JP6117163B2 - 車両用ブレーキシステム - Google Patents
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Description
特許文献1には、負圧ブースタに負圧を供給する負圧ポンプ(負圧発生手段)の制御方法が記載されている。この負圧ポンプは、大気圧センサ(大気圧検出手段)が検出する大気圧と、絶対圧センサである負圧センサ(負圧ブースタの負圧を検出するブースタ圧検出手段)が検出するタンク内絶対圧との相対圧に基づいて制御される。これによって、負圧ポンプの作動・停止が大気圧の変化に応じて制御される。
このように、大気圧センサが故障すると負圧ポンプが最適に動作しない。負圧ポンプが最適に動作しないと、運転者がブレーキペダルを踏み込み操作するときのブレーキ操作力が効果的に倍力されないという問題が生じる。
なお、以下の説明において「負圧」は、大気圧Pairより真空の側の圧力、すなわちゲージ圧における負の圧力を示し、大気圧Pairと等しい状態の負圧をゼロとする。そして、大気圧Pairに近い負圧、すなわち、ゼロに近い負圧を「小さな負圧」、真空に近い負圧を「大きな負圧」と表記する。
また、圧力の具体的な数値を示す場合は「hPa(ヘクトパスカル)」を単位とする数値で示し、参考値として「mmHg(水銀柱ミリメートル)」を単位とする数値をかっこ書きで併記している。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1は、車両100に備わっている。車両用ブレーキシステム1は、ブレーキ装置1aを有し、制御装置(ECU7)で制御される。
ブレーキ装置1aは、ブレーキ操作子(ブレーキペダル4)、負圧ブースタ2、及びマスタシリンダ3を含んで構成される。ブレーキペダル4は運転者が踏み込み操作するブレーキ操作部である。負圧ブースタ2は、運転者がブレーキペダル4を踏み込む力(ブレーキ操作力)を負圧で倍力してマスタシリンダ3に入力する。マスタシリンダ3は、負圧ブースタ2で倍力されたブレーキ操作力を油圧に変換して油圧系統10に入力する。油圧系統10には図示しない駆動部(ディスクブレーキ等)が接続される。駆動部は油圧系統10に入力される油圧で駆動する。なお、負圧ブースタ2とマスタシリンダ3は一体に構成されていてもよい。
そして、負圧ブースタ2は、運転者がブレーキペダル4を操作するときのブレーキ操作力をマスタパワー圧Mp(負圧)で倍力してマスタシリンダ3に入力する。
配管8aには第2チェックバルブ6bが備わる。第2チェックバルブ6bは負圧ポンプ8が駆動すると、負圧ポンプ8に発生する負圧で開弁する。そして、負圧ブースタ2内の空気が排気されて負圧ブースタ2に負圧が供給される。なお、負圧ポンプ8が駆動しないときには第2チェックバルブ6bが閉弁して、負圧ブースタ2の負圧が維持される。
ECU7には車速センサ11が接続される。車速センサ11は車両100の車速を検出し、その検出値を車速信号P2として出力する。車速センサ11は、例えば、車輪101の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサである。車速センサ11が出力する車速信号P2はECU7に入力される。ECU7は車速信号P2から車両100の車速(車体速)を算出する。
また、ECU7には、エンジン制御装置(エンジンECU12)からエンジン駆動信号P3が入力される。エンジン駆動信号P3はエンジン5が駆動しているときにONとなる信号である。ECU7はエンジン駆動信号P3に基づいて、エンジン5が駆動しているか否かを判定する。
図2に示すように、負圧ブースタ2は中空のハウジング20を有する。ハウジング20は、例えば正面形状が円形の薄い円盤状を呈し、ハウジング20の内部はブースタピストン21によって厚み方向に2つの部屋に区画されている。ブースタピストン21は、例えばダイヤフラム22を介して往復動可能にハウジング20に取り付けられる。
負圧室20aとブースタピストン21を介して隣接する部屋には作動室20bが形成される。作動室20bには、ハウジング20の円盤状の中心部が円筒状に突出して延長筒23が形成される。延長筒23の端部には大気導入口24が形成される。
ブースタピストン21は、戻しばね25によって作動室20bの側に付勢される。
