JP2015185687A - 太陽電池用バックシート部材及びその製造方法、太陽電池用バックシート並びに太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布した後、前記ポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより設けられた30nm〜300nmの厚みを有する易接着層17と、前記延伸されたポリエステルフィルム16と、前記易接着層の前記延伸されたポリエステルフィルムが接触している面とは反対側の面に接触して設けられ、アクリル樹脂及び着色顔料を含み、1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層18と、を有する太陽電池用バックシート部材31及びその応用。
【選択図】図1
Description
延伸されたポリエステルフィルムと、
易接着層の延伸されたポリエステルフィルムが接触している面とは反対側の面に接触して設けられ、アクリル樹脂及び着色顔料を含み、1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層と、
を有する太陽電池用バックシート部材。
<3> 着色樹脂層が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する構造を有する<1>又は<2>に記載の太陽電池用バックシート部材。
<4> 着色樹脂層が、着色顔料として、平均粒子径が0.2μm〜0.5μmの酸化チタンを、着色樹脂層に含まれる樹脂100質量部に対して40質量部〜70質量部含む<1>〜<3>のいずれかに記載の太陽電池用バックシート部材。
<6> 易接着層が、アクリル樹脂を含む<1>〜<5>のいずれかに記載の太陽電池用バックシート部材。
<8> 延伸されたポリエステルフィルムの易接着層及び着色樹脂層が設けられている側とは反対側にポリオレフィンを含む層を有する<7>に記載の太陽電池用バックシート。
太陽電池素子と、
太陽電池素子を封止する封止材と、
封止材のフロント基板とは反対側に配置され、封止材に、易接着層が設けられている面とは反対側が対向している<7>又は<8>に記載の太陽電池用バックシートと、
を含む太陽電池モジュール。
ポリエステルフィルムの片面に、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む易接着層形成用塗布液を塗布する工程と、
易接着層形成用塗布液が塗布されたポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより30nm〜300nmの厚みを有する易接着層を形成する工程と、
易接着層上にアクリル樹脂及び着色顔料を含む着色樹脂層形成用塗布液を塗布して1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層を形成する工程と、
を有する太陽電池用バックシート部材の製造方法。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の太陽電池用バックシート部材は、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布した後、ポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより設けられた30nm〜300nmの厚みを有する易接着層と、延伸されたポリエステルフィルムと、易接着層の延伸されたポリエステルフィルムが接触している面とは反対側の面に接触して設けられ、アクリル樹脂及び着色顔料を含み、1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層と、を有して構成されている。
本発明の太陽電池用バックシート部材は、基材フィルムとして、少なくとも一方向に延伸されたポリエステルフィルム(以下、単に「ポリエステルフィルム」という場合がある。)を備えている。
本発明におけるポリエステルフィルムは、エステル樹脂を含む原料樹脂を溶融押出しして未延伸フィルムを形成した後、最初の延伸前又は最初の延伸後に、易接着層形成用塗布液が塗布され、その後、少なくとも1回の延伸工程が行われたポリエステルフィルムである。本発明におけるポリエステルフィルムは、少なくとも一軸延伸されたポリエステルフィルムであるが、二軸延伸されたポリエステルフィルムであることが好ましい。
本発明における易接着層は、いわゆるインラインコート法によって形成された層(以下、「インラインコート層」という場合がある)であり、具体的には、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む塗布液(易接着層形成用塗布液)をポリエステルフィルムの片面に塗布した後、ポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより設けられた30nm〜300nmの厚みを有する。
易接着層は、バインダー樹脂として、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む。これらの樹脂は密着力を得やすいため好ましく用いられる。具体的には、例えば以下の樹脂が挙げられる。
アクリル樹脂とオレフィン樹脂の組合せで用いる場合、易接着層中のオレフィン樹脂とアクリル樹脂の合計に対するアクリル樹脂の含有量は、3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、7〜25質量%であることが特に好ましい。
