電極d3および第2接続電極d4間での通電検査が行われた後に、基板d30が裏面d30Bから研削される。
具体的には、図96Hに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面d72を有する支持テープd71が、粘着面d72において、各半製品d50における第1接続電極d3および第2接続電極d4側(つまり、表面d30A)に貼着される。これにより、各半製品d50が支持テープd71に支持される。ここで、支持テープd71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品d50が支持テープd71に支持された状態で、基板d30を裏面d30B側から研削する。研削によって、裏面d30Bが第2溝d48の底面d48B(図96G参照)に到達するまで基板d30が薄型化されると、隣り合う半製品d50を連結するものがなくなるので、第1溝d44および第2溝d48を境界として基板d30が分割され、半製品d50が個別に分離してチップ抵抗器d1の完成品となる。つまり、第1溝d44および第2溝d48(換言すれば、境界領域Z)において基板d30が切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器d1が切り出される。裏面d30Bを研削した後の基板d30(基板d2)の厚さは、150μm〜400μm(150μm以上400μm以下)である。
完成した各チップ抵抗器d1では、第1溝d44の側面d44Aをなしていた部分が、基板d2の側面d2C〜d2Fのいずれかの粗面領域Sとなり、第2溝d48の側面d48Aをなしていた部分が、基板d2の側面d2C〜d2Fのいずれかの筋状パターン領域Pとなり、側面d44Aと側面d48Aとの間の段差d49が、前述した段差Nとなる。そして、完成した各チップ抵抗器d1では、裏面d30Bが裏面d2Bとなる。つまり、前述したように第1溝d44および第2溝d48を形成する工程(図96Bおよび図96C参照)は、側面d2C〜d2Fを形成する工程に含まれる。また、絶縁膜d45がパッシベーション膜d23となり、樹脂膜d46が樹脂膜d24となる。
たとえば、エッチングによって形成された第1溝d44(図96B参照)の深さが一様でなくでも、ダイシングソーd47によって第2溝d48を形成すれば(図96C参照)、第1溝d44および第2溝d48の全体の深さ(基板d30の表面d30Aから第2溝d48の底までの深さ)は一様になる。そのため、基板d30の裏面d30Bを研削してチップ抵抗器d1を個片化するときに、基板d30から分離されるまでのチップ抵抗器d1間の時間差を少なくして各チップ抵抗器d1をほぼ同時に基板d30から分離することができる。これにより、先に分離されたチップ抵抗器d1が基板d30と衝突を繰り返すことによってチップ抵抗器d1にチッピングが生じるといった不具合を抑制できる。また、チップ抵抗器d1の表面d2A側の角部(コーナー部d11)は、エッチングで形成された第1溝d44によって区画されているので、コーナー部d11では、ダイシングソーd47によって区画される場合と比べて、チッピングが生じにくい。以上の結果、チップ抵抗器d1の個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できる。つまり、チップ抵抗器d1の表面d2A側におけるコーナー部d11(図87(a)参照)における形状のコントロールが可能となる。また、第1溝d44および第2溝d48の両方をエッチングによって形成する場合に比べて、チップ抵抗器d1の個片化にかかる時間を短縮して、チップ抵抗器d1の生産性を向上することもできる。
特に、個片化されたチップ抵抗器d1における基板d2の厚さが150μm〜400μmと比較的大きい場合には、エッチングだけで基板d30の表面d30Aから第2溝d48の底面d48Bまで到達する溝(図96C参照)を形成するのは困難であるし、時間がかかる。しかし、このような場合であっても、エッチングおよびダイシングソーd47によるダイシングを併用して第1溝d44および第2溝d48を形成してから基板d30の裏面d30Bを研削することによって、チップ抵抗器d1の個片化にかかる時間を短縮できる。よって、チップ抵抗器d1の生産性を向上することができる。
また、ダイシングによって第2溝d48を基板d30の裏面d30Bまで到達させてしまうと(第2溝d48が基板d30を貫通するようにすると)、完成したチップ抵抗器d1では、裏面d2Bと側面d2C〜d2Fとのコーナー部にチッピングが生じ得る。しかし、第4参考例のように第2溝d48が裏面d30Bまで到達しないようにハーフダイシングしてから(図96C参照)、裏面d30Bを研磨すれば、裏面d2Bと側面d2C〜d2Fとのコーナー部にチッピングが生じにくい。
また、エッチングだけで基板d30の表面d30Aから第2溝d48の底面d48Bまで到達する溝を形成すると、エッチングレートのばらつきによって、完成後の溝の側面は基板d2の厚さ方向に沿わず、溝の断面が矩形状になりにくい。つまり、溝の側面にばらつきが生じる。しかし、第4参考例のようにエッチングおよびダイシングを併用することによって、エッチングだけの場合に比べて、第1溝d44および第2溝d48の全体の溝側面(側面d44Aおよび側面d48Aのそれぞれ)におけるばらつきを低減して、当該溝側面を基板d2の厚さ方向に沿わせることができる。
また、ダイシングソーd47の幅Qが第1溝d44の幅Mよりも小さいので、ダイシングソーd47によって形成された第2溝d48の幅Qは、第1溝d44の幅Mよりも小さくなり、第2溝d48は、第1溝d44の内側に位置する(図96C参照)。そのため、ダイシングソーd47によって第2溝d48を形成するときに、ダイシングソーd47が第1溝d44の幅を広げてしまうことはない。よって、第1溝d44によって区画されるはずのチップ抵抗器d1の表面d2A側のコーナー部d11がダイシングソーd47によって区画されてしまってコーナー部d11にチッピングが生じることを確実に抑制できる。
なお、第2溝d48を形成してから裏面d30Bを研削することでチップ抵抗器d1を個片化しているが、第2溝d48を形成する前に、裏面d30Bを先に研削しておいてから、第2溝d48をダイシングで形成してもよい。また、基板d30を裏面d30B側から第2溝d48の底面d48Bまでエッチングすることによってチップ抵抗器d1を切り出すことも想定される。
以上のように、第1溝d44および第2溝d48を形成してから基板d30を裏面d30B側から研削すれば、基板d30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器d1(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器d1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器d1の製造時間の短縮によってチップ抵抗器d1の生産性の向上を図ることができる。ちなみに、直径が8インチの基板d30を用いると50万個程度のチップ抵抗器d1を切り出すことができる。
つまり、チップ抵抗器d1のチップサイズが小さくても、このように先に第1溝d44および第2溝d48を形成しておいてから基板d30を裏面d30Bから研削することによって、チップ抵抗器d1を一度に個片化することができる。
また、エッチングによって第1溝d44を高精度に形成できるので、個々のチップ抵抗器d1において第1溝d44によって区画された側面d2C〜d2Fの粗面領域S側では、外形寸法精度の向上を図ることができる。特に、プラズマエッチングを用いれば、第1溝d44を一層高精度に形成できる。また、レジストパターンd41(図97参照)に応じて、第1溝d44の間隔を微細化できるので、隣り合う第1溝d44の間に形成されるチップ抵抗器d1の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、チップ抵抗器d1の側面d2C〜d2Fの粗面領域Sにおいて隣り合うもの同士のコーナー部d11(図87(a)参照)にチッピングが生じることを低減でき、チップ抵抗器d1の外観の向上を図ることができる。
なお、完成したチップ抵抗器d1における基板d2の裏面d2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面d2Bを綺麗にしてもよい。
図96Hに示すように完成したチップ抵抗器d1は、支持テープd71から引き剥がされた後に、所定のスペースまで搬送されて当該スペースで保管される。
チップ抵抗器d1を実装基板d9(図87(b)参照)に実装する場合、自動実装機の吸着ノズルd91(図87(b)参照)にチップ抵抗器d1の裏面d2Bを吸着してから吸着ノズルd91を動かすことによって、チップ抵抗器d1を搬送する。このとき、吸着ノズルd91は、裏面d2Bの長手方向における略中央部分に吸着する。そして、図87(b)を参照して、チップ抵抗器d1を吸着した吸着ノズルd91を実装基板d9まで移動させる。実装基板d9には、チップ抵抗器d1の第1接続電極d3および第2接続電極d4に応じて、前述した1対の接続端子d88が設けられている。接続端子d88は、たとえば、Cuからなる。各接続端子d88の表面には、半田d13が当該表面から突出するように設けられている。
そこで、吸着ノズルd91を移動させて実装基板d9に押し付けることで、チップ抵抗器d1において、第1接続電極d3を一方の接続端子d88の半田d13に接触させ、第2接続電極d4を他方の接続端子d88の半田d13に接触させる。この状態で、半田d13を加熱すると、半田d13が溶融する。その後、半田d13が冷却されて固まると、第1接続電極d3と当該一方の接続端子d88とが半田d13を介して接合し、第2接続電極d4と当該他方の接続端子d88とが半田d13を介して接合し、実装基板d9へのチップ抵抗器d1の実装が完了する。
図99は、完成したチップ抵抗器をエンボスキャリアテープに収容する様子を説明するための模式図である。
一方、図96Hに示すように完成したチップ抵抗器d1を、図99に示すエンボスキャリアテープd92に収容する場合もある。
エンボスキャリアテープd92は、たとえば、ポリカーボネート樹脂等で形成されたテープ(帯状体)である。エンボスキャリアテープd92には、多数のポケットd93が、エンボスキャリアテープd92の長手方向に並ぶように形成されている。各ポケットd93は、エンボスキャリアテープd92の一方の面(裏面)へ窪む凹状の空間として区画されている。
完成したチップ抵抗器d1(図96H参照)をエンボスキャリアテープd92に収容する場合、搬送装置の吸着ノズルd91(図87(b)参照)にチップ抵抗器d1の裏面d2B(長手方向における略中央部分)を吸着してから吸着ノズルd91を動かすことによって、チップ抵抗器d1を支持テープd71から引き剥がす。そして、吸着ノズルd91をエンボスキャリアテープd92のポケットd93に対向する位置まで移動させる。このとき、吸着ノズルd91に吸着されたチップ抵抗器d1では、表面d2A側の第1接続電極d3および第2接続電極d4および樹脂膜d24がポケットd93に対向している。
ここで、チップ抵抗器d1をエンボスキャリアテープd92に収容する場合、エンボスキャリアテープd92は、平坦な支持台d95の上に載せられている。吸着ノズルd91をポケットd93側へ移動させて(太線矢印参照)、表面d2A側がポケットd93に対向した姿勢にあるチップ抵抗器d1を、ポケットd93内へ収容する。そして、チップ抵抗器d1の表面d2A側がポケットd93の底d93Aに接触すると、エンボスキャリアテープd92に対するチップ抵抗器d1の収容が完了する。吸着ノズルd91を移動させることでチップ抵抗器d1の表面d2A側をポケットd93の底d93Aに接触させるとき、表面d2A側の第1接続電極d3および第2接続電極d4および樹脂膜d24は、支持台d95によって支持された底d93Aに対して押し付けられる。
エンボスキャリアテープd92に対するチップ抵抗器d1の収容が完了してから、エンボスキャリアテープd92の表面には、剥離カバーd94が貼り付けられ、各ポケットd93の内部が剥離カバーd94によって密閉される。これにより、各ポケットd93内に異物が侵入することが防止される。エンボスキャリアテープd92からチップ抵抗器d1を取り出す場合には、剥離カバーd94がエンボスキャリアテープd92から剥がされてポケットd93が開放される。その後、自動実装機によって、ポケットd93からチップ抵抗器d1が取り出されて、前述したように実装される。
このようにチップ抵抗器d1を実装する場合や、チップ抵抗器d1をエンボスキャリアテープd92に収容する場合や、さらにはチップ抵抗器d1に対して応力試験を行う場合において、チップ抵抗器d1の裏面d2B(長手方向における略中央部分)に力をかけて第1接続電極d3および第2接続電極d4を何か(「被接触部」ということにする)に押し付けようとすると、基板d2の表面d2Aに応力が作用する。なお、当該被接触部とは、チップ抵抗器d1を実装する場合には、実装基板d9であり、チップ抵抗器d1をエンボスキャリアテープd92へ収容する時には、支持台d95によって支持されたポケットd93の底d93Aであり、応力試験時には、応力を受けるチップ抵抗器d1を支える支持面である。
この場合において、基板d2の表面d2Aにおける樹脂膜d24の高さH(図95参照)が、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの高さJ(図95参照)未満であって、第1接続電極d3および第2接続電極d4の表面d3A,4Aが基板d2の表面d2Aから最も突出している(つまり、樹脂膜d24が薄い)チップ抵抗器d1が考えられる(後述する図100参照)。このようなチップ抵抗器d1は、表面d2A側では、前述した被接触部に対して第1接続電極d3および第2接続電極d4だけで接触(2点接触)するので、チップ抵抗器d1にかかる応力は、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれと基板d2との接合部に集中する。これによって、チップ抵抗器d1の電気的特性が悪化する虞がある。さらには、当該応力によって、チップ抵抗器d1内(特に、基板d2の長手方向における略中央部分)に歪みが生じ、ひどい場合には当該略中央部分を起点として基板d2が割れてしまう虞がある。
しかしながら、第4参考例では、前述したように、樹脂膜d24の高さHは、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの高さJ以上となるように、樹脂膜d24が厚くなっている(図95参照)。よって、チップ抵抗器d1にかかる応力は、第1接続電極d3および第2接続電極d4だけでなく樹脂膜d24によっても受け止められる。つまり、チップ抵抗器d1において応力を受ける部分の面積を増大させることができるので、チップ抵抗器d1にかかる応力を分散できる。これにより、チップ抵抗器d1において第1接続電極d3および第2接続電極d4に対する応力の集中を抑制できる。特に、樹脂膜d24の表面d24Cによって、チップ抵抗器d1にかかる応力をより効果的に分散できる。これにより、チップ抵抗器d1に対する応力の集中を一層抑制できるので、チップ抵抗器d1の強度向上を図ることができる。その結果、実装時や耐久試験時やエンボスキャリアテープd92への収容時におけるチップ抵抗器d1の破壊を抑制できる。その結果、実装やエンボスキャリアテープd92への収容における歩留まりを向上させることができ、さらに、チップ抵抗器d1が壊れにくいことからチップ抵抗器d1の取扱い性を向上させることもできる。
次に、チップ抵抗器d1の変形例について説明する。図100〜図104は、第1〜第5変形例に係るチップ抵抗器の模式的な断面図である。第1〜第5変形例において、これまでチップ抵抗器d1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。
第1接続電極d3および第2接続電極d4に関し、図95では、第1接続電極d3の表面d3Aおよび第2接続電極d4の表面d4Aが、樹脂膜d24の表面d24Cと面一になっている。実装時等にチップ抵抗器d1にかかる応力を分散することを考慮しないのであれば、図100に示す第1変形例のように、第1接続電極d3の表面d3Aおよび第2接続電極d4の表面d4Aは、基板d2の表面d2Aから離れる方向(図100では上方)へ向けて樹脂膜d24の表面d24Cよりも突出していてもよい。このとき、樹脂膜d24の高さHは、第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの高さJよりも低くなる。
逆に、図95の場合よりも、実装時等にチップ抵抗器d1にかかる応力を分散したいのであれば、図101に示す第2変形例のように、樹脂膜d24の高さHを第1接続電極d3および第2接続電極d4のそれぞれの高さJよりも高くするとよい。これにより、樹脂膜d24が厚くなって、第1接続電極d3の表面d3Aおよび第2接続電極d4の表面d4Aが、樹脂膜d24の表面d24Cよりも、基板d2の表面d2A側(図100では下方)へずれる。この場合には、第1接続電極d3および第2接続電極d4が、樹脂膜d24の表面d24Cよりも基板d2側へ埋没した状態になっているので、前述した第1接続電極d3および第2接続電極d4における2点接触自体が発生しない。そのため、チップ抵抗器d1に対する応力の集中を一層抑制できる。ただし、第2変形例のチップ抵抗器d1を実装基板d9に実装する場合には、実装基板d9の各接続端子d88上の半田d13を、第1接続電極d3の表面d3Aおよび第2接続電極d4の表面d4Aに届くように厚くしておいて、第1接続電極d3および第2接続電極d4と半田d13との接続不良を予防しておく必要がある(図87(b)参照)。
また、基板d2の表面d2A上の絶縁層d20では、その端面d20A(平面視で表面d2Aの縁部d85と一致する部分)が、基板d2の厚さ方向(図95、図100および図101では上下方向)に延びているが、図102〜図104に示すように、傾斜していてもよい。詳しくは、絶縁層d20の端面d20Aは、基板d2の表面d2Aから絶縁層d20の表面へ近付くのに従って基板d2の内方へ向かうように傾斜している。このような端面d20Aに応じて、パッシベーション膜d23において当該端面d20Aを覆っている部分(前述した端部d23C)も、端面d20Aに沿って傾斜している。
図102〜図104に示す第3〜第5変形例のチップ抵抗器d1では、樹脂膜d24の縁24Aの位置に違いがある。
まず、図102に示す第3変形例のチップ抵抗器d1は、絶縁層d20の端面d20Aおよびパッシベーション膜d23の端部d23Cが傾斜している点以外では、図95のチップ抵抗器d1と同じである。そのため、平面視において、樹脂膜d24の縁24Aは、パッシベーション膜d23の側面被覆部d23Bと整合していて、側面被覆部d23Bの厚み分だけ、基板d2の表面d2Aの縁部d85(基板d2の表面d2A側の端縁)よりも外側に位置している。このように縁24Aを側面被覆部d23Bと整合させたければ、前述した樹脂膜d46を形成するために感光性樹脂の液体をスプレー塗布する際において(図96E参照)、図示しないマスクを用いて当該液体が第1溝d44および第2溝d48内に入り込まないようにしておく必要がある。または、当該液体が第1溝d44および第2溝d48内に入り込んだとしても、その後に樹脂膜d46をパターニングする際に(図96F参照)、マスクd62において平面視で第1溝d44および第2溝d48と一致する部分にも開口d61を形成しておくとよい。そうすれば、樹脂膜d46のパターニングによって、第1溝d44および第2溝d48内の樹脂膜d46を除去し、樹脂膜d24の縁24Aを側面被覆部d23Bと整合させることができる。
ここで、樹脂膜d24は、樹脂製であることから、衝撃によりクラックが生じるおそれが少ない。そのため、樹脂膜d24が、基板d2の表面d2A(特に、素子d5およびヒューズF)と、基板d2の表面d2Aの縁部d85とを衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ抵抗器d1を提供することができる。
一方、図103に示す第4変形例のチップ抵抗器d1では、平面視において、樹脂膜d24の縁24Aは、パッシベーション膜d23の側面被覆部d23Bと整合しておらず、側面被覆部d23Bよりも内方、詳しくは、基板d2の表面d2Aの縁部d85よりも基板d2の内方に後退している。この場合にも、樹脂膜d24が、基板d2の表面d2A(特に、素子d5およびヒューズF)を衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ抵抗器d1を提供することができる。樹脂膜d24の縁24Aを基板d2の内方に後退させるためには、樹脂膜d46をパターニングする際に、マスクd62において平面視で基板d2(基板d30)の縁部d85と重なる部分にも開口d61を形成しておくとよい(図96F参照)。そうすれば、樹脂膜d46のパターニングによって、平面視で基板d2(基板d30)の縁部d85と重なる領域の樹脂膜d46を除去し、結果として、樹脂膜d24の縁24Aを基板d2の内方に後退させることができる。
そして、図104に示す第5変形例のチップ抵抗器d1では、平面視において、樹脂膜d24の縁24Aは、パッシベーション膜d23の側面被覆部d23Bと整合していない。詳しくは、樹脂膜d24は、側面被覆部d23Bよりも外方に張り出していて、側面被覆部d23Bの全域を外から覆っている。つまり、第5変形例では、樹脂膜d24は、パッシベーション膜d23の表面被覆部d23Aおよび側面被覆部d23Bの両方を覆っている。この場合、樹脂膜d24が、基板d2の表面d2A(特に、素子d5およびヒューズF)と、基板d2の側面d2C〜d2Fとを衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ抵抗器d1を提供することができる。樹脂膜d24が表面被覆部d23Aおよび側面被覆部d23Bの両方を覆いたいのであれば、前述した樹脂膜d46を形成するために感光性樹脂の液体をスプレー塗布する際において(図96E参照)、当該液体が第1溝d44および第2溝d48内に入り込んで側面被覆部d23Bに付着するようにすればよい。なお、前述したように当該液体をスピン塗布する場合には、当該液体が膜状にならずに第1溝d44および第2溝d48を完全に埋めてしまうので好ましくない。一方、感光性樹脂からなるシートを基板d30の表面d30Aに貼り付けたりすることで樹脂膜d46を形成する場合には、当該シートは第1溝d44および第2溝d48内に入り込めないから、側面被覆部d23Bの全域を覆うことができないので好ましくない。よって、樹脂膜d24が表面被覆部d23Aおよび側面被覆部d23Bの両方を覆うためには、感光性樹脂の液体をスプレー塗布するのが有効である。
