JP6133226B2 - 太陽電池用バックシート及び製造方法、並びに太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、封止材との密着性に優れた太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに長期耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
<1> ポリエステル系樹脂シートを第1の方向に延伸する工程と、延伸して得られた一軸延伸フィルム上に、変性ポリオレフィンを含む塗液を塗布する工程と、塗布後の一軸延伸フィルムをさらに第2の方向に延伸する工程と、第2の方向に延伸されて得られた延伸フィルムの塗布面に、樹脂を溶融押出ラミネートする工程と、を含み、樹脂を押出すダイからニップ点までの距離が100mm以上400mm以下である太陽電池用バックシートの製造方法。
<3> 溶融押出ラミネートする工程は、ラミネート前に予め、樹脂又は延伸フィルムの塗布面に対してオゾン吹付処理を行う<1>又は<2>に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
<4> 溶融押出ラミネートする工程は、樹脂を、押出温度を300℃以上330℃以下としてダイから押出す<1>〜<3>のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
第1の方向に延伸されたポリエステル系樹脂シート上に、塗布により形成され、さらに第2の方向に延伸されることで得られる変性ポリオレフィン含有層と、
ポリオレフィン含有層の表面にダイからニップ点までの距離を100mm以上400mm以下として溶融押出ラミネートされたラミネート層と、
を含む、太陽電池用バックシート。
<6> ラミネート層の露出面における表面粗さが、0.5μm以上20μm以下である<5>に記載の太陽電池用バックシート。
<8> <5>又は<6>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートを備えた太陽電池モジュール。
本発明の太陽電池用バックシート(以下適宜、バックシートと称する)の製造方法は、ポリエステル系樹脂シートを第1の方向に延伸する工程と、延伸して得られた一軸延伸フィルム上に、変性ポリオレフィンを含む塗液を塗布(以下適宜、インラインコートと称する)する工程と、塗布後の一軸延伸フィルムをさらに第2の方向に延伸する工程と、第2の方向に延伸されて得られた延伸フィルムの塗布面に、樹脂を溶融押出ラミネートする工程と、を含む。ラミネート層を形成する工程において、樹脂を押出すダイからニップ点までの距離が100mm以上400mm以下である。
すなわち、ポリエステル系樹脂シートを、第1の方向に延伸した後の一軸延伸フィルム上に、変性ポリオレフィンを含む塗液をインラインコートし、更に第2の方向に延伸した後の変性ポリオレフィン含有層の表面に、樹脂を溶融押出ラミネートする際、ダイからニップ点までの距離を100mm以上400mm以下とすることで、樹脂の酸化が進行し、封止材との密着性が高いラミネート層が形成されると考えられる。
また、ダイからニップ点までの距離を100mm以上400mm以下とすることで、溶融押出された樹脂の温度を、ニップ点において適性範囲に保つことができ、封止材との密着性が高いラミネート層が形成されると考えられる。
なお、本明細書において「傷視認性に優れる」とは、バックシート表面に傷が付いたときに、その傷が目立たず、バックシートの外観が良好に保たれることを意味する。
本発明のバックシートの製造方法は、ポリエステル系樹脂シートを第1の方向に延伸する工程を含む。
ポリエステル系樹脂シートは、例えば、後述するポリエステル樹脂を原料樹脂とし、これを乾燥した後、溶融させ、得られる溶融体を、ギアポンプや濾過器に通し、その後、ダイを介して冷却ロールに押出し、冷却固化させることで(未延伸)シートとして得られる。溶融は押出機を用いて行なうが、単軸押出機を用いてもよく、2軸押出機を用いてもよい。
延伸処理は、シートのガラス温度(Tg:単位℃)以上(Tg+60℃)以下で行うのが好ましく、より好ましくは(Tg+3℃)以上(Tg+40℃)以下、さらに好ましくは(Tg+5℃)以上(Tg+30℃)以下である。この時、上述のように温度分布を付与することが好ましい。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)/(延伸前の長さ)}
150℃熱収縮率(%)=100×(300−L)/300
また、熱収縮率が正の場合は縮みを、負は伸びを表わす。
本発明のバックシートの製造方法は、第1の方向に延伸して得られた一軸延伸フィルム上に、変性ポリオレフィンを含む塗液(以下適宜、塗布液ともいう)を塗布する工程を含む。
塗布は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
一軸延伸フィルム上への変性ポリオレフィンを含む塗液の塗布は、上記のポリエステル系樹脂シートを第1の方向に延伸する工程に引き続き、インラインで行うことが好ましい。