筒部21aには、ブレーキペダル4に連結された入力杆28がフィルタ27を貫通して挿入される。入力杆28は筒部21aの内部に構成されるエアバルブ28aに連結する。
運転者がブレーキペダル4を操作せずブレーキペダル4が無操作状態にあるとき、エアバルブ28aは、作動室20bと大気導入口24を遮断するとともに、負圧室20aと作動室20bを遮断した状態を維持する。
一方、エンジン5のインテークマニホールド5a(図1参照)におけるインマニ圧Piは回転速度等によって変化するが標高の変化によって変化しない。したがって、ブレーキ装置1a(図1参照)を備える車両100(図1参照)が走行する標高が高くなると、負圧ブースタ2における大気圧Pairとマスタパワー圧Mpの差圧が小さくなる場合がある。そして、これによって、運転者がブレーキペダル4を操作するときのブレーキ操作力が充分に倍力されなくなる場合がある。
図3に示すようにECU7は、相対圧算出部70を有する。相対圧算出部70には、大気圧センサ9が出力する大気圧検出信号P4と、マスタパワー圧センサ2aが出力するブースタ圧検出信号P1が入力される。相対圧算出部70は、大気圧検出信号P4から大気圧算出値Pa0を算出する。また、相対圧算出部70は、ブースタ圧検出信号P1からブースタ圧算出値Mp0を算出する。さらに、相対圧算出部70は、ブースタ圧算出値Mp0から大気圧算出値Pa0を減算して相対圧ΔMpを算出する。
つまり、相対圧算出部70は大気圧算出値Pa0が上限値Ulmt以上のときには、ブースタ圧算出値Mp0から上限値Ulmtを減算して相対圧ΔMpを算出する。また、相対圧算出部70は大気圧算出値Pa0が下限値Llmt以下のときには、ブースタ圧算出値Mp0から下限値Llmtを減算して相対圧ΔMpを算出する。
このように、大気圧算出値Pa0に上限値Ulmt及び下限値Llmtが設けられることによって、負圧ポンプ8が駆動しないことの不具合、及び停止しないことの不具合が軽減される。
詳細は後記するが、上限値Ulmt、及び下限値Llmtは、車両100(図1参照)が走行する環境や車両100に要求される制動性能等に応じた特性値として設定される。
閾値設定部71は、作動閾値マップ710に基づいて作動閾値PthONを設定する。また、閾値設定部71は、停止閾値マップ711に基づいて停止閾値PthOFFを設定する。作動閾値マップ710と停止閾値マップ711の詳細は後記する。
ポンプ作動信号出力部73は、エンジン駆動信号P3がONのとき(エンジン5が駆動しているとき)、ポンプ作動信号SigPを出力する。また、エンジン駆動信号P3がOFFのとき(エンジン5が停止しているとき)、負圧ポンプ8を停止するポンプ停止信号SigOFFを出力する。
図4の(a)に示す作動閾値マップ710、及び図4の(b)に示す停止閾値マップ711は、車両用ブレーキシステム1(図1参照)の特性値としてあらかじめ設定され、ECU7(図1参照)のROM(図示せず)に記憶されている。
そして、停止閾値マップ711においても、車速ごとに、大気圧Pairが高圧側境界値「paH」以上の領域で停止閾値PthOFFが負圧の最大値となり、大気圧算出値Pa0が低圧側境界値「paL」以下の領域で停止閾値PthOFFが負圧の最小値(停止最小負圧)となっている。このように、停止閾値マップ711も大気圧Pairが高圧側境界値「paH」と低圧側境界値「paL」の間で、大気圧Pairが大きいほど負圧の大きな停止閾値PthOFFが設定されている。つまり、停止閾値PthOFFは、大気圧Pairにおける低圧側境界値「paL」に対応した負圧が、車速ごとの停止最小負圧になっている。
また、低圧側境界値「paL」は、あらかじめ設定される標高(4000mなど)における気圧に設定される。大気圧Pairがこれ以上低下すると負圧ブースタ2における大気圧Pairとマスタパワー圧Mpの差圧が小さくなりすぎる。このため、停止閾値マップ711においては、大気圧Pairが所定の標高における気圧のときに停止閾値PthOFFが負圧の最小値(停止最小負圧)となっている。このことによって、大気圧Pairが低圧側境界値「paL」(例えば、4000mにおける気圧)より低い環境下(高地)では負圧ポンプ8が駆動しやすく(停止しにくく)なっている。