易接着層に含まれるバインダー(樹脂)は、架橋剤により架橋されていてもよい。易接着層に架橋構造を形成させると密着性をより向上することができ、好ましい。架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。
易接着層において架橋剤を用いる場合には、架橋剤の触媒をさらに併用してもよい。架橋剤の触媒を含有することで、バインダー(樹脂)と架橋剤との架橋反応が促進され、耐溶剤性の向上が図られる。また、架橋が良好に進むことで、易接着層の密着性がより改善される。
特に、架橋剤としてオキサゾリン基を有する架橋剤(オキサゾリン系架橋剤)を用いる場合、架橋剤の触媒を使用することがよい。
オニウム化合物としては、アンモニウム塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ニトロニウム塩、ニトロソニウム塩、ジアゾニウム塩等が好適に挙げられる。
架橋剤の触媒の添加量は、架橋剤に対して、0.1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、0.5質量%以上12質量%以下の範囲がより好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲が特に好ましく、2質量%以上7質量%以下がより特に好ましい。架橋剤に対する架橋剤の触媒の添加量が0.1質量%以上であることは、架橋剤の触媒を積極的に含有していることを意味し、架橋剤の触媒の含有によりバインダーと架橋剤の間の架橋反応がより良好に進行し、より優れた耐溶剤性が得られる。また、架橋剤の触媒の含有量が15質量%以下であることで、溶解性、塗布液のろ過性、封止剤との密着性向上の点で有利である。
添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防腐剤などが挙げられる。
着色樹脂層は、易接着層の延伸されたポリエステルフィルム側とは反対側の面に接触して設けられている。着色樹脂層は、アクリル樹脂及び着色顔料を含み、1μm〜3μmの厚みを有する。
一般的に、着色樹脂層に含まれる着色顔料の含有量が多いほど反射性能や紫外線カット性能が向上する反面、接着力が小さく、また、着色樹脂層の厚みが薄いほど剥離し易い。
これに対し、本発明の太陽電池用バックシート部材は、ポリエステルフィルムと着色樹脂層との間に、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含み、インラインコート法によって形成された30〜300nmの厚みを有する易接着層が配置されていることで、着色樹脂層がポリエステルフィルムに直接接着している場合に比べ、湿熱環境下に置かれても着色樹脂層の接着力の低下が抑制され、剥離し難い。
着色樹脂層にバインダー樹脂として含まれるアクリル樹脂は、エステル樹脂、オレフィン系樹脂などと比較して、耐光性に優れる。
着色樹脂層の密着力向上を目的に、あるいは本発明の太陽電池用バックシート部材を用いた太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールの製造工程において高温処理に曝されることから、着色樹脂層の耐熱性向上を目的に、適切な架橋構造を導入可能なようにアクリル系樹脂の中でも特にアクリルポリオール樹脂が好ましい。着色樹脂層は、アクリルポリオール樹脂と、紫外線吸収剤及び光安定化剤の少なくとも一方(以下、「紫外線吸収剤及び/又は光安定化剤」と記す場合がある。)とが共重合したアクリル樹脂を含むことが好ましい。
着色樹脂層に含まれる着色顔料は、(1)樹脂層に発色させる、(2)色調の維持(退色しない)、(3)紫外線及び/又は可視光カット、という目的で選定し、用いる。着色顔料は目的に応じて選択すればよく、一般的に使用される白色顔料だけでなく、黒色顔料など白色以外の着色顔料を用いてもよい。
例えば、太陽電池用バックシートとしては、光反射性及び意匠性の観点から白色のシートが主流であるが、シートを黒色にすると、発電素子間の隙間が白色に見える白色シートと比較して意匠性に優れる。また、これらの顔料自体も特定の波長の光線を吸収及び/又は反射することから、着色することにより光線から基材シートを保護するという効果が得られる。また、太陽電池モジュール内の電気配線パターンなどの設計パターンを目隠しできるという効果もある。
なお、本発明における着色顔料の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定される値である。
着色樹脂層は、(1)紫外線吸収剤及び/又は光安定化剤を共重合させた樹脂、(2)着色顔料、及び(3)可塑剤とで構成されていることが好ましい。
バインダー樹脂に紫外線吸収剤や光安定化剤を後添加して形成した樹脂層では、高温加湿環境下、あるいは紫外線受光に伴い、紫外線吸収剤や光安定化剤が塗膜中から塗膜表面にブリードアウトし、ぬれ性、塗膜表面の密着力などが変化するだけでなく、当初発現していた紫外線カット性能が失われるといった不具合を生じやすい。
これに対して、アクリル樹脂に紫外線吸収剤及び/又は光安定化剤を共重合させることで、紫外線吸収剤や光安定化剤が塗膜表面にブリードアウトすることを防ぎ、紫外線カット性能を長期にわたり保持することができる。