塗膜の乾燥は、熱処理を兼ねることが好ましい。
本発明のバックシートの製造方法は、少なくとも塗液が塗布された一軸延伸フィルム(ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸して得られたフィルム上に、変性ポリオレフィンを含有する塗液が塗布されたフィルム)を、さらに第2の方向に延伸する工程を含む。第2の方向に延伸されることで、一軸延伸フィルムが塗液とともに伸ばされ、変性ポリオレフィンを含む変性ポリオレフィン含有層が塗設された二軸延伸フィルムが作られる。延伸は、第1の方向と異なる方向であれば、縦方向(MD)、横方向(TD)のいずれに行ってもよい。
ここでいう「第2の方向」とは、上記の第1の方向(例えば、MD)とは別の方向(好ましくは第1の方向と直交する方向、例えばTD)であることを意味する。
本発明のバックシートの製造方法は、第2の方向に延伸されて得られた延伸フィルムの塗布面に、樹脂を溶融押出ラミネートする工程を含む。この工程では、第2の方向に延伸されて得られた延伸フィルムの塗布面(すなわち、変性ポリオレフィン含有層の表面)に、ラミネート層が形成される。
本発明におけるラミネート層は、ダイからニップ点までの距離(エアギャップとも称する)が100mm以上400mm以下の条件で、溶融押出ラミネート法により形成される。
ラミネートにおけるエアギャップは、100mm以上400mm以下であり、120mm以上300mm以下が好ましく、150mm以上250mm以下がより好ましい。エアギャップが100mm未満であると、押出された樹脂の酸化が不十分であり、形成されるラミネート層と封止材との密着性に劣る。また、エアギャップが400mmを超えると、押出された樹脂の温度が下がり過ぎて、形成されるラミネート層と封止材との密着性に劣る。
樹脂を溶融押出ラミネートする際、オゾン吹付処理をすることが好ましい。オゾン吹付処理は、樹脂の酸化を促進し、形成されるラミネート層と封止材との密着性を向上させる。オゾン吹付処理における、オゾン吹付量は、10m3/hr〜30m3/hrが好ましく、15m3/hr〜25m3/hrがより好ましい。オゾン吹付量が、上記範囲内であると、樹脂の酸化を促進し、形成されるラミネート層と封止材との密着性を向上させることができる。
ラミネートにおけるニップ圧は、10kg/cm〜100kg/cmが好ましく、15kg/cm〜50kg/cmがより好ましい。ラミネートにおける冷却ロールの温度は、1℃〜50℃が好ましく、1℃〜30℃がより好ましい。
溶融押出ラミネートにより形成されるラミネート層は、表面粗さ0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上15μm以下がより好ましく、0.5μm以上13μm以下が更にこのましい。表面粗さが0.5μm以上であると、傷視認性がより向上し、20μm以下であると、封止材との貼合せ時に気泡の巻き込みがより抑制される。
ラミネート層の表面粗さは、溶融押出ラミネートにおいてラミネート層と接する冷却ロールの表面粗さを調整することにより、上記範囲に調整することができる。
表面粗さは、ハンディサーフE−35B((株)東京精密製)を用いて測定された値を用いる。
溶融状態の樹脂12が押出される押出ダイ14の下方には、冷却ローラ16とニップローラ18とが平行に隣接配置されると共に、冷却ローラ16を挟んでニップローラ18の反対側には、剥離ローラ20が冷却ローラ16に平行して隣接配置される。更に、ニップローラ18を挟んで冷却ローラ16の反対側には、バックアップローラ22が設けられる。そして、走行する延伸フィルム24に、冷却ローラ16とニップローラ18とが接するニップ点19において、押出ダイ14から押し出された樹脂12が積層されながらニップされる。24は、第2の方向に延伸されて得られた二軸延伸フィルムである。樹脂12が積層された延伸フィルム24は、樹脂12側を冷却ローラ16面に接しながら走行することにより冷却され、剥離ローラ20により冷却ローラ16から剥離される。これにより、延伸フィルム24に樹脂12がラミネートされたバックシート26が製造される。
本発明の太陽電池用バックシートは、ポリエステル系樹脂シートを第1の方向及び第2の方向に延伸して得られた延伸フィルム(以下適宜、基材と称す)と、第1の方向に延伸されたポリエステル系樹脂シート上に、塗布により形成され、さらに第2の方向に延伸されることで得られる変性ポリオレフィン含有層と、ポリオレフィン含有層の表面にダイからニップ点までの距離を100mm以上400mm以下として溶融押出ラミネートされたラミネート層と、を含む。
本発明の太陽電池用バックシートは、少なくともポリエステル系樹脂シートを第1の方向及び第2の方向に延伸して得られた延伸フィルム(基材)を有する。
基材は、ポリエステル系樹脂を主成分として含むことが好ましく、「主成分」とは、基材に対してポリエステル系樹脂が50質量%を超えて含有されていることをいう。
ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50ppm〜90ppmの範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm〜80ppmとなる量であり、さらに好ましくは60ppm〜75ppmとなる量である。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm〜100ppmの範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm〜90ppmの範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm〜80ppmの範囲となる量である。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)0≦Z≦5.0
式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
なお、ポリエステルの合成には特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、このようなリン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調および熱に対する着色耐性に優れたポリエステルを得ることができる。
エステル化反応工程を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230℃〜260℃が好ましく、240℃〜250℃がより好ましい。
エステル化反応工程を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230℃〜260℃が好ましく、より好ましくは240℃〜250℃であり、圧力は1.0kg/cm2〜5.0kg/cm2が好ましく、より好ましくは2.0kg/cm2〜3.0kg/cm2である。第二反応槽のエステル化反応の温度は230℃〜260℃が好ましく、より好ましくは245℃〜255℃であり、圧力は0.5kg/cm2〜5.0kg/cm2、より好ましくは1.0kg/cm2〜3.0kg/cm2である。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
特に、固相重合開始時のエチレングリコール(EG)ガス濃度を固相重合終了時のEGガス濃度よりも200ppm〜1000ppmの範囲で高くすることが好ましく、より好ましくは250ppm〜800ppm、さらに好ましくは300ppm〜700ppmの範囲で高くして固相重合することが好ましい。この時、平均EGガス濃度(固相重合開始時と終了時のガス濃度の平均)を添加することでAV(末端COOH量)を制御できる。即ちEG添加により末端COOHと反応させAVを低減できる。EGは100ppm〜500ppmが好ましく、より好ましくは150ppm〜450ppm、さらに好ましくは200ppm〜400ppmである。
また、固相重合時間は10時間〜40時間が好ましく、より好ましくは14時間〜35時間、さらに好ましくは18時間〜30時間である。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)、固相重合、添加剤(末端封止剤等)により調整することが可能である。
基材には、カルボジイミド化合物およびケテンイミン化合物の少なくとも一方が含まれていてもよい。カルボジイミド化合物およびケテンイミン化合物は各々単独で使用してよく、両者を併用してもよい。これによりサーモ後のポリエステルの劣化を抑制し、サーモ後も高い絶縁性を保つのに有効である。
なお、カルボジイミド化合物とケテンイミン化合物が併用される場合は、2種類の化合物の含有率の合計が、上記範囲内であることが好ましい。
カルボジイミド化合物としては、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)が挙げられ、具体的には、モノカルボジイミド化合物として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが例示される。ポリカルボジイミド化合物としては、その重合度が、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、30以下であるものが使用され、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、およびChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造されたものが挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、国際公開2011/093478号パンフレットに記載された方法によって調製することができる。
以下、本発明の環状カルボジイミド化合物の好ましい構造について、下記一般式(O−A)と一般式(O−B)の順に説明する。
R11、R15、R21およびR25が表すアリール基は、R11とR12が縮合、R15とR16が縮合、R21とR22が縮合またはR25とR26が縮合して形成されたアリール基であってもよいが、R11、R15、R21およびR25は、それぞれR12、R16、R22およびR26と縮合して環を形成しないことが好ましい。