以上、第4参考例の実施形態について説明してきたが、第4参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第4参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器d1を開示したが、第4参考例は、チップコンデンサやチップインダクタやチップダイオードといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図105は、第4参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。図106は、図105の切断面線CVI−CVIから見た断面図である。図107は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサd101において、前述したチップ抵抗器d1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサd101において、チップ抵抗器d1で説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器d1で説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器d1で説明した部分と同じ作用効果を奏することができる。
図105を参照して、チップコンデンサd101は、チップ抵抗器d1と同様に、基板d2と、基板d2上(基板d2の表面d2A側)に配置された第1接続電極d3と、同じく基板d2上に配置された第2接続電極d4とを備えている。基板d2は、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板d2の長手方向両端部に第1接続電極d3および第2接続電極d4がそれぞれ配置されている。第1接続電極d3および第2接続電極d4は、この実施形態では、基板d2の短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。基板d2の表面d2Aには、第1接続電極d3および第2接続電極d4の間のキャパシタ配置領域d105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が配置されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子d5を構成する複数の素子要素(キャパシタ素子)であり、複数のヒューズユニットd107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極d4に対して切り離し可能となるように電気的に接続されている。これらのキャパシタ要素C1〜C9によって構成された素子d5は、キャパシタ回路網になっている。
図106および図107に示されているように、基板d2の表面d2Aには絶縁層d20が形成されていて、絶縁層d20の表面に下部電極膜d111が形成されている。下部電極膜d111は、キャパシタ配置領域d105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜d111は、第1接続電極d3の直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜d111は、キャパシタ配置領域d105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域d111Aと、第1接続電極d3の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域d111B(パッド)とを有している。キャパシタ電極領域d111Aがキャパシタ配置領域d105に位置していて、パッド領域d111Bが第1接続電極d3の直下に位置して第1接続電極d3に接触している。
キャパシタ配置領域d105において下部電極膜d111(キャパシタ電極領域d111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)d112が形成されている。容量膜d112は、キャパシタ電極領域d111A(キャパシタ配置領域d105)の全域にわたって形成されている。容量膜d112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域d105外の絶縁層d20を覆っている。
容量膜d112の上には、上部電極膜d113が容量膜d112に接するように形成されている。図105では、明瞭化のために、上部電極膜d113を着色して示してある。上部電極膜d113は、キャパシタ配置領域d105に位置するキャパシタ電極領域d113Aと、第2接続電極d4の直下に位置して第2接続電極d4に接触するパッド領域d113B(パッド)と、キャパシタ電極領域d113Aとパッド領域d113Bとの間に配置されたヒューズ領域d113Cとを有している。
キャパシタ電極領域d113Aにおいて、上部電極膜d113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)d131〜d139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分d131〜d139は、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域d113Cから第1接続電極d3に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分d131〜d139は、複数種類の対向面積で、容量膜d112を挟んで(容量膜d112に接しつつ)下部電極膜d111に対向している。より具体的には、電極膜部分d131〜d139の下部電極膜d111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分d131〜d139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分d131〜d138(またはd131〜d137,d139)を含む。これによって、各電極膜部分d131〜d139と容量膜d112を挟んで対向する下部電極膜d111と容量膜d112とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分d131〜d139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分d131〜d135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分d135,d136,d137,d138,d139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分d135〜d139は、キャパシタ配置領域d105の第2接続電極d4側の端縁から第1接続電極d3側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分d131〜d134は、それよりも短く形成されている。
パッド領域d113Bは、第2接続電極d4とほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。図106に示すように、パッド領域d113Bにおける上部電極膜d113は、第2接続電極d4に接している。
ヒューズ領域d113Cは、パッド領域d113Bの一つの長辺(基板d2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域d113Cは、パッド領域d113Bの前記1つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニットd107を含む。
ヒューズユニットd107は、上部電極膜d113のパッド領域d113Bと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分d131〜d139は、1つまたは複数個のヒューズユニットd107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニットd107を介してパッド領域d113Bに接続され、このパッド領域d113Bを介して第2接続電極d4に電気的に接続されている。図105に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分d131〜d136は、一つのヒューズユニットd107によってパッド領域d113Bに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分d137〜d139は複数個のヒューズユニットd107を介してパッド領域d113Bに接続されている。全てのヒューズユニットd107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニットd107は未使用である。
ヒューズユニットd107は、パッド領域d113Bとの接続のための第1幅広部d107Aと、電極膜部分d131〜d139との接続のための第2幅広部d107Bと、第1および第2幅広部d107A,7Bの間を接続する幅狭部d107Cとを含む。幅狭部d107Cは、レーザ光によって切断(溶断)することができるように構成されている。それによって、電極膜部分d131〜d139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニットd107の切断によって第1および第2接続電極d3,d4から電気的に切り離すことができる。
図105および図107では図示を省略したが、図106に表れている通り、上部電極膜d113の表面を含むチップコンデンサd101の表面は、前述したパッシベーション膜d23によって覆われている。パッシベーション膜d23は、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサd101の上面のみならず、基板d2の側面d2C〜d2Fまで延びて、側面d2C〜d2Fの全域をも覆うように形成されている。さらに、パッシベーション膜d23の上には、前述した樹脂膜d24が形成されている。
パッシベーション膜d23および樹脂膜d24は、チップコンデンサd101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極d3および第2接続電極d4に対応する領域に、前述した開口d25がそれぞれ形成されている。開口d25はそれぞれ下部電極膜d111のパッド領域d111Bの一部の領域、上部電極膜d113のパッド領域d113Bの一部の領域を露出させるようにパッシベーション膜d23および樹脂膜d24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極d3に対応した開口d25は、容量膜d112をも貫通している。
開口d25には、第1接続電極d3および第2接続電極d4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極d3は下部電極膜d111のパッド領域d111Bに接合しており、第2接続電極d4は上部電極膜d113のパッド領域d113Bに接合している。この実施形態では、第1および第2外部電極d3,d4は、それぞれの表面d3A,4Aが樹脂膜d24の表面d24Aと略面一になるように形成されている。チップ抵抗器d1と同様に、実装基板d9に対してチップコンデンサd101をフリップチップ接合することができる。
図108は、前記チップコンデンサの内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極d3と第2接続電極d4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極d4との間には、一つまたは複数のヒューズユニットd107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサd101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサd101の容量値が減少する。
そこで、パッド領域d111B,d113Bの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサd101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサd101を提供することができる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極d3および第2接続電極d4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサd101を共通の設計で実現することができる。
チップコンデンサd101の各部の詳細について以下に説明を加える。
図105を参照して、基板d2は、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域d105は、概ね、基板d2の短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板d2の厚さは、150μm程度であってもよい。図106を参照して、基板d2は、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板d2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
絶縁層d20は、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜d111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜d111は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜d113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜d113は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜d113のキャパシタ電極領域d113Aを電極膜部分d131〜d139に分割し、さらに、ヒューズ領域d113Cを複数のヒューズユニットd107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜d112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜d112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
パッシベーション膜d23は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜d24は、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成することができる。
第1および第2接続電極d3,4は、たとえば、下部電極膜d111または上部電極膜d113に接するNi層d33と、このNi層d33上に積層したPd層d34と、そのPd層d34上に積層したAu層d35とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、無電解めっき法で形成することができる。Ni層d33は下部電極膜d111または上部電極膜d113に対する密着性の向上に寄与し、Pd層d34は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極d3,d4の最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサd101の製造工程は、素子d5を形成した後のチップ抵抗器d1の製造工程と同じである。
チップコンデンサd101において素子d5(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板d30(基板d2)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁層d20が形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜d111が絶縁層d20の表面全域に形成される。下部電極膜d111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜d111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図105等に示したパターンの下部電極膜d111が得られる。下部電極膜d111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜d112が、下部電極膜d111上に形成される。下部電極膜d111が形成されていない領域では、絶縁層d20の表面に容量膜d112が形成されることになる。次いで、その容量膜d112の上に、上部電極膜d113が形成される。上部電極膜d113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成することができる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次いで、上部電極膜d113の表面に上部電極膜d113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜d113が、最終形状(図105等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜d113は、キャパシタ電極領域d113Aに複数の電極膜部分d131〜d139に分割された部分を有し、ヒューズ領域d113Cに複数のヒューズユニットd107を有し、それらのヒューズユニットd107に接続されたパッド領域d113Bを有するパターンに整形される。上部電極膜d113が分割されることによって、電極膜部分d131〜d139の数に応じた複数のキャパシタ要素C1〜C9を形成することができる。上部電極膜d113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサd101における素子d5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニットd107)が形成される。素子d5が形成された後に、プラズマCVD法によって絶縁膜d45が、素子d5(上部電極膜d113、上部電極膜d113が形成されていない領域における容量膜d112)を全て覆うように形成される(図96A参照)。その後は、第1溝d44および第2溝d48が形成されてから(図96Bおよび図96C参照)、開口d25が形成される(図96D参照)。そして、開口d25から露出された上部電極膜d113のパッド領域d113Bと下部電極膜d111のパッド領域d111Bとにプローブd70を押し当てて、複数のキャパシタ要素C0〜C9の総容量値が測定される(図96D参照)。この測定された総容量値に基づき、目的とするチップコンデンサd101の容量値に応じて、切り離すべきキャパシタ要素、すなわち切断すべきヒューズが選択される。
この状態から、ヒューズユニットd107を溶断するためのレーザトリミングが行われる。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニットd107にレーザ光を当てて、そのヒューズユニットd107の幅狭部d107C(図105参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域d113Bから切り離される。ヒューズユニットd107にレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜d45の働きによって、ヒューズユニットd107の近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニットd107が溶断する。これにより、チップコンデンサd101の容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、カバー膜(絶縁膜d45)上に窒化シリコン膜が堆積させられ、パッシベーション膜d23が形成される。前述のカバー膜は最終形態において、パッシベーション膜d23と一体化し、このパッシベーション膜d23の一部を構成する。ヒューズの切断後に形成されたパッシベーション膜d23は、ヒューズ溶断の際に同時に破壊されたカバー膜の開口内に入り込み、ヒューズユニットd107の切断面を覆って保護する。したがって、パッシベーション膜d23は、ヒューズユニットd107の切断箇所に異物が入り込んだり水分が侵入したりすることを防ぐ。これにより、信頼性の高いチップコンデンサd101を製造することができる。パッシベーション膜d23は、全体で、たとえば8000Å程度の膜厚を有するように形成されてもよい。
次に、前述した樹脂膜d46が形成される(図96E参照)。その後、樹脂膜d46やパッシベーション膜d23によって塞がれていた開口d25が開放され(図96F参照)、パッド領域d111Bおよびパッド領域d113Bが、開口d25を介して樹脂膜d46(樹脂膜d24)から露出される。その後、開口d25において樹脂膜d46から露出されたパッド領域d111B上およびパッド領域d113B上に、たとえば無電解めっき法によって、第1接続電極d3および第2接続電極d4が形成される(図96G参照)。