アクリルポリオール樹脂と共重合させる紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が例示できる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、その他として、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
また、同様にアクリルポリオール樹脂と共重合させる光安定化剤としては、ヒンダードアミン系等の光安定化剤が挙げられる。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ]−4−ピペリジニル]エステルなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
着色樹脂層の厚みが1μm以上であると、高い光反射性能や紫外線カット性能を発揮することができる。また、着色樹脂層を塗布方法により形成する場合、塗工時にはじきや膜切れといった現象を生じにくく、均一な塗膜を形成し易い。その結果、高い密着力、光反射性能、紫外線カット性能が十分に発現する。
一方、着色樹脂層の厚みが3μm以下であると、厚膜塗布が可能な特異プロセスを用いなくとも通常の塗布装置で塗布できるので塗工方式に制約を生じることがなく、生産コストを抑えることができるので好ましい。さらに、搬送ロールへの塗膜粘着やそれに伴う塗膜の剥がれ等を生じにくくなるので好ましい。
前述したように、本発明の着色樹脂層は可塑剤を含んでもよい。
着色樹脂層のアクリル樹脂としてアクリルポリオール樹脂を用いた場合、着色樹脂層に可塑剤を含有する効果が顕著に現れる。本発明における可塑剤は、易接着層とアクリルポリオール樹脂及び着色顔料を含む着色樹脂層との密着力向上に貢献する。
元来、アクリルポリオール樹脂は種々の樹脂フィルムに対する密着力が特段悪い樹脂材料ではないが、着色樹脂層の着色を目的に着色顔料を比較的高い濃度で配合した場合には着色樹脂層の硬度が高まり、さらに着色樹脂層中のアクリルポリオール樹脂の濃度が相対的に低下するために、他の層と着色樹脂層との間の密着力は低下する傾向にある。そこで、アクリルポリオール樹脂と比較して樹脂軟化点が低い傾向にある可塑剤成分を配合することで着色樹脂層の硬度を調整し、易接着層との密着力を向上させることができる。
本発明で用いる可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤又はこれらの組み合わせが耐熱性、耐候性、コスト、汎用性などの観点から好ましい。
さらに、本発明における着色樹脂層には、その特性を損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化剤、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを添加してもよい。
また、前述の通り、着色樹脂層の特性向上の目的でアクリルポリオールの水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤を配合しても良い。架橋剤を併用した場合には、着色樹脂層と隣接する層との間の密着力の向上、あるいは架橋構造の導入に伴う着色樹脂層の耐熱性向上といった効果が得られる。特に、本発明における着色樹脂層が最外層に位置する場合には、太陽電池モジュールの製造工程、具体的にはガラスラミネート工程(セル充填工程)において、着色樹脂層が最大150℃程度の高温下で、長い場合には30分以上の熱処理に曝されるため、特に耐熱性が要求される。
本発明の太陽電池用バックシート部材を製造する方法は、上記構成の太陽電池用バックシート部材(積層フィルム)を作製することができれば特に限定されないが、例えば、ポリエステルを含む樹脂を溶融押出ししてポリエステルフィルムを形成する工程と、ポリエステルフィルムの片面に、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む易接着層形成用塗布液を塗布する工程と、易接着層形成用塗布液が塗布されたポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより30nm〜300nmの厚みを有する易接着層を形成する工程と、易接着層上にアクリル樹脂及び着色顔料を含む着色樹脂層形成用塗布液を塗布して1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層を形成する工程と、を有する。
ポリエステルフィルム形成工程、すなわちポリエステルフィルムを製膜する工程では、エステル樹脂等を含む溶融体をギアポンプや濾過器を通し、その後、ダイを介して冷却ロールに押出し、これを冷却固化させることで(未延伸)フィルムを形成することができる。溶融は押出し機を用いて行なうが、単軸押出し機を用いてもよく、2軸押出し機を用いてもよい。
押出し機の温度は使用するポリエステルの融点から融点+80℃以下で行なうことが好ましく、より好ましくは融点+10℃以上、融点+70℃以下、さらに好ましくは融点+20℃以上、融点+60℃以下である。融点+10℃未満では充分に樹脂が融解せず、一方、温度が融点+80℃を超えるとポリエステル、添加剤等が分解する可能性がある。なお、この押出しの前に、ポリエステル等のマスターバッチを乾燥しておくことが好ましく、好ましい含水率は10ppm〜300ppm、より好ましくは20ppm〜150ppmである。