R11、R15、R21およびR25は、同じであっても異なっていてもよいが、コストの観点から同じであることが好ましい。
R12〜R14、R16〜R18、R22〜R24およびR26〜R28中、R12、R16、R22およびR26がともに水素原子であることが、R11、R15、R21およびR25に嵩高い置換基を導入しやすい観点から好ましい。
一般式(O−B)中における各カルボジイミド基を含む環状構造中の原子数の好ましい範囲はそれぞれ、上記一般式(O−A)中におけるカルボジイミド基を含む環状構造中の原子数の好ましい範囲と同様である。
但し、揮散を抑制でき、製造時のイソシアネートガスの発生を抑制できる観点からは、本発明の環状カルボジイミド化合物は環状構造を複数有し、上記一般式(O−B)で表されることも好ましい。
環状カルボジイミド化合物の分子量は、500〜1200であることがより好ましい。
ケテンイミン化合物としては、下記一般式(K−A)で表されるケテンイミン化合物を用いることが好ましい。
基材は180℃で50時間熱処理した後の破断強度が、熱処理前の破断強度の50%以上であることが好ましい。より好ましくは180℃で80時間熱処理した後の破断強度が熱処理前の破断強度の50%以上であり、さらに好ましくは180℃で100時間熱処理した後の破断強度が熱処理前の破断強度の50%以上である。これにより高温に曝されたときの耐熱性を良好にすることができる。
本発明の太陽電池用バックシートは、第1の方向に延伸されたポリエステル系樹脂シート上に、塗布により形成され、さらに第2の方向に延伸されることで得られる変性ポリオレフィン含有層を有する。
変性ポリオレフィン含有層は、変性ポリオレフィン樹脂を主成分として含むことが好ましく、「主成分」とは、変性ポリオレフィン含有層に対して変性ポリオレフィン樹脂が50質量%を超えて含有されていることをいう。
これらの中でも、樹脂の製造のし易さ、水性化のし易さ、各種材料に対する接着性、ブロッキング性等の点から、変性ポリオレフィン含有層のポリオレフィン樹脂成分は、エチレン成分、プロピレン成分またはブテン成分(1−ブテン、イソブテンなど)を含有したポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
2種以上併用する場合は、接着強度が長期間の屋外使用で劣化することに起因するデラミネーションなどを生じないこと、光線反射率の低下につながる黄変を生じないことが望ましい。
アクリル樹脂とポリオレフィン樹脂の組合せで用いる場合、変性ポリオレフィン含有層中のポリオレフィン樹脂とアクリル樹脂の合計に対するアクリル樹脂の含有量は、3質量%〜75質量%であることが好ましく、5質量%〜50質量%であることがより好ましく、7質量%〜30質量%であることが特に好ましい。
変性ポリオレフィン含有層は、架橋剤により架橋されていてもよい。架橋させると密着性を向上することができ、より好ましい。架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。その中でも本発明では、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることが好ましい。オキサゾリン基を有する架橋剤として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等を利用することができる。
架橋剤と共に、架橋剤の触媒をさらに併用してもよい。架橋剤の触媒を含有することで、変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤との架橋反応が促進され、耐溶剤性の向上が図られる。また、架橋が良好に進むことで、変性ポリオレフィン含有層の密着性も改善できる。
特に、架橋剤としてオキサゾリン基を有する架橋剤(オキサゾリン系架橋剤)を用いる場合、架橋剤の触媒を使用することがよい。
オニウム化合物としては、アンモニウム塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ニトロニウム塩、ニトロソニウム塩、ジアゾニウム塩等が好適に挙げられる。
ヨウ化トリメチルスルホニウム、四フッ化ホウ素トリメチルスルホニウム、四フッ化ホウ素ジフェニルメチルスルホニウム、四フッ化ホウ素ベンジルテトラメチレンスルホニウム、六フッ化アンチモン2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム、六フッ化アンチモン3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム等のスルホニウム塩;四フッ化ホウ素トリメチルオキソニウム等のオキソニウム塩;
塩化ジフェニルヨードニウム、四フッ化ホウ素ジフェニルヨードニウム等のヨードニウム塩;
六フッ化アンチモンシアノメチルトリブチルホスホニウム、四フッ化ホウ素エトキシカルボニルメチルトリブチルホスホニウム等のホスホニウム塩;
四フッ化ホウ素ニトロニウム等のニトロニウム塩;四フッ化ホウ素ニトロソニウム等のニトロソニウム塩;