その後、チップ抵抗器d1の場合と同じように、基板d30を裏面d30Bから研削すると(図96H参照)、チップコンデンサd101の個片を切り出すことができる。
フォトリソグラフィ工程を利用した上部電極膜d113のパターニングでは、微小面積の電極膜部分d131〜d139を精度良く形成することができ、さらに微細なパターンのヒューズユニットd107を形成することができる。そして、上部電極膜d113のパターニングの後に、総容量値の測定を経て、切断すべきヒューズが決定される。その決定されたヒューズを切断することによって、所望の容量値に正確に合わせ込まれたチップコンデンサd101を得ることができる。つまり、このチップコンデンサd101では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素C1〜C9を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサd101を共通の設計で実現することができる。
以上、第4参考例のチップ部品(チップ抵抗器d1やチップコンデンサd101)について説明してきたが、第4参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器d1の場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサd101の場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器d1やチップコンデンサd101では、基板d2の表面に絶縁層d20が形成されているが、基板d2が絶縁性の基板であれば、絶縁層d20を省くこともできる。
また、チップコンデンサd101では、上部電極膜d113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜d111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜d113および下部電極膜d111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサd101では、上部電極膜d113および下部電極膜d111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜d113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
チップコンデンサd101では、また、基板d2として導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜d112を形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
また、第4参考例を、チップインダクタに適用した場合、当該チップインダクタにおいて前述した基板d2上に形成された素子d5は、複数のインダクタ要素(素子要素)を含んだインダクタ回路網(インダクタ素子)を含む。この場合、素子d5は、基板d2の表面d2A上に形成された多層配線中に設けられていて、配線膜d22によって形成されている。このチップインダクタでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、インダクタ回路網における複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、インダクタ回路網の電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現することができる。
そして、第4参考例を、チップダイオードに適用した場合、当該チップダイオードにおいて前述した基板d2上に形成された素子d5は、複数のダイオード要素(素子要素)を含んだダイオード回路網(ダイオード素子)を含む。ダイオード素子は基板d2に形成されている。このチップダイオードでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、ダイオード回路網における複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、ダイオード回路網の電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現することができる。
チップインダクタおよびチップダイオードのいずれにおいても、チップ抵抗器d1やチップコンデンサd101の場合と同じ作用効果を奏することができる。
また、前述した第1接続電極d3および第2接続電極d4において、Ni層d33とAu層d35との間に介装されていたPd層d34を省略することもできる。Ni層d33とAu層d35との接着性が良好なので、Au層d35に前述したピンホールができないのであれば、Pd層d34を省略しても構わない。
また、前述したようにエッチングによって第1溝d44を形成する際に用いるレジストパターンd41の開口d42の交差部分43(図97参照)をラウンド形状にしておけば、完成したチップ部品では、基板d2の表面d2A側のコーナー部(粗面領域Sにおけるコーナー部)11をラウンド状に成形することができる。
また、チップ抵抗器d1において説明した変形例1〜5(図100〜図104)の構成は、チップコンデンサd101、チップインダクタおよびチップダイオードのいずれにおいても適用可能である。
図109は、第4参考例のチップ部品が用いられる電子機器の一例であるスマートフォンの外観を示す斜視図である。スマートフォンd201は、扁平な直方体形状の筐体d202の内部に電子部品を収納して構成されている。筐体d202は表側および裏側に長方形状の一対の主面を有しており、その一対の主面が4つの側面で結合されている。筐体d202の一つの主面には、液晶パネルや有機ELパネル等で構成された表示パネルd203の表示面が露出している。表示パネルd203の表示面は、タッチパネルを構成しており、使用者に対する入力インターフェースを提供している。
表示パネルd203は、筐体d202の一つの主面の大部分を占める長方形形状に形成されている。表示パネルd203の一つの短辺に沿うように、操作ボタンd204が配置されている。この実施形態では、複数(3つ)の操作ボタンd204が表示パネルd203の短辺に沿って配列されている。使用者は、操作ボタンd204およびタッチパネルを操作することによって、スマートフォンd201に対する操作を行い、必要な機能を呼び出して実行させることができる。
表示パネルd203の別の一つの短辺の近傍には、スピーカd205が配置されている。スピーカd205は、電話機能のための受話口を提供するとともに、音楽データ等を再生するための音響化ユニットとしても用いられる。一方、操作ボタンd204の近くには、筐体d202の一つの側面にマイクロフォンd206が配置されている。マイクロフォンd206は、電話機能のための送話口を提供するほか、録音用のマイクロフォンとして用いることもできる。
図110は、筐体d202の内部に収容された電子回路アセンブリd210の構成を示す図解的な平面図である。電子回路アセンブリd210は、配線基板d211と、配線基板d211の実装面に実装された回路部品とを含む。複数の回路部品は、複数の集積回路素子(IC)d212−d220と、複数のチップ部品とを含む。複数のICは、伝送処理ICd212、ワンセグTV受信ICd213、GPS受信ICd214、FMチューナICd215、電源ICd216、フラッシュメモリd217、マイクロコンピュータd218、電源ICd219およびベースバンドICd220を含む。複数のチップ部品(第4参考例のチップ部品に相当する)は、チップインダクタd221,d225,d235、チップ抵抗器d222,d224,d233、チップキャパシタd227,d230,d234、およびチップダイオードd228,d231を含む。
伝送処理ICd212は、表示パネルd203に対する表示制御信号を生成し、かつ表示パネルd203の表面のタッチパネルからの入力信号を受信するための電子回路を内蔵している。表示パネルd203との接続のために、伝送処理ICd212には、フレキシブル配線209が接続されている。
ワンセグTV受信ICd213は、ワンセグ放送(携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)の電波を受信するための受信機を構成する電子回路を内蔵している。ワンセグTV受信ICd213の近傍には、複数のチップインダクタd221と、複数のチップ抵抗器d222とが配置されている。ワンセグTV受信ICd213、チップインダクタd221およびチップ抵抗器d222は、ワンセグ放送受信回路d223を構成している。チップインダクタd221およびチップ抵抗器d222は、正確に合わせ込まれたインダクタンスおよび抵抗をそれぞれ有し、ワンセグ放送受信回路d223に高精度な回路定数を与える。
GPS受信ICd214は、GPS衛星からの電波を受信してスマートフォンd201の位置情報を出力する電子回路を内蔵している。
FMチューナICd215は、その近傍において配線基板d211に実装された複数のチップ抵抗器d224および複数のチップインダクタd225とともに、FM放送受信回路d226を構成している。チップ抵抗器d224およびチップインダクタd225は、正確に合わせ込まれた抵抗値およびインダクタンスをそれぞれ有し、FM放送受信回路d226に高精度な回路定数を与える。
電源ICd216の近傍には、複数のチップキャパシタd227および複数のチップダイオードd228が配線基板d211の実装面に実装されている。電源ICd216は、チップキャパシタd227およびチップダイオードd228とともに、電源回路d229を構成している。
フラッシュメモリd217は、オペレーティングシステムプログラム、スマートフォンd201の内部で生成されたデータ、通信機能によって外部から取得したデータおよびプログラムなどを記録するための記憶装置である。
マイクロコンピュータd218は、CPU、ROMおよびRAMを内蔵しており、各種の演算処理を実行することにより、スマートフォンd201の複数の機能を実現する演算処理回路である。より具体的には、マイクロコンピュータd218の働きにより、画像処理や各種アプリケーションプログラムのための演算処理が実現されるようになっている。
電源ICd219の近くには、複数のチップキャパシタd230および複数のチップダイオードd231が配線基板d211の実装面に実装されている。電源ICd219は、チップキャパシタd230およびチップダイオードd231とともに、電源回路d232を構成している。
ベースバンドICd220の近くには、複数のチップ抵抗器d233、複数のチップキャパシタd234、および複数のチップインダクタd235が、配線基板d211の実装面に実装されている。ベースバンドICd220は、チップ抵抗器d233、チップキャパシタd234およびチップインダクタd235とともに、ベースバンド通信回路d236を構成している。ベースバンド通信回路d236は、電話通信およびデータ通信のための通信機能を提供する。
このような構成によって、電源回路d229,d232によって適切に調整された電力が、伝送処理ICd212、GPS受信ICd214、ワンセグ放送受信回路d223、FM放送受信回路d226、ベースバンド通信回路d236、フラッシュメモリd217およびマイクロコンピュータd218に供給される。マイクロコンピュータd218は、伝送処理ICd212を介して入力される入力信号に応答して演算処理を行い、伝送処理ICd212から表示パネルd203に表示制御信号を出力して表示パネルd203に各種の表示を行わせる。
タッチパネルまたは操作ボタンd204の操作によってワンセグ放送の受信が指示されると、ワンセグ放送受信回路d223の働きによってワンセグ放送が受信される。そして、受信された画像を表示パネルd203に出力し、受信された音声をスピーカd205から音響化させるための演算処理が、マイクロコンピュータd218によって実行される。
また、スマートフォンd201の位置情報が必要とされるときには、マイクロコンピュータd218は、GPS受信ICd214が出力する位置情報を取得し、その位置情報を用いた演算処理を実行する。
さらに、タッチパネルまたは操作ボタンd204の操作によってFM放送受信指令が入力されると、マイクロコンピュータd218は、FM放送受信回路d226を起動し、受信された音声をスピーカd205から出力させるための演算処理を実行する。
フラッシュメモリd217は、通信によって取得したデータの記憶や、マイクロコンピュータd218の演算や、タッチパネルからの入力によって作成されたデータを記憶するために用いられる。マイクロコンピュータd218は、必要に応じて、フラッシュメモリd217に対してデータを書き込み、またフラッシュメモリd217からデータを読み出す。
電話通信またはデータ通信の機能は、ベースバンド通信回路d236によって実現される。マイクロコンピュータd218は、ベースバンド通信回路d236を制御して、音声またはデータを送受信するための処理を行う。
<第5参考例に係る発明>
(1)第5参考例に係る発明の特徴
たとえば、第5参考例に係る発明の特徴は、以下のE1〜E16である。
(E1)基板の表面上に設定した複数のチップ部品領域にそれぞれ素子を形成する工程と、前記複数のチップ部品領域の境界領域をエッチングすることによって、前記基板の表面から所定の深さの第1溝を形成する工程と、ダイシングソーによって、前記第1溝の底面から所定深さの第2溝を形成する工程と、前記基板の裏面を前記第2溝に到達するまで研削して、前記基板を複数のチップ部品に分割する工程とを含む、チップ部品の製造方法。
この方法によれば、エッチングによって形成された第1溝の深さが一様でなくでも、ダイシングソーによって第2溝を形成すれば、第1溝および第2溝の全体の深さ(基板の表面から第2溝の底までの深さ)は一様になる。そのため、基板の裏面を研削してチップ部品を個片化するときに、基板から分離されるまでのチップ部品間の時間差を少なくして各チップ部品をほぼ同時に基板から分離することができる。これにより、先に分離されたチップ部品が基板と衝突を繰り返すことによってチップ部品にチッピングが生じるといった不具合を抑制できる。また、チップ部品の表面側の角部は、エッチングで形成された第1溝によって区画されているので、当該角部では、ダイシングソーによって区画される場合と比べて、チッピングが生じにくい。以上の結果、チップ部品の個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できる。また、第1溝および第2溝の両方をエッチングによって形成する場合に比べて、チップ部品の個片化にかかる時間を短縮して、チップ部品の生産性を向上することもできる。
(E2)前記ダイシングソーが、前記第1溝の幅よりも小さい幅を有している、E1に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、ダイシングソーによって形成された第2溝の幅は、第1溝の幅よりも小さくなり、第2溝は、第1溝の内側に位置する。そのため、ダイシングソーによって第2溝を形成するときに、ダイシングソーが第1溝の幅を広げてしまうことはない。よって、第1溝によって区画されるはずのチップ部品の表面側の角部がダイシングソーによって区画されてしまって当該角部にチッピングが生じることを確実に抑制できる。
(E3)前記エッチングがプラズマエッチングである、E1または2に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、第1溝を高精度に形成することができる。
(E4)前記素子を形成する工程が、抵抗体を形成する工程を含み、前記チップ部品がチップ抵抗器である、E1〜E3のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できるチップ抵抗器を製造することができる。
(E5)前記抵抗体を形成する工程が、前記基板の表面上に抵抗体膜を形成する工程と、前記抵抗体膜に接するように配線膜を形成する工程と、前記抵抗体膜および前記配線膜をパターニングすることにより複数の前記抵抗体を形成する工程とを含み、前記素子を外部接続するための外部接続電極を前記基板上に形成する工程と、前記複数の抵抗体を前記外部接続電極に切り離し可能にそれぞれ接続する複数のヒューズを前記基板上に形成する工程とをさらに含む、E4に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品(チップ抵抗器)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(E6)前記素子を形成する工程が、キャパシタ素子を形成する工程を含み、前記チップ部品がチップコンデンサである、E1〜E3のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できるチップコンデンサを製造することができる。
(E7)前記キャパシタ素子を形成する工程が、前記基板の表面上に容量膜を形成する工程と、前記容量膜に接する電極膜を形成する工程と、前記電極膜を複数の電極膜部分に分割することにより、前記複数の電極膜部分に対応した複数のキャパシタ要素を形成する工程と、前記素子を外部接続するための外部接続電極を前記基板上に形成する工程と、前記複数のキャパシタ要素を前記外部接続電極に切り離し可能にそれぞれ接続する複数のヒューズを前記基板上に形成する工程とをさらに含む、E6に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、チップ部品(チップコンデンサ)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(E8)前記素子を形成する工程が、インダクタ素子を形成する工程を含み、前記チップ部品がチップインダクタである、E1〜E3のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できるチップインダクタを製造することができる。
(E9)前記素子を形成する工程が、ダイオード素子を形成する工程を含み、前記チップ部品がチップダイオードである、E1〜E3のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できるチップダイオードを製造することができる。
(E10)前記基板の裏面を研削した後の当該基板の厚さが150μm〜400μmである、E1〜E9のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、個片化されたチップ部品における基板の厚さが150μm〜400μmと比較的大きい場合であっても、エッチングによって第1溝を形成し、ダイシングソーによって第2溝を形成してから基板の裏面を研削することによって、チップ部品の個片化にかかる時間を短縮して、チップ部品の生産性を向上することができる。
(E11)表面および裏面を有する基板と、基板の表面上に形成された複数の素子要素と、前記基板の表面上に形成された外部接続電極と、前記基板の表面上に形成され、前記複数の素子要素を前記外部接続電極にそれぞれ切断可能に接続する複数のヒューズとを含み、前記基板の側面が、不規則パターンの粗面領域を前記表面側に有し、筋状パターン領域を前記基板の裏面側に有している、チップ部品。
この構成に関し、レジストパターンを用いたエッチングによって基板の表面から第1溝を形成した後に、ダイシングソーによって第1溝の底面から第2溝を形成して基板の裏面を研削することによって、基板を溝(第1溝および第2溝)において複数のチップ部品に分割する。そうすると、分割された各チップ部品の基板の側面では、第1溝によって形成された表面側が、不規則パターンの粗面領域となり、第2溝によって形成された裏面側が、筋状パターン領域となる。
このようにエッチングによって第1溝を形成してからダイシングソーによって第2溝を形成する場合には、エッチングによって形成された第1溝の深さが一様でなくでも、ダイシングソーによって第2溝を形成すれば、第1溝および第2溝の全体の深さ(基板の表面から第2溝の底までの深さ)は一様になる。そのため、基板の裏面を研削してチップ部品を個片化するときに、基板から分離されるまでのチップ部品間の時間差を少なくして各チップ部品をほぼ同時に基板から分離することができる。これにより、先に分離されたチップ部品が基板と衝突を繰り返すことによってチップ部品にチッピングが生じるといった不具合を抑制できる。また、チップ部品の表面側の角部は、エッチングで形成された第1溝によって区画されているので、当該角部では、ダイシングソーによって区画される場合と比べて、チッピングが生じにくい。以上の結果、チップ部品の個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できる。また、第1溝および第2溝の両方をエッチングによって形成する場合に比べて、チップ部品の個片化にかかる時間を短縮して、チップ部品の生産性を向上することもできる。
また、このチップ部品では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、素子における複数の素子要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、素子の電気的特性が様々なチップ部品を共通の設計で実現することができる。
(E12)前記筋状パターン領域が前記粗面領域よりも前記基板の外方にはみ出しており、前記粗面領域と前記筋状パターン領域との間に段差が形成されている、E11に記載のチップ部品。
この場合、当該段差が形成されるためには、前述した第2溝を形成するためのダイシングソーが、第1溝の幅よりも小さい幅を有するので、ダイシングソーによって形成された第2溝の幅は、第1溝の幅よりも小さくなり、第2溝は、第1溝の内側に位置する。そのため、ダイシングソーによって第2溝を形成するときに、ダイシングソーが第1溝の幅を広げてしまうことはない。よって、第1溝によって区画されるはずのチップ部品の表面側の角部がダイシングソーによって区画されてしまって当該角部にチッピングが生じることを確実に抑制できる。