一例として、車両100(図1参照)が走行している環境の大気圧Pairが「pa1」で、相対圧ΔMpが「mp1」のときには、車速がV2〜V4であれば負圧ポンプ8(図3参照)が作動することが好ましい。一方、車速がV0,V1であれば負圧ポンプ8が作動しないことが好ましい(図5の(a)に黒丸A1で示す)。
この場合、車速がV2〜V4であってもECU7の作動判定部72a(図3参照)は負圧ポンプ8(図3参照)を作動しないと判定する。つまり、負圧ポンプ8が作動することが好ましい車速(V2〜V4)であっても負圧ポンプ8が作動しない。
この場合、車速がV0,V1であってもECU7の停止判定部72b(図3参照)は負圧ポンプ8(図3参照)を停止しないと判定する。つまり、負圧ポンプ8が停止することが好ましい車速(V0,V1)であっても負圧ポンプ8が停止しない。
そこで、図3に示す本実施形態のECU7は、大気圧センサ9が故障した場合であっても可能な限り負圧ポンプ8を最適に制御するように構成される。このため、ECU7の相対圧算出部70は大気圧算出値Pa0に限界値(上限値Ulmt,下限値Llmt)を設定する。そして、ECU7(相対圧算出部70)は、大気圧センサ9から入力される大気圧検出信号P4から算出した大気圧算出値Pa0が上限値Ulmt以上の場合、上限値Ulmtを大気圧算出値Pa0とする。また、ECU7(相対圧算出部70)は、大気圧センサ9から入力される大気圧検出信号P4から算出した大気圧算出値Pa0が下限値Llmt以下の場合、下限値Llmtを大気圧算出値Pa0とする。
例えば、図6の(a)に示すように、相対圧算出部70(図3参照)は、大気圧算出値Pa0の上限値Ulmtを「paH」とする。つまり、高圧側境界値「paH」が上限値Ulmtに設定される。この場合、大気圧検出信号P4から算出した大気圧算出値Pa0が「pa2(pa2>paH)」のとき、ECU7の相対圧算出部70(図3参照)は、大気圧算出値Pa0を「paH」とする。これによって、相対圧ΔMpが「mp2’(mp2’>mp2)」になる(図6の(a)に黒三角A3で示す)。この場合、ECU7の作動判定部72a(図3参照)は、車速がV3,V4のときに負圧ポンプ8(図1参照)を作動すると判定して、ポンプ作動信号SigPをONに設定する。
大気圧センサ9が故障して大気圧算出値Pa0が「pa2(pa2>paH)」になると相対圧ΔMpが「mp2」になるので、車速がV0〜V4で負圧ポンプ8が作動しない(黒四角A2)。ECU7(図1参照)が大気圧算出値Pa0に上限値Ulmtを設けることによって、大気圧センサ9が故障しても車速がV3,V4のときに負圧ポンプ8が作動する(黒三角A3)。
大気圧センサ9が故障して大気圧算出値Pa0が「pa3(pa3<pa1)」になると相対圧ΔMpが「mp3」になるので、車速がV0〜V4で負圧ポンプ8が停止しない(白四角B2)。大気圧算出値Pa0に下限値Llmtを設けることによって、大気圧センサ9が故障しても車速がV0のときに負圧ポンプ8が停止する(白三角B3)。
これによって、大気圧センサ9が故障した場合であっても負圧ポンプ8(図1参照)が可能な限り最適に制御される。
つまり、大気圧センサ9が故障した場合に、負圧ポンプ8の作動が好ましい車速(V2)では負圧ポンプ8が作動しないが、車速がV3,V4になったときに負圧ポンプ8が作動する。したがって、大気圧センサ9が故障した場合であっても負圧ポンプ8が可能な限り最適に制御されることになり、大気圧センサ9の故障による影響が軽減される。
つまり、大気圧センサ9が故障した場合に、負圧ポンプ8の停止が好ましい車速(V1)では負圧ポンプ8が停止しないが、車速がV0になったときに負圧ポンプ8が停止する。したがって、大気圧センサ9が故障した場合であっても負圧ポンプ8が可能な限り最適に制御されることになり、大気圧センサ9の故障による影響が軽減される。
例えば、大気圧算出値Pa0に設定される上限値Ulmt及び下限値Llmtは、車両100(図1参照)が走行する環境に応じて適宜設定可能である。
一例として、車両100が走行する最も高い標高(車両100が走行する最高標高)が3000m程度であれば、車両100が走行する環境の大気圧の下限は「700hPa(525mmHg)」程度になる。よって、下限値Llmtを「700hPa(525mmHg)」にしてもよい(Llmt=700hPa)。