塩化4−メトキシベンゼンジアゾニウム等のジアゾニウム塩;
等が挙げられる。
架橋剤の触媒の添加量は、架橋剤に対して、0.1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、0.5質量%以上12質量%以下の範囲がより好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲が特に好ましく、2質量%以上7質量%以下がより特に好ましい。架橋剤に対する架橋剤の触媒の添加量が0.1質量%以上であることは、架橋剤の触媒を積極的に含有していることを意味し、架橋剤の触媒の含有により変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤の間の架橋反応がより良好に進行し、より優れた耐溶剤性が得られる。また、架橋剤の触媒の含有量が15質量%以下であることで、溶解性、ろ過性、密着の点で有利である。
また、部分放電電圧の向上と太陽電池素子を封止する封止材に対する密着性とを両立を実現させ易い観点から、変性ポリオレフィン含有層の厚みは0.3μm以下が最も好ましい。
本発明の太陽電池用バックシートは、変性ポリオレフィン含有層の表面にダイからニップ点までの距離を100mm以上400mm以下として溶融押出ラミネートされたラミネート層を含む。
本発明におけるラミネート層は、ラミネート後の表面粗さが0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂とは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリシクロオレフィン、ポリヘキセン、ポリオクテン、ポリデセン、ポリドデセン等が挙げられる。
この中でも加工が容易で比較的安価であることなどからポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)であることが好ましい。また、ポリエチレンの中でも比較的低密度な低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンの中でもホモポリマーやランダムコポリマーなども好ましく用いることができる。
本発明の太陽電池用バックシートは、既述の基材、変性ポリオレフィン含有層、ラミネート層に加え、必要に応じて、耐候性層、ガスバリア層などのその他の層を設けてもよい。
耐候性層は、バックシートに耐候性を付与するための層である。このため、耐候性層は、基材の変性ポリオレフィン含有層が設けられる面とは反対側の面に設けることがよい。
耐候性層は、フッ素系樹脂およびシリコーン系複合ポリマー(以下「複合ポリマー」と称する)の少なくとも一方を含む。ただし、耐候性層の組成は、その限りでは無い。耐候性層は、複合ポリマーを含むと隣接する層との接着性を特に良好にすることが可能になり、長期間経時させても接着性の低下を小さく保つことが可能になる。
フッ素系樹脂は、例えば、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が挙げられる。中でも、溶解性、および耐候性の観点から、ビニル系化合物と共重合させたクロロトリフルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体が好ましい。
複合ポリマーは、分子中に−(Si(R1)(R2)−O)n−部分(以下「ポリシロキ
サン部分」と称する)と部分に共重合するポリマー構造部分を含むポリマーである。このポリシロキサン部分と共重合するポリマー構造部分としては、特に制限されるものではなく、アクリル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ゴム系ポリマーなどが挙げられるが、このうち、耐久性の観点からアクリル系ポリマーは特に好ましい。つまり、複合ポリマーは、アクリルとシリコーンの複合樹脂であることが特に好ましい。
アクリル系ポリマーの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/2−ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸/γ−メタクリロキシトリメトキシシラン共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート/アクリル酸共重合体等が挙げられる。
ポリウレタン系ポリマーの具体例としては、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールから得られるウレタン、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコール/ネオペンチルグリコールから得られるウレタン、ヘキサメチレンジイソシアネートとジエチレングリコールから得られるウレタン等が挙げられる。