(E13)前記素子要素が、前記基板の表面上に形成された抵抗体膜と、前記抵抗体膜に接して積層された配線膜とを含む抵抗体であり、前記チップ部品がチップ抵抗器である、E11またはE12に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップ抵抗器)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(E14)前記素子要素が、前記基板の表面上に形成された容量膜と、前記容量膜に接して形成された電極膜とを含むキャパシタ要素であり、前記チップ部品がチップコンデンサである、E11またはE12に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップコンデンサ)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(E15)前記素子要素が、前記基板の表面上に形成された多層配線中に設けられたインダクタ要素を含み、前記チップ部品がチップインダクタである、E11または12に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップインダクタ)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現することができる。
(E16)前記素子要素が、ダイオード要素であり、前記チップ部品がチップダイオードである、E11またはE12に記載のチップ部品。
この構成によれば、このチップ部品(チップダイオード)では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現することができる。
(2)第5参考例に係る発明の実施形態
以下では、第5参考例の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図111〜図134で示した符号は、これらの図面でのみ有効であり、他の実施形態に使用されていても、当該他の実施形態の符号と同じ要素を示すものではない。
図111(a)は、第5参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図であり、図111(b)は、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態を示す模式的な断面図である。
このチップ抵抗器e1は、微小なチップ部品であり、図111(a)に示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器e1の平面形状は、矩形である。チップ抵抗器e1の寸法に関し、たとえば、長さL(長辺e81の長さ)が約0.6mmであり、幅W(短辺e82の長さ)が約0.3mmであり、厚さTが約0.2mmである。
このチップ抵抗器e1は、基板上に多数個のチップ抵抗器e1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器e1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器e1は、チップ抵抗器e1の本体を構成する基板e2と、一対の外部接続電極となる第1接続電極e3および第2接続電極e4と、第1接続電極e3および第2接続電極e4によって外部接続される素子e5とを主に備えている。
基板e2は、略直方体のチップ形状である。基板e2において、図111(a)における上面は、表面e2Aである。表面e2Aは、基板e2において素子e5が形成される面(素子形成面)であり、略長方形状である。基板e2の厚さ方向において表面e2Aとは反対側の面は、裏面e2Bである。表面e2Aと裏面e2Bとは、ほぼ同形状であり、互いに平行である。ただし、裏面e2Bは、表面e2Aよりも大きい。そのため、表面e2Aに直交する方向から見た平面視において、表面e2Aは、裏面e2Bの内側におさまる。表面e2Aにおける一対の長辺e81および短辺e82によって区画された矩形状の端縁を、縁部e85ということにし、裏面e2Bにおける一対の長辺e81および短辺e82によって区画された矩形状の端縁を、縁部e90ということにする。
基板e2は、表面e2Aおよび裏面e2B以外に、複数の側面(側面e2C、側面e2D、側面e2Eおよび側面e2F)を有している。当該複数の側面は、表面e2Aおよび裏面e2Bのそれぞれに交差(詳しくは、直交)して延びて、表面e2Aおよび裏面e2Bの間を繋いでいる。
側面e2Cは、表面e2Aおよび裏面e2Bにおける長手方向一方側(図111(a)における左手前側)の短辺e82間に架設されていて、側面e2Dは、表面e2Aおよび裏面e2Bにおける長手方向他方側(図111(a)における右奥側)の短辺e82間に架設されている。側面e2Cおよび側面e2Dは、当該長手方向における基板e2の両端面である。側面e2Eは、表面e2Aおよび裏面e2Bにおける短手方向一方側(図111(a)における左奥側)の長辺e81間に架設されていて、側面e2Fは、表面e2Aおよび裏面e2Bにおける短手方向他方側(図111(a)における右手前側)の長辺e81間に架設されている。側面e2Eおよび側面e2Fは、当該短手方向における基板e2の両端面である。側面e2Cおよび側面e2Dのそれぞれは、側面e2Eおよび側面e2Fのそれぞれと交差(詳しくは、直交)している。
以上により、表面e2A〜側面e2Fにおいて隣り合うもの同士は、略直角を成している。
側面e2C、側面e2D、側面e2Eおよび側面e2Fのそれぞれ(以下では、「各側面」ということにする)は、表面e2A側の粗面領域Sと、裏面e2B側の筋状パターン領域Pとを有している。各側面は、粗面領域Sでは、図111(a)の細かいドットで示したように、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。各側面は、筋状パターン領域Pでは、後述するダイシングソーの研削跡をなす多数の筋(ソーマーク)Vが規則的なパターンで残っている。このように、各側面に粗面領域Sおよび筋状パターン領域Pが存在するのは、チップ抵抗器e1の製造工程によるからであり、詳しくは、追って説明する。
各側面において、粗面領域Sは、表面e2A側の略半分を占めていて、筋状パターン領域Pは、裏面e2B側の略半分を占めている。各側面において、筋状パターン領域Pが粗面領域Sよりも基板e2の外方(平面視における基板e2の外側)にはみ出ており、これにより、粗面領域Sと筋状パターン領域Pとの間に、段差Nが形成されている。段差Nは、粗面領域Sの下端縁と筋状パターン領域Pの上端縁との間をつないで表面e2Aおよび裏面e2Bと平行に延びている。各側面の段差Nはつながっていて、全体として、平面視で表面e2Aの縁部e85と裏面e2Bの縁部e90との間に位置する矩形枠体状をなしている。
このように各側面に段差Nが設けられているので、前述したように、裏面e2Bは、表面e2Aよりも大きい。
基板e2では、表面e2Aおよび側面e2C〜e2Fのそれぞれの全域(各側面では粗面領域Sおよび筋状パターン領域Pの両方)がパッシベーション膜e23で覆われている。そのため、厳密には、図111(a)では、表面e2Aおよび側面e2C〜e2Fのそれぞれの全域は、パッシベーション膜e23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。ここで、パッシベーション膜e23において、表面e2Aを覆う部分を表面被覆部e23Aといい、側面e2C〜e2Fのそれぞれを覆う部分を側面被覆部e23Bということにする。
さらに、チップ抵抗器e1は、樹脂膜e24を有している。樹脂膜e24は、パッシベーション膜e23上に形成されており、表面e2Aの全域を少なくとも覆う保護膜(保護樹脂膜)である。
パッシベーション膜e23および樹脂膜e24については、以降で詳説する。
第1接続電極e3および第2接続電極e4は、基板e2の表面e2A上において縁部e85よりも内側の領域に形成されていて、表面e2A上の樹脂膜e24から部分的に露出されている。換言すれば、樹脂膜e24は、第1接続電極e3および第2接続電極e4を露出させるように表面e2A(厳密には表面e2A上のパッシベーション膜e23)を覆っている。第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で表面e2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極e3および第2接続電極e4は、表面e2Aの長手方向に間隔を隔てて配置されており、表面e2Aの短手方向において長手である。図111(a)では、表面e2Aにおいて、側面e2C寄りの位置に第1接続電極e3が設けられ、側面e2D寄りの位置に第2接続電極e4が設けられている。
素子e5は、素子回路網であって、基板e2上(表面e2A上)、詳しくは、基板e2の表面e2Aにおける第1接続電極e3と第2接続電極e4との間の領域に形成されていて、パッシベーション膜e23(表面被覆部e23A)および樹脂膜e24によって上から被覆されている。この実施形態の素子e5は、抵抗e56である。抵抗e56は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを表面e2A上でマトリックス状に配列した抵抗回路網によって構成されている。各抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子e5は、後述する配線膜e22に電気的に接続されていて、配線膜e22を介して第1接続電極e3と第2接続電極e4とに電気的に接続されている。
図111(b)に示すように、第1接続電極e3および第2接続電極e4を実装基板e9に対向させて、半田e13によって、実装基板e9における1対の接続端子e88に対して電気的かつ機械的に接続する。これによって、チップ抵抗器e1を実装基板e9に実装(フリップチップ接続)することができる。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極e3および第2接続電極e4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
図112は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図112を参照して、抵抗回路網である素子e5は、行方向(基板e2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板e2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子e5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板e2の表面e2Aには、抵抗回路を素子e5に対して電気的に組み込んだり、または、素子e5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズ(ヒューズ)Fが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第2接続電極e3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)のそれぞれを第2接続電極e3に対して切断可能(切り離し可能)に接続している。
図113Aは、図112に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図113Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図113AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図113Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図113AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図113A、図113Bおよび図113Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器e1は、前述した配線膜e22、パッシベーション膜e23および樹脂膜e24の他に、絶縁層e20と抵抗体膜e21とをさらに備えている(図113Bおよび図113C参照)。絶縁層e20、抵抗体膜e21、配線膜e22、パッシベーション膜e23および樹脂膜e24は、基板e2(表面e2A)上に形成されている。
絶縁層e20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁層e20は、基板e2の表面e2Aの全域を覆っている。絶縁層e20の厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜e21は、絶縁層e20上に形成されている。抵抗体膜e21は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜e21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜e21は、第1接続電極e3と第2接続電極e4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ラインe21A」という)を構成していて、抵抗体膜ラインe21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図113A参照)。
抵抗体膜ラインe21A上には、配線膜e22が積層されている。配線膜e22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜e22の厚さは、約8000Åである。配線膜e22は、抵抗体膜ラインe21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ラインe21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ラインe21Aおよび配線膜e22の電気的特徴を回路記号で示すと、図114の通りである。すなわち、図114(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ラインe21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜e22が積層された領域では、配線膜e22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜e22で抵抗体膜ラインe21Aが短絡されている。よって、図114(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ラインe21A同士は抵抗体膜e21および配線膜e22で接続されているから、図113Aに示す素子e5の抵抗回路網は、図114(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜e21および配線膜e22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子e5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ラインe21A(抵抗体膜e21)と、抵抗体膜ラインe21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜e22とを含み、配線膜e22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ラインe21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ラインe21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板e2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ラインe21A上に積層された配線膜e22は、抵抗体Rを形成するとともに、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図112参照)。
図115(a)は、図112に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、図115(b)は、図115(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図115(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜e21上に積層された配線膜e22により形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ラインe21A上に積層された配線膜e22と同じレイヤーに、配線膜e22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜e22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜e21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子e5を第1接続電極e3および第2接続電極e4に接続するための配線膜が、配線膜e22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜e22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜e22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図112および図115(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第2接続電極e3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜e22の下方にも抵抗体膜e21が形成されている(図115(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜e22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜e22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜e21)の一部と抵抗体膜e21上の配線膜e22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図116は、第5参考例の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図116を参照して、素子e5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極e3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図117および図118においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図115(a)参照)を介して直列に接続されている。
図116に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子e5は、第1接続電極e3および第2接続電極e4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極e3および第2接続電極e4が接続されたチップ抵抗器e1が構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子e5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器e1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子e5に組み込まれることになる。よって、素子e5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子e5(抵抗e56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器e1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図117は、第5参考例の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図116に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子e5を構成する代わりに、図117に示すように素子e5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極e3および第2接続電極e4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子e5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子e5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子e5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器e1全体の抵抗値を調整することができる。
図118は、第5参考例のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図118に示す素子e5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。従って、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子e5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。従って、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり、チップ抵抗器e1では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器e1を共通の設計で実現することができる。