ポリエステルフィルム形成工程によって形成された(未延伸)フィルムは、延伸工程において、延伸処理を施すことができる。延伸は縦方向(MD:Machine Direction)、横方向(TD:Transverse Direction)の少なくとも一方に行なう。より好ましくは、MD、TDの両方延伸を行なうことが、フィルムの物性にバランスが取れ好ましい。このような2方向延伸は、縦、横逐次におこなってもよく、同時に実施してもよい。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)/(延伸前の長さ)〕
横延伸はフィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げておこなうことができる(横延伸)。
同時延伸は、チャックで把持したあと、長手方向にチャック間隔を拡げる操作と、幅方向にチャック間隔を拡げる操作を組み合わせることで実施できる。
なお、延伸工程が複数工程設けられている場合、易接着層の塗布工程の前に一部の延伸工程を行い、易接着層の塗布工程後、残りの延伸工程を行ってもよい。
(a)縦延伸→塗布→横延伸
(b)塗布→縦延伸→横延伸
(c)塗布→縦、横同時延伸
(d)縦延伸→横延伸→塗布→縦延伸
(e)縦延伸→横延伸→塗布→横延伸
熱緩和処理における諸条件は、熱処理温度より低い温度で処理することが好ましく、130℃〜220℃が好ましい。また、熱緩和処理は、フィルムの熱収縮率(150℃)がMD及びTDがいずれも-1〜12%であることが好ましく、-1〜10%が更に好ましい。尚、熱収縮率(150℃)は、測定方向350mm、幅50mmのサンプルを切り出し、サンプルの長手方向の両端近傍300mm間隔に標点を付け、150℃の温度に調整されたオーブンに一端を固定、他端をフリーで30分間放置し、その後、室温で標点間距離を測定し、この長さをL(mm)とし、かかる測定値を用いて、下記式にて熱収縮率を求めることができる。
150℃熱収縮率(%)=100×(300−L)/300
また、熱収縮率が正の場合は縮みを、負は伸びを表わす。
ポリエステルフィルムの厚みは、30μm以上350μmが好ましいが、耐電圧の観点から、160μm以上300μm以下がより好ましく、さらに好ましくは180μm以上280μm以下である。
本発明で用いる好ましい処理条件は、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランス1〜3mm、周波数1〜100kHz、印加エネルギー0.2〜5kV・A・分/m2程度が
好ましい。
交流を用いる場合には50又は60Hzの商用の周波数を用いてもよいし、10〜50kHz程度の高周波を用いてもよい。また、13.56MHzの高周波を用いる方法も好ましい。
プラズマ出力としては、処理容器の形状や大きさ、電極の形状などにより一概には言えないが、100〜2500W程度、より好ましくは、500〜1500W程度が好ましい。
グロー放電処理の放電処理強度はプラズマ出力と処理時間によるが、0.01〜10kV・A・分/m2の範囲が好ましく、0.1〜7kV・A・分/m2がより好ましい。放電処理強度を0.01kV・A・分/m2以上とすることで充分な接着性改良効果が得
られ、10kV・A・分/m2以下とすることで被処理フィルムの変形や着色といった問
題を避けることができる。
真空中で被処理フィルムの温度を上げる具体的方法としては、赤外線ヒーターによる加熱、熱ロールに接触させることによる加熱などが挙げられる。
本発明では、易接着層をインラインコート法にて形成する。すなわち、溶融押出しによって未延伸のポリエステルフィルムを形成した後、延伸工程の前又は複数の延伸工程の間の工程として、易接着層(インラインコート層)を形成するための易接着層形成用塗布液の塗布工程を行った後、少なくとも1回の延伸工程を行うことで、ポリエステルフィルムの表面に易接着層が形成される。
溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。バインダーを水分散した水系塗布液を塗布する方法が好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
易接着層付きポリエステルフィルムの易接着層上に、着色樹脂層を塗布法により形成するための塗布液(着色樹脂層形成用塗布液)を塗布して着色樹脂層を形成する。
着色樹脂層形成用塗布液は、前述したアクリル樹脂及び着色顔料、さらに必要に応じて添加剤を溶媒に添加して調製される。
着色樹脂層を形成するための塗布液の性状としてはエマルジョン型および溶解型のいずれでもよい。
本発明の太陽電池用バックシートは、前述した太陽電池用バックシート部材を含んで構成される。
本発明の太陽電池用バックシートは、例えば、前述した太陽電池用バックシート部材の延伸されたポリエステルフィルムの易接着層及び着色樹脂層が設けられている側とは反対側の面上に他のフィルム、例えばポリオレフィンを含む層を積層した構成とすることができる。
延伸されたポリエステルフィルムに積層するポリオレフィンを含む層としては、例えば、A層/B層/C層の3層構成からなり、C層が上記接着剤層と接着し、A層が最外層側(封止材と接着させる側)に位置する構成のポリオレフィンフィルムを採用することができる。具体的には、国際公開第2013−051403号明細書の[0029]〜[0061]に記載されているポリオレフィン系樹脂多層フィルムを採用することができる。すなわち、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を混合した樹脂組成物からなるA層と、白色微粒子を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなるB層と、ポリプロピレン系樹脂組成物からなるC層を積層したポリオレフィン系樹脂多層フィルムを用いることができる。