このように、車両100が走行する最低標高に対応して上限値Ulmtが設定され、車両100が走行する最高標高に対応して下限値Llmtが設定される構成であってもよい。例えば、上限値Ulmt及び下限値Llmtを変更するスイッチ(図示せず)が備わる構成とすれば、上限値Ulmt及び下限値Llmtの設定変更が容易になる。
例えば、ECU7が、図示しないナビゲーション装置等から高度情報を取得可能な構成であれば、ECU7は取得した高度情報に基づいて標準的な大気圧Pairを算出できる。この場合、大気圧検出信号P4から算出した大気圧算出値Pa0と、高度情報から算出した標準的な大気圧Pairと、の偏差が所定の閾値以上のときに、大気圧センサ9が故障したとECU7が判定する構成とすればよい。そして、ECU7は大気圧センサ9が故障したと判定したときに、大気圧算出値Pa0に上限値Ulmt及び下限値Llmtを設定する構成とすればよい。
例えば、ECU7は、算出したマスタパワー圧(判定値)が作動閾値より小さい負圧のときに負圧ポンプ8を作動すると判定し、算出したマスタパワー圧(判定値)が停止閾値より大きい負圧のときに負圧ポンプ8を停止すると判定する構成であってもよい。
2 負圧ブースタ
2a マスタパワー圧センサ(ブースタ圧検出手段)
4 ブレーキペダル(ブレーキ操作子)
8 負圧ポンプ(負圧発生手段)
9 大気圧センサ(大気圧検出手段)
70 相対圧算出部
72a 作動判定部
72b 停止判定部
100 車両
Llmt 下限値
Mp0 ブースタ圧算出値
P1 ブースタ圧検出信号
P4 大気圧検出信号
Pa0 大気圧算出値
PthON 作動閾値
PthOFF 停止閾値
Ulmt 上限値
ΔMp 相対圧
Claims (3)
- 車両に備わる車両用ブレーキシステムであって、
大気圧を検出して大気圧検出信号を出力する大気圧検出手段と、
ブレーキ操作子に入力されるブレーキ操作力を負圧で倍力する負圧ブースタと、
前記負圧ブースタに負圧を供給する負圧発生手段と、
前記負圧ブースタに発生しているブースタ圧を検出してブースタ圧検出信号を出力するブースタ圧検出手段と、
大気圧が高いほど負圧が大きくなるように設定されている所定の作動閾値と前記ブースタ圧検出信号に基づいて算出される判定値を比較して前記負圧発生手段の作動を判定する作動判定部と、
大気圧が高いほど負圧が大きくなるように設定されている所定の停止閾値と前記判定値を比較して前記負圧発生手段の停止を判定する停止判定部と、を有し、
前記作動閾値は、大気圧における所定の高圧側境界値に対応した負圧が作動最大負圧になり、
前記停止閾値は、大気圧における所定の低圧側境界値に対応した負圧が停止最小負圧になり、
前記大気圧検出手段及び前記ブースタ圧検出手段は、絶対圧力を検出するセンサであり、
前記ブースタ圧検出信号からブースタ圧算出値を算出して、前記大気圧検出信号から大気圧算出値を算出し、さらに、前記ブースタ圧算出値から前記大気圧算出値を減算して前記ブースタ圧算出値の相対圧を算出する相対圧算出部を備え、
前記作動判定部は、前記相対圧を前記判定値として前記負圧発生手段の作動を判定し、
前記停止判定部は、前記相対圧を前記判定値として前記負圧発生手段の停止を判定し、
前記相対圧算出部は、
前記大気圧算出値が所定の上限値以上のときには、前記ブースタ圧算出値から前記上限値を減算して前記相対圧を算出し、
前記大気圧算出値が所定の下限値以下のときには、前記ブースタ圧算出値から前記下限値を減算して前記相対圧を算出することを特徴とする車両用ブレーキシステム。 - 前記作動判定部は、前記相対圧が前記作動閾値より負圧が小さいときに前記負圧発生手段を作動すると判定し、
前記停止判定部は、前記相対圧が前記停止閾値より負圧が大きいときに前記負圧発生手段を停止すると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。 - 前記車両が走行する最低標高に対応して前記上限値が設定され、前記車両が走行する最高標高に対応して前記下限値が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ブレーキシステム。
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