以上のように、このチップ抵抗器e1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図119は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図119を参照して、チップ抵抗器e1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図119では、前述した素子e5については簡略化して示しているとともに、基板e2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述したパッシベーション膜e23および樹脂膜e24について説明する。
パッシベーション膜e23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。パッシベーション膜e23は、前述したように、表面e2Aの全域に亘って設けられた表面被覆部e23Aと、側面e2C〜e2Fのそれぞれにおける全域に亘って設けられた側面被覆部e23Bとを含む。表面被覆部e23Aは、抵抗体膜e21および抵抗体膜e21上の各配線膜e22(つまり、素子e5)を表面(図119の上側)から被覆していて、素子e5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、表面被覆部e23Aは、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜e22も覆っている(図115(b)参照)。また、表面被覆部e23Aは、素子e5(配線膜e22および抵抗体膜e21)に接しており、抵抗体膜e21以外の領域では絶縁層e20にも接している。これにより、表面被覆部e23Aは、表面e2A全域を覆って素子e5および絶縁層e20を保護する保護膜として機能している。また、表面e2Aでは、表面被覆部e23Aによって、抵抗体R間における配線膜e22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ラインe21A間における短絡)が防止されている。
一方、側面e2C〜e2Fのそれぞれに設けられた側面被覆部e23Bは、側面e2C〜e2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。側面被覆部e23Bは、側面e2C〜e2Fのそれぞれにおいて、粗面領域Sおよび筋状パターン領域Pを全て覆っており、粗面領域Sと筋状パターン領域Pとの間の段差Nも漏れなく覆っている。
また、側面e2C〜e2Fのそれぞれと表面e2Aとの境界は、前述した縁部e85であるが、パッシベーション膜e23は、当該境界(縁部e85)も覆っている。パッシベーション膜e23において、縁部e85を覆っている部分(縁部e85に重なっている部分)を端部e23Cということにする。
樹脂膜e24は、パッシベーション膜e23とともにチップ抵抗器e1の表面e2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜e24は、平面視における表面e2Aにおいて第1接続電極e3および第2接続電極e4以外の領域を全て覆うように、パッシベーション膜e23の表面被覆部e23A(前述した端部e23Cも含む)上に形成されている。そのため、樹脂膜e24は、表面e2A上の表面被覆部e23Aの表面(表面被覆部e23Aに被覆された素子e5やヒューズFも含む)の全域を被覆している。一方で、樹脂膜e24は、側面e2C〜e2Fを覆っていない。そのため、樹脂膜e24の外周における縁24Aは、平面視において側面被覆部e23Bと整合しており、縁24Aにおける樹脂膜e24の側端面e24Bは、側面被覆部e23B(厳密には、各側面の粗面領域Sにおける側面被覆部e23B)と面一となって、基板e2の厚さ方向に延びている。樹脂膜e24の表面e24Cは、基板e2の表面e2Aと平行となるように平坦に延びている。チップ抵抗器e1における基板e2の表面e2A側に応力がかかった場合に、樹脂膜e24の表面e24C(特に、第1接続電極e3と第2接続電極e4との間の領域の表面e24C)が、応力分散面として機能して、当該応力を分散する。
また、樹脂膜e24において、平面視で離れた2つの位置には、開口e25が1つずつ形成されている。各開口e25は、樹脂膜e24およびパッシベーション膜e23(表面被覆部e23A)を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通する貫通孔である。そのため、開口e25は、樹脂膜e24だけでなくパッシベーション膜e23にも形成されている。各開口e25からは、配線膜e22の一部が露出されている。配線膜e22において各開口e25から露出された部分は、外部接続用のパッド領域e22A(パッド)となっている。各開口e25は、表面被覆部e23Aでは、表面被覆部e23Aの厚さ方向(基板e2の厚さ方向と同じ)に沿って延びていて、樹脂膜e24では、表面被覆部e23A側から樹脂膜e24の表面e24Cに向かうのに従って基板e2の長手方向(図119における左右方向)に徐々に広がっている。そのため、樹脂膜e24において開口e25を区画する区画面e24Dは、基板e2の厚さ方向に対して交差する傾斜面になっている。なお、樹脂膜e24において各開口e25を縁取る部分には、開口e25を前記長手方向から区画する1対の区画面e24Dが存在するが、これらの区画面e24Dの間隔は、表面被覆部e23A側から樹脂膜e24の表面e24Cに向かうのに従って次第に広がっている。また、樹脂膜e24において各開口e25を縁取る部分には、開口e25を基板e2の短手方向から区画する別の1対の区画面e24Dが存在するが(図119にはあらわれていない)、これらの区画面e24Dの間隔も、表面被覆部e23A側から樹脂膜e24の表面e24Cに向かうのに従って次第に広がっていてもよい。
2つの開口e25のうち、一方の開口e25は、第1接続電極e3によって埋め尽くされ、他方の開口e25は、第2接続電極e4によって埋め尽くされている。第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれは、樹脂膜e24の表面e24Cに向かって広がる開口e25に応じて、樹脂膜e24の表面e24Cに向かって広がっている。そのため、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの縦断面(基板e2の長手方向および厚さ方向に沿う平面で切断したときの切断面)は、基板e2の表面e2A側に上底を有して樹脂膜e24の表面e24C側に下底を有する台形状をなしている。また、当該下底が第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれにおける表面e3A,e4Aとなるのだが、表面e3A,e4Aのそれぞれでは、開口e25側の端部が基板e2の表面e2A側へ湾曲している。なお、開口e25が樹脂膜e24の表面e24Cに向かって広がっていない場合(開口e25を区画する区画面e24Dが基板e2の厚さ方向に延びている)には、表面e3A,e4Aのそれぞれは、開口e25側の端部を含む全ての領域において、基板e2の表面e2Aに沿った平坦面になる。
また、前述したように、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれは、Ni、PdおよびAuをこの順番で表面e2A上に積層することによって構成されているので、Ni層e33、Pd層e34およびAu層e35を表面e2A側からこの順で有している。そのため、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれにおいて、Ni層e33とAu層e35との間にPd層e34が介装されている。第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれにおいて、Ni層e33は各接続電極の大部分を占めており、Pd層e34およびAu層e35は、Ni層e33に比べて格段に薄く形成されている。Ni層e33は、チップ抵抗器e1が実装基板e9に実装された際に(図111(b)参照)、各開口e25のパッド領域e22Aにおける配線膜e22のAlと、前述した半田e13とを中継する役割を有している。
第1接続電極e3および第2接続電極e4では、Ni層e33の表面が、Pd層e34を介してAu層e35によって覆われているので、Ni層e33が酸化することを防止できる。また、Au層e35を薄くすることによってAu層e35に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層e33とAu層e35との間に介装されたPd層e34が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層e33が外部に露出されて酸化することを防止できる。
そして、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれでは、Au層e35が、表面e3A,e4Aとして、最表面に露出しており、樹脂膜e24の表面e24Aにおいて開口e25から外部を臨んでいる。第1接続電極e3は、一方の開口e25を介して、この開口e25におけるパッド領域e22Aにおいて配線膜e22に対して電気的に接続されている。第2接続電極e4は、他方の開口e25を介して、この開口e25におけるパッド領域e22Aにおいて配線膜e22に対して電気的に接続されている。第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれでは、Ni層e33がパッド領域e22Aに対して接続されている。これにより、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれは、素子e5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜e22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗e56)、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、開口e25が形成された樹脂膜e24およびパッシベーション膜e23は、開口e25から第1接続電極e3および第2接続電極e4を露出させた状態で表面e2Aを覆っている。そのため、樹脂膜e24の表面e24Cにおいて開口e25に露出された第1接続電極e3および第2接続電極e4を介して、チップ抵抗器e1と実装基板e9との間における電気的接続を達成することができる(図111(b)参照)。
ここで、樹脂膜e24の厚み、つまり、基板e2の表面e2Aからの樹脂膜e24の表面e24Cまでの高さHは、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの(表面e2Aからの)高さJ以上である。図119では、第1の実施形態として、高さHと高さJとは同じになっていて、樹脂膜e24の表面e24Cと、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの表面e3A,e4Aとが面一になっている。
図120A〜図120Hは、図119に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図120Aに示すように、基板e2の元となる基板e30を用意する。この場合、基板e30の表面e30Aは、基板e2の表面e2Aであり、基板e30の裏面e30Bは、基板e2の裏面e2Bである。
そして、基板e30の表面e30Aを熱酸化して、表面e30AにSiO2等からなる絶縁層e20を形成し、絶縁層e20上に素子e5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜e22)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁層e20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜e21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜e21に接するように抵抗体膜e21の上にアルミニウム(Al)の配線膜e22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜e21および配線膜e22を選択的に除去してパターニングし、図113Aに示すように、平面視で、抵抗体膜e21が積層された一定幅の抵抗体膜ラインe21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ラインe21Aおよび配線膜e22が切断された領域も形成されるとともに、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図112参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ラインe21Aの上に積層された配線膜e22を選択的に除去してパターニングする。この結果、抵抗体膜ラインe21A上に一定間隔Rをあけて配線膜e22が積層された構成の素子e5(換言すれば複数の抵抗体R)が得られる。このように、抵抗体膜e21に配線膜e22を積層して抵抗体膜e21および配線膜e22をパターニングするだけで、複数の抵抗体RとともにヒューズFも一括して簡易に形成することができる。なお、抵抗体膜e21および配線膜e22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子e5全体の抵抗値を測定してもよい。
図120Aを参照して、素子e5は、1枚の基板e30に形成するチップ抵抗器e1の数に応じて、基板e30の表面e30A上における多数の箇所に形成される。基板e30において(1つの)素子e5(前述した抵抗e56)が形成された1つの領域をチップ部品領域Yというと、基板e30の表面e30A上には、抵抗e56をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子e5)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器e1(図119参照)を平面視したものと一致する。そして、基板e30の表面e30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板e30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器e1の大量生産が可能になる。
次いで、図120Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜e45を、基板e30の表面e30Aの全域に亘って形成する。絶縁膜e45は、絶縁層e20および絶縁層e20上の素子e5(抵抗体膜e21や配線膜e22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜e45は、前述したトリミング対象領域X(図112参照)における配線膜e22も覆っている。また、絶縁膜e45は、基板e30の表面e30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面e30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜e45は、表面e30A(表面e30A上の素子e5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次いで、図120Bに示すように、絶縁膜e45を全て覆うように、基板e30の表面e30Aの全域に亘ってレジストパターンe41を形成する。レジストパターンe41には、開口e42が形成されている。
図121は、図120Bの工程において第1溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図121を参照して、レジストパターンe41の開口e42は、多数のチップ抵抗器e1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器e1の輪郭の間の領域(図121においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口e42の全体形状は、互いに直交する直線部分e42Aおよびe42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターンe41では、開口e42において互いに直交する直線部分e42Aおよびe42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分e42Aおよびe42Bの交差部分e43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図120Bを参照して、レジストパターンe41をマスクとするプラズマエッチングにより、絶縁膜e45、絶縁層e20および基板e30のそれぞれを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子e5(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおいて基板e30の材料がエッチング(除去)される。その結果、平面視においてレジストパターンe41の開口e42と一致する位置(境界領域Z)には、絶縁膜e45および絶縁層e20を貫通して基板e30の表面e30Aから基板e30の厚さ途中まで到達する所定深さの第1溝e44が形成される。第1溝e44は、互いに対向する1対の側面e44Aと、当該1対の側面e44Aの下端(基板e30の裏面e30B側の端)の間を結ぶ底面e44Bとによって区画されている。基板e30の表面e30Aを基準とした第1溝e44の深さは、完成したチップ抵抗器e1の厚さT(図111(a)参照)の半分程度であり、第1溝e44の幅(対向する側面e44Aの間隔)Mは、20μm前後であって、深さ方向全域に亘って一定になっている。エッチングの中でも、特にプラズマエッチングを用いることによって、第1溝e44を高精度に形成することができる。
基板e30における第1溝e44の全体形状は、平面視でレジストパターンe41の開口e42(図121参照)と一致する格子状になっている。そして、基板e30の表面e30Aでは、各素子e5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを第1溝e44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板e30において素子e5が形成された部分は、チップ抵抗器e1の半製品e50である。基板e30の表面e30Aでは、第1溝e44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品e50が1つずつ位置していて、これらの半製品e50は、行列状に整列配置されている。
図120Bに示すように第1溝e44が形成された後、レジストパターンe41が除去され、図120Cに示すように、ダイシングソーe47を有するダイシングマシン(図示せず)が稼動される。ダイシングソーe47は、円板形状の砥石であって、その周端面に切断歯部が形成されている。ダイシングソーe47の幅Q(厚み)は、第1溝e44の幅Mよりも小さい。ここで、第1溝e44の中央位置(互いに対向する1対の側面e44Aから等距離にある位置)に、ダイシングラインUが設定される。ダイシングソーe47は、その厚さ方向における中央位置47Aが平面視でダイシングラインUに一致した状態で、第1溝e44内をダイシングラインUに沿って移動し、その際、第1溝e44の底面e44Bから基板e30を削る。ダイシングソーe47の移動が完了すると、基板e30には、第1溝e44の底面e44Bから掘り下がった所定深さの第2溝e48が形成される。
第2溝e48は、第1溝e44の底面e44Bから連続して、所定深さで基板e30の裏面e30B側へ窪んでいる。第2溝e48は、互いに対向する1対の側面e48Aと、当該1対の側面e48Aの下端(基板e30の裏面e30B側の端)の間を結ぶ底面e48Bとによって区画されている。第1溝e44の底面e44Bを基準とした第2溝e48の深さは、完成したチップ抵抗器e1の厚さTの半分程度であり、第2溝e48の幅(対向する側面e48Aの間隔)は、ダイシングソーe47の幅Qと同じであって、深さ方向全域に亘って一定になっている。第1溝e44および第2溝e48において、基板e30の厚さ方向に隣り合う側面e44Aと側面e48Aとの間には、当該厚さ方向に直交する方向(基板e30の表面e30Aに沿う方向)に延びる段差e49が形成されている。そのため、連続している第1溝e44および第2溝e48のまとまりは、裏面e30B側へ向けて細くなる凸状になっている。側面e44Aが、完成したチップ抵抗器e1における各側面(側面e2C〜e2Fのそれぞれ)の粗面領域Sとなり、側面e48Aが、チップ抵抗器e1における各側面の筋状パターン領域Pとなり、段差e49が、チップ抵抗器e1における各側面の段差Nとなる。
ここで、エッチングによって第1溝e44を形成することによって、各側面e44Aおよび底面e44Bは、不規則パターンのざらざらした粗面になっている。一方、ダイシングソーe47によって第2溝e48を形成することによって、各側面e48Aには、ダイシングソーe47の研削跡をなす多数の筋が規則的なパターンで残っている。この筋は、側面e48Aをエッチングしたとしても完全に消すことができず、完成したチップ抵抗器e1では、前述した筋Vとなる(図111(a)参照)。