ポリエステル系ポリマーの具体例としては、テレフタル酸/イソフタル酸とジエチレングリコールから得られるポリエステル、テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸とジエチレングリコールから得られるポリエステル、アジピン酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸とジエチレングリコールから得られるポリエステル等が挙げられる。
ゴム系ポリマーの具体例としては、ブタジエン/スチレン/メタクリル酸からなるゴム系ポリマー、ブタジエン/メチルメタクリレート/メタクリル酸からなるゴム系ポリマー、イソプレン/メチルメタクリレート/メタクリル酸からなるゴム系ポリマー、クロロプレン/アクリロニトリル/メタクリル酸からなるゴム系ポリマー等が挙げられる。
なお、耐候性層は、単層でもよいし、2層以上を積層した構成としてもよい。
耐候性層形成用の塗布液の溶媒としては好ましくは水が用いられ、塗布液に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系の塗布液は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。耐候性層形成用の塗布液中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
ガスバリア層は、ポリエステルへの水やガスの浸入を防止する防湿性の機能を与える層である。このため、ガスバリア層は、防水、防湿等の観点から、基材の変性ポリオレフィン含有層を設ける側とは反対の面側に設けることがよい。
ガスバリア層の水蒸気透過量(透湿度)としては、102g/m2・d〜10−6g/m2・dが好ましく、より好ましくは101g/m2・d〜10−5g/m2・dであり、さらに好ましくは100g/m2・d〜10−4g/m2・dである。
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と太陽電池用バックシートとの間に配置し、基板とバックシートとの間をエチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止材で封止している。
具体的には、本発明の太陽電池モジュールは、太陽光が入射する透明性の基材と、基材上に設けられ、太陽電池素子および太陽電池素子を封止する封止材を有する素子構造部分と、素子構造部分の基材が位置する側と反対側に配置された太陽電池用バックシートと、を備える。そして、太陽電池用バックシートとして、本発明のバックシートが適用される。
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
[基材及び変性ポリオレフィン含有層を有する積層体の作製]
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行った。
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)シートを作製した。その後、このシートを90℃で縦方向(MD)に3.1倍に延伸し、下記条件でコロナ放電処理を行った。次いで、下記組成の変性ポリオレフィンを含む塗液をポリエチレンテレフタレート(PET)のコロナ処理面に、塗布量が5.1ml/m2となるように、横方向(TD)に延伸前にインラインコート法にて塗布を行い、厚み0.4μmの塗布層を形成した。その後、温度を105℃とし、延伸倍率4.5倍として、横方向(TD)に延伸した。また、その後、膜面210℃で15秒間の熱処理を行い、190℃でMD緩和率5%、TD緩和率11%でMD・TD方向に熱緩和を行い、厚み250μmの2軸延伸されたPET(基材)上に変性ポリオレフィン含有層が積層された積層体を得た。
PETの一方の面に行ったコロナ放電処理の条件は以下の通りである。
・電極と誘電体ロールギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:20m/分
・処理強度:0.375kV・A・分/m2
・ポリオレフィン樹脂水分散液〔ハードレンNZ−1004、東洋紡(株)製、固形分29.5%、変性ポリプロピレン、使用濃度20%〕 ・・・ 3.74部
・アクリル樹脂水分散液〔AS−563A、ダイセルファインケム(株)製、固形分:28%のラテックス〕 ・・・ 0.3部
・水溶性オキサゾリン系架橋剤〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25%〕 ・・・ 0.85部
・界面活性剤〔ナロアクティーCL−95、三洋化成工業(株)製、固形分:100%、使用濃度1%〕 ・・・ 1.0部
・蒸留水 ・・・ 100部
2軸延伸されたPET(基材)上に変性ポリオレフィン含有層が積層された積層体の変性ポリオレフィン含有層側に、プライムポリプロY−400GP(ホモポリプロピレン、MFR=4g/10min、プライムポリマー(株)製)を、溶融樹脂温度320℃でコートハンガーダイから冷却ロール上に押出した。このときのラミネート条件として、冷却ロールは、10℃に冷却した表面粗さ(Ra)12μmの冷却ロールを使用し、エアギャップは100mmに設定し、40kg/cmの圧力で圧着した。