次に、ポリエステルフィルムの接着剤塗工面とポリオレフィン系樹脂多層フィルムのC層側の面とを張り合わせる。これにより、太陽電池用バックシート部材におけるポリエステルフィルムの易接着層とは反対側の面に、接着剤層を介してポリオレフィン系樹脂多層フィルムが積層された太陽電池用バックシートを作製することができる。
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と太陽電池用バックシートとの間に配置し、基板とバックシートとの間をエチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止材で封止している。
下記成分を混合撹拌して易接着層形成用塗料を調製した。
・イオン交換水 17.3質量部
・エポクロスWS700(日本触媒社製、固形分濃度25.0%) 15.1質量部
・AS−563A(ダイセル社製、固形分濃度28.0%) 67.3質量部
・界面活性剤 0.36質量部
(ナトリウム−1.2−{ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ナノフルオロヘキシルカルボニル)}エタンスルホナート)
以下の方法によって、A層、B層、C層が積層されたポリオレフィン系樹脂多層フィルムを作製した。
作製したポリオレフィン系樹脂多層フィルムのC層側にコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を40mN/mとして巻き取った。
アクリル樹脂:(株)日本触媒製、紫外線吸収剤および光安定化剤(HALS)がアクリルポリオール樹脂に架橋されたハルスハイブリットポリマー(登録商標)BK1(固形分濃度:40質量%)を35質量部、導電材料:大塚化学製デントールWK500(酸化チタンに酸化スズを被覆した針状結晶である無機固体導電材料。数平均繊維長は5〜15μmの範囲で分布している)15質量部、白色顔料:酸化チタン粒子(テイカ社製 JR−709)を50質量部および溶剤:酢酸エチル100質量部を一括混合し、ビーズミル機を用いて分散し、固形分濃度が50質量%である主剤塗料を得た。
DIC(株)製ドライラミネート剤 ディックドライ(登録商標)LX−903を16質量部、硬化剤としてDIC(株)製KL−75を2質量部、および酢酸エチルを29.5質量部量りとり、15分間攪拌した。これにより固形分濃度20%のドライラミネート用接着剤を得た。
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応
槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行った。
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmのポリエチレンテレフタレート未延伸ベース(PET基材)を作製した。
その後、90℃で縦方向に3.4倍に延伸(MD延伸)し、下記条件でコロナ放電処理を行った。
MD延伸後のPET基材の一方の面に行ったコロナ放電処理の条件は以下の通りである。
・電極と誘電体ロールギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:20m/分
・処理強度:0.375kV・A・分/m2
次いで、易接着層形成用塗料を、PET基材のコロナ放電処理面に、塗布量が5.1ml/m2となるように、MD延伸後、TD延伸前にインラインコート法にてワイヤーバーを用いて塗布した。
得られた易接着層付きPETフィルムの易接着層上に、ワイヤーバーを用いて着色樹脂層形成用塗料を塗布し、120℃で30秒間乾燥し、乾燥後塗布量が4.0g/m2の着色樹脂層を設けた。
このようにして太陽電池用バックシート部材1を製造した。
太陽電池用バックシート部材1の着色樹脂層とは反対側のPETフィルムの表面に、ドライラミネート用接着剤をワイヤーバーで塗布し、80℃で45秒間乾燥して厚さ3.5μmの接着剤層を形成した。
次に、この接着剤層に、ポリオレフィン系樹脂多層フィルム1のコロナ処理面をハンドローラーを用いて貼り合わせた。
このようにして作製したシートを40℃に加熱したオーブン内で3日間エージングして太陽電池用バックシート1を得た。
(湿熱経時後の着色樹脂層の接着性)
得られた太陽電池用バックシート1を85℃、85%RHの環境条件下で1000時間保持した後、25℃、60%RHの環境下において1時間調湿した。その後、下記の方法で接着性を評価した。
この上に幅20mmのマイラーテープ(NITTO社製、ポリエステル粘着テープ)を貼り付けた。次いでマイラーテープを手動で、バックシートの表面に沿って180°方向に引っ張って剥離した。このとき、剥離されたマス目の数によって、着色樹脂層と基材フィルムとの接着性を下記の評価基準にしたがってランク分けした。なお、各例の太陽電池用バックシートにつき、5回試験を行い、平均数とした。
評価ランク3〜5が、実用上許容可能な範囲である。
5:剥離したマス目はなかった(0マス)
4:剥離したマス目はゼロであるが、キズ部分が僅かに剥離している
3:剥離したマス目が1マス未満であった
2:剥離したマス目が1マス以上、3マス未満であった
1:剥離したマス目が3マス以上であった