次いで、図120Dに示すようにマスクe65を用いたエッチングによって、絶縁膜e45を選択的に除去する。マスクe65では、絶縁膜e45において平面視で各パッド領域e22A(図119参照)に一致する部分に、開口e66が形成されている。これにより、エッチングによって、絶縁膜e45において開口e66と一致する部分が除去され、当該部分には、開口e25が形成される。これにより、絶縁膜e45は、開口e25において各パッド領域e22Aを露出させるように形成されたことになる。1つの半製品e50につき、開口e25は2つ形成される。
各半製品e50において、絶縁膜e45に2つの開口e25を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブe70を各開口e25のパッド領域e22Aに接触させて、素子e5の全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜e45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図112参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜e22をレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品e50(換言すれば、チップ抵抗器e1)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜e45が素子e5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子e5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜e45がヒューズF(抵抗体膜e21)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。
その後、CVD法によって絶縁膜e45上にSiNを形成し、絶縁膜e45を厚くする。このとき、図120Eに示すように、第1溝e44および第2溝e48の内周面(前述した側面e44A、底面e44B、側面e48Aおよび底面e48B)の全域にも絶縁膜e45が形成される。そのため、絶縁膜e45は、前述した段差e49上にも形成されている。第1溝e44および第2溝e48のそれぞれの内周面における絶縁膜e45(図120Eに示された状態の絶縁膜e45)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜e45の一部は、各開口e25に入り込んで開口e25を塞いでいる。
その後、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板e30に対して、絶縁膜e45の上からスプレー塗布して、図120Eに示すように感光性樹脂の樹脂膜e46を形成する。この際、当該液体が第1溝e44および第2溝e48内に入り込まないように、平面視で第1溝e44および第2溝e48だけを覆うパターンを有するマスク(図示せず)越しに、当該液体が基板e30に対して塗布される。その結果、当該液状の感光性樹脂は、基板e30上だけに形成され、基板e30上において、樹脂膜e46(樹脂膜)となる。表面e30A上の樹脂膜e46の表面e46Aは、表面e30Aに沿って平坦になっている。
なお、当該液体が第1溝e44および第2溝e48内に入り込んでいないので、第1溝e44および第2溝e48内には、樹脂膜e46が形成されていない。また、感光性樹脂の液体をスプレー塗布する以外に、当該液体をスピン塗布したり、感光性樹脂からなるシートを基板e30の表面e30Aに貼り付けたりすることによって、樹脂膜e46を形成してもよい。
次いで、樹脂膜e46に熱処理(キュア処理)を施す。これにより、樹脂膜e46の厚みが熱収縮するとともに、樹脂膜e46が硬化して膜質が安定する。
次いで、図120Fに示すように、樹脂膜e46をパターニングし、表面e30A上の樹脂膜e46において平面視で配線膜e22の各パッド領域e22A(開口e25)と一致する部分を選択的に除去する。具体的には、平面視で各パッド領域e22Aに整合(一致)するパターンの開口e61が形成されたマスクe62を用いて、樹脂膜e46を、当該パターンで露光して現像する。これにより、各パッド領域e22Aの上方で樹脂膜e46が分離されて開口e25が形成される。この際、樹脂膜e46において開口e25を縁取っている部分が熱収縮し、当該部分において開口e25を区画する区画面e46Bは、基板e30の厚さ方向に対して交差する傾斜面になる。これによって、開口e25は、前述したように、樹脂膜e46の表面e46A(樹脂膜e24の表面e24Cになる)に向かうのに従って広がった状態になる。
次いで、図示しないマスクを用いたRIEによって各パッド領域e22A上の絶縁膜e45が除去されることで、各開口e25が開放されてパッド領域e22Aが露出される。
次いで、無電解めっきによって、Ni、PdおよびAuを積層することで構成されたNi/Pd/Au積層膜を各開口e25におけるパッド領域e22A上に形成することによって、図120Gに示すように、パッド領域e22A上に第1接続電極e3および第2接続電極e4を形成する。
図122は、第1接続電極および第2接続電極の製造工程を説明するための図である。
詳しくは、図122を参照して、まず、パッド領域e22Aの表面が浄化されることで、当該表面の有機物(炭素のしみ等のスマットや油脂性の汚れも含む)が除去(脱脂)される(ステップS1)。次いで、当該表面の酸化膜が除去される(ステップS2)。次いで、当該表面においてジンケート処理が実施されて、当該表面における(配線膜e22の)AlがZnに置換される(ステップS3)。次いで、当該表面上のZnが硝酸等で剥離されて、パッド領域e22Aでは、新しいAlが露出される(ステップS4)。
次いで、パッド領域e22Aをめっき液に浸けることによって、パッド領域e22Aにおける新しいAlの表面にNiめっきが施される。これにより、めっき液中のNiが化学的に還元析出されて、当該表面にNi層e33が形成される(ステップS5)。
次いで、Ni層e33を別のめっき液に浸けることによって、当該Ni層e33の表面にPdめっきが施される。これにより、めっき液中のPdが化学的に還元析出されて、当該Ni層e33の表面にPd層e34が形成される(ステップS6)。
次いで、Pd層e34をさらに別のめっき液に浸けることによって、当該Pd層e34の表面にAuめっきが施される。これにより、めっき液中のAuが化学的に還元析出されて、当該Pd層e34の表面にAu層e35が形成される(ステップS7)。これによって、第1接続電極e3および第2接続電極e4が形成され、形成後の第1接続電極e3および第2接続電極e4を乾燥させると(ステップS8)、第1接続電極e3および第2接続電極e4の製造工程が完了する。なお、前後するステップの間には、半製品e50を水で洗浄する工程が適宜実施される。また、ジンケート処理は複数回実施されてもよい。
図120Gでは、各半製品e50において第1接続電極e3および第2接続電極e4が形成された後の状態を示している。第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれでは、表面e3A,e4Aが、樹脂膜e46の表面e46Aと面一になっている。また、樹脂膜e46において開口e25を区画する区画面e46Bが前述したように傾斜しているのに応じて、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれでは、表面e3A,e4Aにおいて開口e25の縁側の端部が、基板e30の裏面e30B側へ湾曲している。そのため、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれでは、Ni層e33、Pd層e34およびAu層e35のそれぞれにおける開口e25の縁側の端部が、基板e30の裏面e30B側へ湾曲している。
以上のように、第1接続電極e3および第2接続電極e4を無電解めっきによって形成するので、第1接続電極e3および第2接続電極e4を電解めっきによって形成する場合に比べて、第1接続電極e3および第2接続電極e4についての形成工程の工程数(たとえば、電解めっきで必要となるリソグラフィ工程やレジストマスクの剥離工程等)を削減してチップ抵抗器e1の生産性を向上できる。さらに、無電解めっきの場合には、電解めっきで必要とされるレジストマスクが不要であることから、レジストマスクの位置ずれによる第1接続電極e3および第2接続電極e4についての形成位置にずれが生じないので、第1接続電極e3および第2接続電極e4の形成位置精度を向上して歩留まりを向上できる。また、樹脂膜e24から露出されたパッド領域e22Aを無電解めっきすることによって、当該パッド領域e22A上だけに第1接続電極e3および第2接続電極e4を形成することができる。
また、電解めっきの場合には、めっき液にNiやSnが含有されている場合が一般的である。そのため、第1接続電極e3および第2接続電極e4の表面e3A,e4Aに残ったSnが酸化されることによって、第1接続電極e3および第2接続電極e4と実装基板e9の接続端子e88(図111(b)参照)との接続不良が生じ得るが、無電解めっきを用いる第5参考例では、そのような問題はない。
このように第1接続電極e3および第2接続電極e4が形成されてから、第1接続電極e3および第2接続電極e4間での通電検査が行われた後に、基板e30が裏面e30Bから研削される。
具体的には、図120Hに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面e72を有する支持テープe71が、粘着面e72において、各半製品e50における第1接続電極e3および第2接続電極e4側(つまり、表面e30A)に貼着される。これにより、各半製品e50が支持テープe71に支持される。ここで、支持テープe71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品e50が支持テープe71に支持された状態で、基板e30を裏面e30B側から研削する。研削によって、裏面e30Bが第2溝e48の底面e48B(図120G参照)に到達するまで基板e30が薄型化されると、隣り合う半製品e50を連結するものがなくなるので、第1溝e44および第2溝e48を境界として基板e30が分割され、半製品e50が個別に分離してチップ抵抗器e1の完成品となる。つまり、第1溝e44および第2溝e48(換言すれば、境界領域Z)において基板e30が切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器e1が切り出される。裏面e30Bを研削した後の基板e30(基板e2)の厚さは、150μm〜400μm(150μm以上400μm以下)である。
完成した各チップ抵抗器e1では、第1溝e44の側面e44Aをなしていた部分が、基板e2の側面e2C〜e2Fのいずれかの粗面領域Sとなり、第2溝e48の側面e48Aをなしていた部分が、基板e2の側面e2C〜e2Fのいずれかの筋状パターン領域Pとなり、側面e44Aと側面e48Aとの間の段差e49が、前述した段差Nとなる。そして、完成した各チップ抵抗器e1では、裏面e30Bが裏面e2Bとなる。つまり、前述したように第1溝e44および第2溝e48を形成する工程(図120Bおよび図120C参照)は、側面e2C〜e2Fを形成する工程に含まれる。また、絶縁膜e45がパッシベーション膜e23となり、樹脂膜e46が樹脂膜e24となる。
たとえば、エッチングによって形成された第1溝e44(図120B参照)の深さが一様でなくでも、ダイシングソーe47によって第2溝e48を形成すれば(図120C参照)、第1溝e44および第2溝e48の全体の深さ(基板e30の表面e30Aから第2溝e48の底までの深さ)は一様になる。そのため、基板e30の裏面e30Bを研削してチップ抵抗器e1を個片化するときに、基板e30から分離されるまでのチップ抵抗器e1間の時間差を少なくして各チップ抵抗器e1をほぼ同時に基板e30から分離することができる。これにより、先に分離されたチップ抵抗器e1が基板e30と衝突を繰り返すことによってチップ抵抗器e1にチッピングが生じるといった不具合を抑制できる。また、チップ抵抗器e1の表面e2A側の角部(コーナー部e11)は、エッチングで形成された第1溝e44によって区画されているので、コーナー部e11では、ダイシングソーe47によって区画される場合と比べて、チッピングが生じにくい。以上の結果、チップ抵抗器e1の個片化に際してチッピングを抑制でき、かつ個片化不良が生じることを回避できる。つまり、チップ抵抗器e1の表面e2A側におけるコーナー部e11(図111(a)参照)における形状のコントロールが可能となる。また、第1溝e44および第2溝e48の両方をエッチングによって形成する場合に比べて、チップ抵抗器e1の個片化にかかる時間を短縮して、チップ抵抗器e1の生産性を向上することもできる。
特に、個片化されたチップ抵抗器e1における基板e2の厚さが150μm〜400μmと比較的大きい場合には、エッチングだけで基板e30の表面e30Aから第2溝e48の底面e48Bまで到達する溝(図120C参照)を形成するのは困難であるし、時間がかかる。しかし、このような場合であっても、エッチングおよびダイシングソーe47によるダイシングを併用して第1溝e44および第2溝e48を形成してから基板e30の裏面e30Bを研削することによって、チップ抵抗器e1の個片化にかかる時間を短縮できる。よって、チップ抵抗器e1の生産性を向上することができる。
また、ダイシングによって第2溝e48を基板e30の裏面e30Bまで到達させてしまうと(第2溝e48が基板e30を貫通するようにすると)、完成したチップ抵抗器e1では、裏面e2Bと側面e2C〜e2Fとのコーナー部にチッピングが生じ得る。しかし、第5参考例のように第2溝e48が裏面e30Bまで到達しないようにハーフダイシングしてから(図120C参照)、裏面e30Bを研磨すれば、裏面e2Bと側面e2C〜e2Fとのコーナー部にチッピングが生じにくい。
また、エッチングだけで基板e30の表面e30Aから第2溝e48の底面e48Bまで到達する溝を形成すると、エッチングレートのばらつきによって、完成後の溝の側面は基板e2の厚さ方向に沿わず、溝の断面が矩形状になりにくい。つまり、溝の側面にばらつきが生じる。しかし、第5参考例のようにエッチングおよびダイシングを併用することによって、エッチングだけの場合に比べて、第1溝e44および第2溝e48の全体の溝側面(側面e44Aおよび側面e48Aのそれぞれ)におけるばらつきを低減して、当該溝側面を基板e2の厚さ方向に沿わせることができる。
また、ダイシングソーe47の幅Qが第1溝e44の幅Mよりも小さいので、ダイシングソーe47によって形成された第2溝e48の幅Qは、第1溝e44の幅Mよりも小さくなり、第2溝e48は、第1溝e44の内側に位置する(図120C参照)。そのため、ダイシングソーe47によって第2溝e48を形成するときに、ダイシングソーe47が第1溝e44の幅を広げてしまうことはない。よって、第1溝e44によって区画されるはずのチップ抵抗器e1の表面e2A側のコーナー部e11がダイシングソーe47によって区画されてしまってコーナー部e11にチッピングが生じることを確実に抑制できる。
なお、第2溝e48を形成してから裏面e30Bを研削することでチップ抵抗器e1を個片化しているが、第2溝e48を形成する前に、裏面e30Bを先に研削しておいてから、第2溝e48をダイシングで形成してもよい。また、基板e30を裏面e30B側から第2溝e48の底面e48Bまでエッチングすることによってチップ抵抗器e1を切り出すことも想定される。
以上のように、第1溝e44および第2溝e48を形成してから基板e30を裏面e30B側から研削すれば、基板e30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器e1(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器e1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器e1の製造時間の短縮によってチップ抵抗器e1の生産性の向上を図ることができる。ちなみに、直径が8インチの基板e30を用いると50万個程度のチップ抵抗器e1を切り出すことができる。
つまり、チップ抵抗器e1のチップサイズが小さくても、このように先に第1溝e44および第2溝e48を形成しておいてから基板e30を裏面e30Bから研削することによって、チップ抵抗器e1を一度に個片化することができる。
また、エッチングによって第1溝e44を高精度に形成できるので、個々のチップ抵抗器e1において第1溝e44によって区画された側面e2C〜e2Fの粗面領域S側では、外形寸法精度の向上を図ることができる。特に、プラズマエッチングを用いれば、第1溝e44を一層高精度に形成できる。また、レジストパターンe41(図121参照)に応じて、第1溝e44の間隔を微細化できるので、隣り合う第1溝e44の間に形成されるチップ抵抗器e1の小型化を図ることができる。また、エッチングの場合には、チップ抵抗器e1の側面e2C〜e2Fの粗面領域Sにおいて隣り合うもの同士のコーナー部e11(図111(a)参照)にチッピングが生じることを低減でき、チップ抵抗器e1の外観の向上を図ることができる。
なお、完成したチップ抵抗器e1における基板e2の裏面e2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面e2Bを綺麗にしてもよい。
図120Hに示すように完成したチップ抵抗器e1は、支持テープe71から引き剥がされた後に、所定のスペースまで搬送されて当該スペースで保管される。
チップ抵抗器e1を実装基板e9(図111(b)参照)に実装する場合、自動実装機の吸着ノズルe91(図111(b)参照)にチップ抵抗器e1の裏面e2Bを吸着してから吸着ノズルe91を動かすことによって、チップ抵抗器e1を搬送する。このとき、吸着ノズルe91は、裏面e2Bの長手方向における略中央部分に吸着する。そして、図111(b)を参照して、チップ抵抗器e1を吸着した吸着ノズルe91を実装基板e9まで移動させる。実装基板e9には、チップ抵抗器e1の第1接続電極e3および第2接続電極e4に応じて、前述した1対の接続端子e88が設けられている。接続端子e88は、たとえば、Cuからなる。各接続端子e88の表面には、半田e13が当該表面から突出するように設けられている。
そこで、吸着ノズルe91を移動させて実装基板e9に押し付けることで、チップ抵抗器e1において、第1接続電極e3を一方の接続端子e88の半田e13に接触させ、第2接続電極e4を他方の接続端子e88の半田e13に接触させる。この状態で、半田e13を加熱すると、半田e13が溶融する。その後、半田e13が冷却されて固まると、第1接続電極e3と当該一方の接続端子e88とが半田e13を介して接合し、第2接続電極e4と当該他方の接続端子e88とが半田e13を介して接合し、実装基板e9へのチップ抵抗器e1の実装が完了する。
図123は、完成したチップ抵抗器をエンボスキャリアテープに収容する様子を説明するための模式図である。
一方、図120Hに示すように完成したチップ抵抗器e1を、図123に示すエンボスキャリアテープe92に収容する場合もある。
エンボスキャリアテープe92は、たとえば、ポリカーボネート樹脂等で形成されたテープ(帯状体)である。エンボスキャリアテープe92には、多数のポケットe93が、エンボスキャリアテープe92の長手方向に並ぶように形成されている。各ポケットe93は、エンボスキャリアテープe92の一方の面(裏面)へ窪む凹状の空間として区画されている。
完成したチップ抵抗器e1(図120H参照)をエンボスキャリアテープe92に収容する場合、搬送装置の吸着ノズルe91(図111(b)参照)にチップ抵抗器e1の裏面e2B(長手方向における略中央部分)を吸着してから吸着ノズルe91を動かすことによって、チップ抵抗器e1を支持テープe71から引き剥がす。そして、吸着ノズルe91をエンボスキャリアテープe92のポケットe93に対向する位置まで移動させる。このとき、吸着ノズルe91に吸着されたチップ抵抗器e1では、表面e2A側の第1接続電極e3および第2接続電極e4および樹脂膜e24がポケットe93に対向している。
ここで、チップ抵抗器e1をエンボスキャリアテープe92に収容する場合、エンボスキャリアテープe92は、平坦な支持台e95の上に載せられている。吸着ノズルe91をポケットe93側へ移動させて(太線矢印参照)、表面e2A側がポケットe93に対向した姿勢にあるチップ抵抗器e1を、ポケットe93内へ収容する。そして、チップ抵抗器e1の表面e2A側がポケットe93の底e93Aに接触すると、エンボスキャリアテープe92に対するチップ抵抗器e1の収容が完了する。吸着ノズルe91を移動させることでチップ抵抗器e1の表面e2A側をポケットe93の底e93Aに接触させるとき、表面e2A側の第1接続電極e3および第2接続電極e4および樹脂膜e24は、支持台e95によって支持された底e93Aに対して押し付けられる。
エンボスキャリアテープe92に対するチップ抵抗器e1の収容が完了してから、エンボスキャリアテープe92の表面には、剥離カバーe94が貼り付けられ、各ポケットe93の内部が剥離カバーe94によって密閉される。これにより、各ポケットe93内に異物が侵入することが防止される。エンボスキャリアテープe92からチップ抵抗器e1を取り出す場合には、剥離カバーe94がエンボスキャリアテープe92から剥がされてポケットe93が開放される。その後、自動実装機によって、ポケットe93からチップ抵抗器e1が取り出されて、前述したように実装される。
このようにチップ抵抗器e1を実装する場合や、チップ抵抗器e1をエンボスキャリアテープe92に収容する場合や、さらにはチップ抵抗器e1に対して応力試験を行う場合において、チップ抵抗器e1の裏面e2B(長手方向における略中央部分)に力をかけて第1接続電極e3および第2接続電極e4を何か(「被接触部」ということにする)に押し付けようとすると、基板e2の表面e2Aに応力が作用する。なお、当該被接触部とは、チップ抵抗器e1を実装する場合には、実装基板e9であり、チップ抵抗器e1をエンボスキャリアテープe92へ収容する時には、支持台e95によって支持されたポケットe93の底e93Aであり、応力試験時には、応力を受けるチップ抵抗器e1を支える支持面である。