また、得られた積層体の表面粗さ(Ra)は、10μmであった。
ラミネートする際、ニップ点の上方からオゾンガスをガス濃度30g/m3、ガス風量25m3/時間の条件で積層体へ吹き付けた。
以上のようにして、実施例1の太陽電池用バックシートを作製した。
実施例1において、下記表1に示す配合又は条件で作製したこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用バックシートを作製した。
各実施例及び比較例で得られた太陽電池用バックシートについて、以下に示す方法により、太陽電池用バックシートの封止材に対する密着力、封止材へのラミネート時の気泡混入、及びバックシートの引っかき耐性を評価した。それぞれの評価結果は、表1に示す。
各実施例及び比較例で得られた太陽電池用バックシートをMD方向8.0cm、TD方向3.0cmにカットした。次に、ガラス板の上に封止材として使用されるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)のフィルムを乗せ、その上にEVA側に変性ポリオレフィン含有層形成面を向けるようにして、バックシートのカット品を重ねた。その後、145℃、真空引き4分、加圧10分の条件下で日清紡メカトロニクス社製 真空ラミネート装置(LAMINATOR0505S)を用いて、ラミネートした。
その後、23℃50%の条件で24h以上、調湿したのち、バックシートのMD方向にカッターで10mm幅になるように2本の切り込みを入れる。
上記、切り込みを入れた太陽電池用バックシートの10mm幅の部分を100mm/minの速度でテンシロン(A&D Company,Limited社製 RTF−1310)により180°で引っ張り、太陽電池用バックシートがEVA表面から剥離する際の力(単位:N/mm)を測定し、以下の基準で評価した。
また、ラミネート後のバックシートを、120℃100%の条件で30hr、湿熱処理を行い、湿熱処理後の剥離力を上記と同様にして測定し、以下の基準で評価した。
A :4N/mm以上
B :3N/mm以上4N/mm未満
C :2N/mm以上3N/mm未満
D :2N/mm未満
各実施例及び比較例で得られた太陽電池用バックシートをMD方向120cm、TD方向63cmにカットした。次に、ガラス板の上に封止材として使用されるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)のフィルムを2枚乗せ、その上にEVA側に変性ポリオレフィン含有層形成面を向けるようにして、バックシートのカット品を重ねた。その後、145℃、真空引き4分、加圧10分の条件下でエヌピーシー社製の真空ラミネート装置を用いて、ラミネートした。得られた積層品内における気泡の数を以下の基準で評価した。
A : 発生無し
B : 1箇所以上3箇所未満
C : 3箇所以上
各実施例及び比較例で得られた太陽電池用バックシートのラミネート層表面について、新東科学社製連続引っかき試験機TYPE18により、サファイア針0.1mmを用いて、0g〜100gの荷重で引っかき、傷が視認される荷重を求め、以下の基準で評価した。
A : 25g以上
B : 5g以上〜25g未満
C : 5g未満
B−1 : ハードレンNZ−1004、東洋紡(株)製、ポリプロピレン(PP)
B−2 : ジョンクリルPDX−7341、BASF製、アクリル樹脂
B−3 : スーパーフレックス110、第一工業製薬製、ウレタン樹脂
B−4 : アローベースSE−1010、ユニチカ(株)製、ポリエチレン樹脂
C−1 : プライムポリプロY−400GP(ホモポリプロピレン、MFR=4g/10min、プライムポリマー(株)製)
C−2 : ノバテックLC607K(低密度ポリエチレン、MFR=8g/10min、日本ポリエチレン(株)製)
14 押出ダイ
16 冷却ローラ
18 ニップローラ
19 ニップ点
20 剥離ローラ
22 バックアップローラ
24 延伸フィルム
26 バックシート
30 ガス吹付器
Claims (2)
- ポリエステル系樹脂シートを第1の方向に延伸する工程と、
延伸して得られた一軸延伸フィルム上に、変性ポリオレフィンを含む塗液を塗布する工程と、
前記塗布後の前記一軸延伸フィルムをさらに第2の方向に延伸する工程と、
第2の方向に延伸されて得られた延伸フィルムの塗布面に、樹脂を溶融押出ラミネートする工程と、
を含み、樹脂を押出すダイからニップ点までの距離が100mm以上400mm以下であり、前記溶融押出ラミネートにより形成されたラミネート層の露出面における表面粗さが0.5μm以上20μm以下であり、かつ、前記溶融押出ラミネートする工程は、前記樹脂を、押出温度を310℃以上330℃以下としてダイから押出す、太陽電池用バックシートの製造方法。 - 前記溶融押出ラミネートする工程は、ラミネート前に予め、前記樹脂又は前記延伸フィルムの前記塗布面に対してオゾン吹付処理を行う請求項1に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
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