実施例1における易接着層付きPETフィルムの作製において、MD延伸後、易接着層形成用塗料の塗布を行わないこと以外は同様にして二軸延伸PETフィルムを作製した。
次いで、PETフィルムのコロナ放電処理した面上に、ワイヤーバーを用いて実施例1と同様にして着色樹脂層を設けた。これにより太陽電池用バックシート部材を得た。
得られた太陽電池用バックシートについて、実施例1と同様にして湿熱経時後の着色樹脂層の接着性を評価した。
易接着層の構成及び着色樹脂層の構成をそれぞれ表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池用バックシートを作製し、評価を行った。
易接着層の厚み及び着色樹脂層の厚みをそれぞれ表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池用バックシートを作製し、評価を行った。
<太陽電池モジュールの作製と評価>
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のRC02B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のRC02B)と、各実施例で作製した太陽電池用バックシートとをこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと各部材を接着させた。このとき、各実施例の太陽電池用バックシートはそのポリオレフィン系樹脂多層フィルムがEVAシートと接触するように配置した。また、接着方法としては、真空ラミネータを用いて、150℃で3分間の真空引き後、10分間加圧して接着した。
15 ポリオレフィンを含む層(ポリオレフィンフィルム)
16 ポリエステルフィルム
17 易接着層(インラインコート層)
18 着色樹脂層
19 接着剤層
20 太陽電池素子
22 封止材
24 透明性のフロント基板
31 太陽電池用バックシート部材
32 太陽電池用バックシート
Claims (10)
- アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布した後、前記ポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより設けられた30nm〜300nmの厚みを有する易接着層と、
前記延伸されたポリエステルフィルムと、
前記易接着層の前記延伸されたポリエステルフィルムが接触している面とは反対側の面に接触して設けられ、アクリル樹脂及び着色顔料を含み、1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層と、
を有する太陽電池用バックシート部材。 - 前記着色樹脂層が、アクリルポリオール樹脂と、紫外線吸収剤及び光安定化剤の少なくとも一方とが共重合したアクリル樹脂を含む請求項1に記載の太陽電池用バックシート部材。
- 前記着色樹脂層が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する構造を有する請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用バックシート部材。
- 前記着色樹脂層が、前記着色顔料として、平均粒子径が0.2μm〜0.5μmの酸化チタンを、前記着色樹脂層に含まれる樹脂100質量部に対して40質量部〜70質量部含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート部材。
- 前記易接着層が、オキサゾリン基を持つ架橋剤に由来する構造を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート部材。
- 前記易接着層が、アクリル樹脂を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート部材。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート部材を含む太陽電池用バックシート。
- 前記延伸されたポリエステルフィルムの前記易接着層及び前記着色樹脂層が設けられている側とは反対側にポリオレフィンを含む層を有する請求項7に記載の太陽電池用バックシート。
- 太陽光が入射する透明性のフロント基板と、
太陽電池素子と、
前記太陽電池素子を封止する封止材と、
前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材に、前記易接着層が設けられている面とは反対側が対向している請求項7又は請求項8に記載の太陽電池用バックシートと、
を含む太陽電池モジュール。 - ポリエステルを含む樹脂を溶融押出ししてポリエステルフィルムを形成する工程と、
前記ポリエステルフィルムの片面に、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む易接着層形成用塗布液を塗布する工程と、
前記易接着層形成用塗布液が塗布された前記ポリエステルフィルムを少なくとも1回延伸することにより30nm〜300nmの厚みを有する易接着層を形成する工程と、
前記易接着層上にアクリル樹脂及び着色顔料を含む着色樹脂層形成用塗布液を塗布して1μm〜3μmの厚みを有する着色樹脂層を形成する工程と、
を有する太陽電池用バックシート部材の製造方法。
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