この場合において、基板e2の表面e2Aにおける樹脂膜e24の高さH(図119参照)が、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの高さJ(図119参照)未満であって、第1接続電極e3および第2接続電極e4の表面e3A,4Aが基板e2の表面e2Aから最も突出している(つまり、樹脂膜e24が薄い)チップ抵抗器e1が考えられる(後述する図124参照)。このようなチップ抵抗器e1は、表面e2A側では、前述した被接触部に対して第1接続電極e3および第2接続電極e4だけで接触(2点接触)するので、チップ抵抗器e1にかかる応力は、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれと基板e2との接合部に集中する。これによって、チップ抵抗器e1の電気的特性が悪化する虞がある。さらには、当該応力によって、チップ抵抗器e1内(特に、基板e2の長手方向における略中央部分)に歪みが生じ、ひどい場合には当該略中央部分を起点として基板e2が割れてしまう虞がある。
しかしながら、第5参考例では、前述したように、樹脂膜e24の高さHは、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの高さJ以上となるように、樹脂膜e24が厚くなっている(図119参照)。よって、チップ抵抗器e1にかかる応力は、第1接続電極e3および第2接続電極e4だけでなく樹脂膜e24によっても受け止められる。つまり、チップ抵抗器e1において応力を受ける部分の面積を増大させることができるので、チップ抵抗器e1にかかる応力を分散できる。これにより、チップ抵抗器e1において第1接続電極e3および第2接続電極e4に対する応力の集中を抑制できる。特に、樹脂膜e24の表面e24Cによって、チップ抵抗器e1にかかる応力をより効果的に分散できる。これにより、チップ抵抗器e1に対する応力の集中を一層抑制できるので、チップ抵抗器e1の強度向上を図ることができる。その結果、実装時や耐久試験時やエンボスキャリアテープe92への収容時におけるチップ抵抗器e1の破壊を抑制できる。その結果、実装やエンボスキャリアテープe92への収容における歩留まりを向上させることができ、さらに、チップ抵抗器e1が壊れにくいことからチップ抵抗器e1の取扱い性を向上させることもできる。
次に、チップ抵抗器e1の変形例について説明する。図124〜図128は、第1〜第5変形例に係るチップ抵抗器の模式的な断面図である。第1〜第5変形例において、これまでチップ抵抗器e1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。
第1接続電極e3および第2接続電極e4に関し、図119では、第1接続電極e3の表面e3Aおよび第2接続電極e4の表面e4Aが、樹脂膜e24の表面e24Cと面一になっている。実装時等にチップ抵抗器e1にかかる応力を分散することを考慮しないのであれば、図124に示す第1変形例のように、第1接続電極e3の表面e3Aおよび第2接続電極e4の表面e4Aは、基板e2の表面e2Aから離れる方向(図124では上方)へ向けて樹脂膜e24の表面e24Cよりも突出していてもよい。このとき、樹脂膜e24の高さHは、第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの高さJよりも低くなる。
逆に、図119の場合よりも、実装時等にチップ抵抗器e1にかかる応力を分散したいのであれば、図125に示す第2変形例のように、樹脂膜e24の高さHを第1接続電極e3および第2接続電極e4のそれぞれの高さJよりも高くするとよい。これにより、樹脂膜e24が厚くなって、第1接続電極e3の表面e3Aおよび第2接続電極e4の表面e4Aが、樹脂膜e24の表面e24Cよりも、基板e2の表面e2A側(図124では下方)へずれる。この場合には、第1接続電極e3および第2接続電極e4が、樹脂膜e24の表面e24Cよりも基板e2側へ埋没した状態になっているので、前述した第1接続電極e3および第2接続電極e4における2点接触自体が発生しない。そのため、チップ抵抗器e1に対する応力の集中を一層抑制できる。ただし、第2変形例のチップ抵抗器e1を実装基板e9に実装する場合には、実装基板e9の各接続端子e88上の半田e13を、第1接続電極e3の表面e3Aおよび第2接続電極e4の表面e4Aに届くように厚くしておいて、第1接続電極e3および第2接続電極e4と半田e13との接続不良を予防しておく必要がある(図111(b)参照)。
また、基板e2の表面e2A上の絶縁層e20では、その端面e20A(平面視で表面e2Aの縁部e85と一致する部分)が、基板e2の厚さ方向(図119、図124および図125では上下方向)に延びているが、図126〜図128に示すように、傾斜していてもよい。詳しくは、絶縁層e20の端面e20Aは、基板e2の表面e2Aから絶縁層e20の表面へ近付くのに従って基板e2の内方へ向かうように傾斜している。このような端面e20Aに応じて、パッシベーション膜e23において当該端面e20Aを覆っている部分(前述した端部e23C)も、端面e20Aに沿って傾斜している。
図126〜図128に示す第3〜第5変形例のチップ抵抗器e1では、樹脂膜e24の縁24Aの位置に違いがある。
まず、図126に示す第3変形例のチップ抵抗器e1は、絶縁層e20の端面e20Aおよびパッシベーション膜e23の端部e23Cが傾斜している点以外では、図119のチップ抵抗器e1と同じである。そのため、平面視において、樹脂膜e24の縁24Aは、パッシベーション膜e23の側面被覆部e23Bと整合していて、側面被覆部e23Bの厚み分だけ、基板e2の表面e2Aの縁部e85(基板e2の表面e2A側の端縁)よりも外側に位置している。このように縁24Aを側面被覆部e23Bと整合させたければ、前述した樹脂膜e46を形成するために感光性樹脂の液体をスプレー塗布する際において(図120E参照)、図示しないマスクを用いて当該液体が第1溝e44および第2溝e48内に入り込まないようにしておく必要がある。または、当該液体が第1溝e44および第2溝e48内に入り込んだとしても、その後に樹脂膜e46をパターニングする際に(図120F参照)、マスクe62において平面視で第1溝e44および第2溝e48と一致する部分にも開口e61を形成しておくとよい。そうすれば、樹脂膜e46のパターニングによって、第1溝e44および第2溝e48内の樹脂膜e46を除去し、樹脂膜e24の縁24Aを側面被覆部e23Bと整合させることができる。
ここで、樹脂膜e24は、樹脂製であることから、衝撃によりクラックが生じるおそれが少ない。そのため、樹脂膜e24が、基板e2の表面e2A(特に、素子e5およびヒューズF)と、基板e2の表面e2Aの縁部e85とを衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ抵抗器e1を提供することができる。
一方、図127に示す第4変形例のチップ抵抗器e1では、平面視において、樹脂膜e24の縁24Aは、パッシベーション膜e23の側面被覆部e23Bと整合しておらず、側面被覆部e23Bよりも内方、詳しくは、基板e2の表面e2Aの縁部e85よりも基板e2の内方に後退している。この場合にも、樹脂膜e24が、基板e2の表面e2A(特に、素子e5およびヒューズF)を衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ抵抗器e1を提供することができる。樹脂膜e24の縁24Aを基板e2の内方に後退させるためには、樹脂膜e46をパターニングする際に、マスクe62において平面視で基板e2(基板e30)の縁部e85と重なる部分にも開口e61を形成しておくとよい(図120F参照)。そうすれば、樹脂膜e46のパターニングによって、平面視で基板e2(基板e30)の縁部e85と重なる領域の樹脂膜e46を除去し、結果として、樹脂膜e24の縁24Aを基板e2の内方に後退させることができる。
そして、図128に示す第5変形例のチップ抵抗器e1では、平面視において、樹脂膜e24の縁24Aは、パッシベーション膜e23の側面被覆部e23Bと整合していない。詳しくは、樹脂膜e24は、側面被覆部e23Bよりも外方に張り出していて、側面被覆部e23Bの全域を外から覆っている。つまり、第5変形例では、樹脂膜e24は、パッシベーション膜e23の表面被覆部e23Aおよび側面被覆部e23Bの両方を覆っている。この場合、樹脂膜e24が、基板e2の表面e2A(特に、素子e5およびヒューズF)と、基板e2の側面e2C〜e2Fとを衝撃から確実に保護できるので、耐衝撃性に優れたチップ抵抗器e1を提供することができる。樹脂膜e24が表面被覆部e23Aおよび側面被覆部e23Bの両方を覆いたいのであれば、前述した樹脂膜e46を形成するために感光性樹脂の液体をスプレー塗布する際において(図120E参照)、当該液体が第1溝e44および第2溝e48内に入り込んで側面被覆部e23Bに付着するようにすればよい。なお、前述したように当該液体をスピン塗布する場合には、当該液体が膜状にならずに第1溝e44および第2溝e48を完全に埋めてしまうので好ましくない。一方、感光性樹脂からなるシートを基板e30の表面e30Aに貼り付けたりすることで樹脂膜e46を形成する場合には、当該シートは第1溝e44および第2溝e48内に入り込めないから、側面被覆部e23Bの全域を覆うことができないので好ましくない。よって、樹脂膜e24が表面被覆部e23Aおよび側面被覆部e23Bの両方を覆うためには、感光性樹脂の液体をスプレー塗布するのが有効である。
以上、第5参考例の実施形態について説明してきたが、第5参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第5参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器e1を開示したが、第5参考例は、チップコンデンサやチップインダクタやチップダイオードといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図129は、第5参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。図130は、図129の切断面線CXXX−CXXXから見た断面図である。図131は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサe101において、前述したチップ抵抗器e1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサe101において、チップ抵抗器e1で説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器e1で説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器e1で説明した部分と同じ作用効果を奏することができる。
図129を参照して、チップコンデンサe101は、チップ抵抗器e1と同様に、基板e2と、基板e2上(基板e2の表面e2A側)に配置された第1接続電極e3と、同じく基板e2上に配置された第2接続電極e4とを備えている。基板e2は、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板e2の長手方向両端部に第1接続電極e3および第2接続電極e4がそれぞれ配置されている。第1接続電極e3および第2接続電極e4は、この実施形態では、基板e2の短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。基板e2の表面e2Aには、第1接続電極e3および第2接続電極e4の間のキャパシタ配置領域e105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が配置されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子e5を構成する複数の素子要素(キャパシタ素子)であり、複数のヒューズユニットe107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極e4に対して切り離し可能となるように電気的に接続されている。これらのキャパシタ要素C1〜C9によって構成された素子e5は、キャパシタ回路網になっている。
図130および図131に示されているように、基板e2の表面e2Aには絶縁層e20が形成されていて、絶縁層e20の表面に下部電極膜e111が形成されている。下部電極膜e111は、キャパシタ配置領域e105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜e111は、第1接続電極e3の直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜e111は、キャパシタ配置領域e105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域e111Aと、第1接続電極e3の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域e111B(パッド)とを有している。キャパシタ電極領域e111Aがキャパシタ配置領域e105に位置していて、パッド領域e111Bが第1接続電極e3の直下に位置して第1接続電極e3に接触している。
キャパシタ配置領域e105において下部電極膜e111(キャパシタ電極領域e111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)112が形成されている。容量膜e112は、キャパシタ電極領域e111A(キャパシタ配置領域e105)の全域にわたって形成されている。容量膜e112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域e105外の絶縁層e20を覆っている。
容量膜e112の上には、上部電極膜e113が容量膜e112に接するように形成されている。図129では、明瞭化のために、上部電極膜e113を着色して示してある。上部電極膜e113は、キャパシタ配置領域e105に位置するキャパシタ電極領域e113Aと、第2接続電極e4の直下に位置して第2接続電極e4に接触するパッド領域e113B(パッド)と、キャパシタ電極領域e113Aとパッド領域e113Bとの間に配置されたヒューズ領域e113Cとを有している。
キャパシタ電極領域e113Aにおいて、上部電極膜e113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)e131〜e139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分e131〜e139は、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域e113Cから第1接続電極e3に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分e131〜e139は、複数種類の対向面積で、容量膜e112を挟んで(容量膜e112に接しつつ)下部電極膜e111に対向している。より具体的には、電極膜部分e131〜e139の下部電極膜e111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分e131〜e139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分e131〜138(またはe131〜e137,e139)を含む。これによって、各電極膜部分e131〜e139と容量膜e112を挟んで対向する下部電極膜e111と容量膜e112とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分e131〜e139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分e131〜e135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分e135,e136,e137,e138,e139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分e135〜e139は、キャパシタ配置領域e105の第2接続電極e4側の端縁から第1接続電極e3側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分e131〜e134は、それよりも短く形成されている。
パッド領域e113Bは、第2接続電極e4とほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。図130に示すように、パッド領域e113Bにおける上部電極膜e113は、第2接続電極e4に接している。
ヒューズ領域e113Cは、パッド領域e113Bの一つの長辺(基板e2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域e113Cは、パッド領域e113Bの前記1つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニットe107を含む。
ヒューズユニットe107は、上部電極膜e113のパッド領域e113Bと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分e131〜e139は、1つまたは複数個のヒューズユニットe107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニットe107を介してパッド領域e113Bに接続され、このパッド領域e113Bを介して第2接続電極e4に電気的に接続されている。図129に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分e131〜e136は、一つのヒューズユニットe107によってパッド領域e113Bに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分e137〜e139は複数個のヒューズユニットe107を介してパッド領域e113Bに接続されている。全てのヒューズユニットe107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニットe107は未使用である。
ヒューズユニットe107は、パッド領域e113Bとの接続のための第1幅広部e107Aと、電極膜部分e131〜e139との接続のための第2幅広部e107Bと、第1および第2幅広部e107A,7Bの間を接続する幅狭部e107Cとを含む。幅狭部e107Cは、レーザ光によって切断(溶断)することができるように構成されている。それによって、電極膜部分e131〜e139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニットe107の切断によって第1および第2接続電極e3,e4から電気的に切り離すことができる。
図129および図131では図示を省略したが、図130に表れている通り、上部電極膜e113の表面を含むチップコンデンサe101の表面は、前述したパッシベーション膜e23によって覆われている。パッシベーション膜e23は、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサe101の上面のみならず、基板e2の側面e2C〜e2Fまで延びて、側面e2C〜e2Fの全域をも覆うように形成されている。さらに、パッシベーション膜e23の上には、前述した樹脂膜e24が形成されている。
パッシベーション膜e23および樹脂膜e24は、チップコンデンサe101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極e3および第2接続電極e4に対応する領域に、前述した開口e25がそれぞれ形成されている。開口e25はそれぞれ下部電極膜e111のパッド領域e111Bの一部の領域、上部電極膜e113のパッド領域e113Bの一部の領域を露出させるようにパッシベーション膜e23および樹脂膜e24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極e3に対応した開口e25は、容量膜e112をも貫通している。
開口e25には、第1接続電極e3および第2接続電極e4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極e3は下部電極膜e111のパッド領域e111Bに接合しており、第2接続電極e4は上部電極膜e113のパッド領域e113Bに接合している。この実施形態では、第1および第2外部電極e3,e4は、それぞれの表面e3A,e4Aが樹脂膜e24の表面e24Aと略面一になるように形成されている。チップ抵抗器e1と同様に、実装基板e9に対してチップコンデンサe101をフリップチップ接合することができる。
図132は、前記チップコンデンサの内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極e3と第2接続電極e4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極e4との間には、一つまたは複数のヒューズユニットe107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサe101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサe101の容量値が減少する。
そこで、パッド領域e111B,e113Bの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサe101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサe101を提供することができる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極e3および第2接続電極e4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサe101を共通の設計で実現することができる。
チップコンデンサe101の各部の詳細について以下に説明を加える。
図129を参照して、基板e2は、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域e105は、概ね、基板e2の短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板e2の厚さは、150μm程度であってもよい。図130を参照して、基板e2は、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板e2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
絶縁層e20は、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜e111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜e111は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜e113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜e113は、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜e113のキャパシタ電極領域e113Aを電極膜部分e131〜e139に分割し、さらに、ヒューズ領域e113Cを複数のヒューズユニットe107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜e112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜e112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
パッシベーション膜e23は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜e24は、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成することができる。
第1および第2接続電極e3,e4は、たとえば、下部電極膜e111または上部電極膜e113に接するNi層e33と、このNi層e33上に積層したPd層e34と、そのPd層e34上に積層したAu層e35とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、無電解めっき法で形成することができる。Ni層e33は下部電極膜e111または上部電極膜e113に対する密着性の向上に寄与し、Pd層e34は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極e3,e4の最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサe101の製造工程は、素子e5を形成した後のチップ抵抗器e1の製造工程と同じである。
チップコンデンサe101において素子e5(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板e30(基板e2)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁層e20が形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜e111が絶縁層e20の表面全域に形成される。下部電極膜e111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜e111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図129等に示したパターンの下部電極膜e111が得られる。下部電極膜e111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜e112が、下部電極膜e111上に形成される。下部電極膜e111が形成されていない領域では、絶縁層e20の表面に容量膜e112が形成されることになる。次いで、その容量膜e112の上に、上部電極膜e113が形成される。上部電極膜e113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成することができる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次いで、上部電極膜e113の表面に上部電極膜e113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜e113が、最終形状(図129等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜e113は、キャパシタ電極領域e113Aに複数の電極膜部分e131〜e139に分割された部分を有し、ヒューズ領域e113Cに複数のヒューズユニットe107を有し、それらのヒューズユニットe107に接続されたパッド領域e113Bを有するパターンに整形される。上部電極膜e113が分割されることによって、電極膜部分e131〜e139の数に応じた複数のキャパシタ要素C1〜C9を形成することができる。上部電極膜e113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサe101における素子e5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニットe107)が形成される。素子e5が形成された後に、プラズマCVD法によって絶縁膜e45が、素子e5(上部電極膜e113、上部電極膜e113が形成されていない領域における容量膜e112)を全て覆うように形成される(図120A参照)。その後は、第1溝e44および第2溝e48が形成されてから(図120Bおよび図120C参照)、開口e25が形成される(図120D参照)。そして、開口e25から露出された上部電極膜e113のパッド領域e113Bと下部電極膜e111のパッド領域e111Bとにプローブe70を押し当てて、複数のキャパシタ要素C0〜C9の総容量値が測定される(図120D参照)。この測定された総容量値に基づき、目的とするチップコンデンサe101の容量値に応じて、切り離すべきキャパシタ要素、すなわち切断すべきヒューズが選択される。
この状態から、ヒューズユニットe107を溶断するためのレーザトリミングが行われる。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニットe107にレーザ光を当てて、そのヒューズユニットe107の幅狭部e107C(図129参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域e113Bから切り離される。ヒューズユニットe107にレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜e45の働きによって、ヒューズユニットe107の近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニットe107が溶断する。これにより、チップコンデンサe101の容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、カバー膜(絶縁膜e45)上に窒化シリコン膜が堆積させられ、パッシベーション膜e23が形成される。前述のカバー膜は最終形態において、パッシベーション膜e23と一体化し、このパッシベーション膜e23の一部を構成する。ヒューズの切断後に形成されたパッシベーション膜e23は、ヒューズ溶断の際に同時に破壊されたカバー膜の開口内に入り込み、ヒューズユニットe107の切断面を覆って保護する。したがって、パッシベーション膜e23は、ヒューズユニットe107の切断箇所に異物が入り込んだり水分が侵入したりすることを防ぐ。これにより、信頼性の高いチップコンデンサe101を製造することができる。パッシベーション膜e23は、全体で、たとえば8000Å程度の膜厚を有するように形成されてもよい。
次に、前述した樹脂膜e46が形成される(図120E参照)。その後、樹脂膜e46やパッシベーション膜e23によって塞がれていた開口e25が開放され(図120F参照)、パッド領域e111Bおよびパッド領域e113Bが、開口e25を介して樹脂膜e46(樹脂膜e24)から露出される。その後、開口e25において樹脂膜e46から露出されたパッド領域e111B上およびパッド領域e113B上に、たとえば無電解めっき法によって、第1接続電極e3および第2接続電極e4が形成される(図120G参照)。
その後、チップ抵抗器e1の場合と同じように、基板e30を裏面e30Bから研削すると(図120H参照)、チップコンデンサe101の個片を切り出すことができる。
フォトリソグラフィ工程を利用した上部電極膜e113のパターニングでは、微小面積の電極膜部分e131〜e139を精度良く形成することができ、さらに微細なパターンのヒューズユニットe107を形成することができる。そして、上部電極膜e113のパターニングの後に、総容量値の測定を経て、切断すべきヒューズが決定される。その決定されたヒューズを切断することによって、所望の容量値に正確に合わせ込まれたチップコンデンサe101を得ることができる。つまり、このチップコンデンサe101では、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素C1〜C9を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサe101を共通の設計で実現することができる。
以上、第5参考例のチップ部品(チップ抵抗器e1やチップコンデンサe101)について説明してきたが、第5参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器e1の場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサe101の場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器e1やチップコンデンサe101では、基板e2の表面に絶縁層e20が形成されているが、基板e2が絶縁性の基板であれば、絶縁層e20を省くこともできる。
また、チップコンデンサe101では、上部電極膜e113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜e111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜e113および下部電極膜e111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサe101では、上部電極膜e113および下部電極膜e111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜e113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
チップコンデンサe101では、また、基板e2として導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜e112を形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
また、第5参考例を、チップインダクタに適用した場合、当該チップインダクタにおいて前述した基板e2上に形成された素子e5は、複数のインダクタ要素(素子要素)を含んだインダクタ回路網(インダクタ素子)を含む。この場合、素子e5は、基板e2の表面e2A上に形成された多層配線中に設けられていて、配線膜e22によって形成されている。このチップインダクタでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、インダクタ回路網における複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、インダクタ回路網の電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現することができる。
そして、第5参考例を、チップダイオードに適用した場合、当該チップダイオードにおいて前述した基板e2上に形成された素子e5は、複数のダイオード要素(素子要素)を含んだダイオード回路網(ダイオード素子)を含む。ダイオード素子は基板e2に形成されている。このチップダイオードでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、ダイオード回路網における複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、ダイオード回路網の電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現することができる。
チップインダクタおよびチップダイオードのいずれにおいても、チップ抵抗器e1やチップコンデンサe101の場合と同じ作用効果を奏することができる。
また、前述した第1接続電極e3および第2接続電極e4において、Ni層e33とAu層e35との間に介装されていたPd層e34を省略することもできる。Ni層e33とAu層e35との接着性が良好なので、Au層e35に前述したピンホールができないのであれば、Pd層e34を省略しても構わない。
また、前述したようにエッチングによって第1溝e44を形成する際に用いるレジストパターンe41の開口e42の交差部分e43(図121参照)をラウンド形状にしておけば、完成したチップ部品では、基板e2の表面e2A側のコーナー部(粗面領域Sにおけるコーナー部)e11をラウンド状に成形することができる。
また、チップ抵抗器e1において説明した変形例1〜5(図124〜図128)の構成は、チップコンデンサe101、チップインダクタおよびチップダイオードのいずれにおいても適用可能である。
図133は、第5参考例のチップ部品が用いられる電子機器の一例であるスマートフォンの外観を示す斜視図である。スマートフォンe201は、扁平な直方体形状の筐体e202の内部に電子部品を収納して構成されている。筐体e202は表側および裏側に長方形状の一対の主面を有しており、その一対の主面が4つの側面で結合されている。筐体e202の一つの主面には、液晶パネルや有機ELパネル等で構成された表示パネルe203の表示面が露出している。表示パネルe203の表示面は、タッチパネルを構成しており、使用者に対する入力インターフェースを提供している。
表示パネルe203は、筐体e202の一つの主面の大部分を占める長方形形状に形成されている。表示パネルe203の一つの短辺に沿うように、操作ボタンe204が配置されている。この実施形態では、複数(3つ)の操作ボタンe204が表示パネルe203の短辺に沿って配列されている。使用者は、操作ボタンe204およびタッチパネルを操作することによって、スマートフォンe201に対する操作を行い、必要な機能を呼び出して実行させることができる。
表示パネルe203の別の一つの短辺の近傍には、スピーカe205が配置されている。スピーカe205は、電話機能のための受話口を提供するとともに、音楽データ等を再生するための音響化ユニットとしても用いられる。一方、操作ボタンe204の近くには、筐体e202の一つの側面にマイクロフォンe206が配置されている。マイクロフォンe206は、電話機能のための送話口を提供するほか、録音用のマイクロフォンとして用いることもできる。
図134は、筐体e202の内部に収容された電子回路アセンブリe210の構成を示す図解的な平面図である。電子回路アセンブリe210は、配線基板e211と、配線基板e211の実装面に実装された回路部品とを含む。複数の回路部品は、複数の集積回路素子(IC)e212−e220と、複数のチップ部品とを含む。複数のICは、伝送処理ICe212、ワンセグTV受信ICe213、GPS受信ICe214、FMチューナICe215、電源ICe216、フラッシュメモリe217、マイクロコンピュータe218、電源ICe219およびベースバンドICe220を含む。複数のチップ部品(第5参考例のチップ部品に相当する)は、チップインダクタe221,e225,e235、チップ抵抗器e222,e224,e233、チップキャパシタe227,e230,e234、およびチップダイオードe228,e231を含む。
伝送処理ICe212は、表示パネルe203に対する表示制御信号を生成し、かつ表示パネルe203の表面のタッチパネルからの入力信号を受信するための電子回路を内蔵している。表示パネルe203との接続のために、伝送処理ICe212には、フレキシブル配線209が接続されている。
ワンセグTV受信ICe213は、ワンセグ放送(携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)の電波を受信するための受信機を構成する電子回路を内蔵している。ワンセグTV受信ICe213の近傍には、複数のチップインダクタe221と、複数のチップ抵抗器e222とが配置されている。ワンセグTV受信ICe213、チップインダクタe221およびチップ抵抗器e222は、ワンセグ放送受信回路e223を構成している。チップインダクタe221およびチップ抵抗器e222は、正確に合わせ込まれたインダクタンスおよび抵抗をそれぞれ有し、ワンセグ放送受信回路e223に高精度な回路定数を与える。
GPS受信ICe214は、GPS衛星からの電波を受信してスマートフォンe201の位置情報を出力する電子回路を内蔵している。
FMチューナICe215は、その近傍において配線基板e211に実装された複数のチップ抵抗器e224および複数のチップインダクタe225とともに、FM放送受信回路e226を構成している。チップ抵抗器e224およびチップインダクタe225は、正確に合わせ込まれた抵抗値およびインダクタンスをそれぞれ有し、FM放送受信回路e226に高精度な回路定数を与える。
電源ICe216の近傍には、複数のチップキャパシタe227および複数のチップダイオードe228が配線基板e211の実装面に実装されている。電源ICe216は、チップキャパシタe227およびチップダイオードe228とともに、電源回路e229を構成している。
フラッシュメモリe217は、オペレーティングシステムプログラム、スマートフォンe201の内部で生成されたデータ、通信機能によって外部から取得したデータおよびプログラムなどを記録するための記憶装置である。
マイクロコンピュータe218は、CPU、ROMおよびRAMを内蔵しており、各種の演算処理を実行することにより、スマートフォンe201の複数の機能を実現する演算処理回路である。より具体的には、マイクロコンピュータe218の働きにより、画像処理や各種アプリケーションプログラムのための演算処理が実現されるようになっている。
電源ICe219の近くには、複数のチップキャパシタe230および複数のチップダイオードe231が配線基板e211の実装面に実装されている。電源ICe219は、チップキャパシタe230およびチップダイオードe231とともに、電源回路e232を構成している。
ベースバンドICe220の近くには、複数のチップ抵抗器e233、複数のチップキャパシタe234、および複数のチップインダクタe235が、配線基板e211の実装面に実装されている。ベースバンドICe220は、チップ抵抗器e233、チップキャパシタe234およびチップインダクタe235とともに、ベースバンド通信回路e236を構成している。ベースバンド通信回路e236は、電話通信およびデータ通信のための通信機能を提供する。
このような構成によって、電源回路e229,e232によって適切に調整された電力が、伝送処理ICe212、GPS受信ICe214、ワンセグ放送受信回路e223、FM放送受信回路e226、ベースバンド通信回路e236、フラッシュメモリe217およびマイクロコンピュータe218に供給される。マイクロコンピュータe218は、伝送処理ICe212を介して入力される入力信号に応答して演算処理を行い、伝送処理ICe212から表示パネルe203に表示制御信号を出力して表示パネルe203に各種の表示を行わせる。
タッチパネルまたは操作ボタンe204の操作によってワンセグ放送の受信が指示されると、ワンセグ放送受信回路e223の働きによってワンセグ放送が受信される。そして、受信された画像を表示パネルe203に出力し、受信された音声をスピーカe205から音響化させるための演算処理が、マイクロコンピュータe218によって実行される。
また、スマートフォンe201の位置情報が必要とされるときには、マイクロコンピュータe218は、GPS受信ICe214が出力する位置情報を取得し、その位置情報を用いた演算処理を実行する。
さらに、タッチパネルまたは操作ボタンe204の操作によってFM放送受信指令が入力されると、マイクロコンピュータe218は、FM放送受信回路e226を起動し、受信された音声をスピーカe205から出力させるための演算処理を実行する。
フラッシュメモリe217は、通信によって取得したデータの記憶や、マイクロコンピュータe218の演算や、タッチパネルからの入力によって作成されたデータを記憶するために用いられる。マイクロコンピュータe218は、必要に応じて、フラッシュメモリe217に対してデータを書き込み、またフラッシュメモリe217からデータを読み出す。
電話通信またはデータ通信の機能は、ベースバンド通信回路e236によって実現される。マイクロコンピュータe218は、ベースバンド通信回路e236を制御して、音声またはデータを送受信するための処理を行う。